説明

継目処理材

【課題】貼着性を低下させることなく、外装塗膜の変色を抑制し、かつ外装塗膜の膨れを防止する継目処理材の実現。
【解決手段】本発明は、壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、該粘着層の外側に設けられる少なくとも一層からなる補強層と、前記粘着層と前記補強層との間に形成され、緩衝材15が部分的に設けられた緩衝部16とを有し、前記粘着層は、(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体と、イソシアネート系硬化剤との反応物であり、かつ、粘着付与剤を含有せず、JIS Z 0237のタック試験法(傾斜角30°)に準じて測定されたボールタック値が5〜24であることを特徴とする継目処理材10A。補強層が複数層からなる場合には、緩衝部は複数層のいずれかの層間に形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁ボードなどの壁材間の継目に貼着される継目処理材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面は、外壁ボードなどの壁材が複数並設され、その外側に塗装により外装塗膜が設けられて構成されている場合が多い。このような壁面においては、気温変化などにより隣り合う壁材の間隔が変化してしまい、その結果、外装塗膜に亀裂が生じてしまう場合があった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献1には、壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、該粘着層の外側に設けられる少なくとも一層からなる補強層と、前記粘着層と前記補強層との間に形成され、緩衝材が部分的に設けられた緩衝部とを有する継目処理材が開示されている。この継目処理材を壁材間の継目を覆うように貼着することにより、壁材の間隔が変化するような力が作用しても、このような力は粘着層と補強層との間の緩衝部に吸収、緩和されるため、補強層にまではほとんど到達しない。従って、特許文献1に記載のような継目処理材を使用すれば、隣り合う壁材の間隔が変化した場合に生じる外装塗膜の亀裂を抑制できる。さらに、緩衝部において緩衝材が部分的に設けられていることで、継目に対応する部分の外装塗膜が経時的に外側に膨れていくことも抑制できる。
【特許文献1】特開2006−233611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような継目処理材に含まれる粘着層には、通常、貼着性を向上させる目的で粘着付与剤を含有させている。
しかしながら、粘着付与剤は経時的に外装塗膜の表面にブリードアウトしやすく、粘着付与剤がブリードアウトした部分の外装塗膜は、紫外線により硬化されやすかった。このような現象は外装塗膜の変色の原因になりやすく、景観上問題があった。
また、粘着付与剤を含有しない粘着層を用いた場合は、タック値が低くなりすぎ、貼着性が低下すると共に、濡れ性が低下して継目処理材(粘着層)と壁材の間で空気層が形成される場合もあり、経時的に膨張収縮を起こして空気層が粘着付与剤全体に広がり、外装塗膜が外側に膨らみやすかった。
【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、貼着性を低下させることなく、外装塗膜の変色を抑制し、かつ外装塗膜の膨れを防止する継目処理材の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の継目処理材は、壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、該粘着層の外側に設けられる少なくとも一層からなる補強層と、前記粘着層と前記補強層との間に形成され、緩衝材が部分的に設けられた緩衝部とを有し、前記粘着層は、(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体と、イソシアネート系硬化剤との反応物であり、かつ、粘着付与剤を含有せず、JIS Z 0237のタック試験法(傾斜角30°)に準じて測定されたボールタック値が5〜24であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の第2の継目処理材は、壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、該粘着層の外側に設けられる複数層からなる補強層と、前記複数層のいずれかの層間に形成され、緩衝材が部分的に設けられた緩衝部とを有し、前記粘着層は、(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体と、イソシアネート系硬化剤との反応物であり、かつ、粘着付与剤を含有せず、JIS Z 0237のタック試験法(傾斜角30°)に準じて測定されたボールタック値が5〜24であることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記(メタ)アクリル系単量体は、カルボキシル基を有する単量体を当該(メタ)アクリル系単量体100質量%中、1〜5質量%含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貼着性を低下させることなく、外装塗膜の変色を抑制し、かつ外装塗膜の膨れを防止する継目処理材を実現できる。
また、本発明の継目処理材によれば、外装塗膜の亀裂を防止できる。
さらに、本発明の継目処理材は、粘着付与剤を含有しなくても適度なボールタック値を有するので、貼着性が良好であるので、作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の継目処理材は、粘着層と、補強層と、これらの間に形成された緩衝部とを有する。
また、本発明の継目処理材は、JIS Z 0237のタック試験法(傾斜角30°)に準じて測定されたボールタック値が5〜24である。ボールタック値が5より低いと、貼着性が低下しやすくなると共に、濡れ性が低下して壁材間の継目に貼着した際に、継目処理材と壁材の間で空気層が形成されやすくなり、経時的に膨張収縮を起こして空気層が広がり、外装塗膜が外側に膨らみやすくなる。一方、ボールタック値が24より高いと、通常、ロール状に巻き取って作製する継目処理材を剥がして使用する際に、緩衝部が破壊する場合があるため、慎重に剥がす必要があり作業性が低下しやすくなる。
【0011】
ここで、図面を用いて本発明の継目処理材を具体的に説明する。
図1は、本実施形態の継目処理材10Aを示す平面図、図2は図1の継目処理材10Aを壁材W間の継目Cに貼着した状態を示す断面図である。
この例の継目処理材10Aは、壁材W間の継目Cを覆うように、すなわち隣り合う壁材Wに跨るように貼着される粘着層11と、この粘着層11の外側に設けられる補強層12とを有する幅Wが5cmの帯状のものである。
【0012】
粘着層11は、(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体と、イソシアネート系硬化剤との反応物である。
また、本発明に用いられる粘着層11には、粘着付与剤が含有されない。本発明によれば、粘着付与剤を含有しない粘着層を用いて継目処理材を作製するので、外装塗膜の表面に粘着付与剤がブリードアウトする恐れがなく、経時的な外装塗膜の変色を抑制できる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方を示すものとする。
【0013】
前記(メタ)アクリル系単量体としては、後述するイソシアネート系硬化剤と反応する官能基を有するものであれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸が好ましい。これら(メタ)アクリル系単量体は2種以上を併用するのが好ましい。
【0014】
また、(メタ)アクリル系単量体としては、カルボキシル基を有する単量体を併用するのが好ましい。これにより、剥離強度の強い粘着層を構成できる。
カルボキシル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。カルボキシル基を含有する単量体の含有量は、(メタ)アクリル系単量体100質量%中、1〜5質量%が好ましく、2〜3質量%がより好ましい。含有量の下限値が上記値より小さいと、共重合体と後述するイソシアネート系硬化剤との反応が円滑に進行しにくくなる場合がある。一方、含有量の上限値が上記値より大きいと、硬くなりタックが低下する。
【0015】
(メタ)アクリル系単量体を共重合させる方法としては、特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のラジカル重合など、公知の方法を用いることができる。中でも溶液重合が好ましく、重合開始剤の存在下、60℃以上、(メタ)アクリル系単量体の沸点以下の重合温度にて重合を進行させることで、共重合体が得られる。
【0016】
本発明の継目処理材は、上述したように粘着層に粘着付与剤が含まれていないので、粘着付与剤が外装塗膜の表面にブリードアウトする恐れがなく、経時的な外装塗膜の変色を抑制できる。また、粘着付与剤が含まれていない粘着層を用いても、継目処理材のボールタック値が5〜24であるため、貼着性が良好であると共に、濡れ性に優れ、継目処理材と壁材の間で空気層が形成されにくくなり、外装塗膜の膨れを防止できる。
ボールタック値を上記範囲内とするためには、例えば(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体のガラス転移温度が−40〜−70℃になればよい。共重合体のガラス転移温度は、−50〜−65℃となるのが好ましい。
なお、共重合体のガラス転移温度は、(メタ)アクリル系単量体の種類やその配合量によって調整できる。また、共重合体のガラス転移温度は、下記式(1)に示すFOXの式より求めることができる。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi) ・・・(1)
ただし、式(1)中、Wiは共重合体を構成する各(メタ)アクリル系単量体iの質量分率であり、Tgiは各(メタ)アクリル系単量体iのホモポリマーのガラス転移温度であり、TgおよびTgiは絶対温度(K)で表した値である。なお、Tgiは、それぞれのホモポリマーの特性値として広く知られており、例えば、「POLYMER HANDBOOK、THIRD EDITION」に記載されている値を用いればよい。
【0017】
また、前記共重合体の分子量は、400000〜1000000となることが好ましく、500000〜800000がより好ましい。共重合体の分子量が400000未満であると、凝集力が低下し、貼着後にズレが生じる場合がある。一方、共重合体の分子量が1000000を超えると、粘度が高くゲル化しやすくなり塗工が困難となる。
【0018】
前記共重合体と反応するイソシアネート系硬化剤としては、イソシアネート基を複数もつポリイソシアネート化合物であり、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビウレット等の脂肪族ポリイソシアネートや、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。中でもトルエンジイソシアネート(TDI)が好ましく用いられる。
【0019】
共重合体とイソシアネート系硬化剤の反応の際には、共重合体100質量部に対して、0.3〜3.0質量部(固形分換算)のイソシアネート系硬化剤を用い、50〜100℃にて反応させればよい。このように、共重合体とイソシアネート系硬化剤を反応させることで得られる反応物により、粘着層は形成される。
なお、図1、2に示す粘着層11の厚さは10〜50μm程度が好ましい。
【0020】
一方、補強層12は、この例では内部に不織布14が配置されたゴム13から形成されている。ゴム13としては、例えばアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴムなどが例示できる。不織布14は、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ビニロン、ポリエチレン、ポリウレタン、キュプラなどから形成されたものが使用される。この例の補強層12は厚さ100〜200μm程度に形成され、不織布14としては単位面積あたりの質量が10〜20g/mのものが使用される。
【0021】
そして、粘着層11と補強層12との間には、緩衝材15が部分的に設けられた緩衝部16が形成されていて、緩衝部16は緩衝材15の存在する部分と、それ以外の部分とからなっている。この例では、シリコーン樹脂などから形成され、厚みが2〜8μm程度で一辺の長さXが2mmの正方形の緩衝材15が、1mmのスパンSで千鳥状に点在するように規則的に設けられ、緩衝部16が形成されている。
また、この例の緩衝部16は、継目処理材10Aの幅方向の中央部に、継目Cよりも広い幅Wで設けられている。そして、継目処理材10Aの幅方向の両端部は緩衝材15が全く存在しない幅Wの緩衝材非存在部17となっている。この例では、幅Wが3cm、幅Wが1cmとされている。
【0022】
このような継目処理材10Aを図2に示すように壁材Wの継目Cに沿って貼着すると、壁材Wの間隔が広がるような力が作用した場合、壁材Wに直に接している粘着層11はその広がりに追従して伸びる。しかしながら、粘着層11と補強層12とは、緩衝材15が設けられている部分においては互いに固定されていないので、壁材Wの間隔が広がるような力は緩衝材15に吸収、緩和され、補強層12にまではほとんど到達しない。よって、このような力が作用した場合でも、補強層12の外側に塗装で形成される図示略の外装塗膜には亀裂が生じない。
【0023】
さらに、緩衝部16において緩衝材15がこのように部分的に設けられていると、外装塗膜の亀裂を防止できるだけでなく、継目Cに対応する部分の外装塗膜が経時的に外側に膨れてくることも抑制できる。このような膨れ抑制効果が発現する理由については明らかではないが、膨れを誘発している何らかの作用が、緩衝部16中の緩衝材15が存在しない部分において緩和されるためと考えられる。このような膨れ抑制効果は、長さ1mの緩衝部16のうち、緩衝材15が設けられた部分の面積比率が20〜90%の場合に、より効果的に発現する。
なお、継目処理材10Aの貼着には、必要に応じて接着剤を使用してもよい。また、貼着の前に壁材Wの対象部分に下地処理や下塗りを施してもよい。
【0024】
また、図1の例のように、一定の大きさの正方形の緩衝材15が一定のスパンSで千鳥状に点在している場合には、緩衝材15の一辺の長さXが2〜6mmで、スパンSが1〜4mmであると、外装塗膜の亀裂抑制効果と膨れ抑制効果とがともに非常に優れる。また、緩衝材15は、図3に示すように、一定の大きさの円形の緩衝材15が千鳥状に点在したパターンで設けられていてもよく、その場合には、緩衝材15の直径Dが2〜6mmで、図中Sで示すスパンが2〜9mm、Sで示すスパンが2〜6mmであると、外装塗膜の亀裂抑制効果と膨れ抑制効果とがともに非常に優れる。さらに、緩衝材15は、緩衝部16において部分的に設けられている限り、その形状、大きさ、スパンなどに制限はなく、その配列パターンも千鳥状などの規則性のあるパターンの他、規則性のないパターンでもよい。さらに、緩衝材15ごとに、形状、大きさが異なっていてもよい。
また、図4および図5に示すように、緩衝部16における緩衝材15が設けられた部分と緩衝材15が設けられていない部分とが、図1や図3とは反転したパターンであってもよいし、図6のように、緩衝部16において緩衝材15が断続的に設けられていてもよい。
【0025】
緩衝材15は、グラビア印刷により設けることができる。すなわち、緩衝材15の配列パターンに対応した凹部が形成された転写ロールを使用し、この転写ロールの凹部に緩衝材15の原料液を流し込み、余分な原料液をヘラなどで取り除いてから、粘着層11または補強層12の表面に転写すればよい。
【0026】
なお、以上の例では、緩衝材非存在部17が両端部に形成されているが、必ずしも形成されていなくてもよい。
また、この例の補強層12は、内部に不織布14が配置されたゴム13から形成されているが、補強層は不織布を有してなくてもよいし、2層以上であってもよい。
さらに、各部分の幅W,W,Wなども継目Cの幅や継目Cの構造などに応じて適宜設定できる。また、粘着層11の露出面には適宜離型紙を設けてもよい。
【0027】
図7は、さらに他の実施形態を例示するものであって、この継目処理材10Fは、補強層12が2層構成であって、不織布14をゴム13の内部に配置した第1の補強層12aが設けられているだけでなく、その内側にゴムからなる第2の補強層12bが設けられている点、そして、粘着層11と補強層12の間でなく、第1の補強層12aと第2の補強層12bとの間に緩衝部16が設けられている点で図1の継目処理材10Aと異なっている。
第1の補強層12aは100〜200μm程度、第2の補強層12bは20〜50μm程度の厚さが好適である。
【0028】
このような継目処理材10Fにおいては、緩衝材15が設けられている部分においては第1の補強層12aと第2の補強層12bとは互いに固定されていない。よって、この継目処理材10Fを壁材の継目に貼着すると、壁材の間隔が広がるような力が作用した場合、このような力は粘着層11と第2の補強層12bには同様に作用するものの、緩衝材15に吸収されてしまい第1の補強層12aまでにはほとんど到達しない。よって、その外側に外装塗膜が形成されていて、壁材の間隔が広がるような力が作用した場合でも、補強層12の外側の外装塗膜には亀裂が生じにくい。さらに、この例の場合でも、緩衝材15が部分的に存在していることにより、外装塗膜の亀裂とともに、継目に対応する部分の外壁塗膜の経時的な膨れも防止できる。
【0029】
以上説明したように本発明の継目処理材は、粘着層に粘着付与剤が含まれていないため、経時的な外装塗膜の変色を抑制できる。また、粘着付与剤を含有しなくても、ボールタック値を適度な値に保持できるので貼着性が良好であると共に、濡れ性に優れ、継目処理材と壁材の間で空気層が形成されにくくなり、外装塗膜の膨れを防止できる。従って、このような継目処理材を用いれば、作業性を向上できる。
また、本発明の継目処理材によれば、壁材の間隔が変化するような力が作用しても、このような力は粘着層と補強層との間、または補強層を構成する複数層のいずれかの層間の緩衝部に吸収、緩和されるため、隣り合う壁材の間隔が変化しても外装塗膜の亀裂を抑制できる。さらに、緩衝部において緩衝材が部分的に設けられていることで、継目に対応する部分の外装塗膜が経時的に外側に膨れていくことも抑制できる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
<粘着層を形成する反応物の調製>
(メタ)アクリル系単量体として、n−ブチルアクリレート(BA)67.5質量%、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)30.0質量%、アクリル酸(AA)2.5質量%の混合物100質量部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を溶解して、モノマー混合液を調製した。該モノマー混合液の30質量%を、酢酸エチル70質量%に溶解させ、酢酸エチルの沸点にて2時間撹拌しながら初期重合を行った。次いで、残りのモノマー混合液70質量%を、先の沸点温度を保持しながら3時間かけて滴下重合した。さらに、アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を添加し、5時間重合を行った(重合時間の合計:10時間)。その後、冷却しながら酢酸エチル80質量部を添加して、共重合体を得た。上記式(1)より算出した、共重合体のガラス転移温度は、−57℃であった。
得られた共重合体100質量部に、イソシアネート系硬化剤としてトルエンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、「コロネートL」)1.2質量部(固形分換算)を添加し、80℃で30分間乾燥させた後、室温にて3日間放置して反応物を得た。
【0031】
<継目処理材の製造>
図1および図7に示した構成の幅Wが5cmの継目処理材を製造し、ロール状に巻き取った。
粘着層は、先に得られた反応物から形成し、厚さは20μmとした。補強層は、ポリプロピレンからなる不織布(12g/m)をアクリルゴムの内部に配置させたもので、2層構成とし、厚みは150μmとした。
第1の補強層12aと第2の補強層12bとの間には、緩衝部を幅Wが3cmとなるように設け、緩衝部の両側には緩衝材非存在部を幅Wが1cmとなるように設けた。また、緩衝部は、正方形からなる緩衝材を部分的に設けることで形成した。緩衝材は、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、「SRX−370」)のグラビア印刷により、補強層の表面に千鳥状に設けた。なお、緩衝材の厚さは5μm、一辺の長さXは2mm、スパンSは2mm、長さ1mの緩衝部のうち緩衝材が設けられた部分の面積比率は36%であった。
得られた継目処理材について、下記に示す測定および各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
<測定・評価>
(ボールタック値の測定)
JIS Z 0237のタック試験法に準じ、傾斜式ボールタック装置(テスター産業社製、「ボールタックテスター」)を用い、傾斜角30°にて継目処理材のボールタック値を測定した。
【0033】
(外装塗膜の膨れの評価:温冷サイクル試験)
スレート板2枚を並べ、その継目に、各例で得られた継目処理材を粘着層側がスレート板に接するように貼着した。その後、継目処理材の外側にアクリル樹脂塗料を塗装して厚さ500μmの外装塗膜を形成し、14日間放置したものを試験片とした。
得られた試験片について、−5℃で4時間保持した後65℃で4時間保持することを1サイクルとし、合計40サイクルを行った。
その後、目視で外装塗膜における継目に対応する部分の膨れの有無を評価した。
目視により膨れが認められなかった場合を○、認められた場合を×として表1に示す。
【0034】
(外装塗膜の変色の評価)
外装塗膜の膨れの評価と同様にして試験片を製造し、この試験片を80℃で200時間放置し、その後、目視で外装塗膜の変色の有無を評価した。
目視により、変色が認められなかった場合を○、認められた場合を×として表1に示す。
【0035】
(作業性の評価)
ロール状に巻かれた継目処理材を室温にて1m剥がす際の、緩衝部の状態を目視にて評価した。
目視により、継目処理材の緩衝部に異常が認められなかった場合を○、継目処理剤の緩衝部の一部に破壊が認められた場合を×として表1に示す。
【0036】
[実施例2、3]
表1に示すように、(メタ)アクリル系単量体の種類とその配合量を変化させた以外は、実施例1と同様にして共重合体および反応物を調製し、継目処理材を製造し、各種測定と評価を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1、2]
表1に示すように、(メタ)アクリル系単量体の種類とその配合量を変化させた以外は、実施例1と同様にして共重合体を調製した。
得られた共重合体100質量部に、イソシアネート系硬化剤としてトルエンジイソシアネート1.2質量部(固形分換算)と、粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学工業社製、「スーパーエステルA−100」)20.0質量部を添加し、80℃で30分間乾燥させた後、室温にて3日間放置して反応物を得た。
このようにして得られた反応物を用いた以外は、実施例1と同様にして継目処理材を製造し、各種測定と評価を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例3、4]
表1に示すように、(メタ)アクリル系単量体の種類とその配合量を変化させた以外は、実施例1と同様にして共重合体および反応物を調製し、継目処理材を製造し、各種測定と評価を実施した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1中の略号は、下記化合物を示す。
「BA」:n−ブチルアクリレート、
「2−EHA」:2−エチルヘキシルアクリレート、
「MMA」:メチルメタクリレート、
「AA」:アクリル酸、
【0041】
表1から明らかなように、実施例で得られた継目処理材を使用することにより、温冷サイクル試験により外装塗膜の膨れが認められなかった。また、作業性が良好であり、外装塗膜変色の抑制効果を発現できた。このような継目処理材は貼着性が良好であった。
一方、比較例1、2で得られた継目処理材は、粘着層に粘着付与剤を含有させたため、貼着性は良好であったが、該粘着付与剤が経時的に外装塗膜の表面にブリードアウトし、外装塗膜が変色した。
ボールタック値が4である継目処理材(比較例3)は、粘着層に粘着付与剤を含有させなかったため、外装塗膜の変色を抑制することはできたものの、継目処理材と壁材(ストレート板)の間で形成される空気層に起因し、外装塗膜に膨れが認められた。
ボールタック値が25である継目処理材(比較例4)は、粘着層に粘着付与剤を含有させなかったため、外装塗膜の変色を抑制することはできたものの、緩衝部が脆く、壁材に貼着する際に慎重を期する必要があり、作業性が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の継目処理材の一例を示す平面図である。
【図2】図1の継目処理材を壁材間の継目に貼着した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の継目処理材の他の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の継目処理材の他の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の継目処理材の他の一例を示す平面図である。
【図6】本発明の継目処理材の他の一例を示す平面図である。
【図7】本発明の継目処理材の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
W:壁材、C:継目、10A〜10F:継目処理材、11:粘着層、12:補強層、12a:第1の補強層、12b:第2の補強層、15:緩衝材、16:緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、該粘着層の外側に設けられる少なくとも一層からなる補強層と、前記粘着層と前記補強層との間に形成され、緩衝材が部分的に設けられた緩衝部とを有し、
前記粘着層は、(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体と、イソシアネート系硬化剤との反応物であり、かつ、粘着付与剤を含有せず、
JIS Z 0237のタック試験法(傾斜角30°)に準じて測定されたボールタック値が5〜24であることを特徴とする継目処理材。
【請求項2】
壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、該粘着層の外側に設けられる複数層からなる補強層と、前記複数層のいずれかの層間に形成され、緩衝材が部分的に設けられた緩衝部とを有し、
前記粘着層は、(メタ)アクリル系単量体を共重合させた共重合体と、イソシアネート系硬化剤との反応物であり、かつ、粘着付与剤を含有せず、
JIS Z 0237のタック試験法(傾斜角30°)に準じて測定されたボールタック値が5〜24であることを特徴とする継目処理材。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系単量体は、カルボキシル基を有する単量体を当該(メタ)アクリル系単量体100質量%中、1〜5質量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の継目処理材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−108502(P2009−108502A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279329(P2007−279329)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)