説明

給湯装置

【課題】、加熱手段であるヒートポンプの作動を効率よく行うことで、よりランニングコストが低く、省エネを図ることができる給湯装置を提供する。
【解決手段】貯湯タンクと、給水路と、貯湯用循環流路と、給湯用循環流路と、複数の貯湯温度センサと、給水温度センサと、制御手段と、を備えた給湯装置において、制御手段は、保有熱量算出手段と、給湯負荷熱量算出手段と、給湯負荷熱量記憶手段と、給湯負荷熱量平均値算出手段と、必要貯湯熱量算出手段と、運転トリガー決定手段と、を有し、運転トリガー決定手段は、運転トリガーと貯湯タンクの保有熱量とに基づいて、加熱手段の作動の開始及び停止を制御することを特徴とする給湯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め加熱手段で加熱した湯を貯留可能とした貯湯タンクを備える給湯装置に関し、特に加熱手段の最適制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱手段としてヒートポンプを用いた給湯装置が多々提案されている。ヒートポンプを用いた貯湯式の給湯装置は、家庭用の小型のものが一般的であったが、近年では、大衆浴場や所謂スパ(温泉などを中心としたリラクゼーション施設)などの業務用にも採用されてきている。
【0003】
業務用の給湯では即時給湯が求められる。そのため、例えば、ヒートポンプと、このヒートポンプで加熱された温水を蓄える貯湯タンクと、この貯湯タンクと給湯部との間を循環する循環流路とを備える循環式の給湯装置が採用されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
特許文献1の給湯装置では、加熱手段としてヒートポンプを用いているため、通常の電気温水器に比べて約1/3のランニングコストで貯湯タンクに貯留する温水を加熱することができ、さらに、深夜電力を利用してヒートポンプを作動させているため、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−30642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成では、貯湯タンク内における給湯のための湯水の高温層の温度を常に一定に維持しているため、給湯状況に応じて常にヒートポンプを作動させなければならず、効率のよいヒートポンプの制御を行っているとはいえない。つまり、給湯状況によっては深夜電力以外によるヒートポンプの作動時間が長くなってしまい、必要以上に高温水を生成貯湯し、電気料金などのランニングコストが増加するおそれがあった。また、逆に、昼間の給湯負荷が多い場合に、沸き増し運転が追従できずに高温水の生成貯湯が十分に行えず湯切れを起すおそれもあった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、加熱手段であるヒートポンプの作動を効率よく行うことで、ランニングコストを低く抑え省エネを図るとともに、湯切れのおそれを低減できる給湯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)水を加熱して湯にする加熱手段と、前記加熱手段により得られた湯及び給水路から供給される水を貯留する貯湯タンクと、前記貯湯タンクに設けられ、当該貯湯タンクに貯留された湯の温度を計測する複数の貯湯温度センサと、前記給水路に設けられ、前記給水路から前記貯湯タンクに供給される水の温度を計測する給水温度センサと、前記加熱手段の動作を制御する制御手段と、を備えた給湯装置において、前記制御手段は、前記複数の貯湯温度センサ及び前記給水温度センサの計測値と、前記貯湯タンクの貯湯容量とに基づいて、所定時間単位で前記貯湯タンクの保有熱量を算出する保有熱量算出部と、前記保有熱量算出部により算出された現在の時刻から前記所定時間前の前記保有熱量に対して、前記保有熱量算出部により算出された現在の時刻の前記保有熱量の減算、及び前記所定時間における前記加熱手段による加熱熱量の加算を行い、前記所定時間単位の給湯負荷熱量を算出し、さらに、算出した前記所定時間単位の給湯負荷熱量から日毎の給湯負荷熱量を算出する給湯負荷熱量算出部と、前記給湯負荷熱量算出部により算出された前記所定時間単位の給湯負荷熱量、及び前記日毎の給湯負荷熱量を記憶する給湯負荷熱量記憶部と、前記給湯負荷熱量記憶部に記憶された前記所定時間単位の給湯負荷熱量及び前記日毎の給湯負荷熱量のデータから、所定期間のうち、前記日毎の給湯負荷熱量が所定値以下となる日のデータを除いて、前記所定期間における前記日毎の給湯負荷熱量の平均値、及び前記所定期間における前記所定時間で区切られる時間帯毎の給湯負荷熱量の平均値を算出する給湯負荷熱量平均値算出部と、前記給湯負荷熱量平均値算出部により算出された前記日毎の給湯負荷熱量の平均値、及び前記時間帯毎の給湯負荷熱量の平均値に基づいて、前記時間帯毎の必要貯湯熱量を算出する必要貯湯熱量算出部と、前記必要貯湯熱量算出部により算出された前記必要貯湯熱量に基づいて、前記加熱手段の作動の開始の契機となる運転開始トリガーの値を決定し、決定した運転開始トリガーの値に基づいて、前記加熱手段の停止の契機となる運転停止トリガーの値を決定する運転トリガー決定部と、前記複数の貯湯温度センサの計測値のうち規定値以上の測定値と前記給水温度センサの計測値との差、及び前記貯湯タンクの貯湯容量に基づいて、前記所定時間よりも短い特定時間単位で前記貯湯タンクの現在貯湯熱量を算出する現在貯湯熱量算出部と、を有し、前記運転トリガー決定部により決定された前記運転開始トリガーの値及び前記運転停止トリガーの値と、前記現在貯湯熱量算出部により算出された前記現在貯湯熱量とに基づいて、前記加熱手段の作動の開始及び停止を制御することを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)の給湯装置において、前記運転トリガー決定部は、前記所定期間における日毎の前記給水温度センサの計測値の平均値と、前記所定期間における現在の時刻に直近の一部の期間の前記給水温度センサの計測値の平均値とに基づいて補正係数を算出し、算出した前記補正係数を、前記必要貯湯熱量算出部により算出された前記必要貯湯熱量の値に乗算することで、前記運転開始トリガーの値を算出することを特徴とする。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の給湯装置において、前記現在貯湯熱量算出部は、前記複数の貯湯温度センサの計測値に規定値未満の計測値を検出した場合、当該規定値未満の計測値が保有する熱量は無効として除外し、前記貯湯タンクの現在貯湯熱量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、必要な給湯量に応じて加熱手段を効率よく制御することができるため、ランニングコストを低く抑えた給湯装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の給湯装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態の給湯装置の制御手段を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態の時刻別給湯負荷の測定データを示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の日毎の給湯負荷の平均データを示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の日毎の給湯負荷の平均データの数値を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の所定期間における所定時間単位の給湯負荷データを示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態の一日における貯湯タンクの保有熱量と加熱手段の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る給湯装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本実施形態における給湯装置は、例えば、ビルや工場、あるいは銭湯施設などでの給湯などに好適に使用できるものであるが、給湯が必要な場所であれば如何なる場所にも適用できる。
【0014】
図1は本発明の本実施形態に係る給湯装置を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、給湯装置は、竪型の貯湯タンク10と、水を加熱して湯にする加熱手段としてのヒートポンプ40とを備える。貯湯タンク10は、円筒状の本体10aと、本体10aの上側の部分を構成する天井部10bと、本体10aの下側の部分を構成する底部10cとを有する。なお、模式的に示した図1では省略したが、底部10cには複数の脚部が設けられ、貯湯タンク10は起立した状態で設けられる。
【0016】
貯湯タンク10には、当該貯湯タンク10に貯留された湯の温度を計測する複数の貯湯温度センサが設けられる。複数の貯湯温度センサは、貯湯タンク10に対して、貯湯タンク10の内容積である貯湯容量V[L:リットル]に応じて、上下方向の略全体にわたって略等間隔で配置される。
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、貯湯タンク10に対して、9個の貯湯温度センサT1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9が設けられている。つまり、本実施形態の場合、貯湯タンク10内の湯水について9箇所の水温が計測される。
【0018】
そして、詳細は後述するが、貯湯タンク10に設けられた貯湯温度センサT1〜T9の計測値、後述の給水温度センサT12の計測値及び貯湯容量Vに基づいて、貯湯タンク10の保有熱量が算出される。
【0019】
貯湯タンク10の底部10cには、給水路30が連結されている。給水路30は、水道水等の水を給水口31から供給する給水路である。この給水路30により、貯湯タンク10内に水が加圧供給される。給水路30により供給される水の圧力により、貯湯タンク10内は加圧状態に維持されている。また、給水路30には、貯湯タンク10内に供給される水の温度を計測する給水温度センサT12が設けられている。
【0020】
貯湯タンク10の底部10cには、取水管51の上流側の端部となる始端部が連結され取水管51の下流側の端部となる終端部は、ヒートポンプ40の入水口に連結されている。貯湯タンク10内の貯留水は、取水管51により取水されてヒートポンプ40に導かれ、ヒートポンプ40により加熱される。
【0021】
ヒートポンプ40の出水口には、注湯管52の上流側の端部となる始端部が連結されており、注湯管52の下流側の端部となる終端部は、貯湯タンク10の天井部10bに連結されている。注湯管52は、ヒートポンプ40により所定温度(例えば、90℃)に加熱された湯を貯湯タンク10へ注入する。つまり、ヒートポンプ40により加熱された水が、注湯管52により貯湯タンク10へ導かれ、貯湯タンク10内に注入される。このように、本実施形態の給湯装置においては、取水管51と注湯管52とにより、貯湯タンク10とヒートポンプ40とを連通連結した貯湯用循環流路50が形成されている。
【0022】
そして、例えば、夜間などの給湯量の少ない時間帯の深夜電力を利用して、貯湯タンク10内の湯水は、貯湯タンク10→取水管51→ヒートポンプ40→注湯管52→貯湯タンク10と循環しながら90℃程度までの高温湯として加熱されることになる。
【0023】
また、貯湯用循環流路50の取水管51には、循環流量計測器Mが設けられている。循環流量計測器Mは、ヒートポンプ40で加熱される湯水の流量、つまり貯湯用循環流路50を循環する流量を、例えば、1分単位や1時間単位で計測する。
【0024】
取水管51には、入水温度センサT11が設けられている。入水温度センサT11は、ヒートポンプ40で加熱される前の湯水の温度を計測する。本実施形態では、入水温度センサT11は、取水管51の終端側の近傍に設けられている。また、注湯管52には、出湯温度センサT10が設けられている。出湯温度センサT10は、ヒートポンプ40で加熱された後の湯水の温度を計測する。本実施形態では、出湯温度センサT10は、注湯管52の始端側の近傍に設けられている。
【0025】
これらの入水温度センサT11及び出湯温度センサT10の計測値と、上記循環流量計測器Mの計測値とにより、所定時間(例えば、1時間)あたりのヒートポンプ40の加熱熱量を算出することができる。
【0026】
貯湯タンク10には、給湯用循環流路60を構成する給湯管61が連結されている。給湯用循環流路60は、貯湯タンク10と出湯用端末63とを連通連結し、貯湯タンク10に貯留された湯を出湯用端末63から給湯可能とする。給湯管61は、貯湯タンク10内に貯えられた湯を使用場所へ供給する。給湯管61の上流側の端部となる始端部は、貯湯タンク10の天井部10bに連結されており、給湯管61の下流側の端部となる終端部は、貯湯タンク10の本体10aに連結されている。出湯用端末63は、例えば蛇口やシャワーヘッド等の各種の水栓装置であり、貯湯タンク10内の湯水の使用に際して用いられる。貯湯タンク10内の湯水は、給湯管61を介して、貯湯タンク10の内部圧力によって出湯用端末63から吐出される。
【0027】
給湯用循環流路60には、図示しない混合弁が設けられており、この混合弁を介して高温の湯と、冷水である給水口31からの水道水等とを混合することによって、給湯用循環流路60内を、例えば60〜70℃の温度範囲の湯で常時満たすようにしている。つまり、混合弁は、弁駆動によって、給湯用循環流路60内を循環する湯水の温度を制御可能としている。
【0028】
また、給湯用循環流路60には図示しない給湯用循環流路用ポンプを設けており、この給湯用循環流路用ポンプを駆動することで給湯用循環流路60内において湯水を循環させることができる。したがって、出湯用端末63からの要求に応じて即時給湯することが可能となっている。なお、これも図示しないが、出湯用端末63は、その内部の取水路中に水道水などの冷水を取り込むことのできる湯水混合機構を備えており、使用者は所望する温度の湯水をいつでも取水することができる。
【0029】
また、図1に示すように、本実施形態の給湯装置は、ヒートポンプ40の動作を制御するための制御部100を備える。この制御部100は、本実施形態における制御手段として機能するものであり、詳細は後述するが、ヒートポンプ40の作動及び停止を効率よく制御するためのものである。
【0030】
以下、図2〜7を参照して、本実施形態における制御部100の構成及び制御部100が有する各種機能部について説明する。なお、以下の説明では、制御部100により行われる制御における「所定時間」を1時間とし、「所定期間」を1カ月とする。ただし、後述するように、「所定時間」及び「所定期間」の長さはこれらの長さに限定されるものではない。
【0031】
図2は本実施形態に係る制御部100の構成を表すブロック図である。図3は本実施形態の時刻別給湯負荷の測定データの一例を示す説明図である。図4は本実施形態の日毎の給湯負荷の平均データの一例を示す説明図である。図5は本実施形態の日毎の給湯負荷の平均データの数値の一例を示す説明図である。図6は本実施形態の所定期間における所定時間単位の給湯負荷データの一例を示す説明図である。図7は本実施形態の一日における貯湯タンクの保有熱量と加熱手段の制御を説明する図である。
【0032】
図2に示すように、制御部100は、保有熱量算出部101、給湯負荷熱量算出部102、給湯負荷熱量記憶部103、給湯負荷熱量平均値算出部104、必要貯湯熱量算出部105、運転トリガー決定部106及び現在貯湯熱量算出部107等を有する。
【0033】
制御部100には、貯湯温度センサT1〜T9、出湯温度センサT10、入水温度センサT11、給水温度センサT12及び循環流量計測器Mからの情報が入力される。制御部100は、これらのセンサ等から入力された情報に基づいて、ヒートポンプ40の作動を制御する。
【0034】
保有熱量算出部101は、貯湯温度センサT1〜T9で計測した温度情報、給水温度センサT12で計測した温度情報及び貯湯タンク10内の貯湯容量V[L]に基づいて、貯湯タンク10内の保有熱量を算出する。具体的には、貯湯タンク10の保有熱量X[MJ:メガジュール]は、次式(1)により算出される。
X={Σ(ti−tk)/9}×V×4.186÷1000 (i=1、2、・・・9) ・・・(1)
ここで、ti(i=1、2、・・・9)は、貯湯温度センサT1〜T9の各センサにより計測された貯湯タンク10内の湯水の温度[℃]、tkは、給水温度センサT12で計測された給水路30内の水の温度[℃]、乗算値4.186、除算値1000は、[cal]の単位を[MJ]に換算するための数値である。
【0035】
このように、貯湯タンク10の保有熱量は、9個の貯湯温度センサ(T1〜T9)の各センサによる計測値と給水温度センサT12の計測値との差の平均値と、貯湯タンク10の貯湯容積Vとの積により算出される。すなわち、9個の貯湯温度センサT1〜T9の各々により取得される温度情報としての計測値[℃]と給水温度センサT12により取得される温度情報としての計測値[℃]との温度差を求め、これらの温度差の平均値を求め、この温度差の平均値と貯湯タンク10内の貯湯容量Vとを乗算することにより、貯湯タンク10内の保有熱量を算出することができる。
【0036】
保有熱量算出部101で算出される貯湯タンク10内の保有熱量は、所定時間(1時間)単位で算出される。なお、貯湯タンク10内の保有熱量の算出のタイミングは、1時間単位の毎正時である。
【0037】
このように、制御部100は、保有熱量算出部101により、保有熱量を算出する手段として機能する。
【0038】
給湯負荷熱量算出部102は、保有熱量算出部101で算出される貯湯タンク10の保有熱量について、所定時間(1時間)での変化量と、1時間単位におけるヒートポンプ40による加熱熱量とに基づいて、1時間単位の給湯負荷熱量を算出する。ここで、1時間単位におけるヒートポンプ40による加熱熱量Y[MJ]は、1分ごとの加熱熱量の1時間の累積値であり、次式(2)により算出される。
Y=Σ{M1×(t10−t11)}×4.186÷1000 ・・・(2)
ここで、M1は、循環流量計測器Mにより計測される所定時間(1分)ごとの貯湯用循環流路50の循環流量[L/min]、t10は、出湯温度センサT10により計測された注湯管52内の湯の温度[℃]、t11は、入水温度センサT11により計測された取水管51内の水の温度[℃]、乗算値4.186、除算値1000は、上記式(1)と同様に単位換算の数値である。
【0039】
給湯負荷熱量算出部102による1時間単位の給湯負荷熱量の算出に際しては、まず、貯湯タンク10の1時間毎の保有熱量の差を求める。そして、上記式(2)に基づき、入水温度センサT11及び出湯温度センサT10の計測値と循環流量計測器Mの計測値とにより算出された1時間単位のヒートポンプ40の加熱熱量を、上記貯湯タンク10の1時間毎の保有熱量の差に加算することにより、所定時間(1時間)単位の給湯負荷熱量が算出される。
【0040】
また、給湯負荷熱量算出部102は、上記のとおり算出した所定時間(1時間)単位の給湯負荷熱量から、日毎の給湯負荷熱量を算出する。具体的には、給湯負荷熱量算出部102は、所定時間(1時間)単位の給湯負荷熱量を1日分、つまり24時間分加算することで、日毎の給湯負荷熱量を算出する。
【0041】
このように、制御部100の給湯負荷熱量算出部102は、所定時間単位の給湯負荷熱量、及び日毎の給湯負荷熱量を算出する手段として機能する。
【0042】
給湯負荷熱量記憶部103は、給湯負荷熱量算出部102の算出結果である日毎の1時間単位の給湯負荷熱量を記憶する。図3に、給湯負荷熱量の値の一例を棒グラフで示す。図3に示す例では、12/01(火)〜12/08(火)の期間における1時間単位の給湯負荷熱量を示す。
【0043】
給湯負荷熱量記憶部103は、図3に示すように、各日の各時間における給湯負荷熱量を、1時間単位の給湯負荷熱量として記憶する。図3に示す例では、給湯負荷熱量記憶部103は、12/01(火)〜12/08(火)の各日について、1時間単位の給湯負荷熱量を24時間分加算したものを、日毎の給湯負荷熱量として記憶する。
【0044】
このように、制御部100の給湯負荷熱量記憶部103は、1時間単位の給湯負荷熱量及び日毎の給湯負荷熱量を記憶する手段として機能する。
【0045】
給湯負荷熱量平均値算出部104は、給湯負荷熱量記憶部103により記憶された、1時間単位の給湯負荷熱量、及び日毎の給湯負荷熱量から、所定期間(1カ月)のうち、日毎の給湯負荷熱量が所定値以下となる日のデータを除いて、1カ月における日毎の給湯負荷熱量の平均値(以下「日平均値」という。)、及び1カ月における1時間で区切られる時間帯毎の平均値(以下「時間帯平均値」という。)を算出する。ここで、給湯負荷熱量平均値算出部104による算出において用いられる所定値は、特に限定されるものではないが、所定値としては、例えば、所定期間(1カ月)の日毎の給湯負荷熱量の全データの平均値や、この全データの平均値から全データの標準偏差を引いた値等が用いられる。以下の説明では、給湯負荷熱量平均値算出部104による算出処理で用いられる所定値は、所定期間(1カ月)の日毎の給湯負荷熱量の全データの平均値から全データの標準偏差を引いた値とする。
【0046】
図4に、日毎の給湯負荷熱量のデータの一例として、所定期間である12月1日〜12月31日の1カ月の日毎の給湯負荷熱量を示す。図4において一点鎖線で示すD2の値は、1カ月の日毎の給湯負荷熱量の全データの平均値である。具体的には、本実施形態では、値D2は、図5に示す表において「全データ」の「期間平均」の値である1,978[MJ]である。
【0047】
また、図4において点線で示すD3の値は、1カ月の日毎の給湯負荷熱量の全データの平均値(値D2)から、1カ月の日毎の給湯負荷熱量の全データの標準偏差1σの値を引いた値である。具体的には、本実施形態では、図5に示す表において「全データ」の「期間平均」の値(値D2)である1,978[MJ]から、「全データ」の「標準偏差」の値である862.8[MJ]を引いた値、つまり1,978−862.8=1,115.2である。
【0048】
図5に示す表において、「休日データを除外」の欄の各値は、図4に示す1カ月の日毎の給湯負荷熱量の全データから、本実施形態に係る給湯装置を設置してある施設(例えば、工場など)の休日のデータを除外した場合の値である。休日のデータとしての休日の給湯負荷熱量は、他の日の給湯負荷熱量に比べて明らかに少なくなる。このため、図5に示す表に置いて、「休日データを除外」の「期間平均」の値は、「全データ」の「期間平均」の値(1,978)よりも大きな値である2,136[MJ]となっている。休日のデータのように明らかに小さなデータは、制御部100による学習演算精度を低下させ、湯切れの原因となる。
【0049】
そこで、本実施形態では、給湯負荷熱量平均値算出部104による所定期間(1カ月)における日毎の給湯負荷熱量の平均値等の算出において、1カ月のうち、日毎の給湯負荷熱量の値が上述したようなD3の値以下となる日のデータを除外する。つまり、本実施形態では、給湯負荷熱量平均値算出部104による日毎の給湯負荷熱量の平均値の算出で用いられる「所定値」として、上述したような1カ月の日毎の給湯負荷熱量の全データの平均値(値D2)から、1カ月の日毎の給湯負荷熱量の全データの標準偏差1σの値を引いた値(値D3)が用いられる。
【0050】
本実施形態では、日平均値として、図4において実線で示す値D1が算出される。具体的には、本実施形態では、値D1は、図5に示す表において「所定値(D3)以下のデータを除外」の「期間平均」の値である2,101[MJ]である。
【0051】
図6に、1カ月のうち、日毎の給湯負荷熱量が値D3以下となる日を除外したデータの一例を示す。図6に示す本実施形態のデータでは、所定期間である12月1日〜12月31日の1カ月の期間のうち、日毎の給湯負荷熱量が値D3以下となる12/06(日)、12/13(日)、12/20(日)が除かれている。また、図6に示す12/01(火)「06時」の給湯負荷熱量33[MJ]は、05時〜06時の1時間における給湯負荷熱量である。つまり、図6に示す毎正時毎の給湯負荷熱量は、毎正時に至る1時間の給湯負荷熱量が記憶されている。
【0052】
つまり、図6に示すように、1時間単位の時間帯として、6時台、7時台、8時台・・・のような各時間帯が区切られ、各時間帯についての給湯負荷熱量の1カ月平均が算出される。図6に示す例では、6時台の1カ月平均は、48[MJ]であり、7時台の1カ月平均は、120[MJ]であり、8時台の1カ月平均は、152[MJ]である。このような値が、時間帯平均として算出される。本実施形態の場合、給湯負荷熱量算出部102によって算出された1時間単位の給湯負荷熱量の値が、時間帯平均の算出に際して各時間帯の給湯負荷熱量として用いられる。
【0053】
本実施形態においては、上述したように、所定値以下のデータを除くことで、休日や明らかに給湯装置の稼動が少ないデータが平均値の算出対象から除かれるので、給湯負荷熱量の平均値を引き上げて、貯湯タンク10における給湯のための湯切れを防ぐことができる。
【0054】
上述してきたように、制御部100の給湯負荷熱量平均値算出部104は、1カ月のうち日毎の給湯負荷熱量が所定値以下の日のデータを除いて日平均値及び時間帯平均値を算出する手段として機能する。
【0055】
必要貯湯熱量算出部105は、給湯負荷熱量平均値算出部104により算出された給湯負荷熱量についての日平均値及び時間帯平均値を用いて、時間帯毎の必要貯湯熱量を算出する。必要貯湯熱量とは、給湯負荷熱量と同じ[MJ]を単位とする量であり、各時間帯で確保されるべき熱量である。
【0056】
図7を用いて具体的に説明する。上記のとおり図7の表の「給湯負荷[MJ](時間平均)」の欄における各時刻の値(45、46、・・・42)は、給湯負荷熱量平均値算出部104により算出された時間帯平均値であり、同欄における「日計」の値(2,101)は、給湯負荷熱量平均値算出部104により算出された日平均値である。
【0057】
図7に示す表では、「時刻」23時を始点側の時間帯とし、23時から22時までを1日の単位としている。なお、図7に示す表では、1〜8時、及び19〜21時までの値の記載を省略している。また、図7に示す「23時」における給湯負荷(時間帯平均)「45」は、22時〜23時の1時間における給湯負荷の平均値である。つまり、上述した図6と同様に、図7に示す毎正時毎の給湯負荷は、毎正時に至る1時間に要した給湯負荷の時間帯平均値が記憶されている。
【0058】
時間帯毎の必要貯湯熱量の算出に際しては、図7に示すように、まず、「逆算給湯負荷[MJ]」が算出される。逆算給湯負荷は、各時刻(時間帯)について算出される値である。本実施形態の場合、「時刻」について開始の時間帯である23時(23時台)の時間帯の逆算給湯負荷には、給湯負荷熱量についての日平均値である2,101が対応する。つまり、1日の単位における開始時刻である22時で必要とされる熱量の値は、時間帯平均の1日分のトータルの値である日平均値(2,101)が対応する。
【0059】
次に、24時の逆算給湯負荷は、24時に連続する直前の時間帯である23時の逆算給湯負荷から、23時の時間帯平均値を引いた値となる。つまり、図7に示す例では、24時の逆算給湯負荷は、23時の逆算給湯負荷である2101[MJ]から、23時の時間帯平均値である45[MJ]を引いた値である2056[MJ]となる。同様にして、10時の逆算給湯負荷は、9時の逆算給湯負荷である1632[MJ]から、9時の時間帯平均値である266[MJ]を引いた値である1366[MJ]となる。このように、1時間単位で区切られた各時間帯の「逆算給湯負荷[MJ]」は、その時間帯(例えば24時)の直前の(1時間前の)時間帯(例えば23時)の逆算給湯負荷の値から、その直前の(1時間前の)時間帯(例えば23時)の時間帯平均値を引いた値となる。
【0060】
そして、各時間帯について算出された逆算給湯負荷から、各時間帯についての必要貯湯熱量が算出される。本実施形態では、23時の逆算給湯負荷の値に、1.2を乗算した値が、必要貯湯熱量として算出されている。したがって、本実施形態の場合、図7に示すように、23時の「必要貯湯熱量[MJ]」は、23時の「逆算給湯負荷[MJ]」の値2101に1.2を乗算した値2521となる。以下、各時間帯の必要貯湯熱量は、上述した逆算給湯負荷の値と同様に、その時間帯の直前(1時間前)の時間帯の必要貯湯熱量の値から、その直前の時間帯の給湯負荷(時間帯平均値)の値を減算して算出される。
【0061】
このように、給湯負荷熱量についての日平均値及び時間帯平均値に基づいて、逆算給湯負荷を算出し、その逆算給湯負荷から必要貯湯熱量を算出することで、必要貯湯熱量を、現在の貯湯タンク10の保有熱量(図7中では「現在貯湯熱量」)に対して、ある程度余裕のある値とすることができる。これにより、例えば、急激な給湯量の変化に対しても、湯切れなどを起こす可能性の少ない給湯装置とすることができる。
【0062】
このような観点から、必要貯湯熱量の算出に際して逆算給湯負荷に乗算する値は、本実施形態のような1.2という数値に限定されず、例えば1.1〜1.5の範囲内における所定の数値であってもよい。また、必要貯湯熱量の算出においては、逆算給湯負荷の値に所定の値を加算したものを必要貯湯熱量として算出してもよい。つまり、必要貯湯熱量の値としては、逆算給湯負荷の値に所定の値を乗算したり加算したりすることで、逆算給湯負荷の値よりもある程度大きな値が算出されればよい。
【0063】
上述してきたように、制御部100の必要貯湯熱量算出部105は、給湯負荷熱量についての日平均値及び時間帯平均値に基づいて、時間帯毎の必要貯湯熱量を算出する手段として機能する。
【0064】
運転トリガー決定部106は、必要貯湯熱量算出部105により算出された時間帯毎の必要貯湯熱量に基づいて、ヒートポンプ40の作動の開始及び停止の契機となる運転トリガーの値(運転開始トリガーの値及び運転停止トリガーの値)を決定する。これらの運転開始トリガーの値及び運転停止トリガーの値は、現在貯湯熱量[MJ]に対する比較対象としての値であり、現在貯湯熱量[MJ]に応じてヒートポンプ40のON/OFFを切り換えるための値である。具体的には、制御部100は、現在貯湯熱量[MJ]が運転開始トリガーの値よりも小さくなると、ヒートポンプ40の作動を開始させ、現在貯湯熱量[MJ]が運転停止トリガーの値よりも大きくなると、ヒートポンプ40の作動を停止させる。
【0065】
図7に示す本実施形態の場合、23時の運転開始トリガーの値は、23時の必要貯湯熱量の値2521[MJ]に対して後述の補正係数Sを乗算した値が運転開始トリガーの値として決定される。
【0066】
本実施形態では、運転トリガー決定部106は、時間帯毎の必要貯湯熱量に基づく運転開始トリガーの値の算出に際し、補正係数Sという値を用いている。補正係数Sは、過去1カ月間の給水温度の変動に基づいて算出される。補正係数Sは、具体的には次のようにして算出される。
【0067】
つまり、補正係数Sは、図6に示す本実施形態の場合、1カ月の「給水温度[℃]」の平均値(11.4℃)と、直近5日間(図6中では12/27〜12/31)の「給水温度[℃]」の平均値(9.6℃)とが用いられて算出される。なお、図6に示す日毎の給水温度[℃]は、日毎の給水温度センサT12の計測値の最低値が記憶される。
【0068】
補正係数Sは、次式(3)により算出される。
補正係数S=(K―Tb)÷(K−Ta) ・・・(3)
ここで、Taは、給水温度センサT12の計測値、つまり給水温度の直近1カ月の平均値(℃)であり、本実施形態の場合11.4℃である。また、Tbは、給水温度の直近5日間の平均値であり、本実施形態の場合9.6℃である。また、Kは、図1に示す出湯用端末63で給湯される湯の温度であり、本実施形態の給湯装置における給湯末端で使用される湯の温度45℃が所定の値として用いられる。そして、図7に示すように、上記式(3)により、補正係数Sとして、「1.04」という値が算出される。
【0069】
図7に示す本実施形態の場合、例えば23時については、必要貯湯熱量の値2521[MJ]に、補正係数Sとしての1.04を乗算した値2622[MJ]が、運転開始トリガーの値として決定される。
【0070】
なお、本実施形態では、運転トリガー決定部106による補正係数Sの算出の過程において、給水温度の1カ月の平均値及び直近5日間の平均値の算出に際し、給湯負荷熱量平均値算出部104による給湯負荷熱量についての日平均値の算出の場合と同様に、所定期間(1カ月)のうち、日毎の給湯負荷熱量が所定値以下となる日のデータを除いたデータ(図6参照)を用いているが、これに限定されない。つまり、補正係数Sの算出の過程で行われる給水温度の平均値の算出には、給水温度のデータについて、日毎の給湯負荷熱量が所定値以下となる日のデータが含まれてもよい。
【0071】
このように給水口31から供給される水道水等の水の温度の変化により補正係数Sを決定することで、例えば、秋から冬への季節の変わり目などで給水温度が低くなる場合は、ヒートポンプ40の作動の開始の契機となる運転開始トリガーの値が高く設定され、ヒートポンプ40を早めに作動させることができる。一方、春から夏への季節の変わり目などで給水温度が高くなる場合は、運転開始トリガーの値が低く設定され、ヒートポンプ40の作動を遅らせることができる。つまり、季節の変化に応じて、効率のよいヒートポンプ40の作動の制御を行うことができる。
【0072】
そして、運転トリガー決定部106は、運転開始トリガーの値に、1.1を乗算した値が、運転停止トリガーの値として算出する。したがって、本実施形態の場合、図7に示すように、例えば23時の運転停止トリガーの値は、運転開始トリガーの値2622[MJ]に値1.1を乗算した値2884[MJ]となる。このようにして算出される値が、運転停止トリガーの値として決定される。このように、運転停止トリガーの値を運転開始トリガーの値に対して所定割合で増加させることで、ヒートポンプ40に対して、頻繁に作動の開始及び停止が繰り返されることを防ぐことができる。
【0073】
このような観点から、運転停止トリガーの値の算出に際して運転開始トリガーの値に乗算する値は、本実施形態のような1.1という数値に限定されず、例えば1.1〜1.5の範囲内における所定の数値であってもよい。また、運転停止トリガーの値の算出においては、運転開始トリガーの値に所定の値を加算したものを運転停止トリガーの値として算出してもよい。つまり、運転停止トリガーの値としては、運転開始トリガーの値に所定の値を乗算したり加算したりすることで、運転開始トリガーの値よりもある程度大きな値が算出されればよい。
【0074】
上述したように、制御部100の運転トリガー決定部106は、必要貯湯熱量に基づいて運転開始トリガーの値を決定し、決定した運転開始トリガーの値に基づいて運転停止トリガーの値を決定する手段として機能する。
【0075】
現在貯湯熱量算出部107は、特定時間単位で現在貯湯熱量[MJ]を算出する。ここで、現在貯湯熱量[MJ]の値は、上述したように運転開始トリガーの値及び運転停止トリガーの値と比較され、ヒートポンプ40のON/OFFを切り換える値となる。また、「特定時間」とは、所定時間(1時間)よりも短い時間であり、本実施形態では、特定時間を1分間とする。
【0076】
このとき、現在貯湯熱量算出部107は、貯湯温度センサT1〜T9の各々の計測値が規定値(例えば、45℃)以上の場合を条件として、貯湯温度センサT1〜T9の各々の計測値と給水温度センサT12の計測値との温度差を求め、これに基づいて貯湯タンク10内の現在貯湯熱量を算出する。これは、貯湯温度センサT1〜T9の計測値が規定値(例えば、45℃)より低い場合は、その層の湯水は給湯に使用できないため、貯湯温度センサT1〜T9の計測値が規定値未満の湯水の層が保有する熱量は無効として、貯湯タンク10内の現在貯湯熱量から除外するためである。
【0077】
具体的には、現在貯湯熱量は、貯湯タンク10の保有熱量Xを算出するための上記式(1)にならって算出される。つまり、次式(4)により、現在貯湯熱量Zが算出される。
Z={Σ(ti−tk)/9}×V×4.186÷1000 (i=1、2、・・・9) ・・・(4)
【0078】
但し、上記式(4)においては、現在貯湯熱量は、貯湯温度センサT1〜T9の各々の計測値であるtiが規定値(例えば、45℃)未満の場合は、ti=tkとして算出される。このように、現在貯湯熱量算出部107により算出される現在貯湯熱量から、給湯に適さない規定値(例えば、45℃)未満の温度層の熱量を除外することで、現実的に給湯に適した貯湯タンク10の現在貯湯熱量を算出することができる。
【0079】
本実施形態の場合、図7に示すように、例えば23時の現在貯湯熱量の値は、1200[MJ]である。図7に示す各時刻(時間帯)の現在貯湯熱量の値は、例えば、各時刻(時間帯)において特定時間毎に算出された現在貯湯熱量の値の所定時間における最終値である。
【0080】
このように、現在貯湯熱量算出部107による現在貯湯熱量[MJ]の算出を所定時間(1時間)よりも短い特定時間(1分間)間隔で行うことにより、例えば、本実施形態における給湯装置において、短時間で急激な給湯が行われ現在貯湯熱量が不足した場合でも、速やかにヒートポンプ40の作動の開始及び停止を行うことができるので、必要以上にヒートポンプ40を作動させることがなく省エネを図ることができる。
【0081】
上述したように、制御部100の現在貯湯熱量算出部107は、貯湯タンク10の現在貯湯熱量を算出する手段として機能する。
【0082】
そして、制御部100は、図7に示す「運転開始トリガー[MJ]」の値と「現在貯湯熱量[MJ]」の値とを比較して、「現在貯湯熱量[MJ]」の値が「運転開始トリガー[MJ]」の値よりも低い場合に、ヒートポンプ40の作動を開始させる。そして、「現在貯湯熱量[MJ]」の値が「運転停止トリガー[MJ]」の値よりも高くなった場合に、ヒートポンプ40の作動を停止させる。
【0083】
具体的には、図7中においては、「23時」及び「24時」の時点では、「現在貯湯熱量[MJ]」の値が「運転開始トリガー[MJ]」の値よりも低いので、ヒートポンプ40を作動させて、貯湯タンク10の内部に貯留された湯水が加熱される。この「23時」及び「24時」の時点は、給湯装置の一日の稼動のうちの深夜などの給湯量が極端に少ない時間帯である。そして、本実施形態においては、この深夜の時間帯を利用して、安価な深夜電力によって貯湯タンク10内の湯水を翌日に必要な分の「現在貯湯熱量[MJ]」に達するまで加熱するようにしている。
【0084】
また、上述した深夜の時間帯以外にも、図7に示すように、「14時」の時点で「現在貯湯熱量[MJ]」の値が「運転開始トリガー[MJ]」の値よりも低くなる場合がある。図7に示す「給湯負荷(時間帯平均)[MJ]」の値は、12時の時点では「62[MJ]」であるのに対し、実際には、「2100(11時の時点の現在貯湯熱量)−1600(12時の時点の現在貯湯熱量)=500[MJ]」である。さらに、14時の時点では127[MJ]であるのに対し、実際には、「1400(13時の時点の現在貯湯熱量)−1100(14時の時点の現在貯湯熱量)=300[MJ]」である。つまり、予定された「給湯負荷(時間帯平均)[MJ]」の値よりも実際の「給湯負荷[MJ]」が極端に大きくなるような、予定された給湯装置の稼動よりも多くの給湯が行われた場合は、当然のことながらそれ以降の必要な現在貯湯熱量が少なくなる。このため、貯湯タンク10内の湯水を加熱して必要な現在貯湯熱量を確保するために、OFFの状態のヒートポンプ40を作動させる。
「14時」に作動がONされたヒートポンプ40は、「現在貯湯熱量[MJ]」の値が「運転停止トリガー[MJ]」の値を上回ることで、OFFとなる。したがって、図7に示す例では、ONの状態のヒートポンプ40は、「現在貯湯熱量[MJ]」の値が「運転停止トリガー[MJ]」の値よりも高くなる「17時」にOFFとなり、ヒートポンプ40の作動が停止する。
【0085】
本実施形態では、上述した保有熱量算出部101は、所定時間単位として1時間単位で貯湯タンク10内の保有熱量を算出しているが、所定時間は1時間に限定されるものではなく、例えば、数10分から数時間の範囲で適宜設定される。つまり、給湯装置の設置状況及び使用状況に応じた最適な所定時間が設定されればよい。
【0086】
また、上述した給湯負荷熱量平均値算出部104は、所定期間として1カ月における給湯負荷熱量の平均値を日毎に算出しているが、所定期間は1カ月に限定されず、例えば、数日から数カ月の範囲で適宜設定される。また、上述した現在貯湯熱量算出部107は、特定時間単位として1分単位で現在貯湯熱量を算出しているが、特定時間は1分に限定されず、例えば、5分や10分でも構わない。これら所定期間や特定時間も、上述した所定時間と同様に給湯装置の設置状況及び使用状況に応じた最適な所定期間及び特定時間が設定されればよい。
【0087】
上述してきた実施形態によれば、以下の給湯装置が実現できる。
【0088】
(1)水を加熱して湯にするヒートポンプ40(加熱手段)と、ヒートポンプ40により得られた湯及び給水路30から供給される水を貯留する貯湯タンク10と、貯湯タンク10に設けられ、貯湯タンク10に貯留された湯の温度を計測する複数の貯湯温度センサT1〜T9と、給水路30に設けられ、給水路30から貯湯タンク10に供給される水の温度を計測する給水温度センサT12と、ヒートポンプ40の動作を制御する制御部100(制御手段)と、を備えた給湯装置において、制御部100は、複数の貯湯温度センサT1〜T9及び給水温度センサT12の計測値と、貯湯タンク10の貯湯容量Vとに基づいて、所定時間(例えば、1時間)単位で貯湯タンク10の保有熱量を算出する保有熱量算出部101と、保有熱量算出部101により算出された現在の時刻から前記所定時間前の保有熱量に対して、保有熱量算出部101により算出された現在の時刻の前記保有熱量の減算、及び前記所定時間におけるヒートポンプ40による加熱熱量の加算を行い、前記所定時間単位の給湯負荷熱量を算出し、さらに、算出した前記所定時間単位の給湯負荷熱量から日毎の給湯負荷熱量を算出する給湯負荷熱量算出部102と、給湯負荷熱量算出部102により算出された前記所定時間単位の給湯負荷熱量、及び前記日毎の給湯負荷熱量を記憶する給湯負荷熱量記憶部103と、給湯負荷熱量記憶部103に記憶された前記所定時間単位の給湯負荷熱量及び前記日毎の給湯負荷熱量のデータから、所定期間(例えば、1ヶ月)のうち、前記日毎の給湯負荷熱量が所定値以下となる日のデータを除いて、前記所定期間における前記日毎の給湯負荷熱量の平均値、及び前記所定期間における前記所定時間で区切られる時間帯毎の給湯負荷熱量の平均値を算出する給湯負荷熱量平均値算出部104と、給湯負荷熱量平均値算出部104により算出された前記日毎の給湯負荷熱量の平均値、及び前記時間帯毎の給湯負荷熱量の平均値に基づいて、前記時間帯毎の必要貯湯熱量を算出する必要貯湯熱量算出部105と、必要貯湯熱量算出部105により算出された前記必要貯湯熱量に基づいて、ヒートポンプ40の作動の開始の契機となる運転開始トリガーの値を決定し、決定した運転開始トリガーの値に基づいて、ヒートポンプ40の停止の契機となる運転停止トリガーの値を決定する運転トリガー決定部106と、複数の貯湯温度センサT1〜T9の計測値のうち規定値(例えば、45℃)以上の測定値と給水温度センサT12の計測値との差、及び貯湯タンク10の貯湯容量Vに基づいて、前記所定時間よりも短い特定時間(例えば、1分)単位で貯湯タンク10の現在貯湯熱量を算出する現在貯湯熱量算出部107と、を有し、運転トリガー決定部106により決定された前記運転開始トリガーの値及び前記運転停止トリガーの値と、現在貯湯熱量算出部107により算出された前記現在貯湯熱量とに基づいて、ヒートポンプ40の作動の開始及び停止を制御する。
【0089】
かかる構成の給湯装置によれば、必要な給湯量に応じて加熱手段であるヒートポンプ40を効率よく制御することができるため、ランニングコストを低く抑えた給湯装置とすることができる。また、ヒートポンプ40の作動を開始させた後は、給湯負荷熱量の変化の学習能力のある給湯装置とすることができる。
【0090】
(2)運転トリガー決定部106は、所定期間(例えば、1ヶ月)における日毎の給水温度センサT12の計測値の平均値と、所定期間に直近の一部の期間(例えば、5日間)の給水温度センサT12の計測値の平均値とに基づいて補正係数Sを算出し、算出した補正係数Sを、必要貯湯熱量算出部105により算出された必要貯湯熱量の値に乗算することで、前記運転開始トリガーの値を算出する。
【0091】
かかる構成により、補正係数Sを用いることで季節による給水温度変化などによる給湯負荷熱量の変化に追従して、ヒートポンプ40を効率よく制御することができる。さらに、運転停止トリガーは、運転開始トリガー[MJ]に値1.1を乗算して算出される。このように、運転停止トリガーの値を運転開始トリガーの値に対して所定割合で増加させることで、ヒートポンプ40に対して、頻繁に作動の開始及び停止が繰り返されることを防ぐことができ、ヒートポンプ40への負荷の少ない給湯装置とすることができる。
【0092】
(3)現在貯湯熱量算出部107は、複数の貯湯温度センサT1〜T9の計測値に規定値(例えば、45℃)未満の計測値を検出した場合、当該規定値未満の計測値が保有する熱量は無効として除外し、貯湯タンク10の現在貯湯熱量を算出する。
【0093】
かかる構成により、現在貯湯熱量算出部107により算出される現在貯湯熱量には、給湯に適さない規定値(例えば、45℃)未満の温度層の熱量は含まれないため、現実的に給湯可能な貯湯タンク10の現在貯湯熱量を算出することができ、湯切れなどを起す可能性の少ない給湯装置とすることができる。
【0094】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
10 貯湯タンク
30 給水路
40 ヒートポンプ
50 貯湯用循環流路
60 給湯用循環流路
100 制御部
101 保有熱量算出部
102 給湯負荷熱量算出部
103 給湯負荷熱量記憶部
104 給湯負荷熱量平均値算出部
105 必要貯湯熱量算出部
106 運転トリガー決定部
107 現在貯湯熱量算出部
M 循環流路計測器
T1 貯湯温度センサ
T10 出湯温度センサ
T11 入水温度センサ
T12 給水温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して湯にする加熱手段と、
前記加熱手段により得られた湯及び給水路から供給される水を貯留する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに設けられ、当該貯湯タンクに貯留された湯の温度を計測する複数の貯湯温度センサと、
前記給水路に設けられ、前記給水路から前記貯湯タンクに供給される水の温度を計測する給水温度センサと、
前記加熱手段の動作を制御する制御手段と、を備えた給湯装置において、
前記制御手段は、
前記複数の貯湯温度センサ及び前記給水温度センサの計測値と、前記貯湯タンクの貯湯容量とに基づいて、所定時間単位で前記貯湯タンクの保有熱量を算出する保有熱量算出部と、
前記保有熱量算出部により算出された現在の時刻から前記所定時間前の前記保有熱量に対して、前記保有熱量算出部により算出された現在の時刻の前記保有熱量の減算、及び前記所定時間における前記加熱手段による加熱熱量の加算を行い、前記所定時間単位の給湯負荷熱量を算出し、さらに、算出した前記所定時間単位の給湯負荷熱量から日毎の給湯負荷熱量を算出する給湯負荷熱量算出部と、
前記給湯負荷熱量算出部により算出された前記所定時間単位の給湯負荷熱量、及び前記日毎の給湯負荷熱量を記憶する給湯負荷熱量記憶部と、
前記給湯負荷熱量記憶部に記憶された前記所定時間単位の給湯負荷熱量及び前記日毎の給湯負荷熱量のデータから、所定期間のうち、前記日毎の給湯負荷熱量が所定値以下となる日のデータを除いて、前記所定期間における前記日毎の給湯負荷熱量の平均値、及び前記所定期間における前記所定時間で区切られる時間帯毎の給湯負荷熱量の平均値を算出する給湯負荷熱量平均値算出部と、
前記給湯負荷熱量平均値算出部により算出された前記日毎の給湯負荷熱量の平均値、及び前記時間帯毎の給湯負荷熱量の平均値に基づいて、前記時間帯毎の必要貯湯熱量を算出する必要貯湯熱量算出部と、
前記必要貯湯熱量算出部により算出された前記必要貯湯熱量に基づいて、前記加熱手段の作動の開始の契機となる運転開始トリガーの値を決定し、決定した運転開始トリガーの値に基づいて、前記加熱手段の停止の契機となる運転停止トリガーの値を決定する運転トリガー決定部と、
前記複数の貯湯温度センサの計測値のうち規定値以上の測定値と前記給水温度センサの計測値との差、及び前記貯湯タンクの貯湯容量に基づいて、前記所定時間よりも短い特定時間単位で前記貯湯タンクの現在貯湯熱量を算出する現在貯湯熱量算出部と、を有し、
前記運転トリガー決定部により決定された前記運転開始トリガーの値及び前記運転停止トリガーの値と、前記現在貯湯熱量算出部により算出された前記現在貯湯熱量とに基づいて、前記加熱手段の作動の開始及び停止を制御することを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記運転トリガー決定部は、
前記所定期間における日毎の前記給水温度センサの計測値の平均値と、前記所定期間に直近の一部の期間の前記給水温度センサの計測値の平均値とに基づいて補正係数を算出し、
算出した前記補正係数を、前記必要貯湯熱量算出部により算出された前記必要貯湯熱量の値に乗算することで、前記運転開始トリガーの値を算出することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記現在貯湯熱量算出部は、前記複数の貯湯温度センサの計測値に規定値未満の計測値を検出した場合、当該規定値未満の計測値が保有する熱量は無効として除外し、前記貯湯タンクの現在貯湯熱量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83378(P2013−83378A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222036(P2011−222036)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)