説明

締結クランプ

【課題】流体循環系の機器の配管接続部にホースを外嵌したホース接続部に締結力を均一に加え、シール性を確保できる締結クランプを提供することにある。
【解決手段】ラジエータ7の接続部14に嵌着されたホース17の嵌着部分を締め付けて、ホース接続部Eに締結する締結クランプであって、締結クランプは、ネジ溝221が形成された円筒状を成し、ホース17に外嵌されるインナー部材22と、インナー部材のネジ溝221に螺合可能なネジ溝211が内周面に形成されインナー部材の外周に螺合されるアウター部材21とを備え、インナー部材は、ホース長手方向に沿って延びる複数のスリット24が周方向に形成された縮径変位部25を有し、インナー部材の外周にアウター部材を螺合することで、縮径変位部25がホース17を押圧して接続部Eに締結することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される流体循環系機器の配管接続部と配管用ホースとの嵌着部分を締結する締結クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ等の筒状部材を順次接続することで流体循環系を形成し、その途中に冷却器、暖房器、各種アクチュエーターを接続し、それら流体循環系内を流体、例えば、水、オイル、空気等、を循環させて目的とする機能を発揮させるようにした流体作動機器が各種産業分野で使用されている。例えば、車両にはエンジン冷却系、潤滑油循環系、吸、排気系として採用されている。そして、これらの流体循環系では各機能機器間をホース等の比較的柔軟性のある配管で繋いでいる場合があり、その際、ホースと各機器との接続部分に流体漏れを生じないように、所定の締結手段を用いて締結している。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジンの冷却水循環系に配備されたラジエータの冷却水の流入流出口を成すホース取付部にホースを密に嵌合し、その上で嵌合部分におけるホースの外周を長片状のホースクリップで締め付けて接続した構成が開示されている。
また、締結手段の他の例として図6に示す構成があげられる。この場合、図6(a)、(b)に示すように、ホースクリップ100の本体101は湾曲した長片状(ベルト状)を成し、その両先端部が屈曲変形され、一端にボルト110を嵌挿する係止穴120を形成し、他端にナット130を保持するナット係止部140を形成し、ボルト110のナット130への締め付け操作により、両屈曲端部間を締め付け接近させることでホースクリップ100を縮径変位させて、ホース取付部150にホース160を密に圧着させ、シール性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−148491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や図6に示すような構成のホースクリップでは、シール性を確実に確保することができなかった。
例えば、図6(b)に示すように、ホースクリップ100を縮径変位させることでホース160を締め付けて、ホース取付部150にホース160を密に圧着させるようにした場合、ボルト110の締め付け方向、及びそれに近い傾斜方向を含む領域e1での縮径変位量に比べて、ボルト110の締め付け方向と直交する方向、及びそれに近い方向を含む領域e2での縮径変位量は少なく、締結力、すなわちホース取付部150の表面へのホース160の圧着力が低くなってしまう。
【0006】
このように、湾曲した長片状(ベルト状)を成すホースクリップ100を用いた場合、締結力が全周方向よりホース取付部150の中心線L0に向けて均一に加わらないため、締結力が弱くシール性の落ちる部位が生じる虞があった。
つまり、従来のホースクリップ100では、ホース160をホース取付部150に対して均一に締め付けることができず、締結力の強い部分と弱い部分とが生じてしまうため、シール性が十分確保できない場合があった。
【0007】
本発明は以上のような課題に基づきなされたもので、目的とするところは、流体循環系に配備された機器の配管接続部に配管用ホースを外嵌し、その部位に全周方向より締結力を均一に加え、シール性を全周で確実に確保することができる締結クランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1の発明は、車両の流体機器の配管用の接続部に嵌着されたホースの嵌着部分を外周部より中心方向に締め付けて、前記ホースを前記接続部に締結する締結クランプであって、前記締結クランプは、外周面にネジ溝が形成された円筒状を成し前記ホースの前記嵌着部分に外嵌されるインナー部材と、該インナー部材のネジ溝に螺合可能なネジ溝が内周面に形成された筒状で前記インナー部材の外周に螺合により嵌合されるアウター部材とを備え、前記インナー部材は、前記アウター部材の螺合方向と反対側の開口縁からホース長手方向に沿って延びる複数のスリットが周方向に等間隔で形成されて径方向に変位可能とされた縮径変位部を有し、前記インナー部材の外周に前記アウター部材を螺合することで、前記縮径変位部が縮径方向に変位して前記ホースの前記嵌着部分を押圧して前記接続部に締結するよう構成したことを特徴とする。
【0009】
本願請求項2の発明は、請求項1記載の締結クランプにおいて、前記縮径変位部は、前記スリットにより分割された複数の縮径変位片で構成され、同縮径変位片は、軸方向に沿った断面形状が径方向に膨出する樽型に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項3の発明は、請求項1または2記載の締結クランプにおいて、前記インナー部材の前記ネジ溝は、前記縮径変位部の外周面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本願請求項4の発明は、請求項1記載の締結クランプにおいて、前記アウター部材の内周面には、前記螺合方向と反対側に縮径するテーパー面部が形成され、前記インナー部材の前記縮径変位部は、その外周面が前記螺合方向と反対側に縮径するテーパー状とされ、前記アウター部材が前記インナー部材に螺合することで、前記アウター部材の前記テーパー面部によって前記縮径変位部が縮径方向へ変位されることを特徴とする。
【0012】
本願請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の締結クランプにおいて、前記車載機器はラジエータ装置であり、前記ホースは前記ラジエータ装置に冷却液を循環させるために接続される配管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、インナー部材のネジ溝にアウター部材のネジ溝をねじ込むことで縮径変位部が縮径変位するように形成したので、縮径変位部が接続管の中心方向に向けて締結力を均一に加え、シール性を確保して配管用の接続部にホースを締結できる。
【0014】
請求項2の発明は、縮径変位部がスリットにより分割された複数の縮径変位片で形成され、その縮径変位片の断面形状が樽型に形成されているので、縮径変位部の外径がホースの長手方向で序変する形状となっている。これにより、インナー部材のネジ溝へのアウター部材のねじ込み量が増えるにつれて縮径変位片(縮径変位部)の外周部がアウター部材によって押され、縮径変位片が中心方向に変位して、配管用の接続部にホースを確実に締結できる。また、インナー部材(縮径変位部)のねじ込み側先端(螺合方向と反対側の開口縁)の外径が比較的小さくなるので、アウター部材を嵌合する際のインナー部材への嵌め込みが容易となる。
【0015】
請求項3の発明は、縮径変位部の外周面にネジ溝を形成しているので、アウター部材のねじ込みにより縮径変位部を確実に押圧することができ、配管用の接続部にホースをより一層確実に締結できる。
【0016】
請求項4の発明は、インナー部材のネジ溝に対するアウター部材のネジ溝の締め付けが進み、ねじ込み量が増えるにつれてアウター部材のテーパー面部にインナー部材のテーパー状の縮径変位部の外周面が中心方向に押圧され、その分インナー部材のテーパー状の縮径変位部が中心方向に変位し、配管用の接続部にホースを確実に締結できる。また、インナー部材(縮径変位部)のねじ込み側先端(螺合方向と反対側の開口縁)の外径が比較的小さくなるので、アウター部材を嵌合する際のインナー部材への嵌め込みが容易となる。
【0017】
請求項5の発明は、車載機器がラジエータ装置であり、ホースはラジエータ装置に冷却液を循環させるために接続される配管である場合、請求項1の効果を確実に得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態としての締結クランプを用いた冷却水循環系を備える車両の概略前部断面図である。
【図2】図1の締結クランプの締結状態を示す側面図である。
【図3】図1の締結クランプの拡大分解斜視図である。
【図4】図1の締結クランプの締結変化を示し、(a)は締結前の状態、(b)は締結後の状態示す概略断面図である
【図5】本発明の他の実施形態としての締結クランプの締結変化を示し、(a)は締結前の状態、(b)は締結後の状態示す概略断面図である。
【図6】従来のホースクリップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態である締結クランプを車両の冷却水循環系に適用した場合について説明する。
図1は、本発明の締結クランプ1を備える車両Cの前部のエンジンルーム2の概略図である。エンジンルーム2は車両の前部に配備され、上向き開口201がフード13により開放可能に閉鎖されている。エンジンルーム2内にはエンジン3がサイドフレーム4およびクロスメンバ5に不図示の緩衝部材を介して支持され、エンジンルーム2の前側のラジエータサポートパネル6に流体循環系の車載機器としてのラジエータ7が支持され、ラジエータ7の後方に冷却ファン8が配備される。
【0020】
エンジン3はその本体301の内部に冷却水循環路Rwの要部をなすウオータージャケット9と同ウオータージャケット9へ冷却水が流入する流入口11と、冷却水が流出する流出口12が形成される。ラジエータ7はコア部701とその上下のタンク部702、703を上下に連通状態で結合した冷却水の圧力容器として形成される。上タンク部702には冷却水が流入する配管用の接続部としての流入パイプ金具14が、下タンク部703には冷却水が流出する配管用の接続部としての流出パイプ金具15がそれぞれ後方に延出するように突き出し形成されている。
流入パイプ金具14と後側のエンジン3の流出口12の配管用の接続部としての上パイプジョイント16とは配管用ホースとしてのアッパーホース17の前後端が外嵌するように差し込まれ、そのホース接続部(ホースの嵌着部分)E(図2参照)で相互に連結される。アッパーホース17の前後端が差し込まれた前後の各ホース接続部(ホースの嵌着部分)Eは締結クランプ1でそれぞれ締結される。
【0021】
同様に、流出パイプ金具15とエンジン3の流入口11の下パイプジョイント18とは接続管としてのロアーホース19の前後端が外嵌するように差し込まれ、そのホース接続部E(図2参照)で相互に連結される。ロアーホース19の前後端が差し込まれた前後の各ホース接続部(ホースの嵌着部分)Eは締結クランプ1でそれぞれ締結される。
図2、3に示すように、流入パイプ金具14(流出パイプ金具15も同様)はその先端にエッジ状の突端を有する環状膨出部141が形成され、これにより、差し込まれたアッパーホース17の抜け止め機能を発揮しており、その環状膨出部141より差し込み方向で奥側にホース接続部Eが配備される。
【0022】
ここでアッパーホース17とロアーホース19の各両端に外嵌される締結クランプ1は同様の構成を採り、ここでは上タンク部902に突設された流入パイプ金具14とアッパーホース17の連結部に設けられた締結クランプ1を代表して説明する。
図2、3に示すように、締結クランプ1は、ラジエータ7のパイプ金具14に外嵌されたアッパーホース17のホース接続部(ホースの嵌着部分)Eの外周に外嵌される円筒状のインナー部材と、インナー部材の外周面に嵌合される円筒状のアウター部材21とから構成されている。
アウター部材21は短筒状で所定肉厚のリング部材であり、その内周面には一定内径でネジ溝が切られた内ネジ211が形成されている。
【0023】
インナー部材22はアッパーホース17の外径よりわずかに大きな内径のリング状基部23と、リング状基部23からアッパーホース17の長手方向(締結クランプの共通中心線L1の方向である軸方向)に沿って延びる縮径変位部25とを備える。縮径変位部25は、図3,4に示すように、周方向に所定間隔で複数形成されたスリット24と、そのスリット24で互いに分割されて配設された複数の縮径変位片251とを備え、全体は一体形成される。詳しくは、スリット24は、インナー部材22(縮径変位部25)のリング状基部23とは反対側の開口縁からインナー部材22の軸方向(アッパーホース17の長手方向)に沿ってリング状基部23の近傍まで延びており、縮径変位部25は、インナー部材22の軸方向にそって延びる複数の縮径変位片251に分割されている。複数の縮径変位片251は、それぞれ径方向に弾性変位可能であり、縮径変位部25の径が可変できる構成とされている。
【0024】
縮径変位部25の外周面、すなわち縮径変位片251の表面には、アウター部材21の内ネジ211と同一ピッチでネジ溝が切られた外ネジ221が形成されている。
そして、インナー部材22の外ネジ221にアウター部材21の内ネジ211が螺合される。すなわち、インナー部材22の縮径変位部25の外周にアウター部材21が螺合により嵌合される構成となっている。なお、アウター部材21は、図中に矢印n(螺合方向)で示すようにリング状基部23とは反対側の開口縁からリング状基部側に向って螺合される。
図2、4に示すように、縮径変位片251は、軸方向(共通中心線L1の方向)に沿った断面が、軸方向の略中央部分が最も厚くなるように縮径変位部25の径方向に膨出する樽形状に形成されている。
【0025】
複数の縮径変位片251を円周方向に複数配設してなる縮径変位部25は、全縮径変位片251の内周壁Sが連続すると見做した場合に、内周壁Sは、その内径が軸方向両端部s1の間に位置する中間部s2で最も小さくなるよう径方向内側に膨らんだ湾曲形状となっている。また、軸方向両端部s1が成す内径r1はアッパーホース17の外径よりわずかに大きく、中間部s2が成す内径r2はアッパーホース17の外径とほぼ同一もしくはわずかに小さく形成されている。縮径変位部25の内周壁Sは、両端部s1から中間部s2まで内径が連続的に徐変するよう形成されているこのように、全縮径変位片251のリング状基部23とは反対側の端部s1で成す内径、すなわち縮径変位部25のリング状基部23とは反対側の開口縁部が成す内径r1をアッパーホース17の外径D1よりわずかに大きく形成することにより、アッパーホース17のインナー部材22への差込を容易化している。更に、全縮径変位片251(縮径変位部25)の中間部s2が成す内径r2をアッパーホース17の外径D1とほぼ同一径に形成することにより、アッパーホース17が差し込まれた状態でインナー部材22(縮径変位部25)の内周壁とアッパーホース17とが密着されるようにしている。
【0026】
一方、縮径変位部25の外周面は、全縮径変位片251の外周面が連続すると見做した場合に、軸方向での中央部分(内周壁Sの中間部s2の外周面側)が径方向外側に膨らんだ湾曲形状を成すように形成されている。そして、縮径変位部25の外周面の外径は、中央部分でもっとも大きくなるよう形成されている。この縮径変位部25(縮径変位片251)の外周面には外ネジ221が形成される。このように、インナー部材22の縮径変位部25(縮径変位片251)の外周面が軸方向中央部分が径方向外側に膨出した湾曲形状であるので、縮径変位部25の外周面に沿って形成された外ネジ221のねじ込み側先端(縮径変位部25のリング状基部23とは反対側の開口縁部)の外径が比較的小さく形成され、アウター部材21の内ネジ211の螺合方向nへのねじ込みを容易化できる。更に、中央部において外径が大きく形成されることで、アウター部材21をインナー部材22にねじ込み外嵌させた時に、スリット24の機能も加わることで複数の縮径変位片251を共通中心線L1の方向へ弾性変位させ、すなわち縮径変位部25全体が縮径変位され、アッパーホース17を全周域で一様に流入パイプ金具14側(共通中心線L1の方向)に圧接させ、流入パイプ金具14に密着させることを可能としている。なお、図4(a)は、締結クランプ1の締結前の状態、図4(b)は、締結クランプ1の締結後の状態を示している。
【0027】
次に、図1に示すアッパーホース17の端部、ロアーホース19の端部がそれぞれ締結クランプ1で締結される手順を説明する。なお、各部位の締結手順はほぼ同一のため、ここでは上タンク部702に突設された流入パイプ金具14とアッパーホース17のホース接続部Eを締結する締結クランプ1を代表して説明する。
【0028】
アッパーホース17の前端が流入パイプ金具14に差し込まれるに先立ち、アッパーホース17の前端にはアウター部材21とインナー部材22が順次嵌挿され、その上で流入パイプ金具14にアッパーホース17の前端が差し込まれる。これにより、流入パイプ金具14とアッパーホース17が重なるホース接続部Eが形成され、そこにインナー部材22が押し込み移動され、図4(a)の状態に保持される。次いで、アウター部材21の内ネジ211がインナー部材22の縮径変位部25の外ネジ221の後端位置(リング状基部23とは反対側の開口縁部)にねじ込まれる。この際、の外ネジ221の後端の外径はアウター部材21の内ネジ211の内径より小さく、容易にねじ込みがなされる。このねじ込み量を増していくと、縮径変位部25(複数の縮径変位片251)の径方向外側に膨出した外周面がアウター部材21の内ネジ211により共通中心線L1側に押されて、縮径変位部25(全縮径変位片251)が径方向内側に弾性変位する。
【0029】
即ち、図4(b)に示すように、互いにスリット24を介して隣り合う各縮径変位片251が、スリット24幅を減縮させるようにして接近しつつ、共通中心線L1の方向へ弾性変位することで縮径変位部25(各縮径変位片251)の内径が縮径変位され、中間部s2の内径r2がより小さくされることとなる。これにより、ホース接続部Eにおいて、アッパーホース17を全周域で一様に流入パイプ金具14側に押圧して、アッパーホース17と流入パイプ金具14とが密着した状態とされ、全周に亘りアッパーホース17と流入パイプ金具14とのシール性が確保される。
上述のように、図1〜図4に示した本実施形態の締結クランプ1によれば、インナー部材22の縮径変位部25の外ネジ221にアウター部材21の内ネジ211を締結することで縮径変位部25(縮径変位片251)を縮径変位させて、アッパーホース17の外周面に流入パイプ金具14の中心方向に向けて締結力を均一に加えることができる。したがってアッパーホース17の全周を均一に押圧して流入パイプ金具14に密着させることができるので、シール性を十分に確保して締結できる。
【0030】
また、縮径変位部25(縮径変位片251)の断面視が樽型で、縮径変位部25の外径がアッパーホース17の長手方向(共通中心線L1の方向)で徐変する形状とされており、インナー部材22の外ネジ221へのアウター部材21の内ネジ211のねじ込み量が増えるにつれて縮径変位部25(縮径変位片251)の外周部がアウター部材21によってより強く押圧される構成となっているので、アッパーホース17を流入パイプ金具14により確実に締結することができる。また、インナー部材22(縮径変位部25)ねじ込み側先端(リング状基部23とは反対側の開口縁部)の外径が比較的小さくなるので、アウター部材21の内ネジ211に容易にねじ込みでき、アウター部材21を嵌合する際のインナー部材22への嵌め込みが容易となる。
【0031】
また、縮径変位部25(縮径変位片251)の外周面に外ネジ221を形成して、縮径変位部25にアウター部材21を締結する構成としているので、縮径変位部25(縮径変位片251)によるアッパーホース17への押圧、すなわち締め付けがより確実とすることができる。
なお、アッパーホース17の前端と流入パイプ金具14の結合部を締結クランプ1で締結したと同様に、図1に示すアッパーホース17の後端と上パイプジョイント16の結合部や、ロアーホース19の前後端と流出パイプ金具15及び下パイプジョイント18の結合部とはそれぞれ締結クランプ1を用いて同様に締結でき、各連結部のシール性も十分に確保できる。
【0032】
図5には本発明の他の実施形態としての締結クランプ1aの要部断面を示した。
【0033】
ここでの締結クランプ1aは図1の締結クランプ1に代えて使用でき、アウター部材21aとインナー部材22aの嵌合部の形状が異なる以外は同様の構成を採り、重複説明を略す。
図5(a)のインナー部材22aはその内筒基部31と、その外表面にネジ溝が切られて形成された外ネジ32と、内筒基部31の一方側端より共通中心線L1方向に延びる縮径変位部25aとで一体形成される。縮径変位部25aはアッパーホース17を嵌挿できる内周面が形成され、共通中心線L1方向に延びるスリット24aを介して複数の縮径変位片251aが周方向に配列形成される。複数の縮径変位片251aの外周面は縮径変位部25a全体でその外周面が螺合方向nと反対側に縮径する、先細の外周コーン面fc1を成すように形成される。すなわち、縮径変位部25aの外周面が螺合方向nと反対側に縮径するテーパー状に形成されている。
【0034】
一方、アウター部材21aは筒状本体34とその内側の貫通穴35を備えた短筒状体である。筒状本体34の内周壁の先端側(螺合方向n側)にはネジ溝が切られて内ネジ36が形成され、これがインナー部材22aの外ネジ32と噛み合うよう形成される。アウター部材21aの筒状本体34の内周壁の内ネジ36の奥側(螺合方向nと反対側)には螺合方向n(図5(a)参照)と反対側に縮径するテーパー面部である内周コーン面fc2が形成され、この内周コーン面fc2はインナー部材22aの外周面の外周コーン面fc1に摺接可能に形成される。
ここでインナー部材22aの外周コーン面fc1の先端の外径raは筒状本体34の内周コーン面fc2の長手方向での中間部の内径rbとほぼ等しく形成される。
【0035】
この第2実施形態の筒状クランプ1aにより、アッパーホース17が流入パイプ金具14に差し込まれたホース接続部Eを締結している。
【0036】
この場合、ホース接続部Eに外嵌されたインナー部材22aの外ネジ32にアウター部材21aの内ネジ36がねじ込まれる。これにより、外周コーン面fc1の先端が内周コーン面fc2の長手方向での中間部に当接する。その後、更に、外ネジ32にアウター部材21aの内ネジ36がねじ込まれることで、縮径変位部25a、すなわち複数の縮径変位片251aの外周コーン面fc1の先端の外径raが狭まり、互いにスリット24aの幅を狭めて、縮径変位する。このため、複数の縮径変位片251aが共通中心線L1の方向に弾性変位して、アッパーホース17を流入パイプ金具14に押圧して密着させた状態で締結される。
【0037】
以上のように図5に示した本実施形態の締結クランプ1aにおいても、実施形態1同様、インナー部材22aの縮径変位部25aの外ネジ32にアウター部材21aの内ネジ36を締結することで、アッパーホース17の外周面に流入パイプ金具14の中心方向に向けて締結力を均一に加えることができるので、シール性を十分に確保して締結できる。また、インナー部材22aの縮径変位部25aの外周面が螺合方向nと反対側に縮径するテーパー状に形成されているので、アウター部材21を嵌合する際のインナー部材22への嵌め込みが容易となる。
なお、本実施例においては、インナー部材22aの縮径変位部25a(縮径変位片251a)の外周面である外周コーン面fc1またはアウター部材21aの内周コーン面fc2のいずれか一方を径方向に湾曲状態とすることで、縮径変位部25aによるアッパーホース17への押圧をより大きくすることができ、シール性の確保がより確実とされる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、締結クランプ1は、上述のように流動体の収容容器であるラジエータ7とエンジン本体301とを結ぶアッパーホース17やロアーホース19の各前後端の締結処理に用いているが、これに限定されるものではなく、流動体の収容容器であるヒーターとそのヒーターパイプとの締結部や、オイルクーラーとそのクーラーパイプとの締結部や、エアクリーナーとそのエアーパイプとの締結部や、その他の各種産業分野で使用される流体作動機器とその接続パイプとの締結部の締結クランプとして適用でき、図1の締結クランプと同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0039】
1 締結クランプ
2 エンジンルーム
201 上向き開口
7 ラジエータ(車両の流体機器)
14 流入パイプ金具(配管用の接続部)
15 流出パイプ金具(配管用の接続部)
17 アッパーホース
19 ロアーホース
21 アウター部材
211 内ネジ(ネジ溝)
22 インナー部材
221 外ネジ(ネジ溝)
23 リング状基部
24 スリット
25 縮径変位部
251 縮径変位片
n アウター部材の螺合方向(ネジが締め込まれる方向)
C 車両
E ホース接続部(ホースの嵌着部分)
L1 共通中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の流体機器の配管用の接続部に嵌着されたホースの嵌着部分を外周部より中心方向に締め付けて、前記ホースを前記接続部に締結する締結クランプであって、
前記締結クランプは、外周面にネジ溝が形成された円筒状を成し前記ホースの前記嵌着部分に外嵌されるインナー部材と、該インナー部材のネジ溝に螺合可能なネジ溝が内周面に形成された筒状で前記インナー部材の外周に螺合により嵌合されるアウター部材とを備え、
前記インナー部材は、前記アウター部材の螺合方向と反対側の開口縁からホース長手方向に沿って延びる複数のスリットが周方向に等間隔で形成されて径方向に変位可能とされた縮径変位部を有し、
前記インナー部材の外周に前記アウター部材を螺合することで、前記縮径変位部が縮径方向に変位して前記ホースの前記嵌着部分を押圧して前記接続部に締結するよう構成したことを特徴とする締結クランプ。
【請求項2】
前記縮径変位部は、前記スリットにより分割された複数の縮径変位片で構成され、同縮径変位片は、軸方向に沿った断面形状が径方向に膨出する樽型に形成されていることを特徴とする請求項1記載の締結クランプ。
【請求項3】
前記インナー部材の前記ネジ溝は、前記縮径変位部の外周面に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の締結クランプ。
【請求項4】
前記アウター部材の内周面には、前記螺合方向と反対側に縮径するテーパー面部が形成され、
前記インナー部材の前記縮径変位部は、その外周面が前記螺合方向と反対側に縮径するテーパー状とされ、
前記アウター部材が前記インナー部材に螺合することで、前記アウター部材の前記テーパー面部によって前記縮径変位部が縮径方向へ変位されることを特徴とする請求項1記載の締結クランプ。
【請求項5】
前記車載機器はラジエータ装置であり、前記ホースは前記ラジエータ装置に冷却液を循環させるために接続される配管であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の締結クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241762(P2012−241762A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110736(P2011−110736)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)