説明

給湯装置及び給湯装置の排水方法

【課題】水熱交換器から従来よりも確実に排水できる給湯装置を得る。
【解決手段】圧縮機4、水熱交換器3の冷媒側伝熱管30、減圧装置6及び空気熱交換器7が配管接続された冷媒循環回路60を有する給湯装置Kであって、水熱交換器3の水側伝熱管29の入口側又は出口側の一方に設けられ、開いた状態では外部と連通する第1の開閉装置(開閉装置73又は開閉装置80A)と、第1の開閉装置を開いた状態で圧縮機4を駆動し、水熱交換器3の冷媒側伝熱管30に冷媒を流通させ、水熱交換器3の水側伝熱管29内に滞留した水を排出する排水運転を行う制御装置1と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置及び給湯装置の排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場等の給湯施設においては、冬季の営業していない期間等、長期にわたり給湯装置を停止させる場合がある。その際、給湯装置の電源を切ることが多い。このため、大気の温度が低下した場合、水熱交換器内(より詳しくは水熱交換器の水側伝熱管内)に水が残っていると、水熱交換器内の水が凍結して膨張し、水熱交換器を破壊してしまう可能性がある。
【0003】
したがって、従来の給湯装置には、水熱交換器内からの排水方法として、例えば「液体回路W3内の液体温度を検出する液温センサ16と、熱交換器3への液体流入路W1に液体の流入を断続させる開閉弁13と吸気弁14と、熱交換器3からの液体流出路W2に流体の流路を排水側に切り替える三方弁15と循環ポンプ6とを設け、循環ポンプ6の運転を停止している状態で液温センサ16にて検出される液体温度が所定値より低くなった場合、開閉弁13により液体の流入を阻止し、三方弁15を排水側に切り替え、循環ポンプ6を所定条件だけ運転して熱交換器3内の液体を排出する。」(特許文献1参照)というものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−240343号公報(要約、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水熱交換器内からの排水方法では、水熱交換器の水側伝熱管内の上部に空気の流れ道ができてしまった場合、水側伝熱管内に水が滞留したまま抜けきらないという問題点があった。特に、熱交換効率を向上させるために水側伝熱管をとぐろ状に配置した水熱交換器の場合、水側伝熱管が水平となったり、水側伝熱管が排水時の水の流れ方向と逆勾配となることがある。このため、とぐろ状に水側伝熱管を配置した水熱交換器は、上述のような水配管内に水が滞留したまま抜けきらないという問題点が発生しやすかった。水側伝熱管をとぐろ状に配置した熱交換ユニットを並列に段積みしたような熱交換器の場合、一部の熱交換ユニットの水側伝熱管内にだけ水が残るようなこともあり、上述のような水配管内に水が滞留したまま抜けきらないという問題点の発生はより顕著であった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、水熱交換器から従来よりも確実に排水できる給湯装置及び給湯装置の排水方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給湯装置は、圧縮機、冷媒によって水を加熱する第1の熱交換器の冷媒側伝熱管、減圧装置、及び蒸発器として作用する第2の熱交換器が配管接続された冷媒循環回路を有する給湯装置であって、第1の熱交換器の水側伝熱管の入口側又は出口側の一方に設けられ、開いた状態では外部と連通する第1の開閉装置と、第1の開閉装置を開いた状態で圧縮機を駆動し、冷媒側伝熱管に冷媒を流通させ、水側伝熱管の内部に滞留した水を排出する排水運転を行う制御装置と、を備えたものである。
【0008】
また、本発明に係る給湯装置の排水方法は、圧縮機、冷媒によって水を加熱する第1の熱交換器の冷媒側伝熱管、減圧装置、及び蒸発器として作用する第2の熱交換器が配管接続された冷媒循環回路と、圧縮機の回転数及び減圧装置の開度を制御する制御装置と、を有する給湯装置の排水方法であって、第1の熱交換器の水側伝熱管の入口側又は出口側の一方に設けられた第1の開閉装置を開き、水側伝熱管と外部を連通させる第1の開口工程と、第1の開口工程の後、圧縮機を駆動して冷媒側伝熱管に冷媒を流通させ、水側伝熱管の内部に滞留した水を排出する排水運転工程と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、第1の熱交換器(水熱交換器)の冷媒側伝熱管に冷媒を流通させることによって、第1の熱交換器の水側伝熱管に滞留した水が蒸発し、第1の熱交換器の水側伝熱管内の圧力が上昇する。そして、この圧力上昇によって、第1の熱交換器の水側伝熱管内の蒸気及び水は、第1の開閉装置から排出される。このため、第1の熱交換器の水側伝熱管内に滞留した水を従来よりも確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る給湯装置の回路構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る給湯装置の外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る給湯装置の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る給湯装置の機械室を示す平面図である。
【図5】本発明に係る水熱交換器を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る水熱交換器の伝熱管コイルを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る開閉装置の一例を示す平面図である。
【図8】図7に示す開閉装置のストッパーを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る排水運転の排水効果を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る開閉装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る給湯装置の回路構成を示す構成図である。図1に示すように、給湯装置Kは、圧縮機4、水と冷媒とが熱交換して温水を製造する水熱交換器3、膨張弁等の減圧装置6、大気と冷媒とが熱交換する空気熱交換器7、及び水ポンプ22等を備えている。そして、圧縮機4、水熱交換器3の冷媒側伝熱管30、減圧装置6及び空気熱交換器7を配管接続し、冷媒が循環する冷媒循環回路60を構成している。この冷媒循環回路60には、圧縮機4の吐出側配管に、圧縮機4から吐出された冷媒の温度を検出する冷媒温度センサー61及び圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサー62が設けられている。また、空気熱交換器7の近傍には、空気熱交換器7に大気を供給するファン10、及びこのファン10を駆動するモーター11が設けられている。なお、冷媒側伝熱管30の詳細については、後述する。
【0012】
本実施の形態に係る給湯装置Kは、水ポンプ22及び水熱交換器3の水側伝熱管29が配管接続され、水循環回路70も構成されている。この水循環回路70には、例えば貯湯タンク等(図示せず)が接続される。水循環回路70には、水熱交換器3の水側伝熱管29の水流入口に接続された入口側配管71に、開閉装置73が設けられている。本実施の形態では、開閉装置73として、例えば手動式の三方弁を用いている。つまり、開閉装置73を開くことにより、水熱交換器3の水側伝熱管29は、開閉装置73を介して外部と連通するようになっている。また、水循環回路70には、水熱交換器3の水側伝熱管29の水流出口に接続された出口側配管72に、開閉装置80Aが設けられている。つまり、開閉装置80Aを開くことにより、水熱交換器3の水側伝熱管29は、開閉装置80Aを介して外部と連通するようになっている。なお、水側伝熱管29及び開閉装置80Aの詳細については、後述する。
【0013】
ここで、開閉装置73又は開閉装置80Aの一方が、本発明における第1の開閉装置に相当する。また、開閉装置73又は開閉装置80Aの他方が、本発明における第2の開閉装置に相当する。
【0014】
また、本実施の形態に係る給湯装置Kには、制御装置1が設けられている。制御装置1は、冷媒温度センサー61及び冷媒圧力センサー62の検出値等に基づいて、圧縮機4の回転数、減圧装置6の開度、ファン10に接続されたモーター11の回転数等を制御する。
【0015】
このような回路構成の給湯装置Kは、次のような構成となっている。
図2は、本発明の実施の形態に係る給湯装置の外観斜視図である。図3は、この給湯装置の分解斜視図である。図4は、この給湯装置の機械室を示す平面図である。
【0016】
基盤41の前部に前パネル42、フィンガード43及び上部パネル44が配置され、基盤41の両側部にサイドパネル45及びサイドパネル46が配備され、基盤41の背部に後パネル49及び後上部パネル47が配備されている。上部パネル44、サイドパネル45、サイドパネル46及び後上部パネル47に囲まれた上面開口には、ファンガード48が設置されている。そして、サイドパネル45,46、ベルマウス50及び機械室仕切板51により形成された空気通路を横切るように、空気熱交換器7が配置されている。また、空気熱交換器7の上方には、ファン10及びモーター11が配置されている。また、ケーシング下部の機械室仕切板51、前パネル42及び後パネル49によって外環境から区画された機械室内には、圧縮機4、減圧装置6、水熱交換器3、水ポンプ22、それらを接続する配管群及び制御ボックス23等が配備されている。制御装置1は、制御ボックス23に収納されている。
【0017】
また、給湯装置Kの水熱交換器3は、次のように構成されている。
図5は、本発明に係る水熱交換器を示す斜視図である。また、図6はこの水熱交換器の伝熱管コイルを示す図であり、図6(a)は伝熱管コイルの斜視図を示し、図6(b)は図6(a)のA−A断面図を示す。
【0018】
図5に示すように、水熱交換器3は、複数の熱交換ユニットを並列に段積みして構成されている。本実施の形態では、5つの熱交換ユニット3a〜3eを並列に段積みし、水熱交換器3を構成している。これら熱交換ユニット3a〜3eは、平面視において略長方形状となるように、伝熱管コイル24をとぐろ状に配置したものである。また、これら熱交換ユニット3a〜3eは、内周側でとぐろ状に配置された伝熱管コイル24が、外周側でとぐろ状に配置された伝熱管コイル24よりも高くなるように構成されている。このため、熱交換ユニット3a〜3eのそれぞれは、水熱交換器3を設置した状態において、伝熱管コイル24が水平になる箇所や、伝熱管コイル24が勾配を有するように(傾いて)配置される箇所が存在する。伝熱管コイル24をとぐろ状に配置して水熱交換器3を構成することにより、水熱交換器3の熱交換効率を保ちつつ、水熱交換器3の設置スペースを小さくすることが可能となる。
【0019】
これら熱交換ユニット3a〜3eを構成する伝熱管コイル24は、図6に示すような構造となっている。つまり、伝熱管コイル24は、水側伝熱管29に3本の冷媒側伝熱管30(冷媒側伝熱管30a〜30c)をねじって巻き付け、水側伝熱管29に冷媒側伝熱管30a〜30cを固着して、形成されている。また、水側伝熱管29を流れる水の方向と冷媒側伝熱管30a〜30cを流れる水の方向は、逆向きになっている。つまり、伝熱管コイル24は、伝熱面積を増やし、水と冷媒を対向流にして熱交換を行なうようにしたものである。
【0020】
熱交換ユニット3a〜3eは、図5に示すように、並列接続されて水熱交換器3を構成している。より詳しくは、熱交換ユニット3a〜3eの水側伝熱管29の水流入口は、接続配管を介して水入口ヘッダー26と接続されている。熱交換ユニット3a〜3eの水側伝熱管29の水流出口は、接続配管を介して水出口ヘッダー25と接続されている。熱交換ユニット3a〜3eの冷媒側伝熱管30(冷媒側伝熱管30a〜30c)の冷媒流入口は、接続配管を介して冷媒入口ヘッダー27と接続されている。熱交換ユニット3a〜3eの冷媒側伝熱管30(冷媒側伝熱管30a〜30c)の冷媒流出口は、接続配管を介して冷媒出口ヘッダー28と接続されている。
【0021】
つまり、図1に示す入口側配管71の端部は、水入口ヘッダー26、及びこの水入口ヘッダー26と水側伝熱管29とを接続する接続配管となっている。また、図1に示す出口側配管72の端部は、水出口ヘッダー25、及びこの水出口ヘッダー25と水側伝熱管29とを接続する接続配管となっている。そして、開閉装置80Aは、水出口ヘッダー25と最上部に配置された熱交換ユニット3aの水側伝熱管29とを接続する接続配管に設けられている。本実施の形態に係る熱交換ユニット3a〜3eは、最上部が水流出口となり、最下部が水流入口となるように形成されている。このため、開閉装置80Aは、水熱交換器3を構成する伝熱管コイル24(水側伝熱管29)の最も高い位置以上の高さに配置されている。また、開閉装置73は、例えば水入口ヘッダー26に設けられている(図示せず)。本実施の形態では、開閉装置80Aよりも低くなる位置の水入口ヘッダー26に、開閉装置73を設けている。
【0022】
なお、開閉装置80Aが設けられる位置は、図5に示す位置に限定されるものではない。例えば、水出口ヘッダー25に開閉装置80Aを設けてもよい。また例えば、水側伝熱管29に、開閉装置80Aを設けてもよい。また例えば、水出口ヘッダー25と熱交換ユニット3a以外の水側伝熱管29とを接続する接続配管に開閉装置80Aを設けてもよい。本実施の形態では、このような水側伝熱管29の水流出口近傍を、水側伝熱管29の出口側と称する。つまり、開閉装置80Aは、水側伝熱管29の出口側に設けられていればよい。
また、開閉装置73が設けられる位置も、水入口ヘッダー26に限定されるものではない。例えば、水出口ヘッダー25と熱交換ユニット3a〜3eの水側伝熱管29とを接続する接続配管に、開閉装置73を設けてもよい。本実施の形態では、このような水側伝熱管29の水流出口近傍を、水側伝熱管29の入口側と称する。つまり、開閉装置73は、水側伝熱管29の入口側に設けられていればよい。
【0023】
本実施の形態では、水側伝熱管29の出口側に設けられる開閉装置80Aを以下のように構成している。
図7は、本発明の実施の形態に係る開閉装置の一例を示す平面図である。また、図8はこの開閉装置のストッパーを示す図であり、図8(a)がストッパーの正面図を示し、図8(b)がストッパーの側面図を示す。なお、図7では、水出口ヘッダー25と最上部に配置された熱交換ユニット3aの水側伝熱管29とを接続する接続配管を、出口側配管72として示している。
【0024】
本実施の形態では、図7に示すように、出口側配管72を出口側配管72aと出口側配管72bとに切断し、出口側配管72aと出口側配管72bとの間に開閉装置80Aを設けている。この開閉装置80Aは、取り外し配管81、Oリング82及びストッパー83を備えている。取り外し配管81は、例えば略円筒形状をしており、両端部にフランジ81aが形成されている。取り外し配管81の内周部の直径は、出口側配管72a及び出口側配管72bの端部の外径よりも、若干大きく形成されている。Oリング82は、出口側配管72a及び出口側配管72bの端部に形成された溝部に設けられている。出口側配管72a及び出口側配管72bの端部を取り外し配管81を挿入することにより、出口側配管72a及び出口側配管72bと取り外し配管81との間は、Oリング82によってシールされる。
【0025】
出口側配管72aと取り外し配管81の端部、及び出口側配管72bと取り外し配管81の端部は、ストッパー83によって固定される。図8に示すように、ストッパー83は、例えば板部材を板金加工したものである。このストッパー83には、出口側配管72a及び出口側配管72bの外周部(より詳しくは、取り外し配管81に挿入されていない範囲の外周部)を把持する把持部84と、取り外し配管81の外周部(より詳しくは、フランジ81a以外の外周部)を把持する把持部85が形成されている。また、把持部84と把持部85との間には、貫通口である挿入口86が形成されている。出口側配管72a及び出口側配管72bの外周部を把持部84で把持し、取り外し配管81の外周部を把持部85で把持することにより、出口側配管72aと取り外し配管81の端部及び出口側配管72bと取り外し配管81の端部は、ストッパー83によって固定される。このとき取り外し配管81のフランジ81aは、挿入口86に挿入される。
【0026】
<動作説明>
このように構成された給湯装置Kは、次のような動作となる。
【0027】
(給湯運転時の動作)
まず、通常の給湯運転時における給湯装置Kの動作について説明する。
通常の給湯運転時、圧縮機4で圧縮された高温高圧状態の冷媒は、水熱交換器3の冷媒側伝熱管30に流入する。そして、この冷媒は、水熱交換器3の水側伝熱管29を流れる水を加熱することで、冷却される。水熱交換器3で冷却された冷媒は、減圧装置6にて減圧され、蒸発器として作用する空気熱交換器7に流入する。空気熱交換器7に流入した冷媒は、ファン10から送られる大気から熱を吸熱し、圧縮機4に流入する。通常の給湯運転時、水熱交換器3に流入する冷媒の温度は、水を沸騰させない程度の温度を目標に制御される。
【0028】
(排水運転時の動作)
続いて、排水運転時における給湯装置Kの動作について説明する。
ゴルフ場等の給湯施設においては、冬季の営業していない期間等、長期にわたり給湯装置を停止させる場合がある。その際、給湯装置Kの電源を切ることが多い。そこで、給湯装置Kの制御装置1には、給湯装置Kを長期にわたって停止させる前に水熱交換器3の水側伝熱管29から水を抜き取るため、排水運転動作を行う機能が設けられている。制御装置1は、外部から(例えば操作盤等によって)排水運転を指令する信号が入力されることで、排水運転を行う。
【0029】
水熱交換器3の水側伝熱管29から水を抜き取る際、まず、開閉装置73及び開閉装置80Aを開く(開状態とする)。開閉装置80Aを開くには、出口側配管72aと取り外し配管81の端部、及び出口側配管72bと取り外し配管81の端部から、ストッパー83を取り外す。そして、取り外し配管81から出口側配管72a及び出口側配管72bの端部を抜き取ることにより、開閉装置80Aが開く。なお、開閉装置73及び開閉装置80Aを開く順番は、任意である。開閉装置73と開閉装置80Aを同時に開いても勿論よい。
【0030】
上述のように、開閉装置80Aは、開閉装置73よりも高い位置に設けられている。このため、開閉装置80Aが吸気口として機能し、開閉装置73が排水口として機能する。したがって、吸気口となる開閉装置80Aから水熱交換器3の水側伝熱管29に空気が入る。そして、万有引力の法則により、吸気口となる開閉装置80Aから入った空気が水側伝熱管29内の水を押し出し、排水口となる開閉装置73より水側伝熱管29内の水が排出される(以下、この排水工程を、自重による排水工程という)。なお、本実施の形態では、水熱交換器3の水側伝熱管29の最も高い位置以上の高さに、開閉装置80Aが配置されている。このため、自重による排水工程において、水側伝熱管29内の水を早く抜くことができる。
【0031】
しかしながら、自重による排水工程のみでは、水熱交換器3の水側伝熱管29内の上部に空気の流れ道ができてしまった場合、水側伝熱管29内に水が滞留したまま抜けきらなくなってしまう。特に、本実施の形態に係る水熱交換器3のように水側伝熱管29をとぐろ状に配置した場合、水側伝熱管29が水平となったり、水側伝熱管29が排水時の水の流れ方向と逆勾配となることがある。また、本実施の形態に係る水熱交換器3のように複数の熱交換ユニットを段積みした水熱交換器の場合、各熱交換ユニットの組み付け状態等によっても、水側伝熱管29が水平となったり、水側伝熱管29が排水時の水の流れ方向と逆勾配となることがある。このため、本実施の形態に係る水熱交換器3のような熱交換器は、水側伝熱管29内に水が滞留したまま抜けきらなくなってしまうという問題点がより発生しやすくなる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、自重による排水工程の後に排水運転を行うことにより、水側伝熱管29内に滞留した水を排出している。
外部から(例えば操作盤等によって)排水運転を指令する信号が入力されると、開閉装置73及び開閉装置80Aを開いた状態で、制御装置1は、圧縮機を起動する。そして、冷媒循環回路60に冷媒を循環させる。
なお、冷媒循環回路60内の流れは、給湯運転時と同じ方向の流れである。
【0033】
排水運転においては、制御装置1は、圧縮機4から吐出された冷媒の圧力(冷媒圧力センサー62の検出値)が制限範囲内となるように、圧縮機4の回転数を制御する。圧縮機4から吐出された冷媒の圧力を制限範囲内に制御するのは、水熱交換器3の冷媒側伝熱管30、圧縮機4の内部部品、その他の冷媒循環回路60内の配管等が破損等しないようにするためである。この制御は、給湯運転時にも行われているが、排水運転においては、給水されない分、通常の給湯運転に対し、圧縮機1の回転数を低く保つ場合が常である。なお、圧縮機4から吐出された冷媒の圧力が制限範囲を超えた場合、圧縮機4を一旦停止させ、再度圧縮機を起動すればよい。
【0034】
また、制御装置1は、圧縮機4から吐出された冷媒の温度(冷媒温度センサー61の検出値)が所定の温度以上となるように、減圧装置6の開度を制御する。つまり、制御装置1は、所定の温度以上の冷媒が水熱交換器3の冷媒側伝熱管30を流れるように、減圧装置6の開度を制御している。本実施の形態では、制御装置1は、圧縮機4から吐出された冷媒の温度(冷媒温度センサー61の検出値)が100℃以上となるように、減圧装置6の開度を制御している。より詳しくは、制御装置1は、圧縮機4から吐出された冷媒の温度(冷媒温度センサー61の検出値)が約120℃となるように、減圧装置6の開度を制御している。水熱交換器3の水側伝熱管29内に滞留した水をなるべく早く蒸発させるためである。なお、圧縮機4から吐出された冷媒の温度(冷媒温度センサー61の検出値)がある上限値以下となるように、減圧装置6を制御してもよい。圧縮機4から吐出された冷媒の温度があまり高すぎると、圧縮機4が故障する場合があるためである。
【0035】
このように排水運転を行うことにより、水熱交換器3の水側伝熱管29内に滞留した水が蒸発し始める。そして、この水の蒸発に伴い、水熱交換器3の水側伝熱管29内の圧力が上昇する。そして、この圧力上昇によって、水熱交換器3の水側伝熱管29内の蒸気及び水は、開閉装置73及び開閉装置80Aから排出される。
なお、本実施の形態では開閉装置73及び開閉装置80Aの双方を開いて排水運転を行ったが、開閉装置73又は開閉装置80Aの一方が開いていれば、本発明を実施することができる。開いている方の開閉装置から、水熱交換器3の水側伝熱管29内の蒸気及び水が排出されるからである。
【0036】
図9に、排水運転を行った場合の排水効果について示す。
水側伝熱管29に0.8Lの水を貯留できる水熱交換器3を用いて、排水効果を確認した。自重による排水工程を行うと、水熱交換器3の水側伝熱管29内には、0.25L〜0.5Lの水が滞留した。なお、この値は、水側伝熱管29の配置条件等(水側伝熱管29の水平部分の長さ、水側伝熱管29に排水時の水の流れ方向と逆勾配になっている箇所があるか否か等)によって異なる。
一方、排水運転を実施した後は、水熱交換器3の水側伝熱管29内には、0.25L〜0.26Lの水しか滞留していなかった。つまり、排水運転を行うことにより、自重による排水工程では排出しきれなかった水側伝熱管29内の水を排出することができる。
【0037】
以上、このように構成された給湯装置Kは、少なくとも開閉装置73又は開閉装置80Aの一方を開いて排水運転を行うことにより、水熱交換器3の水側伝熱管29内の水を従来よりも確実に排出することができる。
【0038】
また、開閉装置73及び開閉装置80Aの双方を開くことにより、自重による排水工程も実施することができる。このため、水熱交換器3の水側伝熱管29内の排水作業を迅速に行うことができる。
【0039】
また、排水運転において、圧縮機4から吐出された冷媒の温度(水熱交換器3の冷媒側伝熱管30を流れる冷媒の温度)を100℃以上とすることにより、水熱交換器3の水側伝熱管29内の水が早く蒸発し、排水運転における排水作業を迅速に行うことができる。
【0040】
また、水熱交換器3の水側伝熱管29の最も高い位置以上の高さに開閉装置80Aを設けることにより、自重による排水工程において排水作業を迅速に行うことができる。
【0041】
なお、本実施の形態で示した開閉装置73及び開閉装置80Aは、あくまでも一例である。例えば、開閉装置73に、開閉装置80Aを用いてもよい。また例えば、開閉装置80Aを手動式の三方弁等にしてもよい。また例えば、開閉装置73や開閉装置80Aを図10に示すような構成にしてもよい。
図10は本発明の実施の形態に係る開閉装置の別の一例を示す図であり、図10(a)がこの開閉装置の平面図を示し、図10(b)がこの開閉装置の分解斜視図を示している。なお、この図10は、開閉装置80Aの位置に開閉装置80Bを設置した場合について示している。また、図10では、開閉装置80Bの一方の端部側(出口側配管72a側)のみを示している。開閉装置80Bの他方の端部側(出口側配管72b側)も、開閉装置80Bの一方の端部側(出口側配管72a側)と同様の形状となっている。
【0042】
図10に示すように、出口側配管72aには、端部側から、Oリング82が設けられる溝、及びフランジ72cが形成されている。フランジ72cの外径は、取り外し配管81に形成されたフランジ81aの外径とほぼ同じになっている。また、ストッパー87には、把持部88が形成されている。把持部88の内径は、フランジ72c及びフランジ81aの外径とほぼ同じになっている。また、把持部88の幅は、「フランジ72cの幅+フランジ81aの幅」とほぼ同じになっている。フランジ72cとフランジ81aが接触するように、出口側配管72aを取り外し配管81へ挿入する。そして、フランジ72c及びフランジ81aを把持部88で把持することにより、出口側配管72aと取り外し配管81が固定される。
【0043】
また、開閉装置73及び開閉装置80Aに自動式の開閉装置(三方弁等)を用いても勿論よい。つまり、自動式の開閉装置73及び開閉装置80Aと制御装置1を電気的に接続し、制御装置1によって、開閉装置73及び開閉装置80Aの開閉を行ってもよい。自重による排水工程も、外部から制御装置1へ信号を入力することによって行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 制御装置、3 水熱交換器、3a〜3e 熱交換ユニット、4 圧縮機、6 減圧装置、7 空気熱交換器、10 ファン、11 モーター、22 水ポンプ、23 制御ボックス、24 伝熱管コイル、25 水出口ヘッダー、26 水入口ヘッダー、27 冷媒入口ヘッダー、28 冷媒出口ヘッダー、29 水側伝熱管、30(30a〜30c) 冷媒側伝熱管、41 基盤、42 前パネル、43 フィンガード、44 上部パネル、45 サイドパネル、46 サイドパネル、47 後上部パネル、48 ファンガード、49 後パネル、50 ベルマウス、51 機械室仕切板、60 冷媒循環回路、61 冷媒温度センサー、62 冷媒圧力センサー、70 水循環回路、71 入口側配管、72(72a,72b) 出口側配管、72c フランジ、73 開閉装置、80A,80B 開閉装置、81 取り外し配管、81a フランジ、82 Oリング、83 ストッパー、84 把持部、85 把持部、86 挿入口、87 ストッパー、88 把持部、K 給湯装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、冷媒によって水を加熱する第1の熱交換器の冷媒側伝熱管、減圧装置、及び蒸発器として作用する第2の熱交換器が配管接続された冷媒循環回路を有する給湯装置であって、
前記第1の熱交換器の水側伝熱管の入口側又は出口側の一方に設けられ、開いた状態では外部と連通する第1の開閉装置と、
前記第1の開閉装置を開いた状態で前記圧縮機を駆動し、前記冷媒側伝熱管に前記冷媒を流通させ、前記水側伝熱管の内部に滞留した水を排出する排水運転を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記第1の熱交換器の前記水側伝熱管の入口側又は出口側の他方には、開いた状態では外部と連通する第2の開閉装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記排水運転の際、100℃以上の冷媒が前記冷媒側伝熱管に流入するように、前記圧縮機の回転数及び前記減圧装置の開度を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記第1の熱交換器は、入口側から出口側にかけて高さが変化していき、入口側と出口側の途中で水平部分が形成されるように、とぐろ状に前記水側伝熱管が配置されており、
前記第1の開閉装置及び前記第2の開閉装置のうちの高い側に設けられた開閉装置は、前記水側伝熱管の最も高くなる箇所以上の高さとなる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の給湯装置。
【請求項5】
圧縮機、冷媒によって水を加熱する第1の熱交換器の冷媒側伝熱管、減圧装置、及び蒸発器として作用する第2の熱交換器が配管接続された冷媒循環回路と、
前記圧縮機の回転数及び前記減圧装置の開度を制御する制御装置と、
を有する給湯装置の排水方法であって、
前記第1の熱交換器の水側伝熱管の入口側又は出口側の一方に設けられた第1の開閉装置を開き、前記水側伝熱管と外部を連通させる第1の開口工程と、
前記第1の開口工程の後、前記圧縮機を駆動して前記冷媒側伝熱管に前記冷媒を流通させ、前記水側伝熱管の内部に滞留した水を排出する排水運転工程と、
を備えたことを特徴とする給湯装置の排水方法。
【請求項6】
前記第1の熱交換器の前記水側伝熱管の入口側又は出口側の他方には、開いた状態では外部と連通する第2の開閉装置が設けられ、
前記排水運転工程の前に、前記第2の開閉装置を開く第2の開口工程を備えたことを特徴とする請求項5に記載の給湯装置の排水方法。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記排水運転工程の際、100℃以上の冷媒が前記冷媒側伝熱管に流入するように、前記圧縮機の回転数及び前記減圧装置の開度を制御することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の給湯装置の排水方法。
【請求項8】
前記第1の熱交換器は、入口側から出口側にかけて高さが変化していき、入口側と出口側の途中で水平部分が形成されるように、とぐろ状に前記水側伝熱管が配置されており、
前記第1の開閉装置及び前記第2の開閉装置のうちの高い側に設けられた開閉装置は、前記水側伝熱管の最も高くなる箇所以上の高さとなる位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の給湯装置の排水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−174631(P2011−174631A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37327(P2010−37327)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)