説明

綴じ具及びファイル

【課題】正確な姿勢変更を繰り返し安定して行い得る綴じ具及び、当該綴じ具を具備するファイルを提供する。
【解決手段】綴じ具1は、ベース2と、第一の押さえ板3に設けられた第一の押さえ部32と、第二の押さえ板4に設けられた第二の押さえ部41と、第一の押さえ部32側に設けられ、所定方向の押圧動作のみにより、綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)へと操作し得る操作部31と、所定方向の押圧動作を綴じ姿勢から前記退避姿勢へ姿勢変更させる方向の動作に変換する動作変換機構Yとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を綴じることができる綴じ具及びファイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙葉類を綴じるためのファイル、並びに当該ファイルに取り付けられる綴じ具が、種々提案されている。そのなかで、表紙体に取り付けられた可撓性を有する綴じ足に係り合うことにより紙葉類を押圧する態様の綴じ具については、簡単な動作で紙葉類の綴じ込みや加除を行い得るように、種々の工夫がなされている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した特許文献に記載のものは、複数の綴じ足をそれぞれ挿通させるための複数の綴じ足挿通部を備えてなるベースと、当該ベースに対して動作可能に取り付けられ、一方の綴じ足を綴じ足挿通部よりも上側から押さえ得る第一の押さえ部と、ベースに対して動作可能に取り付けられ、他方の綴じ足を綴じ足挿通部よりも上側から押さえ得る第二の押さえ部とを有し、これらの押さえ部をベースに沿って位置付けた綴じ姿勢から、何れかの綴じ部材を例えば指で摘み上げるのみで、綴じ足と綴じ具との係り合いが解除され、紙葉類の綴じ込みや加除が行い易いものとなっている。そして摘み上げた押さえ部をベースに向けて押さえ込めば、綴じ具は再び綴じ足に係り合う綴じ姿勢をとる。このような綴じ具はこれまでオフィスにおいて広く好適に受け入れられてきた。
【0004】
ここで、このように綴じ具を取り扱う際の指の動作に着目すると、上述したような押さえ部を摘み上げる作業というのは、綴じ足と綴じ具との係り合いを解除するために上方に引っ張る力が必要となる。つまり、このような摘み操作を行っている場合には使用者は意識せずとも必然的に一定以上の指で摘む力や握力が要求されていることとなり、実は正確な指の動作を行うに足る意識や指の動作の正常さ、健常さが必要とされるものとなっている。
【0005】
他方、摘み動作よりもさらに簡単な動作、つまり単に押すのみの動作や一部をスライドさせる動作といった、摘むよりも簡単な指一本でも動作させ得る綴じ具を考えた場合、斯かる単純な動作によっても、綴じ具が正確に所定の姿勢変更を反復して確実に行うことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−307884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、綴じ具を扱う際の使用者の動作に着目したものであり、より簡便な操作で操作しても、正確な姿勢変更を繰り返し安定して行い得る綴じ具及び、当該綴じ具を具備するファイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係る綴じ具は、複数の綴じ足をそれぞれ挿通させるための複数の綴じ足挿通部を備えてなるベースと、当該ベースに対して動作可能に取り付けられ、一方の綴じ足を前記綴じ足挿通部よりも上側から押さえ得る第一の押さえ部と、前記ベースに対して動作可能に取り付けられ、他方の綴じ足を前記綴じ足挿通部よりも上側から押さえ得る第二の押さえ部と、前記第一の押さえ部側に設けられ、所定方向の押圧動作のみにより、前記第一及び第二の押さえ部を前記綴じ足挿通部上に位置付けた綴じ姿勢から前記第一及び第二の押さえ部を退避させ前記綴じ足を開放させた退避姿勢へと操作し得る操作部と、前記所定方向の押圧動作を前記綴じ姿勢から前記退避姿勢へ姿勢変更させる方向の動作に変換する動作変換機構とを具備することを特徴とする。
【0009】
また本発明に係るファイルは、上述した綴じ具を具備してなることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、操作部からの所定方向の操作力が退避姿勢へ姿勢変更させる方向の動作力へと変換されるため、所定の姿勢変更を反復して確実且つ正確に行うことができる綴じ具を提供することができる。
【0011】
より簡単に綴じ姿勢から退避姿勢までの動作を行い得るようにするためには、前記第一の押さえ部の動作と前記第二の押さえ部の動作とを連動させることにより前記綴じ姿勢から前記退避姿勢までの間の相互の動作をそれぞれ連動させ得る連動機構を設けることが望ましい。
【0012】
退避姿勢への姿勢変更がより好適に促されるための構成として、操作部が操作力を受ける上述した所定方向をベースの長手方向に沿った方向として、この動作変換機構を、所定方向の押圧動作を連動機構の一部を上側へ移動させる動作へと変換するものとしたものを挙げることができる。
【0013】
動作変換機構の具体的な構成としては、連動機構及びベースの何れか一方に設けられた案内面と、他方に設けられた当接面とを有するものを挙げることができる。
【0014】
操作部からの操作力がより効率良く変換されるようにするためには、案内面をベースに形成するとともに当接面を操作部に近接している第一の押さえ部に近接した位置に形成しておくことが好ましい。
【0015】
そして、綴じ姿勢においてベースと連動機構とが係り合うことで綴じ姿勢を保持する綴じ姿勢保持部を有するものの場合、当接面が案内面に沿って動作するときに綴じ姿勢保持部による係り合いが解除されるようにすれば、綴じ姿勢の安定した保持と退避姿勢への容易な姿勢変更とを両立させることができる。
【0016】
第一の押さえ部、第二の押さえ部ともにバランス良く綴じ姿勢の維持及び退避姿勢への姿勢変更を行うようにするためには、綴じ姿勢保持部を、連動機構における操作部からより遠い位置にある第二の押さえ部に近接する位置に設けておくことが望ましい。
【0017】
綴じ姿勢を確実に維持し得る綴じ姿勢保持部を実現するためには、綴じ姿勢保持部が、ベースの長手方向に直交する幅方向両端に設けられた係合段部と、係合段部に経過的な弾性変形を経て外嵌する対をなす外嵌突起とを有することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定の姿勢変更を反復して確実且つ正確に行うことができる綴じ具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るファイルの平面図。
【図2】同他の平面図。
【図3】同ファイルを示す外観図。
【図4】同他の外観図。
【図5】同実施形態に係る綴じ具を示す分解斜視図。
【図6】同綴じ具の綴じ姿勢を示す正面図。
【図7】同綴じ具の退避姿勢を示す一部を破断して示す正面図。
【図8】同綴じ具の要部を示す外観図。
【図9】同要部を示す外観図。
【図10】同要部を示す平面図。
【図11】同正面図。
【図12】同要部の一部を破断して示す正面図。
【図13】図6に対応した構成説明図。
【図14】図13に係る作用説明図。
【図15】図7に対応した構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係るファイルFは、図1乃至図5に示すように、表表紙F2と、表表紙F2の一端を折り込んで設けた細長い板状をなす押圧板部F3と、この押圧板部F3からさらに表表紙F2と反対側に折り込んで設けた背表紙F4と、表表紙F2とは分離した裏表紙F5と、裏表紙F5の一端を折り込んで設けた細長い板状をなす基板部F6と、基端部F72を基板部F6に取り付けてその先端部を紙葉類Pに挿し通すようにした一対の綴じ足F7と、基板部F6の長手方向に延びる形状をなし綴じ足F7を挿通させて係止するように構成した、本発明に係る綴じ具1とを具備する。なお同図において、紙葉類の図示は省略する。
【0022】
表表紙F2と、押圧板部F3と、背表紙F4とは、1枚の紙を折り込んで形成してあり、折り込み部分を押圧板部F3とし、この押圧板部F3を挟んで表表紙F2と背表紙F4とを配置するようにしている。
【0023】
一方、裏表紙F5と基板部F6とは、1枚の紙の端部を折り込んで形成してあり、折り込み部分を基板部F6としている。さらに、本態様では裏表紙F5を構成する部分を折り返して綴じ元側に開口する袋体状のものにし、背表紙F4を挿入可能な背表挿入部F5aを形成してある。そしてこの背表挿入部F5aに背表紙F4を挿入する寸法を調整することにより、表表紙F2及び裏表紙F5間に露出する背表紙F4の幅を調整可能にしている。
【0024】
綴じ足F7は、図3に示すように基端部F72から綴じ足本体F71を延ばして形成している。基端部F72は、幅方向に略T字状に拡開する形状を有する板状のものである。綴じ足本体F71は、横断面が略半円状をなし、一側面の一部に所定ピッチで溝を設けている。一方、図1に示すように、基板部F6には、綴じ足F7を挿通させ、また係止する役割を果たす取付孔F6a、F6bをそれぞれ2箇所設けている。この2箇所の取付孔F6a、F6bのうち、綴じ足本体F71を外側に位置する外取付孔F6bを挿通し、しかる後、内側に位置する内取付孔F6a、F6aから綴じ足本体F71を表表紙F2に向けて挿し通すようにしている。なお、基端部F72を内取付孔F6a、F6aのみに挿通させると、紙葉類を綴じ得る綴じ足本体F71の有効寸法が図示の態様よりも増すことになる。このように、本実施形態に係るファイルFは、2箇所の取付孔F6a、F6bを設ける事により、綴じ足本体F71が紙葉類を綴じ得る有効寸法を適宜調整することができる。
【0025】
他方、押圧板部F3には、内取付孔F6aと重合する位置に綴じ足F7を挿通させる2箇所の上挿通孔F3aと、この内取付孔F3aの外側には綴じ具1を取り付けるためのベース取付孔F3bを設けている。このとき、同図に示すように、綴じ足本体F71は押圧板部F3及び綴じ具1をともに挿通し得るとともに、綴じ具1によって綴じ足本体F71の任意の位置が係止されることで、押圧板部F3が綴じ具1とともに紙葉類を押圧し、紙葉類をこれら押圧板部F3と基板部F6とにより挟み込むようにしている。
【0026】
ここで、本実施形態に係る綴じ具1は特に図5に示すように、例えば樹脂の一体成形品である3つの部品、すなわち、ベース2、第一の押さえ板3及び第二の押さえ板4を組み付けることによって構成される。そしてこの綴じ具1は、ベース2と、第一の押さえ板3に設けられた第一の押さえ部32と、第二の押さえ板4に設けられた第二の押さえ部41と、第一の押さえ部32側に設けられ、所定方向の押圧動作のみにより、綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)へと操作し得る操作部31と、所定方向の押圧動作を綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)へ姿勢変更させる方向の動作に変換する動作変換機構Yとを具備することを特徴とするものである。
【0027】
以下、当該綴じ具1の構成について、図1乃至図15に示して詳述する。
【0028】
ベース2は、図1乃至図8に示すように、綴じ姿勢(P)で押圧板部F3を介して紙葉類を押さえ込むためのものであり、本実施形態では、長手方向において対称形状をなすとともに、長手方向に直交する幅方向については、綴じ足挿通部21の形状を除いて、略対称形状をなしている。当該ベース2は綴じ足F7を挿通させるための綴じ足挿通部21と、押圧板部F3に当該ベース2を固定するための取付爪22と、第一の押さえ部32及び第二の押さえ部41をスライド可能に支持するレール部23と、これら第一の押さえ部32及び第二の押さえ部41を退避姿勢(Q)で位置決めするためのストッパ24と、綴じ姿勢(P)で綴じ足F7を係止する綴じ足係止部25と、第一の押さえ板3及び第二の押さえ板4を直接ベース2に取り付けるための2つの開口である外側穴262a、262b、内側穴261a、261bからなる対をなす位置決め部26a、26bと、ベース2の長手方向中央付近における上端から両側へ突出して形成された案内突起27a、27bとを有している。
【0029】
綴じ足挿通部21は、ベース2の中央よりの位置に例えば80mm間隔で平面視コの字状に切り欠くことによって設けられ、綴じ足F7よりも若干大きな寸法で切り欠くことにより、スムーズな綴じ足F7の挿通を実現している。
【0030】
取付爪22は、綴じ足挿通部21よりも若干両端よりにそれぞれ下方に突出させて形成したものであり、上述したベース取付孔F3bに経過的な弾性変形を経て固定される。
【0031】
レール部23は、長手方向で綴じ足挿通部21を設けた位置から両端にわたって形成されたものであり、上端部分を長手方向に直交する幅方向に突出させて形成した、第一の押さえ板3に外嵌されるためのフランジ231と、幅方向中央に形成され綴じ足F7を収容するとともに、第二の押さえ板4の両側に略接する幅寸法に設定された凹溝232と、連動機構Xにおける第二の押さえ部41に近接する位置に設けられ幅方向両端に設けられた係合段部233とを有している。この係合段部233は、その表面が下向きに湾曲しつつ膨出するアール面234が形成されており、後述する外嵌突起423に外側から挟み込まれるように係り合うことにより、綴じ姿勢(P)を安定して維持し得る綴じ姿勢保持部Zを構成している。
【0032】
ストッパ24は、操作部31に当接することで、当該操作部31の動作終端である退避姿勢(Q)で位置決めするための当接端部241と、動作終端において操作部31に下方から弾性的に付勢することにより、動作終端近傍から動作終端まで操作部31を操作する際に適度なクリック感を出すとともに、当接端部241に操作部31が接した状態で位置決めを行うための弾性付勢部242とを有している。
【0033】
綴じ足係止部25は、綴じ足挿通部21よりも長手方向両端よりに設けられ。綴じ足本体F71に係り得る4つの係止突起251からなるものである。
【0034】
位置決め部26a、26bは、長手方向においてストッパ24よりも若干中央よりに形成された複数、つまり対をなして形成されたものであり、第二の押さえ板4から切り起こされた後述する位置決めリンク45並びに浮き防止リンク46の先端を軸支することにより、第二の押さえ板4を直接、第一の押さえ板3を間接的に取り付けるためのものである。この位置決め部26a、26bは、ストッパ24に近接した側の長穴である、位置決めリンク45を若干寸法スライド可能に軸支する外側穴262a、262bと、浮き防止リンク46を略回転のみ可能に軸支する内側穴261a、261bとを有している。ここで、この位置決め部26a、26bは上述の通り長手方向にも幅方向にも対称に形成されている。つまり、この対をなす位置決め部26a、26bがそれぞれ反対向きに第一の押さえ板3及び第二の押さえ板4を位置決めし得るものとなっている。そして、綴じ足挿通部21が長手方向に対称であるという点から、この位置決め部26a、26bと綴じ足挿通部21との位置関係は、任意の一方の綴じ足挿通部21及び一方の位置決め部26a、26b間の相対距離と、他方の綴じ足挿通部21及び他方の位置決め部26a、26b間の相対距離とが等しいものとなっている。これにより、ベース2は、第一の押さえ板3及び第二の押さえ板4を図5に示す向きとは反対向けにも取り付けることが可能となっている。つまり、操作部31を位置付ける位置を何れの綴じ足挿通部21寄りに位置付けるかを、適宜選択することができる。
【0035】
案内突起27a、27bは、本実施形態では上述したように第一の押さえ板3並びに第二の押さえ板4の取付け位置を変更することで操作部31を位置付ける位置を変更可能であることに対応すべく、ベース2の長手方向に2箇所設けている。図示例ではベース2の幅方向に突出する対をなす案内突起27a、27bが作用し得るとともに、作用していない案内突起27a、27bは綴じ姿勢(P)において第二の押さえ板4において樹脂を退避させて形成した後述する中央ヒンジ43近傍に位置付けられており、当該第二の押さえ板4に干渉することがない。そしてこの案内突起27a、27bは、本発明に係る動作変換機構Yを構成している案内面271a、271bを有している。この案内面271a、271bは、ベース2の長手方後端部から中央へ向けて上方する方向に傾斜させて面することにより、ベース2の長手方向から当接する当接面445と接した場合、この当接面445を斜め上方向へ案内し得るものである。
【0036】
第一の押さえ板3は、図1乃至図7及び図9に示すように、一端側をベース2に外嵌することによってベース2に対してスライド可能に固定されるとともに、併せて第二の押さえ板4を介してベース2に取り付けられることにより、ベース2の端部から抜ける方向へのスライド動作の動作範囲が規制されているものである。この第一の押さえ板3は、具体的には同図に示すように、操作部31と、第一の押さえ部32と、ベース2に外嵌する外嵌部33と、操作部31から他の部位を屈曲可能に接続する操作側ヒンジ34と、主に綴じ姿勢(P)への操作時に押圧する綴じ操作板35と、第二の押さえ板4へ接続する上接続板部36とを有している。
【0037】
操作部31は、綴じ姿勢(P)では綴じ足挿通部21の真上に位置付けられたものであり、綴じ姿勢(P)から、ベース2の長手方向に沿ってベース2中央へ向けた一方向の押圧動作によりストッパ24の当接端部241に当接する当接端311と、この当接端311が当接端部241に近接して退避姿勢(Q)へと動作する際に弾性付勢部242に付勢され経過的に弾性付勢部242に対して乗り上げ動作をし得る乗り上げ部312とを有している。またこの操作部31は、退避姿勢(Q)にある状態から一方向とは逆方向への押圧操作により、再び綴じ姿勢(P)とし得るものである。
【0038】
第一の押さえ部32は、綴じ足挿通部21よりも上側から綴じ足F7を押さえるためのものであり、本実施形態では操作部31に一体に形成されたものである。第一の押さえ部32は、操作部31と裏面側すなわち下方に面した位置に若干凹ました湾曲形状をなして形成されている。この第一の押さえ部32は、ベース2の長手方向に沿って操作部31と同じスライド動作をする。
【0039】
外嵌部33は、ベース2の端部に設けられた、幅方向に対をなして突出させたフランジ231に外嵌することにより、これら操作部31と第一の押さえ部32をスライド動作可能に取り付けるためのものである。
【0040】
操作側ヒンジ34は、操作部31の他端側において樹脂の厚みを若干薄く形成させて形成させたもので、操作部31と綴じ操作板35とを相対動作可能に接続したものである。
【0041】
綴じ操作板35は、一端側にある操作部31のスライド動作に応じて他端側が上方へ回転し上昇するようになっているものであり、退避姿勢(Q)にある綴じ操作板35を例えば指でベース2に向けて押圧することにより、再び綴じ姿勢(P)とするためのものである。この綴じ操作板35は、綴じ姿勢(P)とするために押圧される箇所である綴じ操作端351と、綴じ操作端351の裏面側に位置し、例えば指により摘み上げられることにより、操作部31によらずに綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)へとし得る摘み部353とを有している。なお本実施形態では、この綴じ操作板35の先端側に位置する綴じ操作端351の位置を、後述する中央ヒンジ43と平面視略重なる位置に設定しているが、勿論、綴じ操作端351を中央ヒンジ43を超えて摺動板部42上部にまで重なり得る構成として、第二の押さえ板4をより強く押さえ得る構成としても良い。
【0042】
上接続板部36は、綴じ操作板35の内側において第二の押さえ板4側の下接続板部44に重なるように接続することにより、当該第一の押さえ板3と第二の押さえ板4とを連動させるためのものである。この上接続板部36は、下接続板部44の先端部441を係り止めるための端爪361と、段部442に係り止めるための側爪362とを有している。これにより、綴じ操作板35は、第二の押さえ板4の下接続板部44ともに、本発明のリンク要素として一体的に動作し得るものとなっている。
【0043】
第二の押さえ板4は、図1乃至図7、図10乃至図12に示すように、綴じ姿勢(P)では平板状となった状態で凹溝232に収容させ、操作板35の操作によって、後述の通り形状を変形させながら、第一の押さえ板3の動作も連動させて綴じ足F7を押さえ得るものである。この第二の押さえ板4は、一端側において綴じ足F7を押さえるための第二の押さえ部41と、凹溝232内から上下方向の姿勢変形を行う摺動板部42と、略中央の位置で屈曲する中央ヒンジ43と、第一の押さえ板3側に固定される下接続板部44と、ベース2に枢着され綴じ操作板35の動作を案内するとともに操作部31を間接的に位置決めする位置決めリンク45と、第二の押さえ部41並びに摺動板部42の動作を案内するリンク要素である浮き防止リンク46とを有している。
【0044】
第二の押さえ部41は、第二の押さえ板4の端部の下面側の樹脂を若干膨出させて(図11)形成されたものである。そしてこの第二の押さえ部41は、綴じ姿勢(P)では綴じ足F7を上方から押圧するとともに、退避姿勢(Q)へと至る動作時には回転動作をしながら綴じ足挿通部21から退避する。
【0045】
摺動板部42は、その両側が、凹溝232に沿ってスムーズ且つがたつき無く摺動し得るように凹溝232の幅寸法と略同じか、若干小さい寸法で形成された立面421を有する板状のものである。この摺動板部42は、立面421の他、立面の先端において内方に突出しベース2に設けられたフランジ231を抱き込んで先端がベース2と常に接し、第二の押さえ部41が綴じ足F7を上方から押圧しうるようにしている抱き込み部422と、立面の内面側から突出して綴じ姿勢(P)においてベース2の係合段部233に弾性変形を経て係り合う対をなす外嵌突起423とを有している。この外嵌突起423の上側には上方へ向けて漸次突出寸法が小さくなり、係合の解除を行い易くし得る解除助長面424を形成している。そしてこの外嵌突起423は、上述した係合段部233を外側から挟み込むように係り合うことにより、係合段部233とともに綴じ姿勢(P)を安定して維持し得る綴じ姿勢保持部Zを構成している。
【0046】
中央ヒンジ43は、摺動板部42と下接続板部44とを屈曲可能に連結する樹脂ヒンジである。本実施形態ではこの中央ヒンジ近傍では摺動板部42と下接続部44は両側において樹脂を厚み方向に退避させて形成することにより、綴じ姿勢(P)において何れの案内突起27a、27bにも干渉しないようになっている。
【0047】
下接続板部44は、先端部441を端爪361に、段部442を側爪362に係り合わせることにより、上述した上接続板部36に固定して、綴じ操作板35をリンク要素として動作させ得るものである。そしてこの下接続板部44は、先端部441よりの位置、すなわち第一の押さえ部に近接する位置において両端の樹脂を正面視台形状に凹ませた凹部444を形成している。この凹部444を形成することにより、綴じ姿勢(P)では上記案内突起27a、27bから退避して干渉し得ないようにしている。そしてこの凹部444はベース2の長手方後端部から斜め上方向に切り欠かれた端面である当接面445を有している。この当接面445は、本発明に係る動作変換機構Yを構成している。すなわち当接面445は、綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)に至る途中、詳細には、綴じ姿勢(P)からの姿勢変形開始後すぐに案内面271a、271bと当接し当接しながら動作することによって、下接続板部44を上方へ移動させるものである。
【0048】
位置決めリンク45は、下接続板部44の中央の領域を切り起こし、他端側において基端ヒンジ451を中心に回転可能に構成したものであり、先端側をベース2の内側穴261bに軸支させた枢着端452としたものである。
【0049】
浮き防止リンク46は、摺動板部42の中央の領域を切り起こし、一端側において基端ヒンジ461を中心に回転可能に構成し、先端側を外側穴262aに若干寸法動作可能に軸支させた枢着端462としたものである。この浮き防止リンク46により、退避姿勢(Q)の際に第二の押さえ部41が不必要にベース2から上方へ離間するという不具合を上述した抱き込み部422とともに防止している。
【0050】
この本実施形態に係る綴じ具1は、これら第一の押さえ板3並びに第二の押さえ板4によって、本発明のリンク部からなる連動機構Xを構成している。つまり、本実施形態に係る連動機構Xとは、一体的に動作する綴じ操作板35並びに下接続板部44、綴じ操作板35、位置決めリンク45及び浮き防止リンク46を各リンク要素とした概略四辺リンクであるリンク部からなるものである。
【0051】
そしてこの連動機構Xは、この各リンク要素の動作により第一の押さえ部32の動作と第二の押さえ部41の動作とを連動させることにより綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)までの間の相互の動作をそれぞれ連動させ得るものである。そして、当該連動機構Xの動作のもと、操作部31は、ベース2の長手方向に沿った押圧動作のみにより、綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)へと操作し得るものとなっている。
【0052】
しかして本実施形態に係る綴じ具1は、上述した連動機構Xに加え、所定方向の押圧動作を綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)へ姿勢変更させる方向の動作に変換する動作変換機構Yを備えており、この動作変換機構Yが、これから説明する綴じ姿勢保持部Zとともに、安定した綴じ姿勢(P)とスムーズな退避姿勢(Q)への姿勢変更とを両立させ得る。以下、斯かる動作変換機構Yと、綴じ姿勢保持部Zの構成について説明する。
【0053】
動作変換機構Yは、本実施形態では上述したようにベース2に設けられた幅方向両端に対をなして形成された案内突起27a、27bと、第二の綴じ板4の両側に設けられた凹部444とを有する構成である。具体的には動作変換機構Yは、案内突起27a、27bに設けられた上向きの傾斜面である案内面271a、271bと、凹部444に形成された当接面445とを有するものである。
【0054】
他方綴じ姿勢保持部Zは、連動機構Xにおける第二の押さえ部41に近接する位置に設けられている。この綴じ姿勢保持部Zは、ベース2のレール部23に形成された係合段部233と、連動機構Xを構成する第二の綴じ板4に設けられて係合段部233に外嵌し得る外嵌突起423とを有する構成としている。
【0055】
以下、綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)に至るまでの綴じ具1の動作について、まず連動機構Xに着目して説明する。図1、図3、図6及び図13に示す綴じ姿勢(P)から操作部31をベース2の長手方向に、位置決め部26a、26bへ向けて押圧すると、操作部31並びに第一の押さえ部32のレール部23に沿ったスライド動作に伴って、ベース2と平行に姿勢を保っていた位置決めリンク45が内側穴261aを中心に回転動作を行い起立してゆく(図14)。この起立動作に伴い操作側ヒンジ34の変形とともに綴じ操作板35が綴じ操作端351を上昇させながら回転する。他方、綴じ操作板35の回転動作に伴い中央ヒンジ43が変形し、摺動板部42が上方へ回転する。このとき、摺動板部42の一端に位置付けられた第二の押さえ部41は綴じ足挿通部21上から退避する。そしてこの摺動板部42を浮き防止リンク46を介して外側穴262aに接続されているため、第二の押さえ部41は凹溝232内の空間を位置決め部26aに向かってスライドしながら回転動作を行うこととなる。このようにして、綴じ具1は図2、図4、図7及び図15に示す退避姿勢(Q)となる。
【0056】
そして併せて、綴じ姿勢(P)から退避姿勢(Q)に至るまでの綴じ具1の動作について、動作変換機構Y及び綴じ姿勢保持部Zに着目して説明する。まず、綴じ姿勢(P)では図6及び図13に示すように、案内面271aと当接面445とは、例えば0.2mm離間した状態となっている。その綴じ姿勢(P)から操作部31を押圧すると、当接面445が案内面271aに速やかに勢い良く当接するとともに当接面445が下接続板部44もろとも上方へ移動するとともに位置決めリンク45の起立動作を促す。そして当接面445が案内面271a、271bに沿って上昇中には外嵌突起423の表面である解除助長面424が係合段部233の表面であるアール面234を押圧し、対をなす外嵌突起423は下摺動板部42自体の弾性変形によりその離間距離を拡げながら上昇していく。そして当接面445が案内面271aを摺接している途中で外嵌突起423と係合段部233との係り合いが解除される。すると使用者は操作部31に掛かる抵抗が急に軽くなることで操作部31を助走させるかの如く勢い良く押圧することと、対をなす外嵌突起423が互いに近接する弾性反力とによって操作部31のスライドや摺動板部42の回転が図13に示す状態では勢い良く進み、綴じ具1は速やかに図2、図4、図7及び図15に示す退避姿勢(Q)となる。
【0057】
また、図2、4、5、6に示す退避姿勢(Q)から綴じ操作端351を上から指で押圧することで、上に説明した動作の逆の動作が行われることにより、再び図1及び図3に示す綴じ姿勢(P)へと戻る。このとき、外嵌突起423は係合段部233に外嵌し且つ係り合って、好適に綴じ姿勢(P)が保持される。
【0058】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る綴じ具1並びに当該綴じ具1を具備しているファイルFは、操作部31からの所定方向の操作力が退避姿勢(Q)へ姿勢変更させる方向の動作力へと変換する動作変換機構Yを具備しているため、所定の姿勢変更を反復して確実且つ正確に行い得るものとなっている。
【0059】
そして本実施形態では、連動機構Xを構成する下接続板部44に設けられた当接面445とベース2設けられた案内面271a、271bによって動作変換機構Yを構成しているので、部品点数の増加を回避しつつ、安定した姿勢変更を実現している。
【0060】
ベース2の長手方向に沿った操作力が動作変換機構Yによって、より姿勢変更への動作へと変換され易いように本実施形態では、動作変換機構Yを、連動機構Xが上方に移動する構成とし連動機構Xの一部を上側へ移動させる動作へと変換するようにしている。
【0061】
操作部31からの操作力がより効率良く変換されるべく本実施形態では、当接面445を操作部31に近接している第一の押さえ部に近接した位置に形成している。
【0062】
特に本実施形態では、当接面445が案内面271a、271bに沿って動作するときに綴じ姿勢保持部Zによる係り合いが解除されるようにしているので、綴じ姿勢(P)の安定した保持と退避姿勢(Q)への容易な姿勢変更とを両立せしめている。
【0063】
また本実施形態では綴じ姿勢保持部Zを、連動機構Xにおける操作部31からより遠い位置にある第二の押さえ部41に近接する位置に設けておくことで、第一の押さえ部32、第二の押さえ部41ともにバランス良く綴じ姿勢(P)の維持及び退避姿勢(Q)への姿勢変更を行うようにしている。特に本実施形態では上述通り綴じ姿勢保持部Zの係合解除に伴う弾性復帰力によって操作部31から遠い位置にある第二の押さえ部41側の姿勢変更が好適に促されるため、第一の押さえ部32、第二の押さえ部41とも、速やかに退避姿勢(Q)とすることができる。
【0064】
そして簡素な構成で確実に綴じ姿勢(P)を保持し得る綴じ姿勢保持部Zを実現するために本実施形態では、綴じ姿勢保持部Zが、ベース2の長手方向に直交する幅方向両端に設けられた係合段部233と、係合段部233に経過的な弾性変形を経て外嵌する対をなす外嵌突起423とを有する構成を適用している。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0066】
例えば上記実施形態ではベースに案内面を形成する構成としたが、勿論、ベースに当接面を形成しておき、ベースに対して動作する部材に案内面を形成しても良い。また上記実施形態のリンク部はベースに対して動作する部材から形成したものとしていたが、勿論ベースの一部を切り起こしたリンク要素を適用しても構わない。またファイルに取り付ける綴じ具の位置や綴じ足の間隔、また、綴じ具の数といったファイルの具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0067】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、紙葉類を綴じることができる綴じ具及びファイルとして利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…綴じ具
2…ベース
21…綴じ足挿通部
233…係合段部
271a、271b…案内面
31…操作部
32…第一の押さえ部
41…第二の押さえ部
423…外嵌突起
445…当接面
F…ファイル
F7…綴じ足
P…綴じ姿勢
Q…退避姿勢
X…連動機構、リンク部(連動機構)
Y…動作変換機構
Z…綴じ姿勢保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の綴じ足をそれぞれ挿通させるための複数の綴じ足挿通部を備えてなるベースと、
当該ベースに対して動作可能に取り付けられ、一方の綴じ足を前記綴じ足挿通部よりも上側から押さえ得る第一の押さえ部と、
前記ベースに対して動作可能に取り付けられ、他方の綴じ足を前記綴じ足挿通部よりも上側から押さえ得る第二の押さえ部と、
前記第一の押さえ部側に設けられ、所定方向の押圧動作のみにより、前記第一及び第二の押さえ部を前記綴じ足挿通部上に位置付けた綴じ姿勢から前記第一及び第二の押さえ部を退避させ前記綴じ足を開放させた退避姿勢へと操作し得る操作部と、
前記所定方向の押圧動作を前記綴じ姿勢から前記退避姿勢へ姿勢変更させる方向の動作に変換する動作変換機構とを具備することを特徴とする綴じ具。
【請求項2】
前記第一の押さえ部の動作と前記第二の押さえ部の動作とを連動させることにより前記綴じ姿勢から前記退避姿勢までの間の相互の動作をそれぞれ連動させ得る連動機構を具備している請求項1記載の綴じ具。
【請求項3】
前記所定方向が、ベースの長手方向に沿った方向であり、
前記動作変換機構が、前記所定方向の押圧動作を前記連動機構の一部を上側へ移動させる動作へと変換するものである請求項2記載の綴じ具。
【請求項4】
前記動作変換機構が、前記連動機構及び前記ベースの何れか一方に設けられた案内面と、他方に設けられた当接面とを有している請求項2又は3記載の綴じ具。
【請求項5】
前記案内面が前記ベースに形成されるとともに前記当接面が前記第一の押さえ部に近接した位置に形成されている請求項4記載の綴じ具。
【請求項6】
前記綴じ姿勢において前記ベースと前記連動機構とが係り合う綴じ姿勢保持部を有するものであり、
前記当接面が前記案内面に沿って動作するときに前記綴じ姿勢保持部による係り合いが解除されるものである請求項4又は5記載の綴じ具。
【請求項7】
前記綴じ姿勢保持部を、前記連動機構における前記第二の押さえ部に近接する位置に設けている請求項6記載の綴じ具。
【請求項8】
前記綴じ姿勢保持部が、前記ベースの長手方向に直交する幅方向両端に設けられた係合段部と、前記係合段部に経過的な弾性変形を経て外嵌する対をなす外嵌突起とを有している請求項6又は7記載の綴じ具。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の綴じ具を具備してなることを特徴とするファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−22924(P2013−22924A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162524(P2011−162524)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】