説明

絶縁スペーサ

【課題】簡潔な構成により導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得る。
【解決手段】盤状絶縁スペーサ本体9、盤状絶縁スペーサ本体9の対をなす端面を形成する平面9a,9bの延在方向に延在する電極平面3a,3bが設けられ盤状絶縁スペーサ本体9と一体に形成された導体支持用埋込電極3を備え、導体支持用埋込電極3の絶縁スペーサ本体9との界面部分に、盤状絶縁スペーサ本体9へ突出し、導体支持用埋込電極3と絶縁スペーサ本体9との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力を低減する断面が半円形状等を有する環状突出部3dを設けた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁スペーサ、特に、樹脂中に埋め込まれた導体支持用の埋込電極を有する絶縁スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心部導体支持用の埋込電極を有する絶縁スペーサは、通常エポキシ樹脂などの注型により製作され埋込電極と樹脂との界面は、それぞれの材料の物性値が異なるために曲げや熱荷重が作用するとこの界面に高い引張りの応力が発生し、強度低下をもたらすことがある。この強度低下をもたらさない応力状態とするために界面の中心部導体支持用埋め込み電極形状を考慮することにより低応力状態とすることができる。以下、中心部導体支持用埋込電極を「埋め金」と表現する。
【0003】
従来技術では、埋め金の樹脂界面近傍の外表面にU型の溝を設けることにより界面近傍の樹脂に働く応力を低減する機能を持たせている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、このような埋め金構造では、U型溝を設ける必要があり機械加工が必要であること、また、溝先端を適切なR形状としないとこの部位に応力が集中し強度低下が発生すること、溝部に金属異物が入り込む等の品質保証上の問題や加工上の複雑さが存在することによるコスト増等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】特公平6−9415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、簡潔な構成により導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る絶縁スペーサでは、前記盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極を備え、前記導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に、前記盤状絶縁スペーサ本体へ突出し、前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力を低減する所定の断面形状を有する環状突出部を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、簡潔な構成により導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明による実施の形態1における絶縁スペーサが電気機器に組み込まれるときの構成を示す縦断面図および横断面図である。
【図2】この発明による実施の形態1における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【図3】この発明による実施の形態2における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【図4】この発明による実施の形態3における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【図5】この発明による実施の形態4における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【図6】この発明による実施の形態5における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【図7】この発明による実施の形態6における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明による実施の形態1を図1および図2について説明する。図1は実施の形態1における絶縁スペーサが電気機器に組み込まれるときの構成を示す縦断面図および横断面図である。図1(a)は絶縁スペーサが電気機器に組み込まれるときの構成を示す縦断面図である。図1(b)は絶縁スペーサが電気機器に組み込まれるときの構成を模式的に示す縦断面図である。図2は実施の形態1における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
【0010】
この発明による実施の形態1における絶縁スペーサが電気機器に組み込まれるときの構成を示す図1において、絶縁スペーサ2は絶縁スペーサ2を挟み込む形態で配置された円筒容器1の金属フランジ8により挟持されボルト7で固定される。
また、この絶縁スペーサ2には円筒容器1の中心部に配設される中心部導体5を支える固定金具4がボルト6で固定されている。この例では、中心部導体5が3本あり3相構造の例である。
絶縁スペーサ2はエポキシ樹脂のような絶縁物からなる絶縁スペーサ本体9と埋め金3から構成される円盤状の形状をしたものである。以下の実施形態では、3本の中心部導体5のうち1本の導体固定部に限定し記述する。
【0011】
この発明による実施の形態1を図2について説明する。
図2に示すように、絶縁物9内に埋め込まれる埋め金3の形状を中心部導体5を支える固定金具4(図1参照)との接触面の周辺に薄いリング形状の薄肉突出部3cを設けた構造とした。
この構造によれば、埋め金3の外表面外周に設けられたリング形状の薄肉突出部3cが、他の部位に比べ肉厚が薄いリング形状としているため、図中に示すように圧力や熱荷重により曲げモーメントMが作用すると、この埋め金3の外表面外周に設けられたリング形状の薄肉突出部3cが弾性変形をすることにより、この部位に作用する界面に垂直に作用する界面における引き剥がし力Pを低減させることができる。
また、この埋め金3には中心部導体5が固定されるが、リング形状内径部により導体端部の位置決め精度を上げることも可能となる。
【0012】
埋め金3は円盤状の絶縁スペーサ本体9の中心部に一体に埋込み形成された小さな円盤状構成体を形成し、その端面に円盤状の絶縁スペーサ本体9の対をなす端面を形成する平面9a,9bと同一面レベルにおいて形成される平面3a,3bを有している。埋め金3の平面3a,3bは、絶縁スペーサ本体9の対をなす端面を形成する平面9a,9bの延在方向と同一方向に延在する。
埋め金3の外表面外周に設けられたリング形状の薄肉突出部3cは、埋め金3の平面3a,3bから平面3a,3bの延在方向と垂直方向に突出する。絶縁スペーサ本体9にも埋め金3の薄肉突出部3cに対応して突部9cが一体に設けられている。埋め金3の薄肉突出部3cと絶縁スペーサ本体9の突部9cとの間にも当然ながら界面が形成され、埋め金3と絶縁スペーサ本体9との間には内部から埋め金3の薄肉突出部3cと絶縁スペーサ本体9の突部9cが設けられた外表面部に至る界面が形成されている。
埋め金3に設けられたリング形状の薄肉突出部3cにより、前述の通り、埋め金3と絶縁スペーサ本体9との界面における引き剥がし力Pを低減させることができるものである。
【0013】
この実施の形態1では、絶縁スペーサ本体9の対をなす端面を形成する面9a,9bを平面としたが、平面でなくても同様の効果が得られる。また、面9a,9bと平面3a,3bは同一レベルでなくても同様な効果が得られる。
【0014】
この発明による実施の形態1によれば、エポキシ樹脂のような絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体、前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体の対をなす端面を形成する面9a,9bの延在方向に延在する電極平面3a,3bが設けられ前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体9と一体に形成された導体支持用埋込電極3を備え、前記埋め金3からなる導体支持用埋込電極の前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面部分に、前記電極平面3a,3bから突出し、前記導体支持用埋込電極3と前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力Pを低減する弾性変形可能な薄肉突出部3cを設けたので、導体支持用埋込電極の絶縁スペーサ本体との界面部分に弾性変形可能な突出部を設けた簡潔な構成により、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【0015】
実施の形態2.
この発明による実施の形態2を図3について説明する。図3は実施の形態2における絶縁スペーサの構成を示す断面図である。
この実施の形態2において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1における構成と同一の構成を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0016】
上記実施の形態1では、埋め金3の接触面外周をリング形状の突出部とした構成であるが、図3から図5までに示す実施の形態2〜4でも、実施の形態1の構成による効果とと同様の効果を得ることができる。以下、他の実施の形態について説明する。
【0017】
実施の形態2における絶縁スペーサの構成を示す図3は、埋め金3のエポキシ樹脂のような絶縁物9と接触する界面を絶縁物9側に大きく膨らませた構造である。
すなわち、埋め金3の絶縁物9と接触する界面に断面が半円形状を有する突出部3dを絶縁物9の内部へ半円凸部側を先端にして図示水平方向に突出させて設けたものである。この突出部3dは円盤状の埋め金3の周面の全周にわたり突出して設けられているものであり、環状を形成する。
【0018】
この実施の形態2においては、埋め金3の絶縁物9と接触する界面を絶縁物9側に大きく膨らませ断面が半円形状を有する環状突出部3dを設けた構造としたことで埋め金3と絶縁物9の界面の接着面積が増えることにより接着強度を増加させることができる。
また、圧力や熱荷重が作用したとき界面に生じる引き剥がし力とせん断力のうち、この構造では膨らませた部分のせん断力が支配的で引っ張り力が小さくなる効果を有する。また、この膨らませたことで外表面に近い絶縁物9部分の肉厚が薄くなり変形がしやすくなることからも界面に作用する引き剥がし力を低減させることができる。従い、界面剥離に対して有利な構造となる。
【0019】
この発明による実施の形態2によれば、エポキシ樹脂のような絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体、前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極3を備え、前記導体支持用埋込電極3の前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面部分に、前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体の内部へ凸部を先端として突出し、前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力Pを低減する断面が半長円形状を有する環状突出部3dを設けたので、導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に断面が半円形状を有する環状突出部を設けた簡潔な構成により、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【0020】
実施の形態3.
この発明による実施の形態3を図4について説明する。図4は実施の形態3における絶縁スペーサの構成を示す縦断面図である。
この実施の形態3において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1および実施の形態2における構成と同一の構成を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0021】
この発明による実施の形態3における絶縁スペーサの構成を示す図4は、図3の実施の形態と同様に樹脂9内部に埋め金3を大きく膨らませた構造であるが、この実施の形態3の例では、導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力を低減する断面がV形状を有する環状突出部3eを埋め金3に設けたものであって、このV状突出部3eは埋め金3の外表面から任意の角度を有したV型断面形状であり、先端部は応力の集中や電界の集中を避けるために所定の断面曲率半径を持つR形状とさせる。
【0022】
この構造においても、図3に示す実施の形態2と同様に、接着面積が増えることにより接着強度を増加させることができ、また、圧力や熱荷重が作用した時界面に生じる引き剥がし力とせん断力のうち、この構造では膨らませたV形状部分のせん断力が支配的で引き剥がし力が小さくなる効果を有する。従い、界面剥離に対して有利な構造となる。
【0023】
この発明による実施の形態3によれば、エポキシ樹脂のような絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体、前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極3を備え、前記導体支持用埋込電極3の前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面部分に、前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体の内部へ先端を突出し、前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力Pを低減する断面がV形状を有し先端部に所定の断面曲率半径を持つ環状突出部3eを設けたので、導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に断面がV形状を有するV状突出部を設けた簡潔な構成により、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【0024】
実施の形態4.
この発明による実施の形態4を図5について説明する。図5は実施の形態4における絶縁スペーサの構成を示す縦断面図である。
この実施の形態4において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1から実施の形態3までにおける構成と同一の構成を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0025】
この発明による実施の形態4における絶縁スペーサの構成を示す図5は、埋め金3のエポキシ樹脂のような絶縁物9との界面形状を波打ち形状としたものである。
すなわち、埋め金3の絶縁物9との界面には、断面円弧状の輪郭をなす複数の環状突出部3fが設けられ、埋め金3の絶縁物9との界面は波打ち形状に形成されている。
【0026】
このように、埋め金3のエポキシ樹脂のような絶縁物9との界面における断面形状を複数の突出部3fを設けた波打ち形状とすることにより圧力や熱荷重が作用し曲げモーメントMが作用すると、これにより引き起こされる引き剥がし力Pは、界面では界面に垂直な成分P1と界面に沿った成分P2になる。このうち引き剥がし力P1の方向は各位置ですべて異なった方向を向く。従い、引き剥がし力は厚さ方向で同一方向に現れるのではなく複数の方向に現れ、内部で力がキャンセルされる効果が期待できること、また、分力として現れるため引き剥がし力低減につながる。
【0027】
この実施の形態では、絶縁物9側に埋め金3の突出部3fによる山が二つ形成されているが、三つ以上でも同様の効果が期待できる。
【0028】
この発明による実施の形態4によれば、エポキシ樹脂のような絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体、前記絶縁物9からなる盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極3を備え、前記導体支持用埋込電極3の前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面部分の形状を断面波打ち形状として複数の環状突出部分を形成し、前記導体支持用埋込電極3と前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力Pを低減する断面が波打ち形状を有する複数の環状突出部3fを設けたので、導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に断面が波打ち形状を有する波打ち突出部を設けた簡潔な構成により、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【0029】
実施の形態5.
この発明による実施の形態5を図6について説明する。図6は実施の形態5における絶縁スペーサの構成を示す縦断面図である。
この実施の形態5において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1から実施の形態4までにおける構成と同一の構成を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0030】
この発明による実施の形態5における絶縁スペーサの構成を示す図6は、図3に示す実施の形態2における構成において、埋め金3とエポキシ樹脂のような絶縁物9の外表面側に絶縁物9を構成する樹脂よりも小さい弾性定数を有する弾性部材11からなる変形吸収部材を挟み込んだ構造としたものである。
すなわち、埋め金3の絶縁物9と接触する界面に断面が半円形状を有する環状突出部3dを絶縁物9の内部へ半円凸部側を先端にして図示水平方向に突出させて設けるとともに、埋め金3と絶縁物9の外表面側に絶縁物9を構成する樹脂よりも小さい弾性定数を有する弾性部材11からなる変形吸収部材が挟み込まれている。
【0031】
この構成において曲げモーメントMが作用するとこの弾性部材11が絶縁物9の変形を吸収し、埋め金3と絶縁物9の界面に垂直に作用する引き剥がし力Pを低減させる効果が期待できる。
【0032】
なお、ここでは、実施の形態2における構成に適用するものについて説明したが、この実施の形態5は、実施の形態1ならびに実施の形態3および実施の形態4における構成のいずれかに適用することもできる。
【0033】
この発明による実施の形態5によれば、実施の形態2から実施の形態4までの構成におけるいずれかの構成において、前記導体支持用埋込電極3と前記エポキシ樹脂のような絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面の外表面部に前記絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体よりも小さい弾性率を有する弾性部材11からなる変形吸収部材を設けたので、導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に突出部を設け、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面の外表面部に変形吸収部材を設けた簡潔な構成により、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【0034】
実施の形態6.
この発明による実施の形態6を図7について説明する。図7は実施の形態6における絶縁スペーサの構成を示す縦断面図である。
この実施の形態6において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1における構成と同一の構成を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0035】
この発明による実施の形態6における絶縁スペーサの構成を示す図7は、実施の形態1と同じ埋め金3の形状とし、埋め金3とエポキシ樹脂のような絶縁物9との界面の外表面に近い部分を接着部材12で接着し、内部に導電性部材13を挿入した界面構造の例である。
すなわち、絶縁物9内に埋め込まれる埋め金3の形状を薄いリング形状の薄肉突出部3cを設けた構造とするとともに、埋め金3と絶縁物9との界面の外表面に近い部分を接着部材12で接着し、絶縁物9の内部における埋め金3と絶縁物9との界面に導電性部材13を挿入した界面構造としたものである。
【0036】
この構造においても、実施の形態1と同様に、圧力や熱荷重が作用したとき埋め金3と絶縁物9の界面に垂直に作用する引き剥がし力を低減させる効果があるとともに、埋金3と絶縁物9の間に導電性ゴムなどの導電性部材13を塗布することで、剥離が発生した場合においても絶縁物9部に導電性部材13が付着し、剥離による導体と樹脂の隙間からの放電を抑制し、絶縁スペーサの絶縁劣化特性を向上させる効果が期待できる。
【0037】
この発明による実施の形態6によれば、実施の形態1における構成において、前記導体支持用埋込電極3と前記エポキシ樹脂のような絶縁物9からなる絶縁スペーサ本体との界面の外表面に近い部分を接着部材12で接着し、内部に向かい導電性ゴムなどの導電性部材13を挿入して、複合界面構造としたので、導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の外表面に近い部分を絶縁接着部材で接着し、内部に向かい導電性部材を挿入した簡潔な構成により、導体支持用埋込電極と絶縁スペーサ本体との界面における応力状態を適正に保持できる絶縁スペーサを得ることができる。
【0038】
この発明による実施の形態では、次の(A1)から(A5)項までに示す構成が提案されている。
【0039】
(A1)埋め金3の導体5との接触面の周辺に薄いリング形状の突出部3cを構成し、導体5の位置決め精度を上げることができること、絶縁スペーサ2に圧力や熱荷重が作用した時に、この埋め金3の円筒部突出部3cと接着されている樹脂9との界面に垂直に作用する引き剥がし力Pを埋め金3外周部の円筒部薄板構造突出部3cによる弾性効果で低減させることができる。
【0040】
(A2)埋め金3の樹脂9と接する内部の形状を樹脂9側に半長円形状に大きく膨らませた埋め金3と樹脂9構造の構成とすることにより、接着面積を増やすことができ接着強度のアップにつながること、絶縁スペーサ2に圧力や熱荷重が作用した時に界面の半長円形状部3dには引き剥がし力Pより界面に沿ったせん断力が卓越し、引き剥がし力P成分を小さくすることができる。
【0041】
(A3)埋め金3の樹脂9と接する形状を外表面から伸びる樹脂側にV形状に大きく膨らませた埋め金3と樹脂9構造の構成とすることにより、接着界面の外表面から内部に向かいすべての界面で引き剥がし力Pを低減させることができることと、接着面積を増やすことができ接着強度のアップにつながる。
【0042】
(A4)埋め金3の樹脂9と接する形状を波打ち形状とすることにより、接着面積を増やすことができ接着強度のアップにつながること、絶縁スペーサ2に圧力や熱荷重が作用した時に界面に作用する引き剥がし力Pは常に同一方向ではなく作用する方向が異なる分布をすること、界面引き剥がし力Pは界面の傾き角度に対応した分力成分となるために引き剥がし力Pを低減させることができる。
【0043】
(A5)埋め金3と樹脂Pとが接する界面の外表面部に樹脂よりも小さい弾性率を有する弾性部材11を挟み込んだ構成とすることにより、絶縁スペーサ2に圧力や熱荷重が作用した時に、この部位の樹脂界面に作用する引き剥がし力Pを低減させることができる。
【0044】
(A5)前記(A1)項の埋め金3形状で外表面に近い部分を接着部材12で接着、内部に向かい導電性部材13を挿入した複合界面構造としても引き剥がし力P低減の効果を有することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 円筒容器、2 絶縁スペーサ、3 埋め金、4 固定金具、5 導体、6,7 ボルト、8 金属フランジ、9 絶縁スペーサ本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤状絶縁スペーサ本体、前記盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極を備え、前記導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に、前記盤状絶縁スペーサ本体へ突出し、前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力を低減する断面が半円形状を有する環状突出部を設けたことを特徴とする絶縁スペーサ。
【請求項2】
盤状絶縁スペーサ本体、前記盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極を備え、前記導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分に、前記盤状絶縁スペーサ本体へ先端を突出し、前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力を低減する断面がV形状を有する環状突出部を設けたことを特徴とする絶縁スペーサ。
【請求項3】
盤状絶縁スペーサ本体、前記盤状絶縁スペーサ本体と一体に形成された導体支持用埋込電極を備え、前記導体支持用埋込電極の前記絶縁スペーサ本体との界面部分の形状を断面波打ち形状として複数の突出部分を形成し、前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の垂直方向に作用する引き剥がし力を低減する断面が波打ち形状を有する波打ち突出部を設けたことを特徴とする絶縁スペーサ。
【請求項4】
前記導体支持用埋込電極と前記絶縁スペーサ本体との界面の外表面部に前記絶縁スペーサ本体より低い弾性率を有する変形吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の絶縁スペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−55708(P2011−55708A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282548(P2010−282548)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2005−255975(P2005−255975)の分割
【原出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】