説明

線材のボビン結束装置及びその装置を用いたボビン自動巻取装置

【課題】ボビンに巻着けた線材を、人手を用いずに全て機械的に結束可能とする装置を提供する。
【解決手段】基盤29に、前面の周辺寄り部位に輪潜りクリップ14を設けた結束ヘッド5を回転可能に設け、結束ヘッド5にボビン2を挟持可能に対向したボビンチャックのうち一方側のボビンチャック7aを結束ヘッド5の回転方向とは逆方向に回転可能に設けるとともに、ボビンチャック7aと対向して出没するボビンチャック7bを従動回転可能に設ける。前記輪潜りクリップ14は、中心部の掛止部14aがその外側の掛止包持部14bから出没して該掛止部14aと掛止包持部14bとの間に線材Wを挟持及び離脱を可能とし、その掛止包持部14bの外周部に線材を掛け止め可能な線材外掛内筒部14cを備え、線材外掛内筒部14cの外周には線材外掛内筒部14cの先端まで先端部を出没可能とする線材押出外筒部14dを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンに巻着けた鋼線などの線材をボビンに結束する装置と、その結束装置を用いた線材のボビンへの自動巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧装置やコンプレッサーなどには、細い鋼線を編み込んで強度を高めたゴムや樹脂製の耐圧チューブが高圧で流体を送り出すために使用されている。このような耐圧チューブを製造する際に使用される鋼線は、鋼線製造工場からは大型のドラムに巻かれた状態で出荷されてくるので、これを耐圧チューブ製造装置の専用ボビンに巻替えして使用されている。この巻替え作業はボビン巻取装置で機械的に行われることとなる。
【0003】
通常、鋼線製造工場から搬送されてきた鋼線を巻いたドラムを、ボビンに巻着ける鋼線の必要本数分の個数を一緒に一旦サプライリールスタンドに装着し、各個のドラムから引き出された鋼線は一束にされてボビン巻取装置へと供給され、そのボビン巻取装置によって鋼線に束はボビンごとに所定の長さに巻取られて、巻替え作業が終了する。
このような鋼線の巻取装置として、従来、複数のボビンを同時にターンテーブルへ順送りして効率良く巻取ることが可能となるターンテーブル方式の鋼線巻取装置が使用されている。
しかしながらターンテーブル方式の装置では、空ボビンを装置へ供給することや鋼線をボビンへ巻取ることは機械的に行うことはできたが、線材は伸びた端部が柔軟に変形して大きく暴れるため、ボビンに対する最初の固定や最後の結束は機械によって自動的に行うことができず、このため、ボビンへの巻取作業の全てを機械だけて行うことができる装置(ボビン巻取作業の全自動装置)の提供が極めて困難であった。
【0004】
一方、下記特許文献1には、ターンテーブル上で「巻き取り枠」に線材をセットして、その「巻き取り枠」に線材を巻取ることが人手を介さずに全自動化が可能となる「線材の巻き取り装置」が提案されている。
しかしながらこの装置では、特殊な「巻き取り枠」を使用することで線材巻取りの無停止連続運転(全自動)を可能としたものなので、この「巻き取り枠」を前記「専用ボビン」に代替して全自動化しようとしても、その「巻き取り枠」とそのボビンとは構造が全く異なるため、「ボビン」に対しては巻き終えた鋼線の結束を行うことはできないため装置全体の全自動化はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−223771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボビンへの線材巻取作業における完全自動化した装置の実現は生産効率を格段に向上させ大幅なコストダウンが可能となるが、ボビン一個毎に頻繁に行われる結束などの巻取作業について、従来の装置では上述の如く手作業を完全になくすことができなかった。
このため、これまでボビンへの線材の巻取作業の全自動化を実現可能に導くボビンの自動結束装置の実現が強く希求されていた。
【0007】
そこで本発明は、各個のボビンに巻着けた鋼線などの線材の終端部分を、手作業を伴うことなく全て機械的に強く結束可能となる線材の結束装置を提供し、併せて、その結束装置を用いることで手作業を伴うことなくボビンに供給された線材の巻取りから結束までの作業を自動的に連続して行うことを可能とする線材のボビン自動巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の線材のボビン結束装置は、平面状の直立した基盤の表面側に、該表面に回転中心方向を直交させた円盤状の結束ヘッドを、該基盤の裏面側に設けたモータにより回転可能に設けるとともに、該結束ヘッドの中央表側に、ボビンを挟持可能に対向した両側のボビンチャックのうち一方側のボビンチャックを、前記基盤の裏面側に設けたモータにより前記結束ヘッドの回転中心と共通の中心で該結束ヘッドの回転方向とは逆方向に回転可能に設ける。
前記基盤の前にチャック基台を設けて該チャック基台の上部に、前記結束ヘッドのボビンチャックと対向する他方側のボビンチャックを、前記結束ヘッドのボビンチャックに向けて後部に設けたチャックシリンダの操作で出没してボビンを挟持するとともに該挟持されたボビンの回転に従動回転可能に設ける。
前記基盤に、前記ボビンチャックに挟持したボビン近傍のボビンへ供給される線材側に、該線材をボビンの手前に案内する線材ガイド片と、離れた位置から前記ボビンと前記線材ガイド片との間に張架された線材に届く位置にまでシリンダにより往復可能とした線材カッターとを設ける。
そして、供給された線材を巻き終えたボビンを前記ボビンチャックで挟持して前記結束ヘッドを前記各モータで回転させつつ、前記結束ヘッドのチャック面のボビンに接触しない部位に突設した輪潜りクリップを前記チャック面の背後に設けたシリンダで出没操作して前記線材をボビン巻着け終端部分で結束し、該線材の結束部分の終端部側をカットして独立させて排出可能とした装置である。
【0009】
前記輪潜りクリップは、中心部の掛止部がその外側の掛止包持部から背後に備えたシリンダの操作で出没して該掛止部と掛止包持部との間に該線材ガイド片で案内された前記線材を、挟持及び離脱を可能とし、その掛止包持部の外周部に背後に備えたシリンダの操作で突出したとき前記線材を掛け止め可能な長さとなる線材外掛内筒部を備えるとともに該線材外掛内筒部の外周に前記線材外掛内筒部の先端より先まで先端部が出没可能な線材押出外筒部を備えて成る。
【0010】
そして、前記結束ヘッドを回転させて背後に備えたシリンダの操作で前記輪潜りクリップの線材外掛内筒部に輪状に掛けて引き出した線材の輪の中に前記ボビンに反対巻きとなった線材の端部側を前記掛止部に掛け止めて、前記線材外掛内筒部に掛けられた輪状部分を前記掛止部の外側へ脱落させることで前記掛止部で固定した線材の端部側を輪状部分の中に潜らせ、さらに前記結束ヘッドを回転させて前記輪状部分に潜った線材の端部側を前記掛止部で引っ張って引き絞り、該線材の両引き絞り部分を屈曲変形させて前記輪状部分から抜けないように結束可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、上記発明において、基盤の表面側の輪潜りクリップの近傍に、背後に備えたシリンダの操作で前記輪潜りクリップ先端に掛かった線材を押し外し可能に出没する線材押し外し爪を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明にあっては、上記各発明において、ボビンチャックに挟持されたボビンと線材ガイド片との間において、ステック面を少なくとも線材の上下振れ範囲に配するとするとともに、背後に備えたシリンダの操作でボビンに沿ってボビンの回転軸方向と平行に進退可能しとした線材押し遣りステックを、線材が線材外掛内筒部に掛かる位置と輪潜りクリップの掛止部に掛かる位置に、押し遣やり可能に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明にあっては、上記請求項1から3のうちいずれかに記載のボビン巻着線材の結束装置を用いた線材のボビン自動巻取装置である。
前記結束装置と共通の基盤の表面側において、巻付け前の空ボビンの供給側には、該基盤の表面に回転中心方向を直交させた円盤状の巻取ヘッドを、該基盤の裏面側に設けたモータにより回転可能に設けるとともに、該巻取ヘッドの中央表側に、ボビンを挟持可能に対向した両側のボビンチャックのうち一方側のボビンチャックを前記巻取ヘッドの回転軸心と共通の軸心で設ける。
前記基盤の前にチャック基台を設けて該チャック基台の上部に、前記巻取ヘッドのボビンチャックと対向する他方側のボビンチャックを、前記巻取ヘッドのボビンチャックに向けて後部に設けたチャックシリンダの操作で出没してボビンを挟持するとともに該挟持されたボビンの回転に従動回転可能に設ける。
前記巻取ヘッドのチャック面のボビンに接触しない部位に、線材の中間を掛け止める掛止部が先端部に備わり、前記巻取ヘッドのチャック面の背後に設けた押出し部を前記基盤の背後に備えたシリンダの操作で往復させることで該掛止部を出没操作して線材を挟持可能とした材線掛止クリップを設ける。
【0014】
前記巻取ヘッドの位置よりも前記基盤の線材供給側に、前記巻取ヘッドのボビンチャックに挟持されたボビンの軸部方向に線材を導いて往復させつつ回転したボビンに線材を整列状態に巻取可能とするトラバース台に装着されたガイドビークを配設する。
【0015】
そして、線材巻取後のボビンの排出側には、前記請求項1から3のうちいずれかに記載のボビン巻着線材の結束装置を配設する。
前記チャック基台の下方に設けたリフト基台の上に、ボビン転送台を介して、下部に設けたボビンリフトシリンダの操作で上下方向に往復可能なボビンリフトを備えるとともに、前記ボビン転送台は前記基盤の表面側と平行で水平な方向に往復操作可能なリフト往復シリンダのシャフトによって前記巻取ヘッドと結束ヘッドとの間をボビンリフトが往復可能とする。
【0016】
そして、ボビンリフトで前記巻取ヘッドと結束ヘッドに供給されたボビンに、ガイドビークから供給された線材を巻き取って結束し、そのボビンを供給側の線材から切り離して排出可能としたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明にあっては、上記発明において、押し出し板が、巻取ヘッドを中心に、掛止クリップの押出し部に当たる範囲で、最上部から線材の結束装置側まで90度の範囲で細長い円弧状に形成し、前記掛止クリップを巻取ヘッドの上部から結束装置側までの位置において、該押し出し板によって前記掛止クリップの押出し部の押し出し操作を可能としたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明にあっては、上記発明において、ボビン転送台に設けたボビンリフトを2台とし、該2台のボビンリフトが巻取ヘッドと結束ヘッドとの位置に対応した間隔で設けられ、前記結束ヘッド側のボビンリフトが前記巻取ヘッドの直下と前記結束ヘッドの直下との間を往復可能としたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明にあっては、上各発明において、結束ヘッドのボビンチャックに挟持されたボビンの直下から排出方向へと下り勾配に形成された排出ガイド板を、移動するボビンリフトに接触しない位置にまで移動可能に設け、前記結束ヘッドのボビンチャックから外された結束及び切り離し後のボビンを下から受けて排出可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の線材のボビン結束装置は、輪潜りクリップを備えた結束ヘッドの回転と、該結束ヘッドに設けたボビンチャックの回転とを逆向きに操作し、且つ結束ヘッドに設けた輪潜りクリップの出没操作によって、ボビンに巻着けられた線材の終端部分を一切人手を使用せずに全て機械的な操作で結束することが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明にあっては、線材押し外し爪で線材を輪潜りクリップの掛止部から確実に脱落できるので、絡まって輪潜りクリップから外れなくなる事故が防止でき、線材の切断終端部分の周囲への絡まり事故による装置の稼動停止を解消することが可能となる。
【0022】
請求項3に記載の発明にあっては、線材ガイド片が線材を押し遣りステックで押し遣ることで、輪潜りクリップの線材外掛内筒部及びの掛止部へ線材を正確に案内することが可能となる。
【0023】
請求項4に記載の上記結束装置を用いた線材のボビン自動巻取装置は、上記結束装置を用いることで、巻取ヘッドで多数のボビンを連続して自動的に巻取るとともに線材を巻取ったボビンを次ぎの結束ヘッドで結束することが一切人手を使用せずに全て機械的な操作で連続して自動的に行うことが可能となり、結束後のボビンを各個ごとに独立させて外部に排出可能となった。
このことで、ボビンへの線材の巻取作業における完全自動化した装置の実施が可能となり、従来の結束などの手作業を必要とする装置に比較して、生産効率を格段に向上させ大幅なコストダウンを可能となる
人手を要せずにボビンへの線材の巻取作業が可能となることは、工場の無人化及び昼夜の無停止連続稼動など、齎される効果はこれまでなく極めて大きいものがある。
【0024】
請求項5に記載の発明にあっては、前記巻取ヘッドを中心に該90度の範囲で細長い円弧状とした押し出し板によって、前記掛止クリップが結束装置側においても、押し出し板で前記掛止クリップの押出し部を押すことが可能となるので、線材の結束装置での該線材カッターによる線材の切断前に該掛止クリップの該掛止部に線材を固定することが可能となる。このため毎回あらためてロボットアームなどのよる線材の掛止部への掛止め作業が不要となり、その分線材のボビンへの巻き着き作業を円滑且つ連続して自動的に行うことが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明にあっては、ボビン2個を巻取ヘッドと結束ヘッドとに同時に平行してセットできるのでボビン巻取作業の効率を高めることが可能となる。
【0026】
請求項7に記載の発明にあっては、ボビン巻取作業終了後の出荷のための配送工程など、次ぎの工程に速やかに移行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】サプライリールスタンドと本発明のボビン自動巻取装置を示す正面図である。
【図2】本発明のボビン自動巻取装置を示す正面図である。
【図3】本発明のボビン自動巻取装置を示す側面図である。
【図4】ボビン自動巻取装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の線材のボビン結束装置を示す斜視図である。
【図6】巻取ヘッド周辺部分の要部を示す横断平面図である。
【図7】結束ヘッド周辺部分を示す縦断側面図である。
【図8】線材のボビン結束装置による結束工程の、線材を巻取ったボビンをボビンチャックに挟持した状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図9】輪潜りクリップの線材外掛内筒部を突出させた状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図10】線材押し遣りステックで線材を線材外掛内筒部に掛かる位置に移動させ、線材を線材外掛内筒部に掛けた状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図11】線材外掛内筒部に掛かった線材を引き下げた状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図12】線材外掛内筒部に掛かった線材を引き回した状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図13】線材外掛内筒部に掛かった線材をボビンに一周させて、掛止部を線材の引き出し側に掛けた状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図14】掛止部に線材を掛止させて線材外掛内筒部に掛かってできた輪の中に掛止部に止めた線材を潜らせる直前の状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図15】線材が切断されて、線材外掛内筒部に掛かってできた輪を潜り抜けた線材で輪が絞られている状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図16】輪潜りクリップを回転させて線材を引き絞っている状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図17】引き絞られた線材が結束された状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【図18】線材が結束された線材から掛止部が外された状態を示す(イ)が平面図、(ロ)が正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の線材のボビン結束装置及びそのボビン結束装置を用いたボビン自動巻取装置を実施するための形態を図面に基づいて以下説明する。
【0029】
本発明の用途は、線材をボビンへ巻取るために使用されるものであるが、線材をボビンへ巻取ることは、例えば、線材が鋼線に場合では、高圧の水、油及び空気などの流体を加圧装置などへ送り出すために使用される細い鋼線を編みこんだ耐圧チューブなどを製造装置する際に、その製造装置で使用される専用ボビンに、鋼線製造工場から出荷された大型のドラムやリールなどに巻かれた鋼線を巻取って、その製造装置に鋼線は使用できるようにするために行われる。
【0030】
本発明はこのように鋼線などの金属製の線材をボビンへ自動的に巻取るために使用される装置であり、その装置を線材として鋼線を用いた場合を例に以下詳述する。
【0031】
本発明の装置へ供給される鋼製に線材Wは、図1に示すように、リールRに巻かれ、編む本数に応じて複数のリールRが同時にサプライリールスタンドSに装填されて、これらのリールから各線材が1つの束となって隣接した基盤29の表面側に設けた上下2個の大径の検尺ロール1、1及び小径の調整ロール20を介して本発明のボビン自動巻取装置に装着されるボビンへと安定的に導かれ供給される。
【0032】
本発明のボビン自動巻取装置は、図2及び4に示すように、平面状の直立した基盤29の表面側に、巻付け前の空ボビン2及び前記線材Wの供給側(図4の右側)には、回転中心方向を直交させた円盤状の巻取ヘッド4を装着し、該基盤29の裏面側には、前記巻取ヘッドを回転させる巻取ヘッド用モータM1を設けるとともに、該巻取ヘッド4の中央表側に、ボビン2を挟持可能に対向する両側のボビンチャック6のうち一方側のボビンチャック6aをその回転軸心が前記巻取ヘッド4の回転軸心と共通となるように設ける。
【0033】
そして、前記基盤29の表面から前記巻取ヘッド4にボビン2の長さを加えた距離程度の間隔を置き且つ前記巻取ヘッド4の下部までの高さと略同高の位置にで、且つ前記基盤29の表面から前記巻取ヘッド4にボビン2の長さを加えた距離程度の間隔を置き且つ前記巻取ヘッド4の下部までの高さと略同高の位置にチャック基台10を設け、そのチャック基台10の上部に、前記巻取ヘッド4のボビンチャック6aと対向する他方側のボビンチャック6bを、前記巻取ヘッド4のボビンチャック6aに向けて後部に設けたチャック用シリンダ26の操作で出没してボビン2を挟持するとともに該挟持されたボビン2の回転に従動回転可能に設ける。
【0034】
また、前記巻取ヘッド4よりも線材Wに供給側には、図4及び図6に示すように、前記巻取ヘッド4のボビンチャック6に把持されたボビン2の軸部2aに臨ませてガイドビーク3が設けられる。
このガイドビーク3は、図4に示すように、基盤29表面側の巻取ヘッド4の位置よりも線材W供給側の位置に突設したトラバース台25にボールスクリュー24でボビンの軸心に方向と平行に移動可能なトラバース23上に巻取ヘッド4のボビンチャック6に向けて設けられる。
前記ボールスクリュー24は基盤裏側に装着したトラバース用モータM4で回転可能とする。
そして、前記トラバース用モータM4の制御で前記トラバース23を左右に往復させつつ前記ボビン2を基盤裏側に設けた前記巻取ヘッド用モータM1の稼動で巻取ヘッド4を回転させると、ボビン2に止めた線材Wが整列状態に巻き取られる。
この巻取ヘッド用モータM1及びトラバース用モータM4の操作は、別の制御盤(図省略)に設けた電子回路の制御で巻取ヘッド4を回転とトラバース23往復のタイミングが設定され実行される。
【0035】
そして、図4及び図6に示すように、前記巻取ヘッド4前面のチャック面には、前記ボビンチャック6aで挟持したボビンに接触しない部位に、線材Wの中間を掛け止める掛止部13aが先端部に備わり、該巻取ヘッド4の該チャック面の背後に設けた押出し部13bを往復させることで該掛止部13aの出没を操作して線材Wを該掛止部13aに把持可能とする掛止クリップ13を突設する。
【0036】
そして、前記掛止クリップ13は、図6に示すように、筒部13cの内部に押出し部13bがスライド往復可能に装着され、該押出し部13bの先端の線材Wを掛ける鉤溝を備えた掛止部13aが筒部13cの先端から出没可能とする。そして、該押出し部13bと筒部13cとの間にコイルバネ13dが介在させて、前記掛止部13aを筒部13cの先端から没状態となるように該コイルバネ13dで附勢する。
【0037】
前記押出し部13bの往復は、図4及び図6に示すように、前記基盤29の背面に設けたクリップ押し遣り用シリンダ41の前記基盤29を貫通した押し出しシャフト42を出没操作し、前記基盤29の前面側に突出した該押し出しシャフト42の先端部に固定した押し出し板40を往復させて、該押し出し板40が前記掛止クリップ13の押出し部13bを押すことで、該掛止クリップ13の該掛止部13aを押し出せるようにする。
即ち、前記掛止クリップ13は、前記押し出し板40のクリップ押し遣り用シリンダ41による前進で押出し部13bが押されると、筒部13cの内部から該押出し部13bの先端の掛止部13aが突出し、このとき線材Wが鉤溝に掛けると、前記押し出し板40のクリップ押し遣り用シリンダ41による後退で前記押出し部13bが前記コイルバネ13dの附勢で後退し、前記筒部13cの中に前記掛止部13aが没することで該該掛止クリップ13の先端部に線材Wを掛止可能となる。
前記掛止クリップ13は、前記コイルバネ13dで附勢された前記掛止部13aが筒部13cの先端から没状態となったときに、その先端が前記ボビンチャック6で挟持したボビン2のフランジ部2bより低くなるようにし、ボビン2へ線材Wを巻着けるときに線材Wに接触しないようにする。フランジ部2bより高くなっていると前記掛止クリップ13とボビン2とに線材が巻着いてしまい、ボビン2への正常な線材の巻着けができなくなるからである。
【0038】
また、図4では、押し出し板40が、巻取ヘッド4を中心に該90度の範囲で細長い円弧状とした押し出し板40を記載してあるが、これは前記掛止クリップ13が結束装置側においても、押し出し板40で前記掛止クリップ13の押出し部13bを押すことを可能とするもので、次ぎに説明する線材の結束装置での該線材カッター15による線材Wの切断前に該掛止クリップ13の該掛止部13aに線材Wを固定するためのものである。
線材の結束装置の前記結束ヘッド5に装填されたボビン2から線材Wがガイドビーク3にまで繋がった状態で、該掛止クリップ13の該掛止部13aをその線材Wに当てることができ、線材Wを該掛止部13aに当てた状態が得られれば、押し出し板40の操作で該掛止クリップ13の該掛止部13aに固定するこが可能となるので、毎回あらためてロボットアームなどのよる線材Wを線材掛止クリップ13の掛止部13aに掛ける作業が不要となり、その分線材のボビンへの巻着け作業を円滑且つ連続して行うことが可能となる。
【0039】
また、前記基盤29の表面側に、線材Wの供給側から見て該巻取ヘッド4よりも遠方の排出側には、巻取後のボビン2にその線材の巻取り終端部が解けたり、巻付けが弛んだりないように線材の巻取り終端部を巻いた線材をその上から締め付けて固定(これを結束と呼ぶ)するための結束装置を配設する。
【0040】
この線材の結束装置の発明について次に詳しく説明する。
該結束装置は、図4に示すように、前記基盤29の表面に回転中心方向を直交させた円盤状の結束ヘッド5を装着し、図3に示すように、前記基盤29の裏面側には、前記結束ヘッド5を巻着け方向に回転させる結束ヘッド用モータM2を設け、また該結束ヘッド5の中央表側に、ボビン2を挟持可能に対向する両側のボビンチャック7のうち一方側のボビンチャック7aを、前記結束ヘッド5の回転軸心と共通の軸心にするとともに、該ボビンチャック7aを前記基盤29の裏面側に設けたボビンチャック用モータM3により前記結束ヘッド5の回転方向とは逆方向に回転可能に設ける。
【0041】
そして、図4に示すように、前記基盤29の表面から前記巻取ヘッド4にボビン2の長さを加えた距離程度の間隔を置き、且つ前記結束ヘッド5の下部までの高さと略同高の位置に、チャック基台10(前記巻取ヘッド4のボビンチャック6aに対向するボビンチャック6bを設置した基台と共通のチャック基台10とする)を設け、そのチャック基台10の上部に、前記結束ヘッド5のボビンチャック7aと対向する他方側のボビンチャック7bを、前記結束ヘッド5のボビンチャック7aに向けて、後部に設けたチャックシリンダ27の操作で出没して巻着け後のボビン2を挟持するとともに該挟持されたボビン2の回転に従動回転可能に設ける。
【0042】
また、前記基盤29に、図5に示すように、前記ボビンチャック7で挟持したボビン2の近傍に、ボビンに供給されて巻着けられ、繋がったままとなっている巻着け前の線材Wをボビン2に対して所定の位置にまで案内する線材ガイド片22を設ける。該ガイド片22は、図5に示すように、上部面が窪んだU字状の溝を、該溝方向を、線材Wをボビン2の軸方向と略直交する方向に向けた円弧状に形成し、その溝内に線材Wを載せて、線材Wをボビン2の軸に対して中間のやや前記結束ヘッド5寄りに位置決め可能に設ける。
【0043】
そして、前記線材ガイド片22の近傍に、図5に示すように、前記ボビンチャック7で挟持したボビン2から前記線材ガイド片22にまで架橋された線材Wの中間で該線材Wを切断可能とするために、その線材Wの中間部位から離れた位置から届く位置まで刃先を往復可能とする線材カッター15を設ける。
この線材カッター15は、前記基盤29に設けた線材カッター往復機構で前記架橋された線材Wの中間部位に対して、線材カッター往復機構の刃先固定部28cに固定した線材カッター15の刃先をその線材Wの中間部位から離れた位置から届く位置まで、線材カッター往復機構の往復用シリンダ28bで上下に往復可能とする。
そして、該線材カッター15の刃先は、図5に示すように、ハ字型に板に開いた両刃を開閉させて、両刃間に挟んだ線材を切断可能とする。
その両刃の開閉は、両刃の開閉に連動可能に装着した線材カッター開閉シリンダ34の操作によって実行可能とする。
【0044】
そして、図5及び図7に示すように、前記結束取ヘッド5前面のチャック面には、前記ボビンチャック7aで挟持したボビン2に接触しない周辺寄りの部位に、前記結束ヘッド5の背後に設けた輪潜りクリップ出没用シリンダ31の操作によって中心部の掛止部14aがボビン2の軸部と平行な方向に出没可能となる輪潜りクリップ14を設ける。
前記輪潜りクリップ14は、図7に示すように、筒状の線材押出外筒部14dの内部にその先端から線材外掛内筒14cがスライドして出没可能に装着し、さらにその内部に掛止部14aは前記線材外掛内筒14cの先端から出没可能となるように設ける。
さらに、前記線材外掛内筒14cの先端には、線材Wを掛けられるように細い軸部の先端を該細い軸部よりも大径の円板状の抑え板を形成した掛止部14aを設けて、前記線材外掛内筒14cの先端の掛止包持部14bと前記掛止部14aの抑え板とで両側から細い軸部に掛けた線材Wを輪潜りクリップ出没用シリンダ31の出没操作によって前記掛止部14aの抑え板を、引いて挟み付けて線材Wを掛止し、押して前記掛止包持部14bから細い軸部を露出させて線材Wを軸部に掛けられるようにする。
【0045】
前記線材外掛内筒部14cは前記輪潜りクリップ出没用シリンダ31を出操作したとき、その外周に線材Wを掛けるものなので前記線材外掛内筒14cの先端から余裕をもった長さに突出できるようにする。この長さは輪状に掛かった線材Wが簡単に抜け落ちることがないように十分な長さとするものである。
また、前記輪潜りクリップ14は、前記輪潜りクリップ出没用シリンダ31を没操作したときに、前記掛止部13aの抑え板の先端が前記ボビンチャック7で挟持したボビン2のフランジ部2bより低くし、ボビン2へ線材Wを巻き着けるときに線材Wに接触しないようにする。これは、前記輪潜りクリップ14がフランジ部2bより高くなっていると前記輪潜りクリップ14とボビン2とに線材が巻着いてしまい、正常な結束ができなくなる虞があるからである。
【0046】
そして、本結束装置では、線材を巻着けたボビン2の線材を結束する際に、前記輪潜りクリップ14の線材外掛内筒部14bに輪状に掛けて引き出した線材の輪の中に前記ボビン2に反対巻きとなった線材Wの端部側を前記掛止部14aに掛け止め、前記線材外掛内筒部14cに掛けられた輪状部分を前記掛止部14aの外側へ脱落させることで前記掛止部14aに固定した線材W側を輪状部分に潜った状態とし、さらに前記掛止部14aの固定した線材Wの端部側を引くことで、前記輪の部分を引き絞って、線材に前記輪に掛かった部分を境に鋭角な引き絞りによる塑性変形を起こさせ、塑性変形部分が引っ掛かりとなって輪の中に線材が引き込まれないようにすることで、強い結束が可能となる。
【0047】
また、図5に示すように、前記ボビンチャック7で挟持したボビン2と前記線材ガイド片22との間に掛かる線材Wに向けて出没する線材押し遣りステック32を、前記基盤29の表面に固定した線材押し遣り用シリンダ33の出没軸に固定する。
また前記線材Wを挟んで前記線材押し遣りステック32に対向する線材押し遣りステック43を、前記チャック基台10上に設けた線材押し遣り用シリンダ44の出没軸に固定する。
この線材押し遣りステック32、43は、線材Wを両側から挟んで、前記線材押し遣り用シリンダ33、44の制御で前記ボビン2と前記線材ガイド片22との間に掛かる線材Wを前記ボビン2の軸部2aと平行方向に移動させるものである。
そして、この線材Wの移動によって前記輪潜りクリップ14に対する線材Wの当たり位置を変え、前記輪潜りクリップ14の線材外掛内筒部14bに線材を掛けたり外したりすることや、前記輪潜りクリップ14の掛止部14aに掛けることが確実に行えるようになる。
【0048】
この線材押し遣りステック32、43は前記輪潜りクリップ14の所定位置に、線材Wを両側から挟んで確実に行うことができるが、前記ボビンチャック7で挟持したボビン2に対する前記線材ガイド片22の位置によっては、一方側のみに線材Wが当たることになり、このため線材押し遣りステック32、43は線材Wが当たる方の一方だけに設けたものであっても良い。
なお、前記輪潜りクリップ14の操作が、前記ボビンチャック7で挟持したボビン2と前記線材ガイド片22との間に掛かる線材Wに対してより自由な位置への移動を可能とする構造である場合には、線材Wの位置を移動させる必要がなくなるので、省略することができる。
【0049】
また、図5に示すように、前記輪潜りクリップ14の先端に掛かった線材Wを押し外し可能とするように、前記輪潜りクリップ14の先端部分を挟むようにして切断側よりも巻き着け側を長く形成した二股の線材押し外し爪45を、その上部に基盤29に固定して設けた線材押し外し爪操作用シリンダ46の操作で前記輪潜りクリップ14の先端部分に対して出没可能に設ける。
その線材押し外し位置は、前記輪潜りクリップ14の停止位置を決めて、その位置で行えるようにする。例えば、線材押し外し爪45を上下に操作する場合は、前記結束取ヘッド5の最上部に達した位置から90度の位置に決めておけば、真上から線材押し外し爪45を下ろしたときに線材に当たるので好ましい。
しかし、線材押し外し爪45を上下に操作する場合には、例えば前記結束取ヘッド5の最上部に達した位置に決めた場合、真上から下ろした線材押し外し爪45が当たらない場合があるので好ましくない。
この線材押し外し爪45によって、切断した線材Wの不規則に変形した切断端部側が前記輪潜りクリップ14や周囲の備品などに絡まって、稼動停止するなど、その後の工程に支障を来たすのが防止可能となる。
【0050】
本結束装置では、上記構成とすることで、線材Wを巻き終えたボビン2を前記ボビンチャック7で挟持して、前記結束ヘッド5と、前記ボビンチャック7と、前記輪潜りクリップ14と、前記線材押し遣りステック32、43と、前記線材カッター15との各部の操作によって前記ボビン巻き着け終端部分で線材Wを機械的に結束することが可能となり、また前記線材押し外し爪45の操作で操業停止することなく連続した結束作業が確実に進行可能となる。
【0051】
次に上記結束装置を備えたボビン自動巻取装置におけるボビン2の移動及び前記両ボビンチャック6、7への装填を可能とするためのリフトについて説明する。
リフトは、図1、図3及び図7に示すように、前記チャック基台10の下方にリフト基台11を設けて、そのリフト基台11の上に移動可能に設ける。
そのため、下部のボビンリフトシリンダ18の操作で上下方向に往復可能としたボビンリフト9を固定したボビン転送台12を設け、該ボビン転送台12はレールなどを設けて水平にスライドさせて前記ボビンリフト9を前記巻取ヘッド4と結束ヘッド5との間を往復可能とする。
このボビン転送台12の往復操作は、図2に示すように、往復方向に設けたシリンダリフト往復シャフト21aをリフト往復用シリンダ21で操作して往復させる態様が可能である。
このボビンリフト9によって、空のボビン2を前記巻取ヘッド4に供給可能とし、且つ供給された線材Wが巻取られた後ボビンを前記結束取ヘッド5に供給可能とする。
そして結束されたボビン2は、該線材Wの結束部分の終端部側がカットされて線材を巻取ったボビン2は完全に切り離されて装置外部に排出可能となる。
【0052】
前記ボビンリフト9は、1台を往復操作する態様と複数台を往復操作する態様が可能であるが、例えば、図1では、前記ボビン転送台12に設けたボビンリフト8、9を2台とした例を示している。
この例では、2台のボビンリフト8、9が前記巻取ヘッド4と前記結束ヘッド5の位置に対応した間隔で設け、また前記結束ヘッド5側のボビンリフト9が前記巻取ヘッド4の直下と前記結束ヘッド5の直下との間を往復可能となるように設ける。
前記巻取ヘッド4側のボビンリフト8は、ボビンリフトシャフト17を介して下部に設けたボビンリフトシリンダ16の操作によって上下往復可能とし、同様に前記結束ヘッド5側のボビンリフト9もボビンリフトシャフト19を介してその下部に設けたボビンリフトシリンダ18の操作によって上下往復可能とする。
この2連のボビンリフト8、9では、一度の前記ボビン転送台12の操作で、同時に空のボビン2の巻取ヘッド4への供給と線材Wを巻取ったボビン2の結束ヘッド5への供給とが行えるので効率的となる。
【0053】
上記ボビンリフト8、9でボビン2を前記ボビンチャック6、7へ装填可能となるが、前記巻取ヘッド4に装填するために空のボビン2を前記ボビンリフト8へ供給するのは、多数の空のボビン2を収納したストック部から、供給路を介してボビン各個を、下げた状態のボビンリフト8の上に導くことで可能となるが、他にもロボットアームでボビン各個を把持してボビンリフト8の上に装填することで可能となる。
【0054】
また、前記結束ヘッド5のボビンチャック7から外された結束後の線材Wを巻取ったボビン2の外部への排出については、図1及び図2に示すように、先端部から基端部へと下り勾配が形成され、該先端部が結束ヘッド5のボビンチャック7の直下方まで移動可能としたボビン排出ガイド板37を設ければ、前記結束ヘッド5のボビンチャック7から外された結束後の線材Wを巻取ったボビン2を、その下で受けとめて外部のボビン受台39の上に落下させて外部への排出が可能となる。
この図1及び図2では、ボビン排出ガイド板昇降用シリンダ38で、ボビン排出ガイド板昇降用シリンダのシャフト38aを押し引き操作してボビン排出ガイド板37を上下に擺動させ、ボビンチャック7の直下方に先端部を競り上げることでその先端部からの下り勾配を形成する態様を示している。
この他に、結束後の線材Wを巻取ったボビン2を排出するために、傾斜させたボビン排出ガイド板を図1の左側から水平にスライドさせて高い方の先端部をボビンチャック7の直下方にセットする態様も可能である。
【0055】
なお、図は省略したが、使用される各モータの操作と、各エアーによるシリンダの操作は、関連各部の作動の操作手順に従ってコンピュータや電子回路のプログラム制御により電気配線やエアー圧送パイプを介して自動的に行うものである。
【0056】
次に上記ボビン自動巻取装置の巻取り作業における作動順を下記(1)〜(6)で説明する。
(1)先ず、図1に示すように、サプライリールスタンドSに装填されたリールRに巻かれた線材Wは、検尺ロール1を通して調整ロール20に導いて供給され、さらにその線材Wは前記巻取ヘッド4のボビンチャック6に挟持されたボビン2のボビン軸2aに向けたガイドビーク3へと導かれる。
そして、空ボビン2はボビン転送台12上のボビンリフト8に載せられ、前記巻取ヘッド4の下からボビンリフトシリンダ16操作で前記ボビンチャック6a、6b間に移動させ、そのボビン2がチャック用シリンダ26の操作で、前記ボビンチャック6a、6bに挟持され前記巻取ヘッド4への装填が終了する。
そして、ボビンリフト8はボビンリフトシリンダ16の操作で下降される。
これらの一連の作動は、ボビン8が前記巻取ヘッド4から前記結束ヘッド5へ移動する毎に行われる。
そして、前記ガイドビーク3まで導かれている線材Wの先端部を、前記クリップ押し遣り用シリンダ41を操作して押し出し板40を突出させ、前記掛止クリップ13の押出し部13bを押して先端の掛止部13aを突出させて、その掛止部13aに線材Wを掛ける。
そして前記クリップ押し遣り用シリンダ41を操作して押し出し板40を後退させ、線材掛止クリップ13の掛止部13aに線材Wの先端部を挟んで固定する。
この最初の前記線材掛止クリップ13の掛止部13aに線材Wを掛ける作業はロボットアームで行う。ただし、ロボットアームを設置していない場合にはこの最初の一回だけは人が行うこととなる。
【0057】
(2)次に、前記巻取ヘッド4のボビンチャック6に把持したボビン2を、巻取ヘッド用モータM1による前記巻取ヘッド4の回転で数回だけ回転させ、ボビン2の軸部2aに線材Wを巻き着け上側で下側部分を押さえることで固定する。
このボビン2への線材Wの固定で線材Wがボビン2から外れないようになるので、前記クリップ押し遣り用シリンダ41を操作して押し出し板40を突出させ、前記掛止クリップ13の押出し部13bを押して先端の掛止部13aを突出させて、線材掛止クリップ13の掛止部13aに固定されていた線材Wを外し、そして前記クリップ押し遣り用シリンダ41を操作して押し出し板40を後退させ、前記コイルバネ13dの附勢で線材掛止クリップ13の掛止部13aを筒部13cの先端から没状態にする。
【0058】
(3)次に、前記巻取ヘッド用モータM1による前記巻取ヘッド4の回転で、前記巻取ヘッド4のボビンチャック6に把持したボビン2を回転させ、該ボビン軸2aに向けたガイドビーク3での軸方向の往復操作しつつ鋼線Wをボビン2に均一な層で、ボビン2に所定の長さに巻き着ける。
【0059】
(4)次に、ボビン転送台12上のボビンリフト9を、ボビンリフトシリンダ18の操作及びシリンダリフト往復シャフト21aの操作で、前記巻取ヘッド4の下から線材Wが巻き終わったボビン2の直下に移動させて、前記ボビンチャック6a、6bをチャック用シリンダ26の操作で開く。すると落下したボビン2はボビンリフト9に載り移る。
その後、図2に示すように、ボビンリフトシリンダ18の操作及びシリンダリフト往復シャフト21aの操作で、ボビンリフト9に載せられたボビン2は前記結束ヘッド5に移されることとなる。
このとき、線材Wは切断されずに引き出されたままでボビン2の前記結束ヘッド5への移動が行われる。
【0060】
(5)そして前記結束ヘッド5のボビンチャック7a、7bで把持されボビン2は、以下に説明するボビン結束装置によって巻着いた線材Wはその終端部でボビン2に結束される。
【0061】
(6)次に、線材Wの結束が終了した結束後の線材Wを巻取ったボビン2がチャックシリンダ27の操作で前記結束ヘッド5のボビンチャック7から外される。
このとき、前記ボビン排出ガイド板37が結束ヘッド5のボビンチャック7の直下方まで移動しておき、そのボビン排出ガイド板37上にボビンチャック7から外されたボビン2を落下させ、そのボビン2をそこから下り勾配となっている傾斜面で受けとめて外部のボビン受台39の上に誘導する。
【0062】
次に、上記ボビン自動巻取装置の巻取り作業における作動順(5)に記載のボビン結束装置による結束の作動手順を下記(イ)〜(リ)で詳しく説明する。
【0063】
(イ)前記結束ヘッド5のボビンチャック7a、7bで把持されボビン2は、図8の(イ)、(ロ)に示すように、ボビンチャック7aのチャック回転用モータM2で巻着け方向、即ち図8(ロ)の反時計方向に回転させて、線材Wを線材ガイド片22との間で弛みをなくして緊張状態にする。
【0064】
(ロ)次に、前記結束ヘッド5に備えた前記輪潜りクリップ14を、図9の(イ)、(ロ)に示すように、輪潜りクリップ出没用シリンダ31の出没操作によって突出させる。
【0065】
(ハ)次に、図10の(イ)、(ロ)に示すように、線材押し遣り用シリンダ33、44を操作して前記線材押し遣りステック32、43で線材Wを挟み、前記輪潜りクリップ14から突出させた前記線材外掛内筒14cの掛かる位置に挟んだ線材Wを移動させる。
【0066】
(二)次に、図10の(ロ)と図11の(ロ)に示すように、前記結束ヘッド5をボビンチャック7の回転とは逆の図11(ロ)の時計回り回転させて、前記線材外掛内筒14cに引っ掛かっている線材Wの中間を下に折曲げるように引き下げる。
そしてさらに、前記結束ヘッド5をそのまま1回又は数回だけ回転させて、図12の(ロ)に示すように、前記輪潜りクリップ14の線材外掛内筒14cに掛かった線材Wの輪を作る。
【0067】
(ホ)次に、図13の(イ)、(ロ)に示すように、線材押し遣り用シリンダ33、44を操作して線材Wを挟んだ前記線材押し遣りステック32、43を線材Wが前記輪潜りクリップ14の掛止部14aに掛かる位置になるように移動させて前記結束ヘッド5をそのまま回転させ、図14の(イ)、(ロ)に示すように、線材Wを前記輪潜りクリップ14から突出している掛止部14aに当てる。
【0068】
(へ)次に、図15の(イ)に示すように、輪潜りクリップ出没用シリンダ31を操作して、前記輪潜りクリップ14の掛止部14aを没状態にして、線材Wの掛止部14aに当たった部分を該掛止部14aと前記掛止包持部14bとの間に挟んで固定する。
このとき、図15の(イ)に示すように、線材外掛内筒14cに掛かっていた線材Wが線材押出外筒部14dの先端で押し出されて前記線材外掛内筒14cから脱落し、図15の(ロ)に示すように、脱落した線材Wの輪部分の中に前記掛止部14aに固定されている部分を輪の内側に残した状態で前記線材外掛内筒14cから脱落するので、その輪の中に前記掛止部14aに固定されている部分の線材Wが潜り込んだで引っ掛かった状態となる。
この工程の途中で、前記輪潜りクリップ14の掛止部14aに固定した線材Wを、前記線材ガイド片22との間で、線材カッター15の刃先を線材Wにまで移動して線材カッター開閉シリンダ34の操作で線材Wを切断する。
【0069】
(ト)次に、図16の(イ)、(ロ)に示すように、前記結束ヘッド5をそのまま回転させて、線材Wをその回転方向に引っ張る。
すると、図16の(ロ)輪が引き絞られて行き、図17の(ロ)に示すように、輪は下の巻き着け線部分との隙間ができないように強く引き絞ぼられる。
【0070】
(チ)その後、前記結束ヘッド5をそのまま回転させて、線材Wの輪部分の引き絞ぼりができなくなると、線材Wの掛止部14aと前記掛止包持部14bとの間の挟む力に抗して線材Wの掛止部14aと前記掛止包持部14bとの間から線材Wが摩擦を受けつつ引き出され、図18の(イ)、(ロ)に示すように、そのまま最後に切断されていた終端部までが引抜かれて掛止部14aから外れる。
このとき、引き絞り部分の輪の部分と切断した線材W側の部分に引き絞りの力による捩れたような不規則な変形が発生し、切断した線材W側の塑性変形部分が引っ掛かって輪の中に引き戻されなり、このため縛ったように強く結束するとが可能となる。
【0071】
(リ)以上で線材の結束が完了し、線材Wが巻かれて最後に結束された状態となって、線材Wが巻かれたボビン2は分離されて一個ごとに独立して外部に排出される。
【0072】
以上の如く構成れた本発明の線材のボビン結束装置及びその装置を用いたボビン自動巻取装置によって、鋼線などの金属製の線材Wが、完全自動に、多くの専用ボビンに各個独立させて小分けすることが可能となり、これまで不可能とされていた工場の無人操業を実現できるようになったことはこれまでにない成果である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の線材のボビン結束装置及びその装置を用いたボビン自動巻取装置は、主として鋼線などの金属線材を対象としているが、線材は金属製に限定されるものではなく、金属と樹脂との混合材などその他のボビンに巻取る線材についても使用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 検尺ロール
2 ボビン
2a ボビン軸
2b ボビンフランジ
3 ガイドビーク
4 巻取ヘッド
5 結束ヘッド
6 ボビンチャック部
6a 巻取ヘッド側ボビンチャック
6b 出没側ボビンチャック
7 ボビンチャック部
6a 結束ヘッド側ボビンチャック
6b 出没側ボビンチャック
8 先行ボビンリフト台
9 後行ボビンリフト台
10 チャック基台
11 リフト基台
12 ボビン転送台
13 掛止クリップ
13a 掛止部
13b 押出し部
13c 筒部
13d コイルバネ
14 輪潜りクリップ
14a 掛止部
14b 掛止包持部
14c 線材外掛内筒部
14d 線材押出外筒部
15 線材カッター
16 先行ボビンリフト昇降用シリンダ
17 先行ボビンリフト昇降シャフト
18 後行ボビンリフト昇降用シリンダ
19 後行ボビンリフト昇降シャフト
20 調整ロール
21 リフト往復用シリンダ
21a リフト往復シャフト
22 線材ガイド片
23 トラバース
24 ボールスクリュー
25 トラバース台
26 チャック用シリンダ
27 チャック用シリンダ
28a 線材カッター往復機構の基盤固定部
28b 線材カッター往復機構の往復用シリンダ
28c 線材カッター往復機構の刃先固定部
29 基盤
30 裏側基台
31 輪潜りクリップ出没用シリンダ
32 線材押し遣りステック
33 線材押し遣り用シリンダ
34 線材カッター開閉用シリンダ
35 チャック回転伝達機構
36 結束ヘッド回転伝達機構
37 ボビン排出ガイド板
38 ボビン排出ガイド板昇降用シリンダ
38a ボビン排出ガイド板昇降用シリンダのシャフト
39 ボビン受台
40 押し出し板
41 クリップ押し遣り用シリンダ
42 押し出しシャフト
43 線材押し遣りステック
44 線材押し遣り用シリンダ
45 線材押し外し爪
46 線材押し外し爪操作用シリンダ
S サプライリールスタンド
S1 リールホルダ
R リール
W 線材
M1 巻取ヘッド用モータ
M2 チャック回転用モータ
M3 結束ヘッド回転用モータ
M4 トラバース用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の直立した基盤の表面側に、該表面に回転中心方向を直交させた円盤状の結束ヘッドを、該基盤の裏面側に設けたモータにより回転可能に設けるとともに、該結束ヘッドの中央表側に、ボビンを挟持可能に対向した両側のボビンチャックのうち一方側のボビンチャックを、前記基盤の裏面側に設けたモータにより前記結束ヘッドの回転中心と共通の中心で該結束ヘッドの回転方向とは逆方向に回転可能に設け、
前記基盤の前にチャック基台を設けて該チャック基台の上部に、前記結束ヘッドのボビンチャックと対向する他方側のボビンチャックを、前記結束ヘッドのボビンチャックに向けて後部に設けたチャックシリンダの操作で出没してボビンを挟持するとともに該挟持されたボビンの回転に従動回転可能に設け、
前記基盤に、前記ボビンチャックに挟持したボビン近傍のボビンへ供給される線材側に、該線材をボビンの手前に案内する線材ガイド片と、離れた位置から前記ボビンと前記線材ガイド片との間に張架された線材に届く位置にまでシリンダにより往復可能とした線材カッターとを設け、
供給された線材を巻き終えたボビンを前記ボビンチャックで挟持して前記結束ヘッドを前記各モータで回転させつつ、前記結束ヘッドのチャック面のボビンに接触しない部位に突設した輪潜りクリップを前記チャック面の背後に設けたシリンダで出没操作して前記線材をボビン巻き着け終端部分で結束し、該線材の結束部分の終端部側をカットして独立させて排出可能とした装置であって、
前記輪潜りクリップが、中心部の掛止部がその外側の掛止包持部から背後に備えたシリンダの操作で出没して該掛止部と掛止包持部との間に該線材ガイド片で案内された前記線材を、挟持及び離脱を可能とし、その掛止包持部の外周部に背後に備えたシリンダの操作で突出したとき前記線材を掛け止め可能な長さとなる線材外掛内筒部を備えるとともに該線材外掛内筒部の外周に前記線材外掛内筒部の先端より先まで先端部が出没可能な線材押出外筒部を備えて成り、
前記結束ヘッドを回転させて背後に備えたシリンダの操作で前記輪潜りクリップの線材外掛内筒部に輪状に掛けて引き出した線材の輪の中に前記ボビンに反対巻きとなった線材の端部側を前記掛止部に掛け止めて、前記線材外掛内筒部に掛けられた輪状部分を前記掛止部の外側へ脱落させることで前記掛止部で固定した線材の端部側を輪状部分の中に潜らせ、さらに前記結束ヘッドを回転させて前記輪状部分に潜った線材の端部側を前記掛止部で引っ張って引き絞り、該線材の両引き絞り部分を屈曲変形させて前記輪状部分から抜けないように結束可能としたことを特徴とする線材のボビン結束装置。
【請求項2】
基盤の表面側の輪潜りクリップの近傍に、背後に備えたシリンダの操作で前記輪潜りクリップ先端に掛かった線材を押し外し可能に出没する線材押し外し爪を設けたことを特徴とする請求項1に記載の線材のボビン結束装置。
【請求項3】
ボビンチャックに挟持されたボビンと線材ガイド片との間において、ステック面を少なくとも線材の上下振れ範囲に配するとするとともに、背後に備えたシリンダの操作でボビンに沿ってボビンの回転軸方向と平行に進退可能しとした線材押し遣りステックを、線材が線材外掛内筒部に掛かる位置と輪潜りクリップの掛止部に掛かる位置に、押し遣やり可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の線材のボビン結束装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれかに記載の線材のボビン結束装置を用いたボビン自動巻取装置であって、
前記結束装置と共通の基盤の表面側において、巻付け前の空ボビンの供給側には、該基盤の表面に回転中心方向を直交させた円盤状の巻取ヘッドを、該基盤の裏面側に設けたモータにより回転可能に設けるとともに、該巻取ヘッドの中央表側に、ボビンを挟持可能に対向した両側のボビンチャックのうち一方側のボビンチャックを前記巻取ヘッドの回転軸心と共通の軸心で設け、
前記基盤の前にチャック基台を設けて該チャック基台の上部に、前記巻取ヘッドのボビンチャックと対向する他方側のボビンチャックを、前記巻取ヘッドのボビンチャックに向けて後部に設けたチャックシリンダの操作で出没してボビンを挟持するとともに該挟持されたボビンの回転に従動回転可能に設け、
前記巻取ヘッドのチャック面のボビンに接触しない部位に、線材の中間を掛け止める掛止部が先端部に備わり、前記巻取ヘッドのチャック面の背後に設けた押出し部を前記基盤の背後に備えたシリンダの操作で往復させることで該掛止部を出没操作して線材を挟持可能とした材線掛止クリップを設け、
前記巻取ヘッドの位置よりも前記基盤の線材供給側に、前記巻取ヘッドのボビンチャックに挟持されたボビンの軸部方向に線材を導いて往復させつつ回転したボビンに線材を整列状態に巻取可能とするトラバース台に装着されたガイドビークを配設し、
線材巻取後のボビンの排出側には、前記請求項1から3のうちいずれかに記載のボビン巻着線材の結束装置を配設し、
前記チャック基台の下方に設けたリフト基台の上に、ボビン転送台を介して、下部に設けたボビンリフトシリンダの操作で上下方向に往復可能なボビンリフトを備えるとともに、前記ボビン転送台は前記基盤の表面側と平行で水平な方向に往復操作可能なリフト往復シリンダのシャフトによって前記巻取ヘッドと結束ヘッドとの間をボビンリフトが往復可能とし、
ボビンリフトで前記巻取ヘッドと結束ヘッドに供給されたボビンに、ガイドビークから供給された線材を巻き取って結束し、そのボビンを供給側の線材から切り離して排出可能としたことを特徴とするボビン自動巻取装置。
【請求項5】
押し出し板が、巻取ヘッドを中心に、掛止クリップの押出し部に当たる範囲で、最上部から線材の結束装置側まで90度の範囲で細長い円弧状に形成し、前記掛止クリップを巻取ヘッドの上部から結束装置側までの位置において、該押し出し板によって前記掛止クリップの押出し部の押し出し操作を可能としたことを特徴とする請求項4に記載のボビン自動巻取装置。
【請求項6】
ボビン転送台に設けたボビンリフトを2台とし、該2台のボビンリフトが巻取ヘッドと結束ヘッドとの位置に対応した間隔で設けられ、前記結束ヘッド側のボビンリフトが前記巻取ヘッドの直下と前記結束ヘッドの直下との間を往復可能としたことを特徴とする請求項4又は5に記載のボビン自動巻取装置。
【請求項7】
結束ヘッドのボビンチャックに挟持されたボビンの直下から排出方向へと下り勾配に形成された排出ガイド板を、移動するボビンリフトに接触しない位置にまで移動可能に設け、前記結束ヘッドのボビンチャックから外された結束及び切り離し後のボビンを下から受けて排出可能としたことを特徴とする請求項4から6のうちいずれかに記載のボビン自動巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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