説明

給電式荷役装置

【課題】本発明は、給電用ケーブルによる給電のみに頼ることなく移動できる給電式荷役装置を提供することを目的とする。
【解決手段】クレーン10へ通常の給電装置45より給電される給電用ケーブル46に、このケーブルを途中で分離できるコネクタ48を設け、このコネクタ48により給電用ケーブル46を通常の給電設備45から切り離し、別置きの予備給電装置51に接続して、別置きの予備給電装置51よりクレーン10へ給電でき、荷役作業を実行できる構成とする。これにより、給電用ケーブルによる給電のみに頼ることなく、給電用ケーブル46により給電できない方向・位置へクレーン10を移動でき、荷役作業を実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電式荷役装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の給電式荷役装置の一例が、特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示されているタイヤ式門型コンテナクレーン(RTG;給電式荷役装置の一例)は、コンテナヤードに配置され、コンテナヤードに設定された走行レーンを移動してコンテナの運搬、移動等の荷役作業を行うクレーンであり、タイヤ式門型コンテナクレーンの本体(クレーン本体)に、前記荷役作業の電気荷役機器として、トロリー駆動モータ(本体走行用モータ)、台車駆動モータ(クラブ横行用モータ)およびリフトアップモータを備えている。また一般電力接続盤(一般電力の電気回路網)と接続されたケーブルを、前記走行レーンに沿ったケーブルスロット内に設け、クレーン本体に、前記ケーブルをクレーン本体の走行に伴って巻き取りと巻き戻し(収納/取出)を行うケーブルリールを備え、ケーブルを介して一般電力接続盤より供給される一般電力を前記モータに供給することにより前記荷役作業を実行している。
【0003】
また走行レーンから隣接する走行レーンへ移動するときは、クレーン本体のケーブルリールのケーブルを引っ張って、隣接する走行レーンの一般電力接続盤に接続し、隣接する走行レーンの一般電力接続盤から供給される一般電力により、トロリー駆動モータを駆動して移動している。
【特許文献1】特開2007−223805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の給電式荷役装置は、荷役作業に必要な電力を全て一般電力接続盤に接続されたケーブルから供給される電力に頼っており、ケーブルリールにより巻き戻しされるケーブルの距離内でしか移動や作業ができないという問題があった。
【0005】
このような問題を解消するために、クレーンの本体に予備のバッテリを搭載することが考えられるが、クレーンの荷役作業に必要な電力を供給できる大容量のバッテリを、フレーム構造のクレーン本体に搭載することは困難であった。
【0006】
また隣接する走行レーンへ移動するときは、クレーン本体のケーブルリールのケーブルを引っ張って、隣接する走行レーンの一般電力接続盤に接続しているが、走行レーン内に保管されているコンテナが障害となって簡単に接続することができない恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明は、給電用ケーブルによる給電のみに頼ることなく、隣接する走行レーンへ容易に移動できる給電式荷役装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、通常の給電設備から給電用ケーブルを介して供給される電力によって、吊り荷を吊り上げ、自走し、前記吊り荷を降ろす荷役作業を実行する給電式荷役装置であって、荷役装置の本体とは別置きに、前記電力を供給可能な予備給電装置を設け、前記荷役装置の本体に、前記給電用ケーブルの巻き取りと巻き戻しを行うケーブルリールを備え、前記給電ケーブルに、このケーブルを途中から分離できる分離手段を設け、前記分離手段により給電用ケーブルを前記通常の給電設備から切り離し、切り離した前記ケーブルリール側の給電用ケーブルを前記別置きの予備給電装置へ接続し、予備給電装置から給電される電力により、少なくとも前記荷役装置の本体の自走を可能としたことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、分離手段により給電用ケーブルが通常の給電設備から切り離れて、別置きの予備給電装置に接続され、別置きの予備給電装置より給電される。したがって、給電用ケーブルにより給電できない方向・位置へ荷役装置の本体は自走でき、給電用ケーブルによる給電に頼ることなく、隣接する走行レーンへ移動することが可能となる。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記吊り荷は、コンテナであり、前記予備給電装置の筐体は、前記コンテナの規格に合わせて形成され、吊り上げ搬送可能な構成とされていることを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、コンテナと同様に予備給電装置は吊り上げて搬送され、荷役装置本体は、予備給電装置から給電されて、どこへでも移動可能となり、給電用ケーブルによる給電に頼ることなく、隣接する走行レーンへ移動できる。
【0012】
また請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明であって、前記予備給電装置は、太陽電池と、蓄電池と、直流から交流へ変換する機能を有する電力変換手段との組み合わせにより構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、太陽電池により蓄電池が充電され、蓄電池に充電された(直流)電力は電力手段により交流に変換されて荷役装置へ供給される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の給電式荷役装置は、分離手段により給電用ケーブルが通常の給電設備から切り離れて、別置きの予備給電装置に接続され、別置きの予備給電装置より給電されることにより、給電用ケーブルにより給電できない方向・位置へも荷役装置の本体は移動でき、給電用ケーブルによる給電に頼ることなく、隣接する走行レーンへ移動することが可能となる、という効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるタイヤ式トランスファークレーンの斜視図である。このタイヤ式トランスファークレーンは、コンテナヤードに配置され、コンテナヤードに設定された走行レーンと横行レーンを移動してコンテナの運搬、移動等の荷役作業を行うことができるクレーンである。
【0016】
図1に示すように、タイヤ式トランスファークレーン(給電式荷役装置の一例;以下、クレーンと略す)10の走行本体(荷役装置の本体の一例)11は、並行して配置された、矢印C,Dで示す前後方向に一対のシルビーム12と、両シルビーム12の各端部から立設されたコラム13と、前後で対向したコラム13の上端間に設けられた、矢印A,Bで示す左右方向に一対のガーダ14などにより構成されている。
【0017】
また両シルビーム12の各端部の下面側には、それぞれ2個のタイヤ15を有するボギー台車16が設けられている。前記タイヤ15の内、矢印Cで示す前方向側で、かつ最も矢印Bで示す走行左方向のタイヤ15Aと、矢印Dで示す後方向側で、かつ最も矢印Aで示す走行右方向のタイヤ15Bのみが駆動輪であり、これら駆動輪15A,15Bは、それぞれボギー台車16に設けられた走行モータ17A,17Bがそれぞれ独立して正逆駆動されることで、走行本体11は走行可能に構成される。また両シルビーム12にはそれぞれ油圧ユニット18が設けられている。
【0018】
また両ガーダ14に支持案内されて、前方向Cならびに後方向Dに移動自在なクラブ21が設けられ、このクラブ21には運転室22が装備されている。クラブ21に設けられた横行モータ23が正逆駆動されることで、クラブ21は、前方向Cならびに後方向Dに移動される。前記クラブ21の下方には、4箇所の吊り装置25を介して、コンテナ(吊り荷の一例)28に連結されるスプレッダ装置30が昇降自在に配設されている。
【0019】
上記各吊り装置25は、スプレッダ装置30の固定ビーム31(後述する)側にブラケットを介して配設された輪体(滑車体)や、この輪体に掛けられた吊りロープ(索体)や、クラブ21側の吊り駆動装置(いずれも図示せず)などにより構成されている。
【0020】
またスプレッダ装置30は、水平状で並設された前後一対の前記固定ビーム31と、これら固定ビーム31に支持案内されて走行右方向Aならびに走行左方向Bに伸縮自在な左右一対の伸縮ビーム33と、両伸縮ビーム33を互いに離間方向または接近方向に伸縮動させる伸縮駆動装置(図示せず)などにより構成され、伸縮ビーム33は、コンテナ28の長さ{例えば、20ft(約6m)、または40ft(約12m)}に合わせて伸縮される。なお、両固定ビーム31は、その上面間に配設された連結体32により一体化され、この連結体32上に前記ブラケットが設けられている。
【0021】
また両伸縮ビーム33は、前後方向に沿って位置される被運搬物支持部34と、これら被運搬物支持部34の前後端から内方へ連設されかつ前記固定ビーム31に支持案内される伸縮ガイド部35と、両被運搬物支持部34の中間から内方へ連設される伸縮受動部(図示せず)とにより櫛歯状に形成されている。そして被運搬物支持部34の前後端の下面側には、コンテナ28の上部吊り穴28aに係止される連結具(図示せず)が設けられている。
【0022】
また走行レーン40を特定する走行本体11の一定の走行経路(走行右方向Aならびに走行左方向Bの経路)に沿って、シルビーム12の外方に、走行本体11を案内する、磁石を連ねた埋め込み型ガイドテープ(磁気を帯びた帯体の一例)41が敷設されている。またこのガイドテープ41が敷設された側の2台のボギー台車16の一つの軸受の外方にそれぞれ、ガイドテープ41と走行本体11との前後方向の距離(走行本体11と前記走行経路との偏差に相当する)を感知する磁気検出器を備えたセンサ台車(いずれも図示せず)が設けられている。
【0023】
またガイドテープ41が敷設された側とは反対側のシルビーム12の外方に、走行本体11の一定の走行経路に沿って、溝44が設けられ、溝44内にコンテナヤードの通常の給電設備45に先端が接続された給電用ケーブル46が敷設され、溝44が設けられた側のシルビーム12に、前記給電用ケーブル46の巻き取りと巻き戻しを行い給電用ケーブル46に一定のテンションを与えるケーブルリール47が設けられている。またこのケーブルリール47には、給電用ケーブル46のテンションを無くしフリーな状態として給電用ケーブル46を自在に引き出すことができる機能が設けられている。
【0024】
前記給電用ケーブル46には、ケーブルリール47から所定長さ(ケーブルリール47から後述する予備給電装置51のコネクタ56のソケット56Bに接続可能な長さ)の位置に、給電用ケーブル46を途中で分離できる防水タイプのコネクタ(分離手段の一例)48が設けられ、通常の給電設備45から着脱可能な構造とされている。いま、通常の給電設備45からコネクタ48までの給電用ケーブル46を、前方給電用ケーブル46A、コネクタ48からケーブルリール47までの給電用ケーブル46を、後方給電用ケーブル46Bと称す。また前方給電用ケーブル46Aにコネクタ48のソケット(メス側)48Aが接続され、後方給電用ケーブル46Bにコネクタ48のプラグ(オス側)48Bが接続されているものとする。またコネクタ48は、ケーブルリール47に無理なく巻き取ることができる構造としている。
【0025】
上記構成のクレーン10によると、走行レーン40に沿って移動し、コンテナ28の荷役作業{トラックからの荷取り(コンテナの降ろし)、あるいはコンテナヤードの所定位置へ移載(コンテナの移動)、あるいはトラックへの積付(コンテナの積み込み)}を行うとき、通常の給電設備45より給電用ケーブル46を介して給電され、運転室22の運転員の運転操作に応じた制御装置(図示せず)の制御によって、ガイドテープ41に沿って走行本体11が走行右方向Aまたは走行左方向Bへ走行され、またクラブ21が前方向Cまたは後方向Dへ移動されて、コンテナ28の荷取り時や積付時におけるスプレッダ装置30の位置合わせが行われ、さらに取り扱うコンテナ28の長さに合わせてスプレッダ装置30の伸縮ビーム33が伸縮され、スプレッダ装置30が昇降され、連結具が駆動されて、スプレッダ装置30にコンテナ28が連結され、吊り上げられる。また走行本体11が移動すると、ケーブルリール47により給電用ケーブル46の巻き取りと巻き戻しが行われる。また走行本体11が走行しコンテナ28の所定位置(コンテナ28の保管位置、あるいはトラックの荷台)に到着すると、コンテナ28は降ろされ、連結具が駆動されて、スプレッダ装置30よりコンテナ28が切り離される。
【0026】
また走行レーン40の終端(通常の給電装置45とは反対側の端)付近には、クレーン10の走行車体11とは別置きに、クレーン10へ電力を供給可能な予備給電装置(パワーパック)51が設けられている。
【0027】
この予備給電装置51は、図2(a)に示すように、コンテナ28と同じISO(国際標準化機構)規格を満たす筐体52から構成され、筐体52の上面には、コンテナ28と同様に4隅に、上部吊り穴52aが設けられ、スプレッダ装置30により吊り上げ搬送可能とされている。例えば、筐体52の寸法は、長さ20フィート(約6m)、幅8フィート(約2.4m)、高さ8フィート6インチ(約2.6m)とされている。
【0028】
また筐体52の上面には、太陽電池(パネル)53が一面に配置され、筐体52の内部には、蓄電池54と充放電用コントローラ55が収納され、側面には、前方給電用ケーブル46Aのソケット(コネクタ)48Aが接続される蓋付防水タイプのプラグ(コネクタ)56Aと、後方給電用ケーブル46Bのプラグ(コネクタ)48Bが接続される蓋付防水タイプのソケット(コネクタ)56Bと、蓋付防水タイプの操作パネル57が設けられている。操作パネル57からは、放電指令信号、充電指令信号、および充放電停止指令信号が入力され、操作パネル57には、充電終了、および放電不可(放電できないこと)が表示される。
【0029】
充放電用コントローラ55は、図2(b)に示すように、アノードが太陽電池53の出力端に接続され、カソードが蓄電池54に接続され、蓄電池54から太陽電池53へ電流が逆流することを防止する逆流防止ダイオード61と、太陽電池53の両端を短絡する過充電防止用短絡スイッチ62と、蓄電池54とコネクタのプラグ56Aおよびソケット56Bとの間に介装され、駆動されることにより蓄電池54に充電された(直流)電力を交流に変換してクレーン10へ供給し、また逆に外部から供給された電力(交流)を直流へ変換して蓄電池54へ充電するインバータ(電力変換手段の一例)63と、蓄電池54の電圧を検出する蓄電池電圧検出部64と、操作パネル57からの指令信号および蓄電池電圧検出部64において検出される蓄電池電圧に応じて過充電防止用短絡スイッチ62とインバータ63を制御する充放電制御回路65から構成されている。
【0030】
このように、予備給電装置51は、太陽電池53と蓄電池54とインバータ63の組み合わせにより構成され、初期状態では、蓄電池54が定格電圧に達するまで初期充電が実行される。すなわち、コネクタのプラグ56Aに前方給電用ケーブル46Aのソケット48Aが接続され、操作パネル57より充電指令信号が充放電制御回路65へ入力されると、インバータ63は駆動され、通常の給電設備45から供給される電力はインバータ63により直流に変換され、蓄電池54が充電される。そして、蓄電池電圧検出部64において検出される蓄電池電圧が定格電圧に達すると、インバータ63が停止され、操作パネル57へ充電終了が表示される。これにより、コネクタのプラグ56Aより前方給電用ケーブル46Aのソケット48Aが外されて、初期充電が終了され、走行レーン40の終端に搬送され待機状態とされる。
【0031】
予備給電装置51の未使用時は、インバータ63は停止され、太陽電池53により蓄電池54は充電されており、蓄電池電圧検出部64において検出される蓄電池電圧が過充電の目安となる第1設定電圧以上になると、過充電防止用短絡スイッチ62が閉動作され、太陽電池53の両極は短絡され、蓄電池54の過充電が防止される。
【0032】
また使用時、すなわちコネクタ56のソケット56Bに後方給電用ケーブル46Bのコネクタのプラグ46Bが接続され、操作パネル57より放電指令信号が充放電制御回路65へ入力されると、インバータ63は駆動され、蓄電池54に充電された電力はインバータ63により交流に変換され、コネクタのソケット56B、コネクタのプラグ46Bおよび後方給電用ケーブル46Bを介してクレーン10へ供給される。また蓄電池電圧検出部64において検出される蓄電池電圧が過放電の目安となる第2設定電圧(<第1設定電圧)未満となると、インバータ63が停止され、クレーン10への給電が停止され、過放電が防止され、操作パネル57には放電不可(放電できないこと)が表示される。また操作パネル57より充放電停止指令信号が充放電制御回路65へ入力されると、インバータ63が停止され、クレーン10への給電が停止される。
【0033】
予備給電装置51は、主に、クレーン10が、横行レーンを走行するとき、すなわち走行レーン40をチェンジするレーンチェンジ時(前方向Cならびに後方向Dへの走行時)に使用される。(なお、ケーブルリール47において給電用ケーブル46が伸びきってさらにクレーン10を走行させるときに使用されることもある。)
すなわち、運転室22の運転員の運転操作に応じて走行本体11をスプレッダ装置30によって予備給電装置51を吊り上げ可能な位置まで走行させ、続いてケーブルリール47のリールをフリーな状態とし、コネクタ48を外して後方給電用ケーブル46Bを通常の給電設備45から切り離し、後方給電用ケーブル46Bのプラグ48Bを別置きの予備給電装置51のソケット56Bへ接続し、操作パネル57より放電指令信号を入力する。これにより、予備給電装置51からクレーン10へ給電され、クレーン10は予備給電装置51から給電される電力により荷役作業が可能となる。続いて、図3に示すように、運転室22の運転員の運転操作に応じて、クラブ21が前方向Cまたは後方向Dへ移動されて、予備給電装置51(筐体52)とスプレッダ装置30の位置合わせが行われ、さらに筐体52の長さに合わせてスプレッダ装置30の伸縮ビーム33が伸縮され、スプレッダ装置30が昇降され、連結具が駆動されて、スプレッダ装置30に筐体52が連結され、吊り上げられる。続いてケーブルリール47のリールをテンションを有す状態に戻し、このテンションにより給電用ケーブル46が引っ張られて持ち上げられる。
【0034】
そして、クレーン10の走行レーン40のレーンチェンジ時(前方向Cならびに後方向Dへの走行時)は、タイヤ15の向きが90゜(固定値)変換され、走行本体11の前方向Cまたは後方向Dへの走行が行われ、横行レーンの移動が行われる。
【0035】
レーンチェンジが終了すると、タイヤ15の向きが90゜(固定値)戻され、この移動先の走行レーン40において、前方給電用ケーブル46Aのソケット48Aに、ケーブルリール47側の後方給電用ケーブル46Bのプラグ48Bを接続できる位置まで走行本体11の走行が行われ、予備給電装置51(筐体52)は降ろされる。続いて、ケーブルリール47のリールをフリーな状態とし、操作パネル57より充放電停止指令信号を入力し、予備給電装置51のソケット56Bから後方給電用ケーブル46Bのプラグ48Bを外し、プラグ48Bを前方給電用ケーブル46Aのコネクタのソケット48Aへ接続する。そして、ケーブルリール47のリールをテンションを有す状態に戻す。これにより、通常の給電設備45よりクレーン10へ給電される。また予備給電装置51は再び吊り上げられて、走行レーン40の終端まで搬送され降ろされ、切り離されて待機状態とされる。
【0036】
以上のように本実施の形態によれば、給電用ケーブル46に、このケーブルを途中で分離できるコネクタ48を設けたことにより、給電用ケーブル46を通常の給電設備45から容易に切り離すことができ、別置きの予備給電装置51に、保管されているコンテナ28に邪魔されることなく容易に接続して、別置きの予備給電装置51よりクレーン10へ給電することができる。したがって、給電用ケーブル46に頼ることなく、給電用ケーブル46により給電できない方向・位置へクレーン10は自走でき、給電用ケーブル46による給電に頼ることなく、走行レーン40をチェンジすることが可能となる。
【0037】
また本実施の形態によれば、予備給電装置51の筐体52をコンテナ28と同じ規格で製作することにより、クレーン10のスプレッダ装置30により吊り上げて搬送することができ、クレーン10は、予備給電装置51から給電されて、どこへでも移動でき、給電用ケーブル46による給電に頼ることなく、横行レーンを移動して隣接する走行レーン40へ移動できる。
【0038】
また本実施の形態によれば、予備給電装置51に太陽電池53を使用することにより、環境問題、エネルギー問題を解決でき、また電気代を低減できる。またクレーン10のレーンチェンジの回数は少ないことから、太陽電池53により時間をかけて蓄電池54を充電しても使用上、何ら問題は発生しない。
【0039】
なお、本実施の形態では、荷役装置をクレーン10としているが、クレーン10に限ることはなく、給電用ケーブル46により給電され、自走する荷役装置であればよい。
また本実施の形態では、予備給電装置51を、太陽電池53と蓄電池54と充放電用コントローラ55(インバータ63を含む)から構成しているが、交流発電機、または蓄電池54と充放電用コントローラ55(インバータ63を含む)の組み合わせとしてもよい。
【0040】
このような交流発電機、または蓄電池54と充放電用コントローラ55の組み合わせの場合は、予備給電装置51の小型化が可能であり、シルビーム12に予備給電装置51を搭載可能な場合がある。このとき、シルビーム12に予備給電装置51を固定できるデッキ(固定可能な構造の一例)を設け、通常の給電設備45からの給電ができなくなる前に、スプレッダ装置30により予備給電装置51をデッキに搭載する。そして、ケーブルリール47のリールをフリーな状態とし、コネクタ48を外して後方給電用ケーブル46Bを通常の給電設備45から切り離し、プラグ48Bをデッキ上の予備給電装置51のソケット56Bへ接続し、操作パネル57より放電指令信号を入力する。これにより、予備給電装置51より給電され、このときスプレッダ装置30が空いているので、クレーン10は、コンテナ28の荷役作業を実行することができる。なお、デッキへの予備給電装置51の積卸しを、フォークリフトにより行ってもよい。
【0041】
また本実施の形態では、予備給電装置51の筐体52を、コンテナ28と同一規格の形状としているが、この筐体52を、車輪付き台車の形状とすることもできる。このとき、台車とクレーン10の両シルビーム12にそれぞれ連結具を設け、通常の給電設備45からの給電ができなくなる前に、クレーン10の走行時に予備給電装置51に衝突することがないシルビーム12に台車に接続し、台車に搭載した予備給電装置51より給電できるようにする。クレーン10の走行時に、台車はクレーン10に引っ張られて移動する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態におけるタイヤ式トランスファークレーンの斜視図である。
【図2】同タイヤ式トランスファークレーンとは別置きの予備給電装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は回路図である。
【図3】同タイヤ式トランスファークレーンに別置きの予備給電装置を接続した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10 タイヤ式トランスファークレーン
11 走行本体
15 タイヤ
17A,17B 走行モータ
21 クラブ
22 運転室
25 吊り装置
28 コンテナ
28a 上部吊り穴
30 スプレッダ装置
40 走行レーン
41 ガイドテープ
45 通常の給電設備
46 給電用ケーブル
46A 前方給電用ケーブル
46B 後方給電用ケーブル
47 ケーブルリール
48 コネクタ
51 予備給電装置
52 筐体
52a 上部吊り穴
53 太陽電池
54 蓄電池
55 充放電用コントローラ
56 コネクタ
57 操作パネル
63 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の給電設備から給電用ケーブルを介して供給される電力によって、吊り荷を吊り上げ、自走し、前記吊り荷を降ろす荷役作業を実行する給電式荷役装置であって、
荷役装置の本体とは別置きに、前記電力を供給可能な予備給電装置を設け、
前記荷役装置の本体に、前記給電用ケーブルの巻き取りと巻き戻しを行うケーブルリールを備え、
前記給電ケーブルに、このケーブルを途中から分離できる分離手段を設け、
前記分離手段により給電用ケーブルを前記通常の給電設備から切り離し、切り離した前記ケーブルリール側の給電用ケーブルを前記別置きの予備給電装置へ接続し、予備給電装置から給電される電力により、少なくとも前記荷役装置の本体の自走を可能としたこと
を特徴とする給電式荷役装置。
【請求項2】
前記吊り荷は、コンテナであり、
前記予備給電装置の筐体は、前記コンテナの規格に合わせて形成され、吊り上げ搬送可能な構成とされていること
を特徴とする請求項1に記載の給電式荷役装置。
【請求項3】
前記予備給電装置は、太陽電池と、蓄電池と、直流から交流へ変換する機能を有する電力変換手段との組み合わせにより構成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の給電式荷役装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58931(P2010−58931A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227693(P2008−227693)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)