説明

給紙装置

【課題】未使用(新品)の状態で径の異なる複数のロール紙を、ユーザの選択によって自由に装着することができ、ユーザの利便性を向上させること。
【解決手段】印字装置にロール紙2a(2b)を供給する給紙装置3であって、前記ロール紙2a(2b)の両側面に沿って立設される二枚の側板8bを備え、各側板8bに、未使用の状態で径の異なるロール紙2a(2b)を軸受け支持可能な複数の切欠11,13が設けられているとともに、前記側板8bのいずれか一方に、前記ロール紙2a(2b)の残量を検知するニアエンドセンサ9が配置されているとともに、該ニアエンドセンサ9を、各切欠11,13に軸受け支持されたロール紙2a(2b)に対して接近する方向および離間する方向の二方向にスライドさせる直線状の溝16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を用いたレシートやチケット等を印刷・発行するプリンタに使用され、印字装置にロール紙を供給する給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような給紙装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【特許文献1】特開平5−345429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された給紙装置では、ロール紙を軸受け支持するロール紙ホルダが、一種類のロール紙、すなわち、未使用(新品)の状態で、例えば、4インチ径のロール紙にしか対応していないため、使用状況等に応じてユーザ(user)がより大きな径のロール紙(例えば、6インチ径のロール紙)に変更したいと思っても当該ロール紙をロール紙ホルダに装着することができず、使い勝手が悪いといった問題点があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、未使用(新品)の状態で径の異なる複数のロール紙を、ユーザの選択によって自由に装着することができ、ユーザの利便性を向上させることができる給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る給紙装置は、印字装置にロール紙を供給する給紙装置であって、前記ロール紙の両側面に沿って立設される二枚の側板を備え、各側板に、未使用の状態で径の異なるロール紙を軸受け支持可能な複数の切欠が設けられ、前記側板のいずれか一方に、前記ロール紙の残量を検知するニアエンドセンサが配置されているとともに、該ニアエンドセンサを、各切欠に軸受け支持されたロール紙に対して接近する方向および離間する方向の二方向にスライドさせる直線状の溝が設けられている。
【0006】
本発明に係る給紙装置によれば、未使用(新品)の状態で径の異なるロール紙を軸受け支持可能な複数の切欠を備えているので、未使用(新品)の状態で径の異なるロール紙を、ユーザの選択によって自由に装着することができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
また、ロール紙がいずれかの切欠に軸受支持された状態であっても、ニアエンドセンサを直線状の溝に沿ってスライドさせることにより、ニアエンドセンサをロール紙に対して近接する方向または離間する方向に容易に移動させることができ、ロール紙の残量を検知するのに適した位置に簡易に配置することができる。
【0007】
上記給紙装置において、前記溝の長手方向軸線が、前記複数の切欠のうち、一の切欠に軸受け支持されたロール紙の回転中心と、他の切欠に軸受け支持されたロール紙の回転中心とを結ぶ直線の中点を通り、この直線に対して垂直な直線上に位置するように、前記溝が形成されているとさらに好適である。
【0008】
このような給紙装置によれば、一の切欠に軸受け支持されたロール紙の中心部にセット(固定)されて当該ロール紙とともに回転する紙管の径と、他の切欠に軸受け支持されたロール紙の中心部にセット(固定)されて当該ロール紙とともに回転する紙管の径とが同じ(あるいは略同じ)である場合には、一の切欠にセットされたロール紙の残量と、他の切欠にセットされたロール紙の残量とが、ニアエンドセンサのセンサ部によって等しい(あるいは略等しい)ものとして検知されることとなる。
したがって、一の切欠または他の切欠に、別の径(異なる径)を有するロール紙がセットされたような場合でも、検知しようとするロール紙の残量を変更しないのであれば、ニアエンドセンサを移動させることなくそのままの状態にしておくことができて、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。
【0009】
上記給紙装置において、前記溝が、前記一の切欠および前記他の切欠以外の切欠に軸受け支持されたロール紙に対しても接近可能および離間可能に形成されているとさらに好適である。
【0010】
このような給紙装置によれば、いずれの切欠に軸受け支持されたロール紙に対してもニアエンドセンサを接近および離間させることができるので、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。
【0011】
本発明に係るプリンタは、未使用(新品)の状態で径の異なるロール紙を、ユーザの選択によって自由に装着することができる給紙装置を備えているので、ユーザの利便性が向上することとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、未使用(新品)の状態で径の異なる複数のロール紙を、ユーザの選択によって自由に装着することができ、ユーザの利便性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る給紙装置の一実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る給紙装置を具備したプリンタの側面図、図2は図1に示す給紙装置の一側板を拡大した図、図3は図2のA−A矢視断面図である。
【0014】
図1に示すように、プリンタ1は、ロール紙(例えば、感熱紙)2a(2b)の搬送方向に沿って、給紙装置3から供給されたロール紙2a(2b)の感熱印字層に各種情報を印字する印字装置4と、この印字装置4によって印字されたロール紙2a(2b)を切断するカッター装置(用紙切断装置)5と、カッター装置5によって切断されたロール紙2a(2b)を図示しないベゼル(用紙排出口)から搬出する(排出する)用紙排出装置6とを備えている。
【0015】
印字装置4は、いわゆるサーマルプリンタが用いられており、ロール紙2a(2b)の感熱印字層を感熱させるためのサーマルヘッド(図示せず)と、このサーマルヘッドに圧接されるプラテンローラ(図示せず)とを有している。印字装置4は、給紙装置3から供給されたロール紙2a(2b)をサーマルヘッドとプラテンローラとの間に挟んで印字するとともに搬送する。
カッター装置5は、印字装置4から搬出されたロール紙2a(2b)を所望の長さに切断するための、例えば、一対の円盤状の回転刃(図示せず)を有しており、切断したロール紙2a(2b)を用紙排出装置6に搬送する。
また、これら給紙装置3、印字装置4、カッター装置5、および用紙排出装置6は、本体フレーム7を介して結合されている。
【0016】
さて、図1に示すように、本実施形態に係る給紙装置3は、一つのペーパホルダ8と、一つのニアエンドセンサ9とを備えている。
ペーパホルダ8は、ロール紙2a(2b)の搬送方向および幅方向に沿って延びる平面視略矩形状を呈する一枚の底板8aと、この底板8aの各側縁から鉛直上方に向かって延びる二枚の側板8bとを有している。
【0017】
ペーパホルダ8の各側板8bには、例えば、6インチ径ロール紙2aの中心部にセット(固定)されて当該ロール紙2aとともに回転する紙管(巻芯:回転軸)10を軸受け支持する第1の切欠11と、例えば、4インチ径ロール紙2bの中心部にセット(固定)されて当該ロール紙2bとともに回転する紙管(巻芯:回転軸)12を軸受け支持する第2の切欠13とが設けられている。これら第1の切欠11および第2の切欠13は、未使用(新品)の6インチ径ロール紙2aを、紙管10を介して第1の切欠11にセットした時の当該ロール紙2aの外周面の前端(印字装置4側の端部)14と、未使用(新品)の4インチ径ロール紙2bを、紙管12を介して第2の切欠13にセットした時の当該ロール紙2bの外周面の前端(印字装置4側の端部)15とが、同一垂直面内に位置するように形成されている。
【0018】
また、ペーパホルダ8の一側板8b(本実施形態では図1において手前側の側板8b)には、ニアエンドセンサ9の裏面(図1において奥側の面)から突出する突起9a(図3参照)を案内(ガイド)するとともに、ニアエンドセンサ9の裏面に配置されたセンサ部9bがロール紙2a(2b)の残量を検知するのに必要な開口としての役目を担う溝16が設けられている。
図2に示すように、溝16は、紙管10の中心軸線(回転中心)C1と、紙管12の中心軸線(回転中心)C2とを結ぶ直線L1の中点を通り、この直線L1に対して垂直な直線(垂直二等分線)L2上に、その中心軸線(長手方向軸線)が位置するように形成された長穴である。すなわち、溝16は、第1の切欠11にセットされた紙管10にニアエンドセンサ9を最も近づけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管10の中心軸線C1までの距離と、第2の切欠13にセットされた紙管12にニアエンドセンサ9を最も近づけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管12の中心軸線C2までの距離とが等しくなり、第1の切欠11にセットされた紙管10からニアエンドセンサ9を最も遠ざけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管10の中心軸線C1までの距離と、第2の切欠13にセットされた紙管12からニアエンドセンサ9を最も遠ざけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管12の中心軸線C2までの距離とが等しくなるように形成されている。
【0019】
図3に示すように、ニアエンドセンサ9の裏面から突出する突起9aは、溝16内にガタツキが生じないように嵌り込んで、溝16の一端から他端まで、抵抗なくかつスムーズに移動できるように形成されている。
また、ニアエンドセンサ9は、ネジ17を弛めることにより、突起9aの端面9bと押さえ板18の表面18aとの間に隙間(ギャップ)を生じさせ、その状態でネジ17および押さえ板18とともに溝16に沿って所望の位置まで一体的にスライドさせることができるようになっているとともに、所望の位置でネジ17を締め付けることにより、突起9aの端面9bと押さえ板18の表面18aとの間に一側板8bが挟み込まれ、所望の位置にセット(固定)できるようになっている。
【0020】
本実施形態に係る給紙装置3によれば、ペーパホルダ8の各側板8bに、第1の切欠11および第2の切欠13が設けられているので、未使用(新品)の状態で径の異なる二つのロール紙2a,2bのいずれか一方を、ユーザの選択によって自由に装着することができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
また、第1の切欠11または第2の切欠13に、未使用状態の6インチ径ロール紙2aまたは4インチ径ロール紙2aを装着した際、各ロール紙2a,2bの外周面の前端14,15が同一垂直面内に位置するように、第1の切欠11および第2の切欠13が形成されているので、いずれのロール紙2a,2bを使った場合でも印字装置4に用紙を安定的に供給することができる。
【0021】
さらに、本実施形態に係る給紙装置3によれば、ペーパホルダ8の一側板8bに、一本の長穴からなる溝16が設けられているので、ユーザは、適宜必要に応じて選択したロール紙2a(2b)の径に応じてニアエンドセンサ9を容易、かつ、迅速に所望の位置にセットすることができる。
なお、ニアエンドセンサ9の位置調整は、溝16に沿ってスライドさせるだけでよく、誰でも簡単に行うことができる。
【0022】
さらにまた、本実施形態に係る給紙装置3によれば、溝16は、紙管10の中心軸線C1と、紙管12の中心軸線C2とを結ぶ直線L1の中点を通り、この直線L1に対して垂直な直線L2上に、その中心軸線が位置するように形成されているので、紙管10の径と紙管12の径とが同じ(あるいは略同じ)である場合には、第1の切欠11にセットされたロール紙2aの残量と、第2の切欠13にセットされたロール紙2bの残量とが、ニアエンドセンサ9のセンサ部9bによって等しい(あるいは略等しい)ものとして検知されることとなる。
したがって、第1の切欠11にロール紙2bやロール紙2a,2b以外の径を有するロール紙がセットされたり、あるいは第2の切欠13にロール紙2a,2b以外の径を有するロール紙がセットされたような場合でも、検知しようとするロール紙の残量を変更しないのであれば、ニアエンドセンサ9を移動させることなくそのままの状態にしておくことができて、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。
【0023】
一方、この給紙装置3を製造・販売するメーカにおいては、未使用(新品)の状態で径の異なるロール紙毎にペーパホルダを用意する必要がなくなり、部品点数を削減することができ、製造コストを低減させることができるとともに、部品管理の簡略化を図ることができる。
【0024】
また、本発明に係る給紙装置3を具備したプリンタ1によれば、未使用(新品)の状態で径の異なるロール紙2a,2bを、ユーザの選択によって自由に装着することができる給紙装置3を備えているので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0025】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施、変更実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、2つの切欠11,13を備えたペーパホルダ8について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図4に示すような、3つの切欠21,22,23と、1つの丸穴(切欠)24とを備えたペーパホルダ25を採用することもできる。
切欠21,22,23および丸穴24はそれぞれ、ペーパホルダ8の各側板8bに設けられ、ロール紙(図示せず)の中心部にセットされて当該ロール紙とともに回転する紙管26,27,28,29を軸受け支持するものであり、紙管26の中心軸線(回転中心)C3と、紙管29の中心軸線(回転中心)C4とを結ぶ直線L3が、紙管27の中心軸線(回転中心)C5と、紙管28の中心軸線(回転中心)C6とを結ぶ直線L4の中点を通り、この直線L4に対して垂直な直線(垂直二等分線)上に位置するように形成されている。
【0026】
また、ペーパホルダ8の一側板8bには、ニアエンドセンサ9(図1および図2参照)の裏面から突出する突起9a(図3参照)を案内(ガイド)するとともに、ニアエンドセンサ9の裏面に配置されたセンサ部9b(図2参照)がロール紙の残量を検知するのに必要な開口としての役目を担う溝30が設けられている。
そして、図4に示すように、この溝30は、紙管27の中心軸線(回転中心)C5と、紙管28の中心軸線(回転中心)C6とを結ぶ直線L4の中点を通り、この直線L4に対して垂直な直線(垂直二等分線)L3上に、その中心軸線(長手方向軸線)が位置するように形成された長穴である。すなわち、溝30は、切欠22にセットされた紙管27にニアエンドセンサ9を最も近づけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管27の中心軸線C5までの距離と、切欠23にセットされた紙管28にニアエンドセンサ9を最も近づけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管28の中心軸線C6までの距離とが等しくなり、切欠22にセットされた紙管27からニアエンドセンサ9を最も遠ざけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管27の中心軸線C5までの距離と、切欠23にセットされた紙管28からニアエンドセンサ9を最も遠ざけたときのニアエンドセンサ9のセンサ部9bから紙管28の中心軸線C6までの距離とが等しくなるように形成されている。
また、この溝30は、ニアエンドセンサ9を溝30の一端(図4において上端)にスライド(位置)させた時に紙管26を有するロール(図示せず)のニアエンドをセンサ部9bが検出し、他端(図4において下端)にスライド(位置)させた時に紙管29を有するロール(図示せず)のニアエンドをセンサ部9bが検出し得るようにも形成されている。
【0027】
このようなペーパホルダ25を備えた給紙装置の作用効果は、上述した実施形態に係る給紙装置3と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る給紙装置を具備したプリンタの側面図である。
【図2】図1に示す給紙装置の一側板を拡大した図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る給紙装置の一側板を拡大した図である。
【符号の説明】
【0029】
1 プリンタ
2a ロール紙
2b ロール紙
3 給紙装置
4 印字装置
8b 側板
9 ニアエンドセンサ
9b センサ部
11 第1の切欠
13 第2の切欠
16 溝
21 切欠
22 切欠
23 切欠
24 丸穴(切欠)
C1 回転中心
C2 回転中心
C5 回転中心
C6 回転中心
L1 直線
L2 直線
L3 直線
L4 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字装置にロール紙を供給する給紙装置であって、
前記ロール紙の両側面に沿って立設される二枚の側板を備え、
各側板に、未使用の状態で径の異なるロール紙を軸受け支持可能な複数の切欠が設けられ、
前記側板のいずれか一方に、前記ロール紙の残量を検知するニアエンドセンサが配置されているとともに、該ニアエンドセンサを、各切欠に軸受け支持されたロール紙に対して接近する方向および離間する方向の二方向にスライドさせる直線状の溝が設けられている給紙装置。
【請求項2】
前記溝の長手方向軸線が、前記複数の切欠のうち、一の切欠に軸受け支持されたロール紙の回転中心と、他の切欠に軸受け支持されたロール紙の回転中心とを結ぶ直線の中点を通り、この直線に対して垂直な直線上に位置するように、前記溝が形成されている請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記溝が、前記一の切欠および前記他の切欠以外の切欠に軸受け支持されたロール紙に対しても接近可能および離間可能に形成されている請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の給紙装置を備えるプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−196239(P2009−196239A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41228(P2008−41228)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】