説明

線材繰り出し装置

【課題】 巻回する線材貯留手段の大きさ如何によっては、些か問題が発生してしまう危険性があった。つまり、巻回する線材が太かったり、多く巻回されていると線材貯留手段の巻回部の外形が大きくなってしまい、それ故に、本体に導く線材供給孔とのなす角が大きくなってしまい、その線材供給孔における摩擦抵抗が著しく増加してしまうのである。そして、その摩擦抵抗の増加に伴い、チャック体と線材との把持作用に滑りが発生し、その結果、線材の繰り出しがなされなくなってしまう危険性がある。
【解決手段】 軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を巻回した線材貯留手段を本体に着脱自在に設けると共に、その線材貯留手段からの線材を本体に導く線材案内孔を設け、それら線材貯留手段の外形と線材案内孔とを結ぶ軸線を中心軸線に対して25度以内とした線材繰り出し装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置に関するものであり、その軟質な線材の例としては、半田線やエナメル線、銅線、天蚕糸、裁縫用の糸などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、以前に、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置に関し、「軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を巻回した線材貯留手段を本体に着脱自在に設けたことを特徴とする線材繰り出し装置。」を出願した。即ち、例えば、ボビン状のリールに半田線を巻回し、その巻回された半田線をチャック体の前進移動によって繰り出すものである。
【特許文献1】特願平2004−103109号(2004年3月31日 出願)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術にあっては、線材繰り出し装置自体に線材貯留手段が設けられているため使用性に優れている。
しかし、巻回する線材貯留手段の大きさ如何によっては、些か問題が発生してしまう危険性があった。つまり、巻回する線材が太かったり、多く巻回されていると線材貯留手段の巻回部の外形が大きくなってしまい、それ故に、本体に導く線材案内孔とのなす角が大きくなってしまい、その線材案内孔における線材との摩擦抵抗が著しく増加してしまうのである。そして、その摩擦抵抗の増加に伴い、チャック体と線材との把持作用に滑りが発生し、その結果、線材の繰り出しがなされなくなってしまう危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を巻回した線材貯留手段を本体に着脱自在に設けると共に、その線材貯留手段からの線材を本体に導く線材案内孔を設け、それら線材貯留手段の外形と線材案内孔とを結ぶ軸線を中心軸線に対して25度以内としたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を巻回した線材貯留手段を本体に着脱自在に設けると共に、その線材貯留手段からの線材を本体に導く線材案内孔を設け、それら線材貯留手段の外形と線材案内孔とを結ぶ軸線を中心軸線に対して25度以内としたので、使い勝手が良く、又、作業範囲に束縛されない線材繰り出し装置を提供することができ、更には、線材の繰り出しが良好な線材繰り出し装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
作用について説明する。線材供給部材の外形と線材案内孔とを結ぶ軸線が中心軸線に対して少ない為、線材案内孔における摩擦抵抗が少なく線材が容易に繰り出される。
【0007】
第1例を図1〜図4に示し説明するが、半田線Hを繰り出す為の装置である。軸筒の中間部の側面にノック駒を配置し、そのノック駒を軸筒の径方向に押圧することによって半田線を繰り出す、所謂、サイドノック式の線材繰り出し装置であるが、ノック駒を軸筒の長手方向にスライドさせることによって半田線を繰り出すサイドスライド式の線材繰り出し装置であっても良いし、或いは、軸筒の後端にノック駒を配置し、そのノック駒を軸筒の長手方向に押圧することによって半田線を繰り出す後端ノック式の線材繰り出し装置であっても良い。以下、具体的に説明する。軸筒1の中間部の内側には、スライダ部材2が摺動自在に配置されており、そのスライダ部材2の側壁には2つの平行した傾斜面3が対向した位置に形成されている。その傾斜面3には、前記軸筒1の側壁に形成された窓孔4に装着されたノック駒5の押圧部6が当接している(図2参照)。ノック駒5を軸筒1の径方向に押圧することによって、スライダ部材2が図中下方に移動するというものである。
また、そのスライダ部材2の前方には、半田線Hの把持・開放を行うコレット(2つ割、或いは、3つ割など)式のチャック体7が圧入・固定されている。そのチャック体7の前方には、チャック体7の拡開・閉鎖を行うチャックリング8が囲繞している。符号9は、前記チャック体7やスライダ部材2を図中上方に向け付勢すると共に、チャック体7を閉鎖せしめ半田線Hを保持させるコイルスプリングなどの弾撥部材であり、その弾撥部材の荷重は、200g〜600gに設定されている。
【0008】
前記軸筒1の先端には、先部材10が螺着などの手段によって着脱自在に固定されているが、軸筒1に一体形成などしても良い。その先部材10の先端には、ステンレスや鉄、アルミニウムなどの金属材質、フッ素系樹脂などの耐熱性樹脂、或いは、金属材質に耐熱樹脂材を被覆したもの、或いは、金属材質に耐熱樹脂をコーティングしたもの、或いは、耐熱樹脂に金属材質を被覆したものなどからなる直線状の先端パイプ11が固定されている。前記先端パイプ11の上端には、ロート状の貫通孔が形成された線材案内部材12が取り付けられているが、先端パイプ11、或いは、先部材10と一体形成などしても良い。線材を先端パイプ11に導きやすくする為の手段である。尚、それら線材案内部材12と先端パイプ11との間には、線材を軽く保持すると共に、軽く保持することによってその線材の後退を阻止するゴム状弾性体からなる戻り止め部材Mが挿着されているが、その戻り止め部材Mは線材案内部材12と一体形成しても良く、又、先部材10と一体に形成しても良い。尚、先端パイプ11の下端には、外周部と共に内周部も縮径し、細径部を形成しても良い。具体的には、先端パイプ11の内径は、1.1mmとなっているが細径部においては0.88mmとしても良い。半田線Hの直径は、0.8mmである。作業時における半田線Hの安定性(振れ防止)を向上させていると共に、視認性を向上させるものとなる。又、先端パイプ11の内径としては、本例に限らず、使用する半田線の1.25〜10倍程度で有れば良好な繰り出し動作が得られる。ちなみに、内径が1.25倍未満のパイプであると、半田線の多少の湾曲によって摺動(通過)性が悪くなってしまい、10倍を超えるとパイプ内で座屈が発生してしまう危険性があるが、特に、半田線の1.25倍〜2倍未満とするのが好ましい。又、先端パイプの突出長さとしては、視認性やパイプ先端における安定性を考慮すると、1.0mm〜20.0mmの範囲が好ましい。更に、被半田物の種類にもよるが、半田線の繰り出し量としては、0.5mm〜2.0mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0009】
ここで、前記チャック体7の把持部には、約0.25mmの溝部が形成されている。半田線Hが把持され通過する溝となっているが、必ずしも必要なものではなく、単に平面部となっていても良い。特に、横断面形状が矩形状や楕円状の半田線を繰り出す際には、平坦部となっているのが好ましい。この溝部は、チャック体7をチャックリング8によって閉鎖せしめられ半田線Hを把持する部分であり、この把持動作によって半田線Hは挟み込まれ押圧される。即ち、この押圧動作によって湾曲していた半田線Hが直線状へと矯正されるのである。また、本例においては、このチャック体7を樹脂材質より構成しているが、金属材質で構成しても良い。金属材質で構成する場合には、前記溝部を使用する半田線の径とほぼ同径とするか、或いは、若干小径に形成するのが好ましい。
尚、前記軸筒1と先部材10の間に環状のスペーサを介在させても良い。そのスペーサの有無や、介在させる枚数によって半田線Hの繰り出し量を多くしたり、少なくしたりするなど適宜変化させることができる。
また、前記スライダ部材2の内部には、前記先端パイプ11と同様の内径を有した案内パイプ13の前方部が位置しており、その後端部はそのスライダ部材2を突き抜けて軸筒1の後方部まで延設形成されているが、使用する半田線Hの線径如何によっては、前記案内パイプ13の前方部を更に延設しチャック体7の内部に位置させても良い。本例においては、スライダ部材2と案内パイプ13とを別部材で構成し互いを固定しているが、スライダ部材2と案内パイプ13とを一体成形などしても良い。そして、案内パイプ13の後端部には、線材挿着部材14が圧入・固定されているが、螺合や凹凸嵌合など着脱可能に配置してもよいし、線材挿着部材14に対し案内パイプ13の後端を摺動自在に配置しても良い。その線材挿着部材14には、前記案内パイプ13の内径と同等の内径を有する貫通した線材案内孔14aが形成されていると共に、その下端側に向かって縮径する内面円錐部14bが形成されている。又、線材挿着部材14の上方外面には、その上端側に向かって縮径する外面円錐部14cが形成されている。この外面円錐部14cの縦断面形状は、親指と人差し指を接触させた際に形成されるほぼ三角形状の大きさとなっているが、階段状の段部としても良い。即ち、半田線を挿着する際、半田線を親指と人差し指で摘むと、前記線材挿着部材14の外面円錐部14cと同様な形状が構成され、此によって、各々の指が外面円錐部14cを覆うように接触し、これと同時に半田線が内面円錐部14bによって導かれ、案内パイプ13へと誘導させるのである。つまり、半田線を摘んだ部分から案内パイプ13までの距離を極力短くすることによって、その間に発生してしまう危険性がある半田線の座屈を極力防止しているのである。尚、線材挿着部材14は、前記軸筒1の後端に延設形成された嵌合部1aに着脱自在に固定されている。
【0010】
符号15は軸筒1の後部に囲繞した筒状の後軸であって、その後軸15は、軸筒1の軸線方向に対して前後動が可能なものとなっているが、前進位置においては前記ノック駒5を覆った状態で停止し得るものとなっている。即ち、後軸15を前進させることによって前記線材挿着部材14を後軸15の後端から露出させると共に、ノック駒5を押圧状態にせしめることによって、チャック体7による半田線Hの把持を開放するものとなっている。
ここで、後軸15の前端部には、膨出部16が一体に形成されているが、別部材で構成し、後軸15に固定しても良い。その膨出部16の内面には、前記ノック駒5の方向に向けて小形部16aと、その小形部16aの前方に大形部16bが段階的に形成されているが、傾斜状の内形とし連続的に小形部16aと大形部16bを形成しても良い。つまり、小形部16aによって半田線Hを開放している状態から、再び半田線Hを把持させる際、大形部16bによってノック駒5を約半分程度上昇せしめ、次いで、完全に突出せしめた状態となし、これらによって、ノック駒5を軸筒1から段階的に上昇せしめているのである。その結果、ノック駒5の急激な上昇に伴う軸筒1からの飛び出しが防止されるものとなっている。
【0011】
後軸15について、更に詳述する。後軸15の後方には、挟持片17が対向する位置に延設されており、その挟持片17間に形成される間隙18(幅A)には、前記半田線Hが巻回された貯留手段であるリール19が回転自在に配置されている。具体的には、リール19の両側に形成されている回転軸部20が、前記挟持片17に形成された貫通孔21に回転自在に軸支されているが、回転軸部20を別部材で構成し、即ち、樹脂製のリールに金属材質などからなる回転軸を挿着し、その回転軸を前記貫通孔に回転自在に軸支しても良い。ここで、前記間隙18の幅Aは、リール19の幅Bより若干小さく設定されており、リール19の回転動作に対して回転抵抗を付与しているが、その回転抵抗は半田線の繰り出しには影響しない抵抗力となっている。使用中における不慮の回転、即ち、不用意な半田線の繰り出し動作を防止しているのである。
【0012】
又、前記リール19の外径Cは、軸筒1並びに、後軸15の挟持片17やリング部材16の外径(挟持片の外径D、膨出部の外形E)よりも大きくなっている。即ち、後軸15の挟持片17から露出した状態で回転自在に配置されている。後軸15から露出せしめることによって、万が一半田線が弛んだときに容易にリール19を回転させ、前記の弛みを修復することができるようになっていると共に、多くの半田線を巻回することができるようになっている。ちなみに、本例においては、軸筒1の直径Fの2倍以上の外径Cを有している。又、リール19を本体の最大外径である膨出部16よりも大きくすることによって、前述の緩み修復は勿論、線材繰り出し装置を机上などに載置した際に発生する転がりをも防止している。此によって、机上からの落下などが極力防止され、その結果、先端パイプ11などの破損や屈曲などが防止される。
更に、前記リール19は、線材挿着部材14の後方に位置しているが、線材案内孔14aの後端からリール19の回転軸部20までの距離Gは、リール19の外径の約1.5倍となっている。この距離Gを得ることによって、リール19の最大外径部まで半田線が巻回されたとき、その最大巻回部から線材案内孔14aに挿通する半田線Hと軸筒の中心軸線Xとのなす角度がほぼ25度となる。この角度は、半田線Hの使用に連れ小さくなることは言うまでもない。
尚、前記後軸15の中間部内面には、前記線材挿着部材14と係合する嵌合部22が形成されている。後軸15を軸筒1に対して後退させたとき、即ち、使用状態において係合する嵌合部であり、不用意には前進しないようにしているのである。符号23は、その嵌合部22の近傍に形成されたスリットであり、そのスリット23による弾性的な開閉によって前記線材挿着部材14に対する係合、非係合が容易になされるようになっているが、前記嵌合部22の形状如何によっては必ずしも必要な構成ではない。又、敢えて前記嵌合部22を形成せずに、スリット23の開閉力を利用して後軸15を線材保持部材14に圧入・固定などしても良い。
また、前記挟持片17の後部内面であって、前記貫通孔21の上方には円弧状の面取り加工が施されている。前記リール19の回転軸部20を挟持片17の後端にあてがい押し込むと、この面取り部17aによって回転軸部20が中心方向に導かれ、容易に貫通孔21に到達し嵌り込むようになっている。
符号24は人が指などで把持する把持部であって、その把持部24には滑りを防止する為のローレット加工などが施されている。
【0013】
尚、本例は、電子部品を基板に半田付けする線材(半田線)繰り出し装置である。その為、軸筒1や線材案内部材12、後軸15、リール19などは、導電性樹脂から成形されている。即ち、発生した静電気を床などに放射させることによって、前記電機部品の静電気による破壊を防止しているのである。その導電性樹脂としては、体積抵抗率が1010Ω・cm以下であることが好ましく、市販品としては、POM(ポリアセタール)としてテナックTFC64、EF750(旭化成(株)製)やジュラコンCH−10、CH−15、CH−20、EB−08、EB−10、ES−5(ポリプラスチックス(株)製)、ユピタ−ルET−20(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)が挙げられ、又、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)としてスタイラックABS IC10N、IC10E(旭化成(株)製)、PC(ポリカーボネイト)としてSDポリカ CF5101V、CF5201V、CF5301V、FD−9082I−2 (住友ダウ(株)製)、PP(ポリプロピレン)としてダイセルPP PB2N1(ダイセルポリマー(株)製)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)としてDURANEX CD7400B5(ウィンテックポリマー(株)製)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)としてFORTORN 2130A1、7140A4、7340A4(ポリプラスチックス(株)製)、トレリナ A756MX02(東レ(株)製)、PPE(変性ポリフェニレンエーテル)としてユピエース EV08、EV12、EV20(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)などが挙げられる。
【0014】
次ぎに、使用例について説明する。半田線Hをこの装置に挿着するに当たっては、前記後軸15を前進させる。この後軸15の前進によって、線材挿着部材14が後軸15から完全に露出する。この時、前記後軸15の膨出部16(後軸15)はノック駒5を覆った状態にあり、そのノック駒5を押圧している為、前記チャック体7は開放された状態にある。ここで、半田線Hを親指と人差し指で摘み、前記線材挿着部材14の外面円錐部14cを覆うように接触させる。これと同時に、半田線Hが内面円錐部14bによって導かれ、案内パイプ13へと誘導される。この動作を連続的に行うと、半田線Hは案内パイプ13を貫通してチャック体7、並びに、先端パイプ11まで挿入される。挿入終了後、再び後軸15を後退させると、ノック駒5が前記膨出部16の大形部16bに接触するようなり、その結果、ノック駒5が約半分程度上昇する。更に後軸15を後退させると、ノック駒5が膨出部16(後軸15)から完全に露出すると共に、ノック駒5も完全に突出した状態となり、ここで、前記チャック体7が閉鎖し半田線Hを把持する。この時、リール19近傍の半田線が弛んでいる場合には、リール19を巻き取る方向に回転させ、緩んでいる半田線を張った状態にする。この際、リール19は、挟持片17によって回転抵抗を付与されている為容易には回転しないようになっているが、後述する繰り出し操作時には回転抵抗が付与されながらも回転し、半田線が供給されるようになっている。
【0015】
この半田線Hが挿入された状態で、ノック駒5を押圧すると、押圧部6とスライダ部材2の傾斜面3との当接によって、スライダ部材2とチャック体7が前進する。この時、半田線Hもチャック体7の把持部に把持されている為、リール19の最大巻回部外径から繰り出されると共に、線材案内孔14aや案内パイプ13によって多少の摩擦抵抗が付与された状態で摺動しながら前進し、その結果、先端パイプ11の細径部から繰り出され、やがて、チャックリング8が内面段部10aに当接し、その前進移動が規制されチャック体7が拡開する。尚、この過程で、リール19から繰り出された半田線Hは、後軸15の内部空間を通過する為、外力などの影響を受けることが無く、もって、曲がったりすることなく正確に線材挿着部材14へと供給される。又、線材挿着部材14や案内パイプ13から引き抜かれるようにして前進もする為、多少屈折しているような半田線であっても真っ直ぐな状態へと矯正もされる。更に、本例においては、半田線が繰り出される量よりもチャック体の把持動作によって押圧・矯正される量(長さ)が多い為、矯正されずに半田線が繰り出されることがないうえ少なくとも1回は必ず押圧・矯正された状態で繰り出され、より一層真っ直ぐな状態へとなり、確実な繰り出しが得られる。ここで、ノック駒5の押圧操作を解除すると、チャック体7やスライダ部材2、並びに、案内パイプ13が弾撥部材9の付勢力によって後退・復帰する。
再び半田線の繰り出しを行うと、前記リール19が再び回転し半田線がリール19から繰り出され減少するが、このとき、半田線と軸線Xとのなす角度も徐々に小さくなる。この半田線と軸線Xとのなす角度が小さくなるに従って、半田線の線材案内孔14aに対する摩擦抵抗も減少する。即ち、半田線の使用に連れ、摩擦抵抗が減少し、此によって半田線が容易に確実に繰り出されるようになる。
尚、前記リール19に貯留されている半田線Hを使い切ってしまった場合には、前記2つの挟持片17を指などで摘み拡開し、使い切ったリール19を取り外す。次いで、新たなリール19から半田線Hをある程度引き出し、前述したように半田線Hを線材挿着部材14やパイプ13などに挿通せしめチャック体7に把持させた後、リール19を挟持片17に取り付ける。
【0016】
第2例を図5に示し説明する。前記第1例は、線材挿着部材14を軸筒1の後方に向けて突出させ、その突出部の内側に線材案内孔14aを形成したが、本例における線材挿着部材25は軸筒1の後部内面に取り付けられているが、軸筒1の後端部に取り付けられている後軸との嵌合部材Tと一体成形すると共に、線材挿着部を軸筒1の後部内面に位置させても良い。勿論、その線材案内部材25の内面に形成される線材案内孔25aも軸筒1の後部内面に位置している。この様に、線材案内部材25を軸筒1の後部内面に位置させることによって、後軸26の挟持片27を短くしても、線材案内孔25aからリール19の回転軸部20までの距離Gを前記第1例と同様にすることができると共に、リール19の最大巻回部から線材案内孔25aに挿着される半田線Hと軸線Xとのなす角度も第1例と同様に得ることができる。尚、本例においては、挟持片27を短くすることによって線材繰り出し装置自体が短くなり、手で持つ把持性や使い勝手が向上すると言った効果を奏している。
【0017】
第3例を図6に示し説明する。前記第2例と同様に、軸筒1の後部内面には線材挿着部材25が取り付けられているが、本例における後軸28の挟持片29は中間部から膨出部16の方向に向けて屈折形成されているが、膨出部16とは反対の方向に向けて屈折形成しても良い。即ち、リール19の回転軸部20が軸線Xから偏心した位置にある。そして、リール19の最大外径部が前記軸線X上に位置している。この様に、リール19の回転軸部20と軸線Xを偏心させることによって、リール19の最大巻回部から線材案内孔25aに挿着される半田線Hと軸線Xとのなす角度を前記各例と同様に得ることができるが、本例においてはその角度をほぼ16度としている。半田線の使用開始時(最大巻回部)における線材案内孔25aと半田線との摩擦抵抗は最小のものとなっているが、半田線の使用に連れ半田線と軸線Xのなす角度が大きくなり、線材案内孔25aとの摩擦抵抗が大きくなるが、前記角度が16度となっているため、半田線が繰り出されなくなるわけではない。
【0018】
第4例を図7に示し説明する。前記第3例と同様に、本例における後軸30の挟持片31も中間部から膨出部16の方向に向けて屈折形成されているが、その角度は前例に比し少ない屈曲となっている。具体的に説明すると、リール19の半径軸線の中心部が軸筒1の中心軸線X上に位置している。本例においては、リール19の最大巻回部から線材案内孔25aに挿着される半田線Hと軸線Xとのなす角度がほぼ8度と小さくなっているが、リール19の最小巻回部から線材案内孔25aに挿着される半田線Hと軸線Xとのなす角度もほぼ8度が得られる。即ち、前記第3例と同様に、半田線Hは線材案内孔25aを中心としてほぼ16度の範囲で移動するようになっている。
次に半田線Hの動作について説明する。使用に連れ半田線Hは、最大巻回部から徐々にリールの内側に向かって移動するが、この際、最大巻回部付近では半田線Hと線材案内孔25aとのなす角度がほぼ8度となっており、その線材案内孔25aと半田線Hの摩擦抵抗が極めて少ない状態で芯の繰り出しがなされる。半田線Hの使用に連れ、前記の角度が小さくなるため摩擦抵抗もより少なくなり、より容易に半田線Hの繰り出しがなされる。そして、半田線Hが軸線X上に達した段階で前記の摩擦抵抗は最小となる。
更に半田線Hが使用されると、前記半田線Hと軸線Xのなす角度が徐々に大きくなるが、その最大角度はほぼ8度である。よって、半田線Hの使い始めから使い終わりにかけて、少ない摩擦抵抗となっているため、半田線Hを容易に確実に繰り出すことができるものとなっている。
尚、比較例として、直径が0.8mmの半田線を使用すると共に、第1例における半田線Hと軸線Xのなす角度が30度の線材繰り出し装置を試作し芯の繰り出し状態を観察したが、10回の繰り出し操作の中、9回が繰り出されず、1回のみの繰り出しに留まり製品として成り立たなかった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1例を示す縦半断面図。
【図2】図1の要部外観斜視図。
【図3】後軸を示す要部外観斜視図。
【図4】リールを示す正面。
【図5】第2例を示す縦半断面図。
【図6】第3例を示す縦半断面図。
【図7】第4例を示す縦半断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 軸筒
2 スライダ部材
3 傾斜面
4 窓孔
5 ノック駒
5a 押圧操作面
5b 傾斜面
5c 凹陥部(段部)
5d 傾斜面
5e 凹陥部(段部)
6 押圧部
7 チャック体
7a 溝部(把持部)
8 チャックリング
9 弾撥部材
10 先部材
11 先端パイプ
12 線材案内部材
13 案内パイプ
14 線材挿着部材
14a 線材案内孔
14b 内面円錐部
14c 外面円錐部
15 後軸
16 膨出部
17 挟持片
18 間隙
19 リール
20 回転軸部
21 貫通孔
22 嵌合部
23 スリット
24 把持部
25 線材挿着部材
26 後軸
27 挟持片
28 後軸
29 挟持片
30 後軸
31 挟持片
T 嵌合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を巻回した線材貯留手段を本体に着脱自在に設けると共に、その線材貯留手段からの線材を本体に導く線材案内孔を設け、それら線材貯留手段の外形と線材案内孔とを結ぶ軸線を中心軸線に対して25度以内としたことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項2】
前記線材貯留手段を本体から露出させたことを特徴とする請求項1記載の線材繰り出し装置。
【請求項3】
前記線材貯留手段を回転自在に設けたことを特徴とする請求項1、或いは、請求項2記載の線材繰り出し装置。
【請求項4】
前記線材貯留手段に回転抵抗を付与させたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項5】
前記線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、前記本体にそのチャック体の開放手段を設け、その開放手段に前記線材貯留手段を配置したことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の線材繰り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−206291(P2006−206291A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23115(P2005−23115)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】