説明

継ぎ手構造およびこの継ぎ手構造を備えたソケット

【課題】部品点数の削減が図れ、組み立てが簡単な継ぎ手構造およびこの継ぎ手構造を備えたソケットを提供する。
【解決手段】トルクレンチ10の角軸17を第2の嵌合凹部21に嵌合して軸回りに回転不能に連結されるソケットSに、角軸17に形成した係合溝18と係合可能な鋼球22を径方向移動可能に第2の嵌合凹部の側壁に形成した鋼球孔23に装入し、第2の嵌合凹部21の外周に装着したロック操作部材24を軸回りに回転し、第1の孔部25を鋼球孔23に合わせると、鋼球22が内側に向かって押し込まれて係合溝18に係合するロック状態となり、第1の孔部25よりも大径の第2の孔部26を鋼球孔23に合わせると、鋼球22が係合溝18との係合が解除可能となる位置まで径方向外方に後退可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被連結部材に連結部材を着脱可能に連結する継ぎ手構造およびこの継ぎ手構造を備えたソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達用の継ぎ手構造として、例えばトルクレンチに対してソケットを着脱可能に取り付けるために、例えば被連結部材である各軸の外周に係合溝を周方向に形成し、この各軸に外装するソケットの内周部に鋼球を径方向に沿って移動可能に配置し、前記鋼球の一部が前記係合溝と係合することで軸方向における抜け止めを行い、前記鋼球を前記係合溝から離脱させることにより前記ソケットを前記各軸から取り外し可能とする。
【0003】
このような継ぎ手構造は、ソケットの側壁面を貫通して鋼球が嵌まり込むボール孔(このボール孔の内端側の内径は鋼球の外径よりも小径に形成され、鋼球がソケット内に落ちないようにしている)が形成され、前記ソケットに外装した操作リングを軸方向に移動させることにより、前記鋼球に対し、該鋼球の径方向に沿った内外方向の移動を規制し、上記した鋼球と係合溝との係合および係合解除の切り替えを行っている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−196812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の継ぎ手構造は、操作リング等の部品の加工や組み立てに多くの工程を要し、また部品点数のさらなる削減が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、このような従来の問題に鑑み為されたもので、部品点数の削減が図れ、組み立てが簡単な継ぎ手構造およびこの継ぎ手構造を備えたソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を実現する継ぎ手構造およびこの継ぎ手構造を備えたソケットは、図1を参照すると、トルクレンチ10の角軸17を第2の嵌合凹部21に嵌合して軸回りに回転不能に連結されるソケットSに、角軸17に形成した係合溝18と係合可能な鋼球22を径方向移動可能に第2の嵌合凹部の側壁に形成した鋼球孔23に装入し、第2の嵌合凹部21の外周に装着したロック操作部材24を軸回りに回転し、第1の孔部25を鋼球孔23に合わせると、鋼球22が内側に向かって押し込まれて係合溝18に係合するロック状態となり、第1の孔部25よりも大径の第2の孔部26を鋼球孔23に合わせると、鋼球22が係合溝18との係合が解除可能となる位置まで径方向外方に後退可能とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロック操作部材に大小2つの孔部を設けるという簡単な構成で継ぎ手構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示すトルクレンチの正面図。
【図2】図1のA−A矢視図で、(a)はロック状態、(b)はロック解除状態を示す。
【図3】図1に示すロック操作部材を示し、(a)は図1のA−A矢視方向から見た図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を図1〜図3に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1はトルクレンチにソケットを装着した状態を示す正面図である。図1に示すトルクレンチ10は、不図示のマーカーをソケットS内に備えたトルクレンチで、トルクリミッターをなすトグル機構(不図示)を内装したレバー11と、このレバー11の先端部に取付けた支軸(不図示)に軸支されるヘッド12と、レバー11の後端部に取付けられているグリップ13を有している。なお、レバー11およびグリップ13に形成した目盛窓14に設定トルク値を示す目盛15が表示される。
【0012】
レバー11の上面には、前記トグル機構の動作で前記マーカーを連動させるマーカー駆動機構(不図示)が配置され、カバー16が設けられている。
【0013】
ヘッド12には被連結部材である角軸17が設けられている。角軸17の外周には、係合溝18が周方向に沿って形成されている。
【0014】
本実施形態において、継ぎ手をなす中空構造のソケットSは、一端部側に、ボルトの頭部に嵌合する角孔からなる第1嵌合部19が形成され、他端部には角軸17に連結する継ぎ手部20が設けられている。
【0015】
継ぎ手部20は、角軸17が嵌合する中空の第2嵌合部21がソケットSの中心軸と同軸に形成されている。ソケットSにおいて、この継ぎ手部20をなすソケットSの第2嵌合部21の外径は、第1嵌合部19の形成される一端部の外径よりも大径に形成されている。
【0016】
継ぎ手部20の第2嵌合部21は、図2に示すように、内周面が六角形に形成された外周面が円状に形成されていて、第2嵌合部21の側壁部の一つに、鋼球22が径方向に沿って移動可能に嵌合する鋼球孔23が形成されている。なお、鋼球孔23の内端の内径を鋼球22の外径よりも小径とし、鋼球孔23の内端に鋼球22が当接した状態で鋼球22の一部が第2嵌合部21の内側に突出して角軸17の係合溝18に入り込んで係合できる外径に鋼球孔22の内径を設定している。
【0017】
本実施形態では、図2(a)に示すように、鋼球22が鋼球孔23の内端まで押し込まれ、鋼球22が係合溝18と係合しているロック状態において、鋼球22の一部が第2嵌合部21の側壁部の外面から外方に突出したサイズに鋼球22の直径等が設定されている。したがって、図2(b)に示すように、鋼球22がこのロック状態から径方向外方に向けて移動し、係合溝18との係合が解除されるロック解除位置まで移動できれば、角軸17からソケットSを取り外すことができる。
【0018】
本実施形態では、図3に示すように、ばね性を有する帯状の板材を筒状に形成したロック操作部材24を鋼球孔23中の鋼球22に当接するように、第2嵌合部21の外周面に装着している。ロック操作部材24は、ソケットSの中心軸を中心に回転可能としている。図3(b)に示すように、ロック操作部材24の周方向には、鋼球22が嵌まり込む内径の異なる第1の孔部(第1の鋼球位置規制部)25と第2の孔部(第2の鋼球位置規制部)26とを隣り合わせにして形成しており、第1の孔部25は鋼球22が浅く嵌まり込む内径に形成され、第2の孔部26は鋼球22が深く嵌まり込む内径に形成されている。すなわち、第1の孔部25の内径は第2の孔部26の内径よりも小径に形成されている。
【0019】
したがって、図2(a)に示すように、第1の孔部25に鋼球22が嵌まり込んだ状態では、鋼球22は係合溝18と係合しているロック状態にあり、図2(b)に示すように、第2の孔部26に鋼球22が嵌まり込んだ状態では、鋼球22は係合溝18との係合が解除されるロック解除状態にある。第1の孔部25と第2の孔部26との間に、内側向きにクリック突起部32を形成し、ロック操作部材24の回転操作の際にクリック突起部32が鋼球22を乗り越える時に、ロックとロック解除の切り替えを行うことを感覚的に認識できる。
【0020】
なお、本実施形態では鋼球22を径方向外方に向けて付勢するばね部材を設けていないので、第2の孔部26を鋼球孔23に対向する位置にロック操作部材24を回転させても第2の孔部26に直ちに鋼球22が嵌まり込むとは限らない。しかし、ソケットSを軸方向に沿って引くと、鋼球22は係合溝18との当接で径方向外方に移動し、第2の孔部26に嵌まり込み、ソケットSを角軸17から抜き取ることができる。
【0021】
ロック操作部材24を回転させることにより、第1の孔部25に鋼球22が嵌まり込むロック状態と、第2の孔部26に鋼球22が嵌まり込むロック解除状態を選択できるようにしているが、必要以外にロック操作部材24の回転を許容すると、ロック状態とロック解除状態を迅速に設定できなくなる。
【0022】
そこで、本実施形態では、ロック操作部材24に、第1の孔部25と第2の孔部26との範囲に対応して、その反対側に外方に向けて窪んだストッパー凹部29を形成している。そして、鋼球孔23と反対側の第2嵌合部21の側壁部に、外側からネジ穴27を形成し、ストッパー凹部29内に位置するようにストッパーネジ28をこのネジ穴27に螺着している。したがって、ロック操作部材24はストッパー凹部29の周方向両内端にストッパーネジ28が当接する範囲で周方向に回転可能となっている。このため、ロック操作部材24の周方向両回転限界位置で前記ロック状態とロック解除状態が生じるようにすればよい。
【0023】
本実施形態において、ロック操作部材24は、帯状の板材の両端を溶接等で固着して筒状に形成した完成品を第2嵌合部21に直接嵌め込むようにしている。ロック操作部材24をガタなく第2嵌合部21に嵌め込むために、ロック部材24の一部に外方に窪んだ山形状の伸び代部30を複数個所形成している。
【0024】
すなわち、ロック操作部材24を第1嵌合部19側から差し入れ、ストッパーネジ28とストッパー凹部29を位置合わせして第2嵌合部21に差し込むと、伸び代部30が伸びてロック操作部材24の内径Rが拡がり、第2嵌合部21に嵌まり込む。
【0025】
第2嵌合部21の外周面には、ロック操作部材24が装着される所定位置に合わせて、ロック操作部材24の板厚と同程度の深さに形成された周溝部31が形成され、この周溝部31にロック操作部材24が嵌まり込むことにより、ロック操作部材24の軸方向への移動を規制し、軸回りの回転のみを許容する。
【0026】
本実施形態において、ストッパーねじ28を第2嵌合部21の外側から螺合しているのは、ストッパーねじが緩んでも、脱落するのを防止するためであり、ねじ止め等の締結手段を使用せずにロック操作部材24を形成しているのも同様の理由による。
【0027】
しかし、本発明はこのような部品の脱落防止の構成に限定されるものではなく、ロック操作部材24は軸回りの回転により鋼球22を異なる押し込み位置に設定できる構成であればどのような構成であってもよい。また、ロック操作部材24の回転範囲の規制ができるものであれば限定されるものではない。
【0028】
上記した実施形態は、トルクレンチの角軸にソケットを連結する継ぎ手構造を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば被連結部材としての動力伝達軸に連結部材としてのソケットを連結する継ぎ手構造であってもよく、またこれらに限定されるものでもない。
【符号の説明】
【0029】
S ソケット
10 トルクレンチ
11 レバー
12 ヘッド
13 グリップ
14 目盛窓
15 目盛
16 カバー
17 角軸
18 係合溝
19 第1嵌合部
20 継ぎ手部
21 第2嵌合部
22 鋼球
23 鋼球孔
24 ロック操作部材
25 第1の孔部
26 第2の孔部
27 ネジ穴
28 ストッパーネジ
29 ストッパー凹部
30 伸び代部
31 周溝部
32 クリック突起部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸部材の一端部に形成され、外周面に軸回りに沿って係合溝が形成された嵌合軸部を、第2の軸部材の他端部に形成した嵌合凹部に軸回りに回転不能に嵌合すると共に、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材とを軸方向に対して移動不能に連結するロック状態と、前記ロック状態を解除するロック解除状態とを切り替え可能とする継ぎ手部を備えた継ぎ手構造であって、
前記継ぎ手部は、
前記嵌合凹部を構成する側壁に径方向に沿って形成した鋼球孔に移動自在に装入されて前記係合溝に係合可能な鋼球と、
前記嵌合凹部の外周であって、前記鋼球孔に対応した位置に、軸回り方向に沿って回転可能に装着されるロック操作部材と、
を備え、
前記ロック操作部材は、前記鋼球孔に装入されている前記鋼球を前記係合溝に係合する位置に押し込む第1の鋼球位置規制部と、前記鋼球孔に装入されている前記鋼球を前記係合溝と係合する係合位置から係合解除が可能な径方向外方への後退を許容する第2の鋼球位置規制部とを有し、前記ロック操作部材を回転することにより前記第1の鋼球位置規制部と前記第2の鋼球位置規制部とを選択的に前記鋼球孔に対向させることを特徴とする継ぎ手構造。
【請求項2】
前記第1の鋼球位置規制部と前記第2の鋼球位置規制部は、内径の異なる孔部により形成され、前記第1の鋼球位置規制部の孔部の内径は、前記第2の鋼球位置規制部の孔部の内径よりも小径としたことを特徴とする請求項1に記載の継ぎ手構造。
【請求項3】
前記ロック操作部材の回転により、前記第1の鋼球位置規制部と前記第2の鋼球位置規制部とが前記鋼球孔に対向する位置の範囲内で前記ロック操作部材を回転可能とするストッパー手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の継ぎ手構造。
【請求項4】
前記ロック操作部材は、ばね性を有する板材により予め円筒状に形成された状態で、前記嵌合凹部の外周に装着されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の継ぎ手構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の継ぎ手構造の前記第2の軸部材をなし、前記第2の軸部材からの締め付け力が伝達されて、一端側に嵌合する締結部材を締め付けるソケットであって、前記継ぎ手部を他端部に設けたことを特徴とするソケット。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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