説明

線引装置

【課題】タンク及びポンプのユニットを一人の作業者が背負って携行し、当該作業者が把持する把持管にノズルを配して一人の作業者にて線引きすることができる線引装置を提供する。
【解決手段】液剤が収容されるタンク1に、該タンク1内の液剤を吐出するポンプを装着し、タンク1を背負って携行するための背負い部材3,3、及びポンプの吐出路に可撓ホース5により接続されている把持管6を設け、該把持管6の先端部にノズル7を設けることにより、一人の作業者にて線引きすることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運動場、路上、床等に線引きするための線引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運動場、路上等に線引きするための線引装置は例えば特許文献1、2に記載されている。特許文献1の線引き装置は、複数の車輪により支持され、ハンドルを有する台車に、液剤が収容されるタンクと、該タンク内の液剤を吐出する電動ポンプと、該電動ポンプの電源用バッテリ及び電動ポンプの吐出路に接続されたノズルとが搭載され、該ノズルが台車の一側に下向きに配され、台車を手動で移動させつつノズルから噴射して地面に線引きするように構成されている。
【0003】
特許文献2の線引装置は、複数の車輪により支持され、液剤が収容される縦長のタンクの下部で、前記車輪の間に、前記タンク内に弁体を介して連通するノズルが装着され、前記タンクの上部に、ハンドル及び前記弁体を開閉操作するレバーが設けられ、前記タンクを手動で移動させつつノズルから自然落下させて地面に線引きするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−71201号公報
【特許文献2】特開2009−207693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のような加圧噴射式の線引装置にあっては、タンク、電動ポンプ及び電源用バッテリ等の部品が台車に搭載されており、線引装置全体の重量が増加するため、手動で移動させ難いし、また、線引き箇所が円形、曲線になっている場合、線引装置全体のハンドル側を持ち上げて線引き作業を行わなければならず、作業者の負担が大きいという課題があり、また、部品点数が比較的多く、コスト高になるという課題があった。
【0006】
また、特許文献2のよう自然落下式の線引装置にあっては、加圧噴射式に比べて線引長さに対するノズルからの放出量が多くなるため、ランニングコストが高くなり、また、加圧液にすることなく自然落下させているため、塗料が使用された場合、一様の幅に線引きすることができず、線幅にムラが発生するという問題があり、水だけの線引きに限定されるという問題がある。また、水だけの線引きでは、濡れた地面や芝生では線引きすることができず、使用条件が限定されるという問題があり、また、自然落下式では、タンク内の残液量によって放出量が変化することになるため、一定濃度で線引きすることができないという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的はタンク及びポンプをユニットとし、該ユニットを一人の作業者が携行し、当該作業者が把持する把持管にノズルを配することにより、一人の作業者にて線引きすることができる線引装置を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は、作業者が把持する把持管のノズルの両側に接地輪を設けることにより、作業者の負担を軽減することができるとともに、ノズルの安定性を良好にすることができる線引装置を提供することにある。
【0009】
また、他の目的は、タンク及びポンプをユニットとし、該ユニットを一人の作業者が背負って携行し、当該作業者が片手で、ノズルが設けられている把持管を握り、他の手でポンプを動作させる構成とすることにより、一人の作業者にて線引きすることができる線引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る線引装置は、液剤が収容されるタンク内の前記液剤を吐出するポンプ及び該ポンプが吐出した液剤を噴射する線引用のノズルを備える線引装置において、前記ポンプは前記タンクに装着されており、前記タンクを携行するための携行部、及び前記ポンプの吐出路に可撓ホースにより接続されている把持管を有し、該把持管の先端部に前記ノズルを配してあることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、ポンプが装着されているタンクを一人の作業者が携行し、当該作業者が、先端部にノズルが配されている把持管を把持し、ポンプが吐出するタンク内の液剤をノズルから噴射させつつ線引きすることができるため、円形、曲線の線引きであっても一人の作業者で容易に、且つ一様の幅に線引きすることができるとともに、部品点数を比較的少なくすることができ、軽量で、低コストにすることができる。
【0012】
また、本発明に係る線引装置は、前記把持管は、前記ノズルの両側に接地輪を有することを特徴とする。
本発明にあっては、ノズルの両側に有する接地輪にて把持管を支持し、該把持管を把持する作業者の負担を軽減することができるとともに、ノズルの安定性を良好にできるため、把持管を把持しての線引き作業を簡易にできる。
【0013】
また、本発明に係るは線引装置は、液剤が収容されるタンク内の前記液剤を吐出するポンプ及び該ポンプが吐出した液剤を噴射する線引用のノズルを備える線引装置において、前記ポンプは操作レバーの操作により駆動される手動式であって前記タンクに装着されており、前記タンクは、該タンクを肩掛けして携行するための肩掛け部材及び前記操作レバーを有しており、前記ポンプの吐出路に可撓ホースにより接続されている把持管を備え、該把持管の先端部に前記ノズル及び接地輪を配してあることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、ポンプが装着されているタンクを一人の作業者が携行し、当該作業者が、先端部にノズルが配されている把持管を把持し、操作レバーを手動で操作してタンク内の液剤をポンプにて吐出し、ノズルから噴射させつつ線引きすることができるため、円形、曲線の線引きであっても一人の作業者で容易に、且つ一様の幅に線引きすることができるとともに、部品点数を比較的少なくすることができ、軽量で、低コストにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポンプを備え、該ポンプ及びタンクが一人の作業者にて携行され、当該作業者にて線引きすることができるため、円形、曲線の線引きであっても一人の作業者で容易に、且つ一様の幅に線引きすることができるとともに、部品点数を比較的少なくすることができ、軽量で、低コストにすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、ノズルの両側に配してある接地輪にて作業者の負担を軽減することができるとともに、ノズルの安定性を良好にできるため、把持管を把持しての線引き作業を簡易にできる。
【0017】
また、本発明によれば、ポンプを備え、該ポンプ及びタンクを一人の作業者が背負って携行し、当該作業者の片手で、ノズルが設けられている把持管を握り、他の手で操作レバーを握り、一人の作業者にて線引きすることができるため、円形、曲線の線引きであっても容易に、且つ一様の幅に線引きすることができるとともに、部品点数を比較的少なくすることができ、軽量で、低コストにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る線引装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る線引装置の構成を示す背面図である。
【図3】本発明に係る線引装置のノズル側部分の構成を示す拡大側面図である。
【図4】本発明に係る線引装置のノズル側部分の構成を示す一部省略拡大背面図である。
【図5】本発明に係る線引装置の接地輪側に配される支持杆の構成を示すもので、Aは平面図、Bは正面図である
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る線引装置の構成を示す模式図、図2は線引装置の構成を示す背面図、図3は線引装置のノズル側部分の構成を示す拡大側面図、図4は線引装置のノズル側部分の構成を示す一部省略拡大背面図、図5は線引装置の接地輪側に配される支持杆の構成を示すもので、Aは平面図、Bは正面図である。
【0020】
図に示した線引装置は、水、塗料等の液剤が収容されるタンク1と、該タンク1の下部に装着され、タンク1内の液剤を吐出するポンプと、タンク1を背負うための背負い部材3と、タンク1の側部に装着され、手動操作でポンプを駆動する操作レバー4と、ポンプの吐出路に可撓ホース5により接続されている把持管6と、該把持管6の先端部に取付けられているノズル7及び該ノズル7の両側に配されている二つの接地輪8とを備える。背負い部材3は、ポンプが装着されているタンク1を携行するための携行部を構成している。
【0021】
タンク1は、略円筒形をなし、上部に注排口を有するタンク本体11と、注排口に着脱可能に装着されている蓋体12とを備え、該蓋体12の上部に、把持可能な提手13が設けられている。タンク1の一側には第1の横孔14が開設され、他側には第2の横孔15が開設されている。第1の横孔14には、略L字形をなす操作レバー4の先端部(一辺部先端)が挿入されており、第2の横孔15には可撓ホース5の一端が挿入されている。
【0022】
ポンプは、可撓の円板状をなし、中央部が操作レバー4の角回転に連動して上下に動作するダイヤフラムと、タンク1内に取着され、前記ダイヤフラムの周縁部を保持してあるハウジングと、前記ダイヤフラムの動作にてタンク1内の液剤を前記ハウジング内に吸込むとともにタンク1内への逆流を阻止し、前記ハウジング内で圧液を発生させるための吸入/吐出用の弁体とを有し、操作レバー4の操作により駆動される手動式であり、前記ハウジング内の圧液を吐出する吐出路に可撓ホース5の一端が連通している。
【0023】
背負い部材3は2本のベルト部材からなり、タンク1における第1及び第2の孔14,15間の上下及び横方向へ離隔した4箇所に両端が取付けられ、肩掛けにてタンク1を背負うことができるように構成されている。
【0024】
操作レバー4は比較的長い長レバー部4a及び該長レバー部4aの先端に屈曲部にて連なり、第1の横孔14に挿入されている短レバー部4bを有し、該短レバー部4bが前記ハウジングの外部に角回転可能に枢着されているとともに、連動機構を介して前記ダイヤフラムの中央部に連動し、長レバー部4aを上下に角回転させることにより、前記ダイヤフラムを上下に動作させるように構成されている。
【0025】
把持管6は、比較的長い非可撓管からなり、可撓ホース5に接続される基端側に開閉弁及び該開閉弁を動作させる弁レバー61が設けられており、先端にノズル保持管62が接続され、該ノズル保持管62の先端にノズル7が着脱自在に取付けられている。ノズル保持管62は、把持管6の軸線と交差する方向へ屈曲する屈曲部を有し、把持管6が地面に対して斜めになる状態で把持されたとき、ノズル保持管62の先端に取付けられているノズル7が下向きに開口するように構成されている。
【0026】
ノズル保持管62の中間には、横方向に長く、両端部に接地輪8,8を支持する角棒状の支持杆63が取付けられている。支持杆63は、長手方向中央部がノズル保持管62に取付けられ、両端部に複数の位置決め凹部63aが長手方向に離隔して設けられている。
【0027】
ノズル7は水にて線引きするための水噴射及び塗料にて線引きするための塗料噴射を兼ねており、所定の噴射角で噴射するように構成されている。ノズル7はチャッキ弁72を有するノズルホルダ71に取付けられ、該ノズルホルダ71がノズル保持管62の先端に取外しを可能に取付けられている。チャッキ弁72は、把持管6の弁レバー61が閉位置にあるとき、把持管6内に残っている液剤がノズル7から滴下するのを防いでいる。
【0028】
接地輪8,8は、車輪及び該車輪の軸方向一側に取付けられた遮蔽板を有しており、ノズル7から噴射された液剤の広がりを遮蔽板が規制し、噴射された液剤による線幅を設定するため遮板を兼ねており、対向する内面に遮蔽板が配され、接地輪8,8の離間距離が線幅になるように構成されている。接地輪8の車軸の両端にアーム8a,8aが結合され、該アーム8a,8aが横方向への摺動を自在に支持杆63に取付けられ、競技によって決められている線幅に対応して接地輪8,8間の正確な間隔を簡易に調節可能にしてある。
【0029】
アーム8a,8aの上端部は倒立U字形をなし、U字の両辺に、支持杆63の両端部に挿通される孔8b,8bが開設され、U字の中央部に、先端が支持杆63の両端側位置決め凹部63a,63aのいずれか一つに係合する雄螺子9,9が螺着され、該雄螺子9,9にてU字部分が支持杆63の両端部に固定され、雄螺子9,9を弛緩することによりアーム8a,8aを支持杆63に沿って摺動させ、接地輪8,8間の間隔を調節可能にしてある。
【0030】
アーム8a,8aの下端部には下向き傾斜の紐掛凹部8dが設けられ、円形に線引きされる際、その一端部が円形線の中心に係止される紐体の他端部が一方のアーム8aの紐掛凹部8dに掛止され、円形の線を簡易に引くことができるように構成されている。なお、時計周りに線引きされる際は、一方のアーム8aの紐掛凹部8dに紐掛けされ、反時計周りに線引きされる際は、他方のアーム8aの紐掛凹部8dに紐掛けされる。
【0031】
以上のように構成された線引装置は、ポンプが装着されているタンク1内に水、塗料等の液剤が収容され、背負い部材3にて作業者の背中にタンク1が背負われることによりタンク1及びポンプが携行される。タンク1を背負った作業者の片方の手で把持管6の基端部が把持され、接地輪8が地面に接地され、この接地した状態で接地輪8間のノズル7が下向きに開口する。
【0032】
タンク1を背負い、把持管6を把持した作業者は他方の手で操作レバー4を握り、該操作レバー4を上下に角回転させることにより、ポンプのダイヤフラムが上下に動作してタンク1内の液剤がハウジング内に吸込まれ、発生した圧液が吐出路から可撓ホース5内を経て把持管6内に圧送される。
【0033】
線引きを実行する際には、作業者が把持管6の弁レバー61を握って弁体を開動作させることにより接地輪8,8間のノズル7から地面に向けて液剤を噴射しつつ接地輪8,8を転動させ、作業者が歩行することにより適宜の線を引くことができる。この際、ノズル7から噴射された液剤の広がりを接地輪8,8の遮蔽板が規制し、線幅を設定するため、一定幅の線を引くことができ、また、接地輪8,8の離間距離を変更することにより、線幅を変えることができる。
【0034】
以上のようにタンク1及びポンプがユニットになっており、このユニットのポンプに可撓ホース5及び把持管6を介してノズル7が接続されているため、部品点数を低減できるとともに、比較的小形で、軽量にすることができる。しかも、タンク1及びポンプのユニットを作業者が背負い、ノズル7が装着されている把持管6を作業者の片手で把持し、他方の手で操作レバー4を操作することにより、ノズル7から一定圧の液剤を噴射しつつ一人の作業者で線引きすることができるため、作業効率がよく、線引き長さに対する液剤量を低減でき、線引きコストを低減できる。また、競技によって決められている線幅に対応して接地輪8,8間の正確な間隔を簡易に調節することができる。
【0035】
尚、以上説明した実施の形態では、タンク1及びポンプのユニットを背負い部材3にて背負うことができる構成としたが、その他、背負い部材3をなくし、タンク1の蓋体12に設けられている提手13を携行部とし、提手13を把持してタンク1及びポンプのユニットを携行することができるように構成してもよいし、背負い部材3と提手13とを備え、いずれか一方を選択して携行することができる構成としてもよく、携行するための構成は特に制限されない。提手13を把持して携行する構成の場合、前記ユニットに接地用の転動輪を設けてもよい。
【0036】
また、以上説明した実施の形態では、タンク1にポンプが直接装着されている構成としたが、その他、ポンプが間接的に装着されている構成であってもよい。
【0037】
また、以上説明した実施の形態では、ノズル7の両側に接地輪8を有する構成としたが、その他、接地輪8は必ずしも必要でない。
【0038】
また、以上説明した実施の形態では、ダイヤフラムを有するポンプとしたが、その他、操作レバー4の操作で往復動するピストンを有するポンプであってもよいし、また、エンジン、電動モータ等により駆動されるポンプであってもよく、ポンプの構成は特に制限されない。
【符号の説明】
【0039】
1 タンク
3 背負い部材
4 操作レバー
5 可撓ホース
6 把持管
7 ノズル
8 接地輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤が収容されるタンク内の前記液剤を吐出するポンプ及び該ポンプが吐出した液剤を噴射する線引用のノズルを備える線引装置において、前記ポンプは前記タンクに装着されており、前記タンクを携行するための携行部、及び前記ポンプの吐出路に可撓ホースにより接続されている把持管を有し、該把持管の先端部に前記ノズルを配してあることを特徴とする線引装置。
【請求項2】
前記把持管は、前記ノズルの両側に接地輪を有する請求項1記載の線引装置。
【請求項3】
液剤が収容されるタンク内の前記液剤を吐出するポンプ及び該ポンプが吐出した液剤を噴射する線引用のノズルを備える線引装置において、前記ポンプは操作レバーの操作により駆動される手動式であって前記タンクに装着されており、前記タンクは、該タンクを肩掛けして携行するための肩掛け部材及び前記操作レバーを有しており、前記ポンプの吐出路に可撓ホースにより接続されている把持管を備え、該把持管の先端部に前記ノズル及び接地輪を配してあることを特徴とする線引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55980(P2013−55980A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194842(P2011−194842)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000250007)有光工業株式会社 (30)
【出願人】(506193556)フジ商事株式会社 (1)