説明

練り製品の製造装置、練り製品の製造方法

【課題】ボリューム感及び手作り感のある練り製品を製造することができると共に、歩留まりを向上させることができる練り製品の製造装置を提供する。
【解決手段】平坦状に成形されたすり身1に他の食材2を載置し、食材2を包むようにすり身1を二つ折りにするための成形処理部3と、二つ折りにしたすり身1を加熱凝固するための加熱処理部4とを備えて構成された練り製品の製造装置に関する。成形処理部3が、平坦状に成形され他の食材2が載置されたすり身1を搬送するための第1コンベア5と、第1コンベア5の下流側において第1コンベア5より下方に配置され、第1コンベア5より搬送速度が遅い第2コンベア6とを備えて構成されている。すり身1を第1コンベア5の下流側の先端部から第2コンベア6上に落下させることによって、食材2を包むようにすり身1を二つ折りにすると共に、二つ折りにしたすり身1を第2コンベア6によって加熱処理部に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごぼう巻のような練り製品を製造するのに用いられる練り製品の製造装置、練り製品の製造方法、練り製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ごぼう巻のような練り製品は、ごぼう等の食材2をすり身1で包んで油で揚げることによって製造されているが、特に食材2をすり身1で包むにあたっては、図8に示すような装置が用いられている(例えば、特許文献1、2参照。)。この装置は、食材2が載置されたすり身1を搬送するコンベア48と、このコンベア48の両側に配置された無端チェーン49と、両側の無端チェーン49,49間に架設された掻き上げ板50とを備えて構成されている。なお、図8において51は無端チェーン49を巻回するスプロケットであり、また片側の無端チェーン49は図示省略している。そして、食材2をすり身1で包むにあたっては、コンベア48の搬送速度と無端チェーン49の周回速度を調整することによって、図9(a)〜(f)に示すように、掻き上げ板50によってコンベア48上からすり身1の端部を掬い上げ、これを食材2に巻き付けるようにしている。
【0003】
しかし、図8に示す従来の装置では、食材2へのすり身1の巻き付けは、掻き上げ板50によって強制的に行っているので、製造された練り製品の断面は図10のように略円形となり、ボリューム感及び手作り感に欠けるものとなるという問題がある。
【0004】
また、図8に示す従来の装置では、図9(a)(b)に示すように、掻き上げ板50の先端をコンベア48とすり身1との間に挿し入れてすり身1の端部を掬い上げるようにしているが、このときすり身1の端部を完全に掬い上げることは困難であり、実際にはすり身1の一部は図9(b)〜(f)のように残渣52としてコンベア48上に残ってしまう。そしてこのすり身1の残渣52は回収しても再利用するわけにはいかないので廃棄せざるを得ず、歩留まりが悪くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−14362号公報
【特許文献2】特開2005−52077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ボリューム感及び手作り感のある練り製品を製造することができると共に、歩留まりを向上させることができる練り製品の製造装置、練り製品の製造方法、練り製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る練り製品の製造装置は、平坦状に成形されたすり身1に他の食材2を載置し、この食材2を包むようにすり身1を二つ折りにするための成形処理部3と、二つ折りにしたすり身1を加熱凝固するための加熱処理部4とを備えて構成された練り製品の製造装置であって、前記成形処理部3が、平坦状に成形され他の食材2が載置されたすり身1を搬送するための第1コンベア5と、第1コンベア5の下流側において第1コンベア5より下方に配置され、第1コンベア5より搬送速度が遅い第2コンベア6とを備えて構成され、前記すり身1を第1コンベア5の下流側の先端部から第2コンベア6上に落下させることによって、前記食材2を包むようにすり身1を二つ折りにすると共に、この二つ折りにしたすり身1を第2コンベア6によって加熱処理部4に搬送して成ることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、第1コンベア5の搬送速度が第2コンベア6の搬送速度の2.0〜3.5倍であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、第1コンベア5の下流側の先端部から第2コンベア6上までの高さが30〜200mmであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、第2コンベア6の搬送面が上流から下流に向かって水平面から上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、第1コンベア5の搬送面が上流から下流に向かって水平面から下方に15°以下の範囲又は上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項6に係る練り製品の製造方法は、平坦状に成形されたすり身1に他の食材2を載置し、この食材2を包むようにすり身1を二つ折りにするための成形処理工程と、二つ折りにしたすり身1を加熱凝固するための加熱処理工程とを有する練り製品の製造方法であって、前記成形処理工程において、平坦状に成形され他の食材2が載置されたすり身1を第1コンベア5によって搬送し、この第1コンベア5より下方に配置され、第1コンベア5より搬送速度が遅い第2コンベア6上に、第1コンベア5の下流側の先端部から前記すり身1を落下させることによって、前記食材2を包むようにすり身1を二つ折りにすると共に、この二つ折りにしたすり身1を第2コンベア6によって加熱処理工程に搬送することを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6において、第1コンベア5の搬送速度が第2コンベア6の搬送速度の2.0〜3.5倍であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項6又は7において、第1コンベア5の下流側の先端部から第2コンベア6上までの高さが30〜200mmであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項6乃至8のいずれか1項において、第2コンベア6の搬送面が上流から下流に向かって水平面から上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項6乃至9のいずれか1項において、第1コンベア5の搬送面が上流から下流に向かって水平面から下方に15°以下の範囲又は上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項11に係る練り製品は、平坦状に成形されたすり身1に他の食材2を載置し、この食材2を包むようにすり身1を二つ折りにした後、このすり身1を加熱凝固することによって形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係る練り製品の製造装置によれば、ボリューム感及び手作り感のある練り製品を製造することができると共に、歩留まりを向上させることができるものである。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、すり身をより確実に二つ折りにすることができると共に、すり身の両端部をきれいに揃えて重ね合わせることができるものである。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、すり身をより確実に二つ折りにすることができると共に、すり身の両端部をきれいに揃えて重ね合わせることができるものである。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、二つ折りにしたすり身が第2コンベア上を滑り落ちるのを防止することができるものである。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、すり身が第1コンベア上を滑り落ちるのを防止することができるものである。
【0023】
本発明の請求項6に係る練り製品の製造方法によれば、ボリューム感及び手作り感のある練り製品を製造することができると共に、歩留まりを向上させることができるものである。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、すり身をより確実に二つ折りにすることができると共に、すり身の両端部をきれいに揃えて重ね合わせることができるものである。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、すり身をより確実に二つ折りにすることができると共に、すり身の両端部をきれいに揃えて重ね合わせることができるものである。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、二つ折りにしたすり身が第2コンベア上を滑り落ちるのを防止することができるものである。
【0027】
請求項10に係る発明によれば、すり身が第1コンベア上を滑り落ちるのを防止することができるものである。
【0028】
本発明の請求項11に係る練り製品によれば、ボリューム感及び手作り感を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る練り製品の製造装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】(a)(b)は成形処理部の一例を示す概略斜視図である。
【図3】成形処理部の一例を示す概略側面図である。
【図4】(a)〜(e)は成形処理工程の一例を示す概略側面図である。
【図5】(a)〜(e)は成形処理工程の他の一例を示す概略側面図である。
【図6】(a)〜(e)は成形処理工程の他の一例を示す概略側面図である。
【図7】本発明に係る練り製品の一例を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図8】従来の装置の一例を示す概略斜視図である。
【図9】(a)〜(f)は従来のすり身の巻き付け工程の一例を示す概略側面図である。
【図10】従来の練り製品の一例を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は本発明に係る練り製品の製造装置の一例を示すものであり、この練り製品の製造装置は、成形処理部3と加熱処理部4とを備えて構成されている。
【0032】
成形処理部3は、平坦状に成形されたすり身1に他の食材2を載置し、この食材2を包むようにすり身1を二つ折りにするためのものであり、具体的には、図1や図2に示すように、第1コンベア5と第2コンベア6とを備えて構成されている。
【0033】
第1コンベア5は、平坦状に成形され他の食材2が載置されたすり身1を搬送するためのものであり、テフロン(登録商標)等で形成された無端ベルト7を複数のローラ8,9に巻回して形成されている。第1コンベア5は通常その搬送面が水平となるように配置されるが、図3の破線イ又はロで示すように、第1コンベア5の搬送面は、上流から下流に向かって水平面から下方に15°以下の範囲又は上方に10°以下の範囲で傾斜していてもよい。つまり、図3において第1コンベア5の搬送面と水平面とのなす角αが−15°≦α≦+10°(+は上方、−は下方を意味する。)であればよいが、−10°≦α≦0°であることが好ましい。この程度の傾斜であれば、すり身1が第1コンベア5上を滑り落ちるのを防止することができるものである。しかし、第1コンベア5の搬送面が上流から下流に向かって水平面から下方に15°を超えて(α<−15°)又は上方に10°を超えて(+10°<α)傾斜していると、すり身1が第1コンベア5上を滑り落ちるおそれがある。また第1コンベア5の搬送速度は、特に限定されるものではないが、例えば、1〜60cm/秒である。また、図1に示すように、第1コンベア5の上流側において第1コンベア5より上方には、すり身1を平坦状に成形するための成形機10が配置されている。この成形機10としては、特に限定されるものではないが、例えば、実公昭50−45094号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0034】
第2コンベア6は、テフロン(登録商標)等で形成された無端ベルト11を複数のローラ12,13に巻回して形成されており、第1コンベア5の下流側において第1コンベア5の搬送方向と同一方向となるように第1コンベア5より下方に配置されている。第2コンベア6は通常その搬送面が水平となるように配置されるが、図3の破線ハで示すように、第2コンベア6の搬送面は、上流から下流に向かって水平面から上方に10°以下の範囲で傾斜していてもよい。つまり、図3において第2コンベア6の搬送面と水平面とのなす角βが0°≦β≦+10°であればよいが、+4°≦β≦+8°であることが好ましい。この程度の傾斜であれば、二つ折りにしたすり身1が第2コンベア6上を滑り落ちるのを防止することができるものである。しかし、第2コンベア6の搬送面が上流から下流に向かって水平面から下方に0°を超えて(β<0°)又は上方に10°を超えて(+10°<β)傾斜していると、二つ折りにしたすり身1が第2コンベア6上を滑り落ちたり、二つ折りにしたすり身1の形が崩れたりするおそれがある。また第2コンベア6の搬送速度は、第1コンベア5の搬送速度より遅いものである。また、図1や図2(b)に示すように、第2コンベア6の中流付近において第2コンベア6より上方には、二つ折りにしたすり身1を軽く押さえ付けてすり身1と食材2とを密着させるための押えローラ14が配置されている。なお、押えローラ14の外周面には常に水を供給してすり身1が付着しないようにしている。
【0035】
他方、加熱処理部4は、二つ折りにしたすり身1を加熱凝固するためのものであり、具体的には、図1に示すように、蒸し処理部15と、油付着処理部16と、過熱水蒸気処理部17とを備えて構成されている。
【0036】
蒸し処理部15は、箱状に形成された蒸し処理室18を備えて構成されており、成形処理部3の第2コンベア6の下流側が、蒸し処理室18の対向面に開口された入口19及び出口20を突き抜けて配置されている。蒸し処理室18は、水蒸気発生装置21と接続されており、この水蒸気発生装置21で発生した水蒸気を蒸し処理室18内に送り込むことによって、蒸し処理室18内のすり身1に対して蒸し処理を行うことができるようにしてある。
【0037】
油付着処理部16は、蒸し終わったすり身1の表面に食用油22を付着させる手段であって、油噴霧装置23と、油付着用搬送コンベア24とを備えて形成されている。油噴霧装置23は、下面に吹付ノズル25が設けられた上噴霧部26と、上面に吹付ノズル27が設けられた下噴霧部28とを備えて構成されている。上噴霧部26と下噴霧部28は、油付着用搬送コンベア24を介して上下に対向して配置されており、いずれもエアー供給装置29及び油タンク30と接続されている。エアー供給装置29はエアーコンプレッサー等で形成され、上噴霧部26及び下噴霧部28にエアーを供給するものであり、また油タンク30はすり身1の表面に付着させるための菜種油等の食用油22を貯溜し、この食用油22を上噴霧部26及び下噴霧部28に供給するものである。食用油22は加熱されると劣化するので、加熱しない状態で、つまり常温の状態で油タンク30に貯溜されている。そのため、酸化値が0の新鮮な食用油22を常に上噴霧部26及び下噴霧部28に供給することができるものである。なお、食用油22としては、菜種油のほか、サラダ油、オリーブオイル、大豆油、ごま油、米油、その他の加工健康油等を用いることができる。中でも不飽和脂肪酸が少ないものが好ましい。そして、上噴霧部26及び下噴霧部28にエアー供給装置29からエアーを供給すると共に油タンク30から食用油22を供給することによって、上噴霧部26と下噴霧部28の間に位置するすり身1に上下の吹付ノズル25,27から食用油22を噴霧して付着させることができるものである。また油付着用搬送コンベア24は、無端メッシュベルト31を複数のローラ32,33に巻回して形成され、上流側を第2コンベア6の下流側と近接させて配置されている。なお、油付着用搬送コンベア24は、上記のように無端メッシュベルト31を用いて形成されているので、下噴霧部28の吹付ノズル27から噴霧された食用油22は問題なくすり身1の下面に付着される。
【0038】
過熱水蒸気処理部17は、箱状に形成された過熱水蒸気処理室34と、過熱水蒸気処理室34の対向面に開口された入口35及び出口36を突き抜けて配置される過熱水蒸気処理用搬送コンベア37とを備えて形成されている。過熱水蒸気処理室34は、下面に噴出ノズル38が複数設けられた上噴出部39と、上面に噴出ノズル40が複数設けられた下噴出部41とを内部に備えて形成されている。上噴出部39と下噴出部41は、過熱水蒸気処理用搬送コンベア37を介して上下に対向して配置されていると共に、過熱水蒸気処理室34の外に設けられた過熱水蒸気供給装置42と接続されている。過熱水蒸気供給装置42は、ボイラー等で形成され、常圧で100℃の飽和水蒸気をさらに加熱して110〜300℃の高温の過熱水蒸気43を発生させるものであり、またこの過熱水蒸気43を上噴出部39及び下噴出部41に供給するものである。そして、上噴出部39及び下噴出部41に過熱水蒸気供給装置42から過熱水蒸気43を供給することによって、上噴出部39と下噴出部41の間に位置するすり身1に上下の噴出ノズル38,40から無酸素状態で過熱水蒸気43を当てて加熱することができるものである。また過熱水蒸気処理用搬送コンベア37は、無端メッシュベルト44を複数のローラ45,46に巻回して形成され、上流側を油付着用搬送コンベア24の下流側と近接させて配置されている。なお、過熱水蒸気処理用搬送コンベア37は、上記のように無端メッシュベルト44を用いて形成されているので、下噴出部41の噴出ノズル40から噴出された過熱水蒸気43は問題なくすり身1の下面に当たる。
【0039】
次に、上記練り製品の製造装置を用いて練り製品を製造する方法について説明する。この練り製品の製造方法は、成形処理部3による成形処理工程と、加熱処理部4による加熱処理工程とを有する。
【0040】
まず、成形処理工程について説明する。
【0041】
すり身1としては、特に限定されるものではないが、例えば、ごぼう巻を作る場合には、イワシ・サメ・カツオ・サバ・ホッケ・スケソウダラ・イトヨリダイなどの魚肉をすり潰したものを用いることができる。またすり身1にはキクラゲ、紅しょうがなどの野菜、じゃこ、イカ、タコ、エビなどの魚介類、薬味などを加えてもよい。そして、このようなすり身1に塩・砂糖などを加えて味付けを行った後、このすり身1を成形機10にセットする。
【0042】
そして成形機10を稼働させると、図1に示すように、この成形機10によって平坦状に成形されたすり身1が第1コンベア5の上流側に落下して載置される。ここで、すり身1の大きさ及び形状は、特に限定されるものではないが、例えば、長径40〜200mm及び短径40〜200mmの円形若しくは楕円形、又は縦40〜200mm及び横40〜200mmの正方形若しくは長方形等であって、厚さ1〜30mmに設定することができる。
【0043】
次に、図1に示すように、第1コンベア5の中流付近において、搬送されてきたすり身1に手作業等により他の食材2を載置する。ここで、他の食材2としては、ごぼう巻を作る場合にはもちろんごぼうを用いるものであるが、これに限定されるものではなく、他の野菜類、畜肉類、魚類等も用いることができる。他の野菜類としては、例えば、ニンジン、タマネギ、アスパラガス、インゲンマメ、ジャガイモ、サトイモ、ダイコン、ナガイモ、ホウレンソウ、ミツバ、サツマイモ、キノコ類等を用いることができ、また畜肉類としては、例えば、ウインナーソーセージ、ベーコン、鶏肉、豚肉、牛肉、ミンチ肉等を用いることができ、また魚類としては、例えば、白身魚フィレ、白身魚カット、タコ、イカ、ホタテガイ、ワカメ、イワシ、アジ、サンマ、エビ等を用いることができる。なお、これらの食材2は、すり身1の略中央部に載置するのが好ましいが、特にごぼうのように棒状に加工できる食材2は、その長手方向が第1コンベア5の搬送方向に対して略垂直となるように載置するのが好ましい。
【0044】
そして、平坦状に成形され他の食材2が載置されたすり身1を引き続き第1コンベア5によって搬送し、図4(a)〜(e)に示すように、第1コンベア5の下流側の先端部から第2コンベア6の搬送面上に落下させることによって、上記食材2を包むようにすり身1の前端部に後端部が重なってすり身1を二つ折りにするものである。このように本発明では、図8や図9に示すような従来の掻き上げ板50によって強制的にすり身1を二つ折りにするのではなく、自然落下によってすり身1を二つ折りにするようにしているので、第1コンベア5の搬送面上にすり身1の一部が残渣52として残るようなことがなく、歩留まりを向上させることができるものである。なお、図4に示すように、第1コンベア5の下流側の先端部の近傍にあらかじめピアノ線等の剥離線47を第1コンベア5の幅方向に張設しておくと、この剥離線47によってすり身1を落下直前において第1コンベア5の搬送面から容易に剥離することができるものである。また、食材2はすり身1の粘着性によってすり身1に密着しているので、落下時に食材2がすり身1から脱落するようなことはない。
【0045】
ここで、第2コンベア6の搬送速度が第1コンベア5の搬送速度と同一であるか又は第1コンベア5の搬送速度より速いと、落下によってすり身1を二つ折りにすることはできない。よって、第2コンベア6の搬送速度は、第1コンベア5の搬送速度より遅くするものであるが、特に第1コンベア5の搬送速度は第2コンベア6の搬送速度の2.0〜3.5倍であることが好ましい。このように、第1コンベア5及び第2コンベア6の搬送速度を調整すると、すり身1をより確実に二つ折りにすることができると共に、すり身1の両端部をきれいに揃えて重ね合わせることができるものである。しかし、第1コンベア5の搬送速度が第2コンベア6の搬送速度の2.0倍未満であると、図5(a)〜(e)に示すように、すり身1は二つ折りにならずに平坦状を維持したまま第2コンベア6によって搬送されるおそれがある。逆に、第1コンベア5の搬送速度が第2コンベア6の搬送速度の3.5倍を超えると、図6(a)〜(e)に示すように、すり身1は二つ折りにならずに裏返しになって第2コンベア6によって搬送されるおそれがある。
【0046】
また、第1コンベア5の下流側の先端部から第2コンベア6の搬送面上までの鉛直方向の高さ(図3においてhで示す。)は、すり身1の大きさ等に応じて調整することができるが、通常、上記高さは30〜200mmであることが好ましく、70〜90mmであることがより好ましい。このように、第1コンベア5及び第2コンベア6の高さ位置を調整すると、すり身1をより確実に二つ折りにすることができると共に、すり身1の両端部をきれいに揃えて重ね合わせることができるものである。しかし、上記高さが30mm未満であると、この高さに比べて特にすり身1が大きい場合、すり身1の前端部が第2コンベア6の搬送面に接触してもなおすり身1の後端部は第1コンベア5の搬送面に接触しているおそれがあり、落下によってすり身1を二つ折りにすることができない。逆に、上記高さが200mmを超えると、この高さに比べて特にすり身1が小さい場合、落下による衝撃ですり身1の形が大きく崩れ、すり身1を二つ折りにすることができないおそれがある。
【0047】
次に、加熱処理工程について説明する。
【0048】
上記のようにして二つ折りにしたすり身1は、図1や図2(b)に示すように、押えローラ14によって軽く押さえ付けられた後、第2コンベア6によって加熱処理部4に搬送される。すなわち、上記すり身1は、蒸し処理室18の入口19から蒸し処理室18内に入り、この中で蒸された後、出口20から出て下流側まで搬送される。このとき蒸し処理の温度は80〜98℃、蒸し時間は5〜30分に設定しておくのが好ましい。
【0049】
その後、蒸し処理室18から出てきたすり身1は、油付着用搬送コンベア24の上流側に乗り移り、そのまま油噴霧装置23の上噴霧部26と下噴霧部28の間を通過して、表面に食用油22が付着された後、下流側まで搬送される。このとき食用油22を付着させる手段が噴霧であるため、蒸したすり身1の表面に容易に食用油22を付着させることができるものである。このようにして、すり身1の表面には新鮮な食用油22が常に付着されるので、従来のフライヤーを使用した油調に比べて、酸化して劣化した食用油22による影響を排除して、品質の低下を防止することができるものである。またすり身1の表面には必要最小限の食用油22が付着されて使用されるだけなので、従来に比べて無駄に使用される食用油22がなく、廃棄される食用油22の量を大幅に減少させることができるものである。そして特にすり身1への食用油22の付着量が1.0〜15.0mg/cm、好ましくは2.0〜6.0mg/cmとなるように油噴霧装置23からの食用油22の噴霧量及び油付着用搬送コンベア24の速度を調整しておくと、食欲をそそる風味を確保しつつ、余分な食用油22を摂取しないようにすることができる練り製品を最終的に得ることができるものである。しかし、食用油22の付着量が1.0mg/cmより少ないと、乾燥しすぎて見栄えが悪い上に、食欲をそそる風味が得られないおそれがある。逆に、食用油22の付着量が15.0mg/cmより多いと、べっとりしすぎており、余分な食用油22を摂取してしまうおそれがある。
【0050】
そして、油付着処理部16において食用油22が付着されたすり身1は、過熱水蒸気処理用搬送コンベア37の上流側に乗り移り、そのまま過熱水蒸気処理室34の入口35から過熱水蒸気処理室34内に入り、無酸素状態で過熱水蒸気43を当てられて加熱された後、出口36から出て下流側まで搬送され、ごぼう巻等の練り製品として得られる。このように、加熱は過熱水蒸気処理室34内で行われ、またすり身1に付着している食用油22の量は少ないので、油煙の発生を大幅に軽減することができるものである。このとき過熱水蒸気43の温度は150〜300℃、過熱水蒸気43を当てる時間は30秒〜10分に設定することができるが、過熱水蒸気供給装置42からの過熱水蒸気43の供給量や過熱水蒸気処理用搬送コンベア37の速度を調整するなどして、過熱水蒸気43の量及び過熱水蒸気43を当てる時間の少なくともいずれかを変化させるようにすると、練り製品の表面に付く焦げ目の程度を任意に調整することができ、食用油22による照り・つや感と相俟って食欲をそそるような外観に仕上げることができるものである。
【0051】
このようにして製造された練り製品にあっては、図10に示す従来の練り製品とは異なり、図7に示すように、横幅が広いことによってボリューム感を得ることができると共に、断面が非対称であることによって手作り感を得ることができるものである。また、すり身1の表面に付着された食用油22に過熱水蒸気43を当てて加熱されているので、従来のごぼう巻等の練り製品に比べて食用油22の量が少なく低カロリーであり食が進むものである。なお、図1に示すものでは、蒸したすり身1の表面に食用油22を付着させ、これに過熱水蒸気43を当てることによって加熱凝固させているが、従来のように、蒸したすり身1を食用油22を入れたフライヤーに浸漬させた状態で揚げることによって加熱凝固させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 すり身
2 食材
3 成形処理部
4 加熱処理部
5 第1コンベア
6 第2コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦状に成形されたすり身に他の食材を載置し、この食材を包むようにすり身を二つ折りにするための成形処理部と、二つ折りにしたすり身を加熱凝固するための加熱処理部とを備えて構成された練り製品の製造装置であって、前記成形処理部が、平坦状に成形され他の食材が載置されたすり身を搬送するための第1コンベアと、第1コンベアの下流側において第1コンベアより下方に配置され、第1コンベアより搬送速度が遅い第2コンベアとを備えて構成され、前記すり身を第1コンベアの下流側の先端部から第2コンベア上に落下させることによって、前記食材を包むようにすり身を二つ折りにすると共に、この二つ折りにしたすり身を第2コンベアによって加熱処理部に搬送して成ることを特徴とする練り製品の製造装置。
【請求項2】
第1コンベアの搬送速度が第2コンベアの搬送速度の2.0〜3.5倍であることを特徴とする請求項1に記載の練り製品の製造装置。
【請求項3】
第1コンベアの下流側の先端部から第2コンベア上までの高さが30〜200mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の練り製品の製造装置。
【請求項4】
第2コンベアの搬送面が上流から下流に向かって水平面から上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の練り製品の製造装置。
【請求項5】
第1コンベアの搬送面が上流から下流に向かって水平面から下方に15°以下の範囲又は上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の練り製品の製造装置。
【請求項6】
平坦状に成形されたすり身に他の食材を載置し、この食材を包むようにすり身を二つ折りにするための成形処理工程と、二つ折りにしたすり身を加熱凝固するための加熱処理工程とを有する練り製品の製造方法であって、前記成形処理工程において、平坦状に成形され他の食材が載置されたすり身を第1コンベアによって搬送し、この第1コンベアより下方に配置され、第1コンベアより搬送速度が遅い第2コンベア上に、第1コンベアの下流側の先端部から前記すり身を落下させることによって、前記食材を包むようにすり身を二つ折りにすると共に、この二つ折りにしたすり身を第2コンベアによって加熱処理工程に搬送することを特徴とする練り製品の製造方法。
【請求項7】
第1コンベアの搬送速度が第2コンベアの搬送速度の2.0〜3.5倍であることを特徴とする請求項6に記載の練り製品の製造方法。
【請求項8】
第1コンベアの下流側の先端部から第2コンベア上までの高さが30〜200mmであることを特徴とする請求項6又は7に記載の練り製品の製造方法。
【請求項9】
第2コンベアの搬送面が上流から下流に向かって水平面から上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の練り製品の製造方法。
【請求項10】
第1コンベアの搬送面が上流から下流に向かって水平面から下方に15°以下の範囲又は上方に10°以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の練り製品の製造方法。
【請求項11】
平坦状に成形されたすり身に他の食材を載置し、この食材を包むようにすり身を二つ折りにした後、このすり身を加熱凝固することによって形成されていることを特徴とする練り製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−239900(P2010−239900A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92107(P2009−92107)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【特許番号】特許第4402736号(P4402736)
【特許公報発行日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(300004588)カネテツデリカフーズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】