説明

線維症及び組織における他の形の病理学的沈着を予防及び除去することができるGHRP−6を含む薬剤組成物

本発明は、薬剤組成物の一部として繰返しの様式で投与し、肝臓、肺、食道、小腸、腎臓、血管、及び関節など、内部臓器の実質組織における病理学的な線維性物質の沈着、並びにあらゆる疾病病因の全身性の形態の皮膚の線維症も予防及び除去する、分泌促進ペプチドの使用に関する。さらに、これらのペプチドは、任意の対応する化学形態であるアミロイド及びヒアリン物質の沈着、並びに、脳、小脳、血管、肝臓、腸、腎臓、脾臓、膵臓、関節、及びその他のものの中では皮膚における組織徴候を予防及び根絶する。この方法では、このような異常な沈着によって罹患している細胞、組織、及び臓器における機能障害が正される。本発明のペプチドは、浸潤、又は局所的な投与をすることで、火傷及び他の皮膚の外傷の結果としての皮膚上のケロイド及び肥大性の瘢痕の予防及び除去に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬産業及び医薬の分野に関し、より正確には、肝臓、肺、食道、小腸、腎臓、血管、関節、及び他のあらゆる疾病原因の全身性の形態の皮膚性の線維症などの実質性の内部組織における線維性物質の病理学的沈着を予防及び除去する薬剤組成物において繰返し投与する分泌促進ペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
線維症の事象は、殆ど全ての内部臓器、血管、又は皮膚の実質における細胞外マトリックスの異常な沈着を特徴とする、一群のモノオーガニック(mono organic)又は全身性の病理学的実体を含む。これらは、複合の自己免疫ベースの事象、又は長期の模倣及び炎症の事象に対する間質性の反応の結果と考えられている。一般に、過剰のコラーゲン性物質が、機能性組織を消し去る介在性のエフェクター細胞又は拡大した間質性の物質によって、実質に沈着する。これらの事象を媒介しているエフェクター細胞は、間葉系起源であり、冒されている組織にしたがってかなり特異的であると思われる。一般に、筋線維芽細胞が、病理学的な線維症をもたらす点で関係づけられている。線維症の確立を媒介するメカニズムは複雑であり、完全に理解されていない。いずれにせよ、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、結合組織由来増殖因子(CTGF)、及び血小板由来増殖因子(PDGF)は、標的臓器に関係なくこれらの事象に関わっていると考えられている。長期の線維症は、一般に致死的であり、現在のところ有効な治療がない。次に、いくつかの臓器における線維症の事象についてのいくつかの技術的態様を提示する(Ding J、Yu J、Wang C、Hu W、Li D、Luo Y、Luo H、Yu H、「イチョウ抽出物はラットにおいてCClが誘発する肝線維症を軽減する(Ginkgo biloba extract alleviates liver fibrosis induced by CCl in rats)」、Liver International、2005年、25巻、1224〜1232頁)(Friedman SL、Reversal of hepatic fibrosis−Fact or fantasy?、Hepatology、2006年1月30日、43巻(S1)、S82〜S88頁)。
【0003】
肝線維症
肝臓が損傷を受けると、炎症反応及び細胞外マトリックス(EM)の再構築によって、この臓器における正常の機能及び構造を回復される。しかし、損傷が持続する場合、修復及び問題の解決に関与する要因のミスバランス(misbalance)により、EMの制御が変更され、その成分の過剰な合成が促進される。肝臓は、代謝の制御、血液のろ過、及びホルモンの制御に関与する主な臓器である。肝星細胞(HSC)は、長い細胞質突起を有する内皮細胞を囲む、ディッセ腔又は類洞壁と名付けられた、内皮細胞と肝細胞との間の間隙に配置される。HSCは、EMの構成成分を合成及び分泌することができ、線維症の事象の重要な出所を代表している。これらは、レチニルエステルを貯蔵し、増殖因子及び他のサイトカインを合成し、類洞の血流を制御する上でさらなる役割を有する。HSCは、炎症誘発性のサイトカインの傍分泌、活性酸素種の生成、又は細胞の表現型に影響を及ぼすEM構造における変化によって誘発されて、静止状態から活動状態へ移行することができる。これらの活性化の間、HSCは、形状が細長く、平滑筋のα−アクチンを発現し、貯蔵されているレチノールを全て解放する筋線維芽細胞に分化する。この状態で、HSCは、これらが炎症反応、即ち、増殖する能力、収縮性、サイトカイン生成、及び主にEMの構成成分の合成及び分泌、を持続し、増幅することを助ける新しい性質を獲得する。活性化されたHSCにおいてEMタンパク質の生成を促進する主な因子の中には、主に活性化段階におけるクッパー細胞から合成されるTGF−βがあり、TGF−βは、永続化段階においてHSCによって主に生成され、活性化の持続を支持する。一般に、肝臓の線維性の硬結は全て、生存に不適合である(肝不全、最終アップデート2004年9月3日、編集:David Eric Bernstein、MD、Chief、Section of Hepatology、North Shore University Hospital、Director、Associate Professor、Department of Internal Medicine、Division of Hepatology、New York University School of Medicine;Francisco Talavera、PharmD、PhD、Senior Pharmacy Editor、eMedicine;Oscar S Brann、MD、Associate Clinical Professor、UCSD School of Medicine;Program Director of Gastroenterology Fellowship、Department of Internal Medicine、Naval Medical Center San Diego;Alex J Mechaber、MD、FACP、Director of Clinical Skills Program、Assistant Professor、Department of Internal Medicine、Division of General Internal Medicine、University of Miami School of Medicine;及びJulian Katz、MD、Professor、Department of Internal Medicine、Division of Gastroenterology、MCP Hahnemann University)(Sarem M.、「肝臓星状細胞:正常及び病理学的状態におけるその役割(Hepatic stellate cells:it’s role in normal and pathological conditions.)」、Gastroenterol Hepatol.、2006年2月;29巻(2)、93〜101頁)。
【0004】
肺線維症
肺線維症は、やはりいくつかの実体を含んでいる、進行の比較的遅い疾患である。組織学的には、線維芽細胞を支配する病変の一時的な不均一性を特徴とする。肺線維症の病原における一連の事象は十分記載されていても、主な損傷を媒介する正確な機序についての情報は殆どない。主に自己免疫性である、免疫学的因子が関係するとみなされている。遺伝的因子も結びつけられている。顕微鏡的には、寡黙な性質は、核小体が突出し、細胞学的に非定型の、肺胞の上皮細胞における過形成の変化(II型肺細胞)を含み、通常ウイルス感染を模倣している。超微細構造の管状の核内封入を見つけることが可能である。肺実質におけるEM及び特にコラーゲンの沈着プロセスにより、肺の構造を潜行性に変質させ、細気管支及び肺胞を崩壊し、最終的に機能障害になり、肺の換気を損傷する。TGF−αは、このプロセスを組織化する主なサイトカインの1つとして、やはり関与している。筋線維芽細胞は、EM生成細胞である。(Medranda Gomez MA、Paricio Nunez P、Tovar Martinez A、Ferrer Marin F、Gonzalez Martinez P、Garcia Puche MJ.、「肺線維症(Pulmonary fibrosis.)」、Rev Esp Enferm Dig.、2005年11月、97巻(11)、843〜4頁)。
【0005】
全身性皮膚線維症即ち強皮症
全身性強皮症(SS)は、特に複雑な疾患である。現在まで、その病原を説明する、真実味ある理論は存在していない。しかし、線維芽細胞、内皮細胞、並びに免疫系の細胞、特にB及びTリンパ球における根本的な異常は記載されている。これらの細胞における機能的な変化は、SSにおける病理学的変化の典型的な三徴候:皮膚及び内臓の進行性の線維症、小動脈及び細動脈の管腔の閉塞、並びに免疫異常を促進する。体液性及び細胞性免疫における変更は、大量の抗体の分泌を引き起こし、そのいくつかは疾患に非常に特異的であり、単核細胞の組織中への浸潤により、サイトカイン及び増殖因子の生成に影響を及ぼし、制御解除する。今までのところ、この変更のどれが疾患の主なトリガリング事象であるか、又は進行性のSSの線維症のプロセスを引き起こすためにこの全てが関連しあっているのか否かは明らかになっていない。しかし、主な病原の構成要素は、SS患者の線維芽細胞においていくつかのタイプのコラーゲン及び他のEMタンパク質をコードする遺伝子の、制御解除された、持続的な活性化を含んでいる。これは、正常の傷の治癒が可能である正常の線維芽細胞と、コラーゲンが非制御に生成し、沈着し、冒されている臓器における病理学的な線維症をもたらすSS線維芽細胞との間の主な違いである。再度、TGF−βは、SS組織線維症に明らかに関わっていると思われる成長因子の1つである。最も重要な効果の1つは、いくつかのタイプのコラーゲン、及びフィブロネクチンなどの他のEMタンパク質の合成を含んでいる(31)。SSを有する患者の線維芽細胞は、その表面上に高レベルのTCF−β受容体を発現しており、TGF−β及びコラーゲン生成の増大によって誘発されるシグナルにおける増大を担っている可能性がある(30)。この疾患も、不可逆的に致死的である(Steen V.、「全身性強皮症に対するターゲット療法(Targeted therapy for systemic sclerosis.)」、Autoimmun、Rev.、2006年2月、5巻(2)、122〜4頁)。
【0006】
糖尿病性腎硬化症即ち糖尿病性腎症
殆ど全ての糖尿病患者は、疾患の診断から2から3年後に、糸球体及び尿細管基底膜の腫脹を発症する。その中には、進行性の糖尿病性腎症の病理学的マーカーである、糸球体のメサンギウムの膨張及び間質性線維症も発症する者もいる。この腎症は、臨床的に進行し、タンパク尿、高血圧、及び腎不全も発症する。メサンギウム領域の拡大、間質性線維症の重症度、及びアテローム性動脈硬化の間の相関は良好であり、糸球体ろ過速度も低減する。最終的には、メサンギウムの拡大は、糸球体の毛細管を閉塞し、有効ろ過面積を低減することにより、糸球体の拡大を低減する。同じ様式で、尿細管間質性の線維症は、尿細管の構造及び機能を変化させ、腎不全をもたらす。この疾患では、TGF−βの役割は、糖尿病患者の腎臓に生じる線維性のプロセスを組織化する点で解明されている。この疾患は進行性であり、潜行性であり、腎不全によって患者の生命とともに終息する(Cohen、M.P.、Ziyadeh、F.N.、Hong、S.W.、Shearman、C.W.、Hud、E.、Lautenslager、G.T.、Iglesias−de la Cruz、M.C.、及びChen、S.、(2002年)「in vivoにおけるアルブミンの糖化の阻害によりTGF−β η1の糸球体の過剰発現が改善する(Inhibiting albumin glycation in vivo ameliorates glomerular overexpression of TGF−beta eta1.)」、Kidney Int、61巻、2025〜2032頁)、(Ziyadeh、F.N.、Hoffman、B.B.、Han、D.C.、Iglesias−de la Cruz、M.C.、Hong、S.W.、Isono、M.、Chen、S.、McGowan、T.A.、及びSharma、K.(2000年)「db/db糖尿病マウスにおけるモノクローナル抗−TGF−β抗体での処置による腎不全、過剰のマトリックス遺伝子発現、及び糸球体間質のマトリックス発現の長期予防(Long−term prevention of renal insufficiency、excess matrix gene expression and glomerular mesangial matrix expression by treatment with monoclonal anti−TGF−beta antibody in db/db diabetic mice.)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97巻、8015〜8020頁)。
【0007】
陰茎線維症即ちペイロニー病
概念上、この疾患は、勃起組織の陰茎の弾性の被覆(白膜)の病理学的瘢痕を含み、安静状態における臓器の退縮、及び勃起中の湾曲及び退縮をもたらす。疾患の開始を記述するのは難しいが、白膜の線維性の変性を炎症プロセスが先行し、血管炎性の、免疫学的な、若しくは外傷性のプロセス、又はコラゲノパシー(collagenopathy)を引き起こすということに、著者の殆どが一致している。浸潤の第1ピリオドは、勃起又は挿入の間、線維性のプラークが痛みを伴って陰茎の曲線又は退縮を表しながら静かに進行し得るときであると記載されている。主症状は、線維症によって引き起こされる。さらなる関連する線維症が耳たぶの軟骨にも存在する患者もいる。致死的ではないが、この疾患は、患者の生活の質を著しく損なう。再び、TGF−βは、疾患の分子ベースを誘発又は増幅する因子として関与する(Jakut M.、「ペイロニー病の基本的な科学的理解における新発見(New discoveries in the basic science understanding of Peyronie’s disease.)」、Curr Urol Rep.、2004年12月、5巻(6)、478〜84頁)。
【0008】
脳微小血管疾患
脈管障害は、アルツハイマー病及び他の痴呆の病原性のマーカーとして、アルツハイマー病に罹患している患者の脳で確認されている。血管の病変の層状及び領域の分布は、神経原線維変化及び老人斑の外観に相関している。100年以上前は、かつては硬直、無目的、及び湾曲を含めた、高齢者の脳血管における生理学的異常が以前に記載されていた。20年前以降にこれらの証拠は確認され、主要な血管の老化とともに海馬の老人性毛細血管がさらに歪められることがさらに記載されていた。超微細構造的に、(a)基底膜中への膜性の封入、及び(b)基底膜構成成分の微小血管のコラーゲンの貯蔵(線維症)又は腫脹を区別することができる。毛細血管の周皮細胞は、老化とともに、著しく変性する。内側の基底膜におけるコラーゲン線維の沈着が、哺乳動物の脳に観察されている。これらの線維における64nm幅の回転により、上皮細胞と周皮細胞との間、又は基底膜の内側表面に位置しているこの微小血管線維症のコラーゲン組成物の同定が可能になっている。基底膜の腫脹及びコラーゲン沈着は、ラット及びヒトにおいて年齢とともに同様に増大し、脳の微小血管系のこれらの線維性硬化症の変性プロセスは、一般に痴呆をもたらすプロセスの解剖学的なベースと考えられている。これらの疾患は、細動脈網の進行性の閉塞とともに臨床的に悪化し、最終的に、全ての社会的関係及び認知活動を抑止する。
【0009】
痴呆の病原における血管疾患の役割は、現在、再び静まっており、50%を超える痴呆患者は、あらゆる脳血管疾患の徴候を有すると示唆されている。記憶、学習、及び一般的技能の重大な低下を媒介する、他の神経−脳の、非アルツハイマー性の痴呆プロセスが存在する。最も適切な例は、皮質下梗塞を伴った自律神経性の脳動脈の白質脳症(CADASIL)である。この疾患は、分子及び細胞レベルでは、未だ解明されていない。それにも関わらず、好濃性の顆粒物質の進行性の沈着に起因する動脈疾患は、引き続き動脈内腔を閉塞し、脳に虚血性の病巣を確立し、その後梗塞のエピソードが発症する。微小梗塞によるニューロンの生存性の喪失により、脳における主な神経の活動性が悪化し、老衰及び痴呆の状態をもたらす(Nakanao I.、「神経血管性の単位の機能及び統合は血管及び炎症細胞系の統合時に休止する(The function and integrity of the neurovascular unit rests upon the integration of the vascular and inflammatory cell systems.)」、Curr Neurovasc Res.、2005年12月、2巻(5)、409〜23頁;Mott RT.、Neuropathology of Alzheimer’s disease.Neuroimaging Clin N Am.、2005年11月;15巻(4)、755〜65頁)。
【0010】
他の変性プロセス。β−アミロイド沈着。
アルツハイマー病は、最も蔓延している痴呆であり、65歳を超える高齢者における主な死因の1つである。疾患の起源は知られておらず、アルツハイマー病患者の脳は、ニューロンの内側及び外側にいくつかのタイプのタンパク質の、疾患に関連した沈着を示している。β−アミロイドは、脳及び脳幹における細胞外沈着を形成しているタンパク質の1つである。プラークは、その前駆タンパク質に由来する、β−アミロイドタンパク質の密集したコアからなる。痴呆に罹患する危険性は、アポリポタンパク質E(Apo−E)における多型に強力に関連している。脳では、Apo−Eは、β−アミロイドタンパク質と相互作用し、Apo−E4はβ−アミロイド沈着の増大及び神経原線維変化の数の増大に結びついている。
【0011】
注意、学習、及び記憶のプロセスは、脳の能力の中でもアルツハイマー病において冒され、痴呆疾患の中でモデルとして確立されているこの状態は、β−アミロイド沈着を特徴としている。現在までに、アルツハイマー病の間の認知欠損を処置するためにFDAによって認可されている薬物は1つしかない。β−アミロイドタンパク質は、脳細胞におけるフリーラジカルによって媒介される壊死効果を発症する。脳実質におけるβ−アミロイドの沈着は、アルツハイマー病における特徴的な病原のマーカーであるが、正常の生理学的な老化においては、より率が低い。
【0012】
β−アミロイドの神経毒性タンパク質の変異体の合成を低減することで、アルツハイマー病におけるニューロンの損傷を支持するプロセスを減弱することができる。同じ様式で、それを脳から除去し、さらに排泄することで、患者における主な神経機能の回復に貢献することができる。アルツハイマー病は、患者における生活の質を著しく損ない、治療は未だ入手不可能である(Gurol ME.、「AD、MCI、及び脳のアミロイド血管障害における血漿のβ−アミロイド及び白質領域(Plasma beta−amyloid and white matter lesions in AD、MCI、and cerebral amyloid angiopathy.)」、Neurology.2006年1月10日、66巻(1)、23〜9頁;Han HS.、「神経血管性の単位の機能及び統合は血管及び炎症細胞系の統合時に休止する(The function and integrity of the neurovascular unit rests upon the integration of the vascular and inflammatory cell systems)」.、Curr Neurovasc Res.、2005年12月、2巻(5)、409〜23頁;Anderson E.、「器質性脳症候群(OBS)スケール:系統的レビュー(The Oorganic Brain Syndrome (OBS) scale:a systematic review.)」、Int J Geriatr Psychiatry.、2006年1月27日)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、GRHP−6、GRHP−2、ヘキサレリン、及び/又はグレリンを含む薬剤組成物における分泌促進ペプチドの使用に関し、前記薬剤組成物は、前記組成物をレシピエントの生物体に適用する場合に、ヒアリン物質、アミロイド、顆粒形態の好酸性及び好濃性物質の、内部臓器、外部及び血管網臓器;肝臓、肺、食道、小腸、腎臓、血管、関節、及び残りの全身の皮膚などにおける、病理学的な細胞内及び細胞外沈着、あらゆる疾病病因の線維症の変異体を、予防し、コントロールし、根絶する。本発明の薬剤組成物は、液体、半固体、又は固体の組成物であり、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、くも膜下、直腸、及び局所の経路によって、皮膚又は粘膜、上皮又は臓器中への局所浸潤によって、より正確には病巣内、及び/又は病巣周囲に投与することができる。本発明の薬剤組成物は、1投与量あたり5マイクログラム〜1ミリグラムの濃度、より正確には30〜500マイクログラムのGHRP−6、GHRP−2、ヘキサレリン、及び又はグレリンペプチド、並びに薬学的に許容できるビヒクルを含む。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
ラットにおける肝線維症の復帰。
本実験は、GHRP−6ベースの薬剤組成物の、ラットにおける肝線維症の復帰に対する効果を評価するために行った。外部胆管を結紮することによって、平均体重250gのウィスター系オスラットに肝線維症を誘発した。この目的のために、ラットをケタミン/キシラジンの併用で麻酔し、開腹して総胆管を露出させた。胆管を、クロム製カットグット4〜0で二重結紮した。手術後、動物を、ラット各20匹の3つの実験群:(1)生理学的食塩水溶液を投与する、コントロールプラセボ群、(2)100μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群、及び(3)400μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群に無作為に分配した。肝実質の線維症を誘発した後、処置を3週間の間毎日投与した。処置は全て、線維症が出現した3週間後に開始した。肝損傷の経過観察は、この臓器の突起領域の毎週の超音波検査、GOT及びGPTトランスアミナーゼの血清レベル、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)レベルの進行、並びに腹水の体積によって行った。GHRP−6又はプラセボでの処置は、1日1回、腹腔内の経路によって適用した。処置が終わったら動物を屠殺し、血清及び肝臓を回収した。肝臓の断片を中性ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色によって、又はマッソントリクローム染色によって処理加工して、全般的な損傷及び線維性の硬化の重症度を評価した。肝臓組織の他の断片を−70℃で貯蔵し、処理加工して1N HClにおける酸加水分解によってヒドロキシプロリンの含量を決定し、酸化還元の代謝マーカーの肝臓内レベルも決定した。ブラッドフォード法によって全タンパク質含量を計算することによって、生化学的決定を行った。
【0015】
表1。プロセスの階級スケール:(0)−ゼロ、(1)−中程度、(2)−有限、(3)重症、(4)非常に重症
【表1】

【0016】
表2。処置3週間終了時の肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの評価
【表2】

【0017】
表3。処置3週間終了時の全群におけるGOT、GPT、及びGGTの血清レベル
【表3】

【0018】
表4。処置第3週終了時の肝臓サンプルにおける酸化ストレスマーカーのレベル。
【表4】

【0019】
GHRP−6での処置は、総胆管の結紮によって生成した、肝実質におけるコラーゲン性及び細胞外物質の沈着を根絶し、コントロールするペプチドの能力を、明らかに実証している。処置の関連性は、形態学的及び生化学的データの収束によって実証され、著しく損なわれた管周囲及び門脈周囲の線維性の状態を正したことを支持している。プラセボ群における動物は、自発的寛解を示さなかったことに注目することが重要である。
【0020】
(実施例2)
ラットにおける肝線維症の復帰
この実験は、GHRP−6を含む薬剤組成物の、ラットにおける肝線維症の復帰に対する効果を評価するために行い、前記肝線維症は、四塩化炭素(CCl)によって誘発した。これは、長期投与後に慢性肝炎及び線維症を引き起こす肝毒性物質である。体重250gのオスのウィスター系ラットに、4週間の間、1週間に2回、オリーブ油中CCl50%/50%(v/v)を腹腔内投与することによって、肝線維症を誘発した。その後、ラットの25%を屠殺し、血液生化学試験及び病理学的解剖試験を行った。肝線維症のプロセスは、試験した動物全てにおいて実証された。残っている動物を、ラット各15匹の3つの実験群:(1)生理学的食塩水溶液を投与するコントロールプラセボ群、(2)100μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群、及び(3)400μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群に無作為に分配した。肝実質における線維症のプロセスを検出した後、処置を4週間の間1日1回適用した。線維症が確立し、CCl懸濁液投与の直後に処置を開始した。処置が終わったら、動物を屠殺し、血清及び肝臓を回収した。肝臓の断片を中性ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色によって、又はマッソントリクローム染色によって処理加工して、全般的な損傷及び線維性の硬化の重症度を評価した。肝臓組織の他の断片を−70℃で貯蔵し、処理加工して1N HClにおける酸加水分解によってヒドロキシプロリンの含量を決定し、酸化還元の代謝マーカーの肝臓内レベルも決定した。ブラッドフォード法によって全タンパク質含量を計算することによって、生化学的決定を行った。薬剤組成物での処置に対する反応は、GOT及びGPTトランスアミナーゼの血清レベルの決定、定量スケールにおける組織学的判定基準、並びに脂質の過酸化のレベルに特徴であるいくつかのマーカーによって特徴付けられた。
【0021】
表5。プロセスの階級スケール:(0)−ゼロ、(1)−中程度、スライドの25%まで、(2)−リミット、スライドの50%まで、(3)−重症、スライドの75%まで、(4)−非常に重症スライドの75%を超える。ゾーンIIIにおける同時発生的な壊死を含む、架橋パターンの線維増殖性反応の組織学的評価。処置終了時の損傷グレードによる1群あたりの動物。
【表5】

【0022】
表6。処置終了時の肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの評価。
【表6】

【0023】
表7。処置終了時の全群におけるGOT及びGPTの血清レベル。
【表7】

【0024】
表8。処置第3週終了時の肝臓サンプルにおける酸化ストレスマーカーのレベル。
【表8】

【0025】
GHRP−6との処置により、このペプチドが、CClの繰返し投与の結果としての肝実質において、一般に、コラーゲン性物質及び細胞外マトリックス物質の沈着を根絶及びコントロールする能力が実証されている。この処置は、また、個々の、限局的な、及び周辺小葉中心性の肝細胞の死滅も予防する。処置の関連性は、収束性の形態学的な、酵素的な、及び生化学的なデータによって実証され、集密的な(コンフルエントな)架橋パターンを持つ、確立された、損傷的な重症の拡散した肝線維症が、寛解のない殆ど検出不可能なレベルまで、復帰したことを支持している。再び、プラセボ群の動物は、自発的な寛解を示さなかった。
【0026】
(実施例3)
ラットにおける腎硬化症の腎線維症の復帰。第3の実験。
この実験は、ラットにおける腎線維症の復帰における、GHRP−6を含む薬剤組成物の効果を評価するために行った。この場合、8週間の間、1週間に2回、2.5mg/kgの投与量の抗悪性腫瘍薬であるドキソルビシン(DX)を持続的に投与することによってプロセスを誘発した。門脈周囲における、気管支周囲における、及び腎臓の間質全体にわたる、嚢胞性の結節性のパターンを有する線維性の沈着の発症が、ドキソルビシン中毒のラット集団の25%におけるこれらの臓器の組織学的試験によって実証された。これより前に、DX投与を中断し、GHRP−6を含む薬剤組成物での処置を開始した。4週間の間、腹腔内の経路によって、処置を、1日1回、100及び400μg/kgを体積1ml適用した。残りの動物を、各ラット20匹の3つの実験群:(1)生理学的食塩水溶液を投与するコントロールプラセボ群、(2)100μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群、及び(3)400μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群に無作為に分配した。処置が終わったら、動物を麻酔薬の過剰投与によって屠殺し、肝臓、腎臓、肺、及び血清を回収した。組織の断片を中性ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色によって、又はマッソントリクローム染色によって処理加工して、全般的な損傷及び線維性の硬化の重症度を評価した。他の断片を−70℃で貯蔵した後、処理加工して、1N HClにおける酸加水分解によってヒドロキシプロリンの含量を決定し、クレアチニン及び酸化ストレスのマーカーのレベルも決定した。ブラッドフォード法によって全タンパク質含量を計算することによって、生化学的決定を行った。
【0027】
表9。線維性の損傷の各重症度のレベルにおける1群あたりの動物数。腎臓における線維性のプロセスの階級スケール:グレード(0)−ゼロ、グレード(1)−中程度、尿細管又は糸球体を変形又は封入せずに間質を冒す、グレード(2)−重度、間質全体を冒し、尿細管を変形し、それらの管腔を消失させ、糸球体を外部的に封入する、グレード(3)−非常に重度、尿細管を封入及び崩壊し、糸球体を崩壊する。糸球体間質の沈着も含む。
【表9】

【0028】
表10。処置終了時の腎臓におけるヒドロキシプロリンレベルの評価。
【表10】

【0029】
表11。処置終了時の全群におけるGOT及びGPTの血清レベル。肝実質の完全性。
【表11】

【0030】
表12。第4週の処置終了時の腎組織サンプルにおける酸化ストレスマーカーのレベル。
【表12】

【0031】
(実施例4)
肺線維症のコントロール。
この実験は、ラットにおける腎線維症の復帰における、GHRP−6を含む薬剤組成物の効果を評価するために行った。この場合では、4週間の間、1週間に2回、2.5U/kgの投与量の、抗悪性腫瘍薬であるブレオマイシン(Ble)を持続的に投与することによって、プロセスを誘発した。線維症は、組織病理学的分析によって、Ble中毒の動物の25%の肺に実証された。これより前に、Bleの投与を中止し、GHRP−6を含む薬剤組成物での処置を開始した。4週間の間、腹腔内の経路によって、100及び400μg/kgを体積1ml、1日1回処置を適用した。動物を、各ラット10匹の3つの実験群:(1)生理学的食塩水溶液を投与するコントロールプラセボ群、(2)100μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群、(3)400μg/kgのGHRP−6を投与する群に無作為に分配した。処置が終わったら、麻酔薬の過剰投与によって動物を屠殺し、肺及び血清を回収した。組織の断片を中性ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色によって、又はマッソントリクローム染色によって処理加工して、全般的な損傷及び線維性の硬化の重症度を評価した。肺組織の他の断片を−70℃で貯蔵し、処理加工して1N HClにおける酸加水分解によってヒドロキシプロリンの含量を決定し、酸化還元の代謝マーカーの肝臓内レベルも決定した。ブラッドフォード法によって全タンパク質含量を計算することによって、生化学的決定を行った。肺における線維−増殖性の反応の組織学的評価には、血管周囲の、気管支周囲の、及び中隔の線維症のプロセスが含まれている。肺線維症の全体的なグレードを、これら3つのセグメントにおけるプロセスの程度及び強度にしたがって確立して、GHRP−6での処置の終了時の罹患又は非罹患の動物のパーセントを決定した。線維症の重症度による、線維性の肺を有する全群における動物数は:
グレード0−線維症の証拠がない、又は薄い、拡散性の線維若しくは輪状の物質の病巣だけが存在し、呼吸の損傷がない。
グレード1−75%を超える細動脈及び毛細管における主に血管の線維症。
グレード2−75%を超える細動脈及び毛細管における主に血管の線維症、さらなる気管支周囲の損傷がある。
グレード3−75%を超える細動脈及び毛細管における主に血管の線維症、さらなる気管支周囲の損傷がある。肺胞中隔に線維性物質がやはり検出される。
【0032】
表13。各群において肺線維症の重症度にしたがって分類された動物。
【表13】

【0033】
分かるように、プラセボ群では、グレード0又はグレード1のスケールに含まれる動物はなかった。その大多数は、重症度においてグレード3に分類された。これに反して、投与量IIは、強力な保護効果を示し、50%を超える動物がグレード0と分類された。
【0034】
表14。食塩水又はGHRP−6での処置の終了時の、肺におけるヒドロキシプロリンレベルの評価。
【表14】

【0035】
Bleによって産生される肺線維症の根絶又は回復に対する効果も、肺組織の乾燥サンプルにおけるヒドロキシプロリン含量によって証明され、上記に記載した組織病理学的結果と一致する。
【0036】
現在のところ、それぞれ、2つの肝線維症、1つの腎線維症、及び1つの肺線維症の試験を含めた、4つの独立した実験においてGHRP−6を含む薬剤組成物の強力な抗線維性の効果を支持する証拠が示されている。これらの結果は繰返し可能及び再現可能であり、その疾病原因に関係なく、1つを超える内部臓器におけるこれらのプロセスをコントロールする上での処置の有効性を示している。
【0037】
(実施例5)
脳におけるβ−アミロイドタンパク質の沈着をコントロール及び根絶する上でのGHRP−6を含む薬剤組成物の効果。
この試験は、β−アミロイド前駆タンパク質を発現するトランスジェニックマウスの脳における、生化学的及び形態学的マーカーに対する、GHRP−6の長期投与(8週間)の影響を評価するために行ったものであり、これらのマーカーは、中枢神経系の損傷の進行も示している。現在の試験用に、β−アミロイド前駆タンパク質を発現する、体重20〜25gのAPPトランスジェニックオスマウスを得た。動物(N=30)を:
プラセボ群−生理学的食塩水0.9%
投与量I群−50μg/kg体重のGHRP−6の食塩水溶液
投与量II群−100μg/kg体重のGHRP−6の食塩水溶液に無作為に分配した。8週間の間、1週間に5日、1mlにおいて腹腔内の経路によって処置を適用し、動物にGHRP−6を40回投与した。以前の調査的なパイロット試験から、ストレス下の動物における認知及び運動技能を改善するのに、この期間が十分であることが分かっていた。
【0038】
処置8週間後、マウスを麻酔薬の過剰投与により屠殺し、in situで食塩水溶液で潅流した。脳を抽出し、1つの脳をドライアイスで凍結し、その他を4%中性パラホルムアルデヒドで固定した。サンプルを10μmの凍結切片にし、切片をヘマトキシリン/エオシン、コンゴーレッドで染色し、又はβ−アミロイドタンパク質に特異的な抗体とともにインキュベートした。形態計測の手順を、顕微鏡に接続したカメラによって、顕微鏡画像キャプチャによって行い、画像をDIGIPATソフトウェアで分析した。
【0039】
試験したマーカー
コンゴーレッド染色に陽性のβ−アミロイドタンパク質の原線維の沈着の数。
β−アミロイドタンパク質を認識する抗体に免疫反応性の病巣の数。
200X及び400X倍率で認識された、脳におけるβ−アミロイドプラークのサイズ(μm)。
老化及び脳代謝の悪化の指標としてのミオイノシトールの脳濃度(μmol/組織g)。
【0040】
表15。脳におけるアミロイド沈着除去に対するGHRP−6での処置の効果。
【表15】

【0041】
試験したパラメータに対応する結果は全て表15に示してあり、GHRP−6を含む薬剤組成物の長期間処置の効果を特徴付けている。結果は、1つの脳のデジタル画像の計数を参照していることに注目されたい。この限界を克服するために、計数を、3つの独立した個体によって無分別に行い、結果を5個のスライド観察に対応して示した。表15は、GHRP−6を含む薬剤組成物の、β−アミロイドの蓄積をコントロールすることにおける及び脳の生化学における効果を示している。分かるように、GHRP−6を含む薬剤組成物で8週間処置後、その様々な形態におけるβ−アミロイドの蓄積をコントロールする上で、及びこの臓器の代謝を正す上でも、ポジティブな影響があった可能性が高い。ミオイノシトールの蓄積の低減を特徴とする著しい効果によって、ニューロンのより高いエネルギーの同化作用と栄養との生化学的経路が正常化されることが証明される。これらは、脳の老化プロセスのコントロールに、好ましい臨床上の影響を有し得る。
【0042】
以下の表16では、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスの脳における脂質過酸化のコントロールに及ぼす、GHRP−6を含む薬剤組成物の好ましい効果が実証されている。再び、これらの証拠は、この薬剤組成物の好ましい効果が、疾患及び老化における神経組織の悪化を担うプロセスの1つをコントロールすることを示唆している。
【0043】
表16。脳組織における酸化ストレスマーカー。
【表16】

【0044】
(実施例6)
血管起源の痴呆のコントロールに及ぼす、GHRP−6及び他のペプチドをベースとする薬剤組成物の効果。脳皮質における好濃性物質の根絶。脳の老化プロセスの予防及びコントロール。
この実験は、血管平滑筋細胞においてNOTCH3遺伝子の突然変異型の1つを過剰発現するトランスジェニックマウスにおける中枢神経機能の萎縮に対する、GHRP−6、GHRP−2、ヘキサレリン、又はグレリンペプチドの1つを不明瞭に含む薬剤組成物の有効性を評価するために行った。これらの動物は、数ヶ月の期間において、記述的な記憶に関連し、血管の痴呆症の主な原因の1つとして起こる、CASADIL病の動脈症に類似した動脈症を発症する。これらの動物では、血管の病変には、網膜−大脳の、大脳の、及び蝸牛の脈管障害も含まれる。脳及び血管に存在するβ−アミロイド物質、脳及び髄膜の動脈壁における好濃性の顆粒物質の沈着、並びにその管腔の低減は、組織病理学的に関連がある。蒼白色ゾーン、微小梗塞、及び出血性の病巣のゾーンが、脳及びその主な神経の幹に出現する。
【0045】
疾患の症状が証明された場合、18から20月齢のオスマウスを使用した。動物を以下の実験的処置群:
A−生理学的食塩水溶液を投与するプラセボ群
B−100μg/kg投与量のGHRP−6を投与する群
C−100μg/kg投与量のGHRP−2を投与する群
D−100μg/kg投与量のグレリンを投与する群
E−100μg/kg投与量のヘキサレリンを投与する群
に無作為に割り当てた。
【0046】
16週間の間、週2回、腹腔内の経路によって処置を適用した。処置が終了したとき、処置した大多数の動物に証明された臨床的な改善に関係なく、剖検試験を行った。髄膜組織を含む脳組織サンプルを、生化学的及び組織病理学的判定用に回収した。動物に、麻酔を過剰投与し、冷生理学的食塩水溶液での心臓内潅流を受けさせて、脳に存在する血液を洗い流した。脳を抽出し、1つの脳をドライアイスで凍結し、その他を4%中性パラホルムアルデヒドで固定した。サンプルを10μmの凍結切片にし、切片をヘマトキシリン/エオシン、コンゴーレッドで染色し、又はβ−アミロイドタンパク質に特異的な抗体とともにインキュベートした。形態計測の手順を、顕微鏡に接続したカメラによって、顕微鏡画像キャプチャによって行い、画像をDIGIPATソフトウェアで分析した。
【0047】
試験したマーカー
血管におけるβ−アミロイドの原線維の沈着の数。
皮質下の梗塞の数。
皮質下の出血の数。
老化及び脳代謝の悪化の指標としてのミオイノシトールの脳濃度(μmol/組織g)。
脳の酸化的ストレスマーカー。
【0048】
表17。大脳組織における形態学的判定の結果。
【表17】

【0049】
分かるように、各分泌促進ペプチドでの処置により、原線維のアミロイド(コンゴーレッド)に陽性の動脈、細動脈、及び毛細管の数、並びに好濃性物質の顆粒の沈着(ニッスル染色)が有意に低減した。したがって、白質脳症に関連する皮質下の梗塞及び出血性の病巣の存在は、薬剤組成物で処置した各群で、やはり有意に低減した。
【0050】
表18。脳における酸化ストレスマーカー。
【表18】

【0051】
ペプチドの効果は、ヒトCADSIL病のモデルとしてのトランスジェニックマウスの脳における脂質過酸化のプロセスを試験した場合にも、明らかに証明された。血管の損傷及び梗塞の低減において実証されているように、ここで試験した分泌促進ペプチドは、ヒトの疾患における活性酸素種の生成の増大に関連した神経毒性を低減又は減弱する能力を示し、この生成の増大は、食塩水溶液を投与した動物でも実証されている。この効果は、脳の老化が血管の損傷及び過剰な脂質の過酸化によって媒介される状況にこれらの物質を用いることによって神経保護するという、全般的な神経保護の概念を拡大する。
【0052】
(実施例7)
GHRP−6、GHRP−2、ヘキサレリン、及び/又はグレリンペプチドの、皮膚における生理学的物質の病理学的沈着を根絶する上での効果。
GHRP−6、GHRP−2、ヘキサレリン、及び/又はグレリンペプチドの、皮膚における生理学的物質の病理学的沈着を根絶する上での効果を試験するために、ヒトのケロイドフラグメントを、胸腺欠損マウスの背部領域中に異種移植した。発展72時間後、移植及び異種移植の生存性を確証するために、動物(N=6)を以下の実験群:
A−食塩水コントロール群(有効成分のビヒクル)
B−GHRP−6を投与する群
C−GHRP−2を投与する群
D−グレリンを投与する群
E−ヘキサレリンを投与する群
に無作為に分配した。
【0053】
7日間、24時間毎に、処置を1回適用した。物質を、5マイクログラムから1ミリグラムの投与量で、有効成分の局所的バイオアベイラビリティー用に、埋め込み(インプラント)における縁に浸潤した。処置期間後、動物を屠殺し、埋め込みを抽出して、全物質に対する薬理学的反応を評価した。サンプルの重量を測定し、組織学的試験、及びコラーゲンの生化学的判定用に断片化した。組織学的試験用の断片を、10%中性ホルマリンで固定し、生化学的分析用にこれらのフラグメントを−70℃で貯蔵した。
【0054】
試験したパラメータは:
a−回収した移植片の湿潤重量。
b−組織におけるヒドロキシプロリン含量。
c−ピクロシリウス(picrosirius)赤染色及びマッソントリクローム染色に陽性の組織での顕微鏡の視野数。画像は、4X及び10X倍率で撮影し、各倍率に対してデータを平均した。
d−20X倍率で、アニリンブルー染色に陽性の顕微鏡の視野による肥満細胞の数。
【0055】
表19に示すように、試験下のペプチドは全て、コントロールとしてビヒクルを投与した動物に比べた場合、著しい抗線維性の効果を発揮した。
【0056】
表19。皮膚における処置の抗線維性効果。
【表19】

【0057】
証明されたように、確立された実験系において、全てのペプチドはアッセイを行った投与量で、過剰なコラーゲン物質及び細胞外マトリックスの急性で、速やかな低減、インデューサ細胞(肥満細胞)並びにエフェクター細胞(線維芽細胞及び筋線維芽細胞)の低減を特徴とする、強力な抗線維性の効果を発揮した。第3の浸潤以降、いずれのペプチドを投与した全ての埋め込みがサイズにおいて顕著な低減を示し、蒼白となり、失活したことは、注目すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】GHRP−6での処置の終わりに、1群あたりの腎線維症の損傷を有する動物のパーセントを示す図である。食塩水を投与したプラセボ群と、GHRP−6を投与した群との間に存在する差に注目されたい。プラセボ群を、400μg/kgの投与量を投与した群と比べた場合に最も大きな差が観察され、投与量依存性の効果が示唆される。腎間質における線維増殖性反応の組織学的評価には、線維性の尿細管の封入、及び線維性の糸球体も含まれる。このやり方で、処置の終わりに、罹患又は非罹患の動物のパーセント値を決定するのに用いられた腎線維症全体のグレードが確立される。(a)−GHRP−6の400μg/kg投与量を投与した群とプラセボ群との間の、p<0.001の統計上の差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GHRP−6を含み、レシピエントの生物体の内部臓器及び皮膚からの線維性物質及び過剰の細胞外マトリックスの病理学的沈着を予防し、コントロールし、除去することができることを特徴とする薬剤組成物。
【請求項2】
内部及び外部臓器並びに血管網からの、ヒアリン及びアミロイド物質、顆粒の形態の好酸性及び/又は好濃性物質の細胞内及び細胞外沈着を除去する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
線維性の、アミロイドの、好濃性の、好酸性の、又はヒアリンの物質の過剰な沈着によって冒されているあらゆる内部又は外部臓器又は組織の正常な機能性を回復する、請求項1及び2に記載の組成物。
【請求項4】
動物又は患者に投与する、請求項1から3までに記載の組成物。
【請求項5】
動物又は患者に、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、くも膜下腔内を含めた非経口の経路によって投与するものである、或いは皮膚、粘膜、上皮、若しくは臓器に局所的に、又はより正確に病巣内に浸潤するものである、請求項1から4までに記載の組成物。
【請求項6】
動物又は患者に、直腸内の経路によって投与するものである、請求項1から4までに記載の組成物。
【請求項7】
動物又は患者に、液体、圧迫包帯、又は固体若しくは半固体の製剤として局所経路によって投与するものである、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物を、動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、一般に、ウイルス性肝炎続発症、アルコール依存症、中毒症、自己免疫性又は特発性などの、あらゆる肝臓の疾病原因における線維性物質及び過剰の細胞外マトリックスの沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項9】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、一般に、肺などの臓器における、毒性の、職業性の、薬物関連の、放射性の、自己免疫の、喘息続発症の、アレルギー又は特発性起源の線維性物質及び過剰の細胞外マトリックスの沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項10】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、一般に糖尿病の、毒性の、職業性の、薬物関連の、自己免疫性又は特発性起源の腎硬化症及び/若しくは尿細管硬化症、又は反復性感染の続発症である、線維性の、線維−ヒアリンの、又はアミロイドの物質の沈着、及び腎臓などの臓器における過剰の細胞外マトリックスの沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項11】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、線維性の、線維−ヒアリンの、又はアミロイドの物質の沈着、及び一般に皮膚における自己免疫又は特発症起源の過剰の細胞外マトリックスの沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項12】
動物又は患者に、請求項5及び7に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、線維性の、線維−ヒアリンの、又はアミロイドの物質の沈着、及び皮膚からの過剰の細胞外マトリックス、より正確にはケロイド、肥厚性瘢痕、又は他の形態の過増殖の瘢痕の沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項13】
動物又は患者に、請求項5及び7に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、再建手術、美容外科手術、又は同様の手術後の皮膚の美的外観を修正することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項14】
動物又は患者に、請求項5及び7に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、線維性の、線維−ヒアリンの、又はアミロイドの物質の沈着、及び皮膚からの過剰の細胞外マトリックスの沈着、より正確にはあらゆる形態のざ瘡の線維性の続発症を除去することができる薬剤組成物を製造するための、請求項1から6までに記載のGHRP−6ペプチドの使用。
【請求項15】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、線維性の、線維−ヒアリンの、又はアミロイドの物質の沈着、並びに膵臓及び食道から直腸までの消化管からの過剰の細胞外マトリックスの沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項16】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、線維性の、線維−ヒアリンの、又はアミロイドの物質、及び血管網の過剰の細胞外マトリックスの沈着を除去する、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項17】
脳及び脳細胞における線維性若しくはアミロイド、及び/又は好濃性若しくは好酸性の物質の沈着を除去するために、動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものである、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項18】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、アミロイド及び/又はヒアリンの、並びに/或いは顆粒の形態の、中枢神経系及び髄膜を含む身体の血管網における好酸性及び/又は好濃性の物質の沈着を低減及び/又は除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項19】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、一般に血管壁における、線維性の、アミロイド及び/又はヒアリンの、並びに/或いは顆粒の形態の好酸性及び/又は好濃性物質の沈着を低減及び/又は予防することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項20】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、頭蓋、頭蓋外、感受性、運動神経又は混合神経からの、線維性の、アミロイド及び/又はヒアリンの、及び/又は顆粒の形態の好酸性若しくは好濃性物質の沈着、並びに/或いは自律神経系からのこれらの沈着を除去することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項21】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものであり、一般に血管壁における、線維性の、アミロイドの、及び/又はヒアリンの、並びに/或いは顆粒の形態の好酸性及び/又は好濃性物質の沈着を低減及び/又は予防することができる、請求項1から6までに記載の組成物。
【請求項22】
GHRP−6、又はGHRP−2、又はグレリン、又はヘキサレリンを含むことを特徴とし、細胞、組織、及び全身性の臓器における過剰な脂質過酸化及び酸化ストレスのプロセスを阻止及びコントロールすることができ、動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
特に中枢神経系及び末梢神経において、過剰な脂質過酸化及び酸化ストレスのプロセスを阻止及びコントロールすることができることを特徴し、動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものである、過剰な脂質過酸化及び酸化ストレスのプロセス、又は脳血管系における損傷による脳の老化の過程及び脳機能の悪化を阻止及びコントロールするのに有用な薬剤組成物における、GHRP−6、又はGHRP−2、又はグレリン、又はヘキサレリンペプチドの使用。
【請求項25】
動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものである、過剰な脂質過酸化及び酸化ストレスのプロセス、又は脳血管系における損傷による脳の老化の過程及び脳機能の悪化を阻止及びコントロールするのに有用な薬剤組成物を製造するための、請求項1から6までに記載のGHRP−6、又はGHRP−2、又はグレリン、又はヘキサレリンペプチドの使用。
【請求項26】
中枢及び末梢神経系の細胞又は組織の細胞外間隙における線維性の、アミロイドの、及び/又はヒアリンの、並びに/或いは顆粒の形態の好酸性及び/又は好濃性物質の沈着のプロセスを阻止及びコントロールするのに有用であり、動物又は患者に、請求項5及び6に記載の経路のいずれかによって投与するものである薬剤組成物を製造するための、請求項1から6までに記載のGHRP−6、又はGHRP−2、又はグレリン、又はヘキサレリンペプチドの使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−528302(P2009−528302A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556642(P2008−556642)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/CU2007/000005
【国際公開番号】WO2007/098715
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】