説明

線条体の巻取装置及び線条体の巻取方法

【課題】線条体の巻取装置において、作業者等の衣服が線条体の端末固定部に接触することで発生する装置の故障及び衣服の損傷や、端末固定部による線条体の損傷を防止する。
【解決手段】ボビン20を回転させてエナメル線10を巻き取る巻取装置50は、前記ボビン20を支持可能な支持軸14と、支持軸14に固定された固定板23を有する。固定板23の外周面上には爪部11が固定され、該爪部11によって、エナメル線10を挟み込んで固定する端末固定部と成している。そして、少なくとも爪部11は、弾性を備えたゴムで形成されている。この爪部11は、エナメル線10を厚み方向に保持するように構成される。また、爪部11はエナメル線10を挟み込む部分に、他の部分よりも摩擦係数が大きい摩擦部12を有する。この摩擦部12は荒らし加工面とされ、この荒らし加工面の荒らし方向はボビン20の周方向に垂直な方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線条体をボビンに巻き取る巻取装置に関するものであり、詳細には、線条体の端末処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線等の線条体を巻き取るための巻取装置において、線条体の巻始め端末を処理するための端末処理手段を備えるものが知られている。
【0003】
線条体の巻始め端末の処理について開示したものとして、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3がある。特許文献1では、巻取機に設けた端末引掛け爪を用いたボビンの切替方法が開示されており、特許文献2では、巻枠に設けた端末引掛け爪を用いた線条体の端末の処理方法が開示されている。また、特許文献3では、爪や穴を用いない線条体の端末の処理方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−153964号公報
【特許文献2】特開平10−203729号公報
【特許文献3】特開平10−273267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2の構成においては、巻取装置の線条体を保持するための固定部として爪形状の固定部が使用されている。装置の周囲で作業者が各種作業を行うときに前記固定爪が衣服に引っ掛かると、回転するボビンに衣服が巻き込まれ、装置の稼動停止による効率低下や故障の原因になり、また、衣服を損傷させるおそれがある。また線条体の端末を固定爪で押さえ付けて保持する構成のため、例えば線条体がエナメル線であった場合等は、線条体の端部が傷ついて破損するおそれもある。
【0005】
従って、特許文献1や特許文献2で示す処理方法は、端末の処理方法としては有効であっても、上記した巻取効率や線条体の品質という観点から改善の余地がある。また、特許文献1ではボビンの自動切換装置を用いる構成を開示するが、この構成はコストが掛かるとともに、切断方法が伸張切断であることから太い線条体には適用できない場合がある。
【0006】
また、特許文献3では、爪部を使用していないものの、線条体の端末挟持具の動作が複雑であり、モータ等、新たな構成を追加するためのコストが掛かる。
【0007】
本発明は以上の事情を鑑みてされたものであり、その目的は、コストを抑えつつ、端末の固定部に起因する巻取効率低下等を防ぐ巻取装置及び巻取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、線条体を巻き取るボビンを支持可能なボビン支持部と、前記線条体を挟み込んで固定するための端末固定部と、を備え、前記端末固定部に線条体の巻始め端末を固定した状態で、前記ボビンを回転させて前記線条体を巻き取る線条体の巻取装置において、以下の構成が提供される。即ち、この巻取装置は、該ボビン支持部に固定されたボビン固定部を有する。また、前記ボビン固定部の外周面上に爪部を固定して、該爪部によって、前記線条体を挟み込んで固定する端末固定部と成している。そして、少なくとも前記爪部が弾性を備えたゴムで形成されている。
【0010】
これにより、作業者等の衣服が爪部に接触しても、爪部が弾性変形することで巻込みを防止することができる。また、簡便な構成で、コストをかけずに衣服の損傷等を防止できる。更に、爪部がゴムで形成されていることにより、線条体が爪部に挟まれることで発生する線条体の傷や破損を防止することができる。
【0011】
前記の線条体の巻取装置においては、前記爪部は、前記ボビン固定部との間に前記線条体を挟み込むことが好ましい。
【0012】
これにより、爪部とボビン固定部とで線条体を挟み込めばよいので、爪部の構成を簡素に形成することができる。
【0013】
前記の線条体の巻取装置においては、前記爪部は、切り欠き部を有し、該切り欠き部内に前記線条体を挟み込むことが好ましい。
【0014】
これにより、線条体の端末は切り欠き部内で、弾性を有する爪部にのみ接触して挟み込まれる。従って、線条体の傷や破損を一層確実に防止できる。
【0015】
前記の線条体の巻取装置においては、前記爪部は、前記線条体を該爪部の厚み方向に保持することが好ましい。
【0016】
これにより、線条体の厚みを適宜確保することによって、線条体の端末を爪部の厚み方向に確実に保持できる。
【0017】
前記の線条体の巻取装置においては、前記爪部は、前記線条体を挟み込む部分に、他の部分よりも摩擦係数が大きい摩擦部を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、爪部の保持力が増加し、より確実に線条体を保持できる。従って、表面が滑り易い線条体も摩擦部によって確実に保持して巻き取ることができる。一方で、作業者等の衣服が接触するおそれのある部分(摩擦部以外の部分)は摩擦係数が大きくないので、衣服の巻込みを防止することができる。
【0019】
前記の線条体の巻取装置においては、前記摩擦部は、前記爪部の荒らし加工面であることが好ましい。
【0020】
これにより、新たに構成を追加する必要なく、簡素に摩擦部を構成することができる。
【0021】
前記の線条体の巻取装置においては、前記荒らし加工面における荒らし方向が、前記ボビンの周方向以外の方向であることが好ましい。
【0022】
これにより、線条体がボビンの周方向に抜けようとしても、強い摩擦力で阻止することができる。従って、端末固定部による線条体の保持を確実なものにできる。
【0023】
前記の線条体の巻取装置においては、前記荒らし加工面における荒らし方向が、前記ボビンの周方向に垂直な方向であることが好ましい。
【0024】
これにより、周方向に対して垂直に摩擦部が荒らす加工をされているので、線条体が周方向に抜けようとしても、一層大きな摩擦抵抗によって阻止することができる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、以下のような線条体の巻取方法が提供される。即ち、弾性を備えたゴムで形成される爪部によって線条体の巻始め端末を挟み込む第1ステップと、前記線条体を前記爪部で挟み込んだ状態でボビンを回転させる第2ステップと、を含む。
【0026】
これにより、簡便な構成で衣服の巻込みや線条体の損傷を防止できる巻取方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る線条体の巻取装置50の構成を示した模式図である。図2は、巻取装置50にセットされた状態のボビン20の要部斜視図である。
【0028】
図1に示すように、巻取装置50は、平角線のエナメル線(線条体)10を、2つのガイドシーブ51,52を用いてボビン20へ案内し、このボビン20にエナメル線10を巻き取るように構成されている。
【0029】
巻取装置50の下部には、ボビン20をトラバース駆動するためのトラバース装置55が備えられる。このトラバース装置55は支持軸(ボビン支持部)14を備えており、この支持軸14に前記ボビン20を支持することができる。支持軸14は水平に配置されており、その先端に固定板(ボビン固定部)23が着脱可能に取り付けられている。
【0030】
図2に示すように、前記ボビン20は、エナメル線10を巻き付けるための胴部21と、胴部21の両端にそれぞれ形成される鍔部22と、を備えている。
【0031】
胴部21は円筒状に形成されており、巻取装置50(前記トラバース装置55)が備える支持軸14を前記胴部21に挿通させることにより、ボビン20を支持することができる。前記固定板23は円板状に形成されるとともに支持軸14の端部に着脱可能に取り付けられ、これによりボビン20を支持軸14から抜けないように固定することができる。
【0032】
固定板23の縁部24には、エナメル線10の巻始め端末を固定するための爪部(端末固定部)11が備えられている。なお、爪部11についての詳細は後述する。
【0033】
この構成で、図示しない駆動手段によってボビン20が回転することで、エナメル線10が巻取装置50に所定量巻き取られる。なお、本実施形態の巻取装置50は整列巻きを行うように構成されており、巻取時には、胴部21に対するエナメル線10の巻付き位置が順次変わるように、前記トラバース装置55によってボビン20を軸方向に往復運動させる。これによってエナメル線10はボビン20に整列巻きで巻き取られる。
【0034】
次に、爪部11について図3〜図5を参照して説明する。図3は、図2に示す鎖線で囲った領域Aの拡大斜視図であり、爪部11の様子が詳細に示されている。図4は爪部11がエナメル線10を保持する様子を示す図である。図5は爪部11を外側から見た状態を示す図である。
【0035】
図3に示すように、爪部11は、固定板23の縁部24(外周面)に取り付けられている。爪部11は細長いブロック状に形成され、ボビン20の周方向と爪部11の長手方向が平行になるように配置されている。
【0036】
爪部11の基端部には、固定板23の縁部24に取り付けるための取付孔13を備えており、この取付孔13にネジ(取付部材)15を挿通させて固定板23に固定できるようになっている。なお、固定板23の縁部24(外周部)は段状に切り欠かれており、これによって平面状の取付面が形成されている。このため、隙間を発生させることなく、爪部11を前記縁部24へ安定して取り付けることができる。
【0037】
爪部11は、基端部から先端部へ向かって先細となるように形成されている。これにより、爪部11の先端が作業者の衣服等に引っ掛かったとしても、容易に先端部が弾性変形して逃げることができ、衣服の巻込みを防止できる。
【0038】
この爪部11はテフロン(登録商標)等のフッ素ゴムによって構成されており、図4に示すように、所定の厚みTを有している。爪部11の先端は斜めに切り欠かれており、この切り欠いた部分と固定板23の縁部24(外周面)との間に、楔状のクランプ空間Cが構成されている。言い換えれば、爪部11の先端から基端にかけて、爪部11の厚みが徐々に増大している。
【0039】
前記クランプ空間Cは、ボビンの周方向一側を開放させており、この開放側からエナメル線10を差込可能に構成されている。また、爪部11を切り欠いた部分の斜面であって前記固定板23の外周面と対向する面(エナメル線10に接触する部分)は、他の部分よりも摩擦係数が大きい摩擦部12とされている。
【0040】
この構成で、エナメル線10を楔状の前記クランプ空間の奥へ差し込んで行くと、当該エナメル線10は、爪部11の摩擦部12と固定板23の縁部24との間で、爪部11の厚み方向に挟持される。エナメル線10が爪部11の摩擦部12に接触しているので、この状態でボビン20が回転しても、摩擦部12による摩擦力により、エナメル線10が爪部11から容易に外れないようになっている。
【0041】
次に摩擦部12について説明する。本実施形態において、前記爪部11の摩擦部12は、その面を荒らすことにより、(爪部11の他の部分よりも)摩擦係数が高められている。図5において爪部11先端に描かれる破線の向きで示すように、摩擦部12の面を荒らす方向は、ボビン20の周方向(爪部11の先端が向く方向、爪部11の長手方向)に対して垂直となっている。即ち、ボビン20の周方向に対して垂直な方向の傷(荒らし筋)が爪部11の表面に形成されるように、爪部11の前記切り欠いた部分を加工する。この結果、ボビン20の周方向に沿って切った爪部11の断面は、前記加工部分において、細かい凹凸が形成されることになる。
【0042】
この摩擦部12の面を荒らす加工は、例えばグラインダーやヤスリを用いるなど、任意の方法で行うことができる。例えば、その表面粗度が略0.11mm程度である爪部11を、前記摩擦部12の部分だけをグラインダー加工することで、摩擦部12の表面粗度(平均粗さ)を5mm以上(ここでは7.89mm程度)にすることができる。これによって、エナメル線10の表面静摩擦係数が小さい場合でも、確実に摩擦部12で保持することが可能となっている。
【0043】
以上に示すように、本実施形態の巻取装置50は、エナメル線(線条体)を巻き取るボビン20を支持可能な支持軸(ボビン支持部)14と、エナメル線10を挟み込んで固定するための端末固定部と、を備え、前記端末固定部にエナメル線10の巻始め端末を固定した状態で、ボビン20を回転させてエナメル線10を巻き取るように構成されている。また巻取装置50は、支持軸14に固定された固定板23を有し、この固定板23の外周面上に爪部11を固定し、該爪部11によって前記線条体を挟み込んで固定する端末固定部と成している。そして、少なくとも爪部11は、弾性を備えたゴムで形成されている。
【0044】
この構成により、作業者等の衣服が爪部11に接触しても、爪部11(の先端)が弾性変形することで逃げることが可能であり、これによって衣服の巻込みを防止することができる。また、簡便な構成で、コストをかけずに衣服の損傷等を防止できる。更に、爪部11がゴムで形成されていることにより、エナメル線10が爪部11に挟まれることで発生するエナメル線10の損傷を防止することができる。
【0045】
また、前記爪部11は、固定板23との間にエナメル線10を挟み込むように構成される。
【0046】
この構成により、爪部11と固定板23とでエナメル線10を挟み込めばよいので、爪部11の構成を簡素に形成することができる。
【0047】
また、前記爪部11は、エナメル線10を爪部11の厚みTの方向に保持するように構成されている。
【0048】
この構成により、爪部11の厚みTを適宜確保することによって強い復元力を得ることができ、エナメル線10を強力に保持できる。これによって、エナメル線10が爪部11から外れてしまうことを確実に防止できる。
【0049】
また、前記爪部11は、エナメル線10を挟み込む部分に、他の部分よりも摩擦係数が大きい摩擦部12を有するように構成される。
【0050】
この構成により、爪部11の保持力が増加し、より確実にエナメル線10を保持できる。従って、表面が滑り易いエナメル線10も摩擦部12によって確実に保持して巻き取ることができる。一方で、作業者等の衣服が接触するおそれのある部分(摩擦部12以外の部分)は摩擦係数が大きくないとともにゴムの弾性力で衣服の引っ掛かりが防止されるので、衣服の巻込み等を防止することができる。
【0051】
また、前記摩擦部12は、爪部11の荒らし加工面として構成されている。
【0052】
この構成により、新たに構成を追加する必要なく、簡素に摩擦部12を構成することができる。
【0053】
また、摩擦部12の前記荒らし加工面における荒らし方向が、ボビン20の周方向以外の方向である。
【0054】
この構成により、エナメル線10がボビン20の周方向に移動しようとするのを高い摩擦力で阻止でき、爪部11によるエナメル線10の保持が確実になる。例えば図5の状態から図面左側へエナメル線10が移動しようとしても、摩擦部12による抵抗が良好に働いて、エナメル線10の爪部11からの抜けを防止することができる。
【0055】
また、前記摩擦部12の前記荒らし加工面における荒らし方向が、ボビン20の周方向に垂直な方向である。
【0056】
この構成により、エナメル線10が周方向に移動しようとするのを一層大きな摩擦力で阻止し、爪部11からの抜けを確実に防止できる。
【0057】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0058】
上記実施形態では、ボビン20を横にして巻取装置50の支持軸14に装着する構成であるが、これを、縦型のボビンを用いる巻取装置に変更することもできる。以下、この変形例を図6、図7を参照して説明する。図6は、巻取装置が備える固定枠33にセットされている縦型ボビン30を示す要部斜視図である。図7は、図6の鎖線で囲った領域Bの拡大図であり、爪部41の様子を詳細に示している。
【0059】
この変形例において、巻取装置は図6に示すような固定枠(ボビン支持部)33を備えている。この固定枠33は水平な円板状に形成され、図略の駆動手段(例えば電動モータ)によって駆動可能に構成されている。
【0060】
縦型ボビン30は、エナメル線10を巻き取るための胴部31と、その両端に備えられる鍔部32から構成され、軸線を垂直に向けた状態で前記固定枠33上にセットされる。前記固定枠33の縁部34には爪部41が備えられている。爪部41は、弾性を備えたゴムで形成されている。
【0061】
図7に示すように、前記鍔部32の外周部には凹部が形成されており、前記爪部41はこの凹部にほぼ全部が埋め込まれるように設置されている。爪部41には取付孔43が形成されており、この取付孔43にネジ45を挿通させることで、爪部41を縦型ボビン30に固定している。
【0062】
この変形例の爪部41は、図4で説明した爪部11と同様に、他の部分よりも摩擦係数の大きい摩擦部42を備えている。爪部41の内側にエナメル線10を差し込み、当該エナメル線10を前記摩擦部42に接触させることで、エナメル線10の巻始め端末を、爪部41の厚み方向に挟んで保持することができる。この状態で図略の駆動手段を駆動すると、固定枠33と縦型ボビン30とが一体的に回転し、これによってエナメル線10を縦型ボビン30に巻き取る。
【0063】
以上のように、縦型ボビン30を用いる巻取装置についても、弾性を備えたゴムで形成される爪部41を適用することで、衣服の巻込みを防止できるとともに、爪部41に接触するエナメル線10の巻始め部分の品質低下を防ぐことができる。
【0064】
また、図4の構成では爪部11と爪部11以外の部材(固定板23の縁部24)とによってエナメル線10を挟持する構成であるが、この構成に代えて、端末固定部としての爪部がV字状の切り欠き部を備えて、この切り欠き部で線条体を挟持する構成とすることもできる。図8は、この切り欠き部63を備えた爪部61によるエナメル線10の保持を模式的に示した断面図である。
【0065】
図8に示すように、爪部61は細長いブロック状に形成されるとともにV字状の切り欠き部63を備え、この切り欠き部63の内部に楔状のクランプ空間S2が形成されている。この切り欠き部63によって、エナメル線10を爪部61の厚み方向に挟持することができる。
【0066】
切り欠き部63の内面は、前記クランプ空間S2を挟んで互いに対向する両側の面に荒らし加工が施され、摩擦部62が形成されている。なお、切り欠き部63の内面のうち片方の面だけを摩擦部とすることもできる。
【0067】
以上に示すように、図8に示す巻取装置において爪部61は切り欠き部63を有し、該切り欠き部63内にエナメル線10を挟み込むように構成されている。
【0068】
この構成により、エナメル線10の端末は切り欠き部63内で、弾性を有する爪部61にのみ接触して挟み込まれる。従って、エナメル線10の端末の傷や損傷を一層確実に防止できる。
【0069】
図2(図6)で示した構成において、端末固定部としての爪部11(41)は、巻取装置50の本体側に備えられる固定板23(固定枠33)に配置されている。しかしながら、この構成に代えて、爪部をボビン自体に配置する構成とすることもできる。この場合、エナメル線の巻始めの端末を保持するだけでなく、巻終わりの端末を保持する用途にも使用することができる。また、巻始め用及び巻終わり用に、ボビンに1つずつ爪部を備える構成に変更することができる。
【0070】
また、摩擦部12において面が荒らされる方向はボビン20の周方向と垂直な方向であるが、例えば、ボビン20の周方向に対して斜めの方向に荒らすように変更することができる。
【0071】
前記爪部は、弾性を有するゴム製である限り、その材質、表面の粗度等を任意に変えることができる。
【0072】
また、上記実施形態では摩擦部12は爪部11本体を加工して形成されているが、この構成に代えて、摩擦係数の高い部材を、爪部11のエナメル線10に対する接触面に貼り付ける構成とすることもできる。
【0073】
また、上記実施形態の構成に代えて、ボビンの自動切換を行う装置を備える巻取装置等に本発明を適用することもできる。これによって、効率の高い巻取装置を提供することができる。
【0074】
また、上記巻取装置は、平角線のエナメル線10に限らず、丸線のエナメル線、メッキ線やケーブル等、他の線条体を巻き取る用途に使用することができる。
【0075】
なお、以上に説明した実施形態及びその変形例から、少なくとも以下の技術思想を把握することができる。
【0076】
線条体を巻き取るためのボビンであって、
前記線条体の巻始め端末又は巻終わり端末の少なくとも何れか一方を挟み込んで固定するための、弾性を備えたゴム製の端末固定部を備えることを特徴とするボビン。
【0077】
この構成により、ボビンを例えば巻取装置に装着して回転させる場合に、作業者の衣服が端末固定部に巻き込まれることによる巻取装置の故障、衣服の損傷等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻取装置の構成を模式的に示す正面図。
【図2】巻取装置に装着されたボビンの様子を示す要部斜視図。
【図3】図2の領域Aを詳細に示す拡大斜視図。
【図4】爪部がエナメル線を保持する様子を示す拡大図。
【図5】爪部を外側から見た様子を示す図。
【図6】変形例の巻取装置に装着された縦型ボビンの様子を示す要部斜視図。
【図7】図6の領域Bを詳細に示す拡大斜視図。
【図8】爪部がV字状の切り欠き部を備える変形例において、爪部がエナメル線を保持する様子を示す拡大図。
【符号の説明】
【0079】
10 エナメル線(線条体)
11 爪部(端末固定部)
12 摩擦部
13 取付孔
14 支持軸(ボビン支持部)
15 ネジ
20 ボビン
21 胴部
22 鍔部
23 固定板
24 縁部
30 縦型ボビン
31 胴部
32 鍔部
33 固定枠
41 爪部
42 摩擦部
43 取付孔
45 ネジ
61 爪部
62 摩擦部
63 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体を巻き取るボビンを支持可能なボビン支持部と、
前記線条体を挟み込んで固定するための端末固定部と、
を備え、
前記端末固定部に線条体の巻始め端末を固定した状態で、前記ボビンを回転させて前記線条体を巻き取る線条体の巻取装置であって、
該ボビン支持部に固定されたボビン固定部を有し、
前記ボビン固定部の外周面上に爪部を固定し、該爪部によって前記線条体を挟み込んで固定する端末固定部と成している線条体の巻取装置であって、
少なくとも前記爪部が、弾性を備えたゴムで形成されていることを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の線条体の巻取装置であって、
前記爪部は、前記ボビン固定部との間に前記線条体を挟み込むことを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の線条体の巻取装置であって、
前記爪部は、切り欠き部を有し、該切り欠き部内に前記線条体を挟み込むことを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の線条体の巻取装置であって、
前記爪部は、前記線条体を該爪部の厚み方向に保持することを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の線条体の巻取装置であって、
前記爪部は、前記線条体を挟み込む部分に、他の部分よりも摩擦係数が大きい摩擦部を備えることを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の線条体の巻取装置であって、
前記摩擦部は、前記爪部の荒らし加工面であることを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の線条体の巻取装置であって、
前記荒らし加工面における荒らし方向が、前記ボビンの周方向以外の方向であることを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の線条体の巻取装置であって、
前記荒らし加工面における荒らし方向が、前記ボビンの周方向に垂直な方向であることを特徴とする線条体の巻取装置。
【請求項9】
線条体の巻取方法であって、
弾性を備えたゴムで形成される爪部によって線条体の巻始め端末を挟み込む第1ステップと、
前記線条体を前記爪部で挟み込んだ状態でボビンを回転させる第2ステップと、
を含むことを特徴とする線条体の巻取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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