説明

給餌器

【課題】小動物の給餌量を正確に測定することができかつ餌の交換が容易で、さらに、大きさの異なる小動物であっても、給餌口、餌の高さが調整可能な給餌器を提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、小動物の餌を収容し給餌に使用される給餌器であって、下枠体と、上部に給餌口を備え前記下枠体に着脱可能に係止する上枠体と、前記給餌口を覆い側部が一箇所開口し前記上枠体に固定されたカバーと、前記上下枠体が嵌着して形成するケース内に配置され内部に前記餌を収容し上部に穴を形成した内容器と、からなり、前記小動物が前記カバーに頭部を入れ前記給餌口及び穴から前記餌を食べることを特徴とする給餌器の構成とした。さらに、内容器の内部に高さ調節可能な皿、又は/及び給餌口の開口度を調節するプレートを備える給餌器の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験用の小動物に餌を与えるための容器(給餌器)に関し、より詳しくは、正確な給餌量を測定できる給餌器に関する。
【背景技術】
【0002】
実験用の小動物としては、実験用のマウス、ラットなどのげっ歯類、ウサギなどが例示できる。従来実験用の小動物の給餌器は、特許文献1のように、ケージ本体2に載置された網状のケージ蓋1に固形の餌を置き、ケージ内のマウスなどの実験用小動物が上向きで餌を食するタイプが主流であった。
【0003】
しかしながら、特許文献1のようなケージでは、小動物が、餌をケージ内に食べこぼし、さらにそれら餌は糞尿により汚染され、実験用小動物の給餌量を正確に測定することはできなかった。
【0004】
他方、特許文献2のような小動物用給餌器の発明も公開されている。特許文献2に記載の発明は、上面開口型給餌器と、その開口上に重接して設けた筒にあって、該筒は一端を封鎖し、他の一端を開口して、その両端の間位低部に摂餌口を有するよう摂餌誘導筒として設け、餌のこぼれ、散らかし、排泄物等による汚染の無い給餌器というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−253078号公報
【特許文献2】特開平8−114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の給餌器では、底部が開口した一体の筒状の支持体3に、摂餌誘導筒1を貫通支持しており、摂餌誘導筒1が脱落する恐れがあった。さらに、底部が開口しているために小動物が支持体3より突出している摂餌誘導筒1を持ち上げ、直接上面開放型給餌器2から餌を食べ、食べ散らす恐れもあった。また、摂餌誘導筒1は、支持体3に貫通し支持されているため大きさの異なる小動物においては、個別に摂取誘導筒1及び支持体3を用意しなければならなかった。
【0007】
そこで、本発明は、小動物が、餌を給餌器外に食べこぼすことがなく、餌が糞尿により汚染されることがなく、また給餌器の転倒がなく、小動物の給餌量を正確に測定することができ、かつ餌の交換が容易で、さらに、大きさの異なる小動物であっても、給餌口、餌の高さ調整可能な給餌器を提供する給餌器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、小動物の餌を収容し給餌に使用される給餌器であって、下枠体と、上部に給餌口を備え前記下枠体に着脱可能に係止する上枠体と、前記給餌口を覆い側部が一箇所開口し前記上枠体に固定されたカバーと、前記上下枠体が嵌着して形成するケース内に配置され内部に前記餌を収容し上部に穴を形成した内容器と、からなり、前記小動物が前記カバーに頭部を入れ前記給餌口及び穴から前記餌を食べることを特徴とする給餌器の構成とした。
【0009】
また、下枠体を、底面板から正面板或いは背面板及び左右下側面板が起立し、前記左右下側板にはガイドが突出した下枠体とし、上枠体を、上面板から背面板或いは正面板及び左右上側面板が垂下し、前記左右上側面板には溝が形成され、さらに前記溝の上に連設して前記ガイドを収納する係止溝が形成された上枠体とし、前記溝に前記ガイドをスライドさせたて挿入した後に前記上枠体を下げて前記ガイドを前記係止溝に嵌め前記上下枠体を着脱可能に係止することを特徴とする前記記載の給餌器の構成とした。
【0010】
さらに、前記内容器の内部に、前記餌を載置する皿を備えることを特徴とする前記いずれかに記載の給餌器の構成とし、また前記皿が、高さ調節可能であることを特徴とする前記記載の給餌器。
【0011】
前記カバーの内底部に載置され、前記給餌口の開口度を調節する孔を形成したプレートを備えることを特徴とする前記いずれか記載の給餌器の構成とし、また前記カバーの幅又は/及び高さを可変とし、位置固定することを特徴とする前記のいずれか1項に記載の給餌器。
【0012】
前記上下枠体及びカバーが、ポリカーボネート製で、オートクレーブ可能としたことを特徴とする前記いずれかに記載の給餌器の構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明である給餌器は、上記構成であるので、小動物が、餌を給餌器外に食べこぼすことがなく、餌が糞尿により汚染されることがなく、また給餌器の転倒がなく、小動物の給餌量を正確に測定することができ、餌の交換が容易である。
【0014】
また、カバーの幅、高さ、給餌口の大きさ、餌の高さが調節可能であるので、大きさ異なる小動物でも使用できるので汎用性が高い。さらに、本発明は、各面を別体パーツとして、ネジで組み立てることにより、破損したパーツだけ交換でき経済的である。特に、オートクレーブ殺菌を行う給餌器の場合には好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明である給餌器の分解部分透視斜視図である。
【図2】本発明である給餌器の分解部分透視正面図である。
【図3】本発明である給餌器の分解部分透視平面図である。
【図4】本発明である給餌器の分解部分透視左側面図である。
【図5】本発明である給餌器の分解部分透視背面図である。
【図6】本発明である給餌器の分解部分透視底面図である。
【図7】本発明である給餌器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明である給餌器について詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に示すように、本発明である給餌器1は、下枠体2と、下枠体2に着脱可能に係止され上部に給餌口3gを備える上枠体3と、上枠体3に固定された給餌口3gへの小動物の誘導路4fとなるカバー4と、餌を内部に収容する内容器5とからなる。さらに、必要に応じて、内容器5の内部に載置される皿6と、給餌口3gの開口度を調節するプレート7を備える。
【0018】
そして、実施例1の構成にすることで、小動物がカバー4に頭部を入れ、臀部をカバー4の中に位置することなく、孔7a(8a、9a)、給餌口3g及び穴5cから餌を食べることにより、餌の食べ散らかし等の従来の問題が解決される。
【0019】
図2〜図6に、本件発明の給餌器1の分解部分透視正面、平面、左側面、背面、底面を示した。それら図の(A)は上枠体3及びカバー4、(B)は内容器5、(C)は下枠体2である。点線は透視部を示す。また、破線はネジ及びネジ穴の位置である。図1、図7ではネジ及びネジ穴を省略した。なお、実施例1では、左右対称であるので、右側面は省略した。
【0020】
下枠体2は、上枠体3と組み合わせて内部空間を形成するケース10となり、内部空間への小動物の侵入を阻止する。実施形態の一例である下枠体2は、底面板2aから正面板2b及2b及び左右下側面板2c、2dが起立する。そして、左右下側面板2c、2dの外方にはガイド2eが突出する。
【0021】
底面板2aは平面四角形に限定されることなく、円形等であっても差し支えない。ガイド2eは、突条に突出しているが、その形状も限定されることなく、分断されていてもよい。後述の係止溝3fに係止できればよい。
【0022】
上枠体3は、上部に給餌口3gを開口させ下枠体2を着脱可能に係止する。下枠体2に嵌合する上枠体3の実施形態の一例は、上面板3aから背面板3b及び左右上側面板3c、3dが垂下する。そして、左右上側面板3c、3dの内方には溝3eが形成され、さらに溝3eの上に連設してガイド2eを収納し、水平方向のスライドを阻止する係止溝3fが形成される。
【0023】
このように嵌合する上下枠体3、2は、溝3eにガイド2eをスライドさせたて挿入した後に上枠体3を下げてガイド2eを係止溝3fに嵌めることで、上下枠体3、2を着脱可能に係止することができる。
【0024】
なお、実施例1では、下枠体2の左右下側面板2c、2dと上枠体3の左右上側面板3c、3dは、下枠体2のものが内側、上枠体2のものが外側に位置して嵌合するが、それら内外を逆に嵌合させてもよい。また、ガイド2eは左右下側面板2c、2dに、溝3e及び係止溝3fは左右上側面板3c、3dに形成されているが、逆にガイド2eを左右上側面板3c、3d、溝3c及び係止溝3fを左右下側面板2c、2dに形成してもよい。同様に、下枠体2の正面板2bと上枠体3の背面板3bも、正面板2bを下枠体2の背面側に、背面板3bを正面側に設けてもよい。
【0025】
カバー4は、上枠体3の上面板3aに固定される左右側壁4b、4cと、左右側壁4b、4cの上部に固定される上壁4aと、左右側壁4b、4c及び上壁4aの背面側から小動物通過を阻止する背壁4dとからなり、一箇所、ここでは正面側が開口4eし、給餌口3gを覆う。いずれの壁も小動物が通過できないものであればよく、ここでは板に限らず格子状のもの等もそれら壁に含まれるものとする。
【0026】
カバー4を設けるとで、小動物は、必ずカバー4の内部で餌を食し、給餌器1外部に餌を食べ散らかさないこととなり、給餌量を正確に測定することができるとともに、給餌口3gからの小動物の排泄物の混入もない。従って、カバー4の幅(左右側壁4b、4c間の内部距離)及び高さ(上面板3aから上壁4aまでの距離)は、対象小動物がUターンできない幅及び高さとし、実験用小動物の大きさにより適宜変更する。
【0027】
カバー4の形状は側面に一箇所開口していれば、直方体、正面半円型などが採用できるが、その形状は特に限定されない。なお、幅可変にする場合には直方体で各壁は別体とすることが好ましい。
【0028】
さらに、カバー4は、幅可変としてもよい。幅可変にする手段として、左右の両側壁を幅方向にスライドさせても、左右いずれか一方の側壁だけをスライドさせてもよい。位置固定は、カバー4の上壁4a及び、上枠体3の上面にネジ穴を複数穿設しておき、対象小動物の大きさに合わせて左右側壁4b、4cをネジで係止すればよい。その他、幅を可変とする手段は問わない。
【0029】
また、カバー4の高さも可変としてもよい。高さ可変とする手段としては、左右側壁4b、4cの内側の同位置に対で溝を形成し、当該溝に上壁4aを挿入し、固定すればよい。固定手段は問わないが、ネジ留め、嵌合などが例示できる。幅可変と高さ可変を共に行う場合には、プレート7(8、9)の幅もカバー4の幅に合うよう複数種類備えることを要する。
【0030】
上下枠体3、2及びカバー4の素材としては、好ましくは透明でオートクレーブ可能な素材を使用する。例えば、ポリカーボネートが例示できる。
【0031】
内容器5は、図7に示すように、上下枠体3、2が嵌着して形成するケース10内に配置され、その内部に餌11を収容し、上部に穴5cが形成されている。図7は、上下枠体3、2の左右側面の中央位置での縦断面で、正面からの見たときの図である。
【0032】
ここでは、内容器5は、下容器5aと下容器5aに被さる穴5cを形成した蓋5bとを例示したが、従来から使用されているものでよい。なお、穴5cの形状は特に限定されるものでない。
【0033】
内容器5の素材は、ステンレスなどが好適であるが、小動物の歯傷に耐える素材であれば特に限定されない。滅菌可能であることが望ましい。
【0034】
収納される餌11は、実験の目的、対象小動物に応じて適宜選択され、従来から使用されている粉体、顆粒、固型物、ペースト等に対応し、その形態は問わない。
【0035】
必要に応じて採用する皿6は、内容器5の内部形状に等しい形状で隙間無く収納されることが好ましい。ここでは、内容器5が円柱形であるので皿6の平面円形で、その平面中央にはネジが固定され、その外周には上方に向け縁6bが形成されている。
【0036】
図7に示すように、ネジは取っ手6aとなり、縁6bは餌が皿6から内容器5にこぼれ落ちを防ぐ機能を発揮する。皿6を採用することで、餌の交換が容易であること、餌の高さを容易に調節することができる。皿6の高さを調節する手段として、図7に示したように、リング6cなどの台座を用いてもよい。
【0037】
さらに、図7に示すように、皿6は重ねて内容器5の内部に収納することで、皿6の高さ、即ち餌11の高さを対象小動物に応じて簡易に調節することができる。この場合には、取っ手6aの長さは縁6bの高さ以下であることが望ましい。複数毎の皿6の縁6bの高さは同じであっても、1の皿6の縁6bは特定の小動物に好適な縁6bの高さとしてもよい。
【0038】
皿6の素材は、ステンレスなどが好適であるが、小動物の歯傷に耐える素材であれば特に限定されない。滅菌可能であることが望ましい。
【0039】
プレート7(8、9)は、給餌口3gの開口度を対象小動物の頭、顔、口の大きさに合わせて調節する孔7a(8a、9a)を有し、カバー4内の底部に載置される。孔の開口度は、孔7a、8a9aの順で段階的に大きくなる。対象小動物に対して孔が大きいと食べこぼしの原因になり、孔が小さいと給餌において小動物に不要なストレスを与えてしまう。プレートの素材は、ステンレスなどが好適であるが、小動物の歯傷に耐える素材であれば特に限定されない。滅菌可能であることが望ましい。
【0040】
このようにして皿6の高さを調節すること、又は/及び給餌器1が複数毎のプレートを備えることで、1の給餌器1を頭の大きさ、口の形状異なる小動物に使用することができることとなる。
【0041】
本発明は、ネズミの成長(週齢)に合わせて、筒体4の幅及び高さ、皿6(餌11)の高さ、給餌口3gの開口度を最適な状態に変更できる点、特に優れている。
【符号の説明】
【0042】
1 給餌器
2 下枠体
2a 底面板
2b 正面板
2c 左下側面板
2d 右下側面板
2e ガイド
3 上枠体
3a 上面板
3b 背面板
3c 左上側面板
3d 右上側面板
3e 溝
3f 係止溝
3g 給餌口
4 カバー
4a 上壁
4b 左側壁
4c 右側壁
4d 背壁
4e 開口
4f 誘導路
5 内容器
5a 下容器
5b 蓋
5c 穴
6 皿
6a 取っ手
6b 縁
6c リング
7 プレート
7a 孔
8 プレート
8a 孔
9 プレート
9a 孔
10 ケース
11 餌
12 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物の餌を収容し給餌に使用される給餌器であって、
下枠体と、上部に給餌口を備え前記下枠体に着脱可能に係止する上枠体と、前記給餌口を覆い側部が一箇所開口し前記上枠体に固定されたカバーと、前記上下枠体が嵌着して形成するケース内に配置され内部に前記餌を収容し上部に穴を形成した内容器と、からなり、
前記小動物が前記カバーに頭部を入れ前記給餌口及び穴から前記餌を食べることを特徴とする給餌器。
【請求項2】
下枠体を、底面板から正面板或いは背面板及び左右下側面板が起立し、前記左右下側板にはガイドが突出した下枠体とし、
上枠体を、上面板から背面板或いは正面板及び左右上側面板が垂下し、前記左右上側面板には溝が形成され、さらに前記溝の上に連設して前記ガイドを収納する係止溝が形成された上枠体とし、
前記溝に前記ガイドをスライドさせたて挿入した後に前記上枠体を下げて前記ガイドを前記係止溝に嵌め前記上下枠体を着脱可能に係止することを特徴とする請求項1に記載の給餌器。
【請求項3】
さらに、前記内容器の内部に、前記餌を載置する皿を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給餌器。
【請求項4】
前記皿が、高さ調節可能であることを特徴とする請求項3に記載の給餌器。
【請求項5】
前記カバーの内底部に載置され、前記給餌口の開口度を調節する孔を形成したプレートを備えることを特徴とする請求項1〜請求項4にいずれか1項に記載の給餌器。
【請求項6】
前記カバーの幅又は/及び高さを可変とし、位置固定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の給餌器。
【請求項7】
前記上下枠体及びカバーが、ポリカーボネート製で、オートクレーブ可能としたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の給餌器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−115223(P2012−115223A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269835(P2010−269835)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構「消化管免疫細胞の活性化と機能成熟機構の解明」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(310016991)株式会社アイ・シー・エム (1)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】