絶縁カバ−用取付け工具
【課題】本発明は、絶縁カバ−を適正に拡開して確実に把持せしめつつ、架空電線に容易に、しかも、迅速、かつ確実に取付けることが出来る、絶縁カバ−用取付け工具を提供するものである。
【解決手段】略コ字形状とされた固定把持片1の下端部に絶縁操作棒用接続金具2が取付けられると共に、同上端部には略下向きL字形状とされた作動棒29付き可動把持片17が付勢部材20を介して回動自在に軸着されてなり、上記固定把持片1と可動把持片17との間に拡開状の絶縁カバ−31a・31bを下向き状に把持せしめつつ可動把持片17を下方に回動せしめ、絶縁カバ−31a・31bを閉作動せしめて架空電線40に取付けるべく構成されている。
【解決手段】略コ字形状とされた固定把持片1の下端部に絶縁操作棒用接続金具2が取付けられると共に、同上端部には略下向きL字形状とされた作動棒29付き可動把持片17が付勢部材20を介して回動自在に軸着されてなり、上記固定把持片1と可動把持片17との間に拡開状の絶縁カバ−31a・31bを下向き状に把持せしめつつ可動把持片17を下方に回動せしめ、絶縁カバ−31a・31bを閉作動せしめて架空電線40に取付けるべく構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工法により架空電線の芯線露出部などに取付けて使用する絶縁カバ
−の取付け工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、架空電線に事故が生じた場合などにおける架空電線工事においては
、安全確保のために工事個所を無電圧状態にせしめる必要があるも、工事個所以外の送電
を停止せしめることが出来ないものである。このため、一般に工事個所を挾んでバイパス
工事終了後にバイパスケ−ブルでもって繋れたクランプを取付けるべく、架空電線の被覆
を剥がした個所、また、クランプに絶縁被膜を貫通する刃型電極を設けた場合における残
留貫通個所など架空電線の芯線露出部を補修して電流の漏洩や雨水の侵入を防止せしめる
必要があるものである。
【0003】
ところで、かかる目的に使用される絶縁カバ−としては、例えば、両側一対とされた絶
縁プラスチック製の略半筒状カバ−部材がヒンジを介して開閉自在に連結され、同他側自
由端が係着部材を介して係着自在とされると共に、両側カバ−部材の外周面には仮止め用
掛止片が形成され、しかも、両側カバ−部材の内周面には各々両端に仕切壁を介して柔軟
性を有する絶縁混和物や絶縁パテなどの絶縁シ−ル材が充填されたものが開示されている
(特開平11−136829号公報参照)。
【0004】
そして、上述の如く構成された従来の絶縁カバ−は、両側のカバ−部材をヤットコなど
間接活線把持工具の把持片間にヒンジの弾力性を利用して略半開状に仮止め掛止保持せし
めつつ、絶縁シ−ル材を架空電線の芯線露出個所に外嵌状に当てがうと共に、把持片を閉
作動せしめて両側のカバ−部材を係着部材でもって水密状に係着封止せしめることにより
取付けるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−136829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の如く構成された従来の絶縁カバ−は、間接活線把持工具を操作せしめ
つつ両側一対のカバ−部材を把持片間に略半開状に仮止め掛止把持せしめることにより取
付け作業を行うものであるから、把持する両側カバ−部材の把持姿勢や把持力、あるいは
拡開角度などを適正に保持せしめずらいものである。このため、絶縁カバ−の取付け作業
が非常に面倒で手間がかかり、極めて作業能率が悪いのみならず、非常に熟練性が要求さ
れるものとなっていた。
【0007】
本発明は、従来の問題点を解決し、絶縁カバ−を適正に拡開して確実に把持せしめつつ
、架空電線に容易に、しかも、迅速、かつ確実に取付けることが出来る、絶縁カバ−用取
付け工具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、略コ字形状とされた固定把持片の
下端部に絶縁操作棒用接続金具が取付けられると共に、同上端部には略下向きL字形状と
された作動棒付き可動把持片が付勢部材を介して回動自在に軸着されてなり、上記固定把
持片と可動把持片との間に拡開状の絶縁カバ−を下向き状に把持せしめつつ可動把持片を
下方に回動せしめ、絶縁カバ−を閉作動せしめて架空電線に取付けるべく構成されてなる
ことを特徴とする、絶縁カバ−用取付け工具を要旨とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、固定把持片の内方に出没作動せしめて把持径を調整せしめるべ
くその背壁に略D字形状の調整板が回転規制部材を介して回転自在に軸着されてなること
を特徴とする、請求項1記載の絶縁カバ−用取付け工具を要旨とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、絶縁カバ−の外周面に当接して係止せしめるべく可動把持片の
内面に凹凸面部が形成されてなることを特徴とする、請求項1及び2記載の絶縁カバ−用
取付け工具を要旨とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、可動把持片の開き角度を調整せしめるべく固定把持片の頂壁に
回動規制部材が取付けられてなることを特徴とする、請求項1〜3記載の絶縁カバ−用取
付け工具を要旨とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、固定把持片の底壁内面に滑り止め部材が取付けられてなること
を特徴とする、請求項1〜4記載の絶縁カバ−用取付け工具を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、上述のように構成されているから、接続金具に絶縁操作棒を接
続せしめると共に、固定把持片と可動把持片との間に拡開状の絶縁カバ−を下向き状に確
実に把持せしめつつ、作動棒を介して絶縁操作棒などにより可動把持片を下方に回動せし
め、絶縁カバ−を閉作動せしめて架空電線に取付けることが出来るものであって、従来例
に比して、絶縁カバ−を適正に拡開して確実に把持せしめつつ架空電線に容易に、しかも
、迅速、かつ確実に取付けることが出来るものである。
【0014】
請求項2記載の発明は、上述のように構成されているから、調整板を適宜回転作動せし
めて固定把持片内に出没せしめ、固定把持片内の把持径を自由に調整せしめることが出来
るものであって、ひいては、径の異なる大小の絶縁カバ−を確実に把持せしめつつ取付け
作業を行うことが出来るものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、上述のように構成されているから、絶縁カバ−の外周面を可動
把持片内面の凹凸面部に当接係止せしめることが出来るものであって、ひいては、絶縁カ
バ−を確実に把持せしめつつ取付け作業を行うことが出来るものである。
【0016】
請求項4記載の発明は、上述のように構成されているから、回動規制部材により可動把
持片の開き角度を絶縁カバ−の径に応じて自由に調整せしめることが出来るものであって
、ひいては、径の異なる大小の絶縁カバ−を確実に把持せしめつつ取付け作業を行うこと
が出来るものである。
【0017】
請求項5記載の発明は、上述のように構成されているから、滑り止め部材により絶縁カ
バ−の滑りを有効に防止せしめることが出来るものであって、ひいては、絶縁カバ−を確
実に把持せしめつつ取付け作業を行うことが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2のA部拡大断面図である。
【図4】図2のB部拡大断面図である。
【図5】図2のC部拡大断面図である。
【図6】図1の一部破断拡大平面図である。
【図7】図6のI−I線に沿う断面図である。
【図8】大径状の絶縁カバ−31aを示す正面図である。
【図9】大径状の絶縁カバ−31aを把持せしめた使用状態を示す断面図である。
【図10】大径状の絶縁カバ−31aを閉作動せしめて架空電線40に取付けた使用状態を示す断面図である。
【図11】小径状の絶縁カバ−31bを把持せしめた使用状態を示す断面図である。
【図12】小径状の絶縁カバ−31bを架空電線40に取付けた使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に示す一実施例に基づいて詳細に説明する
。
【0020】
図1乃至図7は本発明の一実施例を示すもので、同図中、1は所要の幅と高さを備えた
略コ字形状の固定把持片、2は後記する絶縁操作棒37を接続せしめるべく該固定把持片
1の下端部に取付けられた接続金具、3は後記する調整板5を取付けるべく固定把持片1
の背壁4中央に形成された縦長状の取付け孔、5は固定把持片1の内方に出没作動せしめ
てその把持径を調整せしめるべく該取付け孔3に軸6を介して回転自在に嵌合軸着された
略D字形状の調整板、7は該調整板5の同一円周上に形成された所要数の係合凹部、8は
該係合凹部7に係合して調整板5を所要の位置に停止せしめるべく背壁4にネジ孔9を介
して螺着されたボ−ルプランジャで、該ボ−ルプランジャ8はネジ孔9に螺着自在とされ
た雄ネジ付き筒状体10と、該筒状体10内に付勢バネ11でもって係合凹部7方向に付
勢保持されたロックボ−ル12とより構成されている。
【0021】
13は後記する絶縁カバ−31a・31bの把持時における滑りを防止せしめるべく上
記固定把持片1の底壁14内面に止着された滑り止めシ−ト、15は後記する可動把持片
17を回動自在に取付けるべく固定把持片1の頂壁16に切欠き形成された取付け部、1
7は該取付け部15に止ネジ19付き軸18を介して回動自在に嵌合軸着された略下向き
L字形状の可動把持片、20は該可動把持片17を取付け部15の内側壁面に圧接してそ
の自重による回動作動を防止せしめるべく軸18に巻装された付勢バネ、21は固定把持
片1の頂壁16先端側に位置すべく可動把持片17の一側上端部に形成された係合凹部、
22は該係合凹部21に係合して可動把持片17の上方回動を規制するインデックスプラ
ンジャで、該インデックスプランジャ22は固定把持片1の頂壁16一側にネジ孔23を
介して螺着された中空状ネジ体24と、係合凹部21に係合せしめるべく該ネジ体24に
進退自在に挿入されたツマミ付きロックピン25と、該ロックピン25を係合凹部21方
向に付勢せしめる付勢バネ26とより構成されている。27は後記する絶縁カバ−31a
・31bの外周面に当接して係止せしめるべく可動把持片17の内面に形成された凹凸面
部、28は後記する絶縁カバ−31a・31bの掛止部などを掛止せしめるべく該凹凸面
部27の先端縁に切欠き形成された掛止部、29は可動把持片17を回動作動せしめるべ
くその頂壁に起立状に螺着された作動棒、30は該作動棒29の先部に取付けられたリン
グである。
【0022】
その他、31aは大径状の絶縁カバ−を示すもので、該絶縁カバ−31aは両側一対と
された略半筒状カバ−部材32の一側がヒンジ33を介して開閉自在に連結されると共に
、同他側自由端が係合片34と係合孔35とを介して係着自在とされ、該両側カバ−部材
32内の所要個所に柔軟性を有する絶縁シ−ル材36が充填されている(図8参照)。3
1bは小径状とされた同相似形状の絶縁カバ−、37は固定把持片1に接続金具2を介し
て接続自在とされた絶縁操作棒、38はリング30に引掛けつつ作動棒29を介して可動
把持片17を回動作動せしめるフック39付き絶縁操作棒、40は架空電線を示す。
【0023】
次に、上述の如く構成された実施例の作動を図9乃至図12に基づいて説明する。
まず、固定把持片1に接続金具2を介して絶縁操作棒37を接続せしめたのち、取付け
るべき絶縁カバ−31a・31bの大きさに応じて固定把持片1の把持径と可動把持片1
7の角度を調整する。
即ち、絶縁カバ−31aが大径状を呈する場合には、図9に示すように、調整板5をボ
−ルプランジャ8により外方突出状に停止せしめて固定把持片1の把持径を大に調整せし
めると共に、インデックスプランジャ22のロックピン25を外方に引張して係合凹部2
1との係合を解除せしめ、可動把持片17を上方に回動してその開き角度を大に設定せし
める。しかるのち、絶縁カバ−31aを所要の角度に下向き状に拡開せしめつつ、一方の
カバ−部材32を固定把持片1の内面に滑り止めシ−ト13を介して当接せしめると共に
、同他方のカバ−部材32を可動把持片17内面の凹凸面部27に当接せしめ、固定把持
片1と可動把持片17との間に絶縁カバ−31aを下向き拡開状に把持せしめる。次いで
、絶縁操作棒37を操作せしめつつ所要の架空電線40に絶縁カバ−31aをアプロ−チ
せしめ、カバ−部材32内の絶縁シ−ル材36を架空電線40の所要個所に外嵌状に当て
がうと共に、フック39をリング30に引掛けつつ絶縁操作棒38でもって作動棒29を
下方に作動せしめ、これに連動して可動把持片17を下方に回動して閉作動せしめる。そ
して、図10に示すように、係合片34を対応する係合孔35に係合せしめて水密状に係
着掛止せしめることにより取付けるものである。
【0024】
逆に、絶縁カバ−31bが小径状を呈する場合には、図11に示すように、調整板5を
ボ−ルプランジャ8により内方突出状に停止せしめて固定把持片1の把持径を小に調整せ
しめると共に、インデックスプランジャ22のロックピン25を係合凹部21に係合せし
めて可動把持片17の開き角度を所定の角度に設定せしめる。しかるのち、絶縁カバ−3
1bを所要の角度に拡開せしめつつ、一方のカバ−部材32を固定把持片1内の突出調整
板5と滑り止めシ−ト13を介して当接せしめると共に、同他方のカバ−部材32を可動
把持片17内面の凹凸面部27に当接せしめ、固定把持片1と可動把持片17との間に絶
縁カバ−31bを下向き拡開状に把持せしめる。次いで、絶縁操作棒37を操作せしめつ
つ所要の架空電線40に絶縁カバ−31bをアプロ−チせしめ、カバ−部材32内の絶縁
シ−ル材36を架空電線40の所要個所に外嵌状に当てがうと共に、フック39をリング
30に引掛けつつ絶縁操作棒38でもって作動棒29を下方に作動せしめ、これに連動し
て可動把持片17を下方に回動して閉作動せしめる。そして、図12に示すように、係合
片34を対応する係合孔35に係合せしめて水密状に係着掛止せしめることにより取付け
るものである。
【0025】
なお、上述の如く絶縁カバ−31a・31bを架空電線40に取付けるさいにおいて、
接続金具2に絶縁操作棒37を接続せしめると共に、固定把持片1と可動把持片17との
間に拡開状の絶縁カバ−31a・31bを下向き状に確実に把持せしめつつ、作動棒29
を介して絶縁操作棒38などにより可動把持片17を下方に回動せしめ、絶縁カバ−31
a・31bを閉作動せしめて架空電線40に取付けることが出来るものであるから、従来
例に比して、絶縁カバ−31a・31bを適正に拡開して確実に把持せしめつつ架空電線
40に容易に、しかも、迅速、かつ確実に取付けることが出来る。また、調整板5を適宜
回転作動せしめて固定把持片1内に出没せしめ、固定把持片1内の把持径を自由に調整せ
しめることが出来るものであるから、径の異なる大小の絶縁カバ−31a・31bを確実
に把持せしめることが出来るのみならず、絶縁カバ−31a・31bの外周面を可動把持
片17内面の凹凸面部27に当接係止せしめることが出来るものであるから、絶縁カバ−
31a・31bを確実に把持せしめることが出来、また、インデックスプランジャ22に
より可動把持片17の開き角度を絶縁カバ−31a・31bの径に応じて自由に調整せし
めることが出来るものであって、ひいては、径の異なる大小の絶縁カバ−31a・31b
を確実に把持せしめつつ取付け作業を行うことが出来るものである。さらに、滑り止めシ
−ト13により絶縁カバ−31a・31bの滑りを有効に防止せしめることが出来るもの
であって、ひいては、絶縁カバ−31a・31bを確実に把持せしめつつ取付け作業を行
うことが出来るものである。
【0026】
なお、上記実施例において、調整板5の回転規制部材としてボ−ルプランジャ8、可動
把持片17の付勢部材として付勢バネ20、可動把持片17の回動規制部材としてインデ
ックスプランジャ22、滑り止め部材として滑り止めシート13が各々示されているが、
これに限定されるものでなく、他の公知の回転規制部材、付勢部材、回動規制部材、ある
いは滑り止め部材を採択使用することが出来るものである。
【符号の説明】
【0027】
1 固定把持片
2 接続金具
5 調整板
8 ボ−ルプランジャ
13 滑り止めシ−ト
17 可動把持片
20 付勢バネ
22 インデックスプランジャ
27 凹凸面部
29 作動棒
31a・31b 絶縁カバ−
37 絶縁操作棒
40 架空電線
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工法により架空電線の芯線露出部などに取付けて使用する絶縁カバ
−の取付け工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、架空電線に事故が生じた場合などにおける架空電線工事においては
、安全確保のために工事個所を無電圧状態にせしめる必要があるも、工事個所以外の送電
を停止せしめることが出来ないものである。このため、一般に工事個所を挾んでバイパス
工事終了後にバイパスケ−ブルでもって繋れたクランプを取付けるべく、架空電線の被覆
を剥がした個所、また、クランプに絶縁被膜を貫通する刃型電極を設けた場合における残
留貫通個所など架空電線の芯線露出部を補修して電流の漏洩や雨水の侵入を防止せしめる
必要があるものである。
【0003】
ところで、かかる目的に使用される絶縁カバ−としては、例えば、両側一対とされた絶
縁プラスチック製の略半筒状カバ−部材がヒンジを介して開閉自在に連結され、同他側自
由端が係着部材を介して係着自在とされると共に、両側カバ−部材の外周面には仮止め用
掛止片が形成され、しかも、両側カバ−部材の内周面には各々両端に仕切壁を介して柔軟
性を有する絶縁混和物や絶縁パテなどの絶縁シ−ル材が充填されたものが開示されている
(特開平11−136829号公報参照)。
【0004】
そして、上述の如く構成された従来の絶縁カバ−は、両側のカバ−部材をヤットコなど
間接活線把持工具の把持片間にヒンジの弾力性を利用して略半開状に仮止め掛止保持せし
めつつ、絶縁シ−ル材を架空電線の芯線露出個所に外嵌状に当てがうと共に、把持片を閉
作動せしめて両側のカバ−部材を係着部材でもって水密状に係着封止せしめることにより
取付けるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−136829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の如く構成された従来の絶縁カバ−は、間接活線把持工具を操作せしめ
つつ両側一対のカバ−部材を把持片間に略半開状に仮止め掛止把持せしめることにより取
付け作業を行うものであるから、把持する両側カバ−部材の把持姿勢や把持力、あるいは
拡開角度などを適正に保持せしめずらいものである。このため、絶縁カバ−の取付け作業
が非常に面倒で手間がかかり、極めて作業能率が悪いのみならず、非常に熟練性が要求さ
れるものとなっていた。
【0007】
本発明は、従来の問題点を解決し、絶縁カバ−を適正に拡開して確実に把持せしめつつ
、架空電線に容易に、しかも、迅速、かつ確実に取付けることが出来る、絶縁カバ−用取
付け工具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、略コ字形状とされた固定把持片の
下端部に絶縁操作棒用接続金具が取付けられると共に、同上端部には略下向きL字形状と
された作動棒付き可動把持片が付勢部材を介して回動自在に軸着されてなり、上記固定把
持片と可動把持片との間に拡開状の絶縁カバ−を下向き状に把持せしめつつ可動把持片を
下方に回動せしめ、絶縁カバ−を閉作動せしめて架空電線に取付けるべく構成されてなる
ことを特徴とする、絶縁カバ−用取付け工具を要旨とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、固定把持片の内方に出没作動せしめて把持径を調整せしめるべ
くその背壁に略D字形状の調整板が回転規制部材を介して回転自在に軸着されてなること
を特徴とする、請求項1記載の絶縁カバ−用取付け工具を要旨とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、絶縁カバ−の外周面に当接して係止せしめるべく可動把持片の
内面に凹凸面部が形成されてなることを特徴とする、請求項1及び2記載の絶縁カバ−用
取付け工具を要旨とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、可動把持片の開き角度を調整せしめるべく固定把持片の頂壁に
回動規制部材が取付けられてなることを特徴とする、請求項1〜3記載の絶縁カバ−用取
付け工具を要旨とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、固定把持片の底壁内面に滑り止め部材が取付けられてなること
を特徴とする、請求項1〜4記載の絶縁カバ−用取付け工具を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、上述のように構成されているから、接続金具に絶縁操作棒を接
続せしめると共に、固定把持片と可動把持片との間に拡開状の絶縁カバ−を下向き状に確
実に把持せしめつつ、作動棒を介して絶縁操作棒などにより可動把持片を下方に回動せし
め、絶縁カバ−を閉作動せしめて架空電線に取付けることが出来るものであって、従来例
に比して、絶縁カバ−を適正に拡開して確実に把持せしめつつ架空電線に容易に、しかも
、迅速、かつ確実に取付けることが出来るものである。
【0014】
請求項2記載の発明は、上述のように構成されているから、調整板を適宜回転作動せし
めて固定把持片内に出没せしめ、固定把持片内の把持径を自由に調整せしめることが出来
るものであって、ひいては、径の異なる大小の絶縁カバ−を確実に把持せしめつつ取付け
作業を行うことが出来るものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、上述のように構成されているから、絶縁カバ−の外周面を可動
把持片内面の凹凸面部に当接係止せしめることが出来るものであって、ひいては、絶縁カ
バ−を確実に把持せしめつつ取付け作業を行うことが出来るものである。
【0016】
請求項4記載の発明は、上述のように構成されているから、回動規制部材により可動把
持片の開き角度を絶縁カバ−の径に応じて自由に調整せしめることが出来るものであって
、ひいては、径の異なる大小の絶縁カバ−を確実に把持せしめつつ取付け作業を行うこと
が出来るものである。
【0017】
請求項5記載の発明は、上述のように構成されているから、滑り止め部材により絶縁カ
バ−の滑りを有効に防止せしめることが出来るものであって、ひいては、絶縁カバ−を確
実に把持せしめつつ取付け作業を行うことが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2のA部拡大断面図である。
【図4】図2のB部拡大断面図である。
【図5】図2のC部拡大断面図である。
【図6】図1の一部破断拡大平面図である。
【図7】図6のI−I線に沿う断面図である。
【図8】大径状の絶縁カバ−31aを示す正面図である。
【図9】大径状の絶縁カバ−31aを把持せしめた使用状態を示す断面図である。
【図10】大径状の絶縁カバ−31aを閉作動せしめて架空電線40に取付けた使用状態を示す断面図である。
【図11】小径状の絶縁カバ−31bを把持せしめた使用状態を示す断面図である。
【図12】小径状の絶縁カバ−31bを架空電線40に取付けた使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に示す一実施例に基づいて詳細に説明する
。
【0020】
図1乃至図7は本発明の一実施例を示すもので、同図中、1は所要の幅と高さを備えた
略コ字形状の固定把持片、2は後記する絶縁操作棒37を接続せしめるべく該固定把持片
1の下端部に取付けられた接続金具、3は後記する調整板5を取付けるべく固定把持片1
の背壁4中央に形成された縦長状の取付け孔、5は固定把持片1の内方に出没作動せしめ
てその把持径を調整せしめるべく該取付け孔3に軸6を介して回転自在に嵌合軸着された
略D字形状の調整板、7は該調整板5の同一円周上に形成された所要数の係合凹部、8は
該係合凹部7に係合して調整板5を所要の位置に停止せしめるべく背壁4にネジ孔9を介
して螺着されたボ−ルプランジャで、該ボ−ルプランジャ8はネジ孔9に螺着自在とされ
た雄ネジ付き筒状体10と、該筒状体10内に付勢バネ11でもって係合凹部7方向に付
勢保持されたロックボ−ル12とより構成されている。
【0021】
13は後記する絶縁カバ−31a・31bの把持時における滑りを防止せしめるべく上
記固定把持片1の底壁14内面に止着された滑り止めシ−ト、15は後記する可動把持片
17を回動自在に取付けるべく固定把持片1の頂壁16に切欠き形成された取付け部、1
7は該取付け部15に止ネジ19付き軸18を介して回動自在に嵌合軸着された略下向き
L字形状の可動把持片、20は該可動把持片17を取付け部15の内側壁面に圧接してそ
の自重による回動作動を防止せしめるべく軸18に巻装された付勢バネ、21は固定把持
片1の頂壁16先端側に位置すべく可動把持片17の一側上端部に形成された係合凹部、
22は該係合凹部21に係合して可動把持片17の上方回動を規制するインデックスプラ
ンジャで、該インデックスプランジャ22は固定把持片1の頂壁16一側にネジ孔23を
介して螺着された中空状ネジ体24と、係合凹部21に係合せしめるべく該ネジ体24に
進退自在に挿入されたツマミ付きロックピン25と、該ロックピン25を係合凹部21方
向に付勢せしめる付勢バネ26とより構成されている。27は後記する絶縁カバ−31a
・31bの外周面に当接して係止せしめるべく可動把持片17の内面に形成された凹凸面
部、28は後記する絶縁カバ−31a・31bの掛止部などを掛止せしめるべく該凹凸面
部27の先端縁に切欠き形成された掛止部、29は可動把持片17を回動作動せしめるべ
くその頂壁に起立状に螺着された作動棒、30は該作動棒29の先部に取付けられたリン
グである。
【0022】
その他、31aは大径状の絶縁カバ−を示すもので、該絶縁カバ−31aは両側一対と
された略半筒状カバ−部材32の一側がヒンジ33を介して開閉自在に連結されると共に
、同他側自由端が係合片34と係合孔35とを介して係着自在とされ、該両側カバ−部材
32内の所要個所に柔軟性を有する絶縁シ−ル材36が充填されている(図8参照)。3
1bは小径状とされた同相似形状の絶縁カバ−、37は固定把持片1に接続金具2を介し
て接続自在とされた絶縁操作棒、38はリング30に引掛けつつ作動棒29を介して可動
把持片17を回動作動せしめるフック39付き絶縁操作棒、40は架空電線を示す。
【0023】
次に、上述の如く構成された実施例の作動を図9乃至図12に基づいて説明する。
まず、固定把持片1に接続金具2を介して絶縁操作棒37を接続せしめたのち、取付け
るべき絶縁カバ−31a・31bの大きさに応じて固定把持片1の把持径と可動把持片1
7の角度を調整する。
即ち、絶縁カバ−31aが大径状を呈する場合には、図9に示すように、調整板5をボ
−ルプランジャ8により外方突出状に停止せしめて固定把持片1の把持径を大に調整せし
めると共に、インデックスプランジャ22のロックピン25を外方に引張して係合凹部2
1との係合を解除せしめ、可動把持片17を上方に回動してその開き角度を大に設定せし
める。しかるのち、絶縁カバ−31aを所要の角度に下向き状に拡開せしめつつ、一方の
カバ−部材32を固定把持片1の内面に滑り止めシ−ト13を介して当接せしめると共に
、同他方のカバ−部材32を可動把持片17内面の凹凸面部27に当接せしめ、固定把持
片1と可動把持片17との間に絶縁カバ−31aを下向き拡開状に把持せしめる。次いで
、絶縁操作棒37を操作せしめつつ所要の架空電線40に絶縁カバ−31aをアプロ−チ
せしめ、カバ−部材32内の絶縁シ−ル材36を架空電線40の所要個所に外嵌状に当て
がうと共に、フック39をリング30に引掛けつつ絶縁操作棒38でもって作動棒29を
下方に作動せしめ、これに連動して可動把持片17を下方に回動して閉作動せしめる。そ
して、図10に示すように、係合片34を対応する係合孔35に係合せしめて水密状に係
着掛止せしめることにより取付けるものである。
【0024】
逆に、絶縁カバ−31bが小径状を呈する場合には、図11に示すように、調整板5を
ボ−ルプランジャ8により内方突出状に停止せしめて固定把持片1の把持径を小に調整せ
しめると共に、インデックスプランジャ22のロックピン25を係合凹部21に係合せし
めて可動把持片17の開き角度を所定の角度に設定せしめる。しかるのち、絶縁カバ−3
1bを所要の角度に拡開せしめつつ、一方のカバ−部材32を固定把持片1内の突出調整
板5と滑り止めシ−ト13を介して当接せしめると共に、同他方のカバ−部材32を可動
把持片17内面の凹凸面部27に当接せしめ、固定把持片1と可動把持片17との間に絶
縁カバ−31bを下向き拡開状に把持せしめる。次いで、絶縁操作棒37を操作せしめつ
つ所要の架空電線40に絶縁カバ−31bをアプロ−チせしめ、カバ−部材32内の絶縁
シ−ル材36を架空電線40の所要個所に外嵌状に当てがうと共に、フック39をリング
30に引掛けつつ絶縁操作棒38でもって作動棒29を下方に作動せしめ、これに連動し
て可動把持片17を下方に回動して閉作動せしめる。そして、図12に示すように、係合
片34を対応する係合孔35に係合せしめて水密状に係着掛止せしめることにより取付け
るものである。
【0025】
なお、上述の如く絶縁カバ−31a・31bを架空電線40に取付けるさいにおいて、
接続金具2に絶縁操作棒37を接続せしめると共に、固定把持片1と可動把持片17との
間に拡開状の絶縁カバ−31a・31bを下向き状に確実に把持せしめつつ、作動棒29
を介して絶縁操作棒38などにより可動把持片17を下方に回動せしめ、絶縁カバ−31
a・31bを閉作動せしめて架空電線40に取付けることが出来るものであるから、従来
例に比して、絶縁カバ−31a・31bを適正に拡開して確実に把持せしめつつ架空電線
40に容易に、しかも、迅速、かつ確実に取付けることが出来る。また、調整板5を適宜
回転作動せしめて固定把持片1内に出没せしめ、固定把持片1内の把持径を自由に調整せ
しめることが出来るものであるから、径の異なる大小の絶縁カバ−31a・31bを確実
に把持せしめることが出来るのみならず、絶縁カバ−31a・31bの外周面を可動把持
片17内面の凹凸面部27に当接係止せしめることが出来るものであるから、絶縁カバ−
31a・31bを確実に把持せしめることが出来、また、インデックスプランジャ22に
より可動把持片17の開き角度を絶縁カバ−31a・31bの径に応じて自由に調整せし
めることが出来るものであって、ひいては、径の異なる大小の絶縁カバ−31a・31b
を確実に把持せしめつつ取付け作業を行うことが出来るものである。さらに、滑り止めシ
−ト13により絶縁カバ−31a・31bの滑りを有効に防止せしめることが出来るもの
であって、ひいては、絶縁カバ−31a・31bを確実に把持せしめつつ取付け作業を行
うことが出来るものである。
【0026】
なお、上記実施例において、調整板5の回転規制部材としてボ−ルプランジャ8、可動
把持片17の付勢部材として付勢バネ20、可動把持片17の回動規制部材としてインデ
ックスプランジャ22、滑り止め部材として滑り止めシート13が各々示されているが、
これに限定されるものでなく、他の公知の回転規制部材、付勢部材、回動規制部材、ある
いは滑り止め部材を採択使用することが出来るものである。
【符号の説明】
【0027】
1 固定把持片
2 接続金具
5 調整板
8 ボ−ルプランジャ
13 滑り止めシ−ト
17 可動把持片
20 付勢バネ
22 インデックスプランジャ
27 凹凸面部
29 作動棒
31a・31b 絶縁カバ−
37 絶縁操作棒
40 架空電線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略コ字形状とされた固定把持片の下端部に絶縁操作棒用接続金具が取付けられると共に
、同上端部には略下向きL字形状とされた作動棒付き可動把持片が付勢部材を介して回動
自在に軸着されてなり、上記固定把持片と可動把持片との間に拡開状の絶縁カバ−を下向
き状に把持せしめつつ可動把持片を下方に回動せしめ、絶縁カバ−を閉作動せしめて架空
電線に取付けるべく構成されてなることを特徴とする、絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項2】
固定把持片の内方に出没作動せしめて把持径を調整せしめるべくその背壁に略D字形状
の調整板が回転規制部材を介して回転自在に軸着されてなることを特徴とする、請求項1
記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項3】
絶縁カバ−の外周面に当接して係止せしめるべく可動把持片の内面に凹凸面部が形成さ
れてなることを特徴とする、請求項1及び2記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項4】
可動把持片の開き角度を調整せしめるべく固定把持片の頂壁に回動規制部材が取付けら
れてなることを特徴とする、請求項1〜3記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項5】
固定把持片の底壁内面に滑り止め部材が取付けられてなることを特徴とする、請求項1
〜4記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項1】
略コ字形状とされた固定把持片の下端部に絶縁操作棒用接続金具が取付けられると共に
、同上端部には略下向きL字形状とされた作動棒付き可動把持片が付勢部材を介して回動
自在に軸着されてなり、上記固定把持片と可動把持片との間に拡開状の絶縁カバ−を下向
き状に把持せしめつつ可動把持片を下方に回動せしめ、絶縁カバ−を閉作動せしめて架空
電線に取付けるべく構成されてなることを特徴とする、絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項2】
固定把持片の内方に出没作動せしめて把持径を調整せしめるべくその背壁に略D字形状
の調整板が回転規制部材を介して回転自在に軸着されてなることを特徴とする、請求項1
記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項3】
絶縁カバ−の外周面に当接して係止せしめるべく可動把持片の内面に凹凸面部が形成さ
れてなることを特徴とする、請求項1及び2記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項4】
可動把持片の開き角度を調整せしめるべく固定把持片の頂壁に回動規制部材が取付けら
れてなることを特徴とする、請求項1〜3記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【請求項5】
固定把持片の底壁内面に滑り止め部材が取付けられてなることを特徴とする、請求項1
〜4記載の絶縁カバ−用取付け工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−233420(P2010−233420A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81065(P2009−81065)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【出願人】(000207311)大東電材株式会社 (14)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【出願人】(000207311)大東電材株式会社 (14)
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