説明

給湯消費量計測システム

【課題】電磁流量計や温水メータ等の流量計測手段を設置する手間が不要で、しかも給湯消費量の多点計測が可能な、給湯消費量計測システムを提供する。
【解決手段】加熱機器を特定の場所に集中して設け、それより離れて多数に分散する給湯箇所へ配管で湯を供給する方式(中央方式)の給湯システムにおいて、各給湯取出口の配管表面温度の変化を用いて、各給湯取出口における給湯利用率を予測することを特徴とする給湯消費量計測システムであり、各給湯取出口の配管表面に、温水の温度を検知するための温度センサを設け、温度上昇または温度低下を検知することで給湯利用率を予測算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱機器を特定の場所に集中して設け、それより離れて多数に分散する給湯箇所へ配管で湯を供給する方式(これを一般的に「中央式」といい、主に病院・ホテル等の大規模建物で採用される方式である。)の給湯システムにおいて、各給湯取出口における給湯利用率を予測することが可能な給湯消費量計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯方式には局所式と中央式がある。局所式は、給湯式湯沸し器で湯を沸かし、湯を主に飲用に利用する。中央式は、主に病院・ホテル等の大規模建物で採用される方式で、ストレージタンクに貯めた湯(給湯温度60℃)を、洗面・手洗い、浴用、洗濯、厨房、厨房洗浄用、医療用などに利用する。中央式の場合、利用時の湯温は用途によって異なる。例えば、洗面・手洗い用は40℃、浴用は45℃、洗濯用は50℃と言った具合である。
【0003】
中央式給湯システムにおいて、各給湯取出口における給湯消費量を計測する手段としては、電磁流量計で計測した流量と給湯温度とから算出する手段がある。給湯消費量は、消費熱量と消費水量を示すものであるため、流量と給湯温度から消費熱量を算出することができる。また、多少精度は落ちるが、超音波流量計でも算出できる。電磁流量計や温水メータの敷設には配管加工を伴うが、超音波流量計は配管加工を伴わず管内の清浄を阻害しないため給湯に適した計測手段である。
【0004】
図1は超音波流量計による流量(水量)計測例を説明する図である。この方法では、超音波流量計(変換器)を用いることによって、管表面温度(Ts)と周波数変化(dH)から給湯温度(Th)と流速(f)を求めることができるので、給水温度(Tc)と管径(D)が既知であれば、熱量(Q)と水量(F)を算出できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術による消費熱量の計測法は、料金計算のための計量が主たる目的であるため、電磁流量計や温水メータにより逐次計測する方法となる。この方法は設置スペースの確保や設置手間がかかり、変換器も比較的高価なため、計測点数が限られてくる。一方、病院やホテルなど宿泊系大規模建物では、給湯などの熱需要は全体エネルギー消費量の3〜4割を占めていることから、熱エネルギーの計測ニーズは高く、給湯消費量をよりコンパクトで設置手間のない多点計測で求める方法が望まれている。
【0006】
しかしながら、厨房・洗濯や給湯室、浴室・シャワー等、特に熱エネルギー消費が多いと予測される用途や使用箇所において、用途別あるいは使用箇所別に、給湯の消費熱量を多点計測できる技術は存在しない。そのため、給湯消費量の用途別把握ができず、実際に使用した熱エネルギー消費データに基づいて使用者に省エネを促すことができない、というのが現状である。
【0007】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、電磁流量計や温水メータ等の流量計測手段を設置する手間が不要で、しかも給湯消費量の多点計測が可能な、給湯消費量計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の構成は以下のとおりである。
(1)加熱機器を特定の場所に集中して設け、それより離れて多数に分散する給湯箇所へ配管で湯を供給する方式の給湯システムにおいて、各給湯取出口の配管表面温度の変化を用いて、各給湯取出口における給湯利用率を予測することを特徴とする給湯消費量計測システム。
(2)各給湯取出口の配管表面に、温水の温度を検知するための温度センサが設けられ、温度センサにより検知された各給湯取出口における温度上昇開始から温度低下開始までの時間帯を給湯利用時間と判定し、この給湯利用時間から各給湯取出口における給湯利用率を予測することを特徴とする前記(1)に記載の給湯消費量計測システム。
(3)給湯利用率を、計測流量と設計流量で補正することを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の給湯消費量計測システム。
(4)超音波流量計による計測流量を用いることを特徴とする前記(3)に記載の給湯消費量計測システム。
【0009】
本発明では、常時の入力情報は管表面温度のみとするが、短期的かつ用途別の補正用流量計による計測を行うことで精度を上げる。シャワー等の用途別や季節別の単位時間当たり流量は設計用データ(設計流量)として知られているため、その値を既定値として持たせ、超音波流量計による補正用計測で補正するしくみである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設置手間がかからず、多点計測可能な給湯消費量計測システムを提供することが可能になる。給湯消費量の用途別把握といった目的利用から1時間当たりの消費量計測を目標としているので、従来の逐次計測より計測の精度は落ちるが、主たる計測機器が温度センサのみで済むため簡易である。
【0011】
従来の超音波流量計は設計流量の補正用に使い回すしくみとし、常時は温度計測から利用率を予測算出し流量に換算するものであるため、安価に仕上げることが可能になる。本発明では1時間当たりの給湯量算出を目標とするため流量を常に知る必要はなく、温度変化から利用率を知る程度で十分であるため、簡易である。常時は1時間当たりの利用率から流量を算出するが、利用率は温度変化から算出できるので実用範囲の精度が得られる。
【0012】
また、精度向上のため超音波流量計による補正のしくみを取り入れているので、単なる温度計測よりも信頼性は高い。さらに、各給湯取出口を同用途に限定することにより、補正率を共用できる。よって、従来の逐次計測より精度は落ちるが給湯消費量の用途別把握といった目的利用であれば十分実用範囲のシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る給湯消費量計測システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図2〜図6を参照して、本発明に係る給湯消費量計測システムの実施形態について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態である、給湯消費量計測システムの一例を簡略的に示す図であり、図3は、図2の計測システムにおける利用率の予想算出方法の基本的な考え方を説明する図であり、図4は、図2の計測システムの利用率予測算出方法の基本的な考え方を示すフローチャートである。
【0015】
図5は、図2の計測システムにおける利用率の予測算出方法の実用的な考え方を説明する図であり、図6は、図2の計測システムの利用率予測算出方法の実用的な考え方を示すフローチャートである。
【0016】
図2において、図示の給湯消費量計測システムは、主に病院・ホテル、ショッピングセンター、スーパー・百貨店、事務所等の大規模建物の中央式給湯システムに適用されている、超音波流量計(変換器)を備えているものである(常時設置不要)。この形態では、温度センサで測定した管表面温度(Tsi)と補正係数(α)が入力され、そこから1時間当りの利用率(Hi)が求められると、この利用率(Hi)と既知の設計流量(F0)を用いることで、水量(Fi)を下式により算出できる。
【0017】
Fi=F0×Hi×α (iは各給湯管のi番目を示す。)
【0018】
超音波流量計による補正をしない場合は、補正係数α=1とすることで設計レベルのデータを取得することが可能となる。水量(Fi)が求められると、これに、給水温度(Ts)と給湯温度(Thi)との温度差(ΔTi=Thi−Ts)を乗じることによって、熱量(Qi)を算出することができる。
【0019】
図3は、縦軸が給湯取出口における給湯管表面温度(θ[℃])、横軸が時刻(T[h])を示すグラフである。図3において、給湯管表面温度(θ[℃])は、給湯取出口(一般には蛇口、カラン等)を使用していない(給湯されていない)OFFの時は20℃、使用している(給湯されている)ONの時は40℃という一つの例を示している。
【0020】
図3において、
Δtonは温度上昇を判定するための時間差[h]、
Δθonは温度上昇を判定するための温度差[℃]、
Δtoffはθtopが発生した時刻とOFF状態までの時間差のうち最小値[h]、
θtopはON状態における最大温度[℃]、
Ttopはθtopが発生した時刻のうち最大値[h]である。
【0021】
給湯が開始されると、温度上昇開始(Ton)から給湯管の表面温度は急激に上昇し、給湯管の表面温度は最大値(θtop)に到達する。その時点における時刻はTtopである。その後、給湯が停止されると給湯管表面温度(θ)は次第に低下し、温度センサが温度低下を判定するための温度差(Δθoff)を検知した時点、すなわち温度低下開始(Toff)の時点をもって給湯利用は終了する。給湯管の表面温度最大値までの到達時間(Ttop)と温度低下開始時間(Toff)との間には、タイムラグ(Δtoff)が生じるが、このタイムラグは利用時間(H)に対して十分小さい値とは限らないので、利用率(利用時間)H[h]は、H=Toff−Ton−Δtoffによって求められる。ただし0≦H[h]≦1の関係が成立する。
【0022】
図示の利用率(H)の予測算出方法では、1時間当たりの消費量計測を目標としているので、利用時間(H[h])は利用率(H)とみなすことができ0≦H[h]≦1となる。また、温度上昇を判定するための温度差(Δθon)と温度低下を判定するための温度差(Δθoff)との関係は、常に、Δθon≦Δθoffとなる。これは給湯が利用されていないと思われる状態(OFF状態)の直後に給湯が利用された場合、ΔθoffよりΔθonが大きいと、給湯が利用されていると思われる状態(ON状態)を判定することができなくなるためである。
【0023】
次に、図2および図3,図4を参照して、本発明に係る給湯消費量計測システムによる利用率の予測算出方法の基本的な考え方について説明する。なお、図4の予測算出フローチャートは問題を簡単にするため、1時間に1度の給湯利用がされたことを想定したものである。
【0024】
給湯取出口は、給湯が利用されていると思われる状態(ON状態)、または、給湯が利用されていないと思われる状態(OFF状態)、のいずれかである。給湯管表面の温度上昇があった場合はON状態となり、温度低下があるOFF状態までの間で、図4に示す方法で利用率H(利用時間)が求められる。
【0025】
ON状態から温度低下がある状態までの間(Tnow−Ton(≧1))は、給湯利用時間とみなされるので、1時間に亘って給湯利用がされた時は利用率(H)は、H=1となる。1時間給湯利用がされなかった時は、給湯管表面の温度低下によってOFF状態となるので、利用率(H)は、H=Toff−Ton−Δtoff によって求められる。
【0026】
次に、図2および図5,図6を参照して、本発明に係る給湯消費量計測システムによる利用率の予測算出方法の実用的な考え方について説明する。また図6の予測算出フローチャートでは、1時間にn度の給湯利用がされたことを想定したものである。
【0027】
図5は、図3と同様、縦軸が給湯取出口における給湯管表面温度(θ[℃])、横軸が時刻(T[h])を示すグラフであるが、横軸は1時間にn度の利用を示している(すなわち、nは1時間当たりの平均利用回数である)。n回利用すればそのときの利用率(H)は、H1+H2+H3+・・・+Hnの総和として求められる。
【0028】
給湯取出口は、給湯が利用されていると思われる状態(ON状態)、または、給湯が利用されていないと思われる状態(OFF状態)、のいずれかである。給湯管表面の温度上昇があった場合はON状態となり、温度低下があるOFF状態まで、図6に示す方法で利用率H(利用時間)が求められる。
【0029】
図6において、
Δtonは温度上昇を判定するための時間差[h]、
Δθonは温度上昇を判定するための温度差[℃]、
Δtoffはθtopが発生した時刻とOFF状態までの時間差のうち最小値[h]、
θtopはON状態における最大温度[℃]、
Tnowは現在時刻[h]
TonはON状態になった時刻[h]
ToffはOFF状態になった時刻[h]、
Ttopはθtopが発生した時刻のうち最大値[h]である。
【0030】
給湯が利用されていないと思われるOFF状態から温度上昇があると、1回の利用あたり、その後温度低下がある状態までの間(Tnow−Ton(≧1/n))が給湯利用時間とみなされる。
【0031】
給湯管表面の温度低下によってOFF状態となるので、j番目の利用率(Hj)は、Hj=Toff−Ton−Δtoff によって求められる。次に1時間にn度の回数で、図6の予測算出フローチャートを実行する。そして1時間経過後、利用率(H)は次式によって求められる。
H=ΣHj (j=1〜n)
これでnは予測算出の分解能(精度)を示し、1時間当たりの平均利用回数より十分大きいとする。ただし、nは大きいほど頻繁な計算が必要となる。
【0032】
上記の利用率を、各給湯取出口ごとに求めることにより、各給湯取出口ごとの給湯使用量を比較評価することが可能になる。
【0033】
(第2の実施形態)
この実施形態では、超音波流量計を設計流量の補正用に使い回す実施形態を説明する。 超音波流量計による補正をする場合は、単位時間当りの計測流量と設計流量を用い、以下の計算式により、第1の実施形態において計測した利用率を補正する。これにより、設計レベルより精度の高いデータを取得することが可能となる。
【0034】
補正係数α=計測流量/{設計流量(F0)×計測時の利用率(H1)}
【0035】
ただし計測時の利用率(H1)が小さいと補正係数αの誤差が大きくなるため、計測時の利用率(H1)が0.5以上で有効とする。
【0036】
また、下式にて水量(Fi)が求められると、これに給水温度(Ts)と給湯温度(Thi)との温度差(ΔTi=Thi−Ts)を乗じることによって、熱量(Qi)を算出することができる。
【0037】
Fi=F0×Hi×α (iは各給湯管のi番目を示す。)
【0038】
以上、本発明に係る給湯消費量計測システムの実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】超音波流量計で流量(水量)を計測する例の説明図である。
【図2】本発明の給湯消費量計測システムを説明する図である。
【図3】利用率予測算出方法の基本的な考え方を説明する図である。
【図4】利用率予測算出方法の基本的な考え方を示すフローチャートである。
【図5】利用率予測算出方法の実用的な考え方を説明する図である。
【図6】利用率予測算出方法の実用的な考え方を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱機器を特定の場所に集中して設け、それより離れて多数に分散する給湯箇所へ配管で湯を供給する方式の給湯システムにおいて、各給湯取出口の配管表面温度の変化を用いて、各給湯取出口における給湯利用率を予測することを特徴とする給湯消費量計測システム。
【請求項2】
各給湯取出口の配管表面に、温水の温度を検知するための温度センサが設けられ、温度センサにより検知された各給湯取出口における温度上昇開始から温度低下開始までの時間帯を給湯利用時間と判定し、この給湯利用時間から各給湯取出口における給湯利用率を予測することを特徴とする請求項1に記載の給湯消費量計測システム。
【請求項3】
給湯利用率を、計測流量と設計流量で補正することを特徴とする請求項1または2に記載の給湯消費量計測システム。
【請求項4】
超音波流量計による計測流量を用いることを特徴とする請求項3に記載の給湯消費量計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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