説明

給紙装置及び画像形成装置

【課題】吸引ベルトを用いた給紙方式でもベルトの磨耗や用紙へ与えるダメージを軽減する。
【解決手段】吸引ベルト2によって用紙を吸着する用紙吸着部を有し、用紙を一枚ずつ用紙吸着部に吸着して搬送するエアー吸引式の給紙装置であって、積載された複数枚の用紙を載置可能な略水平な面を有し、鉛直方向に昇降する底板6を含む給紙トレイと、前記吸引ベルト2の後段で用紙を搬送する搬送ローラ8と、を備え、前記吸引ベルト2の摩擦力が、用紙との相対速度の状態に応じて変化する。摩擦力は、吸引ベルト2が用紙よりも相対的に速い速度で移動するときには大きく、用紙が前引ベルトよりも速い速度で移動するときには小さくなる。摩擦力は、片方に急な角度を持つ三角状のエッジ40をベルト表面に連続的に起立させることにより生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに複数枚積載されている最上面の用紙を吸引ベルトによって吸着して画像形成部に給紙する給紙装置、及びこの給紙装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、及びデジタル複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置あるいは画像形成部に用紙を一枚ずつ高速で給紙するエアー吸引式の給紙装置が知られている。図8は従来から実施されているエアー吸引式の給紙装置の概略構成を示す図である。このエアー吸引式の給紙装置は、底板6上に複数枚積載された用紙の前端面及び側端面に向かってブロワなどの送風機構1及び7からのエアーを送風口(図2及び図3参照)から吹き付け、このエアーによって用紙間に空気を送り込み、用紙を吸引ベルト2の高さまで浮上させ、用紙の最上面の一枚を吸引ベルト2によって吸着させている。その後、用紙は吸引ベルト2の搬送により画像形成部へと搬送され、画像形成が行われる。送風機構1及び7は、用紙間に空気を送り込んで所定の高さに浮上させるだけでなく、所定の高さ方向の領域にエアーを吹き付けて用紙捌きも行っている。
【0003】
また、通紙した用紙によって減少する用紙の最上面位置と吸引ベルト2の距離hを常時一定とさせるために、用紙の最上面に当接して用紙の高さを検知する検知機構3が設けられている。検知機構3は、アクチュエータ4とアクチュエータの揺動を検知するセンサ5とを有し、用紙の減少によってアクチュエータ4が揺動し、この移動量をフォトセンサによって検知し、このフォトセンサの検知信号に基づいて昇降機構により底板6を上昇させ、最上面の紙面の位置を調整している。用紙はトレイ上で用紙のサイズに合わせるように、前端面を基準面として揃えている。アクチュエータ4の取り付け位置は、図8に示すように送風機構の送風の影響を受けにくい用紙後端近傍に設けられている。
【0004】
吸引ベルト2下流には搬送ローラ8が配置されており、到達した用紙の搬送を行っている。この搬送ローラ8の搬送力は吸引ベルト2の搬送力より大きく設定される。そのため、吸引ベルト2で吸引されていても、搬送ローラにより搬送方向に確実に搬送される。また、搬送ローラ8の下流には、用紙到達の検知を行う給紙センサ9が設けられている。
【0005】
次に従来の給紙装置の給紙動作について、順を追って説明する。
1)画像形成装置本体から給紙指令が来ると、図9のように送風機構1,7が動作し、用紙端へのエアー吹き付けが始まる。また、同時に吸引ベルト2のエアー吸引が開始する。それにより最上紙P1が浮上し、図9のように吸引ベルトに最上紙P1が吸着される。
2)次いで、図10に示すように吸引ベルト2、搬送ローラ8の駆動が開始され、用紙P1が搬送される。
3)用紙P1が給紙センサ9に到達後、図11に示すように吸引ベルト2の駆動を停止する。搬送ローラ8は吸引ベルト2が停止した状態のまま、用紙P1の搬送を継続する。
4)図12に示すように、用紙P1が吸引領域を抜けた直後、用紙P2がエアーにより浮上し、吸着される。
5)設定した給紙間隔に応じて、吸引ベルト2の駆動を再開し、用紙P2の給紙を行う。6)以降、2)から5)の繰り返しにより用紙が順次搬送される。
【0006】
一方、この種の技術として、特許文献1(特開2007−045630号公報)に開示された発明が公知である。この発明は、安価な構成で、且つカール癖がついていたり給紙動作中に最上面シートが浮揚していても最上面シートを吸引装置により最上面シートを吸引可能かつ吸引に最適な鉛直方向位置として重送及び吸着ミスを解消することを目的として、給紙動作開始前に記憶装置は、積載トレイ上の最上面シートの一端の部分が吸引装置により最上面シートを吸引可能な鉛直方向位置に達したことを基準位置検出センサが検出したときに位置検出アナログセンサによって検出した鉛直方向位置を、積載トレイが基準位置にあることを示す基準位置データとして記憶し、給紙動作中には、位置検出アナログセンサが検出している積載トレイ上の最上面シートの他端の部分の鉛直方向位置と、基準位置データとの差の値が所定の値以上であるときに積載トレイを基準位置まで上昇させることを特徴としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記従来技術における給紙動作で、3)のように吸引ベルト2を停止した状態で搬送ローラ9により用紙搬送を行うと、用紙と吸引ベルト2間の摩擦によりベルトの磨耗を引き起こしてしまう。また、用紙がコート紙であった場合、あるいは印刷済みの用紙であった場合、吸引ベルト2との摩擦により用紙表面にダメージを与えてしまう虞もある。
【0008】
この磨耗やダメージを回避するために、吸引ベルト2の停止時は吸引ベルト2の吸引をストップさせる手段も考えられるが、吸引をストップさせた際に吸引静圧が0になるまでのタイムラグや、再給紙を行うために吸引を行い適正静圧になるまでのタイムラグが生じてしまい、機器の生産性が大きく低下してしまうため、好ましくない。
【0009】
また、前記特許文献1記載の発明は、積載トレイの基準位置制御に関するもので、吸引ベルトの摩耗についてまで踏み込んでいない。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、吸引ベルトを用いた給紙方式でもベルトの磨耗や用紙へ与えるダメージを軽減することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1の手段は、吸引ベルトによって用紙を吸着する用紙吸着部を有し、用紙を一枚ずつ用紙吸着部に吸着して搬送するエアー吸引式の給紙装置であって、積載された複数枚の用紙を載置可能な略水平な面を有し、鉛直方向に昇降する積載トレイと、前記吸引ベルトの後段で用紙を搬送する搬送手段と、を備え、前記吸引ベルトの摩擦力が、用紙との相対速度の状態に応じて変化することを特徴とする。
【0012】
第2の手段は、第1の手段において、前記摩擦力は、前記吸引ベルトが前記用紙よりも相対的に速い速度で移動するときには大きく、前記用紙が前記吸引ベルトよりも速い速度で移動するときには小さくなることを特徴とする。
【0013】
第3の手段は、第1の手段において、前記摩擦力は、前記吸引ベルトにより前記積載トレイから用紙を取り出す際には大きく、取り出し後、前記搬送手段によって用紙を搬送する際には小さくなることを特徴とする。
【0014】
第4の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記吸引ベルトの表面に、摩擦力を発生するための突起、溝、うろこ状の凹凸のいずれかが形成されていることを特徴とする。
【0015】
第5の手段は、第1ないし第4のいずれかの手段において、前記吸引ベルトは交換自在であることを特徴とする。
【0016】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかに係る給紙装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0017】
なお、後述の実施形態では、吸引ベルトは符号2に、用紙吸着部は給紙ユニット22に、給紙装置は符号13に、積載トレイは底板6を含む給紙トレイ21に、搬送手段は搬送ローラ8に、突起はエッジ40に、画像形成装置は画像形成装置本体12に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸引ベルトを用いた給紙方式でもベルトの磨耗や用紙へ与えるダメージを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る給紙装置を備えた画像形成装置の全体的な構成を示す概略構成図である。
【図2】給紙装置の内部構成を示す斜視図である。
【図3】給紙装置から給紙ユニットを取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】給紙ユニットを下から見た斜視図である。
【図5】本実施形態に係る給紙装置の吸引ベルトの構造を示す模式図である。
【図6】吸引ベルトによって用紙を給紙している状態を示す説明図である。
【図7】吸引ベルトが停止し、搬送ローラのみで用紙を送っている状態を示す説明図である。
【図8】従来から実施されているエアー吸引式の給紙装置の概略構成を示す図である。
【図9】従来例における給紙開始に伴って送風機構が動作し、用紙端へのエアー吹き付けが始まったときの状態を示す図である。
【図10】従来例における吸引ベルト、搬送ローラの駆動が開始され、用紙搬送が開始されたときの状態を示す図である。
【図11】従来例において用紙が給紙センサに到達後、吸引ベルトの駆動を停止したときの状態を示す図である。
【図12】用紙が吸引領域を抜けた直後、次の用紙がエアーにより浮上し、吸着される状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る給紙装置を備えた画像形成装置の全体的な構成を示す概略構成図、図2は給紙装置の内部構成を示す斜視図である。
【0022】
図1において、画像形成装置11は、画像形成装置本体12、及び画像形成装置本体12の一側の側面に接続され、配置された給紙装置13から構成されている。画像形成装置は複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいはデジタル複合機などからなり、電子写真方式、液滴吐出方式などの公知の作像方式で用紙上に可視画像を形成するものである。
【0023】
図2において、給紙装置13は、用紙束を積載する底板6を有する給紙トレイ(用紙収納部)21と、用紙束の最上部の用紙を一枚ずつ取り出して画像形成装置本体12側へ給紙する給紙ユニット(給紙手段)22と、を備えている。給紙トレイ21内には、底板6上に積載された用紙束の幅方向(給紙方向と直交する方向)側面をガイドするサイドフェンス23が両側に設けられ、用紙束の後方には後端面を押さえるエンドフェンス24が設けられている。サイドフェンス23には用紙浮上及び用紙捌きを行うための送風機構(サイドエアーアウトレット)7が設けられている。
【0024】
図3は給紙装置13から給紙ユニット22を取り外した状態を示す斜視図である。図のように給紙ユニット22の直下に用紙浮上及び用紙捌きを行うための送風機構(サイドエアーアウトレット)1が設けられている。
【0025】
図4は給紙ユニット22を下から見た斜視図である。給紙ユニット22には、吸引ベルト2とそれに連結された駆動モータ26が配置されている。吸引ベルト2は予め設定されたそれぞれの給紙タイミングによって回転駆動される。吸引ベルト2の内部には吸引チャンバー2dが設けられ、吸引ベルト2に開けられた吸引穴2aからエアーが吸引される。吸引チャンバー2dには吸引ダクト27を介して吸引ブロワ28が接続され、適正な吸引静圧を保つ構成となっている。吸引ベルト2は駆動プーリ2bと従動プーリ2c間に張設され、吸引ベルト2及び両プーリ2b,2c間に空間に吸引チャンバー2dが設けられ、この吸引チャンバー2dに吸引ダクト27が連通し、吸引ブロワ28の吸引動作により吸引チャンバー2d内を負圧にすることが可能となっている。
【0026】
図5は本実施形態に係る給紙装置の吸引ベルトの構造を示す模式図である。図のように吸引ベルト2を側面から見ると、ベルト表面は片方に急な角度を持つ三角状のエッジ40が連続的に立っている。またエッジ40とベルトの回転方向の関係は図のようになっており、エッジ40の頂角の向いた方向が回転方向となっている。このエッジ40の形状により、図5の「A」の方向にはエッジ40が引っ掛かる方向のため摩擦係数が高く、その逆方向では摩擦係数を小さくすることができる。
【0027】
これは用紙の速度が0で吸引ベルト2の速度が大きい場合であり、このときには、吸引ベルト2の用紙に対する摩擦力は大きくなる。
【0028】
図6は吸引ベルト2によって用紙を給紙している状態を示す説明図である。同図に示すように用紙を送り出す方向ではエッジ40が用紙にかかる方向であるため、搬送力(用紙を送り出す力)を確実に確保することができる。
【0029】
図7は給紙動作3)で説明したように、吸引ベルト2が停止し、搬送ローラ8のみで用紙を送っている状態を示す説明図である。本実施形態に係る吸引ベルト2においては、図7に示すように吸引ベルト2が停止した状態で搬送ローラ8によって用紙を引っ張っても、エッジ40が搬送方向に対して寝た状態となるため、用紙の抵抗になることはない。この状態は、吸引ベルト2の速度が0で用紙の速度が大きい場合であり、このときには、吸引ベルト2の用紙に対する摩擦力は小さくなる。すなわち、吸引ベルト2と用紙の総体的な速度の状態に応じて摩擦力の大小が設定される。
【0030】
このように、本実施形態によれば、吸引ベルト2の駆動時(給紙時)は吸引ベルト2の摩擦力を確保できるため給紙を確実に行うことができ、逆に吸引ベルト2が停止時は吸引ベルト2の摩擦力を低下させることができるため、ベルトの磨耗や用紙へ与えるダメージを軽減することができる。
【0031】
吸引ベルト2に設けたエッジ40は、用紙に応じて溝状やうろこ状などの形状にすることができる。一般にコート紙などの用紙は摩擦係数が低くいため、吸引ベルト2のスリップを招きやすい。そこで、吸引ベルト2は用紙に応じて交換可能とし、用紙の種類に応じて、その種類に適したベルトをそれぞれ選定して交換し、使用することができる。
【0032】
このような給紙装置は図1に示すように画像形成装置の前段に設置されて使用されることから、このような給紙装置を備えた画像形成装置では、吸引ベルトを用いた給紙方式でもベルトの磨耗や用紙へ与えるダメージを軽減することができ、機器としての搬送品質を高めることができる。
【0033】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の技術思想に含まれる技術的事項の全てが、本発明の対象となることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
6 底板
8 搬送ローラ
11 画像形成装置
12 画像形成装置本体
13 給紙装置
21 給紙トレイ
40 エッジ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2007−045630号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ベルトによって用紙を吸着する用紙吸着部を有し、用紙を一枚ずつ用紙吸着部に吸着して搬送するエアー吸引式の給紙装置であって、
積載された複数枚の用紙を載置可能な略水平な面を有し、鉛直方向に昇降する積載トレイと、
前記吸引ベルトの後段で用紙を搬送する搬送手段と、
を備え、
前記吸引ベルトの摩擦力が、用紙との相対速度の状態に応じて変化することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1記載の給紙装置であって、
前記摩擦力は、前記吸引ベルトが前記用紙よりも相対的に速い速度で移動するときには大きく、前記用紙が前記吸引ベルトよりも速い速度で移動するときには小さくなることを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項1記載の給紙装置であって、
前記摩擦力は、前記吸引ベルトにより前記積載トレイから用紙を取り出す際には大きく、取り出し後、前記搬送手段によって用紙を搬送する際には小さくなることを特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給紙装置であって、
前記吸引ベルトの表面に、摩擦力を発生するための突起、溝、うろこ状の凹凸のいずれか1つが形成されていることを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の給紙装置であって、
前記吸引ベルトは交換自在であることを特徴とする給紙装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の給紙装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−46458(P2011−46458A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194657(P2009−194657)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】