説明

緩衝材及び緩衝材の使用方法

【課題】小型化して再利用可能であって、それ自身が損傷しにくく、容易に小型化できる緩衝材を提供する。
【解決手段】緩衝材1は、蛇腹部11を有し膨張収縮可能な袋体10と、通気口31を有する通気部30と、逆止弁40と、ガイドピン50と、弾性体61,65とを有している。袋体10が膨張した使用状態では、逆止弁40により通気口31が塞がれ、袋体10内の空気が流出しにくく、緩衝材1が緩衝力を発揮する。逆止弁40が開放されて袋体10が圧縮されると、袋体10内の空気が通気口31を介して外部に流出し、蛇腹部11が折り畳まれる。ガイドピン50がスライドしてその先端部が通気部30の外部に突出した状態で、ロック板35がガイドピン50に係合することで、緩衝材1が圧縮された非使用状態のままでロックされる。緩衝材1を容易に小型化でき、小型化した状態で緩衝材1を取り除く作業を行え、緩衝材1が損傷しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緩衝材及び緩衝材の使用方法に関し、特に物品の梱包時などに用いられる緩衝材及び緩衝材の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子機器(MFP(Multi Function Peripheral)、プリンタ、FAX製品などを含む)などの製品(物品;被梱包物と呼ぶことがある)の梱包時などには、緩衝材(梱包材)が使用される。緩衝材は、被梱包物の周囲や内部に配置されることで、梱包箱などに外力や振動が加えられても被梱包物が破損したり故障したりしないように、被梱包物を保護する。
【0003】
梱包された物品の開梱は、例えばその物品のユーザのオフィスなど、スペースにそれほど余裕がない場所で実施されることがある。特にこのような場合において、被梱包物の保護の役割を一旦終えた緩衝材は、その体積が大きいと、その被梱包物の開梱後のセットアップ作業などの作業性の低下を招くことがある。また、緩衝材を保管するとき、緩衝材の体積が大きいと、広いスペースが保管場所として占有されてしまうため、保管場所の確保が困難である場合がある。また、緩衝材を保管するための運搬作業に必要なユーザの負担が大きくなる。これらの理由から、本来は再利用されるべき緩衝材であっても、一度だけ梱包に使用された後、廃棄される場合がある。緩衝材としては、再利用可能であり、非使用時には小型化できて保管するのに場所をとらないものが求められている。
【0004】
このような問題に対して、下記特許文献1には、袋体の中にスポンジ状の弾性体を持つ緩衝材の構造が開示されている。使用時には、袋体の口の栓が外されることで、スポンジの弾性体により膨張した状態に復元される。不使用時には、袋体とスポンジとが押圧されて袋内部の空気が排出されることで縮小され、袋体の口に栓がされることで、縮小された状態で保管される。すなわち、この緩衝材は、袋体内部の弾性体を緩衝材として使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−315070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の緩衝材を用いる場合、以下の問題が生じる。一旦梱包に用いた緩衝材を容易には小型化できないという問題と、緩衝材の取り外し時に緩衝材が損傷しやすいという問題とである。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載の緩衝材は、袋体内部に配置したスポンジ状の弾性体により緩衝機能を発揮させるものである。しかしながら、弾性体は被梱包物の各部位を保持するために十分な弾性力を有するものであり、袋体の保管時には、その弾性力に打ち勝って袋体を縮小させる必要がある。そのため、緩衝材を容易には小型化できず、袋体を縮小する際には、袋体内の気体を吸引する装置などを用いる必要がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の緩衝材では、繰り返し反復して使用する場合、被梱包物からの取り外し時のストレス回避が不十分となり、緩衝材が損傷する可能性がある。緩衝材は、被梱包物を損傷させてはならず、また、被梱包物からの取り外し時において、それ自身が損傷しないものである必要がある。
【0009】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、小型化して再利用可能であって、それ自身が損傷しにくく、容易に小型化できる緩衝材及び緩衝材の使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、緩衝材は、膨張及び収縮可能な袋体と、袋体の一部又はその内部に配置されており、袋体が収縮した状態でその復元力を袋体を膨張させる力として袋体に加える膨張手段と、袋体に気体を流出入させる通気部と、通気部に設けられ袋体からの気体の流出を遮る逆止弁と、袋体が収縮した状態で袋体の大きさを維持するロック機構とを備え、袋体が膨張した状態で逆止弁により袋体からの気体の流出が遮られることで緩衝力を発揮し、逆止弁が開放されて袋体から気体が流出することにより袋体が収縮可能となる。
【0011】
好ましくはロック機構は、袋体が所定の大きさに収縮した状態で互いに係合可能となる少なくとも2以上の部材を有する。
【0012】
好ましくは膨張手段は、袋体の内部に配置されており、その端部の一方が袋体に接続されている線状の弾性体と、弾性体の端部の他方に接続されており、略一直線上に袋体の一部に対してスライド可能に配置されているスライド部材とを有し、袋体が収縮した状態で、弾性体が自然状態から変形した状態であり、弾性体の復元力によりスライド部材が袋体の一部に対してスライドすると共に袋体が膨張する。
【0013】
好ましくはロック機構は、スライド部材と、袋体が収縮した状態でスライド部材に係合可能な位置に配置された係合部材とを有する。
【0014】
好ましくは袋体は、その一部を構成するように形成された蛇腹部を有している。
【0015】
好ましくは蛇腹部は、膨張手段の少なくとも1つであり、折り畳まれた状態で蛇腹部が伸びるように復元力を発生する。
【0016】
好ましくは蛇腹部は、その2つの端部が共に開口した筒形状を有し、袋体は、蛇腹部と、蛇腹部を挟むように蛇腹部の2つの端部にそれぞれ接続された第1のピース及び第2のピースとを有しており、ロック機構は、第1のピースに第2のピースに向けて突出するように設けられた第1の突出部と、第2のピースに第1のピースに向けて突出するように設けられた第2の突出部とを有し、蛇腹部が折り畳まれた状態で第1の突出部と第2の突出部とが係合することで、袋体が収縮した状態で袋体の大きさを維持する。
【0017】
この発明の他の局面に従うと、膨張及び収縮可能な袋体と、袋体の一部又はその内部に配置されており、袋体が収縮した状態でその復元力を袋体を膨張させる力として袋体に加える膨張手段と、袋体に気体を流出入させる通気部と、通気部に設けられ袋体からの気体の流出を遮る逆止弁と、膨張手段による袋体を膨張させる力に抗して、袋体が収縮した状態で袋体の大きさを維持するロック機構とを備える緩衝材の使用方法は、袋体が膨張した状態で、逆止弁を開放させる第1のステップと、第1のステップが行われた後、袋体を外部から押圧して袋体の内部の気体を通気部を介して排出させる第2のステップと、第2のステップにより袋体が収縮した状態で、袋体の大きさが維持されるようにロック機構によるロックを施す第3のステップと、第3のステップによりロックが施されている状態で、ロック機構によるロックを解除し、膨張手段により袋体を膨張させ、緩衝力を発揮可能にさせる第4のステップとを備える。
【発明の効果】
【0018】
これらの発明に従うと、逆止弁により袋体からの気体の流出が遮られることで緩衝力が発揮され、逆止弁が開放されて袋体から気体が流出することで袋体が収縮する。したがって、小型化して再利用可能であって、それ自身が損傷しにくく、容易に小型化できる緩衝材及び緩衝材の使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態における緩衝材を示す側面図である。
【図2】図1の通気部近傍部位の拡大図である。
【図3】非使用状態における緩衝材を示す側面図である。
【図4】図3の通気部近傍部位の拡大図である。
【図5】使用状態における通気部を通気口側すなわち通気部の上面側から見た図である。
【図6】非使用状態における通気部を通気部の上面側から見た図である。
【図7】ガイドピンにロック板が係合した状態を示す図である。
【図8】緩衝材を用いて梱包された状態のMFPの一例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態における緩衝材を示す側面図である。
【図10】使用状態における緩衝材を示す側面図である。
【図11】図10の通気部の周辺部を示す図である。
【図12】緩衝材が使用状態から非使用状態にされる過程における通気部の周辺部を示す図である。
【図13】第3の実施の形態における緩衝材を示す側面図である。
【図14】使用状態における緩衝材を示す側面図である。
【図15】図14の通気部の周辺部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態における緩衝材について説明する。
【0021】
緩衝材は、電子機器(MFP(Multi Function Peripheral)、プリンタ、FAX製品などを含む)などの物品(被梱包物)の梱包時などに使用される。緩衝材は、例えば、被梱包物が段ボール箱などの包装箱で包装されるとき、被梱包物と段ボール箱との隙間や、被梱包物の内部の隙間などに配置される。これにより、段ボール箱に外力が加わったり、被梱包物に振動が伝わったりしても、被梱包物の破損・損傷を防止できる。また、緩衝材は、被梱包物の内部で互いに接触する部品同士を離間させてその部品の変形などを防止するため、被梱包物の内部に配置されることがある。
【0022】
以下に説明する実施の形態において、緩衝材は、その不使用時には収縮して小型化(縮小化)できるものである。緩衝材の使用時に所定のロック解除操作が行われることで、緩衝材は、縮小化された状態から必要な大きさに膨張し、緩衝力を発揮する状態に復元される。すなわち、緩衝材は、一定の大きさに復元され緩衝力を発揮可能な使用状態(膨張状態)と、使用状態から収縮し小型化された(縮小化された)非使用状態(収縮状態)とをとることができる。緩衝材は、適宜、使用状態から非使用状態にされたり、非使用状態から使用状態にされたりし、繰り返して梱包に使用可能なものである。すなわち、緩衝材は、再利用可能なものである。
【0023】
緩衝材は、給排気の通気口に逆止弁を備えた袋体と、袋体を広げる(膨張させる)ために袋体の一部又は内部に配置された弾性体と、袋体の縮小時にその状態を保持させるために設けられた係合部とを有する。緩衝材の不使用時には、逆止弁が開放された状態で外部から押圧されて袋体内部の空気が排出され、袋体を縮小させた状態で、係合部によりその状態のまま緩衝材が保持される。使用時には、係合部の係合が解除されることで、袋体の一部又は袋体の内部に設置された弾性体の復元力により、袋体が必要な寸法形状に復帰し、使用状態になる。使用状態においては、逆止弁により袋体内部の空気が保持される。製品からの緩衝材の取り外し時においては、ユーザが逆止弁を開放させることにより、袋体内部の気圧が低下し、被梱包物や緩衝材へ過剰の負荷が加わることが防止される。
【0024】
[第1の実施の形態]
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態における緩衝材1を示す側面図である。
【0026】
[緩衝材1の全体の構成]
【0027】
図を参照して、緩衝材1は、使用状態である。緩衝材1は、袋体10と、通気部30と、逆止弁40と、ガイドピン(膨張手段の一例、スライド部材の一例)50と、弾性体(膨張手段の一例)61,65とを有している。
【0028】
袋体10は、その側周部分に蛇腹部11を有する袋状に形成されている。すなわち、袋体10は、蛇腹部11が伸びることで膨張可能であり、蛇腹部11が折り畳まれることで収縮可能である。袋体10は、例えば、柔軟性のある合成樹脂のシートを用いて成形されている。袋体10は、例えば、蛇腹部11を構成するシートと、図において上方の面(以下の説明において、この面を単に上面と呼ぶ)となるシートと、図において下方の面(以下の説明において、この面を単に下面と呼ぶ)となるシートとを用いて成形されている。袋体10は、各シートの周辺部が他のシートと接着/溶融などの方法で接合されることで、全体として一体化されている。これにより、袋体10の内部には、空気を収納できる。袋体10は、防水性を有している。
【0029】
通気部30は、例えば内部が空洞である略円柱形状を有しており、袋体10の蛇腹部11の一部に、袋体10との間で気密を維持するようにして設けられている。通気部30は、その上面(図において右側面)が外部に露出し、その底面が袋体10の内部に埋入されるようにして、袋体10に取り付けられている。通気部30は、袋体10の内部と緩衝材1の外気とを連通させるための通気口31を有している。通気口31は、通気部30の上面に形成されている。通気部30のうち袋体10の内部側の部位には、通気部30の内部と袋体10の内部とが連通するように、図示しない孔部などが形成されている。これにより、通気部30を介して、袋体10の内部と外部とが連通している。
【0030】
ガイドピン50は、円柱形状を有するものである。ガイドピン50は、袋体10の内部から通気口31に向く方向が長手方向となるように、通気部30を貫通するようにして配置されている。ガイドピン50は、その周面部で通気部30により支持されている。ガイドピン50は、その長手方向に、通気部30に対してスライド可能である。
【0031】
弾性体61,65は、それぞれ線状に形成されている。弾性体61,65は、例えば鋼線又は線状の板ばねである。弾性体61の一端及び弾性体65の一端は、それぞれ、ガイドピン50の支持部51に接続されている。弾性体61の他端は、袋体10の上面略中央部の支持部63に接続されている。弾性体65の他端は、袋体10の下面略中央部の支持部67に接続されている。弾性体61,65は、略円弧状に湾曲した状態が自然状態になるように形成されている。弾性体61は、袋体10の上面に向けて凸になるような向きで配置されている。弾性体65は、袋体10の下面に向けて凸になるような向きで配置されている。
【0032】
本実施の形態において、弾性体61,65は、緩衝材1が使用状態であるときも、緩衝材1が非使用状態であるときも、常に、自然状態から変形した状態すなわち自然状態よりも各弾性体61,65の両端部が互いに離れた状態になるように配置されている。ここで、ガイドピン50は、通気部30に対して図において上下方向に変位しないように通気部30により支持されている。そのため、弾性体61は、その復元力により、袋体10の上面をガイドピン50に対して上方にすなわち通気部30に対して上方に付勢する。同様に、弾性体65は、その復元力により、袋体10の下面を通気部30に対して下方に付勢する。このように弾性体61がガイドピン50と袋体10の上面との間で突っ張り、弾性体65がガイドピン50と袋体10の下面との間で突っ張ることにより、蛇腹部11が伸び、袋体10が膨張状態になる。換言すると、弾性体61,65の復元力により、蛇腹部11が伸び、袋体10の上面と下面との間の寸法D1が大きくなる。
【0033】
図2は、図1の通気部30近傍部位の拡大図である。
【0034】
図を参照して、通気部30の上面には、ロック板(係合部材の一例)35と、ロック板支点37とが設けられている。通気部30の内部には、逆止弁40が回転軸41を中心に回転可能に配置されている。逆止弁40は、通気口31を通気部30の内側から塞いだり、通気口31を開放したりするように配置されている。逆止弁40は、袋体10からの気体の流出を遮る。
【0035】
緩衝材1が非使用状態から使用状態になるとき、逆止弁40が図に2点鎖線で示す位置に変位し、通気口31が開放される。これにより、通気口31を介して緩衝材1の外部の空気が袋体10の内部に流入し、袋体10が弾性体61,65の復元力により膨張する。緩衝材1が使用状態であるときには、逆止弁40が通気口31を通気部30の内側から塞ぐので、袋体10の内部の空気が外部に流出しにくくなる。緩衝材1は、袋体10が膨張した状態すなわち使用状態において、逆止弁40により袋体10からの気体の流出が遮られることで、より大きな緩衝力を発揮可能になり、緩衝材として機能する。
【0036】
ガイドピン50の側周面のうち、通気口31側の先端部近傍部位には、溝部53が形成されている。溝部53は、その溝幅がロック板35の厚みよりも大きくなるように形成されている。
【0037】
[非使用状態の説明]
【0038】
図3は、非使用状態における緩衝材1を示す側面図である。
【0039】
図を参照して、非使用状態において、緩衝材1は、蛇腹部11が折り畳まれ、袋体10の上面と下面とが近接した状態となる。すなわち、袋体10の上面と下面との間の寸法D2が、緩衝材1が使用状態であるときの寸法D1よりも小さくなる。
【0040】
使用状態から非使用状態になると、袋体10の上面又は下面とガイドピン50との間の、図において上下方向の寸法が小さくなる。このとき、使用状態であるときと比べてガイドピン50が図において右方向すなわち通気口31側に向けて変位して、弾性体61,65のそれぞれの両端部間の間隔が使用状態と比べて大きくなり、弾性体61,65が全体として伸びる。非使用状態においては、使用状態と比べて、弾性体61,65の自然状態からの変形量が大きくなり、復元力が大きくなるので、弾性体61,65による袋体10を膨張させる力は大きくなる。
【0041】
図4は、図3の通気部30近傍部位の拡大図である。
【0042】
図を参照して、緩衝材1が使用状態から非使用状態にされる場合には、例えば、逆止弁40がユーザにより通気口31側から押し戻されたり重力により変位したりすることで、通気口31が開放される。ユーザは、逆止弁40を、例えばピンや指等を用いて袋体10の内部側に押し戻し、開放できる。逆止弁40が開放されて袋体10から気体が流出することにより、袋体10が収縮可能となる。逆止弁40が開放された状態で、袋体10に外力が加えられることで、袋体10内の空気が外部に流出されながら、袋体10が押しつぶされ、蛇腹部11が折り畳まれる。
【0043】
[ロック機構の説明]
【0044】
ここで、緩衝材1は、ロック機構を有している。ロック機構は、袋体10が収縮した状態すなわち非使用状態で、弾性体61,65による袋体10を膨張させる力に抗して、袋体10の大きさを維持する。本実施の形態において、ロック機構は、ガイドピン50及びロック板35などにより構成されている。
【0045】
図を参照して、非使用状態においては、ガイドピン50の先端部が通気口31から緩衝材1の外部に露出する。本実施の形態において、緩衝材1の外部に露出したガイドピン50の溝部53にロック板35が係合することにより、ガイドピン50が通気部30に対してスライド不可能に保持される。すなわち、非使用状態においては、弾性体61,65による復元力が大きくても、ガイドピン50が、使用状態下の位置に変位不可能であるため、袋体10が膨張しない。ガイドピン50がロックされることにより、緩衝材1は、非使用状態のまま、保持される。これにより、緩衝材1の非使用時においては、緩衝材1を小型化した状態で取り扱うことができる。
【0046】
図5は、使用状態における通気部30を通気口31側すなわち通気部30の上面側から見た図である。
【0047】
図を参照して、ガイドピン50は、通気部30の中心部に配置されている。ロック板35は、おおまかに中心角が180度の扇形形状を有している。ロック板35のうち、ロック板35の外縁となる円弧の中心に相当する部分には、ガイドピン50の径よりも小さい径を有する半円形状の切り欠き部35aが形成されている。
【0048】
ロック板35は、ロック板支点37を回転軸として回転可能である。本実施の形態において、通気部30の上面には、ロック板35の回転可能な位置を規制するためのストッパ39が設けられている。ストッパ39は、通気部30の上面から突出するように設けられている。ストッパ39は、ロック板35が図に示すように通気口31の半分程度を覆う位置であるとき、ロック板35の端部に当接する位置に設けられている。
【0049】
使用状態においては、逆止弁40が閉状態であるため、通気口31が塞がれている。このとき、ガイドピン50は通気部30及び袋体10の内部に位置しており、外部に露出しない。
【0050】
図6は、非使用状態における通気部30を通気部30の上面側から見た図である。
【0051】
図を参照して、緩衝材1が使用状態から非使用状態になるとき、逆止弁40が開放され、ガイドピン50が通気口31を介して通気部30の上面から突出する。このとき、ユーザは、ロック板35を、ロック板支点37を中心に回転させる。ロック板35は、通気部30の上面側から見たときの通気口31の開口面積が大きくなるように変位する。これにより、ロック板35は、ガイドピン50の先端部に当接しないような位置に、すなわちガイドピン50の変位を妨げないような位置に位置する。
【0052】
ガイドピン50の先端部が通気口31から突出した状態で、ロック板35によりガイドピン50が通気部30に対して固定されることで、緩衝材1がロックされる。すなわち、ロック板35は、図に矢印Rで示す方向に、ロック板支点37を中心に回転される。ロック板35がストッパ39に当接するまで回転すると、すなわち図に2点鎖線で示す位置まで回転すると、ガイドピン50の溝部53にロック板35の切り欠き部35aが嵌入する。
【0053】
図7は、ガイドピン50にロック板35が係合した状態の通気部30を通気部30の上面側から見た図である。
【0054】
図を参照して、ガイドピン50にロック板35が係合することで、ガイドピン50が図において紙面に垂直な方向にスライド不可能になり、ガイドピン50が固定される。ガイドピン50が固定されるので、緩衝材1はユーザの力などが加えられていない状態でも非使用状態から使用状態には戻らず、非使用状態のままとなる。すなわち、緩衝材1が、非使用状態のままで、ロック機構によりロックされる。
【0055】
[緩衝材1の使用方法]
【0056】
上述のように構成された緩衝材1は、以下のようにして使用できる。すなわち、図3に示すように、非使用状態にロックされている状態において、ユーザは、ロック板35をロック板支点37を中心に回転させ、ガイドピン50とロック板35との係合を解除する。これにより、ガイドピン50は、通気部30に対してスライド可能になる。ユーザは、ロック機構によるロックを解除し、弾性体61,65の復元力により、袋体10を膨張させる。このとき、外気が通気口31を介して袋体10の内部に流入する。袋体10の膨張が止まると、以後、逆止弁40の働きにより袋体10の内部の空気の略全部が袋体10の内部に保持される。これにより、緩衝材1は、図1に示すような、緩衝力を発揮可能な使用状態になる。
【0057】
緩衝材1の使用が終了すると、ユーザは、以下のようにして緩衝材1を非使用状態にできる。すなわち、ユーザは、逆止弁40を指やピン等を用いて変位させて開放させ、気体を通気口31から流出可能にする。その後、ユーザは、その状態で、袋体10を上下方向から押圧し、袋体10を圧縮することで、袋体10の内部の空気を通気部30を介して袋体10の外部に排出させる。このとき、弾性体61,65の変形に伴い、ガイドピン50が逆止弁40を持ち上げた状態で通気部30に対しスライドする。袋体10が圧縮されると、ガイドピン50の先端部が通気口31から突出する。その後、ユーザは、袋体10が圧縮され収縮した状態で、ロック板35を回転させてガイドピン50の溝部53に係合させることにより、ロック機構によるロックを施す。これにより、緩衝材1が、使用状態より縮小化された非使用状態のまま、維持される。
【0058】
[緩衝材1の使用例]
【0059】
上述の緩衝材1の用途の一例について説明する。本実施の形態において、緩衝材1は、MFPを運搬のために梱包する際などに用いられる。
【0060】
図8は、緩衝材1を用いて梱包された状態のMFP600の一例を示す図である。
【0061】
図を参照してMFP600は、運搬用の段ボール箱(梱包箱の一例)500の内部に収納されて梱包される。MFP600の梱包時には、MFP600と段ボール箱500との隙間に配置される緩衝材1,2,3,4と、MFP600の内部に配置される緩衝材5,6,7とが用いられる。
【0062】
MFP600は、例えば電子写真方式により画像を形成する機能と、画像を読み取る機能とを有するものである。MFP600の筐体610の内部には、給紙カセット631a,631b、大容量カセット633、手差し部635、搬送部641、作像部650、及び定着部660などが設けられている。筐体610の内部の上方には、読込部680が設けられている。筐体610の上面には、原稿台685が設けられている。筐体610の下部には、回転可能なキャスタ690が設けられている。MFP600は、キャスタ690を接地させて移動させられる。
【0063】
給紙カセット631a,631b及び大容量カセット633には、用紙を装てん可能である。大容量カセット633には、給紙カセット631a,631bに装てん可能な用紙よりも多くの用紙を装てん可能である。用紙は、押上板支点633bを軸として回転可能な押上板633a上に装てんされる。押上板633aがその下部のリフトアップレバー633cにより上方に押し上げられることで、用紙が上方に変位され、用紙が一枚ずつ給紙される。大容量カセット633には、後端作動ガイド633dが設けられている。大容量カセット633の上方には、挿入ローラ643が設けられている。
【0064】
手差し部635は、筐体610の図において右側部に設けられている。手差し部635には、手差し部用紙635aを載置できる。
【0065】
作像部650は、感光体651、書込部653、及び転写ローラ655などを有している。作像部650は、電子写真方式で、搬送された用紙上にトナー画像を形成する。
【0066】
定着部660は、定着ヒータ661を有している。定着部660は、定着ヒータ661によりトナー画像が形成された用紙を加熱することで、用紙にトナー画像を定着させる。
【0067】
読込部680は、原稿台685上に載置された原稿をイメージセンサで走査することで原稿を読み取り、画像データとして出力する。
【0068】
MFP600は、例えばユーザからの指示入力に基づいて、給紙カセット631a,631b、大容量カセット633、及び手差し部635のいずれかから用紙を給紙して、作像部650及び定着部660によりその用紙上に画像を形成する。MFP600は、読込部680で読み取った画像データに基づいて画像を形成可能である。
【0069】
MFP600は、その筐体610の隅部に使用状態とされた緩衝材1,2,3,4が配置されることで、筐体610やキャスタ690が段ボール箱500の内面に直接には接触しないようにして、段ボール箱500の内部に収納される。これにより、梱包状態において、段ボール箱500に加わった衝撃が緩衝され、MFP600が保護される。
【0070】
MFP600の梱包時において、筐体610の内部にも緩衝材5,6,7が配置される。図に示すように、緩衝材5,6は、それぞれ、給紙カセット631a,631bの用紙が装てんされる部位に用紙に代えて配置される。同様に、緩衝材7は、大容量カセット633の用紙が装てんされる部位に配置される。このように緩衝材5,6,7が配置されることにより、筐体610の内部において互いに接触するなどして加圧される部品同士を離間させ、長期にわたり加圧される部分を減らすことができ、部品の変形を防止できる。
【0071】
MFP600の開梱やセットアップを行う場合、緩衝材1〜7は、それぞれ配置されていた部位から取り外される。このとき、ユーザは、緩衝材1〜7を、それらが梱包のため配置されている状態のままで、使用状態から縮小させることができる。これにより、緩衝材1〜7を容易に取り外し、容易にMFP600を開梱することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態において、緩衝材1は、非使用状態と使用状態とを容易に切り替えて用いることができる。非使用時には、緩衝材1を容易に小型化したうえで非使用状態としてロックできるので、緩衝材1を保管、運搬又は廃棄などするために必要なスペースを節減することができる。また、被梱包物の梱包時には、ロックを解除するだけの作業で緩衝材1を容易に使用状態にでき、確実にその緩衝力を発揮させることができ、緩衝材1の再利用も容易に行うことができる。
【0073】
梱包に用いた緩衝材1は、小型化してから取り除くことができるので、緩衝材1を取り除く作業を容易に実行できる。このとき、緩衝材1が段ボール箱500などの梱包箱や被梱包物に強く接触することを防止できるので、緩衝材1が破損することを防止でき、緩衝材1の再利用可能回数を増やすことができる。例えば、袋体10が破れにくくなる。また、被梱包物の内部に配置した緩衝材1を取り除く場合にあっては、緩衝材1の破損を防止できると共に、その被梱包物自体の損傷を防止することができる。
【0074】
[第2の実施の形態]
【0075】
図9は、第2の実施の形態における緩衝材101を示す側面図である。
【0076】
[緩衝材101の構造]
【0077】
図には、非使用状態における緩衝材101を示す。図を参照して、第2の実施の形態において、緩衝材101の基本的な構成は、おおまかに、第1の実施の形態における緩衝材1と同様である。すなわち、緩衝材101は、袋体110と、蛇腹部(膨張手段の一例)111と、袋体110内の気体が流出入する通気部130と、逆止弁140と、ガイドピン150とを有している。緩衝材101は、緩衝材1と同様に、袋体110が膨張していることにより緩衝力を発揮可能な使用状態と、袋体110が収縮していることにより使用状態よりも縮小化された非使用状態とを容易に切替え可能なものである。
【0078】
袋体110は、図においてその側周部分に蛇腹部111を有する袋状に形成されている。袋体110は、例えば、蛇腹部111を構成するシートと、図において左方の面(以下の説明において、この面を単に上面と呼ぶ)となる上面プレート(第1のピースの一例)110aと、図において右方の面(以下の説明において、この面を単に下面と呼ぶ)となるプレート(第2のピースの一例)110bとを用いて成形されている。蛇腹部111は、図において左側と右側との2つの端部が共に開口した筒形状を有している。蛇腹部111の図において左側の開口の端縁部と、上面プレート110aの周辺部とは、互いに接着/溶融などの方法で接合されている。また、蛇腹部111の図において右側の開口の端縁部と、下面プレート110bの周辺部とは、互いに接着/溶融などの方法で接合されている。これにより、袋体110は、袋体10と同様に、全体として一体化されており、その内部に空気を収納できる。また、袋体110は、防水性を有している。
【0079】
袋体110は、蛇腹部111が伸びて上面プレート110aと下面プレート110bとが離れることで膨張可能であり、蛇腹部111が折り畳まれて上面プレート110aと下面プレート110bとが近接することで収縮可能である。
【0080】
本実施の形態において、蛇腹部111は、伸びた状態が自然状態となるように成形されている。図に示すように折り畳まれた状態において、蛇腹部111は、上面プレート110aと下面プレート110bとが互いに離れ、蛇腹部111自体が伸びるように、復元力を発生する。すなわち、蛇腹部111は、袋体110の一部に配置されており、袋体110が収縮した状態でその復元力を袋体110を膨張させる力として袋体110に加える。袋体110は、それ自体が、上下方向(図において左右方向)に広がる力、すなわち膨張する力を有している。
【0081】
通気部130は、下面プレート110bの略中央部に配置されている。通気部130は、下面プレート110bと一体に成形されている。通気部130の下面(図において右側面)には、通気口131が形成されている。通気部130の形状は第1の実施の形態における通気部30と略同様である。通気部130を介して、袋体110に気体が流出入可能である。逆止弁140は、第1の実施の形態における逆止弁40と同様に、通気口131を通気部130の内部側から開閉可能に塞ぐ。
【0082】
上面プレート110aには、下面プレート110bに向けて突出する凸部(第1の突出部の一例)115が設けられている。凸部115は、略球形状の先端部を有している。下面プレート110bには、凸部115に向けて突出する凹部(第2の突出部の一例)139が設けられている。凹部139は、例えば、下面プレート110bのうち通気部130が形成されている部位に形成されている。凹部139は、凸部115の先端部を挟み込むように略球面状の内面を有する先端部を有している。
【0083】
凸部115と凹部139とは、係合爪と係合フックによるスナップフィットとして機能する、ロック機構を構成する。すなわち、図を参照して、緩衝材101が図に示すような非使用状態にあるときに、凸部115の先端部が凹部139の先端部に嵌ることで、凸部115と凹部139とが係合する。これにより、緩衝材101は、非使用状態のまま保たれる。袋体110にロック機構が設けられていることにより、袋体110が収縮した非使用状態で、蛇腹部111による袋体110を膨張させる力に抗して、袋体110の大きさが維持される。凸部115が凹部139から引き抜かれるように力が加えられると、凹部139の左右の内面が広がる方向に力が加わり、凸部115と凹部139との係合が解除される。
【0084】
ガイドピン150は、ガイドピン50と同様に一端近傍部に鍔部150aが形成されている円柱形状を有している。ガイドピン150の鍔部150aが設けられている側とは反対側の端部と、凸部115とは、ワイヤ151を介して接続されている。ガイドピン150の周囲には、鍔部150aに引っかかる内径を有するばね155が配されている。ワイヤ151は、緩衝材101が使用状態であるときのその寸法に対応する長さを有している。ワイヤ151は、袋体110の内部にある凸部115から、通気部130の内部及び通気口131を貫通し、下面プレート110b側から袋体110の外部に延びている。
【0085】
図に示すように、緩衝材101が非使用状態であるときには、ガイドピン150は、袋体110の外部でワイヤ151に吊られている状態になる。また、非使用状態であるとき、通気口131をワイヤ151が貫通していることにより、逆止弁140が通気口131を塞ぐ状態にはならず、通気口131と袋体110の内部とで気体が流出入可能である。
【0086】
図10は、使用状態における緩衝材101を示す側面図である。
【0087】
図を参照して、使用状態においては、凸部115と凹部139との係合が外れており、上面プレート110aと下面プレート110bとが離れている。ワイヤ151は、下面プレート110b側から上面プレート110a側に引かれ、袋体110の内部に引き込まれている。ガイドピン150は、ワイヤ151が接続されている側の端部から通気部130に貫入している。ここで、通気部130の内部で鍔部150aがばね155を介して通気部130に引っかかることで、上面プレート110aと下面プレート110bとがそれ以上離れることがないように、すなわちそれ以上蛇腹部111が伸びないように、袋体110の大きさが規制されている。換言すると、袋体110が使用状態であるときに、鍔部150aが通気部130に引っかかるように、ワイヤ151の長さが設定されている。
【0088】
図11は、図10の通気部130の周辺部を示す図である。
【0089】
図を参照して、使用状態において、ガイドピン150は、通気部130の内壁に設けられた貫通孔135に貫入し、通気口131よりも袋体110の内部側に入り込む。このとき、逆止弁140は、ワイヤ151やガイドピン150に妨げられず、通気部130に対して回転し、通気口131を内側から覆う。これにより、使用状態において、袋体110内部の気体が通気口131から流出しにくくなり、緩衝材101は緩衝力を発揮できる。非使用状態において、貫通孔135には、ワイヤ151が貫通している。
【0090】
ここで、図に示すように、貫通孔135は、ばね155の外径よりも小さな内径を有している。使用状態においては、ばね155が通気口131の内壁と鍔部150aとの間で圧縮され、ばね155の復元力により、ワイヤ151が張られている。
【0091】
[緩衝材101の使用方法]
【0092】
上述のように構成された緩衝材101は、以下のようにして使用できる。すなわち、図9に示すように、凸部115と凹部139とが係合し、非使用状態にロックされている状態において、ユーザは、上面プレート110aと下面プレート110bとを互いに引き離すように引張り、凸部115と凹部139との係合を外す。このようにロックが解除されると、蛇腹部111の復元力により、通気口131を介して袋体110の内部に気体が流入し、袋体110が膨張状態になる。袋体110が使用状態における大きさまで膨張し、ガイドピン150が通気部130に引っかかることで、袋体110の膨張が止まり、緩衝材101が使用可能となる。
【0093】
緩衝材101の使用が終了すると、ユーザは、以下のようにして緩衝材101を非使用状態にできる。
【0094】
図12は、緩衝材101が使用状態から非使用状態にされる過程における通気部130の周辺部を示す図である。
【0095】
図に示すように、ユーザは、例えばピン800又はドライバなどを通気口131側から袋体110の内部に向けて差し込むことで、内部逆止弁140を変位させ、通気口131を開放させる。これにより袋体110の内部の気圧が下がる。ユーザは、その状態で、袋体110を上面プレート110aと下面プレート110bとが互いに近づくように圧縮することで、袋体110の内部の空気を袋体110の外部に排出させる。このとき、ばね155の復元力により、ガイドピン150が通気口131から通気部130の外部に向けて突出する。これにより、ユーザは、ガイドピン150を通気部130の外部に摘出できる。ユーザは、袋体110をさらに圧縮し、凸部115を凹部139に近接させ、凸部115を凹部139に押し込み、凸部115と凹部139とを係合させる。これにより、緩衝材101が、使用状態より縮小化された非使用状態のまま、維持される。
【0096】
緩衝材101は、上述の第1の実施の形態の緩衝材1と同様に、被梱包物の梱包に用いることができる。被梱包物の開梱時などにおいて、緩衝材101は、緩衝材101を被梱包物の周囲などに配置した状態のまま緩衝材101を非使用状態にする作業を行ったうえで、被梱包物から取り除くことができる。すなわち、第2の実施の形態においても、上述の第1の実施の形態と略同様の効果が得られる。
【0097】
[第3の実施の形態]
【0098】
第3の実施の形態における緩衝材の基本的な構成は、第2の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第3の実施の形態においては、通気部の位置及び蛇腹部の形状などの点において第2の実施の形態と異なる。
【0099】
図13は、第3の実施の形態における緩衝材201を示す側面図である。
【0100】
[緩衝材201の構造]
【0101】
図には、非使用状態における緩衝材201を示す。図を参照して、緩衝材201は、第2の実施の形態における緩衝材101と同様に、袋体110と、蛇腹部111と、ガイドピン150とを有している。袋体110は、第2の実施の形態におけるそれの下面プレート110bとは異なる形状の下面プレート(第2のピースの一例)210bを有している。袋体110の上面プレート110aと下面プレート210bとは、蛇腹部211を介して接続されている。
【0102】
下面プレート210bは、袋体110の下面(図において右側面)及び袋体110の側周面の下方をカバーするような桶形状を有している。蛇腹部211は、下面プレート210bの上端縁部と、上面プレート110aの周縁部との間に接合されている。
【0103】
第3の実施の形態において、通気部230は、下面プレート210bの側周面の一部にその通気口231を開口させるように設けられている。通気部230の内部には、通気口231を通気部230の内側から覆うように、逆止弁140が設けられている。通気部230は、上述の第2の実施の形態における通気部130と同様に機能する。すなわち、通気部230の通気口231を介して、袋体110の内部との間で気体が流出入する。
【0104】
下面プレート210bの略中央部には、上面プレート110aから突出する凸部115に対向するように、先端部に凹部139を有する突起213が設けられている。凸部115及び凹部139は、上述の第2の実施の形態と同様に、互いに係合することにより、緩衝材201を非使用状態に維持する。
【0105】
突起213のうち凹部139の下方(図において右方)には、貫通孔215が形成されている。凸部115とガイドピン150とを結ぶワイヤ151は、凸部115から貫通孔215を貫通し、貫通孔215から通気部230の通気口231を抜けてガイドピン150に接続されている。ガイドピン150及びばね155は、第2の実施の形態と同様に、緩衝材201が使用状態であるときに、通気部230に引っかかる。
【0106】
[緩衝材201の使用方法]
【0107】
上述のように構成された緩衝材201の使用方法は、緩衝材101の使用方法と略同様である。すなわち、図に示すように、凸部115と凹部139とが係合し、非使用状態にロックされている状態において、ユーザは、上面プレート110aと下面プレート210bとを互いに引き離すように引張り、凸部115と凹部139との係合を外す。このようにロックが解除されると、蛇腹部211の復元力により、通気口231を介して袋体110の内部に気体が流入し、袋体110が膨張状態になる。
【0108】
図14は、使用状態における緩衝材201を示す側面図である。
【0109】
図を参照して、袋体110が使用状態における大きさまで膨張すると、ガイドピン150が通気部230に引っかかる。このとき、ワイヤ151は、ガイドピン150と貫通孔215との間及び貫通孔215と凸部115との間で張られる。これにより、袋体110の膨張が止まり、緩衝材201が使用可能となる。
【0110】
図15は、図14の通気部130の周辺部を示す図である。
【0111】
図を参照して、使用状態において、ワイヤ151は袋体110の内部に引き込まれ、ガイドピン150は、通気部230の内部に深く埋入した状態になる。逆止弁140は、ワイヤ151やガイドピン150に遮られないので、通気口231を塞ぐ。袋体110の内部の気体は、逆止弁140に遮られることで袋体110の外部に流出しにくくなり、緩衝材201が緩衝力を発揮可能な状態になる。
【0112】
緩衝材201の使用が終了すると、ユーザは、以下のようにして緩衝材201を非使用状態にできる。
【0113】
ユーザは、例えばピン又はドライバなどを通気口231側から袋体110の内部に向けて差し込むことで、内部の逆止弁140を変位させ、通気口231を開放させる。ユーザは、その状態で、袋体110を圧縮して袋体110の内部の空気を外部に排出させる。ガイドピン150は、ばね155の復元力により、通気口231から通気部230の外部に向けて突出し、摘出される。袋体110がさらに圧縮されて凸部115と凹部139とが係合することで、緩衝材201は、非使用状態のまま維持される。
【0114】
緩衝材201も、上述の第1の実施の形態の緩衝材1や第2の実施の形態の緩衝材101と同様に、被梱包物の梱包に用いることができる。被梱包物の開梱時などにおいて、ユーザは、緩衝材201を被梱包物の周囲などに配置した状態のまま緩衝材201を非使用状態にする作業を行ったうえで、緩衝材201を被梱包物から取り除くことができる。
【0115】
緩衝材201においては、通気口231が、袋体110の蛇腹部211が設けられている面に露出するように設けられている。すなわち、緩衝材201の緩衝方向(例えば、図13において左右方向)と通気口231及び逆止弁140との位置関係は、第2の実施の形態の緩衝材101におけるそれとは異なっている。緩衝材の使用時に、その周囲に被梱包物の部品や別の梱包箱などが配置されている場合などには、開梱時に、逆止弁140を開放させる作業を行うことが困難である場合がある。緩衝材201では、緩衝材201の緩衝方向側(蛇腹部211の伸縮方向)に別の部材等が配置されている場合においても、袋体110の側周面に設けられている通気口231にユーザがアクセスしやすい状態が保たれる。このような場合において緩衝材201を用いる場合、特にその取り外し作業が行いやすくなる。
【0116】
[実施の形態における効果]
【0117】
以上のように、緩衝材は、以下の効果を有するものである。すなわち、緩衝材は、袋体内部の空気を排出させないための逆止弁を有し、使用状態において袋体の内部に空気などの気体を保持する。したがって、緩衝材は、いわゆるエアーマットのように、確実に緩衝機能を発揮する。
【0118】
袋体の一部に設置されている弾性体や、折り畳まれた状態から伸びるように復元力を発生する蛇腹部は、袋体を使用状態における形状や寸法に復元させるための力を有する。そのため、わざわざユーザが袋体の内部に空気などを流入させる作業を行う必要がなく、容易に袋体を膨張させて緩衝材を使用状態にできる。弾性体や蛇腹部による袋体を使用状態に復元させるための力は、比較的弱く、緩衝力にさほど寄与しない。したがって、ユーザは、緩衝材を使用状態から非使用状態にするために袋体を圧縮する際、その作業を容易に行える。
【0119】
袋体の縮小時や、製品からの緩衝材の取り外し時には、ユーザが逆止弁を開放させられる。したがって、特別な機械や特別な工具などを必要とすることなく、容易に、袋体を縮小させて緩衝材を非使用状態にできる。また、被梱包物からの緩衝材の取り外し時において、緩衝材を縮小させられる。したがって、被梱包物への負荷を低減させた状態で緩衝材の取り外しを行えるので、緩衝材が損傷しにくく、緩衝材を反復して使用できる回数が増加する。なお、逆止弁は、緩衝材が使用状態とされて梱包に用いられている状態では、他の部材に接触しないように設けられている。したがって、使用状態に不用意に逆止弁が開放されて袋体内部の気圧が下がることを防止でき、確実に緩衝材の緩衝力を発揮させられる。
【0120】
袋体の縮小時すなわち非使用状態においては、スライドピンにロック板が係合したり、凸部と凹部とが係合したりすることで、緩衝材が非使用状態のままロックされる。したがって、緩衝材を保管、運搬又は廃棄などするために必要なスペースを節減することができる。また、被梱包物の梱包時には、ロックを解除するだけの作業で緩衝材を容易に使用状態にできる。
【0121】
[その他]
【0122】
袋体を膨張させる手段としては、上述の袋体の内部に配置された弾性体や、蛇腹部などに限られない。例えば、袋体の一部を構成するように配置された骨組み構造が、袋体を膨張させる手段として機能するようにしてもよい。また、例えば、袋体を膨張させる方向にその復元力が作用するように、樹脂ばねや金属ばねを袋体内部に設置してもよい。このような袋体を膨張させる手段による弾性力は、袋体を必要寸法形状に復元させて使用状態にするためのものであるので、緩衝力として働かない程度にすればよい。袋体を膨張させる手段による弾性力が、緩衝力として働くように、弾性体を袋体の内部に配置したり、袋体の一部となる蛇腹部などを構成してもよい。
【0123】
第1の実施の形態において、非使用状態において蛇腹部が伸びる方向に復元力を発生するようにしてもよい。
【0124】
緩衝材を非使用状態のまま維持するためのロック機構としては、上述の構成に限られるものではなく、袋体の内部に設けられるものであっても、外部に設けられるものであっても、いずれでもよい。また、ロック機構の構造は、スライドピンにロック板が係合するものや、いわゆるスナップフィット構造に限られない。例えば、袋体の外部に、非使用状態において互いに係合することで、袋体が膨張しないようにロックする部材を設けてもよい。
【0125】
袋体の形状は、上述に限られず、種々の形状とすればよい。逆止弁は、上述のように通風部の内部で回転可能なものに限られず、使用状態において袋体の内部の空気が流出しないように遮る種々の構造を採用することが可能である。
【0126】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1,101,201 緩衝材
10,110 袋体
11 蛇腹部
30,130,230 通気部
35 ロック板(係合部材の一例)
40,140 逆止弁
50 ガイドピン(膨張手段の一例、スライド部材の一例)
110a 上面プレート(第1のピースの一例)
110b,210b 下面プレート(第2のピースの一例)
111,211 蛇腹部(膨張手段の一例)
115 凸部(第1の突出部の一例)
139 凹部(第2の突出部の一例)
150 ガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張及び収縮可能な袋体と、
前記袋体の一部又はその内部に配置されており、前記袋体が収縮した状態でその復元力を前記袋体を膨張させる力として前記袋体に加える膨張手段と、
前記袋体に気体を流出入させる通気部と、
前記通気部に設けられ前記袋体からの気体の流出を遮る逆止弁と、
前記袋体が収縮した状態で前記袋体の大きさを維持するロック機構とを備え、
前記袋体が膨張した状態で前記逆止弁により前記袋体からの気体の流出が遮られることで緩衝力を発揮し、前記逆止弁が開放されて前記袋体から気体が流出することにより前記袋体が収縮可能となる、緩衝材。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記袋体が所定の大きさに収縮した状態で互いに係合可能となる少なくとも2以上の部材を有する、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記膨張手段は、
前記袋体の内部に配置されており、その端部の一方が前記袋体に接続されている線状の弾性体と、
前記弾性体の端部の他方に接続されており、略一直線上に前記袋体の一部に対してスライド可能に配置されているスライド部材とを有し、
前記袋体が収縮した状態で、前記弾性体が自然状態から変形した状態であり、前記弾性体の復元力により前記スライド部材が前記袋体の一部に対してスライドすると共に前記袋体が膨張する、請求項1又は2に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記ロック機構は、
前記スライド部材と、
前記袋体が収縮した状態で前記スライド部材に係合可能な位置に配置された係合部材とを有する、請求項3に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記袋体は、その一部を構成するように形成された蛇腹部を有している、請求項1から4のいずれかに記載の緩衝材。
【請求項6】
前記蛇腹部は、前記膨張手段の少なくとも1つであり、折り畳まれた状態で前記蛇腹部が伸びるように復元力を発生する、請求項5に記載の緩衝材。
【請求項7】
前記蛇腹部は、その2つの端部が共に開口した筒形状を有し、
前記袋体は、前記蛇腹部と、前記蛇腹部を挟むように前記蛇腹部の2つの端部にそれぞれ接続された第1のピース及び第2のピースとを有しており、
前記ロック機構は、前記第1のピースに前記第2のピースに向けて突出するように設けられた第1の突出部と、前記第2のピースに前記第1のピースに向けて突出するように設けられた第2の突出部とを有し、前記蛇腹部が折り畳まれた状態で前記第1の突出部と前記第2の突出部とが係合することで、前記袋体が収縮した状態で前記袋体の大きさを維持する、請求項5又は6に記載の緩衝材。
【請求項8】
膨張及び収縮可能な袋体と、
前記袋体の一部又はその内部に配置されており、前記袋体が収縮した状態でその復元力を前記袋体を膨張させる力として前記袋体に加える膨張手段と、
前記袋体に気体を流出入させる通気部と、
前記通気部に設けられ前記袋体からの気体の流出を遮る逆止弁と、
前記膨張手段による前記袋体を膨張させる力に抗して、前記袋体が収縮した状態で前記袋体の大きさを維持するロック機構とを備える緩衝材の使用方法であって、
前記袋体が膨張した状態で、前記逆止弁を開放させる第1のステップと、
前記第1のステップが行われた後、前記袋体を外部から押圧して前記袋体の内部の気体を前記通気部を介して排出させる第2のステップと、
前記第2のステップにより前記袋体が収縮した状態で、前記袋体の大きさが維持されるように前記ロック機構によるロックを施す第3のステップと、
前記第3のステップにより前記ロックが施されている状態で、前記ロック機構によるロックを解除し、前記膨張手段により前記袋体を膨張させ、緩衝力を発揮可能にさせる第4のステップとを備える、緩衝材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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