説明

給餌システム

【課題】給餌対象動物の活動量に応じた必要量を給餌することができる給餌システムを提供することにある。
【解決手段】活動量計測送信装置1は、給餌対象動物の活動量を計測する活動量計測手段3及び該活動量計測手段3で計測された活動量データを送信する活動量データ送信手段4を有し、給餌装置2は活動量データを受信する活動量データ受信手段8、給餌対象動物に給餌する給餌手段7、前記活動量データ受信手段で受信した活動量データから当該動物の消費エネルギ量を演算してこの消費エネルギに基づいて給餌手段7からの給餌量を制御する制御手段6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物に給餌する給餌システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の給餌装置は予め決められた一定の量を給餌するものがあった。
【0003】
しかし、給餌量が一定であると、給餌量の過不足が起こり、特に給餌量が過多の場合、余った餌が腐敗したり、あるいは必要量以上の給餌のため肥満などの原因となり健康管理上好ましくない。
【0004】
一方、特開平7−250585に示されているような自動給餌装置はあったが、予め決められた時間に予め決められた量の餌を給餌するだけのものである。
【特許文献1】特開平7−250585号公報(段落番号0031)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような自動給餌装置では予め決められた一定の量を給餌するものであった。しかし、給餌量が一定であると、給餌量の過不足が起こり、特に給餌量が過多の場合、余った餌が腐敗したり、あるいは必要量以上の給餌のため肥満などの原因となり健康管理上好ましくない。
【0006】
本発明では前述の問題点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、給餌対象動物の活動量に応じた必要量を給餌することができる給餌システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、動物の活動量を計測する活動量計測手段及び該活動量計測手段で計測された活動量データを送信する活動量データ送信手段を有する活動量計測送信装置と、前記活動量データを受信する活動量データ受信手段、前記動物に給餌する給餌手段、前記活動量データ受信手段で受信した活動量データから当該動物の消費エネルギ量を演算してこの消費エネルギに基づいて前記給餌手段からの給餌量を制御する制御手段を有する給餌装置とを、備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、給餌対象動物の活動量に応じた必要量を給餌することができ、給餌が過剰になったり、過小となって動物の健康への影響を与えるようなこともない。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記給餌手段には、残っている餌の量を計測する手段を設けているたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明によれば、残っている餌の量を知ることで、給餌対象動物の健康具合を知ることも可能となる上に次回の給餌量に反映させることができ、しかも残った餌の腐敗などを未然に防ぐことも可能となる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、給水手段と、前記活動量データに基づいて前記給水手段で行う給水の量を演算する給水量演算手段とからなる給水装置を付設していることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明によれば、給餌対象動物の活動量に応じて適切な給水量を与えることが可能となる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1乃至3の何れかの発明において、前記給餌手段は、複数の種類の餌を供給する供給する手段を備え、前記動物の活動量に応じて餌の混合比を変化させることを可能としたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明によれば、動物の活動量に応じて栄養やエネルギ等の過不足が生じない適切な餌を与えることができる。
【0015】
請求項5の発明では、請求項1乃至4の何れかの発明において、前記活動量計測手段は給餌対象動物の睡眠時間の計測する機能を有し、前記制御手段は、活動量計測手段で計測された睡眠時間から当該動物に対する給餌時刻あるいは給餌量を変化させることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明によれば、給餌対象動物の睡眠時間から起床時刻に対応した給餌時刻を設定することが可能となり、また給餌量も睡眠時間から給餌対象動物の健康状態に対応させることができる。
【0017】
請求項6の発明では、請求項1乃至5の何れかの発明において、前記給餌装置に動物の体重を計測する体重計を有していることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明によれば、体重から給餌対象動物の健康状態の把握ができ、またそれに応じて給餌量の決定も可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、給餌対象動物の活動量に応じた必要量を給餌することができ、給餌が過剰になったり、過小となって動物の健康への影響を与えるようなこともないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明を実施形態により説明する。
(実施形態1)
本実施形態の給餌システムは、図1に示すように活動量計測送信装置1と、給餌装置2から構成される。
【0021】
活動量計測送信装置1は、給餌対象となる各動物に装着するものあって、装着動物の活動量の計測を常時行う活動量計測手段3と、計測された活動量のデータを電波等のワイヤレス通信を用いた一定時間毎に送信する活動量データ送信手段4とで構成される。
【0022】
活動量計測手段3は、例えば加速度センサにより動物が動いた振動を計測して演算処理することにより、当該動物の活動量を算出する演算処理機能を備えたもので、演算処理機能には当該動物の体重を予め登録でき、演算時にはこの登録された動物の体重と、加速度センサが検知する加速度の積と、加速度センサの動作時間によりエネルギ量として活動量を演算するものである。つまり計測された加速度は体重の全てに加速度が与えられる場合は少ないので、実際には活動量はエネルギ量として表し、エネルギ量は近似式で与えられる。
【0023】
単位時間当たり消費エネルギの近似式は式(1)の通りである。
【0024】
E=m×a×α …(1)
ここで E:求めるエネルギ量
m:動物の体重
a:単位時間当たりの加速度変動値
α:動物毎に異なる係数
このように活動量計測手段3で演算された単位時間当たりのエネルギ量を積算することにより、1日あるいは午前中などといった食事単位毎のエネルギ量を演算することができる。給餌対象動物によって食事回数は異なるので、それぞれの動物に応じた食事単位毎のエネルギ量を給餌装置2側に設けた制御手段6により演算する。
【0025】
活動量データ送信手段4は活動量計測手段3により計測演算された活動量データを、一定時間毎に、例えば無線電波で給餌装置2側の活動量データ受信手段5に送信する。
【0026】
給餌装置2は、活動量計測送信装置1の活動量データ送信手段4から送信されてくる活動量データを受信する活動量データ受信手段5と、給餌装置2全体の演算処理・制御処理を担う制御手段6と、給餌対象動物が食べる餌を貯留して例えば給餌トレーに餌を排出するための給餌手段7と、給餌手段7で貯留している残餌の量を計測する残量計測手段8と、表示手段15とから構成され、外部にはデータ蓄積手段9、給水装置10が付設され、また必要に応じて気候測定手段13,動物の体重を測定する体重計14が付設される。
【0027】
而して、図2に示す流れ図の(S1)において、活動量計測送信装置1では活動量計測手段3により給餌対象動物の活動量が計測され、その計測された活動量データが活動量データ送信手段4により(S2)において一定時間間隔で給餌装置2へ送信される。給餌装置2では活動量データとして送られてくる単位時間当たりのエネルギ量を積算して給餌までの消費エネルギ量を(S3)で演算し、この消費エネルギ量に基づいて給餌対象動物毎に定められた給餌時間に与える給餌量を計算し(S4)、この計算した給餌量を給餌手段7が給餌トレーに排出する餌の量として決定する。この給餌手段7ではこの決定した給餌量を目標値として餌を計量手段7aで計量しつつ、対象動物用の給餌トレーに排出し(S6)、給餌対象動物に給食を行う。
【0028】
ここで、対象動物の体調や気候などにより、餌の量が多かったり少なかったりといった場合がある。また餌の量が多かった場合には、餌が腐敗したりして衛生上問題がある。
【0029】
その解決手段として、本実施形態では残餌量を計測する残量計測手段8により残した給餌トレー上に残った餌の量を計量する(S7)。
【0030】
ここでS3で消費エネルギ量の演算を行った後、活動量データ、更にS4で計算した給餌量のデータ、S7で残量計測手段8により計測した残餌量のデータを夫々の段階でデータ蓄積手段9に制御手段6の制御の下で蓄積保存する。
【0031】
ここで上述の残餌量データは、次回の給餌量を制御手段6が計算する際に、給餌量が給餌対象動物にとって適量となるように調整するためにフィードバックされる。尚残餌がある場合には、残餌を排出する装置を付加して、次回の給餌まで残らないようにすることも考えられる。
【0032】
更に天候なども摂取する餌の量に影響する要因となるので、本実施形態では、気候測定手段13によって温度、湿度、天気(照度や降水量)などにより気候測定を行い、その測定データを制御手段6の制御の下でデータ蓄積手段9に蓄積保存するとともに、その測定結果を、給餌手段6が演算する給餌量に反映させるようにしてある。例えば気温が下がっているものの、給餌対象動物の活動量が変わらない場合には、体温調節のため餌の量を増やすなど、気候的な要因により給餌量を変える処理ができる。活動量の変化は、データ蓄積手段9に蓄積している活動量データと最新の活動量データとを制御手段6のデータ比較機能6aにより比較して判断するようになっている。
【0033】
ところで、餌の量や天候気候により、水分の摂取量も異なってくる。そのため給水も必要以上にトレーなどに給水すると、水が汚染したりして衛生上問題がある。そのため、本実施形態では付設する給水装置10を制御して、必要な量を給水するようにしている。
【0034】
つまり給水装置10は、データ蓄積手段9に蓄積されている天候、給餌量、給餌対象動物の活動量の各データを制御手段6の制御の下で受け取って給水量を演算する給水量演算手段11と、この給水量演算手段11によって演算された給水量を目標として給水量を制御できる給水手段12とで構成され、給水手段12から給水トレーへの給水量を必要な量となるようにしてある。
【0035】
更に、また本実施形態では、給餌対象動物の体重を測定する体重計14を付設し、活動と給餌の結果が反映する給餌対象動物の体重を測定して、その測定した体重データを制御手段6の制御の下でデータ蓄積手段9に蓄積保存し、この保存した体重データと最新の体重データとをデータ比較機能6aにより比較することで、対象動物の現在の健康状態を制御手段6で把握するようにしている。例えば体重の増加が著しい場合には制御手段6では演算で求める給餌量を減量調節するなど給餌量にフィードバックするようになっている。勿論体重の減少が著しい場合に給餌量を増量調整するようにフィードバックを行う。
【0036】
また活動量計測送信装置1を給餌対象動物に常時装着しておくことにより、給餌装置2の制御手段6で当該動物の睡眠の状態を検出することができる。つまり睡眠すると極端に身体の加速度が減少するため、その活動量データに基づいて睡眠を判断することができる。従って活動量計測手段3において、給餌対象動物の睡眠時間を計測するようにし、その計測データを活動量データとともに給餌装置2へ送信し、給餌装置2では睡眠時間データから、起床時間を検出することによって給餌時間を決定するようにし、また計測された睡眠時間から当該動物の健康状態を把握する精度も向上し、健康状態に応じて給餌量の決定を行うようにしても良い。
【0037】
ところでデータ蓄積手段9では活動量、給餌量、残餌量、体重、温度、湿度、天気のデータを蓄積保存するようになっているが、蓄積されている活動量データや体重データを最新のそれとを制御手段6のデータ比較機能6aで比較して、給餌量に反映させるようにしているが、蓄積したデータを用いることで給餌対象動物の健康状態を把握することが可能である。例えば天候が良いのに活動状態が低い場合や、残餌量が少ない場合などを比較手段13により判断することにより体調不良を検出することができる。つまり制御手段6で給餌対象動物の健康管理をも行い、体調不良の検出があった場合には給餌装置2に具備した表示手段15に表示することにより、飼い主に知らせるようになっている。また また、給餌対象動物の運動が不足していると判断されるような場合にはデータ比較機能6aにより過去のデータと比較を行い、運動不足に応じた散歩メニューや放牧時間などを表示させることも可能である。
(実施形態2)
本実施形態は、給餌装置2において、その種類毎、例えば図3に示すようにカルシウム強化の餌A、ビタミン強化の餌B、高エネルギの餌Cというように異なる種類の餌を各に貯留する貯留タンク7A〜7Cを備えそれらの餌A〜餌Cの混合比を混合比変更手段70で調整して給餌トレーへ排出できるようにした給餌手段7を設けた点に特徴あり、この混合比変化手段70の混合比の変更制御を制御手段6により行うようになっている。勿論各貯留タンク7A〜7Cに夫々の排出量を計測する計量手段を備えているものとする。
【0038】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、全体構成の図示及び構成要素の説明は省略する。
【0039】
而して例えば給餌対象動物の体重が増加したことが体重計14の計量で分かったとき、制御手段7は、給餌エネルギ量を減らすように給餌量を調整する必要があると判断し、高エネルギの餌Cを止め、ビタミンやカルシウムなどに重点を置いた餌A,Bを給餌するように混合比変更手段70に指令を与えて混合比を変更させる。
【0040】
また活動量データと気候測定手段13の測定データから給餌対象動物の活動量が多い割に、気温が低い場合と判断される場合には制御手段7は、高エネルギの餌Cを主体とした給餌を行うように混合変更手段70に対して指令を与える。
【0041】
このようにして給餌対象動物の活動量、体重、天候等を考慮して給餌する餌の種類やその混合比を自動的に制御することで、動物の体調に合った適切な種類と量の餌を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態1のシステム構成図
【図2】実施形態1の動作の流れ図である。
【図3】実施形態2の要部の構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 活動量計量送信装置
2 給餌装置
3 活動量計測手段
4 活動量データ送信手段
5 活動量データ受信手段
6 制御手段
6a データ比較機能
7 給餌手段
7a 計量手段
8 残量計測手段
9 データ蓄積手段
10 給水装置
11 給水量演算手段
12 給水手段
13 気候測定手段
14 体重計
15 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の活動量を計測する活動量計測手段及び該活動量計測手段で計測された活動量データを送信する活動量データ送信手段を有する活動量計測送信装置と、前記活動量データを受信する活動量データ受信手段、前記動物に給餌する給餌手段、前記活動量データ受信手段で受信した活動量データから当該動物の消費エネルギ量を演算してこの消費エネルギに基づいて前記給餌手段からの給餌量を制御する制御手段を有する給餌装置とを、備えたことを特徴とする給餌システム。
【請求項2】
前記給餌手段には、残っている餌の量を計測する手段を設けているたことを特徴とする請求項1記載の給餌システム。
【請求項3】
給水手段と、前記活動量データに基づいて前記給水手段で行う給水の量を演算する給水量演算手段とからなる給水装置を付設していることを特徴とする請求項1又は2記載の給餌システム。
【請求項4】
前記給餌手段は、複数の種類の餌を供給する供給する手段を備え、前記動物の活動量に応じて餌の混合比を変化させることを可能としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の給餌システム。
【請求項5】
前記活動量計測手段は給餌対象動物の睡眠時間の計測する機能を有し、前記制御手段は、活動量計測手段で計測された睡眠時間から当該動物に対する給餌時刻あるいは給餌量を変化させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の給餌システム。
【請求項6】
前記給餌装置に動物の体重を計測する体重計を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか記載の給餌システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−271228(P2006−271228A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93126(P2005−93126)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】