説明

締付工具

【課題】ソケット自体の長さが短く、作業性を格段に向上させた締付工具の提供。
【解決手段】本発明の締付工具は、一端または両端にソケット孔11a、11bを有するアウターソケット10に、一端または両端にソケット孔21a、21bを有するインナーソケット20を収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有し、インナーソケット10およびアウターソケット20が、ソケット孔11a、11b、21a、21bの軸に垂直方向に収縮自在な弾性体(Cリング)30によって、軸方向に移動自在な状態で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付工具に係り、特に、複数のサイズのボルトまたはナット(以下、これらをあわせて「ボルト等」という。)の締め付けに対応可能な締付工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅建築現場、路線インフラ建設現場、電力インフラ建設現場などにおいては、構造材同士をボルト等によって固定する作業があるが、その構造材の種類や用途などにより、様々なサイズのボルト等が用いられる。
【0003】
例えば、住宅建築現場においては、主として、10mm、13mm、14mm、17mm、19mm、21mmおよび24mmサイズのボルト等(六角形状)の使用頻度が高い。例えば、10mmまたは13mmサイズは、配管設備の固定に、14mmサイズはダクト・配線設備の固定に、17mmサイズは床下・軽天設備の固定または足場などの自在クランプの固定に、19mmサイズはアンカー、羽子板の固定に、21mmサイズはブラケットの固定に、24mmはホールダウンの固定にそれぞれ用いられる。
【0004】
例えば、路線インフラ建設現場では、主として、17mm、19mm、21mm、24mm、30mm、36mmおよび41mmサイズのボルト等(六角形状)の使用頻度が高い。例えば、17mmサイズは自在クランプの固定に、21mmサイズは鉄骨クランプの固定に、36mmサイズは鉄骨の固定、41mmサイズはブルマン(登録商標)ボルトなどの締結金具の固定などに用いられます。
【0005】
例えば、電力インフラ建設現場においては、地域によって異なるものの、多くの場合、17mm、19mm、21mm(または22mm)および24mmサイズの六角形状のボルト等と、19mmおよび24mmサイズの四角形状のボルト等が用いられる。
【0006】
このようなボルト等の締め付けには、インパクトドライバーなどの電動工具が用いられることも多いが、締め付け場所に十分な空間がない場合や仮止めを行う場合には手工具が用いられる。この手工具としては、複数のソケット孔を有するソケットレンチ、特に、ワンタッチで回転方向を切替え可能なラチェットレンチなどの締付工具が重宝されている。
【0007】
例えば、図8に示すように、ラチェットレンチ100は、ハンドル部103の先に、爪部102を有するヘッド部100が接続されており、ヘッド部104の一方または両方にソケット孔101が接続されており、ソケット孔101は周方向に歯車(図示しない)を有しており、爪部102の向きを変更することにより、回転可能な方向を調整できる構成となっている。ソケット孔101は、1つのみのものもあるが、図8に示す例では二つのソケット孔を有している。また、それぞれのソケット孔の中には、更に小径のソケット孔が設けられている場合もある。ソケット孔の数が2つの場合は2ウェイ、4つの場合は4ウェイなどと呼ばれることがある。
【0008】
例えば、住宅建築現場の大工工事では、17mm、19mm、21mmおよび24mmのソケット孔を有する4ウェイ・ラチェットレンチが好まれ、内装工事またはダクト工事においては、10mm、13mm、14mmおよび17mmサイズのソケット孔を有する4ウェイ・ラチェットレンチが好まれる傾向にある。また、鳶職人によっては、14mm、17mm、19mmおよび21mmサイズのソケット孔を有する4ウェイ・ラチェットレンチを好む人もいる。
【0009】
複数のソケット孔を有する締付工具に関しては、様々な発明が開示されている。
【0010】
例えば、特許文献1には、ハンドルの両端部にソケットが夫々T字状に取り付けられたソケットレンチであって、ハンドルがその長手方向中央部で2つに分割されて、双方の分割ハンドル部がハンドルの軸芯周りに相対回転可能に連結されてなるソケットレンチに関する発明が記載されており、その図1には、8つのソケット孔を有するソケットレンチが示されている。
【0011】
特許文献2には、ヘッドに嵌着される筒状のアウターソケットと、アウターソケット内に挿入される筒状のインナーソケットと、インナーソケット外周に配置されてアウターソケット内に配置される2つのばねとからなり、アウターソケット内周面の内周溝と組み合わせて、インナーソケットの挿入軸方向にこれを押し込むことで位置決めが可能な自動位置保持機構を構成するレンチヘッドに関する発明が記載されており、その図4などには、4つのソケット孔を有するラチェットレンチが示されている。
【0012】
特許文献3には、「絶縁体で被覆された略棒状の柄と、前記柄の先端に設けられねじの頭に嵌合される嵌合部を有する略板状の本体と、を備える締付工具を覆うカバーであって、絶縁体で構成され、一端が開口し前記柄の外径より大きい内径を有する略筒状の筒状部と、前記筒状部の他端から延びて前記嵌合部を露出させた状態で前記本体の側部を覆う被覆部と、を備えるカバー。」と、このようなカバーと、絶縁体で被覆された略棒状の柄と前記柄の先端に設けられ前記ねじの頭に嵌合する嵌合部を有する略板状の本体とを備える締付工具とを備える電気工事用締付工具に関する発明が記載されている。この発明は「カバー」に着目した発明であり、その図1などでは、2つのソケット孔を有するラチェットレンチが示されているだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−353664号公報
【特許文献2】特開2008−62331号公報
【特許文献3】特開2007−44829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載のソケットレンチにおいて、例えば、図1の左側のソケットは、インナーソケットがアウターソケット内を摺動する構成を有しており、例えば、図5に示されるように、ソケットの向きを垂直にすると、インナーソケットがずり落ちてしまう。このため、インナーソケットを使用する場合に、ボルトとソケット孔との位置がずれた状態ではインナーソケットが容易に押し込まれ、インナーソケットを使用しにくいという問題がある。
【0015】
一方、特許文献1の図1の右側のソケットは、インナーソケットの位置をバネで制御する構成を有している。この場合、4つのソケット孔を有するソケットを構成するためには、バネを両端に設ける必要があり、必然的にソケットを長くせざるを得ず、作業性が悪くなる。また、上述の場合と同様、インナーソケットを使用しようとした場合に、ボルトとソケット孔との位置がずれた状態ではインナーソケットが容易に押し込まれるため、インナーソケットの使用が困難になるという問題がある。
【0016】
特許文献2に記載のソケットレンチにおいても、例えば、その図4〜7に示されるように、4つのソケット孔を有するソケットを構成するためには、バネを両端に設ける必要があり、上記の場合と同様の問題が生じる。
【0017】
特許文献3に記載の電気工事用締付工具は、両端にソケット孔が一つずつあるだけで、インナーソケットを備えるものではない。
【0018】
本発明は、一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具において、ソケットの使用時にはアウターソケットとインナーソケットとの位置関係を固定し、ソケットの切替時には、アウターソケットとインナーソケットとの位置関係を容易に変更することができる締付工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上述の従来技術の問題を解決するために鋭意研究を行った結果、アウターソケットとインナーソケットとが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体(例えば、Cリング)によって、軸方向に移動自在な状態で接続されている構成を採用することにより、ソケット自体の長さを短くすることができ、しかも、インナーソケットの使用時にソケットが移動しないため、インナーソケット使用時の作業性を格段に向上させることを知見した。
【0020】
本発明は、上記の知見に基づきなされたものであり、下記(1)〜(3)の締付工具を要旨とする。
【0021】
(1)一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具であって、インナーソケットおよびアウターソケットが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されていることを特徴とする締付工具。
【0022】
(2)一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具であって、インナーソケットおよびアウターソケットが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されており、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在であり、アウターソケット内にインナーソケットを移動自在に取り付けるための弾性体と、アウターソケットの内周およびインナーソケットの外周のいずれか一方に前記弾性体を収容する弾性体収容凹部が設けられ、他方のインナーソケットの外周またはアウターソケットの内周にアウターソケットおよびインナーソケットを所定の位置関係に保持するための第1凹部および第2凹部が設けられていることを特徴とする締付工具。
【0023】
(3)一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具であって、インナーソケットおよびアウターソケットが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されており、アウターソケットの内周に、前記弾性体を収容する弾性体収容凹部が設けられ、インナーソケットの外周に、アウターソケットおよびインナーソケットを所定の位置関係に保持するための第1凹部および第2凹部が設けられていることを特徴とする締付工具。
【0024】
本発明の締付工具は、例えば、ラチェットレンチである。また、アウターソケットにハンドル部を接続した構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、アウターソケットとインナーソケットとが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されている構成を採用しているので、ソケット自体の長さを短くすることができ、しかも、インナーソケットの使用時にソケットが移動しないため、インナーソケット使用時の作業性を格段に向上させることができる。本発明は、4つのソケット孔を有するラチェットレンチとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】締付工具の工具先端に取り付けられるアウターソケットの例を示す図 (a) 外観図 (b) 断面図
【図2】アウターソケットの内部に収容可能なインナーソケットの例を示す図
【図3】インナーソケットおよびアウターソケットの分解断面を例示した図
【図4】締付工具の使用態様に応じたインナーソケットおよびアウターソケットの位置関係の例を示す図 (a) 第2ソケット孔または第3ソケット孔を使用する場合の例 (b) 第1ソケット孔または第4ソケット孔を使用する場合の例
【図5】他の締付工具に用いられるインナーソケットおよびアウターソケットの分解断面を例示した図
【図6】締付工具の使用態様に応じたインナーソケットおよびアウターソケットの位置関係の例を示す図 (a) 第1ソケット孔または第2ソケット孔を使用する場合の例 (b) 第3ソケット孔または第2ソケット孔を使用する場合の例 (c) 第1ソケット孔または第4ソケット孔を使用する場合の例 (d) 第3ソケット孔または第4ソケット孔を使用する場合の例
【図7】他の締付工具の使用態様に応じたインナーソケットおよびアウターソケットの位置関係の例を示す図
【図8】ラチェットレンチの外観を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、4ウェイ・ラチェットレンチの場合を例にとって、本発明に係る締付工具の実施形態を説明する。
【0028】
図1は、締付工具の工具先端に取り付けられるアウターソケットの例を示す図であり、(a)は外観図、(b)は断面図をそれぞれ示している。図2は、アウターソケットの内部に収容可能なインナーソケットの例を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、例えば、アウターソケット10は、小径の第1ソケット孔11aおよび大径の第2ソケット孔11bを有している。また、アウターソケット10の内周面の中央部には、弾性体収容凹部14が設けられている。アウターソケット10の外周面の中央部には、歯車12と溝13が設けられている。アウターソケット10は、前出の図6に示す例と同様、ラチェットレンチのヘッド部に取り付けられ、歯車12の回転方向がヘッド部の爪部によって制御される。溝13は、アウターソケット10のヘッド部への取り付け時に利用される。具体的には、Cリング(リングバネともいう。図示しない。)を溝13に嵌め込んだ状態でアウターソケット10をヘッド部に挿入することで、取り付けが行われる。溝13がない構成でもヘッドへの取り付けが可能な場合がある。
【0030】
なお、図1に示すソケット孔は、内面に12角の溝を形成したものであるが、6角の溝を形成したものでも良い。アウターソケット10は、切削加工、鍛造など通常の製造方法により製造可能である。
【0031】
図2に示すように、例えば、インナーソケット20は、小径の第3ソケット孔21aおよび大径の第4ソケット孔21bを有している。図3に示すソケット孔は、内面に6角の溝を形成したものであるが、12角の溝を形成したものでも良い。そして、例えば、図3に示すように、インナーソケット20の外周には、第1凹部22aおよび第2凹部22bが形成されている。第1凹部22aおよび第2凹部22bは、それぞれが隣接する壁面にテーパー加工が施されている。
【0032】
インナーソケット20は、アウターソケット10内に挿入され、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在なCリング(図4の符号30参照)によって、インナーソケット20およびアウターソケット10が相互に軸方向に移動自在な状態で接続されている。
【0033】
図3は、インナーソケットおよびアウターソケットの分解断面を例示した図である。図3に示すように、まず、アウターソケット10の弾性体収納凹部14にCリング30が嵌め込まれる。Cリング30の外径は、弾性体収納凹部14の底面の内径より小さく、弾性体収納凹部14の壁面の内径より大きい。このため、Cリング30が弾性体収納凹部14から外れることはない。
【0034】
そして、例えば、インナーソケット本体部20aをアウターソケット10内に挿入した状態で、Cリング23を溝24に嵌め込み、インナーソケット部品部20bをCリング23が溝25に嵌るまで押し込むことで、アウターソケット10内にインナーソケット20を取り付けることができる。また、Cリング23を予めインナーソケット部品部20bの溝25に嵌め込んだ状態で、インナーソケット本体部20aをアウターソケット10内に挿入し、Cリング23がインナーソケット本体部20aの溝24に嵌るまでインナーソケット部品部20bを押し込むことで、アウターソケット10内にインナーソケット20を取り付けることもできる。
【0035】
Cリング23の外径は、溝25の底面の内径より小さく、溝25の壁面の内径より大きい。また、Cリング23の内径は、溝24の底面の外径より大きく、溝24の壁面の外径より小さい。このため、インナーソケット本体部20aは、Cリング23を介してインナーソケット部品部20bと固定される。これにより、アウターソケット10内にインナーソケット20を摺動可能な状態で取り付けることができる。
【0036】
なお、インナーソケット20を収納したアウターソケット10は、図8に示す例と同様、ラチェットレンチのヘッド部に取り付けられ、歯車12の回転方向は、ヘッド部の爪部によって制御される。
【0037】
図4は、締付工具の使用態様に応じたインナーソケットおよびアウターソケットの位置関係の例を示す図であり、(a)は、第2ソケット孔または第3ソケット孔を使用する場合の例、(b)は、第1ソケット孔または第4ソケット孔を使用する場合の例をそれぞれ示している。
【0038】
図4(a)に示すように、例えば、インナーソケット20を図面左方向にスライドさせて、弾性体30を第2凹部22bに嵌め込むと、インナーソケット20の第3ソケット孔(小径ソケット孔)21aまたはアウターソケット10の第2ソケット孔(大径ソケット孔)11bを使用することが可能となる。一方、図4(b)に示すように、例えば、インナーソケット20を図面右方向にスライドさせて、弾性体30を第1凹部22aに嵌め込むと、インナーソケット20の第4ソケット孔(大径ソケット孔)21bまたはアウターソケット10の第1ソケット孔(小径ソケット孔)11aを使用することが可能となる。
【0039】
ソケットの使用時には、弾性体30の径を押し広げる余程大きな力が付与されない限り、インナーソケット10とアウターソケットの相互の位置関係が変わることはないが、前述のように、第1凹部22aおよび第2凹部22bには、それぞれが隣接する壁面にテーパー加工が施されているため、一方の凹部から他方の凹部に弾性体30の位置を移動させる場合には、ある程度の力を付与すれば、弾性体30の径を押し広げることがことができるので、ソケットの使用サイズ変更が容易に行うことができる。
【0040】
本発明の締付工具は、このような構成を有しているので、ソケットの使用時にはアウターソケットとインナーソケットとの位置関係を確実に固定し、ソケットの切替時には、アウターソケットとインナーソケットとの位置関係を容易に変更することができる。本発明の締付工具は、更に、従来のバネを利用した締付工具と比較して、ソケット自体の長さを短くすることができ、しかも、インナーソケットの使用時にソケットが移動しないため、インナーソケット使用時の作業性を格段に向上させることができる。
【0041】
図5は、他の締付工具に用いられるインナーソケットおよびアウターソケットの分解断面を例示した図である。また、図6は、締付工具の使用態様に応じたインナーソケットおよびアウターソケットの位置関係の例を示す図であり、(a)は、第1ソケット孔または第2ソケット孔を使用する場合の例、(b)は、第3ソケット孔または第2ソケット孔を使用する場合の例、(c)は、第1ソケット孔または第4ソケット孔を使用する場合の例、(d)は、第3ソケット孔または第4ソケット孔を使用する場合の例をそれぞれ示している。これらの図に示す例では、インナーソケットがラチェットレンチのヘッド部に取り付けられ、ハンドル部に接続される。
【0042】
図5に示すように、この例に係る締付工具においては、径が異なる二つのアウターソケット40a、40bと、インナーソケット60と、径が異なる二つの弾性体50a、50bが用いられる。図示しないが、二つのアウターソケット40a、40bの内面には、図1の符号14で示したのと同様の弾性体収納凹部が形成されており、弾性体50aはアウターソケット40aの弾性体収納凹部に、弾性体50bはアウターソケット40bの弾性体収納凹部に、それぞれ収納される。アウターソケット40aの図面左端には第1ソケット孔(小径)41aが形成され、アウターソケット40aの図面右端には第2ソケット孔(大径)41bが形成されている。
【0043】
そして、アウターソケット40aをインナーソケットの第3ソケット(小径)61aに覆い被せ、弾性体50aが第3ソケット61aの第1凹部62aの位置になるまでアウターソケット40aを押し込み、一方、アウターソケット40bをインナーソケットの第4ソケット(小径)61bに覆い被せ、弾性体50bが第4ソケット61bの第1凹部63aの位置になるまでアウターソケット40bを押し込むことにより、アウターソケット40a、40bをインナーソケット60に取り付けることができる。
【0044】
ここで、図6(a)に示す状態にすれば、アウターソケット40aの第1ソケット孔41aまたはアウターソケット40bの第2ソケット41bが使用でき、図6(b)に示す状態にすれば、インナーソケット60の第3ソケット孔61aまたはアウターソケット40bの第2ソケット41bが使用できる。また、図6(c)に示す状態にすれば、アウターソケット40aの第1ソケット孔41aまたはインナーソケット60の第4ソケット61bが使用でき、図6(d)に示す状態にすれば、インナーソケット60の第3ソケット孔61aまたは第4ソケット61bが使用できる。
【0045】
ここで、図6に示すインナーソケット60をヘッド部に取り付ける構成の場合、図4に示すものに比較して部品点数が増えるというデメリットがあるものの、図4に示す第1から第4までのソケット孔を自由に組み合わせることができるというメリットがある。例えば、径21mmの第1ソケット孔、径24mmの第2ソケット孔、径17mmの第3ソケット孔、径19mmの第4ソケット孔で構成される締付工具の場合、図4に示す例では、径21mmおよび径19mmの組み合わせまたは径24mmおよび径17mmの組み合わせとなり、径21mmと径17mmとを繰り返し使用する場合には、その都度、切替を余儀なくされるが、図6に示す例では、予め、径21mmおよび径17mmの組み合わせに設定することができる。
【0046】
なお、アウターソケット40a、40bを装着したインナーソケット60は、図8に示す例と同様、ラチェットレンチのヘッド部に取り付けられ、歯車12の回転方向は、ヘッド部の爪部によって制御される。
【0047】
以上、主として、アウターソケットの内周に弾性体(Cリング)を収容する弾性体収容凹部が設けられ、他方のインナーソケットの外周に第1凹部および第2凹部が設けられている構成例について説明したが、インナーソケットの外周に弾性体(Cリング)を収容する弾性体収容凹部が設けられ、他方のアウターソケットの内周に第1凹部および第2凹部が設けられている構成であっても良い。また、上記の説明では、4ウェイのラチェットレンチの場合を例にとって説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されない。例えば、インナーソケットとアウターソケットとを切り替えて使用する締付工具であれば、本発明の構成を採用することができ、例えば、所謂ラチェット機能を有しないソケットレンチにも採用できるし、2ウェイのレンチにも採用可能である。
【0048】
上記の説明では、弾性体としてCリング(リングバネ)を用いる場合を説明したが、弾性体は、Cリングに限定されず、例えば、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮することができるものであれば、板バネ、ピンなどの形状をした弾性体を用いることもできる。
【0049】
図7は、弾性体として板バネを使用した締付工具の使用態様に応じたインナーソケットおよびアウターソケットの位置関係の例を示す図である。
(注:ご提示の図面を参考に図7を作りました。御確認下さい。貴案のものでは、アウターソケットの固定が難しいと思いましたので、インナーソケットの軸を長くしています。また、幅3mm程度の板バネを使用するようなケースを想定して図を作成しています。インナーソケットの軸の周囲を覆うような場合については補足的に記載するようにしました。)
【0050】
図7に示すように、例えば、インナーソケット20を図面左方向にスライドさせて、弾性体(板バネ)31の凸部31aを第2凹部22bに嵌め込むと、インナーソケット20の第3ソケット孔(小径ソケット孔)21aまたはアウターソケット10の第2ソケット孔(大径ソケット孔)11bを使用することが可能となる。一方、図示は省略するが、インナーソケット20を図面右方向にスライドさせて、弾性体31の凸部31aを第1凹部22aに嵌め込むと、インナーソケット20の第4ソケット孔(大径ソケット孔)21bまたはアウターソケット10の第1ソケット孔(小径ソケット孔)11aを使用することが可能となる。この例において、弾性体31は、長手方向はインナーソケットの間に隙間を有しているため、凸部31aが第1凹部22aまたは第2凹部22bに嵌め込まれるに際しては、内周方向に押し込まれる、すなわち、前掲のCリングの場合と同様、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮可能なものである。
【0051】
なお、図7では、幅の狭い板バネをインナーソケットとアウターソケットとの隙間の一部に取り付ける例を示しているが、板バネを円筒状に加工したものをインナーソケットとアウターソケットとの隙間に取り付けてもよい。図7に示す構成の締付工具において、アウターソケット10にインナーソケット20を取り付ける方法は、図3などに示す方法と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、アウターソケットとインナーソケットとが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されている構成を採用しているので、ソケット自体の長さを短くすることができ、しかも、インナーソケットの使用時にソケットが移動しないため、インナーソケット使用時の作業性を格段に向上させることができる。本発明は、4つのソケット孔を有するラチェットレンチとして特に有用である。
【符号の説明】
【0053】
10 アウターソケット
11a 第1ソケット孔
11b 第2ソケット孔
12 歯車
13 溝
14 弾性体収容凹部
20 インナーソケット
21a 第3ソケット孔
21b 第4ソケット孔
22a 第1凹部
22b 第2凹部
23 Cリング(リングバネ)
24、25 溝
30 弾性体(Cリング)
31 弾性体(板バネ)
31a 凸部
40a、40b アウターソケット
41a 第1ソケット孔
41b 第2ソケット孔
50a、50b 弾性体(Cリング)
60 インナーソケット
61a 第3ソケット孔
61b 第4ソケット孔
62a、63a 第1凹部
62b、63b 第2凹部
100 ラチェットレンチ
101 ソケット孔
102 爪部
103 ハンドル部
104 ヘッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具であって、
インナーソケットおよびアウターソケットが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されていることを特徴とする締付工具。
【請求項2】
一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具であって、
インナーソケットおよびアウターソケットが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されており、
ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在であり、アウターソケット内にインナーソケットを移動自在に取り付けるための弾性体と、アウターソケットの内周およびインナーソケットの外周のいずれか一方に前記弾性体を収容する弾性体収容凹部が設けられ、他方のインナーソケットの外周またはアウターソケットの内周にアウターソケットおよびインナーソケットを所定の位置関係に保持するための第1凹部および第2凹部が設けられていることを特徴とする締付工具。
【請求項3】
一端または両端にソケット孔を有するアウターソケットに、一端または両端にソケット孔を有するインナーソケットを収納したソケット部と、ソケット部に接続したハンドル部とを有する締付工具であって、
インナーソケットおよびアウターソケットが、ソケット孔の軸に垂直方向に収縮自在な弾性体によって、軸方向に移動自在な状態で接続されており、
アウターソケットの内周に、前記弾性体を収容する弾性体収容凹部が設けられ、インナーソケットの外周に、アウターソケットおよびインナーソケットを所定の位置関係に保持するための第1凹部および第2凹部が設けられていることを特徴とする締付工具。
【請求項4】
締付工具が、ラチェットレンチであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の締付工具。
【請求項5】
アウターソケットにハンドル部を接続したことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の締付工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−104681(P2011−104681A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259880(P2009−259880)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(594150235)株式会社プロス (9)
【出願人】(000156307)株式会社TJMデザイン (40)