説明

線虫ホスホエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼ様配列

ホスホエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼのポリペプチドをコードする線虫由来の核酸分子が記述される。PEAMT様ポリペプチド配列もまた提供され、同様にしてPEAMT様ヌクレオチドおよびポリペプチドの産生のためのベクター、宿主細胞、および組換え方法も提供される。同様にして記述されるのは、阻害因子および/または活性化因子を同定するためのスクリーニング方法、ならびに抗体産生のための方法である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
線虫(糸を指すギリシャ語に由来する)は、活動的で、しなやかで、細長い、生物であり、土壌内部の水膜および他の生物内部の湿潤組織を含む、湿潤表面にまたは液体環境中に生息する。20,000種の線虫しか同定されていないが、40,000〜1千万種が実際には存在すると推定される。ある種の線虫は、進化して、植物でも動物でも非常にうまくできた寄生虫となり、農業および畜産での著しい経済的損失の原因にならびにヒトでの罹患および死亡の原因になっている(Whitehead (1998) Plant Nematode Control. CAB International, New York)。
【0002】
植物の寄生線虫は、根、生育中の花芽、葉、および茎を含む、植物の全ての部分に寄生し得る。植物寄生虫は、その食性に基づいて広義のカテゴリー: 移住性外部寄生虫、移住性内部寄生虫、および定住性内部寄生虫に分類される。ネコブセンチュウ(メロイドジン(Meloidogyne))およびシストセンチュウ(グロボデラ(Globodera)およびヘテロデラ(Heterodera))を含む、定住性内部寄生虫は、摂食部位を導入して、根のなかで長期感染を確立し、これが作物にかなりの損傷となる場合が多い(Whitehead、前記)。寄生線虫は、全ての主要作物にわたる毎年の平均損失が12%との推定に基づき、園芸産業および農産業に、世界規模で一年に780億ドルを超える費用負担をかけていると推定される。例えば、線虫は、毎年世界規模でおよそ32億ドルの大豆被害をもたらすと推定される(Barkerら、(1994) Plant and Soil Nematodes : Societal Impact and Focus for the Future. The Committee on National Needs and Priorities in Nematology. Cooperative State Research Service, US Department of Agriculture and Society of Nematologists)。いくつかの要因により、安全かつ効果的な線虫制御の必要性が急務となっている。継続的な人口増加、飢饉、および環境悪化により、農業の持続可能性に対する関心が高まっており、新たな政府規制によって、多くの利用可能な農業用駆虫薬の使用が抑制されるまたは厳しく制限される可能性がある。
【0003】
線虫を制御するのに使用できる化学物質はほとんどない(Becker (1999) Agricultural Research Magazine 47(3):22〜24; 米国特許第6,048,714号)。それにもかかわらず、線虫駆除化学薬品の適用は、依然として主要な線虫制御手段のままである。一般に、線虫駆除化学薬品は、多大な環境破壊を引き起こすことが知られている毒性の強い化合物であり、その結果、これらを使用できる量および場所がますます制限されている。例えば、さまざまな特殊作物における線虫侵入を減らすために効果的に使用されている土壌燻蒸剤の臭化メチルは、オゾン層破壊物質として国連モントリオール議定書に基づいて規制されており、米国では2005年に廃止の予定である(Carter(2001) California Agriculture, 55(3):2)。イチゴおよび他の商品作物の業界は、臭化メチルの適当な代替品が見つからない場合、多大な影響を受けるものと予想される。同様に、Telone(1,3-ジクロロプロペンのさまざまな剤形)のような広域スペクトラムの線虫駆除薬は、毒性に対する懸念のため、その適用にはかなりの規制がある(Carter (2001) California Agriculture, Vol.55(3):12〜18)。
【0004】
大環状ラクトン(例えば、アバメクチン(avermectin)およびミルベマイシン(milbemycin))およびバチルススリンジエンシス(Bacillus thuringiensis(Bt))由来のδ毒素は、原理的には、卓越した特異性および有効性を示す化学物質であり、植物寄生性線虫の環境的に安全な制御を可能とするはずである。残念ながら、実際には、これらの二つの線虫駆除薬は、根の病原体に対する農業利用には効果が低いことが証明されている。ある種のアバメクチン(avermectin)は、植物寄生性線虫に対して非常に強い活性を示すが、これらの化学物質は、その光感受性、土壌微生物による分解および土壌粒子との強固な結合に起因する低い生物学的利用能により制限される(LasotaとDybas (1990) Acta Leiden 59(1〜2):217〜225; WrightとPerry (1998) Musculature and Neurobiology. The Physiology and Biochemistry of Free-Living and Plant-parasitic Nematodes (R. N. PerryとD.J. Wright編)中、CAB International 1998)。結果的には、長年の研究や動物寄生性線虫、ダニおよび昆虫に対する広範な用途(植物および動物に適用)にもかかわらず、大環状ラクトン(例えば、アバメクチン(avermectin)およびミルベマイシン(milbemycin))は、土壌中の植物寄生性線虫を制御するのに一度も商業的に開発されていない。
【0005】
Btδ毒素は、その標的器官である中腸上皮細胞の刷子縁に影響を及ぼすには、取り込まれる必要がある(Marroquinら、(2000) Genetics. 155(4):1693〜1699)。従って、これらの毒素は、野外の植物寄生性線虫の拡散性で非摂取性の、幼虫期に対して有効であるとは予測されない。幼虫期には、感受性宿主に感染した場合に摂取を開始するのみであるため、線虫駆除薬が、有効であるには植物外皮に浸透する必要がある可能性がある。典型的なBtδ毒素の大きさである、65〜130 kDaのタンパク質の経外皮的な取り込みは、起こりそうにない。さらに、土壌での移動性は、比較的低いと予想される。遺伝子組換え手法でさえもBtδ毒素の大きさにより制限される。これは、インプランタ(in planta)輸送は、ヘテロデラ(Heterodera)のようなある種の植物寄生性線虫の栄養管による大粒子の排除によって制約される可能性が高いためである(Atkinsonら、(1998) Engineering resistance to plant-parasitic nematodes. The Physiology and Biochemistry of Free-Living and Plant-parasitic Nematodes (R.N. PerryとD.J. Wright編)中、 CAB International 1998)。
【0006】
脂肪酸は、有毒で、非特異的な有機リン殺虫剤、カルバメイト殺虫剤および燻蒸殺虫剤の代替物として調査されてきた天然化合物類である(Stadlerら、(1994) Planta Medica 60(2):128〜132; 米国特許第5,192,546号; 米国特許第5,346,698号; 米国特許第5,674,897号; 米国特許第5,698,592号; 米国特許第6,124,359号)。脂肪酸は、界面活性(可溶化)効果を介して、または脂肪酸と標的原形質膜の親油性領域との直接的な相互作用を通して、線虫の表皮または下皮に不利益な影響を与えることによりその農薬効果をもたらすことが示唆されている(Davisら、(1997) Journal of Nematology 29(4S):677〜684)。この予測される作用機序を考慮すれば、脂肪酸が、除草剤(例えば、Dow AgroscienceによるSCYTHEは、C9飽和脂肪酸のペラルゴン酸である)、殺菌剤(bactericide)および殺真菌剤(fungicide) (米国特許第4,771,571号; 米国特許第5,246,716号)ならびに殺虫剤(例えば、Safer社によるSAFER INSECTICIDAL SOAP)のようなものを含む、さまざまな農薬用途に使用されていることは驚くべきことではない。
【0007】
脂肪酸の薬害は、植え付け後の農業用途でのその一般的利用に対する大きな制約となっており(米国特許第5,093,124号)、これらの好ましくない影響の軽減と同時に農薬活性を保持することが、重要な研究分野である。野外条件下では脂肪酸の半減期が比較的短いので、植え付け後の使用が望ましい。
【0008】
脂肪酸のエステル化により、その薬害がかなり軽減される可能性がある(米国特許第5,674,897号; 米国特許第5,698,592号; 米国特許第6,124,359号)。しかしながら、そのような修飾により、リノール酸、リノレン酸およびオレイン酸に対して見られるような、殺線虫活性の消失につながる可能性があり(Stadlerら、(1994) Planta Medica 60(2):128〜132)、またその非特異的な作用機序のため、農薬脂肪酸の薬害と殺線虫活性とを完全に切り離すことは不可能である場合がある。恐らく驚くことではないが、殺線虫脂肪酸のペラルゴン酸メチルエステル(米国特許第5,674,897号; 米国特許第5,698,592号; 米国特許第6,124,359号)は、農薬活性の発現から有意な薬害が観測されるまでの「治療濃度域」が比較的狭いDavisら、(1997) J Nematol 29(4S):677〜684)。薬害と殺線虫活性の両方が原形質膜の完全性の非特異的な破壊から生じる場合、これは予想される結果である。
【0009】
ヒマシ油の主要生物であるリシノール酸は、水分および電解質吸収に対して阻害作用を有することがハムスターの裏返した空腸部分および回腸部分を使って示されている(Gaginellaら、(1975) J Pharmacol Exp Ther 195(2):355〜61)、および単離した腸上皮細胞に対して細胞傷害性であることが示されている(Gaginellaら、(1977) J Pharmacol Exp Ther 201(1):259〜66)。これらの特徴がヒマシ油の緩下作用の原因である可能性が高く、これはヒトおよび家畜で下剤として投与される(例えば、ヒマシ油は、その緩下作用から、いくつかの線虫除去手順の構成要素である)。対照的に、リシノール酸のメチルエステルは、ハムスターモデルにおいて水分吸収の抑制に効果がない(Gaginellaら、(1975) J Pharmacol Exp Ther 195(2):355〜61)。
【0010】
多くの植物種は、線虫に極めて抵抗性であることが知られている。これらのうち最も実証されているものには、マリゴールド(タゲテス属(Tagetes spp.))、タヌキマメ(クロタラリア・セペクタビリス(Crotalaria spectabilis))、キク(クリサンテムム属(Chrysanthemum spp.))、トウゴマ(リシナス・コムニス(Ricinus communis))、インドセンダン(アザルディラクタ・インディカ(Azardiracta indica))、およびキク(Asteraceae)科(キク(Compositae)科)の多くのメンバーが含まれる(HackneyとDickerson. (1975) J Nematol 7(1):84〜90)。キク(Asteraceae)の場合には、光力学的な化合物α-テルチエニルが、根の強力な殺線虫活性の主な原因となることが示されている。トウゴマは、作物種子を植える前に、緑肥として埋められる。しかしながら、トウゴマ植物の重大な難点は、その種にヒト、ペット、および家畜を殺傷し得る有毒化合物(例えば、リシン)が含まれることであり、かつ同様にアレルギー性が非常に高い。しかしながら、多くの場合、植物の殺線虫活性の(1つまたは複数の)有効成分は発見されておらず、これらの抵抗性植物から商業的に功を奏する殺線虫産物を得ることまたはその抵抗性を作物学的に重要な作物、例えば、大豆および綿に移すことは依然として困難なままである。
【0011】
ある種の線虫に対する遺伝的抵抗性は、いくつかの市販の品種(例えば、大豆)で使用できるが、これは数が限られており、所望の実用形質も抵抗性も有する品種の利用可能性は限定されている。雌雄交配を介した遺伝子組換えに基づく従来の品種改良によって、線虫抵抗性の実用品種を産生することは、時間のかかる工程であり、適当な生殖質がないことでさらに制限される場合が多い。
【0012】
環境保護上安全で、標的特異的な、植物寄生性線虫の制御方法を開発する差し迫った必要性が依然として存在する。特殊作物市場では、線虫侵入から生ずる経済的苦難は、イチゴ、バナナ、ならびにその他の高価な野菜および果物で最も高い。高地所作物の市場の場合、線虫被害は、大豆および綿で最も大きい。しかしながら、ポテト、コショウ、タマネギ、柑橘類、コーヒー、サトウキビ、温室装飾品およびゴルフ場の芝草を含む、線虫侵入に悩まされる数十のさらなる作物が存在する。
【0013】
脊椎動物(例えば、ヒト、家畜およびペット)の寄生性線虫には、腸回虫、鉤虫、蟯虫、鞭虫、および糸状虫が含まれる。これらは、水質汚染、皮膚浸透、刺咬昆虫によるもの、または汚染食品の摂取によるものを含む、さまざまな方法で感染することができる。
【0014】
家畜の場合、線虫制御または「線虫除去」は、家畜生産者の経済的継続性に不可欠であり、ペットの獣医学的管理の必要不可欠な要素である。寄生性線虫は、感染動物が栄養素を吸収する能力をその寄生虫が阻害する結果、動物に死(例えば、イヌおよびネコの糸状虫)および罹患をもたらす。寄生虫による栄養不足により、家畜およびペットに病気や発育不全が起こる。例えば、畜牛および酪農用家畜の群れの場合、オステルターグ胃虫による単回の未処置感染により、餌を筋量またはミルクに変換する動物の能力を不変的に制限することができる。
【0015】
二つの要因が、動物寄生性線虫を制御する新たな駆虫薬およびワクチンに対する必要性の一因となっている。第一に、家畜の寄生性線虫のうちでいっそう蔓延している種のいくつかは、現在使用できる駆虫薬に対する抵抗性を構築しつつあり、このことは、これらの製品がいずれその有効性を失うことを意味している。使用できる効果的な駆虫薬はわずかであり、大部分が絶え間なく使用されてきたので、これらの成り行きは驚くことではない。寄生虫の種のなかには、大部分の駆虫薬に対する抵抗性を構築したものがいる(Geentsら、(1997) Parasitology Today 13:149〜151; Prichard (1994) Veterinary Parasitology 54:259〜268)。多くの駆虫薬が類似した作用機序を有するという事実は、ある薬剤に対する寄生虫の感受性の消失が、副次的な抵抗性、すなわち、同じ部類の他の薬剤に対する抵抗性に付随して起こるので、事態を悪化させている(SangsterとGill (1999) Parasitology Today 15(4):141〜146)。第二に、現在使用できる主な化合物に対する毒性の問題がある。
【0016】
寄生性線虫による感染が、特にアフリカ、アジア、およびアメリカの熱帯地方において、かなりのヒトの死亡および罹患をもたらしている。世界保健機関によれば、29億人が感染し、ある地方では、人口の85%が線虫に感染していると推定されている。死亡率は感染率の割には稀であるものの、罹患率はかなり高く、世界的規模の障害調整生命年(DALY)の計測では、糖尿病や肺がんに匹敵する。
【0017】
ヒト寄生性線虫の例には、鉤虫、糸状虫、および蟯虫が含まれる。鉤虫(13億人が感染)は、数百万人の子供における貧血症の主な原因であり、発育遅延および認知発達の障害をもたらす。糸状虫類は、リンパ系に侵入して、不変的に膨張および変形した四肢(象皮病)を引き起こしたり、目に侵入して、アフリカ河川盲目症を引き起こす。大回虫のアリカリス・ランブリコイデス(Ascaris lumbricoides)は、世界中で10億を越えるの人々に感染し、栄養失調症および閉鎖性腸疾患を引き起こしている。先進国の場合、蟯虫がよく見られ、保育所で子供を介して伝染することが多い。
【0018】
無症候性の寄生虫感染症でさえ、線虫は、やはり大切な栄養素を宿主から奪い、その他の生物が二次感染を確立する能力を高める可能性がある。多くの場合、感染症により、消耗性疾患が引き起こされる可能性があり、貧血症、下痢、脱水症、食欲不振、または死にいたる可能性がある。
【0019】
薬剤の利用可能性および公衆衛生のインフラ整備がいくらか進展しているならびにある熱帯性の線虫(水系のギニア虫)がほぼ撲滅されているにもかかわらず、大部分の線虫病は、依然として扱いにくい問題のままである。例えば、駆虫薬による鉤虫病の治療では、急な再感染が治療後に起こるので、発症率の高い地域では十分な制御が実現されていない。実際に、この50年間、線虫感染率は米国、欧州、および日本では低下しているが、世界規模での全体的な感染数は、世界人口の増加に追随している。現在利用可能な手段を用いて線虫感染症を制御することを試みて、地域政府、世界保健機関、財団法人、および製薬会社による大規模イニシアチブが現在進行中であって、これらにはイベルメクチンおよび対照ベクターを使用した、アフリカおよびアメリカでの回旋糸状虫症(河川盲目症)の制御のための三つの計画; DEC、アルベンダゾール、およびイベルメクチンを使用した、リンパ管フィラリア症を撲滅するための地球規模の提携; ならびに大成功のギニア虫根絶計画が含まれる。安全かつ有効なワクチンが発見されて、寄生性線虫による感染が予防されるまで、駆虫薬が継続使用されて、ヒトと家畜の両方での寄生性線虫による感染が制御かつ治療されるものと思われる。
【0020】
寄生性線虫に対する効果的な化合物およびワクチンの発見は、寄生虫が実験室での培養に従順ではなかったという事実により困難とされてきた。寄生性線虫は、世代時間が緩徐な偏性寄生生物(すなわち、それらは、それぞれの宿主のなかで、例えば、植物、動物、および/またはヒトのなかで唯一生存できる)であることが多い。このように、それらは人工的な条件下で増殖し難く、遺伝的および分子的実験を困難または不可能としている。これらの制約を回避するため、科学者たちにより、寄生性線虫の発見努力に向けたモデル系としてカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabidits elegans)が使用されている。
【0021】
C.エレガンス(C.elegans)は、長年、多細胞動物に対する重要なモデル系として役立ってきた、小さな自由生活細菌食性線虫(bacteriovorous nematode)である(Burglin (1998) Int. J. Parasitol. 28(3):395〜411)。C.エレガンス(C.elegans)のゲノムは、完全に配列決定されており、かつこの線虫は、脊椎動物と多くの一般的な発生過程および基本的な細胞過程を共有する(Ruvkinら、(1998) Science 282:2033〜41)。その緩徐な世代時間および培養の容易さに加えて、これにより、この線虫が高等真核生物に対する選択のモデル系となった(Aboobakerら、(2000) Ann. Med. 32:23〜30)。
【0022】
C.エレガンス(C.elegans)は、脊椎動物に対する良好なモデル系として役立つが、C.エレガンス(C.elegans)および他の線虫は、脊椎動物には見られない独自の生物学的過程を共有するので、寄生性線虫のさらに良好な研究用モデルとなる。例えば、脊椎動物とは異なり、線虫は、キチンを産生かつ使用し、コネキシンではなくイネキシンから成るギャップ結合を有し、グリシン依存性塩素チャネルではなくグルタミン酸依存性塩素チャネルを含む(Bargmann (1998) Science 282:2028〜33)。アバメクチン類の薬剤がグルタミン酸依存性塩素受容体で作用すると考えられることや無脊椎動物に対して選択性が高いことを考えれば、後者の特性は、特に関連性がある(Martin (1997) Vet. J. 154:11〜34)。
【0023】
線虫特異的な過程に関与する遺伝子の一部は、線虫では保存されており、他の門では欠けているかまたは相同体とかなり異なっているものと思われる。換言すれば、線虫に特有な機能と関連している少なくともいくつかの遺伝子は、系統発生的な分布を制限しているものと予想される。C.エレガンス(C.elegans)のゲノムプロジェクトの完了および多数の線虫由来の発現配列タグ(EST)のデータベースの増大により、これらの「線虫特異的な」遺伝子の同定が促進される。さらに、線虫特異的な過程に関与する保存遺伝子は、異なる線虫で同じまたは非常に類似した機能を保持すると予想される。この機能的等価性が、多くの場合、C.エレガンス(C.elegans)に他の線虫由来の相同遺伝子を形質導入することにより証明されている(Kwaら、(1995) J. Mol. Biol. 246:500〜10; Redmondら、(2001) Mol. Biochem. Parasitol. 112:125〜131)。この類の機能的な保存は同様に、保存遺伝子に対する門の交差比較でも示されており、門のなかの種の間でより強固であると予想される。従って、C.エレガンス(C.elegans)および他の自由生活線虫種は、線虫の保存過程に関する寄生線虫の優れた代理物となる可能性が高い。
【0024】
C.エレガンス(C.elegans)の多くの発現遺伝子およびその他の自由生活線虫のある種の遺伝子は、線虫における遺伝子機能を研究するための強力な実験手段となる技術である、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる方法により遺伝的に「ノックアウト」することができる(Fireら、(1998) Nature 391 (6669):806〜811; Montgomeryら、(1998) Proc. Natl. Acad Sci USA 95(26):15502〜15507)。選択遺伝子の二本鎖RNAを用いて線虫を処理することで、その選択遺伝子に相当する発現配列を破壊することができ、従って、対応するタンパク質の発現を低下させることができる。特定のタンパク質の翻訳を阻害することにより、線虫に対するその機能的な重要性および不可欠性を評価することができる。C.エレガンス(C.elegans)をモデル系として用いた必須遺伝子およびその対応アミノ酸の決定により、抗寄生虫性の線虫制御薬の合理的設計が補助されるものと思われる。
【発明の開示】
【0025】
概要
本発明は、アリカリス・スーム(Ascaris suum)、ヘモンクス・コントルタス(Haemonchus contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(Strongyloides stercoralis)のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様(PEAMT様)タンパク質をコードする核酸分子を特徴とする。アリカリス・スーム(A. suum)は、ブタの大回虫であり、主要なヒト病原体のアリカリス・ランブリコイデス(Ascaris lumbricoides)の近縁種である。ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)は、反芻動物(ヒツジ、ヤギ、ウシおよび他の野生の反芻動物)の寄生虫であり、衰弱、貧血およびある場合には死をもたらす。従って、これは重大な経済的損害にあたる。ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびサツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)は、根瘤線虫であり、綿、タバコ、コショウ、およびトマトを含む、いくつかの作物に実質的損害をもたらす。ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)は、寄生線虫であり、ヒト、霊長類、およびイヌに感染する。これは、その宿主内部で繁殖し得る、かつ免疫不全個体のなかで野放しに増殖し得る数少ない線虫のうちの一つである。
【0026】
本発明のPEAMT様の核酸およびポリペプチドにより、線虫種の同定が可能とされる。本発明の核酸およびポリペプチドにより同様に、PEAMT様ポリペプチドに結合するかまたはPEAMT様ポリペプチドの活性を変化させる化合物の同定が可能とされる。そのような化合物は、線虫により引き起こされる病気および侵襲、特に、ブタではアリカリス・スーム(A. suum)、ヒトではアリカリス・ランブリコイデス(A. lumbricoides)およびさまざまな動物では他の回虫種、反芻動物ではヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、(例えば、タバコ、綿、コショウ、トマトの木では)ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびサツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)ならびに(例えば、ヒト、霊長類およびイヌでは)ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)により引き起こされる病気および侵襲に対抗するための手段が提供され得る。
【0027】
本発明は、部分的には、アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT1 (配列番号:1)をコードするcDNAの同定に基づく。この1786個のヌクレオチドのcDNAは、アミノ酸460個のポリペプチド(配列番号:7)をコードする1380個のヌクレオチドの読み取り枠(配列番号:13)を有する。
【0028】
本発明は同様に、部分的には、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) PEAMT1 (配列番号:2)をコードするcDNAの同定に基づく。この1669個のヌクレオチドのcDNAは、アミノ酸460個のポリペプチド(配列番号:8)をコードする1380個のヌクレオチドの読み取り枠(配列番号:14)を有する。
【0029】
本発明は同様に、部分的には、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) PEAMT1 (配列番号:3)をコードするcDNAの同定に基づく。この1472個のヌクレオチドのcDNAは、アミノ酸457個のポリペプチド(配列番号:9)をコードする1371個のヌクレオチドの読み取り枠(配列番号:15)を有する。
【0030】
本発明は、部分的には、ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis) PEAMT1 (配列番号:4)をコードするcDNAの同定に基づく。この1580個のヌクレオチドのcDNAは、アミノ酸469個のポリペプチド(配列番号:10)をコードする1407個のヌクレオチドの読み取り枠(配列番号:16)を有する。
【0031】
本発明は同様に、部分的には、アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT2 (配列番号:5)をコードするcDNAの同定に基づく。この1533個のヌクレオチドのcDNAは、アミノ酸437個のポリペプチド(配列番号:11)をコードする1311個のヌクレオチドの読み取り枠(配列番号:17)を有する。
【0032】
本発明は、部分的には、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica) PEAMT2 (配列番号:6)をコードするcDNAの同定に基づく。この1534個のヌクレオチドのcDNAは、アミノ酸472個のポリペプチド(配列番号:12)をコードする1416個のヌクレオチドの読み取り枠(配列番号:18)を有する。
【0033】
一つの局面として、本発明は、新規の線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドを特徴とする。そのようなポリペプチドには、配列番号:7、8、9、10、11または12に記載のアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドが含まれる。同様にして含まれるのは、配列番号:7、8、9、10、11および/または12に少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドならびに配列番号:7、8、9、10、11または12の配列と20残基、15残基、10残基、9残基、8残基、7残基、6残基、5残基、4残基、3残基、2残基、または1残基(アミノ酸)異なる配列を有するポリペプチドである。精製ポリペプチドは、線虫の遺伝子、例えば、C.エレガンス(C. elegans)以外の線虫の遺伝子によりコードされ得る。例えば、精製ポリペプチドは、配列番号:19、20、または21(C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1様またはPEAMT2様タンパク質)以外の配列を有する。精製ポリペプチドは、異種アミノ酸配列、例えば、アミノ末端配列またはカルボキシ末端配列をさらに含むことができる。同様にして特徴とされるのは、上述のPEAMT様ポリペプチドの精製ポリペプチド断片、例えば、少なくとも約20アミノ酸、30アミノ酸、40アミノ酸、50アミノ酸、75アミノ酸、85アミノ酸、104アミノ酸、106アミノ酸、113アミノ酸、150アミノ酸、200アミノ酸、250アミノ酸、300アミノ酸、350アミノ酸、400アミノ酸、450アミノ酸または470アミノ酸の断片である。そのような断片の非限定的な例には: 配列番号:7、8、9、10、11および12のアミノ酸約1〜50、1〜75、1〜89、1〜91、1〜99、1〜100、1〜125、51〜113、93〜104、99〜113、93〜106、228〜262、250〜280、290〜322、および317〜352の断片が含まれる。ポリペプチドまたはその断片は、例えば、加工できる、切断できる、改変できる(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリスチル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化、グリセロホスファチジル・イノシトールの付加により)、またはこれらを任意に組み合わせて、修飾できる。ある種のPEAMT様ポリペプチドには、400個、425個、450個、475個、500個またはそれより少ない個数のアミノ酸からなる配列が含まれる。
【0034】
本発明は同様に、そのようなポリペプチドを含む、本質的にそのようなポリペプチドからなるまたはそのようなポリペプチドからなる、ポリペプチドを特徴とする。
【0035】
別の局面として、本発明は、線虫PEAMT様ポリペプチドをコードする新規の単離核酸分子を特徴とする。そのような単離核酸分子には、配列番号:1、2、3、4、5および6または配列番号:13、14、15、16、17および18に記載のヌクレオチド配列を含む、本質的にその配列からなる、またはその配列からなる核酸が含まれる。同様にして含まれるのは、線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様遺伝子(C.エレガンス(C. elegans)PEAMT様遺伝子以外)と同じ配列を有するまたはその遺伝子と同じポリペプチドをコードする単離核酸分子である。
【0036】
同様にして特徴とされるのは: 1) 配列番号:1、2、3、4、5および/もしくは6、またはその相補体の配列の一本鎖プローブに低いストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする、および選択的に、アミノ酸400〜500個のポリペプチドをコードする鎖を有する単離核酸分子; 2) 配列番号:1、2、3、4、5および/もしくは6またはその相補体の配列の一本鎖プローブに高いストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする、および選択的に、アミノ酸400〜500個のポリペプチドをコードする鎖を有する単離核酸分子; 3) PEAMT様核酸分子の単離核酸断片、例えば、約500、750、1000、1250、1500、1750またはそれ以上のヌクレオチド長のまたはそのような長さに及ぶ、配列番号:1、2、3、4、5および/または6の断片; ならびに4) PEAMT様核酸分子またはPEAMT様核酸の相補体に相補的なオリゴヌクレオチド、例えば、約10、15、18、20、22、24、28、30、35、40、50、60、70、80、またはそれ以上のヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである。典型的なオリゴヌクレオチドは、配列番号:1、2、3、4、5および/または6のヌクレオチドおよそ1〜24、1〜48、1〜60、1〜120、24〜48、24〜60、49〜60、61〜180、381〜420、421〜480、451〜466、451〜489、451〜516、500〜1450間に位置する部位にアニールするオリゴヌクレオチドである。核酸断片には、以下の非限定的な例: 配列番号:1、2、3、4、5および/または6のヌクレオチドおよそ1〜200、100〜300、200〜400、300〜500、300〜466、300〜516、300〜489、489〜1450が含まれる。配列番号:1、2、3、4、5または6からなる核酸分子にストリンジェントな条件の下でハイブリダイズし且つ3,000、2,000、1,000またはそれより少ないヌクレオチドを含む、核酸分子も同様に本発明の範囲内である。単離核酸は、PEAMT様核酸分子に動作可能に連結された、異種プロモーターまたは細胞(例えば、哺乳類細胞または真核生物細胞もしくは原核生物細胞)での核酸分子の転写もしくは翻訳に必要な他の配列をさらに含むことができる。単離核酸分子は、PEAMT酵素活性を有するポリペプチドをコードすることができる。従って、以下でさらに詳細に説明するように、PEAMT1酵素活性を有するポリペプチドは、モノメチルエタノールアミンへのエタノールアミンの変換を触媒することができ、PEAMT2酵素活性を有するポリペプチドは、ジメチルエタノールアミンへのモノメチルエタノールアミンの変換およびコリンへのジメチルエタノールアミンの変換を触媒する。
【0037】
本明細書で特徴とされる分子は、アレオライムス(Araeolaimida)目、カイチュウ(Ascaridida)目、クロマドラ(Chromadorida)目、デスモドラ(Desmodorida)目、ディプロガスタ(Diplogasterida)目、モンヒステラ(Monhysterida)目、モノンクス(Mononchida)目、オキシウリス(Oxyurida)目、レゴネマチダ(Rhigonematida)目、センビセンチュウ(Spirurida)目、エノプルス(Enoplia)目、デスモスコレクス(Desmoscolecidae)目、カンセンチュウ(Rhabditida)目、またはクキセンチュウ(Tylenchida)目の線虫由来とすることができる。または、その分子は、カンセンチュウ(Rhabditida)目の種、特にC.エレガンス(C. elegans)またはC.ブリグサエ(C. briggsae)以外の種由来とすることができる。
【0038】
別の局面として、本発明は、ベクター、例えば、前述の核酸を含むベクターを特徴とする。ベクターは、一つまたは複数の調節要素、例えば、異種プロモーターまたは翻訳に必要な要素をさらに含むことができる。調節要素をホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様核酸分子に動作可能に連結して、PEAMT様核酸分子を発現させることができる。さらに別の局面として、本発明は、そのゲノム中に前述のPEAMT様核酸分子および異種核酸、例えば、異種プロモーターを含有する導入遺伝子を有する、遺伝子導入細胞または遺伝子導入生物を特徴とする。
【0039】
さらに別の局面として、本発明は、抗体(例えば、前述のポリペプチドに特異的に結合する、抗体、抗体断片、またはその誘導体)を特徴とする。そのような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体とすることができる。抗体は、修飾する(例えば、ヒト化する、一本鎖として再構成する、またはCDR移植する)ことができる。抗体は、PEAMT様ポリペプチド由来の断片、ペプチド、または不連続のエピトープに対して作製することができる。
【0040】
別の局面として、本発明は、線虫PEAMT様ポリペプチド、例えば、前述のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニング方法を特徴とする。この方法には、線虫のポリペプチドを提供する段階; ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および線虫のポリペプチドとの試験化合物の結合を検出する段階が含まれる。一つの態様として、この方法には、哺乳類のPEAMT様ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階および哺乳類のPEAMT様ポリペプチドとの試験化合物の結合を検出する段階がさらに含まれる。哺乳類(例えば、ヒト)PEAMT様ポリペプチドに対する親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍高い親和性で線虫PEAMT様ポリペプチドに結合する試験化合物を同定することができる。
【0041】
本発明は同様に、線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドの活性を変化させる(増加させるまたは低下させる)化合物を同定するための方法を特徴とする。この方法には、線虫PEAMT様ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階およびPEAMT様活性を検出する段階が含まれる。試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT様活性のレベルに対するポリペプチドのPEAMT様活性のレベルの低下は、試験化合物がPEAMT様活性の阻害剤であることの指標である。さらに別の態様として、この方法には、アロステリック阻害剤または他の分子もしくはタンパク質とのPEAMT様ポリペプチドの結合を阻止する他のタイプの阻害剤のような試験化合物を接触させる段階がさらに含まれる。そのような阻害化合物は、PEAMT様ポリペプチドを発現する線虫、例えば、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)の生存度を低下させる潜在的な選択薬剤である。これらの方法には同様に、化合物を植物(例えば、ホウレンソウ)のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドと接触させる段階; およびPEAMT様活性を検出する段階が含まれる。植物PEAMT様ポリペプチドの活性を低下させるよりもいっそう高い度合いで線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼの活性を低下させる化合物が、線虫のポリペプチドの選択的阻害剤として有用とできるものと思われる。所望の化合物は、線虫のポリペプチドに対し2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはそれ以上の選択活性を示すことができる。
【0042】
別の特徴とされる方法は、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドの活性を変化させる(増加させるまたは低下させる)かまたはPEAMTによる他のポリペプチドの結合もしくは調節を変化させる化合物のスクリーニング方法である。この方法は、ポリペプチドを提供する段階; ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; およびPEAMT様活性またはPEAMTが結合するもしくは調節するポリペプチドの活性を検出し、その際に、PEAMT様ポリペプチドまたは他の下流のポリペプチドの活性の、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドまたは下流のポリペプチドのPEAMT様活性に対する変化が、試験化合物が(1つまたは複数の)ポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階を含む。この方法は、植物(例えば、ホウレンソウ)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼポリペプチドに試験化合物を接触させる段階および植物PEAMTポリペプチドのメチルトランスフェラーゼ活性を測定する段階をさらに含むことができる。線虫PEAMT様ポリペプチドの活性を所定の濃度で変化させかつ植物メチルトランスフェラーゼポリペプチドまたは下流のポリペプチドの活性をその所定の濃度で実質的に変化させない試験化合物を同定することができる。さらなる方法には、PEAMT様ポリペプチドとの結合およびPEAMT様ポリペプチドの活性変化の両者に対するスクリーニングが含まれる。さらに別の特徴とされる方法は、遺伝子導入細胞もしくは生物または線虫の生存度または適応度を変化させる(増加させるまたは低下させる)化合物のスクリーニング方法である。遺伝子導入細胞または生物は、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドを発現する導入遺伝子を有する。この方法には、遺伝子導入細胞または生物に試験化合物を接触させる段階および遺伝子導入細胞または生物の生存度または適応度の変化を検出する段階が含まれる。生存度または適応度のこの変化を、導入遺伝子を持たないほかの同一細胞または生物に対して測定することができる。
【0043】
同様にして特徴とされるのは、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドをコードする線虫の核酸、例えば、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)PEAMT様ポリペプチドをコードする核酸の発現を変化させる化合物のスクリーニング方法である。この方法には、細胞、例えば、線虫細胞を試験化合物と接触させる段階および例えば、PEAMT様ポリペプチドをコードする線虫の核酸に相補的なプローブとのハイブリダイゼーションによりまたは化合物、例えば、PEAMT様ポリペプチドに結合する抗体との細胞から単離されたポリペプチドの接触により、PEAMT様ポリペプチドをコードする線虫の核酸の発現を検出する段階が含まれる。この方法により同定される化合物も同様に、本発明の範囲内である。
【0044】
さらに別の局面として、本発明は、被検体、例えば、宿主植物または宿主動物において、線虫、例えば、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)により引き起こされる疾患(例えば、感染症)の処置方法を特徴とする。この方法には、PEAMT様ポリペプチド活性の阻害剤またはPEAMT様ポリペプチドの発現の阻害剤の有効量を被検体に投与する段階が含まれる。そのような阻害剤の非限定的な例には: PEAMT様核酸に対するアンチセンス核酸(またはPNA)、PEAMT様ポリペプチドに対する抗体、または本明細書に記載の方法によりPEAMT様ポリペプチド阻害剤と同定される小分子が含まれる。
【0045】
本明細書では、「精製ポリペプチド」とは、このポリペプチドにもともと結び付いている他のタンパク質、脂質、および核酸から単離されたポリペプチドを指す。このポリペプチドは、乾燥重量で精製調製物の少なくとも10%、20%、50%、70%、80%または95%に相当することができる。
【0046】
「単離核酸」とは、その構造が、天然に存在する任意の核酸の構造と、または4個またはそれ以上の別個の遺伝子に及ぶ、天然に存在するゲノム核酸の任意の断片の構造と同一でない、核酸である。従って、この用語には、例えば: (a) 天然に存在するゲノムDNA分子の一部であるがしかしそれ(DNA)がもともと存在している生物のゲノム中でその(DNA)分子部分に隣接する両側の核酸配列に隣接されていないDNA; (b) 得られる分子が天然に存在する任意のベクターまたはゲノムDNAと同一にならないように、ベクター中へまたは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中へ組み込まれた核酸; (c) cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生される断片、または制限断片のような分離分子; および(d) ハイブリッド遺伝子、すなわち、融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列が網羅される。この定義から明確に除外されるものは、異なる、(i) DNA分子、(ii) 形質移入細胞、または(iii) cDNAもしくはゲノムDNAライブラリーのようなDNAライブラリー中の細胞クローンの混合物のなかに存在する核酸である。本発明による単離核酸分子には、合成により産生された分子、ならびに化学的に変化されているおよび/または改変された骨格を有する、任意の核酸がさらに含まれる。
【0047】
「核酸分子」という語句は主に、物質的な核酸分子を指し、「核酸配列」という語句は核酸分子のヌクレオチドの配列を指すが、この二つの語句は同じ意味で使用することができる。
【0048】
所定のポリペプチドに関連して本明細書で使用される「実質的に純粋な」という用語は、ポリペプチドに他の生体高分子が実質的に含まれないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で少なくとも75%(例えば、少なくとも80%、85%、95%、または99%)の純度である。純度は、いずれか適当な標準的方法により、例えば、カラムクロマトグラフィー法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、またはHPLC分析法により測定することができる。
【0049】
二つのアミノ酸配列のまたは二つの核酸配列の「同一性の割合」は、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873〜5877のように改良された、KarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264〜2268のアルゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、(1990). J. Mol. Biol. 215: 403〜10のB12seqプログラム (バージョン2.xおよび後のもの)またはBlastall (BLASTP、BLASTX、TBLASTN、TBLASTX)のなかに組み込まれる。B12seqは、BLASTN(核酸配列を比較するのに使用される)またはBLASTP(アミノ酸配列を比較するのに使用される)アルゴリズムのいずれかを使用して、対象配列と標的配列との間の比較を行う。典型的には、アミノ酸配列のアライメントを行う場合、BLOSUM62スコアリングマトリクス、ギャップ存在コスト11およびギャップ拡張コスト1、ワードサイズ3、期待値10、残基あたりのコスト1ならびにλ比率0.85のデフォルトパラメータが使用される。出力ファイルには、標的配列と対象配列との間で整列された相同性領域が含まれる。整列されたら、長さは、任意の適合位置で始まり、その他任意の適合位置で終わる、対象配列由来の配列と整列する標的配列由来の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基(すなわち、ギャップを除く)の数を数えることにより決定される。適合位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が、標的配列と対象配列の両方に存在する任意の位置である。一つまたは複数の残基のギャップを標的配列または対象配列のなかに挿入して、構造的に保存されたドメイン(例えば、α-ヘリックス、β-シート、およびループ)間の配列アライメントを最大化することができる。
【0050】
特定の長さに対する同一性の割合は、その特定の長さに対して適合位置の数を数え、その数を長さで割って、得られた値に100を掛けることにより決定される。例えば、(i) 500アミノ酸の標的配列が対象アミノ酸配列と比較され、(ii) B12seqプログラムにより、標的配列の200アミノ酸が、その200アミノ酸の領域の最初と最後のアミノ酸の適合する標的配列の領域と整列して表示され、かつ(iii) それらの整列された200アミノ酸に対する適合数が180であるなら、500アミノ酸の標的配列は、長さ200およびその長さに対して配列同一性90% (すなわち、180÷200×100 = 90)を含む。
【0051】
対象配列と整列する核酸またはアミノ酸の標的配列により、結果的に多数の異なる長さが得られ、そのぞれの長さはそれぞれの同一性割合を持ち得ることが理解されるものと思われる。同一性割合の値は、少数第2位で四捨五入され得るこが知られている。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は、78.1に切り捨てされる一方で、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は、78.2に切り上げられる。長さの値は、常に整数になることも知られている。
【0052】
鋳型、または被検体の、ポリペプチド中の保存領域を同定することで、相同的なポリペプチド配列の解析が容易となり得る。保存領域は、繰り返し配列である、ある種の二次構造(例えば、ヘリックスおよびβシート)を形成する、正にもしくは負に荷電したドメインを構築する、またはタンパク質のモチーフもしくはドメインに相当する、鋳型ポリペプチドのアミノ酸一次配列内の領域を位置付けることにより同定することができる。例えば、さまざまなタンパク質のモチーフおよびドメインのコンセンサス配列について記述しているインターネット上のPfamウェブサイト(sanger.ac.uk/Pfam/およびgenome.wustl.edu/Pfam/)を参照されたい。Pfamデータベースに含まれる情報の説明は、Sonnhammerら、(1998) Nucl. Acids Res. 26: 320〜322; Sonnhammerら、(1997) Proteins 28: 405〜420; およびBatemanら、(1999) Nucl. Acids Res. 27: 260〜262に記述されている。Pfamデータベースから得た、タンパク質のモチーフおよびドメインのコンセンサス配列を鋳型のポリペプチド配列と整列させて、保存された(1つまたは複数の)領域を決定することができる。
【0053】
本明細書では、「導入遺伝子」という用語は、核酸配列(例えば、一つまたは複数の対象ポリペプチドをコードする)であって、その核酸が導入される、遺伝子導入植物、動物、もしくは細胞に対し、部分的にもしくは完全に異種、すなわち、外来性である核酸配列、または、その核酸が導入される、遺伝子導入植物、動物、もしくは細胞の内在性遺伝子に相同的であるが、しかしその核酸が挿入される細胞のゲノムを変化させるように植物のゲノム中に、挿入されるように設計される、もしくは挿入される(例えば、その核酸は、その天然遺伝子のものとは異なる位置に挿入される、またはその挿入によりノックアウトが引き起こされる)核酸配列を意味する。導入遺伝子には、選択の核酸の最適な発現に必要とされる可能性のある、全て選択の核酸に動作可能に連結された、一つまたは複数の転写調節配列および他の核酸配列、例えば、イントロンを含めることができ、またエンハンサー配列が含まれてもよい。
【0054】
本明細書では、「遺伝子導入細胞」という用語は、導入遺伝子を含有する細胞を指す。
【0055】
本明細書では、「遺伝子導入植物」とは、一つもしくは複数の、または全ての、植物細胞が導入遺伝子を含む、任意の植物である。導入遺伝子は、周到な遺伝子操作による、例えば、T-DNAによる移入、エレクトロポレーション、またはプロトプラスト形質転換による、細胞の前駆体中への導入により直接的にまたは間接的に、細胞中へ導入することができる。導入遺伝子は、染色体内に組み込まれてもよく、または染色体外複製DNAであってもよい。
【0056】
本明細書では、「組織特異的プロモーター」という用語は、プロモーターとして機能し、すなわち、プロモーターに動作可能に連結された選択のDNA配列の発現を調節し、かつ葉、根、または茎のような、組織の特定細胞における選択のDNA配列の発現に影響を与える、DNA配列を意味する。
【0057】
本明細書では、「ストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする」および「高いストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする」という用語は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液中でのハイブリダイゼーション、続いて60℃または65℃の0.2×SSC緩衝液、0.1% SDS中での2回洗浄の条件を指す。本明細書では、「低いストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする」という用語は、約45℃の6×SSC緩衝液中でのハイブリダイゼーション、続いて50℃の6×SSC緩衝液、0.1% (w/v) SDS中での2回洗浄の条件を指す。
【0058】
「異種プロモーター」とは、核酸配列に動作可能に連結される場合、その核酸配列と天然には結び付いていないプロモーターを指す。
【0059】
本明細書では、「駆虫性(anthelminthic)もしくは駆虫性(anthelmintic)または抗寄生虫(antihelminthic)活性」を有する薬剤は、試験の際に、測定可能な線虫殺傷活性を有するかまたは線虫に不育もしくは不稔をもたらし、その結果、成長できない子孫もしくは子孫なしとする、薬剤である。アッセイ法では、薬剤を線虫と、例えば、寒天培地を含むマイクロタイター・ディッシュのウェルのなかでまたはその薬剤を含有する土壌のなかで一緒にする。成体段階となった線虫を培地に置く。生存時間、子孫の生存度、および/または線虫の動きを測定する。「駆虫性(anthelminthic)もしくは駆虫性(anthelmintic)または抗寄生虫(antihelminthic)活性」を有する薬剤により、未曝露の同じ段階の成体と比べて線虫成体の生存時間が、例えば、約20%、40%、60%、80%またはそれ以上まで減少する。別の方法では、「駆虫性(anthelminthic)または駆虫性(anthelmintic)または抗寄生虫(antihelminthic)活性」を有する薬剤により同様に、例えば、約20%、40%、60%、80%またはそれ以上まで、線虫が複製、再生、および/または成長できる子孫の発生をしないようにされ得る。
【0060】
本明細書では、「結合」という用語は、共有結合していない、第一化合物と第二化合物が物理的に相互作用する能力を指す。結合事象に対する見掛けの解離定数は、1 mMまたはそれ以下、例えば、10 nM、1 nM、0.1 nMまたはそれ以下とすることができる。
【0061】
本明細書では、「特異的に結合する」という用語は、所定のリガンドと標的ではないリガンドの両方に同時に曝される場合に、および標的リガンドと標的ではないリガンドの両方が抗体に対してモル過剰で存在する場合に、抗体が標的リガンドに結合しかつ標的ではないリガンドに結合しないように、標的リガンドと標的ではないリガンドを区別する抗体の能力を指す。
【0062】
本明細書では、「活性の変化」という用語は、レベルの変化、すなわち活性、とりわけPEAMT様活性またはPEAMT活性の増加または低下(例えば、ポリペプチドが他のポリペプチドまたは分子を結合するまたは調節する能力の増加または低下)を指す。変化は、定性的または定量的観測で検出することができる。定量的観測を行う場合、および総合的解析を複数の観測結果に対して行う場合、当業者は、日常的な統計解析を適用して、レベルが変わるおよび統計パラメータ、p値が、0.05未満となる変化を同定することができる。
【0063】
部分的には、本明細書に記載される線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼのタンパク質および核酸は、抗線虫ワクチン、殺虫剤、および薬剤に対する新たな標的である。これらの分子の阻害は、線虫の代謝および/または線虫の寿命の阻害手段となる可能性がある。
【0064】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細は、添付図面および下記の説明に記述されている。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになると思われる。
【0065】
詳細な説明
コリン(Cho)は、生体系で多くの重要な役割を果たす。細菌、真菌、植物および動物では、ホスファチジルコリンは膜リン脂質の主要な成分であり、動物では、その遊離塩基は神経伝達物質アセチルコリンの前駆体である。コリンはまた、植物でのグリシンベタイン(浸透圧に対する耐性を増加させる化合物)合成における中間体でもある(McNeilら、(2001) Proc Natl Acad Sci USA 98: 10001〜5)。コリンはヒトおよび他の動物の必須栄養素であり、同様にヒトでは脳の発達で重要な役割を果たす(Sheardら、(1986) Am J Clin Nutr. 1986 43:219〜24; Tayekら、(1990) J Am Coll Nut 9:76〜83)。大部分の生物は、CDP-コリンのコリン部分をジアシルグリセロールに移す経路を使用して、コリンをホスファチジルコリンに組み入れることができる。同じ方法で、エタノールアミン(EA)、モノメチルエタノールアミン(MME)およびジメチルエタノールアミン(DME)のようなコリン前駆体も、CPD-コリンまたはケネディー(Kennedy)経路を介してリン脂質に組み入れられる。根圏細菌はさらにケネディー非依存的経路を有し、この経路により同様に植物の根から分泌されるコリンのリン脂質への直接的な組み込みが可能とされる(Rudderら、(1999) J Biol Chem. 274:20011〜6; Lopez-LaraとGeiger(2001) J Biotechnol 91:211〜21)。
【0066】
コリンを合成できるこれらの生物の間では、メチル基供与体としてS-アデノシルメチオニン(SAM)を用いたメチル基の連続付加によってエタノールアミンからコリンを作り出すのに、異なる生合成経路が使用される。これらの経路は、これらがメチル化基質として遊離塩基(free base)(エタノールアミン)、リン酸塩基(phosphobase)(ホスホエタノールタミン)、またはホスファチジル塩基(phosphatidyl base)(ホスファチジルエタノールアミン)を使用するかどうかという点で異なる。植物は、これらが遊離塩基、リン酸塩基またはホスファチジル塩基(リン脂質基質)をメチル化できるという点で異例である(BologneseとMcGraw (2000) Plant Physiol. 124(4):1800〜13; Nuccioら、(2000) J Biol Chem 275(19):14095〜101; Charronら、(2002). Plant Physiol. 129(1):363〜73)。しかしながら、ホスファチジルモノメチルエタノールアミンへのホスファチジルエタノールアミンの変換は、植物で証明されておらず、従って、最初のメチル化反応は、遊離塩基またはリン酸塩基レベルのいずれかで起こるにちがいない。多くの植物の場合、主要な代謝流束は、ホスホエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼ酵素(PEAMT)により触媒される(すなわち、pEA ⇒ pMME)、リン酸塩基レベルで起こると現在では考えられている。
【0067】
対照的に、大部分の他の生物の場合、メチル化はリン脂質レベルで主に行われる。完全な反応(すなわち、Ptd-EA ⇒ Ptd-MME ⇒ Ptd-DME ⇒ PtdCho)には、細菌および哺乳類の場合には単一の酵素がならびに真菌の場合には二つの別個の酵素が必要とされる(KanipesとHenry. (1997) Biochim Biophys Acta. 1348(1-2):134〜41; Vanceら、(1997) Biochim Biophys Acta. 1348(1-2):142〜50; Hanadaら、(2001) Biosci Biotechnol Biochem. 65(12):2741〜8)。哺乳類の神経細胞は、さらなるリン酸塩基メチル化活性を有することが報告されており、三つの異なる酵素が関与しているように思われる(Andriamampandryら、(1992) Biochem J. 288 (1):267〜72; Mukherjeeら、(1995) Neurochem Res. 20(10):1233〜7)。
【0068】
ホウレンソウおよびシロイヌナズナ(Arabidopsis)由来の植物メチルトランスフェラーゼが、それぞれ、分裂酵母および出芽酵母でのコリン生合成変異体の相補性によりクローニングされている(BologneseとMcGraw (2000) Plant Physiol. 124(4):1800〜13; Nuccioら、(2000) J Biol Chem. 275(19):14095〜101)。ホスファチジルエタノールアミンに作用する酵母メチルトランスフェラーゼとは対照的に、これらの植物酵素は、ホスホエタノールアミンに作用することが示されている。最近、類似遺伝子が冷却コムギ組織からクローニングされている(Charronら、(2002). Plant Physio. 129(1):363〜73)。この植物酵素は、個別のSAM結合部位を含んだ二つのドメインを有する約55kDaの可溶性タンパク質をコードすると予想される。各ドメインには、SAM依存的メチルトランスフェラーゼの間で保存されている、I、ポストI、IIおよびIIIと命名されたモチーフが含まれる。両方のSAM結合部位の部分配列を含むcDNAクローンが、イネ(Oryza sativa)、アブラナ(Brassica napus)、ワタ(Gossypium hirsutum)、およびオオムギ(Hordeum vulgare)を含む、多数の植物から単離されている。この植物メチルトランスフェラーゼの構造は、原核生物および動物メチルトランスフェラーゼがその植物酵素の大きさのおよそ半分であることや一つのメチルトランスフェラーゼドメインしか持たないことから、遺伝子重複事象によって生じたと考えられる。
【0069】
ホウレンソウ・メチルトランスフェラーゼのいくつかの基本的な速度論的性質が、その酵素を過剰発現する分裂酵母から単離された酵素調製物から決定されている。酵素活性は、SAMおよびホスホエタノールアミン濃度に依存的である。これらの基質が存在する場合、メチルトランスフェラーゼを含有する抽出物により、モノメチルホスホエタノールアミンおよびジメチルホスホエタノールアミンならびにホスホコリンの形成が触媒される。これらの中間体の出現は、これらがホスホコリンの前駆体であることを示唆している。二番目のSAM結合部位を欠いている切断型のホウレンソウ酵素は、ホスホエタノールアミンをモノメチルホスホエタノールアミンに変換する第一のメチル化を行うことができるが、第二および第三のメチル化のステップを行うことができない。C末端半分により、第二および第三のメチル化反応が行われると推定される。
【0070】
C.エレガンス(C. elegans)のゲノムには、二つのPEAMT様遺伝子が含まれることや、いくつかの相同体が他の線虫のESTデータセットで見出されることから、これらの遺伝子が線虫に広く分布していることが示唆される。その線虫タンパク質および植物相同体は全て、これらが分泌リーダー配列 (インターネット上でcbs.dtu.dk/services/TargetPにて利用可能な方法により解析される)または膜貫通領域(インターネット上でcbs.dtu.dk/services/TNHMMにて利用可能な方法により解析される)を欠いているため、コムギPEAMTの場合のようにサイトゾルに局在すると推定される。
【0071】
一方のC.エレガンス(C. elegans)PEAMT遺伝子(PEAMT2)は、437アミノ酸長(アクセッション番号AAB04824.1、ワームベース(wormbase)遺伝子座F54D11.1)であり且つホウレンソウ・ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼおよび二つのSAM結合ドメインを有するその他の植物相同体のC末端半分に対して顕著な類似性を示す、ポリペプチドをコードする。もう一方のC.エレガンス(C. elegans)PEAMT遺伝子は、少なくとも二つの異なるスプライス変異体(PEAMT1aおよびPEAMT1b)をコードするものと思われる。PEAMT1aおよびbは、それぞれ495および484のアミノ酸長(アクセッション番号AAA81102.1、ワームベース遺伝子座ZK622.3aおよびZK622.3b)であり、植物PEAMTのN末端半分と最も類似している。PFAM解析(インターネット上でpfam.wustl.eduにて利用可能)から、植物PEAMTには二つの規範的なメチルトランスフェラーゼドメインが含まれるが、その線虫タンパク質にはPEAMT1にN末端MTドメインおよびPEAMT2にC末端MTドメインが含まれるというblastによる予測が支持される。PEAMT1およびPEAMT2は、その植物相同体に対し、整列する領域において30〜40%のアミノ酸同一性を有する。PEAMT1とPEAMT2との間の類似性は低く(アミノ酸同一性22%)、そのC末端領域の127アミノ酸の小領域に限定される。
【0072】
植物ホスホエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼ(例えば、ホウレンソウおよびシロイヌナズナ(Arabidopsis))のN末端およびC末端ドメインそれぞれに対するPEAMT1およびPEAMT2の類似性、それらのRNAiによる類似した幼虫致死表現型ならびにそのホウレンソウ酵素のN末端半分は、最初のメチル化反応の能力を持つのみであるという観測結果を考慮して、本発明者らは、PEAMT1はpMMEへのpEAの変換(最初のメチル化)を触媒し、PEAMT2はpDMEへのpMMEのおよびpCHOへのpDMEの変換を触媒するであろうと予測した。この仮説について、EA、MME、DMEまたはChoを用いた、C.エレガンス(C. elegans)PEAMT1またはPEAMT2のRNAiによる表現型の化学的相補性により確認した(表1を参照されたい)。予測したように、PEAMT1のRNAiによる幼虫致死表現型はMME、DMEおよびChoにより抑制されるがしかしEAにより抑制されず、その一方、PEAMT2のRNAiはChoによってのみ救済され、MME、DME、もしくはEA単独によりまたはその組み合わせにより救済されない。
【0073】
本発明により、C.エレガンス(C. elegans)タンパク質ZK622.3a(gi|28275069|gb|AAO38583.1|[28275069])、ZK622.3b(gi|15487647|gb|AAL00881.1|U39998_4[15487647])およびF54D11.1(gi|1458245|gb|AAB04824.1|[1458245])に関連した新たな種類の線虫遺伝子について記述される。この線虫遺伝子は、BLASTによるバイオインフォマティクス解析および系統樹の構築により、植物ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼの遺伝子ファミリーに関連することが示される。この遺伝子ファミリーは、植物および線虫では広範囲にわたるがしかし節足動物、脊椎動物、真菌または細菌ではそうではないように思われる。本発明者らにより、線虫アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のさらなる相同体が同定された。重要なことには、本発明者らにより、これらのタンパク質がC.エレガンス(C. elegans)の生存に不可欠であることがRNAiにより示された。このことは、植物におけるコリン合成の重複性や脊椎動物には明確な相同体がないことと合わせると、これらのタンパク質が抗寄生虫性化合物に対する有望な標的となることを示唆するものである。
【0074】
その線虫タンパク質および植物相同体は全て、これらが分泌リーダー配列(インターネット上でcbs.dtu.dk/services/TargetPにて利用可能な方法により解析される) (http://www.cbs.dtu.dk/services/TargetP/)または膜貫通領域(インターネット上でcbs.dtu.dk/services.TMHMMにて利用可能な方法により解析される)を欠いているため、コムギPEAMTの場合のようにサイトゾルに局在すると推定される。
【0075】
本発明により、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドをコードする線虫由来の核酸配列が提供される。アリカリス・スーム(A. suum)の核酸分子(配列番号:1)およびそのコードするPEAMT1様ポリペプチド(配列番号:7)は、図1に描かれている。ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)の核酸分子(配列番号:2)およびそのコードするPEAMT1様ポリペプチド(配列番号:8)は、図2に描かれている。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)の核酸分子(配列番号:3)およびそのコードするPEAMT1様ポリペプチド(配列番号:9)は、図3に描かれている。ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)の核酸分子(配列番号:4)およびそのコードするPEAMT1様ポリペプチド(配列番号:10)は、図4に描かれている。アリカリス・スーム(A. suum)の核酸分子(配列番号:5)およびそのコードするPEAMT2様ポリペプチド(配列番号:11)は、図5に描かれている。ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)の核酸分子(配列番号:6)およびそのコードするPEAMT2様ポリペプチド(配列番号:12)は、図6に描かれている。本明細書に記載のPEAMT様遺伝子に関する特定の配列情報は、下記の表1に要約されている。
【0076】
(表1)

【0077】
本発明は、部分的には、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)由来のPEAMT様配列の発見に基づいている。従って、以下の実施例は、単なる例示であって、開示の残る部分をいかなる方法であれ一切限定するものではないと解釈されるべきである。本明細書に引用される刊行物の全ては、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0078】
実施例
線虫遺伝子ZK622.3a(gi|1055130|gb|AAA81102.1|[1055130])およびF54D11.1(gi|1458245|gb|AAB04824.1|[1458245])を用いたTBLASTNの問い合わせにより、複数の線虫種においてPEAMT様酵素の一部分をコードすると予測される、発現配列タグ(ESTは、一度の配列決定による読み取りから得られた短い核酸断片の配列である)がdbestで複数同定された。
【0079】
C.エレガンス(C. elegans) AAA81102.1に類似として同定されたPEAMT1様ESTには、全てMcCarterら、(1999) Washington University線虫ESTプロジェクトによる、アンキロストーマ・カニナム(Ancylostoma caninum) (GenBank(登録商標)識別番号:15766091)、アリカリス・スーム(Ascaris suum) (GenBank(登録商標)識別番号:17993264)、ストロンギロイデス・ステルコラリス(Strongyloides stercoralis) (GenBank(登録商標)識別番号:12714760)、ヘモンクス・コントルタス(Haemonchus contortus) (GenBank(登録商標)識別番号:27590930)、プリスチオンクス・パシフィカス(Pristionchus pacificus)由来の多数(GenBank(登録商標)識別番号:6067811、15339937、6081336、5816211)、およびサツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita) (GenBank(登録商標)識別番号:21652426)が含まれた。
【0080】
C.エレガンス(C. elegans) AAB04824.1に類似として同定されたPEAMT2様ESTには、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica) (GenBank(登録商標)識別番号:14624708); サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita) (GenBank(登録商標)識別番号:9033918); ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis) (GenBank(登録商標)識別番号:18080101); およびアリカリス・スーム(Ascaris suum)由来の多数(GenBank(登録商標)識別番号:15498087、17991691、18688588、17992674、18688567、18054078、18828817、18688268、18053654、17992401、17991763、17992578、18689591、18688755、18688890、18686360、17993455、17992123)が含まれた。
【0081】
完全長ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ1様cDNA配列
ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のEST配列 (GenBank(登録商標)識別番号:12714760)に相当するプラスミドクローンDiv2728は、Genome Sequencing Center (St. Louis, MO)から得られた。プラスミド中のcDNA挿入断片のその全体を配列決定した。特に指定のない限り、本明細書で決定したヌクレオチド配列の全ては、当業者に周知の処理方法を使用して、自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems社のモデル373)で配列決定した。使用したプライマーは表2に掲載されている(下記を参照されたい)。ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis) PEAMT1に対する完全長のデータは、コドン1〜469に対するヌクレオチド配列ならびに付加的な5'および3'非翻訳配列を含む、Div2728から得られた。
【0082】
(表2)

【0083】
アリカリス・スーム(A. suum)のEST配列 (GenBank(登録商標)識別番号: 17993264)に相当するプラスミドクローンDiv3020は、Genome Sequencing Center (St. Louis, MO)から得られた。プラスミド中のcDNA挿入断片のその全体を配列決定した。アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT1に対する部分配列のデータは、コドン1〜88に対するヌクレオチド配列および付加的な5'非翻訳配列を含む、Div3020から得られた。利用可能な配列には、アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT1の最後の372個のコドン、ならびに3'非翻訳配列が欠けていた。
【0084】
アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT1遺伝子の欠落している3'配列を得るため、3' RACE法を適用した。アリカリス・スーム(A. suum)の総RNAからの第一鎖cDNA合成は、オリゴdTプライマー(配列番号:28)を用いて行った。次に、関心のあるcDNA分子の内側でアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的プライマー(MTas-1; 配列番号:25)と、オリゴdTプライマー(配列番号:28)で増幅されたcDNA全ての3'末端に相同な、AUAPプライマーとを用いて、このcDNAを直接的にPCR増幅した。この手順を実行し、3'非翻訳配列に加えてコドン71〜460を含む、クローンDiv3465を産生させた。総合すれば、クローンDiv3020およびDiv3465には、アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT1遺伝子の完全な読み取り枠を含有する配列が含まれる。
【0085】
サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)のEST配列 (GenBank(登録商標)識別番号: 21652426)に相当するプラスミドクローンDiv3440は、Genome Sequencing Center (St. Louis, MO)から得られた。プラスミド中のcDNA挿入断片のその全体を配列決定した。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) PEAMT1に対する部分配列のデータは、コドン14〜227に対するヌクレオチド配列を含む、Div3440から得られた。利用可能な配列には、最初の13個のコドンおよび最後の366個のコドン、ならびに5'および3'非翻訳配列が欠けていた。
【0086】
サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) PEAMT1遺伝子の欠落している3'末端を得るため、3' RACE法を適用した。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)の総RNAからの第一鎖cDNA合成は、オリゴdTプライマー(配列番号:28)を用いて行った。次に、関心のあるcDNA分子の内側でアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的プライマー(MTmi-4; 配列番号:35)と、オリゴdTプライマー(配列番号:28)で増幅されたcDNA全ての3'末端に相同な、AUAPプライマーとを用いて、このcDNAを直接的にPCR増幅した。この手順を実行し、3'非翻訳配列に加えてコドン177〜457を含む、クローンDiv3640を産生させた。
【0087】
サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) PEAMT1遺伝子の欠落している5'配列を得るため、5'オリゴキャップRACE法(Invitrogen Life Technologiesから入手したGeneRacer(商標)キット)を適用した。この方法から、脱キャップされたmRNAの5'末端にRNAオリゴヌクレオチド(配列番号:40)が、T4 RNAリガーゼにより選択的に連結される。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)のオリゴキャップされた総RNAからの第一鎖cDNA合成は、関心のあるcDNA分子の内側でアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的な内部プライマー(MTmi-9; 配列番号:33)を用いて行った。次に、関心のあるcDNA分子の内側でアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的ネステッドプライマー(MTmi-8; 配列番号:34)と、GeneRacer(商標)オリゴキャップRNA法で増幅されたcDNA全ての5'末端に相同な、GeneRacer(商標) 5'ネステッドオリゴ(配列番号:37)とを用いて、この第一鎖cDNAを直接的にPCR増幅した。この手順を実行し、5'非翻訳配列に加えてコドン1〜13を含む、クローンDiv3845を産生させた。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) PEAMT1遺伝子のコドン92〜176をコードする、欠落しているヌクレオチド配列は、5'オリゴキャップRACE法(Invitrogen Life Technologiesから入手したGeneRacer(商標)キット)により前述のように得られた。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)のオリゴキャップされた総RNAからの第一鎖cDNA合成は、関心のあるcDNA分子の内側でアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的な内部プライマー(MTmi-9; 配列番号:33)を用いて行った。次に、関心のあるcDNA分子の内側でアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的ネステッドプライマー(MTmi-8; 配列番号:34)と、GeneRacer(商標)オリゴキャップRNA法で増幅されたcDNA全ての5'末端に相同な、GeneRacer(商標) 5'ネステッドオリゴ(配列番号:37)とを用いて、この第一鎖cDNAを直接的にPCR増幅した。この手順を実行し、コドン1〜181を含む、クローンDiv3846を産生させた。総合すれば、クローンDiv3440、Div3845、Div3846、およびDiv3640には、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) PEAMT1遺伝子の完全な読み取り枠を含有する配列が含まれる。
【0088】
ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) PEAMT1の部分的な配列データは、コドン3〜86に対するヌクレオチド配列を含む、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)のEST(GenBank(登録商標)識別番号: 27590930)から得られた。利用可能な配列には、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) PEAMT1の最初の2個のコドンおよび最後の374個のコドン、ならびに5'および3'非翻訳領域が欠けていた。
【0089】
ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) PEAMT1遺伝子の5'配列を得るため、5' RACE法を適用し、鋳型としてヘモンクス・コントルタス(H. contortus)から得た第一鎖cDNAを用いて、SL2 PCRを行った(上記に説明したcDNA合成)。第一鎖cDNAは、関心のあるcDNA分子の内側に位置する部位にアニールする、周知のEST配列から設計した遺伝子特異的プライマー(MThc-4; 配列番号:39)と、多くのヘモンクス・コントルタス(H. contortus) cDNAの5'末端に相同な、SL2プライマー(配列番号:41)とを用いて直接的にPCR増幅した。次に、増幅されたPCR産物をDNA配列解析のための適当なベクターにクローニングした。この手順を実行し、クローンDiv3676を得た。このクローンには、5'非翻訳配列に加えてコドン1〜55が含まれる。ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) PEAMT1遺伝子の3'配列を得るため、3' RACE法を適用した。ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) RNAからの第一鎖cDNA合成は、前述のように行った。第一鎖cDNAは、関心のある第一鎖cDNA分子の内側にアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的プライマー(MThc-1; 配列番号:38)と、関心のあるcDNA分子の3'末端に相同な、AUAPプライマー(配列番号:26)とを用いて直接的にPCR増幅した。この手順を実行し、3'非翻訳配列に加えてコドン79〜460を含む、クローンDiv3650を産生させた。総合すれば、クローンDiv3650、Div3676、および周知のEST配列には、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) PEAMT1遺伝子の完全な読み取り枠を含有する配列が含まれる。
【0090】
完全長ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ2様cDNA配列
ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)のEST配列 (GenBank(登録商標)識別番号:14624708)に相当するプラスミドクローンDiv2562は、Genome Sequencing Center (St. Louis, MO)から得られた。プラスミド中のcDNA挿入断片のその全体を配列決定した。特に指定のない限り、本明細書で決定したヌクレオチド配列の全ては、当業者に周知の処理方法を使用して、自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems社のモデル373)で配列決定した。使用したプライマーは表2に掲載されている(上記を参照されたい)。ジャワネコブセンチュウ(M. javanica) PEAMT2に対する部分的な配列データは、コドン285〜472に対するヌクレオチド配列および付加的な3'非翻訳配列を含む、Div2562から得られた。このクローンには、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica) PEAMT2の最初の284個のコドン、ならびに5'非翻訳配列が欠けていた。
【0091】
ジャワネコブセンチュウ(M. javanica) PEAMT2遺伝子の欠落している5'配列を得るため、5' RACE法を適用し、鋳型としてジャワネコブセンチュウ(M. javanica)から得た第一鎖cDNAを用いて、SL1 PCRを行った。簡単に言えば、SL1 PCRは、多くの線虫のmRNA分子には、大部分の真核生物のmRNAとは異なり、その5'末端にトランススプライスされた共通のリーダー配列(5'gggtttaattacccaagtttga 3') (配列番号:27)が含まれるという観察結果を活用している。この配列がcDNAの5'末端に存在する場合、そのcDNAは、SL1トランススプライスリーダーに結合するプライマーと、cDNA 3'末端近傍の遺伝子特異的プライマーとを用いたPCRにより増幅することができる。
【0092】
簡単に言えば、Life Technologies cDNA合成キットにより提供される使用説明書に従って、線虫の総RNAに対し、SuperScript(商標) II逆転写酵素およびオリゴdTプライマー(全真核生物のmRNAの3'末端に見られる天然型ポリAテールにアニールする)を用いて第一鎖cDNA合成を行った。次に、RNase Hを使用して、元の鋳型mRNAを分解した。元の鋳型mRNAの分解後、第一鎖cDNAは、Taq DNAポリメラーゼ、関心のあるcDNAに対する周知の配列から設計した遺伝子特異的プライマー(Met12; 配列番号:42)、および多くの線虫cDNAの5'末端に相同な、SL1プライマー(配列番号:27)を用いて、さらに精製することなく直接的にPCR増幅した。次に、増幅されたPCR産物をDNA配列解析のための適当なベクターにクローニングした。この手順を実行し、クローンDiv2474を得た。Div2474には、5'非翻訳配列に加えてコドン1〜308が含まれる。総合すれば、クローンDiv2562およびDiv2474には、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)由来のPEAMT2遺伝子の完全な読み取り枠を含有する配列が含まれる。
【0093】
アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT2に対する部分的な配列データは、コドン35〜205に対するヌクレオチド配列を含む、アリカリス・スーム(A. suum)のEST(GenBank(登録商標)識別番号: 15498087)から得られた。利用可能な配列には、アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT2の最初の34個のコドンおよび最後の232個のコドン、ならびに5'および3'非翻訳領域が欠けていた。
【0094】
アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT2遺伝子の5'配列を得るため、5' RACE法を適用し、鋳型としてアリカリス・スーム(A. suum)から得た第一鎖cDNAを用いて、SL1 PCRを行った(上記に説明したcDNA合成)。第一鎖cDNAは、関心のあるcDNAの内側に位置する部位にアニールする、周知のEST配列から設計した遺伝子特異的プライマー(Met28; 配列番号:43)と、多くの線虫cDNAの5'末端に相同な、SL1プライマー(配列番号:27)とを用いて直接的にPCR増幅した。次に、増幅されたPCR産物をDNA配列解析のための適当なベクターにクローニングした。この手順を実行し、クローンDiv2715を得た。このクローンには、5'非翻訳配列に加えてコドン1〜164が含まれた。アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT2遺伝子の3'配列を得るため、3' RACE法を適用した。アリカリス・スーム(A. suum) RNAからの第一鎖cDNA合成は、前述のように行った。第一鎖cDNAは、関心のある第一鎖cDNA分子の内側にアニールする、周知の配列から設計した遺伝子特異的プライマー(Met39; 配列番号:44)と、関心のあるcDNAの3'末端に相同な、AUAPプライマー(配列番号:26)とを用いて直接的にPCR増幅した。この手順を実行し、3'非翻訳配列に加えてコドン67〜437を含む、クローンDiv2877を産生させた。総合すれば、クローンDiv2715およびDiv2877には、アリカリス・スーム(A. suum) PEAMT2遺伝子の完全な読み取り枠を含有する配列が含まれる。
【0095】
6つのホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼの特徴付け
4つのPEAMT1様のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様核酸分子(アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis))および2つのPEAMT2様のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様核酸分子(アリカリス・スーム(A. suum)およびジャワネコブセンチュウ(M. javanica))の配列は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5および配列番号:6として、図1、図2、図3、図4、図5および図6に描かれている。配列番号:13(アリカリス・スーム(A. suum))にはアミノ酸460個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれ、配列番号:14(ヘモンクス・コントルタス(H. contortus))にはアミノ酸460個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれ、配列番号:15(サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita))にはアミノ酸457個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれ、配列番号:16(ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis))にはアミノ酸469個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれ、配列番号:17(アリカリス・スーム(A. suum))にはアミノ酸437個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれ、および配列番号:18(ジャワネコブセンチュウ(M. javanica))にはアミノ酸472個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。
【0096】
アリカリス・スーム(A. suum)のPEAMT1様核酸分子の配列は、配列番号:1として図1に列挙される。このヌクレオチド配列には、アミノ酸460個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。アリカリス・スーム(A. suum)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:7として図1に描かれている)は、C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:19および20として図7に描かれている)とおよそ52%同一(共有の相同性領域において)である。アリカリス・スーム(A. suum)由来のPEAMT1タンパク質とC.エレガンス(C. elegans)由来のPEAMT1タンパク質との間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる。
【0097】
ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)のPEAMT1様核酸分子の配列は、配列番号:2として図2に列挙される。このヌクレオチド配列には、アミノ酸460個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:8として図2に描かれている)は、C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:19および20として図7に描かれている)とおよそ63%同一(共有の相同性領域において)である。ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)由来のPEAMT1タンパク質とC.エレガンス(C. elegans)由来のPEAMT1タンパク質との間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる。
【0098】
サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)のPEAMT1様核酸分子の配列は、配列番号:3として図3に列挙される。このヌクレオチド配列には、アミノ酸457個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:9として図3に描かれている)は、C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:19および20として図7に描かれている)とおよそ43%同一(共有の相同性領域において)である。サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)由来のPEAMT1タンパク質とC.エレガンス(C. elegans)由来のPEAMT1タンパク質との間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる。
【0099】
ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT1様核酸分子の配列は、配列番号:4として図4に列挙される。このヌクレオチド配列には、アミノ酸469個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:10として図4に描かれている)は、C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1様タンパク質(配列番号:19および20として図7に描かれている)とおよそ36%同一(共有の相同性領域において)である。ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)由来のPEAMT1タンパク質とC.エレガンス(C. elegans)由来のPEAMT1タンパク質との間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる。
【0100】
アリカリス・スーム(A. suum)のPEAMT2様核酸分子の配列は、配列番号:5として図5に列挙される。このヌクレオチド配列には、アミノ酸437個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。アリカリス・スーム(A. suum)のPEAMT2様タンパク質(配列番号:11として図5に描かれている)は、C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT2様タンパク質(配列番号:21として図8に描かれている)とおよそ48%同一(共有の相同性領域において)である。アリカリス・スーム(A. suum)由来のPEAMT2タンパク質とC.エレガンス(C. elegans)由来のPEAMT2タンパク質との間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる。
【0101】
ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)のPEAMT2様核酸分子の配列は、配列番号:6として図6に列挙される。このヌクレオチド配列には、アミノ酸472個のポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれる。ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)のPEAMT2様タンパク質(配列番号:12として図6に描かれている)は、C.エレガンス(C. elegans)のPEAMT2様タンパク質(配列番号:21として図8に描かれている)とおよそ50%同一(共有の相同性領域において)である。ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)由来のPEAMT2タンパク質とC.エレガンス(C. elegans)由来のPEAMT2タンパク質との間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる。
【0102】
アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)およびC.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1様ポリペプチド間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる(図7に描かれている)。アリカリス・スーム(A. suum)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびC.エレガンス(C. elegans)のPEAMT2様ポリペプチド間の類似性は、Clustal Xマルチプル・アライメント・プログラムにより作成されるマルチプル・アライメント(多重整列)として与えられる(図8に描かれている)。
【0103】
S-アデノシルメチオニン(SAM)依存的なメチルトランスフェラーゼタンパク質には、SAM結合部位を規定する4つの保存モチーフが含まれる(KaganとClarke (1994) Arch Biochem Biophys. 310:417〜427)。4つのドメインは、モチーフI、ポストI、モチーフ II、およびモチーフ IIIと呼ばれる。4つのドメインは、図7に示されるPEAMT1様タンパク質の全ておよび図8に示されるPEAMT2様タンパク質の全てに存在する。PEAMT1様タンパク質およびPEAMT2様タンパク質におけるその予測されるアミノ酸位置は、それぞれ表3および4に掲載される。
【0104】
(表3)線虫PEAMT1様タンパク質において保存されるSAM結合モチーフのアミノ酸位置

【0105】
(表4)線虫PEAMT2様タンパク質において保存されるSAM結合モチーフのアミノ酸位置

【0106】
アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様配列とその他の配列との間の類似性を同様に、nr (www.ncbi.nlm.nih.govにて利用可能な重複のないタンパク質配列データベース)に対するBLASTP解析およびdbest (www.ncbi.nlm.nih.govにて利用可能なEST配列データベース; 最高500ヒット(件数); E = 1e-4)に対するTBLASTN解析を使用して、配列データベースとの比較により調査した。「期待値(E)」は、問い合わせ配列が所定の大きさの問い合わせされたデータベースとスコアSまたはそれ以上で偶然に整列すると予測される配列の数である。この解析を使用して、上述の線虫PEAMT様ポリペプチドのそれぞれに対する植物および脊椎動物の相同体の潜在的な数を決定した。アリカリス・スーム(A. suum) (配列番号:1および5)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus) (配列番号:2)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita) (配列番号:3)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica) (配列番号:6)、ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis) (配列番号:4)およびC.エレガンス(C. elegans) (配列番号:19、20および21)のPEAMT様配列は、nrまたはdbestにおいて、閾値としてE値1e-4(このE値は大体、およそ100アミノ酸に対して約25%未満の配列同一性を有する配列を除くような閾値に相当する)を満たす十分な配列類似性を有する、スコアの高い脊椎動物とのヒットがなかった。従って、本発明の、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様酵素は、ヒト(Homo sapiens) (gi|13345056|gb|AAK19172.1|[13345056])またはドブネズミ(Rattus norvegicus) (gi|310195|gb|AAA03154.1|[310195])のホスファチジルエタノールアミン・n-メチルトランスフェラーゼのような代表的な脊椎動物のメチルトランスフェラーゼ酵素と有意な配列類似性を共有しているとは思われない。
【0107】
脊椎動物のメチルトランスフェラーゼに類似性がないことや植物におけるコリン生合成の重複性に基づくと、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様酵素は、その宿主(例えば、ヒト、動物、および植物)に対し、いくつかの線虫に選択的な阻害化合物の有用な標的となる。
【0108】
nrデータベースのデフォルトパラメータによるBLASTを使用して、機能予測を行った。BLAST検索およびCLUSTALXによるマルチプル・アライメントの作成から、C.エレガンス(C. elegans)の遺伝子ZK622.3aおよびF54D11. 1は、植物のPEAMT遺伝子と強い相同性を共有しており、従って、植物のPEAMTファミリーと関連性があることが実証された。相互交換によるBLAST検索および系統樹から、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)由来のヌクレオチド配列は、そのC.エレガンス(C. elegans)遺伝子の相同分子種であり、従って、PEAMTタンパク質である可能性が高いことが確認される。タンパク質の局在はTargetPを用いて予測し、膜貫通ドメインはTMHMMを用いて予測した。アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMTポリペプチド(それぞれ、配列番号:7、8、9、10、11および12)は、分泌または強力なミトコンドリア局在予測がなく、予測される膜貫通領域がないので、コムギのPEAMT相同体の場合のように、細胞質に局在する可能性が高い。
【0109】
RNA干渉(RNAi)
二本鎖RNA(dsRNA)分子を使用して、RNA干渉として知られる方法により、細胞中でホスホエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT)遺伝子を不活化することができる(Fireら、(1998) Nature 391:806〜811、およびGonczyら (2000) Nature 408:331〜336)。dsRNA分子は、PEAMT核酸(好ましくはエクソンの)またはその断片のヌクレオチド配列を有することができる。例えば、この分子は、PEAMT様遺伝子の連続ヌクレオチドを少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、または少なくとも500個もしくはそれ以上含むことができる。dsRNA分子は、直接注入により、濃縮したdsRNAを含有する水溶液に線虫を浸すことにより、またはdsRNA分子を産生するように遺伝子組換えされた大腸菌(E. coli)に接触させて細菌食性線虫(bacteriovorous nematode)を増殖させることにより、線虫に輸送することができる(Kamathら、(2000) Genome Biol. 2; Tabaraら、(1998) Science 282:430〜431)。
【0110】
捕食によるPEAMTのRNAi:
遺伝子組換えした大腸菌(E. coli)の菌叢でC.エレガンス(C. elegans)を増殖させて、PEAMT1またはPEAMT2の発現を阻害するように設計した二本鎖RNA(dsRNA)を産生させることができる。簡単に言えば、大腸菌(E. coli)をC.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1またはPEAMT2遺伝子の一部をコードするゲノム断片で形質転換する。具体的には、ヌクレオチド960個の断片をPEAMT1遺伝子から、それぞれ配列

を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅させた。またはヌクレオチド854個の断片をPEAMT2遺伝子から、それぞれ配列

を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅させた。PEAMT1およびPEAMT2ゲノム断片を大腸菌(E. coli)発現ベクター中へ、対向するT7ポリメラーゼプロモーター間に別々にクローニングした。次いで、このクローンを、IPTG誘導性T7ポリメラーゼを持つ大腸菌(E. coli)の菌株に形質転換した。対照として、大腸菌(E. coli)に緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を形質転換した。捕食による(Feeding)RNAiは、23℃で、IPTGおよびC.エレガンス(C. elegans)のPEAMT1もしくはPEAMT2、またはGFP dsRNAを発現する大腸菌(E. coli)を含有するNGMプレート上に載せたC.エレガンス(C. elegans)の幼虫から開始した。最初の線虫(P0(親))がL1幼虫、または耐性幼虫であった場合、PEAMT1およびPEAMT2のRNAiにより生じた両変異体の表現型は、完全にまたはほぼ完全に不稔性であった。一方、P0(親)動物がL4幼虫であった場合、PEAMT1およびPEAMT2のRNAiにより生じた両変異体の表現型は、L1/L2幼虫発達停止および致死であった。PEAMT1およびPEAMT2の配列は、十分に複雑性が高い(すなわち、特有)であり、従ってRNAiにより他の遺伝子との交差反応性が示される可能性は低い。
【0111】
PEAMT1またはPEAMT2遺伝子のdsRNAを発現する大腸菌(E. coli)の存在下で増殖させたC.エレガンス(C. elegans)の培養が強力に損なわれたことから、PEAMT遺伝子が線虫において必須機能を与えていることおよびC.エレガンス(C. elegans)に摂取された場合、PEAMT様遺伝子のdsRNAが致死的であることが示唆される。これらの結果から、PEAMTがC.エレガンス(C. elegans)の生存には重要であることが実証され、これらが線虫の生存力を弱める化合物を開発するうえでの有用な標的となることが示唆される。
【0112】
PEAMT1およびPEAMT2のRNAiにより生じた表現型の化学的救済
下記の実験は、C.エレガンス(C. elegans)に酵素により触媒されると予測されるPEAMT反応の下流の産物を供給することにより、PEAMT1/PEAMT2のRNAiによるノックアウトの表現型を救済することができるかどうかを試験するために設計された。遊離塩基(EA、MME、DMEおよびCho)を細菌培地に添加すると、これらは取り込まれて、エタノールアミン/コリンキナーゼの作用により対応するリン酸塩基に変換されるものと思われた。
【0113】
線虫C.エレガンス(C. elegans)に特定の化学物質(EA、MME、DMEまたはCho)とともにPEAMT1、PEAMT2、アクチンまたはGFPに相同なdsRNAを発現する細菌を捕食させた。化学物質は、NGMプレートにさまざまな濃度で添加し、陰性(GFP dsRNA)および陽性(アクチンdsRNA)対照は、各濃度の各化学物質または化学物質の混合物に対して行った。具体的には、NGMおよび表1(下記を参照されたい)に明記されている化学物質を含有する寒天プレートに、PEAMT1またはPEAMT2に相同な二本鎖RNAを発現する細菌を蒔いた。多くの実験の場合、L1幼虫または耐性幼虫一匹を各プレートに蒔いて培養し、その後5日間、P0(親)およびF1(子)について調べた。その他の実験の場合、L4のC.エレガンス(C. elegans)の雌雄同体一匹を各プレートに蒔いて培養した。雌雄同体に24時間産卵させて、子孫F1の表現型を最初の24時間の産卵期間後の48時間、採点した。採点時、4個体の子孫F1を同じ化学物質およびプレート上で増殖した細菌を含有する別個のプレートにクローン化した。子孫F1およびF2をその後4〜5日間にわたり、表現型が存在するかどうか調べた。
【0114】
(表5)C.エレガンス(C. elegans) PEAMT1およびPEAMT2のRNAi捕食(feeding)による表現型 (P0動物としてC.エレガンス(C. elegans)のL1幼虫、耐性幼虫、またはL4幼虫から開始)

【0115】
C.エレガンス(C. elegans)ホスホエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼタンパク質PEAMT1およびPEAMT2はともに、ホスホコリンへのホスホエタノールアミンの変換を触媒する。RNAiにより生じたPEAMT1またはPEAMT2変異体はどちらもコリンの量が低下し、これにより不稔性、またはL1/L2幼虫発達停止および致死につながると予測される。25 mMコリンの添加により、PEAMT1のRNAiによる表現型とPEAMT2のRNAiによる表現型の両方と関連した幼虫発達停止が救済される。しかしながら、PEAMT1変異体だけが5 mMモノメチルエタノールアミン(MME)または5 mMジメチルエタノールアミン(DME)の添加により救済され、一方でPEAMT2変異体は救済されない(表5を参照されたい)。これらのデータは、pChoへのpEAの変換において、PEAMT1が第一のメチル化を触媒する一方でPEAMT2が第二または第三のメチル化を触媒するという予測と一致している:

。5 mM DMEにより、PEAMT1のRNAiと関連した不稔性が救済される。DMEによる救済から、不稔性はコリン産生の低下に起因するものであって、PEAMT変異により引き起こされる他の変化に起因するものではないことが強く示唆される。
【0116】
データから同様に、コリンのみが救済化学物質(rescuing chemical)として使用される場合、PEAMT1およびPEAMT2のRNAiによる表現型を相補するのに、25 mMコリンが必要とされることが実証される。このことから、線虫が環境から獲得できるコリンの量により、この経路を阻害する化学物質が無効化される可能性は低いことが示唆される。
【0117】
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)に対するエタノールアミンに構造的に類似した小分子の殺線虫活性
殺線虫活性を目的としてC.エレガンス(C. elegans)に対して試験したエタノールアミン類似分子の構造を下記に示す。
【0118】
(表6)

【0119】
酵素の機能を阻害する化学物質の開発のための一つのアプローチは、基質結合を模倣するが、しかし酵素により影響を及ぼされることのない化合物を同定することである。従って、いくつかのエタノールアミン由来化合物について、培養でC.エレガンス(C. elegans)を死滅させる能力について試験した。窒素に、その窒素に隣接する炭素(C2)に、および酸素に隣接する炭素(C1)に置換があるものを含め、エタノールアミンのさまざまな位置に置換がある化合物を試験した。
【0120】
C.エレガンス(C. elegans)のL4幼虫(P0動物)一匹を、さまざまな濃度のエタノールアミン様化合物を含有するNGMプレートにスポットされた大腸菌(E. coli)の菌叢に蒔いて培養した。数日にわたって目視観察することにより、23℃でP0およびその子孫F1の増殖および発達を監視した。試験した4つの化合物 [2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、D-フェニルアラニノールおよびN-(2-ヒドロキシエチル)アニリン]は、C.エレガンス(C. elegans)に対して殺線虫活性を示した。さらに、殺線虫性のエタノールアミン様化合物で処理した線虫の表現型は、PEAMT1および PEAM2のRNAiによる表現型によく似ていた。すなわち、処理した線虫の子孫F1は、L1/L2ステージを越えて発達せずに死滅した。C1-置換化合物の2-アミノ-1-フェニルエタノールでC.エレガンス(C. elegans)を処理しても殺線虫効果は示されなかった。
【0121】
(表7) C.エレガンス(C. elegans)に対するエタノールアミン様化合物の殺線虫活性

【0122】
植物寄生虫に対するエタノールアミン様化合物の殺線虫活性
上述のエタノールアミン様化合物は同様に、植物寄生虫のサツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)およびジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)に対しても殺線虫性である。J2ステージの幼虫25〜50匹を表示の濃度の化合物(溶液)に48時間浸漬した。処理後、幼虫は、NGMを含有する寒天プレートに移した。塗布スポットからはい出る寄生虫は生存していると採点し、一方、塗布スポットにとどまる寄生虫は死亡していると採点する。C.エレガンス(C. elegans)に対して殺線虫性であった3つの化合物は同様に、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)およびジャワネコブセンチュウ(M. javanica)に対しても殺線虫性であった。
【0123】
(表8)

【0124】
その他の線虫に対するエタノールアミン様化合物の殺線虫活性
上述のエタノールアミン様化合物は同様に、アクロビロイデス・エレスメレンシス(Acrobiloides ellesmerensis)およびセファロバス種(Cephalobus sp.)に対しても殺線虫性である。アッセイ法は、C.エレガンス(C. elegans)のL4幼虫に対して記述したように行った。C.エレガンス(C. elegans)に対して殺線虫性であった、4つの化合物のうちの3つについて試験し、アクロビロイデス・エレスメレンシス(A. ellesmerensis)およびセファロバス種(Cephalobus sp.)に対して殺線虫性であることが判明した。
【0125】
(表9)

【0126】
本明細書に記述される分子の構造に基づいたスルホン酸の、ホスホン酸の、またはリン酸塩のプロドラッグにより、親分子そのものよりもさらに高い活性が得られるものと思われる。リン酸化された基質と相互作用する、PEAMT1およびPEAMT2のような酵素は、基質の非リン酸化型よりもそのリン酸化型に強固に結合する。例えば、SH2ドメインの場合、リン酸化ペプチドは、非リン酸化ペプチドよりも4桁高い結合性を示す(Bradshawら、(1999) J. Mol. Biol. 293(4):971〜85)。従って、エタノールアミン様化合物にリン酸塩、またはリン酸塩擬似体(例えば、ホスホン酸塩、スルホン酸塩)を付加して酵素に対する親和性を増大させることで、これらをPEAMT酵素のより強力な阻害剤とできるものと思われる。
【0127】
さらなるホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列の同定
当業者は上記の実施例に示される方法を使用して、さらなる線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列、例えば、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)ならびに/またはC.エレガンス(C. elegans)以外の線虫由来のPEAMT様配列を同定することができる。さらに、線虫のPEAMT様配列は、コンピュータに基づくデータベース検索、ハイブリダイゼーションに基づく方法、および機能相補を含む種々の方法により同定することができる。
【0128】
データベースの識別
線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列は、本明細書に開示される配列を問い合わせ配列として使用し、配列データベース、例えば、タンパク質または核酸データベースから同定することができる。配列比較プログラムを使用して、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列を比較および解析することができる。そのようなソフトウェア・パッケージの一つは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Institute) (NCBI; Altschulら、(1997) Nucl. Acids Research 25:3389〜3402)によるプログラムのBLASTパッケージソフトである。本発明のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列を使用して、コンピュータに基づくデータベース検索、例えば、FASTA、BLAST、またはPSI-BLAST検索により、nr、dbest(発現配列タグ(EST)の配列)、およびhtgs(高速決定ゲノム配列)のような配列データベースに問い合わせを行うことができる。その他の種(例えば、植物および動物)の相同配列は、nrのようなデータベースのPSI-BLAST検索で検出することができる(E値 = 10、H値 = 1e-2、例えば、4回反復を使用して; www.ncbi.nlm.nih.govで利用可能)。このように得られた配列を使用して、マルチプル・アライメント、例えば、ClustalXによるアライメントを作成することができる、ならびに/または例えば、近隣結合法(Saitouら、(1987) Mol. Biol. Evol. 4:406〜425)およびブートストラッピング(反復1000回; Felsenstein (1985) Evolution 39:783〜791)を使用したClustalXで系統樹を構築することができる。距離は複数置換の発生に対して補正することができる[Dcorr = -ln(1-D-D2/5) 式中Dは、2つの配列間のアミノ酸相違の割合である] (Kimura (1983) The Neutral Theory of Molecular Evolution, Cambridge University Press)。
【0129】
上記の検索方法を使用して、以下の限定されない、代表的な属の線虫においてホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列を同定することができる: 植物寄生性線虫属: アフリナ(Afrina)、アンギナ(Anguina)、アフェレンコイデス(Aphelenchoides)、ベロノライムス(Belonolaimus)、ブルサフェレンクス(Bursaphelenchus)、カコパウルス(Cacopaurus)、カクトデラ(Cactodera)、クリコネマ(Criconema)、クリコネモイデス(Criconemoides)、クリホデラ(Cryphodera)、ジチレンクス(Ditylenchus)、ドリコドルス(Dolichodorus)、ドリライムス(Dorylaimus)、グロボデラ(Globodera)、ヘリコチレンクス(Helicotylenchus)、ヘミクリコネモイデス(Hemicriconemoides)、ヘミサイクリオホラ(Hemicycliophora)、ヘテロデラ(Heterodera)、ヒルシュメニエラ(Hirschmanniella)、ホプロライムス(Hoplolaimus)、ハイポペリン(Hypsoperine)、ロンギドルス(Longidorus)、メロイドジン(Meloidogyne)、メソアンギナ(Mesoanguina)、ナコブス(Nacobbus)、ナコボデラ(Nacobbodera)、パナグレラス(Panagrellus)、パラトリコドルス(Paratrichodorus)、パラチレンクス(Paratylenchus)、プラチレンクス(Pratylenchus)、プテロチレンクス(Pterotylenchus)、プンクトデラ(Punctodera)、ロドホルス(Radopholus)、ラジナフェレンクス(Rhadinaphelenchus)、ロチレンクルス(Rotylenchulus)、ロチレンクス(Rotylenchus)、スクテロネマ(Scutellonema)、サバンギナ(Subanguina)、テカベルミクラタス(Thecavermiculatus)、トリコドルス(Trichodorus)、ツルバトリックス(Turbatrix)、チレンコリンクス(Tylenchorhynchus)、チレンクルス(Tylenchulus)、キシフィネマ(Xiphinema)。
【0130】
動物寄生性およびヒト寄生性線虫属:
アカントケイロネマ(Acanthocheilonema)、エルロストロンギルス(Aelurostrongylus)、アンサイロストマ(Ancylostoma)、アンギオストロンギルス(Angiostrongylus)、アニサキス(Anisakis)、アリカリス(Ascaris)、アスカロプス(Ascarops)、ブノストマム(Bunostomum)、ブルギア(Brugia)、カピラリア(Capillaria)、カベルティア(Chabertia)、クーペリア(Cooperia)、クレノソマ(Crenosoma)、サイアストム種(Cyathostome species)(スモール・ストロンギルス(Small Strongyles))、ジクチオコーラス(Dictyocaulus)、ジオクトフィマ(Dioctophyma)、ジペタロネマ(Dipetalonema)、ジロフィラリア(Dirofiliaria)、ドラクンクルス(Dracunculus)、ドラスキア(Draschia)、エラネオホラ(Elaneophora)、エンテロビウス(Enterobius)、フィラロイデス(Filaroides)、グナトストマ(Gnathostoma)、ゴニロネマ(Gonylonema)、ハブロネマ(Habronema)、ヘモンクス(Haemonchus)、ヒオストロンギルス(Hyostrongylus)、ラゴキラスカリス(Lagochilascaris)、リトモソイデス(Litomosoides)、ロア(Loa)、マモモノガムス(Mammomonogamus)、マンソネラ(Mansonella)、ミュラリウス(Muellerius)、メタストロンギルド(Metastrongylid)、ネカトール(Necator)、ネマトジルス(Nematodirus)、ニッポストロンジラス(Nippostrongylus)、エソファゴストマム(Oesophagostomum)、オルラナス(Ollulanus)、オンコセルカ(Onchocerca)、オステルタルギア(Ostertagia)、オキシスピウラ(Oxyspirura)、オキシウリス(Oxyuris)、パラフィラリア(Parafilaria)、パラスカリス(Parascaris)、パラストロンギロイデス(Parastrongyloides)、パラレラホストロンギルス(Parelaphostrongylus)、フィサロプテラ(Physaloptera)、フィソセファルス(Physocephalus)、プロトストロンギルス(Protostrongylus)、シュードテラノーバ(Pseudoterranova)、セタリア(Setaria)、スピロセルカ(Spirocerca)、ステファナルス(Stephanurus)、ステファノフィラリア(Stephanofilaria)、ストロンギロイデス(Strongyloides)、ストロンギルス(Strongylus)、シンガムス(Syngamus)、テラドサギア(Teladorsagia)、テラジア(Thelazia)、トキソカリス(Toxascaris)、トキソカラ(Toxocara)、トリキネラ(Trichinella)、トリコストロンギルス(Trichostrongylus)、トリクリス(Trichuris)、ウンシナリア(Uncinaria)、およびウケレリア(Wuchereria)。
【0131】
特に好ましい線虫属には以下が含まれる: 植物: アンギナ(Anguina)、アフェレンコイデス(Aphelenchoides)、ベロノライムス(Belonolaimus)、ブルサフェレンクス(Bursaphelenchus)、ジチレンクス(Ditylenchus)、ドリコドルス(Dolichodorus)、グロボデラ(Globodera)、ヘテロデラ(Heterodera)、ホプロライムス(Hoplolaimus)、ロンギドルス(Longidorus)、メロイドジン(Meloidogyne)、ナコブス(Nacobbus)、プラチレンクス(Pratylenchus)、ロドホルス(Radopholus)、ロチレンクス(Rotylenchus)、チレンクルス(Tylenchulus)、キシフィネマ(Xiphinema)。
【0132】
動物およびヒト寄生虫:
アンサイロストマ(Ancylostoma)、アリカリス(Ascaris)、ブルギア(Brugia)、カピラリア(Capillaria)、クーペリア(Cooperia)、サイアストム種(Cyathostome species)、ジクチオコーラス(Dictyocaulus)、ジロフィラリア(Dirofiliaria)、ドラクンクルス(Dracunculus)、エンテロビウス(Enterobius)、ヘモンクス(Haemonchus)、ネカトール(Necator)、ネマトジルス(Nematodirus)、エソファゴストマム(Oesophagostomum)、オンコセルカ(Onchocerca)、オステルタルギア(Ostertagia)、オキシスピルラ(Oxyspirura)、オキシウリス(Oxyuris)、パラスカリス(Parascaris)、ストロンギロイデス(Strongyloides)、ストロンギルス(Strongylus)、シンガムス(Syngamus)、テラドルサギア(Teladorsagia)、テラジア(Thelazia)、トキソカラ(Toxocara)、トリキネラ(Trichinella)、トリコストロンギルス(Trichostrongylus)、トリクリス(Trichuris)、およびウケレリア(Wuchereria)。
【0133】
特に好ましい線虫種には以下が含まれる: 植物寄生虫: アンギナ・トリティサイ(Anguina tritici)、フェレンコイデス・フラガリエ(Aphelenchoides fragariae)、ベロノライムス・ロンギコウダタス(Belonolaimus longicaudatus)、ブルサフェレンクス・キシロフィラス(Bursaphelenchus xylophilus)、ジチレンクス・デストラクター(Ditylenchus destructor)、ジチレンクス・ジスパサイ(Ditylenchus dipsaci)、ドリコドルス・ヘテロセファロウス(Dolichodorus heterocephalous)、グロボデラ・パリダ(Globodera pallida)、グロボデラ・ロストキエンシス(Globodera rostochiensis)、グロボデラ・タバクム(Globodera tabacum)、ヘテロデラ・アベネ(Heterodera avenae)、ヘテロデラ・カルジオラタ(Heterodera cardiolata)、ヘテロデラ・カロテ(Heterodera carotae)、ヘテロデラ・クルシフェラ(Heterodera cruciferae)、ヘテロデラ・グリシネス(Heterodera glycines)、ヘテロデラ・マジョール(Heterodera major)、ヘテロデラ・スカクチイ(Heterodera schachtii)、ヘテロデラ・ゼアエ(Heterodera zeae)、ホプロライムス・チレンキホルミス(Hoplolaimus tylenchiformis)、ロンギドルス・シルカス(Longidorus sylphus)、メロイドジン・アクルネア(Meloidogyne acrnea)、メロイドジン・アレナリア(Meloidogyne arenaria)、メロイドジン・キトウッディ (Meloidogyne chitwoodi)、メロイドジン・エキシグア(Meloidogyne exigua)、メロイドジン・グラミニコーラ(Meloidogyne graminicola)、メロイドジン・ハプラ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)、メロイドジン・ナッシ(Meloidogyne nassi)、ナコブス・バタチホルミス(Nacobbus batatiformis)、プラチレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、プラチレンクス・コフィア(Pratylenchus coffeae)、プラチレンクス・ペネトランス(Pratylenchus penetrans)、プラチレンクス・スクリブネリ(Pratylenchus scribneri)、プラチレンクス・ゼアエ(Pratylenchus zeae)、ロドホルス・シミリス(Radopholus similes)、ロチレンクス・レニホルミス(Rotylenchus reniformis)、チレンクルス・セミペントランス(Tylenchulus semipenetrans)、キシフィネマ・アメリカーヌム(Xiphinema americanum)。
【0134】
動物およびヒト寄生虫:
アンサイロストマ・ブラジリエンス(Ancylostoma braziliense)、アンサイロストマ・カニナム(Ancylostoma caninum)、アンサイロストマ・セイラニカム(Ancylostoma ceylanicum)、アンサイロストマ・デュオデナーレ(Ancylostoma duodenale)、アンサイロストマ・トゥバエフォルム(Ancylostoma tubaeforme)、アリカリス・スーム(Ascaris suum)、アリカリス・ランブリコイデス(Ascaris lumbrichoides)、ブルギア・マレー(Brugia malayi)、カピラリア・ボヴィス(Capillaria bovis)、カピラリア・プリカ(Capillaria plica)、カピラリア・フェリスカティ(Capillaria feliscati)、クーペリア・オンコホラ(Cooperia oncophora)、クーペリア・パンクタータ(Cooperia punctata)、サイアストム種(Cyathostome species)、ジクチオコーラス・フィラリア(Dictyocaulus filaria)、ジクチオコーラス・ヴィヴィパルス(Dictyocaulus viviparus)、ジクチオコーラス・アーンフィエルディ(Dictyocaulus arnfieldi)、ジロフィラリア・イミチス(Dirofiliaria immitis)、ドラクンクルス・インシグニス(Dracunculus insignis)、エンテロビウス・ベルミカラリス(Enterobius vermicularis)、ヘモンクス・コントルツス(Haemonchus contortus)、ヘモンクス・プラセイ(Haemonchus placei)、ネカトール・アメリカナス(Necator americanus)、ネマトジルス・ヘルベティアナス(Nematodirus helvetianus)、エソファゴストマム・ラジアタム(Oesophagostomum radiatum)、オンコセルカ・ボルブラス(Onchocerca volvulus)、オンコセルカ・セルヴィカリス(Onchocerca cervicalis)、オステルタルギア・オステルタギ(Ostertagia ostertagi)、オステルタルギア・サーカムシンクタ(Ostertagia circumcincta)、オキシウリス・エクイ(Oxyuris equi)、パラスカリス・エクオラム(Parascaris equorum)、ストロンギロイデス・ステルコラリス(Strongyloides stercoralis)、ストロンギルス・バルガリス(Strongylus vulgaris)、ストロンギルス・エデンタタス(Strongylus edentatus)、シンガムス・トラキア(Syngamus trachea)、テラドルサギア・サーカムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)、トキソカラ・カティ(Toxocara cati)、トリキネラ・スピラリス(Trichinella spiralis)、トリコストロンギルス・アクセイ(Trichostrongylus axei)、トリコストロンギルス・コラブリホルミス(Trichostrongylus colubriformis)、トリクリス・バルピス(Trichuris vulpis)、トリクリス・スイス(Trichuris suis)、トリクリス・トリキウラ(Trichuris trichiura)、およびウケレリア・バンクロフト(Wuchereria bancrofti)。
【0135】
さらに、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列を使用して、ゲノム内のさらなるPEAMT様配列の相同体を同定することができる。PEAMT様配列の多数の相同複製物が存在する可能性がある。例えば、線虫PEAMT様配列を、wormpep(E値 = 1e-2、H値 = 1e-4、例えば、4回反復を使用して)のような重複のないデータベースのPSI-BLAST反復検索(デフォルトパラメータ、置換行列 = Blosum62、ギャップ開始 = 11、ギャップ拡張 = 1)のなかでシード配列として使用し、データベース中の、例えば、生物の完全ゲノムを含むデータベース中の相同体の数を決定することができる。線虫PEAMT様配列は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個、またはそれ以上の個数の相同体とともにゲノム中に存在する可能性がある。
【0136】
ハイブリダイゼーション法
線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列は、本明細書に提供される配列をプローブとして使用し、ハイブリダイゼーションに基づく方法により同定することができる。例えば、線虫のゲノムまたはcDNAクローンのライブラリーを、プローブの核酸と低いストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズすることができる。ストリンジェンシー条件を調節して、バックグラウンドシグナルを低下させかつ潜在的な陽性(クローン)からのシグナルを増加させることができる。このように同定されたクローンを配列決定して、これらがPEAMT様配列をコードすることを確認することができる。
【0137】
別のハイブリダイゼーションに基づく方法では、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を使用する。PEAMT様配列の保存領域(例えば、図3に描かれた線虫3配列の保存領域)にハイブリダイズするように、オリゴヌクレオチド、例えば、縮重オリゴヌクレオチドを設計する。このオリゴヌクレオチドを、線虫、例えば、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)ならびに/またはC.エレガンス(C. elegans)以外の線虫由来の鋳型核酸からPEAMT様配列を増幅させるためのプライマーとして使用する。増幅された断片をクローニングおよび/または配列決定することができる。
【0138】
相補性法
線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列は、PEAMT様活性を欠いている細胞にPEAMT様活性を回復させる核酸分子を目的とした相補的な探索から同定することができる。日常的な方法を使用して、特定の酵素活性、例えば、PEAMT活性を欠いている株(すなわち、線虫株)を構築することができる。例えば、PEAMTの遺伝子座で変異した線虫株は、阻害化合物に対する耐性を選別することで同定できる。そのような株に、線虫のcDNAを発現するプラスミドライブラリーを形質転換することができる。PEAMT活性が回復する株を同定することができる。例えば、プラスミドライブラリーで形質転換されたPEAMT変異株をアロステリック阻害剤または他の阻害化合物に曝して、阻害剤に対する感受性を獲得しかつ線虫PEAMT様遺伝子を発現している株を選別することができる。その株に含まれるプラスミドを回収して、発現時にPEAMT様活性を与える線虫の挿入cDNAを同定するおよび/または特徴付けることができる。
【0139】
完全長cDNAおよび配列決定法
以下の方法を例えば、単独でまたは本明細書に記述される別の方法と組み合わせ、完全長の線虫PEAMT様遺伝子を得てその配列を決定することができる。
【0140】
植物寄生性線虫は、線虫の嗜好性に応じ、温室ポット培養にて維持される。ネコブセンチュウ(メロイドジン種(Meloidogyne sp))はラトガーズ(Rutgers)トマト(Burpee)で増殖され、一方、ダイズシストセンチュウ(ヘテロデラ種(Heterodera sp))は大豆で増殖される。線虫の総RNAは、TRIZOL試薬(Gibco BRL)により単離する。簡単に言えば、パックされた線虫2 mlをTRIZOL試薬8 mlと合わせて、ボルテックスにより可溶化させる。室温で5分のインキュベーション後、試料を少量に分けて、14,000×gにて4℃で10分間遠心し、不溶性物質を除去する。液相をクロロホルム200 μlで抽出し、上の水相を新しいチューブに取り出す。イソプロパノール500 μlを添加することでRNAを沈殿させて、遠心してペレット状(沈殿物)にする。水相を注意深く取り除いて、それから沈殿物を75%エタノールで洗浄し、遠心してRNA沈殿物を再回収する。上清を注意深く取り除いて、それから沈殿物を10分間風乾させる。RNA沈殿物をDEPC水50 μlに再懸濁させ、分光光度法により波長(λ)260および280 nmで分析して、収量および純度を決定する。収量としては、パックした線虫2 mlから総RNA 1〜4 mgが可能である。
【0141】
完全長のcDNAは、5'および3'RACE技術をEST配列情報と組み合わせて使用し、産生させることができる。分子技術5'RACE(Life Technologies社、Rockville, MD)を使用して、線虫PEAMT様cDNA配列に対するcDNA配列の完全なまたはほぼ完全な5'末端を得ることができる。簡単に言えば、Life Technologiesにより提供される使用説明書に従って、マウス白血病ウイルスの逆転写酵素(M-MLV RT)および、例えば、利用可能なEST配列から設計された、遺伝子特異的「アンチセンス」プライマーを用いて、線虫の総RNAから第一鎖cDNAを合成する。RNase Hを使用して、元の鋳型mRNAを分解する。第一鎖cDNAは、GlassMAXスピンカートリッジを用いて、取り込まれていないdNTP、プライマー、およびタンパク質から分離する。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を使用して、第一鎖cDNAの3'末端へのヌクレオチドdCTPの連続付加により、dCホモポリマーの末端伸長をもたらす。dCホモポリマーの付加・伸長後、第一鎖cDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にてTaq DNAポリメラーゼ、第一鎖cDNA分子の内側に位置する部位にアニールするように、利用可能なEST配列から設計された遺伝子特異的「アンチセンス」プライマー、およびcDNAのdCホモポリマーの末端領域にアニールするデオキシイノシン含有プライマーを用いて、さらに精製することなく直接的に増幅される。5'RACE PCR増幅産物は、さらなる解析および配列決定のため、適当なベクターにクローニングする。
【0142】
分子技術3'RACE(Life Technologies社、Rockville, MD)を使用して、線虫PEAMT様cDNA配列に対するcDNA配列の完全なまたはほぼ完全な3'末端を得ることができる。簡単に言えば、Life Technologies(Rockville, MD)により提供される使用説明書に従って、SuperScript(商標)逆転写酵素およびポリAテールにアニールするオリゴdTプライマーを用いて、線虫の総RNAに対し、第一鎖cDNA合成を行う。RNase Hを用いて元の鋳型mRNAを分解後、第一鎖cDNAは、Taq DNAポリメラーゼ、第一鎖cDNA分子の内側に位置する部位にアニールするように、利用可能なEST配列から設計された遺伝子特異的プライマー、およびオリゴdTプライマーの5'末端に同一の配列を含む「ユニバーサル」プライマーを用いて、さらに精製することなく直接的にPCR増幅される。3'RACE PCR増幅産物は、さらなる解析および配列決定のため、適当なベクターにクローニングする。
【0143】
核酸変異体
本発明の単離された核酸分子には、PEAMT様ポリペプチドをコードする読み取り枠を有する核酸分子が含まれる。そのような核酸分子には: 配列番号:1、2、3、4、5および/または6に列挙される配列; ならびに配列番号:13、14、15、16、17および/または18に列挙されるPEAMT様タンパク質をコードする配列を有する分子が含まれる。これらの核酸分子を例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ法で使用して、試料中のアリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)の核酸の存在を検出することができる。
【0144】
本発明には、変異誘発にかけられて、単一のまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、または挿入が引き起こされている可能性のある、配列番号:1、2、3、4、5および/または6に示されているもののような核酸分子が含まれる。本発明の線虫遺伝子のヌクレオチド挿入誘導体には、5'および3'末端融合体ならびに単一のまたは複数のヌクレオチドの配列内部挿入が含まれる。挿入によるヌクレオチド配列変異体は、一つまたは複数のヌクレオチドがヌクレオチド配列中の所定の部位に導入されるようなものであるが、得られる産物を適当にスクリーニングすることで、無作為導入もまた可能である。欠失変異体は、配列からの一つまたは複数のヌクレオチドの除去により特徴付けられる。ヌクレオチドの置換変異体は、配列中の少なくとも一つのヌクレオチドが除去され、その場所に異なるヌクレオチドが挿入されているようなものである。そのような置換はサイレント(例えば、同義置換)とすることができ、このことは置換が、そのコドンにより規定されるアミノ酸を変化させないことを意味する。または、あるアミノ酸を別のアミノ酸に変化させるため、置換(例えば、非同義置換)を設計することができる。非同義置換は、保存的置換または非保存的置換とすることができる。置換は、活性、例えば、PEAMT様活性が損なわれないようなものとすることができる。保存的アミノ酸置換により、同じように作用するアミノ酸、または類似の電荷、極性、もしくは疎水性のアミノ酸へのアミノ酸の変化、例えば、下記の表10に掲載されるアミノ酸置換が起こる。ある位置では、保存的アミノ酸置換でさえもポリペプチドの活性を妨害する可能性がある。
【0145】
(表10)保存的アミノ酸置換

【0146】
本発明により同様に、線虫PEAMT様配列のスプライス変異体が具体化される。
【0147】
本発明の別の局面により、配列番号:1、2、3、4、5および/もしくは6に示される核酸分子、またはその相補体に低いストリンジェンシー(または高いストリンジェンシー)条件の下でハイブリダイズできる、ポリペプチドをコードする核酸分子が具体化される。
【0148】
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドをコードする核酸分子は、天然に存在する核酸分子に一致してもよく、あるいは一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、および/または付加により異なってもよい。従って、本発明は、遺伝子および任意の機能的な変異体、誘導体、一部分、断片、天然に存在する遺伝子多型、その相同体もしくは類似体または機能的でない分子にまで及ぶ。そのような核酸分子を使用して、PEAMT遺伝子またはPEAMT様遺伝子の遺伝子多型を、例えば、他の線虫で検出することができる。下記のように、そのような分子は、遺伝子プローブ; 遺伝子の酵素または化学合成におけるプライマー配列として; または免疫学的に相互作用する組換え分子を産生するうえで有用である。配列番号:1、2、3、4、5および/または6のヌクレオチド配列のような、本明細書に提供される情報を使用して、PEAMT様分子をコードする核酸分子を、本明細書に記述される方法のような、標準的なクローニングおよびスクリーニング技術により得ることができる。
【0149】
本発明の核酸分子は、mRNAのような、RNAの形で、または例えば、クローニングにより得られるもしくは合成により産生されるcDNAおよびゲノムDNAを含む、DNAの形で存在することができる。DNAは二本鎖であっても一本鎖であってもよい。核酸はRNA/DNAハイブリッドの形で存在してもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、センス鎖とも呼ばれるコード鎖、またはアンチセンス鎖としても知られる非コード鎖とすることができる。
【0150】
本発明の一つの態様には、核酸分子を細胞中に輸送できかつ維持できるベクターに挿入された、配列番号:1、2、3、4、5、および/または6に描かれる単離された核酸分子を少なくとも一つ含む、組換え核酸分子が含まれる。DNA分子は自己複製ベクター(適当なベクターには、例えば、pGEM3ZおよびpcDNA3、ならびにその誘導体が含まれる)に挿入されてもよい。ベクターの核酸は、バクテリオファージλまたはM13およびその誘導体のようなバクテリオファージDNAとしてもよい。ベクターは、RNAまたはDNA(ベクター)のいずれか、一本鎖または二本鎖(ベクター)のいずれか、原核生物、真核生物、またはウイルス(ベクター)のいずれかとしてもよい。ベクターには、トランスポゾン、ウイルスベクター、エピソーム、(例えば、プラスミド)、染色体挿入断片、および人工染色体(例えば、BACまたはYAC)を含めることができる。本明細書に記載の核酸を含有するベクターの構築に続いて、細菌のような宿主細胞の形質転換が行われる。適当な細菌の宿主には、大腸菌(E. coli)が含まれるが、これに限定されることはない。適当な真核生物の宿主には、S.セルビジエ(S. cerevisiae)のような酵母、その他の真菌、脊椎動物の細胞、無脊椎動物の細胞(例えば、昆虫細胞)、植物細胞、ヒト細胞、ヒト組織細胞、および全ての真核生物(例えば、遺伝子導入植物または遺伝子導入動物)が含まれる。さらには、ベクターの核酸を使用して、ワクシニアまたはバキュロウイルスのようなウイルスを産生することができる。
【0151】
本発明は同様に、ポリペプチドの発現のために設計される遺伝子構築物にまで及ぶ。一般的に、遺伝子構築物には同様に、コード化核酸分子に加えて、プロモーターおよび調節性配列のような、発現を可能とする要素も含まれる。発現ベクターは、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、およびリプレッサー配列のような、転写開始を制御する転写制御配列を含むことができる。さまざまな転写制御配列が、当業者によく知られており、以下に限定されることはないが、細菌、酵母、植物、または動物細胞のなかで機能的となり得る。発現ベクターは同様に、翻訳調節配列(例えば、5'非翻訳配列、3'非翻訳配列、ポリA付加部位、または内部リボソーム侵入部位)、スプライシング配列またはスプライシング調節配列、および転写終結配列を含むことができる。ベクターは、自己複製できるまたは宿主DNAに組み込まれ得る。
【0152】
別の態様として、DNA分子は、β-グルクロニダーゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)、クロラムフェニコール-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子(およびその変異体)、または赤色蛍光タンパク質をコードする遺伝子、とりわけホタルルシフェラーゼ遺伝子のようなレポーター遺伝子に融合される。DNA分子は同様に、ポリペプチド親和性タグ、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、プロテインA、FLAGタグ、ヘキサ-ヒスチジン、またはインフルエンザ・ヘマグルチニン(HA)タグをコードする核酸に融合することもできる。親和性タグまたはレポーター融合体は、融合タンパク質(translational fusion)が産生されるように、親和性タグをコードするレポーター遺伝子の読み枠に配列番号:1、2、3、4、5および/または6の読み枠が連結される。融合遺伝子の発現により、線虫PEAMT様領域とレポータータンパク質または親和性タグの両方を含む、単一ポリペプチドの翻訳につながる。融合体は同様に、配列番号:1、2、3、4、5および/または6の読み枠の断片を連結することもできる。その断片は、PEAMT様ポリペプチドの機能領域、構造的に原型を保ったドメイン、またはエピトープ(例えば、約8個、10個、20個、もしくは30個またはそれ以上の個数のアミノ酸からなるペプチド)をコードすることができる。調節領域(例えば、5'調節領域、プロモーター、エンハンサー、5'非翻訳領域、翻訳開始部位、3'非翻訳領域、ポリアデニル化部位、または3'調節領域)のうちの少なくとも一つを含む、線虫PEAMT様核酸を同様に、異種核酸に融合することもできる。例えば、PEAMT様核酸のプロモーターを異種核酸、例えば、レポータータンパク質をコードする核酸に融合することができる。
【0153】
形質転換するのに適した細胞には、本発明の核酸分子で形質転換できる任意の細胞が含まれる。本発明の形質転換細胞は同様に、本明細書では組換え細胞または遺伝子導入細胞とも呼ばれる。適当な細胞は、形質転換されていない細胞または少なくとも一つの核酸分子で既に形質転換されている細胞とすることができる。本発明によって形質転換するのに適した細胞は: (i) 内在的にPEAMT様タンパク質を発現することができる、または; (ii) 少なくとも一つの本発明の核酸分子で形質転換後にそのタンパク質を産生することができる。
【0154】
例示的態様として、本発明の核酸を使用して、遺伝子導入線虫株、例えば、遺伝子導入C.エレガンス(C. elegans)株を産生することができる。そのような株を産生するため、核酸を線虫の生殖巣のなかに注入し、これによってその核酸を含有する遺伝性の染色体外配列(extrachromosomal array)が産生される(例えば、Melloら、(1991) EMBO J. 10:3959〜3970を参照されたい)。遺伝子導入線虫を増殖させて、導入遺伝子を持つ株を産生させることができる。この株の線虫をスクリーニングで使用して、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様遺伝子に特異的な阻害剤を同定することができる。
【0155】
オリゴヌクレオチド
同様にして提供されるのは、本発明の核酸分子との安定なハイブリッドを形成できるオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、約10〜200ヌクレオチド、約15〜120ヌクレオチド、または約17〜80ヌクレオチド長、例えば、約10、20、30、40、50、60、80、100、120ヌクレオチド長とすることができる。オリゴヌクレオチドは、核酸分子を同定するためのプローブ、核酸分子を産生させるためのプライマー、または線虫PEAMT様タンパク質の活性もしくは産生を阻害するための治療用試薬(例えば、アンチセンス(オリゴヌクレオチド)、三量体形成(オリゴヌクレオチド)、リボザイム、および/またはRNA薬に基づく試薬)として使用することができる。本発明には、RNA(ssRNAおよびdsRNA)、DNA、または両方の誘導体のオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明は、例えば、本明細書に記述される技術を用いて、感染性線虫の生死を判定することにより、線虫以外の生物(例えば、植物および動物)を病気から保護するためのそのようなオリゴヌクレオチドの使用にまで及ぶ。適当なオリゴヌクレオチドを含有する治療用組成物は、植物または動物における遺伝子導入発現を含むがこれに限定されることはない、当業者に周知の技術を用いて線虫以外の生物に投与することができる。
【0156】
プライマー配列を使用して、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様核酸またはその断片を増幅することができる。例えば、少なくとも10サイクルのPCR増幅を使用して、そのような増幅された核酸を得ることができる。プライマーは、少なくとも約8〜40、10〜30または14〜25ヌクレオチド長とすることができ、核酸の「鋳型分子」、例えば、PEAMT様遺伝子配列、もしくはその機能部分、またはその相補配列をコードする鋳型分子にアニールすることができる。核酸のプライマー分子は、配列番号:1、2、3、4、5および/または6に描かれる配列ならびにその相補配列に由来する、またはその配列のなかに含まれる、少なくとも10ヌクレオチド長の任意のヌクレオチド配列とすることができる。核酸の鋳型分子は、組換え体として、ウイルス粒子、バクテリオファージ粒子、酵母細胞、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、または細菌細胞として存在してもよい。プライマーは、日常的な方法により化学合成することができる。
【0157】
本発明により、線虫、原核生物、および他の真核生物、例えば他の動物および/または植物を含む、他の生物由来の類似遺伝子を同定かつ単離するために使用される、任意のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列が具体化される。
【0158】
別の態様として、本発明により、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様核酸分子に特異的なオリゴヌクレオチドが提供される。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)により引き起こされる病気を監視するため、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)の核酸が試料中に存在するかどうか決定するためのPCR試験で使用することができる。
【0159】
タンパク質の産生
線虫から単離されたホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様タンパク質は、組換えタンパク質の産生および回収ならびに/またはタンパク質の化学合成を含む、多くの方法で産生することができる。一つの態様として、単離された線虫PEAMT様タンパク質は、そのタンパク質の産生および回収に効果的な条件の下で、そのタンパク質を発現できる細胞、例えば、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞を培養することにより産生される。その核酸を異種プロモーター、例えば、誘導性プロモーターまたは構成性プロモーターに動作可能に連結することができる。効果的な増殖条件は通常、必ずしも以下であるとは限らないが、塩、水、炭素、窒素、リン酸源、無機物、および他の栄養物を含有する液体培地中である。しかしながら、その条件は、PEAMT様タンパク質が産生され得るような任意の溶液とすることができる。
【0160】
一つの態様として、タンパク質の回収とは、増殖溶液の収集を指してもよく、さらなる精製ステップが含まれる必要はない。しかしながら、本発明のタンパク質は、標準的な精製方法、例えば、以下に限定されることはないが、とりわけ、アフィニティー・クロマトグラフィー法、熱沈降法(thermoprecipitation)、イムノアフィニティー・クロマトグラフィー法、硫酸アンモニウム沈殿法、イオン交換クロマトグラフィー法、ろ過法、電気泳動法、疎水性相互作用クロマトグラフィー法により精製することができる。
【0161】
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様配列は、親和性タグ、例えば、精製用のハンドル(purification handle) (例えば、グルタチオン-S-リダクターゼ、ヘキサ-ヒスチジン、マルトース結合タンパク質、ジヒドロ葉酸リダクターゼ、またはキチン結合タンパク質)またはエピトープ・タグ(例えば、c-mycエピトープ・タグ、FLAG(商標)タグ、またはインフルエンザ・ヘマグルチニン(HA)タグに融合することができる。親和性タグを付けたタンパク質およびエピトープ・タグを付けたタンパク質は、日常的な当技術分野で知られる方法により精製することができる。
【0162】
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドに対する抗体
組換えホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様遺伝子産物またはその誘導体を使用して、免疫学的に相互作用する分子、例えば、抗体、またはその機能的な誘導体を産生させることができる。有用な抗体には、配列番号:7、8、9、10、11および/または12に列挙されるアミノ酸配列と実質的に同じ配列を有するか、またはこれらの配列に対して50個またはそれ以上の個数のアミノ酸にわたり少なくとも60%の類似性を有する、ポリペプチドに結合するものが含まれる。好ましい態様として、抗体は、配列番号:7、8、9、10、11および/または12に列挙されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する。抗体は、抗体断片および一本鎖抗体または二つまたはそれ以上のエピトープに結合できるキメラ抗体を含む、遺伝子組換え抗体とすることができる。そのような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル(抗体)としてもよく、かつ天然に存在する抗体から選別されてもよく、または組換えPEAMT様タンパク質に対して特異的に産生されてもよい。
【0163】
抗体は、組換えまたは精製したPEAMT様遺伝子または遺伝子産物を用いた免疫により得ることができる。本明細書では、「抗体」という用語は、免疫グロブリン、またはその断片を指す。抗体断片の例には、F(ab)およびF(ab')2断片、特にエピトープに結合できる機能的断片が含まれる。そのような断片は、例えば、ペプシンを用いたタンパク質分解的切断により、または遺伝子組換えにより産生することができる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、または組換え(抗体)とすることができる。さらに、抗体を改変して、キメラ(抗体)とすることができる、またはヒト化することができる。さらに、抗体を標識または毒素と結合することができる。
【0164】
抗体は、完全長のPEAMT様タンパク質、またはその断片、例えば、抗原性ペプチドに対して産生することができる。そのようなポリペプチドは、アジュバントに結合させて、免疫原性を向上させることができる。ポリクローナル血清は、ウサギのような実験動物に抗原を注射し、その後、血清を採取することにより産生される。または、抗原を使用してマウスを免疫する。リンパ球細胞をマウスから得て、ミエローマ細胞と融合させ、抗体を産生するハイブリドーマを形成させる。
【0165】
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様抗体を産生するためのペプチドは、約8残基、10残基、15残基、20残基、30残基またはそれ以上のアミノ酸残基長、例えば、配列番号:7、8、9、10、11および/または12から得られるそのような長さのペプチドとすることができる。ペプチドまたはエピトープは同様に、タンパク質の表面に露出する領域、例えば、親水性または両親媒性領域から選択することもできる。活性部位または結合部位の周辺のエピトープを選択することができ、その結果、そのエピトープに抗体が結合することで、活性部位への接近が遮断されるかまたは結合が阻害されるものと思われる。これらの領域のいずれか、または本明細書に記載される他の領域もしくはドメインと反応する、またはそれらに特異的な抗体が提供される。PEAMT様タンパク質に対する抗体は、PEAMT様活性を調節することができる。
【0166】
日常的な方法により産生できる、モノクローナル抗体は、配列番号:7、8、9、10、11および/または12に記載されるポリペプチドのようなPEAMT様ポリペプチドで免疫されたリンパ球との不死化細胞系(例えば、ミエローマ)の融合から形成されたハイブリドーマから大量にかつ均質的な形で得られる。
【0167】
さらに、抗体を遺伝子操作して、例えば、一本鎖抗体を産生させることができる(例えば、Colcherら、(1999) Ann N Y Acad Sci 880: 263〜280; およびReiter (1996) Clin Cancer Res 2: 245〜252を参照されたい)。さらに別の態様として、抗体は、スクリーニング手順に基づいて、例えば、ファージ・ディスプレイ・ライブラリーから抗体またはその断片をスクリーニングすることにより選択または改変される。
【0168】
本発明の抗体には、本発明の範囲内で種々の重要な用途がある。例えば、そのような抗体は: (i) 抗体処理に感受性の線虫から動物を防護するために動物を受動免疫する治療用化合物として; (ii) 線虫の存在を検出するための実験的アッセイ法における試薬として; (iii) 線虫、動物、真菌、細菌、および植物において遺伝子産物の発現をスクリーニングするための手段として; および/または(iv) PEAMT様タンパク質の精製手段として; (v) 治療目的で植物または動物で発現可能とされるか、植物または動物に導入可能とされるPEAMT阻害因子/活性化因子として使用することができる。
【0169】
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様タンパク質に対する抗体は、植物細胞で、例えば、遺伝子導入植物でまたは培養で産生させることができる(例えば、米国特許第6,080,560号を参照されたい)。
【0170】
アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様タンパク質を特異的に認識する抗体は、線虫のアリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)を同定するために使用することができ、従って、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)により引き起こされる病気を監視するために使用することができる。
【0171】
核酸薬剤
同様にして特徴とされるのは、線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様タンパク質をコードする核酸に対してアンチセンスの、単離された核酸である。「アンチセンス」核酸には、PEAMT様タンパク質をコードする核酸のコード鎖に相補的な配列が含まれる。相補性は、コード鎖のコード領域中にまたは非コード領域中に、例えば、5'または 3'非翻訳領域、例えば、翻訳開始部位であってもよい。アンチセンス核酸は、細胞のプロモーター(例えば、RNAポリメラーゼIIまたはIIIプロモーター)から産生させることができる、または細胞中に、例えば、リポソームを使用して導入することができる。例えば、アンチセンス核酸は、約10、15、20、30、40、50、75、90、120またはそれ以上のヌクレオチド長の長さを有する合成オリゴヌクレオチドとすることができる。
【0172】
アンチセンス核酸は、化学合成することができる、または酵素試薬、例えば、リガーゼを用いて産生することができる。アンチセンス核酸には同様に、改変型ヌクレオチド、および人工骨格構造、例えば、ホスホロチオエート誘導体、およびアクリジン置換ヌクレオチドを組み入れることもできる。
【0173】
リボザイム
アンチセンス核酸は、リボザイムとすることができる。リボザイムは、RNA、例えば、PEAMT様mRNAを特異的に切断するために設計することができる。そのようなリボザイムを設計するための方法は、米国特許第5,093,246号またはHaselhoffおよびGerlach (1988) Nature 334:585〜591に記述されている。例えば、リボザイムは、活性部位のヌクレオチド配列が、PEAMT様核酸に相補的となるように改変されている、テトラヒメナ(Tetrahymena) L-19 IVS RNAの誘導体とすることができる(例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号; およびCechら、米国特許第5,116,742号を参照されたい)。
【0174】
ペプチド核酸(PNA)
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様核酸に対するアンチセンス薬剤は、ペプチド核酸(PNA)とすることができる。疑似ペプチド骨格のためのデオキシリボース核酸骨格の置換に関する方法および記述については、Hyrupら、(1996) Bioorganic & Medicinal Chemistry 4: 5〜23)を参照されたい。PNAは、低いイオン強度の条件下で、その静電特性の結果としてDNAおよびRNAに特異的にハイブリダイズすることができる。PNAオリゴマーの合成は、Hyrupら(1996) (前記)およびPerry-O'Keefeら、Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 14670〜14675に記述されるような標準的な固相合成ペプチド合成手順により行うことができる。
【0175】
RNA干渉(RNAi)
二本鎖RNA(dsRNA)分子を使用して、RNA干渉として知られる過程により細胞のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様遺伝子を不活性化することができる(RNAi; 例えば、Fireら、(1998) Nature 391:806〜811、およびGonczyら、(2000) Nature 408:331〜336)。dsRNA分子は、本明細書に記載されるPEAMT様核酸またはその断片のヌクレオチド配列を有することができる。この分子を細胞、または合胞体、例えば、Fireら(前記)に記述されるように線虫の生殖巣のなかに注入することができる。
【0176】
スクリーニングアッセイ法
本発明の別の態様は、PEAMT様分子の活性を変化させる(例えば、阻害するまたは増強する)ことができる化合物の同定方法である。本明細書で「スクリーニングアッセイ法」とも呼ばれる、この方法には、以下の手順: (i) 単離されたPEAMT様タンパク質を試験阻害化合物と、試験化合物が存在しない場合にはそのタンパク質がPEAMT様活性を有するような条件の下で接触させる段階と、(ii) その試験化合物がPEAMT様活性を変化させるかどうかを決定する段階とが含まれるが、これに限定されることはない。線虫PEAMT様活性を変化させる適当な阻害剤または活性化剤には、おそらくしかし必ずしもそうであるとは限らないが、活性部位または結合部位で、線虫PEAMT様タンパク質と直接的に相互作用する化合物が含まれる。それらは同様に、活性部位または調節に関与する部位の外側の領域に結合することにより、例えば、アロステリック相互作用により線虫PEAMTタンパク質の他の領域と相互作用することもできる。
【0177】
一つの態様として、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMTを、酵母または細菌細胞のなかで発現させて、その後、TLCに基づく放射能アッセイ法で精製かつスクリーニングする(BologneseとMcGraw (2000) Plant Physiol. 124(4):1800〜13; Nuccioら、(2000) J Biol Chem. 275(19):14095〜101; Charronら、(2002) Plant Physiol. 129(1):363〜73)。14C-標識S-アデノシル-メチオニン(14C-SAM)補因子を使用し、ホスホエタノールアミン(pEA)、ホスホモノメチルエタノールアミン(pMME)、またはホスホジメチルエタノールアミン(pDME)の、14C-標識pMME、pDMEまたはホスホコリン(pCho)への変換をTLC分離後に監視する。pMME、pDMEまたはpChoへのpEA、pMMEまたはpDMEの変換を低下させる化合物が、PEAMT候補阻害剤である。
【0178】
化合物
試験化合物は、大きなまたは小さな分子、例えば、分子量約100〜10,000ダルトン; 200〜5,000ダルトン; 200〜2000ダルトン または200〜1,000ダルトンを有する有機化合物とすることができる。試験化合物は、任意の化合物、例えば、小さな有機分子、糖質、脂質、アミノ酸、ポリペプチド、ヌクレオシド、核酸、またはペプチド核酸とすることができる。小さな分子には、以下に限定されることはないが、代謝産物、代謝性類似体、ペプチド、ペプチド模擬体(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、有機化合物または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)が含まれる。化合物および化合物の合成のための成分は、民間の化学製品供給業者、例えば、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)から得ることができる。試験化合物または化合物は、天然に存在する化合物、合成化合物、またはその両者とすることができる。試験化合物は、本明細書に記載される方法により測定される物質のみとすることができる。または、試験化合物の収集物を本明細書に記載の方法により、連続的にまたは同時に測定することができる。
【0179】
化合物はまた、アロステリック阻害によりまたは基質のホスホエタノールアミン、ホスホモノメチルエタノールアミン、ホスホジメチルエタノールアミンもしくは補因子S-アデノシル-メチオニンが酵素に結合するのを妨げる、従って、その標的、すなわち、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼを調節することにより作用することができる。
【0180】
ハイスループット法を使用して、多数の化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。候補化合物のそのようなライブラリーは、作製するかまたは例えば、Chembridge社(San Diego, CA)から購入することができる。ライブラリーは、多様な化合物を含むように設計することができる。例えば、ライブラリーには、10,000、50,000、もしくは100,000またはそれ以上の固有の化合物を含めることができる。単なる実例として、ライブラリーは、ピリジン、インドール、キノリン、フラン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、イミダゾール、ナフタレン、ベンズイミダゾール、ピペリジン、ピラゾール、ベンズオキサゾール、ピロリジン、チオフェン、チアゾール、ベンゾチアゾール、およびモルホリンを含むヘテロ環から構築することができる。ライブラリーは、例えば、DeWittら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909〜6913; Erbら、(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422〜11426; Zuckermannら、(1994) J. Med. Chem. 37:2678〜2685; Choら、(1993) Science 261: 1303〜1305; Carrellら、(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carellら、(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061; およびGallopら、(1994) J. Med. Chem. 37:1233〜1251に記述されているように、そのようなクラスの化学物質を含むように設計および合成することができる。
【0181】
生物に基づくアッセイ法
生物をマイクロタイタープレート、例えば、6ウェル、32ウェル、64ウェル、96ウェル、384ウェルプレート中で増殖させることができる。
【0182】
一つの態様として、生物は線虫である。線虫を遺伝子組換えすることができる。そのような組換え線虫の非限定的な例には: 1) 一つまたは複数のPEAMT様遺伝子が不活性化された(例えば、RNA干渉により)線虫または線虫細胞(アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)、ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)、および/またはC.エレガンス(C. elegans)); 2) 異種PEAMT様遺伝子、例えば、別の種のPEAMT様遺伝子を発現する線虫または線虫細胞; および3) 一つまたは複数の内在性PEAMT様遺伝子が不活性化されかつ異種PEAMT様遺伝子、例えば、本明細書に記載されるようなアリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMT様遺伝子を発現する線虫または線虫細胞が含まれる。
【0183】
複数の候補化合物、例えば、コンビナトリアル・ライブラリーをスクリーニングすることができる。ライブラリーは、ロボット操作に従順な形で、例えば、マイクロタイタープレートで提供され得る。化合物をマイクロタイタープレートのウェルに添加することができる。化合物の添加およびインキュベーション後、線虫または線虫細胞の生存および/または生殖特性を監視する。
【0184】
化合物をプールして、このプールを試験することもできる。陽性のプールをその後の解析のために分割する。方法には関係なく、線虫、線虫細胞、または線虫の子孫の生存または生殖能を低下させる化合物がリード化合物と見なされる。
【0185】
別の態様として、化合物を微生物または真核生物細胞系もしくは哺乳類細胞系、例えば、ウサギ皮膚細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、および/またはHela細胞に対して試験することができる。例えば、PEAMT様遺伝子を欠くものの、線虫PEAMT様遺伝子を発現するCHO細胞を使用することができる。そのような株の産生は、当技術分野において日常業務である。線虫および線虫細胞に対して上述したように、細胞系は、各ウェルに異なる候補化合物または候補化合物のプールが含まれる、マイクロタイタープレートのなかで増殖させることができる。増殖を測定の間にまたは後に監視して、化合物または化合物のプールが線虫PEAMT様ポリペプチドの活性調節因子であるかどうかを決定する。
【0186】
インビトロ活性測定
スクリーニングアッセイ法は、インビトロ活性測定とすることができる。例えば、線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドは、前述のように精製することができる。そのポリペプチドを測定容器、例えば、マイクロタイタープレートのウェルのなかに配置することができる。候補化合物を測定容器に添加することができ、かつPEAMT様活性を測定する。選択的に、その活性を、候補化合物が配置されていないかまたは不活性もしくは機能的でない化合物が配置されている、対照容器のなかで測定された活性と比較する。
【0187】
インビトロ結合アッセイ法
スクリーニングアッセイ法はまた、無細胞結合アッセイ法、例えば、線虫PEAMT様ポリペプチドに結合する化合物を同定するためのアッセイ法とすることもできる。例えば、線虫PEAMT様ポリペプチドを精製かつ標識することができる。標識ポリペプチドをビーズと接触させる。各ビーズは質量分析法により検出可能なタグ、および試験化合物、例えば、コンビナトリアル・ケミストリー法により合成された化合物を有する。標識ポリペプチドが結合するビーズを質量分析法により同定かつ解析する。ビーズは、「分割プール(split-and-pool)」合成法により作製することができる。この方法には、化合物がPEAMT様ポリペプチドの活性を変化させるかどうかを決定する二次アッセイ法をさらに含めることができる。
【0188】
化合物の最適化
リード化合物が同定されたら、医薬品化学の標準的な原理を利用して、化合物の誘導体を産生させることができる。向上した薬理学的特性、例えば、有効性、薬物動態、安定性、溶解性、およびクリアランスを目的として、誘導体をスクリーニングすることができる。上述のアッセイ法において化合物の活性に関与する成分は、当技術分野において一般に実践されているような構造活性相関(SAR)試験により描写することができる。リード化合物の成分を修飾し、それによって効能の増した誘導体を生ずる化合物の有効性に関してその修飾の効果を測定することができる。一例として、Nagarajanら、(1988) J. Antibiot. 41:1430〜1438を参照されたい。修飾には、N-アセチル化、アミノ化、アミド化、酸化、還元、アルキル化、エステル化、および水酸化を含めることができる。さらに、リード化合物の生化学的な標的が知られているかまたは決定されている場合、標的およびリード化合物の構造から、誘導体の設計および最適化に関する情報が与えられる可能性がある。これを行う分子モデリング・ソフトウェアが市販されている(例えば、Molecular Simulations社)。Shukerら、(1996) Science 274:1531〜1534に記述されているような、「SAR-NMR」法を使用して、低親和性リガンドを結合することにより、親和性が増加したリガンドを設計することができる。
【0189】
好ましい化合物は、ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドの機能を阻害しかつ植物、動物、またはヒトに対して実質的に有毒でないものである。「実質的に有毒でない」とは、化合物が各動物、またはヒトのPEAMTタンパク質またはホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ活性に実質的に影響を及ぼさないことを意味する。従って、アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)、ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)および/またはストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のPEAMTの特に望ましい阻害剤は、線虫以外のPEAMT様ポリペプチドまたは脊椎動物、例えば、ヒトのホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼの活性を実質的に阻害しない。その他の望ましい化合物は、トマト(GenBank(登録商標)識別番号: 12584943)、ホウレンソウ(GenBank(登録商標)識別番号: 7407189)、またはコムギ(GenBank(登録商標)識別番号: 17887465)のような植物のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼの活性を実質的に阻害しない。
【0190】
標準的な製薬方法を使用して、PEAMT様活性の調節因子の毒性および治療有効性を評価することができる。LD50(個体群の50%致死量)およびED50(個体群の50%治療効果量)を細胞培養、実験植物(例えば、実験室または野外研究で)、または実験動物で測定することができる。選択的に、比率LD50/ED50として表現される治療指数を決定することができる。高い治療指数は、化合物が効果的なPEAMT様阻害剤であるのと同時に、被検体(例えば、宿主植物または宿主動物)に過度の毒性または副作用を引き起こさないことを示す。
【0191】
または、線虫以外のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドを調節する候補化合物の能力を、例えば、本明細書に記載の方法により測定する。例えば、哺乳類PEAMT様ポリペプチドに対する候補化合物の阻害定数を測定し、線虫PEAMT様ポリペプチドに対する阻害定数と比較することができる。
【0192】
上述の解析を使用して、脊椎動物または他の動物(例えば、哺乳類)のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドと比較して線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドに対して特異性を有する調節因子を同定および/または設計することができる。標的とするのに適した線虫は、PEAMT様タンパク質、または線虫PEAMTタンパク質の活性を別の方法で阻害する、低下させる、活性化する、もしくはその活性に広く影響を及ぼす化合物により標的化され得るタンパク質を有する任意の線虫である。
【0193】
線虫ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様タンパク質の阻害剤を使用して、アフィニティー・クロマトグラフィー法のような、当技術分野において知られる手順により、線虫または他の生物のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様タンパク質を同定することもできる。例えば、特異抗体を樹脂に結合させて、線虫の抽出物をその樹脂に通すことができ、その結果、抗体に結合する任意のPEAMT様タンパク質を樹脂に結合させることができる。それに続く、当業者に知られる生化学的方法を実行して、結合したPEAMT様タンパク質を精製かつ同定することができる。
【0194】
農業用組成物
ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチドの阻害剤と同定される化合物は、線虫耐性を与えるために、植物、土壌、または種子に適用される組成物として製剤化することができる。組成物は、溶液、例えば、水溶液のなかで、重量約0.005%〜10%、または約0.01%〜1%、または約0.1%〜0.5%の濃度として調製することができる。溶液には、有機溶媒、例えば、グリセロールまたはエタノールを含めることができる。組成物は、一つまたは複数の農業的に許容される担体により製剤化することができる。農業的な担体には: 粘土、タルク(滑石)、ベントナイト、珪藻土、カオリン(陶土)、シリカ、ベンゼン、キシレン、トルエン、ケロシン(灯油)、N-メチルピロリドン、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、および同様のもの)、およびケトン(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、および同様のもの)を含めることができる。製剤は選択的に、安定剤、展着剤、湿潤性増量剤(wetting extender)、分散剤、固着剤、崩壊薬、および他の添加剤をさらに含むことができ、かつ液体、水溶性固形物(例えば、錠剤、粉剤または顆粒剤)、またはペーストとして調製することができる。
【0195】
適用する前に、溶液を別の望ましい組成物、例えば、別の駆虫剤、殺菌薬、肥料、植物成長調整剤および同様のものと組み合わせることができる。溶液は、例えば、散布(例えば、噴霧器を用いて)により、浸漬により、貼付により、または手動式塗布(例えば、スポンジを用いて)により、植物組織に適用することができる。溶液は同様に、空輸源、例えば、航空機または他の空中物体、例えば、溶液を散布するための装置を備えた固定物であって、所望の植物組織に溶液を散布するのに十分に高い位置にある固定物から散布することもできる。または、組成物を揮発源または空輸源から植物組織に適用することができる。散布源を植物組織の近くに設置して、組成物を大気拡散により散布する。接触させる植物組織と散布源とを、インキュベーター、生育容器、もしくは温室のなかに入れることができる、またはこれらを戸外とできるだけ十分に接近させることができる。
【0196】
組成物を植物全体に散布する場合、組成物を葉以外の組織に、例えば、茎または根に適用することができる。従って、組成物を灌漑により散布することができる。組成物を同様に根または茎のなかに直接注入することもできる。
【0197】
当業者であれば、組成物の有効成分の製剤化に適した用量を決定することができるものと思われる。例えば、ED50を実験データから前述のように決定することができる。活性成分の用量を実験的に変化させることでデータを得て、線虫を殺傷するのに効果的であるのと同時に、宿主植物または宿主動物(すなわち、線虫以外の動物)に毒性をもたらさない用量を同定することができる。
【0198】
本発明のいくつかの態様について記述してきた。それでもなお、当然のことながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなくさまざまな変更を行うことが可能である。従って、その他の態様は、添付の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】アリカリス・スーム(A. suum)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT1)のcDNA配列(配列番号:1)、そのコードする対応アミノ酸配列(配列番号:7)、およびその読み取り枠(配列番号:13)が描かれる。
【図2】ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT1)のcDNA配列(配列番号:2)、そのコードする対応アミノ酸配列(配列番号:8)、およびその読み取り枠(配列番号:14)が描かれる。
【図3】サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT1)のcDNA配列(配列番号:3)、そのコードする対応アミノ酸配列(配列番号:9)、およびその読み取り枠(配列番号:15)が描かれる。
【図4】ストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT1)のcDNA配列(配列番号:4)、そのコードする対応アミノ酸配列(配列番号:10)、およびその読み取り枠(配列番号:16)が描かれる。
【図5】アリカリス・スーム(A. suum)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT2)のcDNA配列(配列番号:5)、そのコードする対応アミノ酸配列(配列番号:11)、およびその読み取り枠(配列番号:17)が描かれる。
【図6】ジャワネコブセンチュウ(M. javanica)ホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT2)のcDNA配列(配列番号:6)、そのコードする対応アミノ酸配列(配列番号:12)、およびその読み取り枠(配列番号:18)が描かれる。
【図7】アリカリス・スーム(A. suum)、ヘモンクス・コントルタス(H. contortus)、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)およびストロンギロイデス・ステルコラリス(S. stercoralis)のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチド(配列番号:7、8、9および10)ならびにC.エレガンス(C. elegans)PEAMT1様ポリペプチド(配列番号:19および20)の配列のアライメントである。
【図8】アリカリス・スーム(A. suum)およびジャワネコブセンチュウ(M. javanica)のホスホエタノールアミンn-メチルトランスフェラーゼ様ポリペプチド(配列番号:11および12)ならびにC.エレガンス(C. elegans)PEAMT2様ポリペプチド(配列番号:21)の配列のアライメントである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列が配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項1記載の精製ポリペプチド。
【請求項3】
アミノ酸配列が配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、請求項2記載の精製ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号:7のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項6】
アミノ酸配列が配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項5記載の精製ポリペプチド。
【請求項7】
アミノ酸配列が配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、請求項6記載の精製ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号:8のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項9】
配列番号:9のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項10】
アミノ酸配列が配列番号:9のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項9記載の精製ポリペプチド。
【請求項11】
アミノ酸配列が配列番号:9のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、請求項10記載の精製ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号:9のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号:10のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項14】
アミノ酸配列が配列番号:10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項13記載の精製ポリペプチド。
【請求項15】
アミノ酸配列が配列番号:10のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、請求項14記載の精製ポリペプチド。
【請求項16】
配列番号:10のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項17】
配列番号:11のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項18】
アミノ酸配列が配列番号:11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項17記載の精製ポリペプチド。
【請求項19】
アミノ酸配列が配列番号:11のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、請求項18記載の精製ポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:11のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項21】
配列番号:12のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項22】
アミノ酸配列が配列番号:12のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項21記載の精製ポリペプチド。
【請求項23】
アミノ酸配列が配列番号:12のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、請求項22記載の精製ポリペプチド。
【請求項24】
配列番号:12のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチド。
【請求項25】
請求項3または4記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項26】
請求項7または8記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項27】
請求項11または12記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項28】
請求項15または16記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項29】
請求項19または20記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項30】
請求項23または24記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項31】
配列番号:13のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項32】
配列番号:14のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項33】
配列番号:15のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項34】
配列番号:16のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項35】
配列番号:17のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項36】
配列番号:18のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項37】
動作可能に連結された異種プロモーターをさらに含む、請求項25記載の単離核酸。
【請求項38】
動作可能に連結された異種プロモーターをさらに含む、請求項26記載の単離核酸。
【請求項39】
動作可能に連結された異種プロモーターをさらに含む、請求項27記載の単離核酸。
【請求項40】
動作可能に連結された異種プロモーターをさらに含む、請求項28記載の単離核酸。
【請求項41】
動作可能に連結された異種プロモーターをさらに含む、請求項29記載の単離核酸。
【請求項42】
動作可能に連結された異種プロモーターをさらに含む、請求項30記載の単離核酸。
【請求項43】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:7のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項44】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:8のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項45】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:9のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項46】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:10のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項47】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:11のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項48】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:12のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項49】
ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定する段階をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項50】
ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定する段階をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項51】
ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定する段階をさらに含む、請求項45記載の方法。
【請求項52】
ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定する段階をさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項53】
ポリペプチドのPEAMT2様活性を測定する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項54】
ポリペプチドのPEAMT2様活性を測定する段階をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項55】
以下の段階をさらに含む、請求項43記載の方法:
(a) 植物PEAMT様ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項56】
以下の段階をさらに含む、請求項44記載の方法:
(a) 第二のPEAMT様ポリペプチドが植物PEAMT様ポリペプチドである、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項57】
以下の段階をさらに含む、請求項45記載の方法:
(a) 植物PEAMT様ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項58】
以下の段階をさらに含む、請求項46記載の方法:
(a) 第二のPEAMT様ポリペプチドが植物PEAMT様ポリペプチドである、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項59】
以下の段階をさらに含む、請求項47記載の方法:
(a) 植物PEAMT様ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項60】
以下の段階をさらに含む、請求項48記載の方法:
(a) 第二のPEAMT様ポリペプチドが植物PEAMT様ポリペプチドである、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドとの試験化合物の結合を測定する段階。
【請求項61】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:7のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定し、その際に、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT1様活性に対するPEAMT様活性の変化が、試験化合物がポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階。
【請求項62】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:8のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定し、その際に、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT1様活性に対するPEAMT様活性の変化が、試験化合物がポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階。
【請求項63】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:9のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定し、その際に、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT1様活性に対するPEAMT様活性の変化が、試験化合物がポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階。
【請求項64】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:10のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドのPEAMT1様活性を測定し、その際に、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT1様活性に対するPEAMT様活性の変化が、試験化合物がポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階。
【請求項65】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:11のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドのPEAMT2様活性を測定し、その際に、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT2様活性に対するPEAMT様活性の変化が、試験化合物がポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階。
【請求項66】
以下の段階を含む、方法:
(a) 配列番号:12のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する段階;
(b) ポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) ポリペプチドのPEAMT2様活性を測定し、その際に、試験化合物をなしとした場合のポリペプチドのPEAMT2様活性に対するPEAMT様活性の変化が、試験化合物がポリペプチドの活性を変化させることの指標である段階。
【請求項67】
以下の段階をさらに含む、請求項61記載の方法:
(a) 植物PEAMT様ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドのPEAMT様活性を測定する段階。
【請求項68】
以下の段階をさらに含む、請求項62記載の方法:
(a) 第二のPEAMT様ポリペプチドが植物PEAMT様ポリペプチドである、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドのPEAMT様活性を測定する段階。
【請求項69】
以下の段階をさらに含む、請求項63記載の方法:
(a) 植物PEAMT様ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドのPEAMT様活性を測定する段階。
【請求項70】
以下の段階をさらに含む、請求項64記載の方法:
(a) 第二のPEAMT様ポリペプチドが植物PEAMT様ポリペプチドである、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドのPEAMT様活性を測定する段階。
【請求項71】
以下の段階をさらに含む、請求項65記載の方法:
(a) 植物PEAMT様ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドのPEAMT様活性を測定する段階。
【請求項72】
以下の段階をさらに含む、請求項66記載の方法:
(a) 第二のPEAMT様ポリペプチドが植物PEAMT様ポリペプチドである、第二のポリペプチドを提供する段階;
(b) 第二のポリペプチドに試験化合物を接触させる段階; および
(c) 第二のポリペプチドのPEAMT様活性を測定する段階。
【請求項73】
配列番号:7からなるポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項74】
配列番号:8からなるポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項75】
配列番号:9からなるポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項76】
配列番号:10からなるポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項77】
配列番号:11からなるポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項78】
配列番号:12からなるポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項79】
高いストリンジェンシー条件の下で、配列番号:1からなる核酸分子にハイブリダイズする、単離核酸分子。
【請求項80】
高いストリンジェンシー条件の下で、配列番号:2からなる核酸分子にハイブリダイズする、単離核酸分子。
【請求項81】
高いストリンジェンシー条件の下で、配列番号:3からなる核酸分子にハイブリダイズする、単離核酸分子。
【請求項82】
高いストリンジェンシー条件の下で、配列番号:4からなる核酸分子にハイブリダイズする、単離核酸分子。
【請求項83】
高いストリンジェンシー条件の下で、配列番号:5からなる核酸分子にハイブリダイズする、単離核酸分子。
【請求項84】
高いストリンジェンシー条件の下で、配列番号:6からなる核酸分子にハイブリダイズする、単離核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−511202(P2006−511202A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−516164(P2004−516164)
【出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/019794
【国際公開番号】WO2004/001011
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(504468285)ダイバージェンス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】