説明

締付部材の連結構造

【課題】クランプバンド等の締付部材の端部同士の連結を解除した際に発生する被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる締付部材の連結構造を提供する。
【解決手段】締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備える。連結手段6は、第1連結部材2と第2連結部材4に作用する張力方向にほぼ直交する方向の回転軸心を中心に回転可能であり第1連結部材2と第2連結部材4に対向する平面を有する回転体80と、回転体80を回転可能に支持する支持体81と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締付体の周囲に巻回されて被締付体を締め付ける締付部材の端部同士を解除可能に連結する、締付部材の連結構造に関し、特に、人工衛星等の第1の宇宙航行体とロケット等の第2の宇宙航行体との結合及び分離を行なうための結合装置に好適な、締付部材の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星の打ち上げにおいては、人工衛星の軌道投入前までは、人工衛星をロケット本体に堅固に固定し、軌道投入時にロケット本体から切り離す必要がある。したがって、人工衛星打ち上げ用ロケットは、人工衛星をロケット本体に結合し、またロケット本体から分離するための結合装置を備えている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0003】
図10は、従来の結合装置の構成を示す図であり、ロケット本体101と人工衛星102とが結合装置100によって結合している状態を示している。図11は図10のV−V線断面図である。図12は図11のVI−VI線断面図である。
図10〜12に示すように、ロケット本体101にはフランジ状のロケット側結合部103が設けられており、人工衛星には、ロケット側結合部103に適合するフランジ状の人工衛星側結合部104が設けられている。そして、ロケット側結合部103と人工衛星側結合部104の周囲にクランプバンド105が巻回されている。
【0004】
上記の各結合部103,104は、ロケット機軸と直角な端面103a,104aと、端面に対して傾斜するテーパ面103b,104bを有している。ロケット側結合部103の内側端部には、人工衛星102側に突出した突出部103cが形成されており、端面103a,104a同士を突き合わせることにより心出しを行なうようになっている。
【0005】
クランプバンド105は、ばね鋼板等で製作された帯状のバンド106と、このバンド106の中央部、両端部にそれぞれ固定された弧状の狭圧駒107を備えている。バンド106の両端部に固定された狭圧駒107の端部には、外方へ突出するタブ107aが形成されている。2個のクランプバンド105の端部同士は、連結構造109によって解除可能に連結されている。
図13は、連結構造109を図11の矢印X方向から見た正面図である。連結構造109は、ボルト111及びナット112からなる締結具と、ボルト111を切断するボルト切断装置113とから構成されている。ボルト切断装置113は、ケーシング114と、ケーシング114に内蔵されたブレード115と、火薬を内蔵した火工品116とを備えている。ボルト111はケーシング114を貫通しており、火薬が爆発するとガス圧によってブレード115がボルト111の方向に加速され、ボルト111が切断される。
【0006】
このように構成された結合装置100においては、クランプバンド105の両端部に取り付けられた狭圧駒107にボルト111を挿通し、これにナット112を螺合してクランプバンド105同士を連結するとともに、バンド106に固定された狭圧駒107によりロケット側結合部103と人工衛星側結合部104の外周部を狭圧することにより、ロケット本体101と人工衛星102を結合する。
人工衛星分離時には、2個のボルト切断装置113の火工品116の火薬が同時に爆発して、ブレード115によってボルト111が切断される。すると、2個のクランプバンド105の端部同士の連結が解除されて、ロケット側結合部103と人工衛星側結合部104がクランプバンド105による狭圧から開放され、図示しない分離スプリングによって、人工衛星102がロケット本体101から分離する方向に押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−106199号公報
【特許文献2】特開2000−238700号公報
【特許文献3】特開昭63−187705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12に示すように、クランプバンド105を締付けると、その締め付け力によって、ロケット側結合部103及び人工衛星側結合部104は、内径側に変位(収縮)し弾性エネルギが蓄えられる。上述した従来のクランプバンド105の端部同士を連結する連結構造109では、ボルト切断装置113のブレード115によって僅か数十μsec(例えば60μsec)という短時間でボルト111を切断してしまう。このため、従来の連結構造では、結合部103,104の弾性エネルギが瞬時に解放されて、伸縮振動で大きな衝撃が発生するという問題があった。
【0009】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、クランプバンド等の締付部材の端部同士の連結を解除した際に発生する被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる締付部材の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明にかかる締付部材の連結構造は、以下の手段を採用する。
(1)すなわち、本発明にかかる締付部材の連結構造は、被締付体の周囲に巻回されて該被締付体を締め付ける締付部材の端部同士を解除可能に連結する、締付部材の連結構造であって、前記締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材及び第2連結部材と、前記第1連結部材と前記第2連結部材とを解除可能に連結する連結手段とを備え、前記連結手段は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、該作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段とを有し、前記ロック手段によるロックが解除されたときに、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に作用する張力によって前記作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに前記第1連結部材及び前記第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、前記作動部材が解除位置まで移動したところで、前記第1連結部材と前記第2連結部材の連結が解除される、ことを特徴とする。
【0011】
このように、ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置まで移動して、第1連結部材と前記第2連結部材の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。上述した従来の連結構造では、ブレードによってボルトを瞬時(数十μsec)に切断してしまったが、本発明によれば、ロック手段によるロックが解除されて、作動部材が解除位置まで移動する間に第1連結部材と第2連結部材が制動されながら離反し、その後、連結が解除されるので、従来の連結構造よりもゆっくり(例えば1〜数msec)と連結が解除される。このように作動部材が制動手段として機能する結果、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0012】
(2)また、参考例では、上記の締付部材の連結構造において、前記第1連結部材には係合片が形成されており、前記作動部材は、前記係合片に前記連結を維持するように係合可能なフック部を有して、係合を維持する位置と係合を解除する位置との間を移動可能なように前記第2連結部材に回動可能に連結されたフック部材であり、前記フック部材が前記第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によって該フック部材に解除方向の回動力が付与される、ことを特徴とする。
【0013】
このように、作動部材を構成するフック部材が、第1連結部材の係合片に係合することによって連結が維持され、第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によって作動部材に解除方向の回動力が付与されるので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【0014】
(3)また、参考例では、上記の締付部材の連結構造において、前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって前記第1連結部材と前記第2連結部材の双方に前記連結を維持するように係合可能であり、係合を維持する位置と係合を解除する位置との間をスライド可能なスライダと、該スライダ、前記第1連結部材及び前記第2連結部材を、スライダが係合を維持する位置にあるときに前記第1連結部材と前記第2連結部材の移動を阻止しつつ静止する状態に支持するとともに前記スライダをスライド可能に支持する支持体と、を備え、
前記スライダが前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該スライダに解除方向の移動力が付与される、ことを特徴とする。
【0015】
このように、作動部材を構成するスライダが、第1連結部材と第2連結部材の双方に係合することによって連結が維持され、第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によってスライダに解除方向の移動力が付与されるので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【0016】
(4)また、本発明では、上記の締付部材の連結構造において、前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであってネジ部を有するネジ棒と、該ネジ棒に螺合する回転体と、前記第1連結部材に連結されていて前記回転体を回転可能に支持するとともにネジ棒が出没可能な貫通穴を有するハウジングとを備え、前記回転体が前記ネジ棒及び前記ハウジングから受ける力によって前記回転体に回転力が付与され、前記ロック手段は、前記回転体を介して前記ネジ棒の解除方向への移動を解除可能に拘束し、前記ネジ棒の出没側の先端部と前記第2連結部材は、前記連結を維持するように互いに係合可能に構成され、係合状態におけるその係合部が前記貫通穴内に位置するときに係合が維持され、係合部が前記貫通穴外に位置するときに係合が解除されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0017】
このように、作動部材を構成するネジ棒が、貫通穴内において第2連結部材と係合することによって連結が維持され、ネジ棒が受ける軸方向の力によってナット部材に解除方向の回転力が付与され、ロック手段がナット部材の回転を解除可能に拘束するので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【0018】
(5)また、参考例では、上記の締付部材の連結構造において、前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって中空円筒形を成して軸方向の両側からそれぞれ前記第1連結部材と前記第2連結部材が挿入可能であり円筒軸心周りに回転可能な回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、前記回転体、前記第1連結部材及び前記第2連結部材は、軸心周りにおける前記回転体の位置が第1の位置にあるときに前記第1連結部材及び前記第2連結部材の回転体からの離脱が阻止され、前記回転体の位置が第2の位置にあるときに前記第1連結部材及び前記第2連結部材が回転体から離脱できるように構成されており、前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする。
【0019】
このように、作動部材を構成する回転体が、軸方向の両側から第1連結部材と第2連結部材を挿入可能であり、軸心周りの位置に応じてこれらとの係合が維持/解除され、回転体が第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によって回転体に解除方向の回転力が付与されるので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【0020】
(6)また、本発明では、上記の締付部材の連結構造において、前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって中空円筒形を成して軸方向の両側からそれぞれ前記第1連結部材と前記第2連結部材が挿入可能であり円筒軸心周りに回転可能な回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、前記第1連結部材と前記第2連結部材の前記回転体に挿入される部分は円筒形をなし、前記第1連結部材の円筒形部分の外周面と前記回転体の内周面の一方には第1螺旋溝が形成され、他方には該第1螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、前記第2連結部材の円筒形部分の外周面と前記回転体の内周面の一方には第2螺旋溝が形成され、他方には該第2螺旋溝に嵌入可能な第2突出部が形成され、前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする。
【0021】
このように、作動部材を構成する回転体が、軸方向の両側から第1連結部材と第2連結部材を挿入可能であり、第1突出部が第1螺旋溝に嵌入し、第2突出部が第2螺旋溝に嵌入することによって連結が維持され、回転体が第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によって回転体に解除方向の回転力が付与されるので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【0022】
(7)また、本発明では、上記の締付部材の連結構造において、前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって円筒形を成して円筒軸心周りに回転可能な回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、前記第1連結部材と前記第2連結部材は、それぞれ前記回転体の両側に外嵌する中空円筒部を有し、前記第1連結部材の中空円筒部の内周面と前記回転体の外周面の一方には第1螺旋溝が形成され、他方には該第1螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、前記第2連結部材の中空円筒部の内周面と前記回転体の外周面の一方には第2螺旋溝が形成され、他方には該第2螺旋溝に嵌入可能な第2突出部が形成され、前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする。
【0023】
このように、作動部材を構成する回転体に、軸方向の両側から第1連結部材と第2連結部材が外嵌可能であり、第1突出部が第1螺旋溝に嵌入し、第2突出部が第2螺旋溝に嵌入することによって連結が維持され、回転体が第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によって回転体に解除方向の回転力が付与されるので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【0024】
(8)また、本発明では、上記の締付部材の連結構造において、前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって前記第1連結部材と前記第2連結部材に作用する張力方向にほぼ直交する方向の回転軸心を中心に回転可能であり前記第1連結部材と前記第2連結部材に対向する平面を有する回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、前記回転体の前記平面には、二重螺旋状に第1螺旋溝と第2螺旋溝が形成されており、前記第1連結部材には前記第1螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、前記第2連結部材には前記第2螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする。
【0025】
このように、作動部材を構成する回転体に形成された二重螺旋状の第1螺旋溝と第2螺旋溝に、第1連結部材に形成された第1突出部と、第2連結部材に形成された第2突出部が嵌入することによって連結が維持され、回転体が第1連結部材及び第2連結部材から受ける力によって回転体に解除方向の回転力が付与されるので、「ロック手段によるロックが解除されたときに、第1連結部材及び第2連結部材に作用する張力によって作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに第1連結部材及び第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、作動部材が解除位置まで移動したところで、第1連結部材と第2連結部材の連結が解除される」という連結手段を構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、クランプバンド等の締付部材の端部同士の連結を解除した際に発生する被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】参考例1にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図2】参考例2にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図3】参考例2にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図であって、図2のI−I線断面図及びII−II線断面図を示すものである。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図5】参考例3にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図6】参考例3にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図であって、図5のIII−III線断面図及びIV−IV線断面図を示すものである。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる締付部材の連結構造の構成を示す図である。
【図10】従来の結合装置の構成を示す図であって、ロケット本体と人工衛星とが結合装置によって結合している状態を示すものである。
【図11】図10のV−V線断面図である。
【図12】図11のVI−VI線断面図である。
【図13】従来の連結構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0029】
[参考例1]
図1は、参考例1にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除状態を示している。
この連結構造1は、図示しない被締付体(例えば、上述したロケット本体と人工衛星の結合部)の周囲に巻回されて、被締付体を締め付ける図示しない締付部材(例えば、上述したクランプバンド)の端部同士を解除可能に連結するものである。
図1に示すように、連結構造1は、締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
【0030】
本参考例において、第1連結部材2は、締付部材の一方の端部に連結される連結部7と、この連結部7にピン8を介して回動自在に連結された延長部9とからなる。延長部9の先端部にはピン状の係合片17が設けられている。
第2連結部材4は、締付部材の他方の端部に連結される連結部10と、この連結部10にピン11を介して回動自在に連結された延長部12とからなる。図に示すように、第1連結部材2と第2連結部材4には、締付部材からの張力(引張荷重)が作用する。符合Lは、張力線である。
【0031】
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有している。
本参考例では、作動部材は、第1連結部材2の係合片17に係合可能なフック部18を有して、係合を維持する位置(拘束位置)と係合を解除する位置(解除位置)との間を移動可能なように第2連結部材4にピン19を介して回動可能に連結されたフック部材14である。また、フック部材14は、フック部18から延びるレバー部20を有している。
【0032】
フック部材14のレバー部20には、(A)の連結状態においてロック手段15の一部を構成するロックピン21が挿入される挿入孔22が形成されている。ロックピン21が挿入されること によって、フック部材14は(A)の位置に拘束される。これによって、第1連結部材2と第2連結部材4の連結を維持するように、第1連結部材2の係合片17とフック部材14のフック部18が係合するようになっている。また、第1連結部材2と第2連結部材4とが連結状態のときに、フック部材14の回動中心(ピン19の位置)と係合片17の位置が張力線Lと直交方向(図で上下方向)に互いにずれるようになっている。
このような構成により、フック部材14は、第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図1で矢印A方向)の回動力が付与される。
【0033】
ロック手段15は、例えば、ロックピン21と、ロックピン21を挿入孔22から離脱させるための図示しない火工品(火薬内蔵ボルト等)とによって構成できる。このような構成によって、ロックピン21を挿入孔22に挿入した状態(図1(A))ではフック部材14を拘束位置に拘束し、ロックピン21を挿入孔22から離脱させた状態(図1(B))ではフック部材14の拘束を解除することができる。
なお、ロック手段15は、フック部材14を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0034】
上述のように構成された連結構造1において、図1(A)の連結状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、フック部材14は第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図1で矢印A方向)に回動するとともに、第1連結部材2及び第2連結部材4は互いに離反する方向に移動する。そして、図1(B)のように、フック部材14が解除位置まで回動したところで、第1連結部材2の係合片17とフック部材14のフック部18の係合が外れ、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0035】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、フック部材14が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力(締付部材の張力の分力)によって解除位置まで移動して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。上述した従来の連結構造では、ブレードによってボルトを瞬時(数十μsec)に切断してしまったが、参考例1によれば、ロック手段15によるロックが解除されて、フック部材14(作動部材)が解除位置まで移動する間に第1連結部材2と第2連結部材4が制動されながら離反し、その後、連結が解除されるので、従来の連結構造よりもゆっくり(例えば1〜数msec)と連結が解除される。このようにフック部材(作動部材)14が制動手段として機能する結果、被締付体の弾性エネルギの解放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0036】
[参考例2]
図2は、参考例2にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除状態を示している。図3(A)は図2(A)のI−I線断面図、図3(B)は図2(B)のII−II線断面図である。
図2及び図3に示すように、連結構造1は、締付部材(図示せず)の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
【0037】
本参考例において、第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ、締付部材の端部の一方及び他方に連結されるもの(例えばボルト)であり、後述するスライダ24の係合凸部25,26と係合する係合凹部27,28が形成されている。
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有する。
本参考例において、作動部材は、第1連結部材2と第2連結部材4の双方に連結を維持するように係合可能であり、係合を維持する位置(拘束位置)と係合を解除する位置(解除位置)との間をスライド可能なスライダ24である。スライダ24には、第1連結部材2と第2連結部材4の各々の係合凹部27,28に係合する係合凸部25,26が形成されている。また、スライダ24には、後述するロックピン29を挿入可能な係止凹部30か形成されている。
【0038】
連結手段6は、更に、スライダ24をスライド可能に支持する支持体32を備える。支持体32は、スライダ24、第1連結部材2及び第2連結部材4を、スライダ24が係合を維持する位置にあるときに第1連結部材2と第2連結部材4の移動を阻止しつつ静止する状態に支持するように構成されている。
【0039】
第1連結部材2と第2連結部材4の各々の係合凹部27,28には、それぞれテーパ面27a,28aが形成されており、スライダ24の係合凸部25,26には第1連結部材2と第2連結部材4のテーパ面27a,28aに適合するテーパ面25a,26aが形成されており、これにより、スライダ24が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図では下方向)の移動力が付与される。
【0040】
ロック手段15は、例えば、ロックピン29と、ロックピン29を係止凹部30から離脱させるための火工品(火薬内蔵ボルト等)とによって構成できる。
この構成により、ロックピン29が挿入孔に挿入された状態(図2(A))ではスライダ24が拘束位置に拘束され、ロックピン29が挿入孔から引き抜かれた状態(図2(B)ではスライダ24の拘束が解除される。
なお、ロック手段15は、スライダ24を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0041】
上述のように構成された連結構造1において、図2(A)の連結状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、スライダ24は第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図2で下方向)に移動するとともに、第1連結部材2及び第2連結部材4は互いに離反する方向に移動する。そして、図2(B)のように、スライダ24が解除位置まで移動したところで、スライダ24と第1連結部材2及び第2連結部材4の係合が外れ、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0042】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、作動部材が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力(締付部材の張力の分力)によって解除位置まで移動して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。
したがって、参考例1と同様に、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0043】
[第1実施形態]
図4は、本発明の第1実施形態にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除状態を示している。
図4に示すように、連結構造1は、締付部材(図示せず)の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
本実施形態において、第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ、締付部材の端部の一方及び他方に連結されるもの(例えばボルト)である。
【0044】
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有する。
本実施形態において、作動部材はネジ部を有するネジ棒36である。また、連結手段6は、ネジ棒36に螺合する回転体38と、回転体38を回転可能に支持するとともにネジ棒36が出没可能な貫通穴39を有するハウジング40とを備える。ネジ棒36と回転体38からなる機構は、ボールネジ機構であり、回転体38がネジ棒36とハウジング40から受ける力によって解除方向(図の矢印C方向)の回転力が付与される。
【0045】
ハウジング40は第1連結部材2に連結されている。ネジ棒36の出没側の先端部と第2連結部材4の先端部には、連結を維持するように互いに係合可能なテーパ形状の係合部41,42が形成され、係合状態におけるその係合部41,42が貫通穴39内に位置するときに係合が維持され、係合部41,42が貫通穴39外に位置するときに係合が解除されるように構成されている。係合部41が貫通穴39内に位置するときのネジ棒36の位置が上記の「拘束位置」に相当し、係合部41が貫通穴39外に位置するときのネジ棒36の位置が上記の「解除位置」に相当する。
なお、第1連結部材2とハウジング40とは、一体的に構成された部材であってもよい。
【0046】
本実施形態において、回転体38は、ネジ棒36に螺合しフランジ部を有するナット部材43と、ナット部材43のフランジ部を挟むように配置された中空円筒形のおもり部材44及び軸部材45とからなる。ナット部材43、おもり部材44及び軸部材45は、締結部材(例えばボルト)46によって一体的に連結されている。おもり部材44には、後述するロックピン48が挿入される係止凹部47が形成されている。軸部材45とハウジング40との間には、軸受49が介装されている。
なお、ナット部材43、おもり部材44及び軸部材45は、一体的に形成された部材であってもよい。
【0047】
ロック手段15は、ロックピン48と、ロックピン48を係止凹部47から離脱させるための図示しない駆動手段とによって構成される。駆動手段は、例えば、火工品(火薬内蔵ボルト等)を用いることができる。
この構成により、ロックピン48が係止凹部47に挿入された状態(図4(A))では、回転体38の回転が拘束されることによってネジ棒36の移動が拘束され、ロックピン48が係止凹部から離脱した状態(図4(B))では回転体38の拘束が解除されることによってネジ棒36の拘束が解除されるようになっている。
なお、ロック手段15は、回転体38を介してネジ棒36を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0048】
上述のように構成された連結構造1において、図4(A)の状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、回転体38が回転自在となるので、回転体38とネジ棒36に作用する反対方向の軸方向荷重によって回転体38が回転するとともにハウジング40及び回転体38は図で左方向へ、ネジ棒36は図で右方向へ移動する。
そして、図4(B)のように、ネジ棒36と第1連結部材2との係合部41,42が貫通穴39外となる位置(解除位置)まで移動したところで、ネジ棒36と第1連結部材2と係合が外れ、これによって、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0049】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、回転体38が締付部材の張力の分力を利用して回転し、ネジ棒36(作動部材)が解除位置まで移動して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。
したがって、参考例1と同様に、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0050】
[参考例3]
図5は、参考例3にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除状態を示している。図6(A)は図5(A)のIII−III線断面図、図6(B)は図5(B)のIV−IV線断面図である。
図5及び図6に示すように、連結構造1は、締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
本参考例において、第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ、締付部材(図示せず)の端部の一方及び他方に連結されるもの(例えばボルト)である。
【0051】
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有する。
本参考例において、作動部材は、中空円筒形を成して軸方向の両側からそれぞれ第1連結部材2と第2連結部材4が挿入可能であり円筒軸心周りに回転可能な回転体51である。また、連結手段6は、回転体51を回転可能に支持する支持体52を備える。回転体51と支持体52の間には、軸受53が介装されている。
【0052】
回転体51、第1連結部材2及び第2連結部材4は、軸心周りにおける回転体51の位置が第1の位置(拘束位置)にあるときに第1連結部材2及び第2連結部材4の回転体51からの離脱が阻止され、回転体51の位置が第2の位置(解除位置)にあるときに第1連結部材2及び第2連結部材4が回転体51から離脱できるように構成されている。
具体的には、第1連結部材2と第2連結部材4の回転体51に挿入される部分には、それぞれ、周方向に1つ又は複数のキー54,55が形成されている。また、回転体51の内周面には、第1連結部材2及び第2連結部材4のキー54,55と干渉して第1連結部材2と第2連結部材4の回転体51からの離脱を阻止可能であるとともに回転体51の軸心周りの位置が変化したときに第1連結部材2及び第2連結部材4のキー54,55との干渉が解除されて第1連結部材2と第2連結部材4の回転体51からの離脱を可能とする突起体56,57が、第1連結部材2、第2連結部材4が挿入される部分のそれぞれに、周方向に1つ又は複数形成されている。
【0053】
支持体52の軸方向両側には、第1連結部材2と第2連結部材4の軸方向への移動を案内する案内スリーブ58,59が取り付けられている。
【0054】
また、第1連結部材2と第2連結部材4のキー54,55における、回転体51の突起体と干渉する側の面は、テーパ面54a,55aとなっており、これにより、回転体51が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図の矢印D方向)の回転力が付与されるようになっている。
【0055】
図6に示すように、本参考例において、ロック手段15は、回転体51に形成された係止凹部60と係合して回転体51の回転を阻止するボール61と、ボール61が回転体51を阻止する位置にボール61を拘束し且つ移動してボール61の拘束を解除可能なボールロック部材62と、ボールロック部材62を移動させる駆動手段63とを備える。駆動手段63は、例えば、火工品(火薬内蔵ボルト等)を用いることができる。
この構成により、ボールが回転体51の係合凹部60に係合しボールロック部材62によってボール61の移動が拘束された状態(図6(A))では、回転体51の回転が拘束され、駆動手段によってボールロック部材62が移動し、ボール61の拘束が解除されてボール61が回転体51の係止凹部60から外れた状態(図6(B)では、回転体51の拘束が解除されるようになっている。
なお、ロック手段15は、回転体51を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0056】
上述のように構成された連結構造1において、図5(A)の連結状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、回転体51が回転自在となるので、回転体51が第1連結部材2と第2連結部材4から受ける力によって図の矢印D方向に回転するとともに第1連結部材2は図で左方向へ、第2連結部材4は図で右方向へ移動する。
そして、図5(B)のように、第1連結部材2と第2連結部材4の各々キー54,55が回転体51の突起体56,57と干渉しない位置(解除位置)まで回転体51が回転したところで、回転体51から第1連結部材2と第2連結部材4が離脱し、これによって、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0057】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、回転体51(作動部材)が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力(締付部材の張力の分力)によって解除位置まで回転して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。
したがって、参考例1と同様に、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0058】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除状態を示している。
図7に示すように、連結構造1は、締付部材(図示せず)の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
本実施形態において、第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ、締付部材の端部の一方及び他方に連結されるもの(例えばボルト)である。
【0059】
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有する。
本実施形態において、作動部材は、中空円筒形を成して軸方向の両側からそれぞれ第1連結部材2と第2連結部材4が挿入可能であり円筒軸心周りに回転可能な回転体65である。また、連結手段6は、回転体65を回転可能に支持する支持体66を備える。
【0060】
第1連結部材2と第2連結部材4の前記回転体65に挿入される部分は円筒形をなしている。
第1連結部材2の円筒形部分の外周面には第1螺旋溝67が形成され、第1連結部材2が挿入される回転体65の内周面には第1螺旋溝67に嵌入可能な第1突出部69が形成されている。
第2連結部材4の円筒形部分の外周面には第2螺旋溝68が形成され、第2連結部材4が挿入される回転体65の内周面には第2螺旋溝68に嵌入可能な第2突出部70が形成されている。
【0061】
第1螺旋溝67、第2螺旋溝68は、それぞれ、第1連結部材2、第2連結部材4の先端まで延び、第1連結部材2及び第2連結部材4が回転体65から完全に離脱できるようになっている。
本実施形態では、第1螺旋溝67と第1突出部69の組、及び、第2螺旋溝68と第2突出部70の組は、それぞれ、2組ずつ設けられているが、3組以上であってもよい。
【0062】
このように、第1螺旋溝67、第1突出部69、第2螺旋溝68、第2突出部70が形成されているので、回転体65が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図の矢印E方向)の回転力が付与される。
【0063】
支持体66の軸方向両側には、第1連結部材2と第2連結部材4の軸方向への移動を案内する案内スリーブ部66a,66bが設けられているが、この案内スリーブ部66a,66bは、別部品で構成されていてもよい。
ロック手段15は、参考例3と同様のものであるが、回転体65を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0064】
上述のように構成された連結構造1において、図7(A)の連結状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、回転体65が回転自在となるので、回転体65が第1連結部材2と第2連結部材4から受ける力によって図の矢印方向に回転するとともに第1連結部材2は図で左方向へ、第2連結部材4は図で右方向へ移動する。
そして、図7(B)のように、回転体65の第1突出部69、第2突出部70が、それぞれ、第1螺旋溝67、第2螺旋溝68の先端に達したところで、回転体65から第1連結部材2と第2連結部材4が離脱し、これによって、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0065】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、回転体65(作動部材)が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力(締付部材の張力の分力)によって解除位置まで回転して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。
したがって、参考例1と同様に、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0066】
なお、上述した構成に代えて、第1螺旋溝及び第2螺旋溝を回転体65に形成し、第1突出部を第1連結部材2に形成し、第2突出部を第2連結部材4に形成しても、同様の効果を得ることができる。
【0067】
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除状態を示している。
図8に示すように、連結構造1は、締付部材(図示せず)の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
本実施形態において、第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ、締付部材の端部の一方及び他方に連結されるもの(例えばボルト)である。
【0068】
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有する。
本実施形態において、作動部材は、円筒形を成して円筒軸心周りに回転可能な回転体71である。また、連結手段6は、回転体71を回転可能に支持する支持体72を備える。
【0069】
第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ回転体71の両側に外嵌する中空円筒部73,74を有している。
回転体71の第1連結部材2寄りの外周面には第1螺旋溝75が形成され、第1連結部材2の中空円筒部の内周面には第1螺旋溝75に嵌入可能な第1突出部77が形成されている。
回転体71の第2連結部材4寄りの外周面には第2螺旋溝76が形成され、第2連結部材4の中空円筒部の内周面には第2螺旋溝76に嵌入可能な第2突出部78が形成されている。
【0070】
第1螺旋溝75、第2螺旋溝76は、それぞれ、回転体71の両端まで延び、第1連結部材2及び第2連結部材4が回転体71から完全に離脱できるようになっている。
本実施形態では、第1螺旋溝75と第1突出部77の組、及び、第2螺旋溝76と第2突出部78の組は、それぞれ、2組ずつ設けられているが、3組以上であってもよい。
【0071】
このように、第1螺旋溝75、第1突出部77、第2螺旋溝76、第2突出部78が形成されているので、回転体71が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図の矢印F方向)の回転力が付与される。
【0072】
支持体の軸方向両側には、第1連結部材2と第2連結部材4の軸方向への移動を案内する案内スリーブ部72a,72bが設けられているが、この案内スリーブ部72a,72bは、別部品で構成されていてもよい。
ロック手段15は、参考例3と同様のものでよいが、回転体71を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0073】
上述のように構成された連結構造1において、図8(A)の連結状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、回転体71が回転自在となるので、回転体71が第1連結部材2と第2連結部材4から受ける力によって図の矢印F方向に回転するとともに第1連結部材2は図で左方向へ、第2連結部材4は図で右方向へ移動する。
そして図8(B)のように、第1連結部材2の第1突出部77、第2連結部材4の第2突出部78が、それぞれ、回転体71の第1螺旋溝75、第2螺旋溝76の先端に達したところで、回転体71から第1連結部材2と第2連結部材4が離脱し、これによって、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0074】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、回転体71(作動部材)が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力(締付部材の張力の分力)によって解除位置まで回転して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。
したがって、参考例1と同様に、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0075】
なお、上述した構成に代えて、第1螺旋溝を第1連結部材2に形成し、第2螺旋溝を第2連結部材4に形成し、第1突出部及び第2突出部を回転体71に形成しても、同様の効果を得ることができる。
【0076】
[第4実施形態]
図9は、本発明の第4実施形態にかかる締付部材の連結構造1の構成を示す図であり、(A)は連結状態、(B)は解除動作中の状態、(C)は解除状態を示している。
図9に示すように、連結構造1は、締付部材(図示せず)の端部にそれぞれ連結される第1連結部材2及び第2連結部材4と、第1連結部材2と第2連結部材4とを解除可能に連結する連結手段6とを備えている。
本実施形態において、第1連結部材2と第2連結部材4は、それぞれ、締付部材の端部の一方及び他方に連結されるもの(例えばボルト)である。
【0077】
連結手段6は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段15とを有する。
本実施形態において、作動部材は、第1連結部材2と第2連結部材4に作用する張力方向にほぼ直交する方向(図では紙面に垂直方向)の回転軸心を中心に回転可能であり第1連結部材2と第2連結部材4に対向する平面80aを有する回転体80である。本実施形態において回転体80は、円盤状である。また、連結手段6は、回転体80を回転可能に支持する支持体81を備える。
【0078】
回転体80の上記の平面80a(第1連結部材2、第2連結部材4に対向する円盤面)には、二重螺旋状に第1螺旋溝82と第2螺旋溝83が形成されている。
第1連結部材2には第1螺旋溝82に嵌入可能な第1突出部85が形成され、第2連結部材4には第2螺旋溝83に嵌入可能な第2突出部86が形成されている。なお、図9では、第1突出部85及び第2突出部86は、第1連結部材2及び第2連結部材4によって遮られて見えない位置にあるため、それぞれ破線で示している。
第1螺旋溝82、第2螺旋溝83は、それぞれ、回転体80の外周部まで延び、第1連結部材2及び第2連結部材4が回転体80から完全に離脱できるようになっている。
【0079】
このように、第1螺旋溝82、第1突出部85、第2螺旋溝83、第2突出部86が形成されているので、回転体80が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力によって解除方向(図の矢印G方向)の回転力が付与される。
【0080】
支持体の両側には、第1連結部材2と第2連結部材4の軸方向への移動を案内する案内スリーブ部81a,81bが設けられているが、この案内スリーブ部81a,81bは、別部品で構成されていてもよい。
【0081】
本実施形態におけるロック手段15は、上述した参考例3におけるものと同様である。すなわち、ロック手段15は、回転体80に形成された係合凹部88と係合して回転体80の回転を阻止するボール61と、ボール61が回転体80を阻止する位置にボール61を拘束し且つ移動してボール61の拘束を解除可能なボールロック部材62と、ボールロック部材62を移動させる駆動手段63とを備える。駆動手段63は、例えば、火工品(火薬内蔵ボルト等)を用いることができる。
この構成により、ボール61が回転体80の係合凹部88に係合しボールロック部材62によってボール61の移動が拘束された状態(図9(A))では、回転体80の回転が拘束され、駆動手段63によってボールロック部材62が移動し、ボール61の拘束が解除されてボール61が回転体80の係合凹部88から外れた状態(図9(B)、(C))では、回転体80の拘束が解除されるようになっている。
なお、ロック手段15は、回転体80を拘束位置に解除可能にロックする機能を有する範囲で、他の構成であってもよい。
【0082】
上述のように構成された連結構造1において、図9(A)の連結状態から、ロック手段15によるロックが解除されると、回転体80が回転自在となるので、回転体80が第1連結部材2と第2連結部材4から受ける力によって図の矢印方向に回転するとともに第1連結部材2は図で左方向へ、第2連結部材4は図で右方向へ移動する(図9(B))。
そして、図9(C)のように、第1連結部材2の第1突出部85、第2連結部材4の第2突出部86が、それぞれ、回転体80の第1螺旋溝82、第2螺旋溝83の先端(回転体80の外周部)に達したところで、回転体80から第1連結部材2と第2連結部材4が離脱し、これによって、第1連結部材2と第2連結部材4との連結が解除される。
【0083】
このように、ロック手段15によるロックが解除されたときに、回転体80(作動部材)が第1連結部材2及び第2連結部材4から受ける力(締付部材の張力の分力)によって解除位置まで回転して、第1連結部材2と第2連結部材4の連結が解除されるので、これによって、締付部材の端部同士の連結が解除される。
したがって、参考例1と同様に、被締付体の弾性エネルギの開放速度が従来の連結構造よりも低下するので、被締付体の伸縮振動による衝撃を大幅に緩和することができる。
【0084】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0085】
1 締付部材の連結構造
2 第1連結部材
4 第2連結部材
6 連結手段
15 ロック手段
14 フック部材(作動部材)
24 スライダ(作動部材)
36 ネジ棒(作動部材)
38 回転体
40 ハウジング
21,29,48
ロックピン
51,65,71,80
回転体(作動部材)
32,52,66,72,81支持体
61 ボール
62 ボールロック部材
63 駆動手段
67,75,82
第1螺旋溝
68,76,83
第2螺旋溝
69,77,85
第1突出部
70,78,86
第2突出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締付体の周囲に巻回されて該被締付体を締め付ける締付部材の端部同士を解除可能に連結する、締付部材の連結構造であって、
前記締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材及び第2連結部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とを解除可能に連結する連結手段とを備え、
前記連結手段は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、該作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段とを有し、
前記ロック手段によるロックが解除されたときに、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に作用する張力によって前記作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに前記第1連結部材及び前記第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、前記作動部材が解除位置まで移動したところで、前記第1連結部材と前記第2連結部材の連結が解除され、
前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって前記第1連結部材と前記第2連結部材に作用する張力方向にほぼ直交する方向の回転軸心を中心に回転可能であり前記第1連結部材と前記第2連結部材に対向する平面を有する回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、
前記回転体の前記平面には、二重螺旋状に第1螺旋溝と第2螺旋溝が形成されており、
前記第1連結部材には前記第1螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、前記第2連結部材には前記第2螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、
前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする締付部材の連結構造。
【請求項2】
被締付体の周囲に巻回されて該被締付体を締め付ける締付部材の端部同士を解除可能に連結する、締付部材の連結構造であって、
前記締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材及び第2連結部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とを解除可能に連結する連結手段とを備え、
前記連結手段は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、該作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段とを有し、
前記ロック手段によるロックが解除されたときに、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に作用する張力によって前記作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに前記第1連結部材及び前記第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、前記作動部材が解除位置まで移動したところで、前記第1連結部材と前記第2連結部材の連結が解除され、
前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって中空円筒形を成して軸方向の両側からそれぞれ前記第1連結部材と前記第2連結部材が挿入可能であり円筒軸心周りに回転可能な回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、
前記第1連結部材と前記第2連結部材の前記回転体に挿入される部分は円筒形をなし、
前記第1連結部材の円筒形部分の外周面と前記回転体の内周面の一方には第1螺旋溝が形成され、他方には該第1螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、
前記第2連結部材の円筒形部分の外周面と前記回転体の内周面の一方には第2螺旋溝が形成され、他方には該第2螺旋溝に嵌入可能な第2突出部が形成され、
前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする締付部材の連結構造。
【請求項3】
被締付体の周囲に巻回されて該被締付体を締め付ける締付部材の端部同士を解除可能に連結する、締付部材の連結構造であって、
前記締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材及び第2連結部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とを解除可能に連結する連結手段とを備え、
前記連結手段は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、該作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段とを有し、
前記ロック手段によるロックが解除されたときに、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に作用する張力によって前記作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに前記第1連結部材及び前記第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、前記作動部材が解除位置まで移動したところで、前記第1連結部材と前記第2連結部材の連結が解除され、
前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであって円筒形を成して円筒軸心周りに回転可能な回転体と、該回転体を回転可能に支持する支持体と、を備え、
前記第1連結部材と前記第2連結部材は、それぞれ前記回転体の両側に外嵌する中空円筒部を有し、
前記第1連結部材の中空円筒部の内周面と前記回転体の外周面の一方には第1螺旋溝が形成され、他方には該第1螺旋溝に嵌入可能な第1突出部が形成され、
前記第2連結部材の中空円筒部の内周面と前記回転体の外周面の一方には第2螺旋溝が形成され、他方には該第2螺旋溝に嵌入可能な第2突出部が形成され、
前記回転体が前記第1連結部材及び前記第2連結部材から受ける力によって該回転体に解除方向の回転力が付与される、ことを特徴とする締付部材の連結構造。
【請求項4】
被締付体の周囲に巻回されて該被締付体を締め付ける締付部材の端部同士を解除可能に連結する、締付部材の連結構造であって、
前記締付部材の端部にそれぞれ連結される第1連結部材及び第2連結部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とを解除可能に連結する連結手段とを備え、
前記連結手段は、連結を維持する拘束位置と連結を解除する解除位置との間を移動可能な作動部材と、該作動部材を拘束位置に解除可能にロックするロック手段とを有し、
前記ロック手段によるロックが解除されたときに、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に作用する張力によって前記作動部材が解除位置の方向へ移動するとともに前記第1連結部材及び前記第2連結部材が互いに離反する方向に移動し、前記作動部材が解除位置まで移動したところで、前記第1連結部材と前記第2連結部材の連結が解除され、
前記連結手段は、前記作動部材を構成するものであってネジ部を有するネジ棒と、該ネジ棒に螺合する回転体と、前記第1連結部材に連結されていて前記回転体を回転可能に支持するとともにネジ棒が出没可能な貫通穴を有するハウジングとを備え、前記回転体が前記ネジ棒及び前記ハウジングから受ける力によって前記回転体に回転力が付与され、
前記ロック手段は、前記回転体を介して前記ネジ棒の解除方向への移動を解除可能に拘束し、
前記ネジ棒の出没側の先端部と前記第2連結部材は、前記連結を維持するように互いに係合可能に構成され、係合状態におけるその係合部が前記貫通穴内に位置するときに係合が維持され、係合部が前記貫通穴外に位置するときに係合が解除されるように構成されている、ことを特徴とする締付部材の連結構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−153363(P2012−153363A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87319(P2012−87319)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2007−120729(P2007−120729)の分割
【原出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)