説明

縫製により円筒形状を形成したバグフィルター

【課題】バグフィルターとして使用中の衝撃に対する高い耐久性と、使用中の優れた払い落とし性能を有するバグフィルターを提供する。
【解決手段】融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布からなり、バグフィルター頭部1はスナップリング、フェルトパッキンを含んでなる当て布を3〜8列で縫製され、かつバグフィルター胴体2部分は13〜20mmを重ね合わせて2〜5列で縫製され、かつバグフィルター下部3は当て布を含んで2〜6列で縫製されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばごみ焼却場やアスファルト合材プラント、セメント製造所、石炭火力発電所等で使用される集じん用のバグフィルターに関する。詳しくは、融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布からなるバグフィルターであって、バグフィルター頭部、胴体部分、下部を縫製により形成されることを特徴とするバグフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から高温の排気ガスを集じんするバグフィルターについて様々の素材が提案されている。例えばごみ焼却場で発生する排気ガスの集じんにはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFE)繊維とガラス繊維とを混合してなる不織布を円筒状に形成してなるバグフィルターが多く使用されており、該バグフィルターはその頭部部分を集塵機に固定し、吊り下げられた状態で使用されるのが一般的である。該バグフィルターの使用中には集じんしたダストがバグフィルター表面に堆積し、バグフィルターの自重に加え、多い場合には10kg程度のダストが付着し、負荷のかかった状態で使用される。また、バグフィルターの使用中にダストが堆積すると、バグフィルター上部からバグフィルター円筒内面に向かってダストを払い落とす間欠的な衝撃を圧縮空気によって付加し、ダストを払い落とす操作が繰り返し行われる。バグフィルター上部においては、該払い落とし操作を均一に行うため、圧縮空気の噴射口付近に圧縮空気の流れを制御する金属製のベンチュリーが設置されているが、昨今、ベンチュリーの摩滅によりバグフィルター頭部にダストが集中し、バグフィルターの破損を生じるケースが問題視されている。あるいはまた、該払い落とし操作が均一に行われないために、バグフィルター頭部に圧縮空気が集中し、ダストの重量も相まってバグフィルター頭部が破れて落下するような問題も指摘されている。さらにまた、集塵機内に吊り下げられたバグフィルターは長いもので8500mmにも達するため、バグフィルターを吊り下げる時には必ずしも鉛直に吊り下げられないため、バグフィルターの下部同士が接触し、バグフィルター下部において破損が生じるといった点も問題視されている。
【0003】
これらの問題は集塵機の構造や使用方法の不適切さを改善することで解決される可能性もあるが、バグフィルターそのものに改善策が要望されているものであった。
【0004】
従来技術の一例として、融点が285℃のポリフェニレンサルファイド(以下PPS)繊維を用いた短繊維ウェブとスクリムとからなるフェルト地を円筒形状に重ね縫いにより縫製して形成されるバグフィルターが提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
この従来技術においては、フェルト地を直径120mm以上380mm以下の円筒形状に重ね縫いにより縫製し、縫い代をバグフィルター周長の2〜8%、且つ該縫い代の全縫製部に上記スクリムの経、緯いずれか一方向の糸の5本以上が縫いこまれたバグフィルターを提案している。
【0006】
しかしながら、この技術で得られるバグフィルターにおいては、バグフィルターとして使用中のバグフィルター胴体部分の耐久性には注目しているものの、バグフィルター頭部や下部の問題点については何ら解決策を提案するものではなかった。あるいはまた、胴体部分の縫い代と縫製本数、縫製間隔は規定しているものの、重ねあわせ部分の端面から縫製列までの距離については何ら記載が無く、端面から縫製列までの距離が長くなり過ぎると拘束されていないフェルト地部分が増え、バグフィルター設置時に引っかかって破損を生じやすくなる等の問題点を解決したものではなかった。
【0007】
また、別の従来技術として、バグフィルターの集塵機天板への取り付け構造について提案がなされている(例えば特許文献2)。
【0008】
この従来技術においては、バグフィルター頭部にガラス繊維製の芯紐を2本包み込んで形成し、2本の芯紐の間で集塵機天板を挟み込みようにしてバグフィルターを取り付ける構造を提案している。
【0009】
この方法では天板への嵌着力は向上するものの、バグフィルター頭部に作用する上述の問題点については何ら解決策が提案されておらず、また、円形の2本の芯紐を正確に平行に形成しないと、バグフィルターが鉛直に設置できないという問題があった。
【0010】
さらにまた、別の従来技術として、バグフィルターを縫製するミシン糸について提案がなされている(例えば特許文献3)。
【0011】
特許文献3は本発明の出願人によって見出された技術知見であり、高温下での寸法安定性、縫い目強力、可縫性をいずれも満足するミシン糸について鋭意検討したものであり、縫製加工に適したミシン糸を提供できてはいるものの、上述のようなバグフィルター使用中の問題点については更なる改善が求められているものであった。
【特許文献1】特許第3859058号公報
【特許文献2】実開平7−510号公報
【特許文献3】特開平9−59841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術における問題点を解消せんとするもので、不織布からなるバグフィルターであって、バグフィルター頭部や胴体、下部に特定の部材や縫製手法を選択的に用いることで、使用中の衝撃に対する優れた耐久性を有するバグフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布からなるバグフィルターであって、バグフィルター頭部はスナップリング、フェルトパッキンを含んでなる当て布を3〜8列で縫製され、かつバグフィルター胴体部分は13〜20mmを重ね合わせて2〜5列で縫製され、かつバグフィルター下部は当て布を含んで2〜6列で縫製されていることを特徴とするバグフィルターである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバグフィルターによれば、使用中の衝撃が集中するバグフィルター頭部、胴体部分、下部のそれぞれに特定の部材と縫製方法を選択的に用いることで、これらの衝撃に対して高い耐久性を有するとともに、バグフィルターを取り付ける際の作業性が格段に向上し、かつ、適正に取り付けが可能となる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、前記課題、つまり使用中の衝撃に対しても高い耐久性を示し、かつ、取り付け時の作業性を大幅に改善したバグフィルターについて、鋭意検討した結果、融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布からなるバグフィルターであって、バグフィルター頭部、胴体部分、下部のそれぞれに特定の部材と縫製方法を選択的に用いることで、これらの課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
【0016】
以下、本発明のバグフィルターについて、最良の形態を説明する。
【0017】
本発明のバグフィルターは融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布から構成されているものである。融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維としては全芳香族アラミド繊維、ポリイミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などがあるが、中でも耐薬品性能に優れたフッ素樹脂系繊維が好適であり、中でもPTFE繊維が最も好適である。ごみ焼却場やアスファルト合材プラント、セメント製造所、石炭火力発電所等で使用される集じん用のバグフィルターは常時130℃を越えるような高温に曝されるため、バグフィルターを構成する繊維には高い耐熱性能が必要である。
【0018】
不織布は融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維の短繊維をカーディング装置等でシート化し、所定の重量まで積層した後にニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法により繊維同士を絡合し、熱処理とプレス処理によって熱安定化と緻密化がなされた不織布である。
【0019】
不織布の重量は300〜900g/mの範囲内が好適である。不織布の重量が300g/m以上であれば物理的な強度を有し、かつフィルターとしての集じん性能も満足するので好ましい。また不織布の重量が900g/m以下であれば、フィルターとして必要な通気量も高い数値を確保でき、かつ物理的な強度も充分にあるので好ましい。
【0020】
上記不織布の厚みは0.7〜2.2mmが好ましい。不織布の厚みが0.7mm以上であればバグフィルターとして必要な耐摩耗性を有することから好ましく、また、2.2mm以下とすることで、フィルターとして必要な通気量も高い数値を確保できるので好ましい。
【0021】
本発明のバグフィルターは、頭部にスナップリング、フェルトパッキンを含んでなる当て布を3〜8列で縫製されるものである。
【0022】
スナップリングの材質はSK鋼(炭素工具鋼)又はPH鋼(析出硬化型ステンレス鋼)が高温でも充分な弾性を有することから好ましい。
【0023】
スナップリングの形状は平板形で、幅は20〜35mmの範囲内にあるものが好ましい。スナップリングとして平板形のものを使用すると、丸型のものを使用するよりも集塵機の天板部分とスナップリングとの密着性を更に向上することができるので好ましい。平板形のスナップリングの幅は20〜35mmであることが好ましい。なぜならスナップリングの幅が20mm以上であれば取り付け強力が充分に高くできるので好ましく、一方でスナップリングの幅が35mm以下であれば、バグフィルターを取り付ける時にスナップリングが適度に変形するので作業性が良いことから好ましい。バグフィルターを取り付ける際には、集塵機の天板部分に空いたバグフィルター取り付け穴にバグフィルターを差込み、スナップリングをバグフィルターの内面側に一旦押し曲げることでバグフィルター頭部の直径を一時的に小さくし、スナップリング部分と集塵機の天板部分とを位置合わせした後、押し曲げていたスナップリングを元の形状に戻して密着させて固定させる取り付け手法が採られている。従って、適切な柔軟性を有するスナップリングが好ましい。
【0024】
また、フェルトパッキンは融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布を用いるものであり、スナップリングと集塵機の天板との密着性を向上するものである。
【0025】
フェルトパッキンは密度が0.2〜0.9g/cmのものを2枚以上折り重ねて使用することが好ましい。フェルトパッキンに用いる不織布の密度が0.2g/cm以上であると、不織布の弾力性が十分にあるのでシーリング性が充分に発揮されるので好ましい。また、フェルトパッキンに用いる不織布の密度が0.9g/cm以下であれば、不織布が適度な緻密さと柔軟性とを兼備するので、取り付け作業時の作業性が良く、かつ、使用中のシーリング性も充分であることから好ましい。
【0026】
当て布は融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布を用いるものであり、スナップリングとフェルトパッキンとを包み込み、かつ、バグフィルター本体と接合させる重要な部材である。当て布はスナップリングやフェルトパッキンとバグフィルター本体との一体性を発現し、かつ、使用中の摩耗劣化に対する高い耐久性や、取り付け作業の容易性をも兼備する必要がある。
【0027】
当て布の重量は500〜900g/m、当て布の厚みは1.0〜2.2mmのものが好ましい。当て布の重量が500g/m以上あれば摩耗劣化に対する耐久性を有するので好ましく、当て布の重量が900g/m以下であれば取り付け時にも適度な柔軟性を有することから好ましい。当て布の厚みは1.0mm以上であれば摩耗劣化に対する充分な耐久性を有するので好ましく、また、当て布の厚みが2.2mm以下であれば当て布とバグフィルター本体との縫製も問題なく実施できるので好ましい。
【0028】
当て布は、スナップリングやフェルトパッキンとバグフィルター本体とを強固に一体化させるため、3〜8列で縫製されるものである。縫製列においては、スナップリング下端面と当て布の下端面とを1列以上(合計2列以上)に縫製することで、スナップリングと当て布との接合を強固にすることができるが、スナップリング下端面にはフェルトパッキンも含むために厚みが厚いことから、スナップリング下端面の縫製列は2mm以上の間隔で2本以上が好ましく、当て布の下端面での縫製1列と加え、合計3列以上で縫製するのが好ましい。当て布の縫製列を8列以下とすることで、スナップリングやフェルトパッキンとバグフィルター本体との取り付け強力を十分に確保し、かつ、使用中の衝撃に対する柔軟性や自由度を有することができるので、使用中の衝撃により縫製糸部分に応力が集中しても縫製糸の破損を防止できるので好ましく、かつ、バグフィルターを取り付ける時に縫製糸が集塵機の天板に接触して損傷することが無いので好ましい。
【0029】
本発明のバグフィルター頭部には、平板形のスナップリングを使用し、該スナップリングを覆うようにしてフェルトパッキンと当て布をバグフィルター本体と重ね、該重なりが30〜70mmの範囲内とすることが好ましい。
【0030】
当て布の重なり部分が30mm以上であるとスナップリング、フェルトパッキンならびに当て布の固定が充分にでき、使用中の衝撃により破損を招く恐れが無いので好ましい。また、当て布の重なり部分を70mm以下とすることでスナップリング、フェルトパッキンならびに当て布の固定は充分に達成され、なおかつフィルターとしての通気性を高いままに維持できるので、集じんの役割も果たすことから好ましい。より好ましくは重なり部分は40〜60mmの範囲内にあるものが強力とフィルター性能の両面から好適である。
【0031】
本発明のバグフィルターは胴体部分が13〜20mmを重ね合わせて2〜5列で縫製されているものである。胴体部分はバグフィルターの集じん機能を主として担う重要な部分であり、不織布のフィルター性能を損なわない方法で、かつ、使用中の衝撃に対しても充分な耐久性を有するよう縫製することが肝要である。
【0032】
重ね合わせが13mm以上とすることで胴体部分の縫製による強力は充分に高くすることができ、使用中の衝撃により破損する恐れが無い。また、重ね合わせが20mm以下とすることで、縫製部分の強力を確保しながら不織布の重なり部分を最小限にできるので、フィルターとしての充分な通気性をも確保でき、有効濾過面積を高く維持できるので好ましい。
【0033】
バグフィルターの直径は一般的に170mm以下であり、円周長に換算すると534mm以下である。重ね合わせ部分が20mm以下であれば、全円周長における重ね部分の割合が4%を越えず、フィルターの有効濾過面積も4%を超えて減少しないので、バグフィルターとして使用中に圧力損失が上昇しない効果を奏する。
【0034】
従ってバグフィルターの胴体部分は13〜20mmの範囲内で重ね合わせ、2〜5列で縫製することが肝要である。2列以上で縫製することで不織布の重なり端面を少なくとも両端の2ヶ所で固定でき、使用中に不織布が暴れてバグフィルターに衝撃を与えることが無い。また5列以下で縫製することで、13〜20mmの重なり部分を柔軟に固定できるので、使用中の衝撃に対する耐久性を有することができる。
【0035】
さらにまた、本発明のバグフィルターは、胴体部分が、重ねあわせ端面からの長さが5mm以下に少なくとも1本以上の縫製列を含むものが好ましい。胴体部分の縫製で特に問題となるのは、重ね合わせ端面の処理方法である。重ね合わせ端面からの長さ5mm以下に1本以上の縫製列が存在することで、重なり端面が充分に固定され、使用中に不織布が暴れてバグフィルターに衝撃を与えることが無いし、端面部分に集じんしたダストが固着することも無いので、バグフィルターが固化することも無いので好ましい。従って重ね合わせ端面からの長さ5mm以下に少なくとも1本以上の縫製列を含むことが好ましい。
【0036】
本発明のバグフィルターは、その下部が当て布を含んで2〜6列で縫製されていることが肝要である。バグフィルター下部に当て布を用いることで、バグフィルター同士の接触による破損を予防する役目を担うとともに、バグフィルター使用中の払い落とし衝撃がバグフィルター下部に集中しやすいとされていることから、払い落とし衝撃に対する高い耐久性を発現させる役割を担うものである。当て布に用いる不織布の重量は500〜900g/mが好ましい。
【0037】
不織布の重量を500g/m以上とすることでバグフィルターとして必要な強度を有することから好ましい。また不織布の重量を900g/m以下とすることで、当て布部分とバグフィルター本体への縫製を容易にできることから好ましい。
【0038】
当て布の厚みは1.0〜2.2mmのものが好ましい。当て布の厚みを1.0mm以上とすることでバグフィルターとして使用中の摩耗に対する耐久性を奏することができるので好ましい。また、当て布の厚みを2.2mm以下とすることで、当て布部分とバグフィルター本体との縫製が容易にできることから好ましい。
【0039】
該当て布を2列以上で縫製して結合することで、バグフィルター本体と当て布との結合が高くできることから、使用中の衝撃による破損が無い。また6列以下の縫製列にすることで、バグフィルター本体と当て布との結合は充分に強く維持し、かつ、縫製列部分が強固になり過ぎないので、バグフィルターとして使用中の熱に曝されても縫製列部分が硬化して収縮するようなことが無く、取替え時に金属製の金枠から抜き取れなくなるという不具合も生じない。
【0040】
本発明のバグフィルター下部には60〜120mmの当て布を含み、バグフィルターの最下面から15mm以内に3列以上の縫製が施されることが好ましい。当て布の長さを60mm以上とすることでバグフィルターの下端部同士が接触した時の耐久性、特に耐摩耗性を充分にすることができるので好ましい。一方、当て布の長さを120mm以下とすることでフィルターとして必要な通気性が損なわれることが無く好ましい。
【0041】
バグフィルター頭部と下部の当て布は、該当部分の補強という意味から、頭部では30mm以上が好ましく、下部では60mm以上と、両者合わせて90mm以上であることが好ましい。当て布による補強効果を発現しつつ、当て布部分による通気性の減少も最小限に抑制することが好ましいので、当て布部分はバグフィルター全長において4%以下とすることが好ましい。従ってバグフィルターの全長は2500mm以上であることが好ましい。
【0042】
一方でバグフィルターの全長を8500mm以下とすることは、バグフィルターの自重が重くなりすぎずバグフィルター頭部のスナップリングやフェルトパッキンで充分に自重を支えることが可能であることから好ましい。
【0043】
これを示したのが図1、図2および図3である。
【0044】
図1は、本発明のバグフィルターの側面図で、1はバグフィルター頭部、2はバグフィルター胴体、3はバグフィルター下部である。図2は図1のバグフィルター頭部の部分断面図で、バグフィルター上部の構造を示している。図3は図1のバグフィルター胴体部分の部分拡大図で、重ね縫い部分の構造を示している。図4は図1のバグフィルター下部の部分断面図で、バグフィルター下部の構造を示している。
【実施例】
【0045】
以下、実施例と比較例とにより、本発明のバグフィルターについてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等で作成したバグフィルター各1本の評価は以下の手法を用いた。
【0046】
[評価方法]
作成したバグフィルターをテスト用の排気ガス用集塵機に投入し、1年間使用後の状態で評価した。テスト用の集塵機の条件は下記の通りである。
・燃焼物:産業廃棄物および一般ゴミ、重油による助燃あり
・排気ガス温度:200℃
・消石灰噴霧:有り
・払い落とし方法:圧縮空気による
・バグフィルター総数量:48本(1列12本、4列構成)
・ろ過風速:1.2m/分
[実施例1]
融点が327℃のフッ素繊維“テフロン”(商標名)(東レ・フロロファイバース・アメリカ製)と、融点が無く分解点が840℃のガラス繊維とから構成される不織布として市販のフェルト“テファイヤー”(商標名)TFA−65(フジコー(株)製)を用い、以下の順でバグフィルターを形成した。なお、縫製糸には“ラステックス”(商標名)S012T3−1、1330dtex(ゴアテックス社製)を使用した。
【0047】
(頭部)
スナップリング4としてPH鋼、0.35mm厚さ、28mm幅のものを使用し、フェルトパッキン6ならびに当て布5はTFA−65不織布を用いた。当て布5はスナップリング4とフェルトパッキン6とを包み込んでバグフィルター本体7に60mm重ね、5列で縫製した。
【0048】
(胴体部分)
TFA−65不織布を503mmの円筒形とし、重なり端面11を16mm重ね、バグフィルター本体10の長さ方向に平行に3列で縫製した。重なり端面11から縫製線までの距離は4mm、8mm、12mmとした。
【0049】
(下部)
当て布14としてTFA−65不織布を用い、バグフィルター本体13と70mm重ね合わせて5列で縫製した。
【0050】
得られたバグフィルターを高温の排気ガス用集塵機に投入して実機テストしたところ、取り付け性、密着性も良好で、スナップリングとフェルトパッキンとを適正に使用したことでバグフィルターは鉛直に設置でき、バグフィルター下面同士の接触も生じていなかった。胴体部分も特別な劣化もなく、良好な結果であった。バグフィルター頭部、胴体部分、下部それぞれの当て布や重なり部分を適正にしたことで、使用後の目詰まりも少なく、フィルターとしても好ましい性能を示した。
【0051】
[実施例2]
実施例1と同様の不織布と縫製糸とを用いて、以下の順でバグフィルターを形成した。
【0052】
(頭部)
スナップリング4としてPH鋼、0.35mm厚さ、23mm幅のものを使用し、当て布5はバグフィルター本体7に40mm重ね、5列で縫製した以外は実施例1と同様の方法とした。
【0053】
(胴体部分)
TFA−65不織布を534mmの円筒形とし、重なり端面11を14mm重ね、バグフィルター本体10の長さ方向に平行に3列で縫製した。重なり端面11から縫製線までの距離は3mm、6mm、9mmとした。
【0054】
(下部)
当て布14をバグフィルター本体13と65mm重ね合わせて5列で縫製した。
【0055】
得られたバグフィルターを高温の排気ガス用集塵機に投入して実機テストしたところ、取り付け性、密着性も良好で、バグフィルターも鉛直に設置されていた。ただし、バグフィルター頭部の当て布が若干短く、胴体部分の重なりも若干短かったために、バグフィルター頭部の当て布の端面9において胴体部分の縫製部分と接する部分で縫製糸のほつれが見られた。それ以外は特別な劣化もなく、良好な結果であった。使用後の目詰まりも少なく、フィルターとしても好ましい性能を示した。
【0056】
[比較例1]
実施例1と同様の不織布と縫製糸とを用いて、以下の順でバグフィルターを形成した。
【0057】
(頭部)
スナップリング4は使用せず、フェルトパッキン6ならびに当て布5はTFA−65不織布を用いた。当て布5はフェルトパッキン6を包み込んでバグフィルター本体7に20mm重ね、12列で縫製した。
【0058】
(胴体部分)
TFA−65不織布を503mmの円筒形とし、重なり端面11を22mm重ね、バグフィルター本体10の長さ方向に平行に1列で縫製した。重なり端面11から縫製線までの距離は10mmとした。
【0059】
(下部)
TFA−65不織布からなる当て布14をバグフィルター本体13と150mm重ね合わせて12列で縫製した。
【0060】
得られたバグフィルターを高温の排気ガス用集塵機に投入して実機テストしたところ、取り付け時にバグフィルター頭部が硬く、集塵機天板の円形部分への嵌めこみに多くの時間を要した。この際にバグフィルター頭部の縫製糸が集塵機天板に接触し、縫製糸が複数本破損した。
【0061】
また、バグフィルター胴体部分において重なり端面から縫製糸までの距離が長かったため、不織布の重なり部分にダストが多量に堆積し、払い落とし不良の状況であった。また、バグフィルター下部の当て布部分が長かったため、当て布部分のダスト払い落としが十分でなく、フィルターとして機能する面積が少なくなっており、フィルターとしても好ましくないものであった。
【0062】
[比較例2]
実施例1と同様の不織布と縫製糸とを用いて、以下の順でバグフィルターを形成した。
【0063】
(頭部)
スナップリング4とフェルトパッキン6は使用せず、当て布5としてTFA−65不織布を用いた。当て布5のみで1回折り返してバグフィルター本体7に90mm重ね、10列で縫製した。
【0064】
(胴体部分)
TFA−65不織布を503mmの円筒形とし、重なり端面11を10mm重ね、バグフィルター本体10の長さ方向に平行に1列で縫製した。重なり端面11から縫製線までの距離は5mmとした。
【0065】
(下部)
TFA−65不織布からなる当て布14をバグフィルター本体13と40mm重ね合わせて1列で縫製した。
【0066】
得られたバグフィルターを高温の排気ガス用集塵機に投入して実機テストしたところ、バグフィルター頭部にスナップリングとフェルトパッキンを使用しなかったため、使用中にバグフィルター頭部からの吹き漏れが発生し、バグフィルター内部にダストが侵入していた。また、バグフィルター胴体部分は不織布の重なりが小さく、縫製列も少なかったため、所々に縫製糸に沿った破損が見られた。
【0067】
また、バグフィルター下部の縫製列が少なかったため、不織布のバタつきが多く発生し、ダストが内部に侵入していた。ダスト漏れが所々に発生し、フィルターとしても好ましくないものであった。
【0068】
[比較例3]
実施例1と同様の不織布と縫製糸とを用いて、以下の順でバグフィルターを形成した。
【0069】
(頭部)
スナップリング4は使用せず、フェルトパッキン6ならびに当て布5としてTFA−65不織布を用いた。当て布5でフェルトパッキン6を包み込んでバグフィルター本体7に10mm重ね、2列で縫製した。
【0070】
(胴体部分)
TFA−65不織布を440mmの円筒形とし、重なり端面11を12mm重ね、バグフィルター本体10の長さ方向に平行に6列で縫製した。重なり端面11から縫製線までの距離は1mm、3mm、5mm、7mm、9mm、11mmとした。
【0071】
(下部)
TFA−65不織布からなる当て布14をバグフィルター本体13と20mm重ね合わせて8列で縫製した。
【0072】
得られたバグフィルターを高温の排気ガス用集塵機に投入して実機テストしたところ、バグフィルター頭部と下部の当て布が短かったため、当て布とバグフィルター本体とが接する部分の縫製線に沿って破損が見られた。
【0073】
以上の実施例と比較例の結果を纏めたのが次の表1である。
【0074】
【表1】

【0075】
表1の結果から明らかなように、バグフィルターを取り付ける際の良好な作業性と、使用中に曝される衝撃に対する高い耐久性や優れたフィルター性能などを兼備するのは実施例のバグフィルターのみであり、比較例のバグフィルターにおいては、取り付け不良や胴体の重なり部分へのダストの侵入、あるいは頭部や下部からのダストの吹き洩れが発生し、所々で破損が発生していることから、バグフィルター用途に用いられないことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、使用中の衝撃が集中するバグフィルター頭部、胴体部分、下部のそれぞれに高い耐久性を有する部材を選択的に使用するため、高温の集塵用フィルター等に好適に用いることができる。その応用範囲はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一例として、バグフィルター全体の側面図である。
【図2】図1のバグフィルターの頭部の部分断面図である。
【図3】図1のバグフィルターの胴体の部分拡大図である。
【図4】図1のバグフィルターの下部の部分断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1……バグフィルターの頭部
2……バグフィルターの胴体
3……バグフィルターの下部
4……スナップリング
5……当て布
6……フェルトパッキン
7……バグフィルター本体
8……縫製線
9……当て布の端面
10…バグフィルター本体
11…重なりの端面
12…重なり
13…バグフィルター本体
14…当て布
15…縫製線
16…バグフィルター下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が300℃以上もしくは、融点を有さず分解点が300℃以上である繊維を主成分とする不織布からなるバグフィルターであって、バグフィルター頭部はスナップリング、フェルトパッキンを含んでなる当て布を3〜8列で縫製され、かつバグフィルター胴体部分は13〜20mmを重ね合わせて2〜5列で縫製され、かつバグフィルター下部は当て布を含んで2〜6列で縫製されていることを特徴とするバグフィルター。
【請求項2】
バグフィルター頭部には平板形のスナップリングを使用し、該スナップリングを覆うようにしてフェルトパッキンと当て布をバグフィルター本体と重ね、該重なりが30〜70mmであることを特徴とする、請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項3】
バグフィルター胴体部分は、重ねあわせ端面からの長さが5mm以下に少なくとも1本以上の縫製列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項4】
バグフィルター下部には長さが60〜120mmの当て布を円周方向に巻いて構成され、バグフィルターの最下面から15mm以内に3列以上の縫製が施されていることを特徴とする、請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項5】
バグフィルターの全長が2500〜8500mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のバグフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−34562(P2009−34562A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198584(P2007−198584)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】