説明

綴じ機によって印刷製品を綴じる方法ならびにその方法を実施する綴じ機

【課題】ボリュームの大きな印刷製品でも簡便かつ能力低下を伴うことなく正確かつ機能的に綴じることができる、低コストな方法ならびにそれに対応する綴じ機を提供する。
【解決手段】折り曲げ具(18)をまず綴じられる印刷製品(6)の厚みに適応し製品進行方向(13)と交差する方向において綴じヘッド(19)から離間した第1の位置に位置設定する。綴じられる印刷製品(6)を挿入する前に逐次その厚みを測定し、測定された数値を所与の閾値と比較し、前記閾値を超過した際に製品推進方向(13)と交差する方向に見て前記第1の位置に比べて綴じヘッド(19)からより遠くに離間した所与の第2の位置に折り曲げ具(18)を移行させる。印刷製品(6)が挿入された後に折り曲げ具(18)を製品推進方向(13)と交差する方向において再び前記第1の位置に移行させ印刷製品(6)内に綴じ針(20)を打ち込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品進行方向に推進される印刷製品に対して従動する少なくとも1機の綴じヘッドと少なくとも1機の従動する折り曲げ具とを設け、請求項1の前段に記載の方法工程を含んでなる綴じ機によって印刷製品を綴じる方法、ならびに請求項7の前段に記載の綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
パンフレット、雑誌等の印刷製品を綴じる方法は以前から知られている。例えば欧州特許出願公開第1629992号A明細書により、丁合綴じ機の丁合チェーン上で個別の印刷紙葉を印刷製品に丁合しサドル形態にして綴じ機に搬送する方法が開示されている。綴じるために使用される綴じ針は、通常駆動体と曲げ具を備えている綴じ機の綴じヘッド内で形成される。印刷製品を貫通して推進された綴じ針は折り曲げ具に接合する。綴じヘッドと折り曲げ具の間に間隙が形成され、そこを通って印刷製品が推進されその際に綴じられる。異なった製品厚を有する印刷製品に変更するために、手動あるいはモータ駆動によって綴じヘッドを垂直に変位させる。
【0003】
欧州特許出願公開第0958942号A明細書により、加工作業中においても異なった綴じられる製品厚への変更調節が可能な針金綴じ機が知られている。そのため、折り曲げ具が綴じられる印刷製品の厚みが変更された際に下方に退避可能になるように下側から支承される。手動ホイールが設けられそれによって偏心体を加工される最も薄い印刷製品の厚みに合わせて折り曲げ支持体を調節することができる。針金綴じ機により厚みの大きい印刷製品が挿入されると、折り曲げ支持体はバネの反力を受けながら下方に退避する。極めて厚く大きな印刷製品に適応するために綴じ機の制御カムが交換される。
【0004】
欧州特許出願公開第1769937号A明細書によって綴じヘッドの上方に配置された調節手段を備えた綴じ機が知られている。前後に連続する厚みの異なった印刷製品に対して加工作業中に適合させるために前記調節手段を垂直方向に摺動し得るように構成される。
【0005】
綴じ工程の前に丁合された比較的多数の印刷紙葉から形成されたボリュームの大きな印刷製品を綴じる必要性も益々増している。その種の印刷製品のボリュームには丁合される印刷紙葉の数だけでなくその折り目ならびに個々の印刷紙葉の間に内包された空気も含まれる。綴じられる印刷製品は20mm超の厚みを有することがあり得る。しかしながら、その種のボリュームの大きな印刷製品を正確に綴じることは容易でない。ボリュームの大きな印刷製品を綴じるためには大きなストロークが必要となるにもかかわらず、通常そのためにより小さなボリュームの印刷製品を綴じる場合に比べて長い時間を使用することはできない。機能的かつ正確な綴付けが可能になるように、ボリュームの大きな印刷製品は綴じ機内への挿入前に予め圧縮する必要がある。しかしながらその際に印刷製品が大きく変形され、特に圧延される。それによって刻み、亀裂、折れ曲がった印刷紙葉等が発生し得る。欠陥を伴った印刷製品は排除する必要がある。
【0006】
さらに、欧州特許出願公開第1419898号A明細書によって、装置の調節手段に対して手動の操作を行う必要なく前後に連続する厚みの異なった印刷製品を綴じることを可能にする印刷製品の製造装置が知られている。このため、装置は厚み測定装置およびそれと結合された制御装置の他に回転角制御された電気モータとして形成され同様に前記制御装置と結合された調節手段を備え、それによって折り曲げ具を綴じられる印刷製品の特定の厚みに対応して調節し得るとともに先行する印刷製品に対して後続の印刷製品の厚みが変化した際にその高さ位置に合わせて調節可能にすることができる。回転角制御された電気モータの使用によって一方で折り曲げ具の高さ位置の極めて柔軟な設定および調節が可能になるが、他方で装置のコストが少なからず上昇する。そのことは、既に手動の高さ調節機構を装備している装置に対して折り曲げ具の高さ位置調節手段を後付けする場合に特に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1629992号A明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0958942号A明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1769937号A明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1419898号A明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、ボリュームの大きな印刷製品でも簡便かつ能力低下を伴うことなく正確かつ機能的に綴じることができる、低コストな方法ならびにそれに対応する綴じ機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、同種の方法において綴じられる印刷製品を挿入する前にその厚みを測定し、測定された数値を所与の閾値と比較し、前記閾値を超過した際に綴じられる印刷製品の厚みに対応して設定された第1の位置から前記綴じ工程に際して設定された第1の位置に比べて製品推進方向と交差する方向に見て綴じヘッドからより遠くに離間した所与の第2の位置に折り曲げ具を移行させる。綴じヘッドと折り曲げ具との間に印刷製品を挿入した後折り曲げ具が製品推進方向と交差する方向において再び前記第1の位置まで移動し、そこで綴じ針が印刷製品内に打ち込まれる。この折り曲げ具のその第1の位置から第2の位置へおよびその逆への変位機能によって、ボリュームの大きな印刷製品を簡便かつ能力低下を伴わずに正確かつ機能的に綴じることが可能になる。
【0010】
そのため綴じ機内に給入される印刷物全てに対して先に綴じヘッドと折り曲げ具との間の距離が障害の無い給入のために充分であるかどうかが検査される。それが成立しない場合、すなわち所与の閾値を超過しているボリュームの大きな印刷製品の給入に際して、印刷製品が障害なく給入され得るように折り曲げ具が所与の第2の位置まで綴じヘッドから離れる。印刷製品が給入された後折り曲げ具がいずれも綴じ針の閉動作の前にその閉動作のために綴じヘッド方向への移動を追加的に実施し、すなわち前記第2の位置から前記第1の位置に移行する。加えて、綴じヘッドが印刷製品を固定および/または圧縮する動作を実施する。綴付けの後折り曲げ具は前記第1の位置に滞留し、綴じヘッドが再び折り曲げ具あるいは印刷製品から離れるよう移動する。
【0011】
後退した折り曲げ具の第2の位置のため印刷製品の給入は綴じヘッドから丁合チェーンの間の距離によってのみ制限される。従って折り曲げ具はもはや利用可能空間を制限することはなく、従って従来綴じ機への挿入前に必要とされていた印刷物の予圧縮を省略することができる。
【0012】
未綴じの印刷製品が綴じ機内に挿入されると折り曲げ具が綴じヘッドへ向かう動作を実施し、その綴じヘッドが印刷製品の押圧を開始する。それによって印刷製品を比較的短い時間で固定し同時に圧縮することができる。印刷製品は折り曲げ具の第1の位置においてその折り曲げ具と綴じヘッドとの間に固定され、そこで綴じ針を打ち込んで折り曲げ具側で閉じることができる。綴付けが実施された後綴じヘッドが印刷製品および折り曲げ具から離れるよう動作し、それによって綴じられた直後の印刷製品を再び解放して搬送することができ、綴じ機は次の印刷製品を給入可能な状態になる。
【0013】
すなわち本発明に係る方法は、未綴じの印刷製品の挿入に際して存在する折り曲げ具と綴じヘッドとの間の距離を従来の技術による解決方式と比べて綴じられる印刷製品の厚みに応じて拡大することができる。従って圧縮されていない比較的ボリュームの大きな印刷製品を綴じることができる。その際より大きな間口のため未綴じの印刷製品の個々の印刷紙葉が綴じ機内への挿入に際して綴じヘッドに接触し印刷紙葉が相互にずれるか、互いに解離し、さらに損傷することを防止することができる。
【0014】
本発明の追加構成によれば、折り曲げ具がいずれも垂直方向に綴じヘッドに対して前進および後退動作する。この種の垂直動作は極めて機能安定的および比較的簡便な機械手段によって達成することができる。
【0015】
その際綴じヘッドを折り曲げ具の上方に配置することが好適である。しかしながら、原則的に折り曲げ具を綴じヘッドの上方に配置する実施形態も可能である。好適な実施形態によれば、綴じヘッドと折り曲げ具との間への印刷製品の挿入前に折り曲げ具をその第1の位置から下方の第2の位置に移動させ、印刷製品の挿入後に再び第1の位置に移動させる。印刷製品の綴付けおよび綴じ針の閉じ動作の後再びボリュームの大きな印刷製品が給入され検出されるまで折り曲げ具がその第1の位置に滞留する。
【0016】
印刷製品が丁合綴じ機の丁合チェーン上で綴じ機に向かって推進される本発明の追加構成によれば、折り曲げ具はその折り曲げ具の上縁部が丁合チェーンを実質的に超過しない程度に製品進行方向と交差する方向において第2の位置まで移動する。従って未綴じの印刷製品の搬送のための垂直間隔は丁合チェーンから綴じヘッドまでの間隔のみによって制限される。それによってボリュームの大きな印刷製品でも品質に悪影響を及ぼすことなく適正に印刷することが可能になる。
【0017】
製品進行方向と交差する方向で実施される折り曲げ具の第1の位置から第2の位置への動作のストロークは少なくとも5mm、特に5ないし10mm、特に好適には約8mmとなる。この方法によって約10mmを超える厚みを有する印刷製品を綴じることが好適である。勿論、より厚みの小さい印刷製品を本発明に係る方法によって綴じることも可能である。しかしながら、所与の閾値を下回る厚みを有する印刷製品の場合は折り曲げ具の第1の位置から第2の位置への移動が省略される。
【0018】
勿論、折り曲げ具の第2の位置への垂直動作を当初のものと異なった厚みを有する印刷製品に対応する新規の受注に綴じ機を適合させるために使用することもできる。その種の綴じ機の設定は個々の綴じ工程毎にではなく同一の厚みを有する一群の印刷製品のうちの最初の印刷製品の綴付けの前に1回のみ実施される。
【0019】
本発明に係る綴じ機は、製品進行方向において折り曲げ具の手前に機械制御装置と動作的に結合された厚み測定装置が配置され、厚み測定装置によって測定された綴じられる印刷製品の厚みが所与の閾値を超えた場合に綴じヘッドと折り曲げ具との間への印刷製品の挿入前に折り曲げ具をそれと結合された駆動機構によって製品進行方向と交差する方向において第1の位置よりも大きく綴じヘッドから離間した所与の第2の位置に移動させることが可能であり、印刷製品の挿入後に前記駆動機構によって折り曲げ具を製品進行方向と交差する方向において再び前記第1の位置に回帰移動させることができ、その位置において綴じ針が印刷製品内に打ち込まれる。
【0020】
本発明の好適な一実施形態によれば、駆動機構は綴じ機の主駆動装置によってまたは独立した駆動装置、特にサーボ駆動装置によって構成される。ここで駆動機構は所与の折り曲げ具のプレス応力に有効に設定することができる。
【0021】
本発明の追加構成によれば、折り曲げ具は特に綴じキャリッジ下側部材と綴じキャリッジ上側部材とを有してなる綴じキャリッジ上に配置される。綴じキャリッジと従って同時に折り曲げ具が駆動機構と結合された少なくとも1体のシリンダ、ウェッジバー、あるいはスプラインの作用によって垂直に動作可能となる。それによって綴じキャリッジと結合された折り曲げ具の簡便かつ確実な動作が可能になるとともに、駆動機構を独立した駆動機構として構成してスピンドル上に配置しそのスピンドル上で変位可能なスピンドルナットを介して垂直摺動可能で綴じキャリッジを支承しているウェッジバーと結合すれば構造的に単純に実現可能である。ウェッジバーの摺動に際して綴じキャリッジと従って同時に折り曲げ具が同様に垂直に上方あるいは下方に動作する。
【0022】
本発明のその他の好適な特徴は従属請求項および以下に記述する説明ならびに添付図面によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る綴じ機を示した概略構成図である。
【図2】図1の綴じ機の別の角度による構成図である。
【図3】綴じ機の変更例を示した概略構成図である。
【図4】図3の綴じ機の別の角度による構成図である。
【図5】別の実施例に係る綴じ機の図2および図4に準じた構成図である。
【図6a】綴じヘッドと折り曲げ具の動作を説明するための綴じ機の概略断面図である。
【図6b】印刷製品を挿入する際の折り曲げ具の第1の位置を示した概略説明図である。
【図6c】印刷製品を挿入する際の折り曲げ具の第2の位置を示した概略説明図である。
【図7】2機の綴じヘッドと2機の折り曲げ具を備えた綴じ機内への印刷製品の進入を示した概略説明図である。
【図8】図7の綴じ機内に進入した印刷製品の綴付けを示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施例につき添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0025】
図1および図2には、公知の丁合綴じ機3の丁合チェーン2上に配置された綴じ機1が示されている。丁合チェーン2は案内板4を備え、その案内板はサドル形状に形成されるとともにその上でキャッチ5(図7および図8参照)によっていずれも折り目6aを有する印刷製品6を搬送することが可能である。案内板4は、その間に丁合チェーン2の長手方向に延在するギャップ7が存在するように形成される。綴じられる印刷製品6はここでは図示されていない個別の印刷紙葉からなり、それらは丁合チェーン2の図示されていない丁合路の軌道内の綴じ機1の手前で丁合されたものである。丁合路の領域内において印刷製品6の折り目6a上で厚みを測定することができ、それは例えば10mmを顕著に超過することがあり得る。綴付け後、特に印刷製品6がその折り目6aの領域内で圧縮された後、印刷製品6の厚みはその折り目6a上において例えば僅か9.5mmとなり、従って印刷製品6の全厚みは19mmとなる。
【0026】
綴じ機1は、綴じキャリッジ上部材9と綴じキャリッジ下部材10とを備えた綴じキャリッジ8を有する。綴付けに際して綴じキャリッジ8がいずれも丁合チェーン2上で推進される印刷製品6に従動するように、綴じキャリッジは上側ガイド11および下側ガイド12上に摺動可能に支承される。上側ガイド11は例えば位置固定式のガイドロッドとして形成され、その上に綴じキャリッジ上部材9が支承される。摺動は公知の方式によって駆動機構14を使用して実施される。綴じキャリッジ下部材10は製品進行方向13に対して垂直(図7および図8)、すなわち下から上に垂直動作し得るように綴じキャリッジ上部材9に対して支承される。このため綴じ機1の主駆動装置として構成された駆動機構14によって駆動される2本のシリンダ15が設けられ、それらはいずれも上端で綴じキャリッジ上部材9上に下端で綴じキャリッジ下部材10上に固定されている。シリンダ15は例えば気圧式の調節アクチュエータとして形成され、機械制御装置16によって制御される。綴じキャリッジ下部材10の垂直動作は、ここで図示されていないストッパによって制限される。このストッパは位置調節可能である。従って該当するストロークを好適に調節することができる。下側ガイド12は前記の垂直動作を可能にするように可能にするように形成される。他方、綴じキャリッジ8を垂直に位置調節するために主駆動装置として構成された駆動機構14に代えて機械制御装置16と動作結合された独立式の駆動装置17(図4)、例えばサーボモータを使用することもでき、それは所与のプレス応力に好適に設定することができるものである。
【0027】
綴じキャリッジ下部材10上には折り曲げブロック材として形成され同綴じキャリッジ下部材と結合された少なくとも1体の折り曲げ具18が配置され、それが前記綴じキャリッジ下部材10と連動する。折り曲げ具18の上方には綴じヘッド19が配置され、それが綴じキャリッジ上部材9上に固定されるとともにその綴じキャリッジ上部材と連動する。公知の方式によって針金から綴じ針20(図8)が形成され、それが綴じヘッド19の作用によって折り目6aの領域内で印刷製品6に対して上から打ち込まれ、印刷製品の下面で折り曲げ具18の図示されていない能動あるいは従動式の折り曲げ要素によって閉じられる。折り曲げ具18は、好適には案内板4のギャップ7の幾らか下方に配置されるが前記ギャップ7の領域内まで延在することも可能な上端部18aを有する。上記の構成に代えて、綴じヘッド19と折り曲げ具18を別の方式で製品進行方向13に関して互いにずらして配置することもできる。従って例えば折り曲げ具18の下方に綴じヘッド19を配置することもできる。
【0028】
図3および図4には、綴じキャリッジ下部材10あるいはそれと結合された折り曲げ具18の垂直動作がウェッジバー21によって実施される点おいて前述の綴じ機1と異なる綴じ機1′が示されており、この場合前記ウェッジバー上に綴じキャリッジ下部材10が互いに離間した2個のローラ22によって載置される。ウェッジバー21は、スピンドル26によって垂直に摺動可能な2個のスピンドルナット25の適宜に形成されたウェッジ面24上にいずれもカム23によって接合する。スピンドル26はこの実施例においてサーボモータとして形成された独立式の駆動装置17によって駆動され、この駆動装置は直接スピンドル26上に配置することが好適である。スピンドル26の回転によってスピンドルナット25間の距離が縮小すると、ウェッジバー21が上方に移動する。それに従って綴じキャリッジ下部材10が折り曲げ具18と共に上方に移動する。スピンドルナット25間の距離が拡大すると、綴じキャリッジ下部材10がそれに応じて下方に移動する。この動作に際して綴じキャリッジ下部材10は綴じキャリッジ上部材9に固定されたロッド27上で誘導される。丁合チェーン2の方向、すなわち製品進行方向13に対して順および逆方向において綴じキャリッジ8が綴じ機1のものと同様に形成することができる下側ガイド12によって誘導される。当業者においては、例えば1つあるいは複数のスプライン28(図5)の手段等の綴じ機1″の綴じキャリッジ下部材10を垂直に動作させる別の可能性が存在することも自明である。
【0029】
前述したように原則的に折り曲げ具18を綴じキャリッジ上部材9上に固定することもできる。図示されていないがこの場合、綴じヘッド19を綴じキャリッジ下部材10上に固定し、シリンダ15ならびにウェッジバー21あるいはスプライン28は綴じキャリッジ上部材9上に配置される。
【0030】
前述した綴じキャリッジ下部材10の垂直動作は、いずれも綴じ工程、すなわち綴じ針20の形成、打ち込み、および閉じ動作に対して追加的かつ同期的に実施される動作である。このことについては、図6aないし図6c、ならびに図8を参照しながら以下により詳細に説明する。
【0031】
図6aには綴じ機1が丁合チェーン2によって挿入されたボリュームの大きな印刷製品6と共に示され、それに対して綴じヘッド19が垂直な動作方向29内において製品進行方向13に対して直角に下降し、それに向かって折り曲げ具18が印刷製品6を圧縮しながら垂直動作方向30内で下方から接近する。従って、折り曲げ具18が綴じられる、すなわち既に圧縮されている印刷製品6の厚みに適応して配置される。この折り曲げ具18の第1の位置においてその折り曲げ具の上端部18aが丁合チェーン2の上縁部2aより突出する。折り曲げ具18の第1の位置において、また同時に下降した綴じヘッド19の状態においてさらに後の印刷製品6の綴付けも実施される。
【0032】
図6bには、厚み、すなわちボリュームが大きい印刷製品6の綴じ機1内への挿入が示されている。この場合綴じヘッド19が上方の位置状態に存在し、折り曲げ具18はまず綴じられる印刷製品6の厚みに予め設定された第1の位置にあって丁合チェーン2の上縁部2aから突出する上端部18aを伴っている。しかしながらこの場合、ボリュームの大きな印刷製品6の挿入に際して前記の折り曲げ具18の位置において比較的小さくなる印刷製品6と綴じヘッド19の間の距離のため、この時点において未だ綴じられておらずまた圧縮もされていない印刷製品6の個々の印刷紙葉が綴じ機1内への挿入に際して綴じヘッド19に衝突して互いにずれるか、または相互に解離および損傷する危険が生じる。
【0033】
この危険を防止するため、綴じられる印刷製品6の挿入前にその厚みを測定し、測定された数値を所与の閾値と比較するとともにその閾値を超過した場合は図6に示されているように製品進行方向13と交差する方向において第1の位置よりも綴じヘッド19から遠くに離間した所与の第2の位置に折り曲げ具18を移行させる。図示されているように丁合チェーン2の上縁部2aより折り曲げ具18の上端部18aが突出することはない。それによって綴じられる印刷製品6を挿入するために利用可能な丁合チェーン2と綴じヘッド19の間の距離Aが折り曲げ具18の影響を受けることがなくなり、すなわち従来の技術によって公知の解決方式に比べて綴じられる印刷製品6を挿入するために利用可能な距離が拡大するように構成されている。適用される閾値は、現行の加工注文に応じて、例えば各時点で設定されている印刷製品と綴じヘッドとの間の安全距離に基づいてならびに製造速度に対応して機械操作要員によって設定される。
【0034】
綴じ機1内に挿入される印刷製品6の厚みを測定するために、製品進行方向13において綴じヘッド19と折り曲げ具18の手前に丁合チェーン2の方向を指向するセンサとして構成された厚み測定装置31が配置される(図7)。勿論、その他の方法によって印刷製品6の厚みを判定することもでき、例えば予め印刷製品6を構成する印刷紙葉を計数しその印刷紙葉の既知の厚みと計数された数を乗算することによって判定することができる。また、厚み測定装置31を製品進行方向13において綴じヘッド19と折り曲げ具18の後に配置することも可能であり、その際判定された厚みは後続の印刷製品6のために折り曲げ具18を設定するために初めて使用することができる。
【0035】
図6aには折り曲げ具18の第1の位置が示されており、そこで印刷製品6の綴付けも実施される。上述した折り曲げ具18の事前の設定と異なって、折り曲げ具18は印刷製品6を綴じるために既に所与の第1の位置に存在するか、または垂直動作方向30において下降した第2の位置から前記第1の位置に移行する。その後初めて垂直動作方向29における綴じヘッド19の下降と折り目6aの領域における印刷製品6の固定および圧縮が実施される。続いて綴じヘッド19が綴じ針20を印刷製品6内に打ち込む。
【0036】
図7には、2機の綴じヘッド19と2機の折り曲げ具18を備えた綴じ機1内に印刷製品6が進入する場合の製品進行方向13が示されている。綴じヘッド19と折り曲げ具18を収容する綴じキャリッジ8は同時に第1の水平動作方向32において製品進行方向13に逆行して右方向に移動する。ここで綴じヘッド19が図示されているようにその上側位置に存在し、両方の折り曲げ具18はその下降した第2の位置に存在する。従って印刷製品6を挿入するために利用可能な丁合チェーン2と綴じヘッド19の間の距離が従来の技術による解決方式に比べて大きくなる。機械制御装置16が厚み測定装置31によって測定された、給入された印刷製品6の厚みが所与の閾値を超過していないことを判定した場合、折り曲げ具18はその第2の位置に下降せず、すなわち上昇した第1の位置に滞留する。
【0037】
図8には、綴じ機1内に進入した印刷製品6が示されている。両方の折り曲げ具18はその上昇した第1の位置に存在し、そこで印刷製品6が拘束される。その際下降した位置に存在している両方の綴じヘッド19が両方の折り曲げ具18と同期して動作する。綴じヘッド19と折り曲げ具18を備えた綴じキャリッジ8は、製品進行方向13に順じた第2の水平動作方向33において印刷製品6と同じ速度で移動する。それにより、従動する綴じキャリッジ8によって印刷製品6を綴じることができる。この実施例の綴じ機1は2機の折り曲げ具18と2機の綴じヘッド19を備えるため、同時に2本の綴じ針20によって綴じることができる。勿論、1機の折り曲げ具18と1機の綴じヘッド19のみ、または2機より多い折り曲げ具18と綴じヘッド19を備えた綴じ機1も可能である。
【0038】
印刷製品6が綴じられると折り曲げ具18が少なくとも一旦その第1の位置に滞留し、綴じヘッド19は上方の図7に示された位置に移行し、それによって綴じられた印刷製品6が再び解放されて丁合チェーン2によって搬出される。略同時に、後続の印刷製品を丁合チェーン2から受容するために綴じキャリッジ8がその第1の水平動作方向において図7で右方向に移動する。それによって新たな綴じ工程を開始することができる。上述した動作に際して折り曲げ具18が走行するストロークは印刷製品6毎に異なったものとなり得る。このストロークは例えば約8mmとなる。このストロークは5ないし10mmの範囲にあることが好適である。前述した折り曲げ具18の垂直動作に加えて、折り曲げ具18を多様な厚みの印刷製品6に適合させるようにシリンダ15ならびにウェッジバー21あるいはスプライン28を使用することができる。それに従って綴付けの前後の折り曲げ具18の垂直サイクル動作が小さくあるいは大きくなる。
【符号の説明】
【0039】
1 綴じ機
2 丁合チェーン
3 丁合綴じ機
4 案内板
5 キャッチ
6 印刷製品
6a 折り目
7 ギャップ
8 綴じキャリッジ
9 綴じキャリッジ上部材
10 綴じキャリッジ下部材
11 上側ガイド
12 下側ガイド
14 駆動機構
15 シリンダ
16 制御装置
17 駆動装置
18 折り曲げ具
18a 上端部
19 綴じヘッド
20 綴じ針
21 ウェッジバー
22 ローラ
23 カム
24 ウェッジ面
25 ナット
26 スピンドル
27 ロッド
28 スプライン
31 厚み測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品進行方向(13)に推進される印刷製品(6)に対して従動する少なくとも1機の綴じヘッド(19)と少なくとも1機の従動する折り曲げ具(18)とを備える綴じ機(1)を使用し、
・ 綴じられる印刷製品(6)の厚みに適応し製品進行方向(13)と交差する方向において綴じヘッド(19)から離間した第1の位置に折り曲げ具(18)を位置設定し、
・ 製品進行方向(13)において印刷製品(6)を綴じヘッド(19)と折り曲げ具(18)の間に挿入し、
・ 挿入された印刷製品(6)を製品進行方向(13)と交差する方向に実施される綴じヘッド(19)の折り曲げ具(18)に対する接近動作によって固定し、
・ 固定された印刷製品(6)内に綴じヘッド(19)によって綴じ針(20)を打ち込み、
・ 打ち込まれた綴じ針(20)を折り曲げ具(18)の閉じ動作によって閉じ、
・ 綴じ針(20)を閉じた後に綴じられた印刷製品(6)を再び解放する、
各ステップによって印刷製品(6)を綴じる方法であり:
・ 綴じられる印刷製品(6)を挿入する前にその厚みを測定し、測定された数値を所与の閾値と比較し、前記閾値を超過した際に製品推進方向(13)と交差する方向に見て前記第1の位置に比べて綴じヘッド(19)からより遠くに離間した所与の第2の位置に折り曲げ具(18)を移行させ、
・ 印刷製品(6)が挿入された後に折り曲げ具(18)を製品推進方向(13)と交差する方向において再び前記第1の位置に移行させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
折り曲げ具(18)の綴じヘッド(19)に対する前進動作および綴じヘッド(19)からの後退動作がいずれも垂直に実施されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
綴じヘッド(19)を折り曲げ具(18)の上方に配置し、綴じヘッド(19)と折り曲げ具(18)との間への印刷製品(6)の挿入前に折り曲げ具(18)をその第1の位置から第2の位置に下方移動させ、印刷製品(6)の挿入後に再び第1の位置に上方移動させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
印刷製品(6)が丁合綴じ機(3)の丁合チェーン(2)上で綴じ機(1)に向かって推進され、折り曲げ具(18)の上縁部(18a)が丁合チェーン(2)から実質的に突出しない程度に製品進行方向(13)と交差する方向において折り曲げ具(18)を第2の位置まで移行させることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
製品進行方向(13)と交差する方向で実施される折り曲げ具(18)の第1の位置から第2の位置への動作のストロークが少なくとも5mm、特に5ないし10mm、特に好適には約8mmとなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
10mmを超える厚みを有する印刷製品(6)を綴じることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
機械制御装置(16)と推進される印刷製品(6)に製品進行方向(13)に従動する少なくとも1機の綴じヘッド(19)と少なくとも1機の従動する折り曲げ具(18)とを備えてなり、前記折り曲げ具をそれと結合された駆動機構(14,17)を使用して前記綴じられる印刷製品(6)の厚みに適応して製品推進方向(13)と交差する方向において綴じヘッド(19)から離間した第1の位置に移行させ得るようにした、印刷製品(6)を綴じるための綴じ機であり、機械制御装置(16)と動作的に結合された厚み測定装置(31)が設置され、厚み測定装置(31)によって測定された綴じられる印刷製品(6)の厚みが所与の閾値を超えた場合に綴じヘッド(19)と折り曲げ具(18)との間への印刷製品(6)の挿入前に折り曲げ具(18)をそれと結合された駆動機構(14,17)によって製品進行方向(13)と交差する方向において第1の位置よりも大きく綴じヘッド(19)から離間した所与の第2の位置に移動させることができるとともに、印刷製品(6)の挿入後に前記駆動機構(14,17)によって折り曲げ具(18)を製品進行方向(13)と交差する方向において再び前記第1の位置に回帰移動させ得ることを特徴とする綴じ機。
【請求項8】
駆動機構(14,17)が綴じ機(1)の主駆動装置によって、または独立した駆動装置、特にサーボ駆動装置によって構成されることを特徴とする請求項7記載の綴じ機。
【請求項9】
駆動機構(14,17)は所与のプレス応力に設定可能であることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
折り曲げ具(18)が綴じキャリッジ(8)上に配置されるとともに、駆動機構(14,17)と結合された少なくとも1体のシリンダ(15)、少なくとも1体のウェッジバー(21)、あるいは少なくとも1体のスプライン(28)の作用によって垂直に動作可能であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の綴じ機。
【請求項11】
綴じキャリッジ(8)が綴じキャリッジ下側部材(10)と綴じキャリッジ上側部材(9)とを有することを特徴とする請求項10記載の綴じ機。
【請求項12】
駆動機構(17)を独立した駆動機構として構成してスピンドル(26)上に配置しそのスピンドル(26)上で変位可能なスピンドルナット(25)を介して垂直摺動可能でかつ前記綴じキャリッジ(8)を支承しているウェッジバー(21)と結合することを特徴とする請求項10または11記載の綴じ機。
【請求項13】
厚み測定装置(31)が製品進行方向(13)において折り曲げ具(18)の手前に配置されることを特徴とする請求項7ないし12のいずれかに記載の綴じ機。
【請求項14】
2機の折り曲げ具(18)と2機の綴じヘッド(19)を備えてなり、前記両方の折り曲げ具(18)が製品進行方向(13)と交差する方向において連動して第1の位置から第2の位置に移動し得るように綴じキャリッジ(8)上に配置されることを特徴とする請求項7ないし13のいずれかに記載の綴じ機。
【請求項15】
折り曲げ具(18)が綴じられる印刷製品(6)の多様な厚みに対して適合可能であることを特徴とする請求項7ないし14のいずれかに記載の綴じ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−168051(P2011−168051A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34032(P2011−34032)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(502254615)ミュラー マルティーニ ホールディング アクチェンゲゼルシャフト (52)
【Fターム(参考)】