説明

練り製品の成形装置

【課題】品質上のバラツキがなく、大きさが異なり多種の加工処理がなされる練り製品を効率の良く得るようにするための小型の成型装置を提供する。
【解決手段】成型装置の円筒状の成型ドラム3を回転可能に支持するケーシング1の上部に練り材料の投入口2を設置し、下部に練り製品を搬送するベルトコンベア14を設置した練り製品の成型装置であって、成型ドラムの周面に開口6を穿設し、かつ成型ドラムの内側に貫通穴8を有する筒状の入れ子7を設け、この入れ子の貫通穴を開口に連通させるとともに、貫通穴に半径方向に移動するピストン9を嵌合し、このピストンの一端に錘ブロック10をネジ結合し、ピストンの移動量が調整可能になるよう錘ブロックを入れ子に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐等の材料を用いる練り製品の製造に供する成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の成形装置では、成形装置に入る前に練り材料は成型装置とは別の機械で混練され、それから人力等によって成型装置に搬入し、これを送り込みローラにより成型ドラムの型の凹部に充填し、成型ドラムの所定の回転位置で型の中から排出して練り製品の加工が行われる考案は例えば、実公平2−6798に開示の練製品製造に供する成型機の構造がある。
【0003】
前記実用新案文献に開示された成型機は、送り込みローラが練り材料を流動させて型の凹部に練り材料を押し込み充填し、この充填された練り材料は成型ドラムが回転して型の凹部が下方に位置した時、錘の自重で型が成型ドラムから突出して凹部の練り製品が落下することにより成型している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【実用新案文献】
実開平2−6798号
【発明の概要】

【発明が解決しょうとする課題】
【0005】
しかし、前記実用新案文献に開示された成型装置では送り込みローラによる練り材料の型の凹部への充填が不完全で、型の凹部から練り材料を排出するのが難いため、品質上にバラツキが多く、しかも大きさが異なり多種の加工処理される練り製品が効率の良く得られない課題がある。
【0006】
本発明では品質上のバラツキがなく、大きさが異なり多種の加工処理がなされる練り製品を効率の良く得るようにするための小型の成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を解決するために、円筒状の成型ドラムを回転可能に支持するケーシングの上部に練り材料の投入口を設置し、下部に練り製品を搬送するベルトコンベアを設置した練り製品の成型装置であって、成型ドラムの周面に開口を穿設し、かつ成型ドラムの内側に貫通穴を有する筒状の入れ子を設け、この入れ子の貫通穴を開口に連通させるとともに、貫通穴に半径方向に移動するピストンを嵌合し、このピストンの一端に錘ブロックをネジ結合し、ピストンの移動量が調整可能になるよう錘ブロックを入れ子に連結したことを特徴とし、これによれば、入れ子内に充填される練り材料の量が調整でき、大きさの異なる形状の製品を容易に成形することができる。
【0008】
また、この発明では、成型ドラムと練り材料の投入口との中間で、成形ドラムと同一軸方向に一対の練り材料送り込みの円筒ローラを設置し、成型ドラムの回転方向と同一方向に回転する一方の円筒ローラの直径を反対方向に回転する他方の円筒ローラの直径より大きくし、一方の円筒ローラと成型ドラムとの間隔より、他方の円筒ローラと成型ドラムとの間隔を大きくしたことを特徴とすることにより、ハウジングの全高を抑えながら練り材料を成型ドラムの開口に向かい流れ易くできる。
【0009】
さらに、この発明では、ハウジングの下部に設置した練り製品を搬送するベルトコンベアをハウジングに対して揺動可能に取付けることを特徴とし、これによれば、メンテナンスがし易くなり、練り製品の加工効率が向上する。
【0010】
また、この発明では、ハウジングを架台に回転可能に載置し、ベルトコンベアから搬送される練り製品を加熱する加熱処理手段をハウジングの側方に設置したことを特徴することにより、多種類の練り製品の加工に迅速に対応でき、大きさの異なる形状で、加熱処理の異なることなる練り製品の加工作業が簡単にできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、練り材料の送り込みローラから成型ドラムの入れ子への練り材料の充填がスムーズになり、充填度の適正かつ品質の高い練製品が得られることができる。しかも、大きさの異なる形状の練り製品の成型や、加熱処理の異なる練り製品の加工作業が簡単にできるとともにメンテナンスがし易くなり、加工効率の向上した成形装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態に係る成型装置の断面図である。
【図2】駆動系統の図式的説明図を示す。
【図3】成型装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の練り製品の成型装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0014】
この発明は図1に示すように、成型装置のケーシング1は上部に練り材料の投入口2を備えるとともに、円筒状の成型ドラム3を矢印aの方向に回転可能に支持する。前記練り材料の投入口2と前記成型ドラム3の中間に前記成型ドラム3の軸方向と平行に左右一対の練り材料送り込みの円筒ローラ4、5を配置し、互いに向かい合う矢印b、cの方向に回転するよう前記ハウジング1に支持される。
【0015】
前記成型ドラム3はモータ28によって略1/2に減速して駆動され、練り材料送り込みの前記円筒ローラ4,5は前記成型ドラム3の回転より増速して駆動される。
【0016】
先ず前記モータ28に装着したモータプリー29から前記成型ドラム3のドラムギア30のプリー31に伝達ベルト32を介して駆動され、次に前記成型ドラム3の前記ドラムギア30に噛合う練り材料送り込みの前記円筒ローラ4上のローラギア41を介して練り材料送り込みの前記円筒ローラ4が駆動され、一方前記ドラムギア30に噛合うアイドルギア33を介して他の練り材料送り込みの前記円筒ローラ5上のローラギア51が駆動され、一方の練り材料送り込みの前記円筒ローラ5が他方の練り材料送り込みの前記円筒ローラ4とは反対方向に回転する。
【0017】
練り材料送り込みの前記円筒ローラ4、5のうち前記成型ドラム3の回転方向と同一方向に回転する前記円筒ローラ5の直径を反対方向に回転する前記円筒ローラ4の直径より大きくし、前記円筒ローラ5と前記成型ドラム3の間隔を少なくし、前記円筒ローラ5に対して直径の小さい前記円筒ローラ4と前記成型ドラム3の間隔を大きくする。このため、前記ハウジング1の高さを抑えながら練り材料の下方への流れをスムーズにできる。
【0018】
前記成型ドラム3の軸方向に並ぶ一対の開口6を周面に穿設し、この開口6に連通する貫通穴8を有する筒状の入れ子7を前記成型ドラム3の内側に設ける。前記入れ子7の貫通穴8にピストン9を嵌合し、このピストン9を前記成型ドラム3の半径方向に移動させる。
【0019】
前記ピストン9の一端に錘ブロック10を締結ねじにより結合し、この錘ブロック10を入れ子7から突設する複数のスタッドボルト12に挿入する。前記スタッドボルト12の先端にはストッパーナット13を螺合して、前記錘ブロック10が前記スタッドボルト12からの抜け落ちを防ぐとともに、前記ストッパーナット13の螺合位置により、前記ピストン9のストロークが調整できる。
【0020】
図1のように前記成型ドラム3が回転して前記入れ子7が上部に位置すると、前記錘ブロック10が前記スタッドボルト12に案内されて下方に移動し、前記ストッパーナット13に当接して前記ピストン9が前記貫通穴8の奥に引っ込んだ状態になり、練り材料送り込みの前記円筒ローラ4、5により前記成型ドラム3に向かって流入している練り材料が前記開口6から前記貫通穴8に押し込まれ、練り材料が前記貫通穴8に充填されることになる。
【0021】
さらに、前記成型ドラム3が半回転し前記入れ子7の位置が下部になると、前記錘ブロック10が前記スタッドボルト12に案内されて前記入れ子7の端面に当接するまで下方に移動し、前記ピストン9が前記貫通穴8から突出するので、前記貫通穴8内の練り材料が前記開口6から前記成型ドラム3の外方に押し出される。
【0022】
前記錘ブロック10は前記入れ子7の端面から前記スタットボルト12に螺合する前記ストッパーナット13の間を移動する。このため、前記ストッパーナット13の位置を変えることにより前記錘ブロック10とともに移動する前記ピストン9の往復動が調整され、前記貫通穴8から突出する量が変化し、練り製品の形状を異ならせることができる。
【0023】
前記成型ドラム3の下部には前記成型ドラム3の開口6から排出された練り製品を矢印dの方向に搬送するベルトコンベア14が設置され、このベルトコンベア14は駆動ローラ15と従動ローラ16に卷装されている。
前記駆動ローラ15は前記ハウジング1に回転自在に支持され、前記成型ドラム3に設けたドラムギア30に噛合うベルトローラギア150を有し、前記従動ローラ16は前記ハウジング1に支軸21により揺動可能に取り付けたアーム20に回転自在に支持されている。
【0024】
前記支軸21を支点にしてアーム20を上方に揺動させ前記ベルトコンベア14が起立することにより、前記ベルトコンベア14や、前記ハウジン1の周囲について修理、清掃のメンテナンスが容易にできる。
【0025】
前記成型ドラム3の外周面に接する線状ワイヤ23を設けたレバー22が前記ベルトコンベア14の上方の前記ケーシング1に揺動可能に取り付けられる。
前記成型ドラム3の回転により前記入れ子7が下部に位置する前に前記線状ワイヤ23により前記開口6から突出する練り製品を前記ベルトコンベア14の上面に切り落とす。この練り製品を切り落とす際に、練り製品の表面にバリが残らないように前記レバー22を前記成型ドラム3側に押圧するスプリング24を設け、前記線状ワイヤ23を前記成型ドラム3の外周面に密接させる。
【0026】
前記ケーシング1は架台25より突出する支持軸26に回転可能に支持されるとともに、前記支持軸26を油圧、空気圧、又はリンク機構(図示せず)により出没させることにより前記ケーシング1を上下動させる。なお、27は前記ケーシング1の底部に固定した脚部である。
【0027】
前記架台25には、回転する前記ケーシング1の位置を決める位置決めフランジ17を設け、この位置決めフランジ17の先端にU字形状の切欠け171を形成する。前記ケーシング1の下部側面にピン18を固定し、このピン18を前記切欠け171に係止させることにより、前記ケーシング1を前記架台25上に位置決めする。
【0028】
前記架台25に複数種類の加熱処理手段28を設置する。281は前記加熱処理手段28の高温のオイルを貯留するオイル槽で、前記ハウジング1の一側に位置し、282は加熱処理手段28の電気加熱される鉄板で、前記ハウジング1の他側に位置する。前記オイル槽281の上方に前記ベルトコンベア14が位置するように前記ケーシング1が前記架台25に位置決めされている場合、前記支持軸26を上昇させ前記ケーシング1の前記ピン18が前記位置決めフランジ17の切欠け171から外れると、前記ケーシング1を回転させ前記ベルトコンベア14を前記鉄板282の上方に位置させた後、前記支持軸26を下降させ前記ケーシング1の前記ピン18が他方の前記位置決めフランジ17の切り欠け171に係止して前記ケーシング1の位置が決まる。
【0029】
このように前記ケーシング1が回転することにより、練り製品を前記オイル槽281で揚げものに加工するとか、前記鉄板282で焼きものに加工するとかを簡単に選択することができる。
なお、前記ケーシング1を回転する際には、前記ベルトコンベア14のアーム20を上方に揺動させ従動ローラ16が前記ケーシング1の側面に近接させると、コンベアが邪魔にならないので前記ケーシング1の周囲のスペースをコンパクトにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、練り材料を簡単に計量して材料の無駄をなくし、バラツキのない均一な大きさの練り製品を得ることができるとともに、大きさの異なる練り製品を適宜製造することができる。
【符号の説明】
【0031】
ケーシング 1
投入口 2
成型ドラム 3
ドラムギア 30
プリー 31
伝達ベルト 32
アイドルギア 33
円筒ローラ 4、5
ローラギア 41、51
開口 6
入れ子 7
貫通穴 8
ピストン 9
錘ブロック 10
締結ねじ 11
スタッドボルト 12
ストッパーナット 13
ベルトコンベア 14
駆動ローラ 15
駆動ローラギア 150
従動ローラ 16
位置決めフランジ 17
切欠け 171
位置決めピン 18
モータ 19
モータプーリ 191
アーム 20
支軸 21
レバー 22
線状ワイヤ 23
スプリング 24
架台 25
支持軸 26
脚部 27
加熱処理手段 28
オイル槽 281
鉄板 282

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の成型ドラムを回転可能に支持するケーシングの上部に練り材料の投入口を設置し、下部に練り製品を搬送するベルトコンベアを設置した練り製品の成型装置であって、前記成型ドラムの周面に開口を穿設し、かつ前記成型ドラムの内側に貫通穴を有する筒状の入れ子を設け、この入れ子の前記貫通穴を前記開口に連通させるとともに、前記貫通穴に半径方向に移動するピストンを嵌合し、このピストンの一端に錘ブロックをネジ結合し、前記ピストンの移動量が調整可能になるよう前記錘ブロックを前記入れ子に連結したことを特徴とする練り製品の成型装置。
【請求項2】
前記成型ドラムと練り材料の前記投入口との中間で、前記成形ドラムと同一軸方向に一対の練り材料送り込みの円筒ローラを設置し、前記成型ドラムの回転方向と同一方向に回転する一方の前記円筒ローラの直径を反対方向に回転する他方の前記円筒ローラの直径より大きくし、一方の前記円筒ローラと前記成型ドラムとの間隔より、他方の前記円筒ローラと前記成型ドラムとの間隔を大きくしたことを特徴とする請求項1記載に記載の練り製品の成型装置。
【請求項3】
前記ハウジングの下部に設置した練り製品を搬送する前記ベルトコンベアを前記ハウジングに対して揺動可能に取付けることを特徴とする請求項1に記載の練り製品の成型装置。
【請求項4】
前記ハウジングを架台に回転可能に載置し、前記ベルトコンベアから搬送される練り製品を加熱する加熱処理手段を前記ハウジングの側方に設置したことを特徴するに請求項1に記載の練り製品の成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−70719(P2012−70719A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230960(P2010−230960)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(594082143)株式会社猿田商店 (1)
【Fターム(参考)】