説明

綿実滓を使った動物飼育材料

【課題】
室内を汚すことなく動物の糞尿を素早く固め、尚且つ悪臭を発生させることなく、焼却及び/又は水洗トイレに流す事が出来、持ち運びにも便利な動物飼育材料を提供する。
【解決手段】
動物飼育材料の主成分として綿実滓を使用し、これに消臭効果のある薬剤、有機物、無機物、ポリマー等を混合し、顆粒状、粒状又はペレット状にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
綿実は、その実から油をしぼり、残った滓は廃棄処分されている。本発明は産業廃棄物である綿実滓を動物飼育材料として開発することにより資源の再利用に貢献するものである。産業廃棄物、特に綿実滓は、現在利用用途が無く廃棄処分されている。
本発明は費用をかけて廃棄処分されている綿実滓を主成分及び/又は他の有機物(例えばおから)、無機物等と混合して利用することにより、コストの軽減と資源の有効利用に貢献する動物飼育材料の開発に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物飼育材料には、猫用トイレ砂、ハムスター用トイレ砂等が有る。これらのトイレ砂には、鉱物ではベントナイト、ゼオライト、珪砂がある。これら鉱物は重量も重く、不燃性であるため、焼却ゴミとして処理する際には、都市焼却施設で処理すると目詰まりの原因になり大きな社会問題なっている。
一方、紙やオカラは焼却処分が可能なため近年、動物飼育材料として広く用いられるようになった。しかしながら、紙は静電気が発生しやすく猫の足に付着して室内を汚してしまう欠点を有する。又、オカラは輸送時に砕け微粉末が出る事によりやはり室内を汚すという紙と同様な欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題に鑑み、本発明は、室内を汚すことなく動物の糞尿を素早く固め、尚且つ悪臭
を発生させることなく、焼却及び/又は水洗トイレに流す事が出来、持ち運びにも便利な動物飼育材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、綿実滓を添加材及び/又は増量材として使用してなる動物飼育材料である。特に、本発明の動物飼育材料は、その主成分が綿実滓からなるものが好ましい。これに、添加される他の材料としては、消臭効果のある薬剤、有機物、無機物、ポリマー等であり、これらをを混合し、顆粒状、粒状又はペレット状にしたものである。
本発明における綿実滓には、綿実から油を絞った残滓だけではなく、綿実から飼料として中身を取った残滓、及び/又は綿花の綿を取った後の残滓も、上記添加材及び/又は増量材として同等に使用することができる。
【発明の効果】
【0005】
綿実は、その実から油をしぼり採って残った滓であり、現状では産業廃棄物として廃棄処分されているが、本発明においては、この綿実滓を動物飼育材料として用途開発することにより資源の再利用に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の課題】
【0006】
本発明者は鋭意研究した結果、以下の手段によって上記目的が達成できることをみいだした。
【0007】
本発明において用いられる綿実滓は、動物飼育材料の主原料、添加材、及び/又は増量材として使用し、用途に応じてオカラ、無機物、有機物を適時混合できる。好ましくは主成分を綿実滓とし、適時オカラ、無機物、及び/又は有機物等を混合することが望ましい。
本発明の動物飼育材料は綿実滓のみの造粒でも良いが、オカラ等の微粉末の出やすい素材も綿実滓と混合造粒すると、綿実滓の繊維がオカラ等の粉末と絡まりオカラ等を担持することにより、オカラ等を主原料にした猫用トイレ砂における微粉末化するという欠点を補うことが可能である。さらに、綿実滓の繊維に油が配位しているためペレッター等の機械で造粒するときに摩擦が少なく造粒しやすいという利点がある。
綿実滓を紙に混合して造粒すると、静電気がおき難く猫の毛への付着がなくなり、従ってトイレ容器よりの持ち出しが減少する。尚、綿実滓の繊維に配位している油は表面をコーテングしている訳ではないので、動物の尿等の保水率には問題はなく、紙等のセルロース類と同等かそれよりも保水率は高い。
【0008】
本発明において消臭効果のある薬剤とは、炭酸、重炭酸、乳酸、酪酸、しょう酸、燐酸、硫酸、安息香酸、ソルビン酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、若しくはアクリル酸であり、その可能な重合体、塩類、若しくはハロゲン化物であり、アルカリ土類金属若しくは遷移金属、又は酸性若しくはアルカリ性の官能基を有する構造体が使用可能である。
【0009】
本発明において有機物とは、木粉、おから、紙、コンニャク粉、コーヒー滓、藁、コーンスターチ、うどん粉、デンプン等であり、理想的にはおから、紙である。
【0010】
本発明において無機物とは、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、ベントナイト、ゼオ
ライト、牡蠣ガラ、フライアッシュ等である。
【0011】
本発明においてポリマーとは、吸水性ポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、タピオカデンプンのり、アクリルのり、ポリビニルアルコールがあり、理想的にはカルボキシメチルセルロースである。
【0012】
本発明においては以下の(1)〜(3)のものを使用することで、より製品の安定及び排泄物の悪臭の除去及び、排泄物から発生する各種菌に対して抗菌効果が得られる。
(1)アルカリ土類金属及び/又は遷移金属、(2)親水性基及び親油性の官能基を有する構造体、(3)マクロモノマー。
【0013】
(アルカリ土類金属及び/又は遷移金属について)
前記アルカリ土類金属及び/又は遷移金属は、カルシウム、マグネシウム、銅、銀、ニッケルなど、一般元素分類のアルカリ土類金属及び遷移金属の中から任意に選択添加することにより、動物の糞尿から発生する菌に対して抗菌効果が得られる。
【0014】
具体的には、アルカリ土類金属や遷移金属と乳酸、酪酸、硝酸、燐酸、安息香酸、ソルビン酸又はプロピオン酸との塩類やハロゲン化物、あるいはこれらを含有する天然物が好適であり、硫酸カルシウム、硫酸銅、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、などが使用可能である。
アルカリ土類金属や遷移金属の添加量は具体的には0.5から10%重量となるよう添
加するのが好適である。
【0015】
(親水性と親油性の官能基を有する構造体について)
前記の親水性と親油性の官能基を有する構造体が、同一分子内にそれぞれの官能基を1組以上保有する構造体と定義される。かかる構造体を使用することにより、綿実滓と他の材料との親和性が高まり、尚且つ、造粒時の機械の磨耗を極端に減らす事ができる。
【0016】
本発明で用いられる親水性と親油性の官能基を有する構造体には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやソルビタン脂肪酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸銅、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸塩、燐酸アルキル塩,N-アシルアミノ酸塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ジアルカノールアルカンアミド、ヒドロシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシジプロピルアクリレート、ビニルピロリドン、ジメチルアクリアミド、ジエチルアクリアミド等の低分子量体、又はエチレン分子量7以下のポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレンゴリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が好適でありこれらの中から目的にあわせて、一種又は二種以上のものを選択できる。
【0017】
前記構造体の添加量は添加効果をもとに決定されるが、具体的には、アルカリ土類金属や遷移金属の添加量により増減される。具体的には0.1%から20%までであり、理想的には1%から5%である。これは構造体の添加量がアルカリ土類金属や遷移金属の20%を超えると官能基の発熱分解が起こりやすいためである。
【0018】
(マクロモノマーについて)
本発明においてマクロモノマーとは、主鎖とは異なる特性を有する官能基を分子レベ
ルで制御して分子内に有する重合可能な単量体と定義され、重合分子量は6000以下が理想的である。6000を超えると粘性が発現し素材への浸透性が落ち、分散性が低下する。
【0019】
本発明におけるマクロモノマーの官能基としては、具体的にカチオン性解離基及び/又はアニオン性解離基が該当する。また、カチオン性解離基には解離度の違いにより、強酸性解離基と弱酸性解離基があるが、具体的には、カルボキシル基、スルホンサン基、オキソスルホン酸基、燐酸基、スルホエチル基、フォスフォメチル基、カルボメチル基などがあるが、かかるカチオン性解離基を有する反応単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸などがあり、カチオン性解離基に変換可能な反応性単量体には、スチレン、アクリニトリル、グリジシルメタクリレートやグリジシルアクリレートなどがある。
【0020】
アニオン性解離基には、強塩基性及び弱塩基性解離基があり、例えば、アンモニウム基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などがある。
【0021】
かかるアニオン性解離基を有する反応単量体としては、例えば、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ターシャーブチルアミノエチルアクリレート、ターシャーブチルアミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノポロピルアクリアミドなどがあり、アニオン性解離基に変換可能な単量体としてスチレンやグリジシルメタクリレートがある。
【0022】
前記(1)アルカリ土類金属及び/又は遷移金属100重量部に対して、前記(2)親水性と親油性の官能基を有する構造体を0.1〜20重量部、前記(3)マクロモノマーを0.1〜10重量部添加することが理想的であるが主原料の混合比率により暫時増減できる。
【0023】
(併用使用)
本発明は発明の目的範囲内で、他の成分を含める事が可能である。
【0024】
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子材料、抗菌剤、防腐剤、こんにゃく粉、硫酸銅、アスコルビン酸、クエン酸等を併用使用することが可能である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0026】
(実施例1)
綿実滓1kg及び豆腐製造工程から分取した含水性おから5kgに、重炭酸カルシウム50g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5g、硫酸銅10mg、及びアクリル酸とスチレンスルホン酸ナトリウムのマクロモノマー1gを良く混練し、チョッパーで造粒した。得た粒を60℃の恒温乾燥器に入れ1時間後に放置した。その後重量測定を行った結果、1220gであった。この粒の含水率は8%であった。この乾燥材料をハムスター飼育ケージの糞尿処理材として使用した。設置1日後確認したところ、糞尿は該処理材につつまれ団塊になっていた。ガステックアンモニア検知管を用いて、その団塊の表面2cmの距離の臭気を測定した結果0.15ppmであった。本動物飼育材料を用いる前の臭気ガス濃度は3ppmであった。
【0027】
(実施例2)
綿実滓10kg及び豆腐製造工程から分取した含水性おから10kgに、炭酸カルシウム500g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム50g、硫酸銅100mg、及びアクリル酸とスチレンスルホン酸ナトリウムのマクロモノマー10gを良く混合し、穴径4、5ミリのペレッターで長さ1センチのペレットをつくった。該ペレットを90℃の恒温乾燥器に入れ、含水率は8%まで乾燥した。こうして得たペレットを猫用トイレ砂として使用した結果、使用後も粒はしっかりしておりトイレ容器の中よりの掻き出し飛び散りはなかった。
【0028】
(実施例3)
綿実滓10kg及び豆腐製造工程から分取した含水性おから10kgに、炭酸カルシウム500g、硫酸銅100mg、アクリル酸とスチレンスルホン酸ナトリウムのマクロモノマー10g、及びカルボキシメチルセルロース5gを混合し、穴径4.5ミリのペレッターで長さ1センチのペレットをつくった。該ペレットを90℃の恒温乾燥器に入れ含水率は8%まで乾燥した。こうして得たペレットを猫用トイレ砂として使用した結果、猫の尿及び糞の部分が硬い団塊を形成した。使用後も粒はしっかりしておりトイレ容器の中よりの掻き出し飛び散りはなく、ペレット状態がしっかりしている為に砕けることなく猫の足に付着して持ち出されるために汚れるトイレ容器のまわりの汚れもなかった。
【0029】
(実施例4)
綿実滓10kg及び豆腐製造工程から分取して含水率8%まで乾燥したおから5kgに、カルボキシメチルセルロース5g及びアクリル酸のマクロモノマー3gを良く混合し、穴径4、5ミリのペレッターで長さ1センチのペレットをつくった。該ペレットを90℃の恒温乾燥器に入れ含水率は8%まで乾燥した。こうして得たペレットを猫用トイレ砂として使用した結果、猫独特のアンモニア臭及び糞臭が発生しなかった。嵩比重は0.3であったが、使用時の飛び散りも少なく、持ち運びにも便利なものであった。
【0030】
(実施例5)
綿実滓10kg及び豆腐製造工程から分取し含水率8%まで乾燥したおから5kgに、カルボキシメチルセルロース5g、クエン酸3g、酒石酸3g、及びカルボキシメチルセルロース5gを良く混合し、穴径4、5ミリのペレッターで長さ1センチのペレットをつくった。該ペレットを90℃の恒温乾燥器に入れ含水率は8%まで乾燥した。こうして得たペレットを猫用トイレ砂として使用した結果猫独特のアンモニア臭及び糞臭が発生しなかった。
【0031】
(実施例6)
重量%で、豆腐製造工程から分取した含水性おから35%、綿実滓30%、炭酸カルシウム15%、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム5%、メタクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のマクロモノマー1%、カルボキシメチルセルロース4%、コーンスターチ10%を混練造粒した。これを猫用トイレ砂として使用したところ、尿便の部分が固い団塊を形成した。この尿便団塊にガステック検知管を近付けて悪臭測定の結果、悪臭検出限界以下であり、優れた脱臭効果が確認された。
こうして得られた動物飼育材料の焼却試験を行った。その結果、炎をあげて燃焼した。鉱物製のトイレ砂では焼却炉の目詰まりを越し、燃焼はしなかった。本方法による燃焼ではメルトダウンによる不完全燃焼は全く発生しなかった。
【0032】
(実施例7)
重量%で、綿実滓70%ベントナイト10%、ソルビタン脂肪酸ナトリウム1%、スチレンスルホン酸ナトリウムとジエチルアミノメチルメタクリレートのマクロモノマー2%、粉砕再生紙5%、メチルセルロース5%、こんにゃく粉5%、硫酸銅0.1%、アスコルビン酸0.1%、及びポリビニルアルコール1.8%を混練造粒した。これを猫用トイレ砂として使用したところ尿便の部分が固い団塊を形成した。この尿便団塊にガステック検知管を近付けて悪臭測定の結果、悪臭検出限界以下であり、優れた脱臭効果が確認された。そしてさらに、この粒子1gに、大腸菌とサルモレラ菌の混合溶液1mlを添加し、ゼラチン培地で培養試験を行った結果、一週間経過後に菌体の細胞は全て死滅し、生存率は0となって、優れた抗菌効果が確認された。
【0033】
(比較例1)
比較のために、市販の猫用トイレ砂をベントナイト、紙、オカラ等から出来ているものをそれぞれ購入し、嵩比重、トイレ容器からの飛び散り、付着運び出しについて、本発明のものと比較した。
ベントナイトのものは長毛種の猫の足の毛に入ってトイレの外に運び出されていた。
市販の袋の残量が少なくなると粉が足について廊下に足跡が残った。
紙のものは静電気が起き相当飛び散が多く、トイレの外に運びだされていた。特に長
毛種においてはそれが顕著だった。
オカラのものは、殆どのメーカーのものが軽すぎ毛に絡まって運びだされていた。
その他のものも粉が飛び散っていた。本発明のものは飛び散りも付着による運び出しもなかった。
【0034】
(比較例2)
市販の脱臭、消臭機能付き猫用トイレ砂を購入し、猫が糞尿をした後、一日経過後のトイレのアンモニア臭気をガステック検知管で測定した。アンモニア濃度は2.2ppmであった。本製造方法で製造したものはどれも0.2ppm以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、現在、産業廃棄物として廃棄処分されているだけの綿実滓を、猫用トイレ砂、糞尿処理材等の動物飼育材料を製造する際に、その添加材及び/又は増量材として利用するので、天然資源の再利用を実施している産業分野、動物飼育材料製造業、その供給販売業等において、その発展に多大の貢献をもたらすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿実滓を添加材及び/又は増量材として成る動物飼育材料。
【請求項2】
主成分が綿実滓からなる動物飼育材料。
【請求項3】
上記請求項1に消臭効果のある薬剤を混合してなる動物飼育材料。
【請求項4】
上記請求項2に消臭効果のある薬剤を混合してなる動物飼育材料。
【請求項5】
上記主成分に有機物及び/又は無機物を混合し、顆粒状、粒状、または、ペレット状にした動物飼育材料。
【請求項6】
上記請求項1〜5にポリマーを添加してなる動物飼育材料。

【公開番号】特開2006−288227(P2006−288227A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110514(P2005−110514)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(503216513)株式会社エンゼル (1)
【出願人】(505128304)物産グラフトン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】