説明

縫製布帛とスライドファスナー

【課題】曲線形状に裁断された裁断生地をスライドファスナーで閉じ合わせ、縫合箇所が目開きせず、ベーステープが露顕せず、デザイン的にも新規な縫製布帛を得る。
【解決手段】本体生地27をスライドファスナー25で閉じ合わせて縫製布帛とする。ファスナーには、ストリンガ26を係止するベーステープ28が折り返されてストリンガとU字状に向き合って重なり合い、ストリンガの噛合素子23が、その折り返されたベーステープの折り目33の外側に突き出た隠しスライドファスナーを使用する。裁断生地は、折り返して本体生地27と縫い代34をU字状に向かい合わせる。裁断生地とファスナーは、縫い代とベーステープを本体生地とストリンガで挟み、縫い代の端縁37とベーステープの側縁29を重ね合わせ、生地の折り目71とベーステープの折り目33を重ね合わせ、縫い代とベーステープの間でミシン糸目35で縫合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物や編物、不織布、天然皮革、人工皮革、合成皮革、プラスチックシート等(以下、これらを「縫製用生地」と総称する。)を裁断して取り出される裁断生地の裁断口(以下、「端縁」と言う。)にスライドファスナーを縫合し、そのスライドファスナーを介して一対の裁断生地と裁断生地を閉合して仕上げられる縫製布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーとしては、平板なベーステープ28の側縁の外側に噛合素子23を突き出して「務歯・ムシ」と称されるストリンガ26をベーステープ28の側縁に沿って固着した一般の汎用スライドファスナー10(図7a参照)と、折り返されてストリンガ26に重なるベーステープ28の折り目33から噛合素子が外側に突き出た隠しスライドファスナー25(図7b参照)が知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
裁断生地の端縁部分には裁断生地縫い代34が設けられ、裁断生地を裁断生地縫い代34において折り返し、その折り目71をストリンガ26に平行に揃え、裁断生地縫い代34をベーステープ28に重ね合わせて、ミシン糸目35によって裁断本体生地27にスライドファスナー25が縫合される。
【0004】
何れのスライドファスナー10・25を使用する場合でも、従来の縫製技術においては、ストリンガ26やベーステープ28が、その閉じ合わされる一対の裁断本体生地27aと裁断本体生地27bの閉合箇所に露出しており、その露出するスライドファスナー10・25によって縫製布帛の美観が損なわれている。
例えば、汎用スライドファスナー10では、裁断生地縫い代34の幅を広く設定し、裁断本体生地27の折り目71が噛合素子23の上に重なるように裁断生地縫い代34をミシン糸目35から突き出してベーステープ28に縫合し、その突き出た広い裁断生地縫い代34によってストリンガ26を覆い隠すことが出来るとしても(図7a参照)、裁断生地縫い代34の幅が広いが故に、その広い裁断生地縫い代34が反り返ってストリンガ26が露出する。
隠しスライドファスナー25では、ストリンガ26を係止するベーステープ28が折り返されており、その折り目33を境にして向き合うベーステープ28にストリンガ26が被覆されて露出しないとしても、そのストリンガ26を被覆するベーステープ28が縫製布帛の表側に露出する(図7b参照)。
【0005】
勿論、スライドファスナーは、折り目71が彎曲した裁断本体生地27に縫合することが出来る(図8参照)。
しかし、一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71a・71bが突き合わされて密着する非対称形の同一曲線形状を成す場合、それら一対の裁断本体生地27a・27bをスライドファスナーを介して閉合することは出来ない。
その理由は、次の通りである。
【0006】
即ち、図9aに示すように、スライドファスナー10a・10bと裁断本体生地27a・27bを縫合するミシン糸目35a・35bは、ミシン針がストリンガ26a・26bに突き当らないように、ストリンガ26a・26bから離れた部分に縫い込まれる。
一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71a・71bが非対称形の同一曲線形状を成す場合には、その曲線の曲率中心73から一方の裁断本体生地27aのミシン糸目35aに到る曲率半径Raと、その曲率中心73から他方の裁断本体生地27bのミシン糸目35bに到る曲率半径Rbとの差ΔRに起因して、その一方の裁断本体生地27aに縫合されるスライドファスナー10aと他方の裁断本体生地27bに縫合されるスライドファスナー10bの長さの相違が生じる。
そのスライドファスナー10aと10bとの長さの差に起因して、それらの噛合素子が噛み合わなくなるからである。
【0007】
その曲線の曲率中心73から一方の裁断本体生地27aのミシン糸目35aに到る曲率半径Raと他方の裁断本体生地27bのミシン糸目35bに到る曲率半径Rbとの差ΔRに起因する一対のスライドファスナーの長さの差を解消する方法として、スライドファスナーのベーステープの側縁に断続的に切り目を付ける方法(例えば、特許文献4,5参照)や、ベーステープを変形可能な溶剤膨潤性繊維を用いて構成し、彎曲形状に変形する方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0008】
尚、一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71a・71bが互いに突き合わせることの出来ない対称形の同一曲線形状を成す場合、それらの裁断本体生地27a・27bに縫合されるスライドファスナー10a・10bの長さが同じになるので、閉合箇所が隆起または窪むとしても、それらの噛合素子を噛み合わせることが出来る(図8参照)。
しかし、折り目71a・72bが対称形を成す一対の裁断本体生地27a・27bの閉合箇所は、一直線状になって格別な美観を呈さず、縫製布帛のデザインの設計要素にはならず、寧ろ、縫製布帛のデザイン設計する上で障害となる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−180411号公報
【特許文献2】特開2003−210212号公報
【特許文献3】特開2004−195046号公報
【特許文献4】実開昭50−041704号公報
【特許文献5】実開平06−064509号公報
【特許文献6】特開平02−104303号公報(特公平07−059205)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
彎曲した裁断生地の折畳端縁にスライドファスナーを縫合する方法として、上記特許文献4,5に示されるように、ベーステープの側縁に断続的に切り目を付け、或いは、特許文献6に示されるように、変形可能な溶剤膨潤性繊維をベーステープに用いてスライドファスナーを彎曲させることが知られているとしても、そのようなスライドファスナーは汎用性がなく、裁断生地の折畳端縁の彎曲線に合わせて切り目をベーステープに断続的に付け、或いは、特殊な繊維を用いてベーステープを逐一用意しなければならない。
仮に、そのような特殊なスライドファスナーが用意出来たとしても、それを裁断生地の折畳端縁の彎曲線に合わせて縫合するには格別な技量を要し、容易には実施し得ない。
【0011】
そこで本発明は、曲線形状に裁断された裁断生地の折畳端縁の彎曲線に合わせて隠しスライドファスナーを縫合し、隠しスライドファスナーを介して閉じ合わされる裁断生地と裁断生地との閉合箇所が曲線を描き、閉合箇所が裁断生地の折畳端縁に覆われてストリンガが露顕せず、又、閉合箇所において閉じ合わされた裁断生地と裁断生地の間に目開きがなく、その裁断生地と裁断生地の間にストリンガやベーステープが露顕することもないデザイン的にも新規な縫製布帛を得ることを目的とする。
【0012】
思うに、非対称形曲線形状の裁断本体生地27a・27bに縫合するスライドファスナー25の曲率半径Ra・Rbの差ΔRに起因する一対のベーステープ28a・28bの長さの差を解消するためには、その閉合箇所36において向き合う一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71a・71bの描く曲線に変曲点を設けて変曲させることが適切に考えられた。
【0013】
何故なら、閉合箇所が曲線を描く場合には、ベーステープの側縁とミシン糸目は、それぞれ閉合箇所の曲線に平行な曲線を描き、その閉合箇所の曲線が変曲するときは、ベーステープの側縁やミシン糸目の曲線も変曲する。
その曲線を境に向き合う一対の裁断生地の中の片側の裁断生地のミシン糸目の続く長さが、その向き合う他の片側の裁断生地のミシン糸目の続く長さよりも長くなるとしても、その向き合うミシン糸目とミシン糸目との長短差は、変曲点を越えると逆転し、曲線を境に向き合う片側の裁断生地のミシン糸目の続く長さは、その向き合う他の片側の裁断生地のミシン糸目の続く長さよりも短くなる。
このことは、ベーステープの側縁の場合も同様であり、隣り合う変曲点と変曲点の間では、曲率中心から離れたベーステープの側縁が、曲率中心に近いベーステープの側縁よりも長くなるとしても、その何れかの変曲点を越えた他の変曲点との間では、曲率中心に近いベーステープの側縁は、曲率中心から離れたベーステープの側縁よりも短くなる。
その結果、閉合箇所の描く曲線が変曲していれば、閉じ合わされる一方の裁断生地に縫合されるベーステープと、他方の裁断生地に縫合されるベーステープの長さが揃い、又、その閉じ合わされる一方の裁断生地のミシン糸目の続く長さは、他方の裁断生地のミシン糸目の続く長さと同じになるからである。
【0014】
又、非対称形曲線形状の裁断本体生地27a・27bに縫合するスライドファスナー25の曲率半径Ra・Rbの差ΔRを解消するためには、ベーステープ28と裁断本体生地27を縫合するミシン糸目35の噛合素子23から距離rを限りなく小さくすればよく、そのためには、ベーステープ28がストリンガ26の後端に接合されている汎用スライドファスナー10ではなく、図9bに示すように、ベーステープ28が噛合素子23に極接近したストリンガ26の先端に接合されて折り返されている隠しスライドファスナー25を使用することが適切に思われた。
【0015】
そして、隠しスライドファスナー25によって閉じ合わせた裁断生地と裁断生地との閉合箇所に目開きが生じないようにするためには、噛合素子23からミシン糸目35までの距離rを限りなく小さくすると共に、ミシン糸目35からベーステープの側縁29までの距離tも限りなく小さくすることが適切に思われた。
【0016】
何故なら、ベーステープ28の幅pが広い場合には、特許文献4〜6に記載されているように、ベーステープ28に切り目を入れる等してスライドファスナー25を彎曲した裁断本体生地27の曲線に合わせて縫合することが出来るとしても、隠しスライドファスナー25の場合には、図10に図示するように、噛合素子23を裁断本体生地27の外側に突き出すために裁断生地縫い代とベーステープを噛合素子23を中心に180度反転させると、裁断生地の端縁が膨出した膨出部分98のミシン糸目35aは、ストリンガ26からミシン糸目35aまでの距離kの約2倍分だけストリンガ26を越えて曲率中心73Aに近づく方向に移動することになり、その180度反転したミシン糸目35a’は縮められ、その長さSa’は、180度反転させる前の元のミシン糸目35aの長さSaよりも膨出部分98の曲率に応じて短くなるべきことになる。
それとは逆に、裁断生地の端縁が窪み込んだ窪込部分99におけるミシン糸目35では、それを噛合素子23を中心に180度反転させるとき、その窪込部分99の曲率中心73Bから遠ざかる方向にストリンガ26を越え、ストリンガ26からミシン糸目35bまでの距離kの2倍分だけ移動することになるので、その180度反転したミシン糸目35b’の長さSb’は、元のミシン糸目35bの長さSbよりも窪込部分99の曲率に応じて伸長されて長くなるべきことになる。
しかし、実際には、ミシン糸目35は、裁断本体生地27やベーステープ28に縫合されていて伸縮変化することはなく、縮小されるべきミシン糸目35が縮小されず、伸長されるべきミシン糸目35が伸長されないので、裁断生地縫い代とベーステープを噛合素子23を中心に180度反転させると、閉合箇所に目開きや皺襞が発生し易くなる。
【0017】
従って、閉合箇所での目開きや皺立ちを回避するためには、噛合素子23からミシン糸目35までの距離rを限りなく小さくすることになるが、そうしたからと言って必ずしも目開きや皺襞が回避される訳でもなく、噛合素子23からミシン糸目35までの距離rを限りなく小さくすると共に、ミシン糸目35からベーステープの側縁29までの距離tも限りなく小さくすることも肝要となる。
何故なら、隠しスライドファスナー25の場合は、噛合素子23を裁断本体生地27の外側に突き出すために裁断生地縫い代とベーステープを噛合素子23を中心に180度反転させることになるが、図1に図示するように、裁断生地の端縁が膨出した膨出部分98におけるベーステープの側縁29aは、それを180度反転させるとき、その側縁29aからミシン糸目35までの距離tの2倍分(2t)だけミシン糸目35を越え、その膨出部分98の曲率中心73Aに近づく方向に移動し、その180度反転した側縁29a’は縮められ、その長さLa’は、180度反転させる前の元の側縁29aの長さLaよりも膨出部分98の曲率に応じて短くなるべきことになる。
それとは逆に、裁断生地の端縁が窪み込んだ窪込部分99におけるベーステープの側縁29bでは、それを180度反転させるとき、その窪込部分99の曲率中心73Bから遠ざかる方向にミシン糸目35を越え、側縁29bからミシン糸目35までの距離の2倍分だけ移動することになるので、その180度反転した側縁29b’の長さLb’は、元の側縁29bの長さLbよりも窪込部分99の曲率に応じて伸長されて長くなるべきことになる。
しかし、ベーステープ28は、ストリンガ26を係止し、ストリンガ26の間隔を一定に保つ部材であり、緻密に織編成されていて伸縮変化しない。
従って、ベーステープ28を噛合素子23を中心に180度反転させるとき、縮小されるべき窪込部分99のベーステープの側縁29aの長さLaが縮小されず、伸長されるべき窪込部分99のベーステープの側縁29bの長さLbが伸長されないので、閉合箇所に目開きや皺襞が発生する。
【0018】
従って、閉合箇所での目開きや皺立ちを回避するためには、噛合素子23からミシン糸目35までの距離rを限りなく小さくすると共に、ミシン糸目35からベーステープの側縁29までの距離tも限りなく小さくすることも肝要となる。
本発明は、これらの知見を基に完成された。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る縫製布帛は、(a) 一対の裁断本体生地27aと裁断本体生地27bをスライドファスナー25で閉じ合わせて成り、(b) スライドファスナー25は、ストリンガ26を係止するベーステープ28が、ストリンガとの接合箇所で折り返され、ベーステープ28とストリンガ26がU字状に向き合って重なり、ストリンガの噛合素子23が、その折り返されたベーステープの折り目33の外側に突き出た隠しスライドファスナーであり、(c) 裁断本体生地27の端縁側(37)は、裁断生地縫い代34へと折り返されて続いており、その折り返された裁断生地縫い代34と裁断本体生地27がU字状に向かい合って重なり合っており、(d) 裁断本体生地27とスライドファスナー25とは、(d1) 裁断生地縫い代34とベーステープ28が、裁断本体生地27とストリンガ26の間に挟まれており、(d2) 裁断生地縫い代の端縁37とベーステープの側縁29が重ね合わされており、(d3) 裁断本体生地と裁断生地縫い代の間の折り目71と、ストリンガとベーステープの間の折り目33が、重ね合わされてミシン糸目35によって縫合されており、(e) スライドファスナーのストリンガ26の幅qが5mm以下であり、(f) ベーステープ28の幅pが5mm以下であり、ベーステープ28の幅pとストリンガ26の幅qの差が2mm以下であり、(g) ストリンガの噛合素子23からミシン糸目35までの距離rが、ストリンガ26の幅qよりも短いことを第1の特徴とする。
【0020】
本発明に係る縫製布帛の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、(h) 閉じ合わされた一対の裁断本体生地27a・27bの閉合箇所36が、スライドファスナー25の長さ方向に曲線を描いており、(i) 閉じ合わされた一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71a・71bが、その閉合箇所36を境にして左右非対称形の曲線を成しており、(j) 閉合箇所36の描く曲線が変曲する変曲点70を有する点にある。
【0021】
本発明に係る縫製布帛の第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、(k) ベーステープ28がポリエステル捲縮マルチフィラメント糸によって織成されており、(l) その長さ方向に続く側縁が裁断された裁断口となっており、(m) その裁断口においてポリエステル捲縮マルチフィラメント糸を構成する繊維が溶融して融着し、(n) その側縁の長さ方向にフイルム状に連続している点にある。
【0022】
本発明に係る縫製布帛の第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、(o) ベーステープ28が、非平織組織の綾織組織又は繻子織組織によって織成された幅2〜5mmの織りテープである点にある。
【0023】
本発明に係る縫製布帛の第5の特徴は、上記第1と第2と第3と第4の何れかの特徴に加えて、(p) スライドファスナー25に閉じ合わされる縫製布帛93が互いに直交するX軸とY軸とZ軸との三次元方向に方向を変えて曲折して続く三次元曲面を包含しており、(q) その三次元方向に続く三次元曲線を描く箇所が、折り目71aと折り目71bが向き合う一対の裁断本体生地27a・27bの閉合箇所36の少なくとも一部に介在している点にある。
【0024】
本発明に係るスライドファスナーは、ベーステープ28がポリエステル繊維マルチフィラメント糸によって織編成されており、その長さ方向に続く側縁が裁断された裁断口となっており、その裁断口においてポリエステル繊維マルチフィラメント糸を構成している複数本のポリエステル繊維が溶融して互いに融着しており、そのポリエステル繊維の溶融物がベーステープ28の側縁を構成していることを第1の特徴とする。
【0025】
本発明に係るスライドファスナーの第2の特徴は、上記第1の特徴に加え、ストリンガ26を係止するベーステープ28が、ストリンガとの接合箇所で折り返され、ベーステープ28とストリンガ26がU字状に向き合って重なっており、ストリンガの噛合素子23が、その折り返されたベーステープの折り目33の外側に向けて突出している点にある。
【0026】
本発明に係るスライドファスナーの第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加え、ベーステープ28の幅pが5mm以下であり、ベーステープ28の幅pとストリンガ26の幅qとの差が2mm以下である点にある。
【発明の効果】
【0027】
本発明(第1の特徴)によると、スライドファスナー25が、ストリンガ26を係止するベーステープ28が、ストリンガとの接合箇所で折り返されてストリンガ26とU字状に向き合って重なり合い、ストリンガの噛合素子23が、その折り返されたベーステープの折り目33の外側に突き出た隠しスライドファスナーであり、ベーステープの折り目33の下に隠れて裁断本体生地27aと裁断本体生地27bとの閉合箇所36にストリンガ26が露顕しない。
その裁断本体生地27aと裁断本体生地27bとの閉合箇所36は、裁断生地縫い代34とベーステープ28がミシン糸目35によって縫合され、そのミシン糸目35を境に裁断本体生地27とベーステープ28が互いに逆向きに折り返され、ミシン糸目35が裁断本体生地27に包まれており、ベーステープの折り目33の上に裁断生地の折り目71が重なり、その重なり合う一方の裁断生地の折り目71aとベーステープの折り目33aが他方の裁断生地の折り目71bとベーステープの折り目33bが突き合わされる構成となっている。そして、ストリンガの噛合素子23からミシン糸目35までの距離rは、ストリンガ26の幅qよりも短くなっている。
このため、閉じ合わされる一方の裁断生地の折り目71aと他方の裁断生地の折り目71bが密着し、その閉じ合わされる閉合箇所36において、一対の一方の裁断本体生地27aと他方の裁断本体生地27bの間に目開きが生じ難くなり、ベーステープ28は裁断生地の折り目71a・71bの下に隠れ、その結果、裁断本体生地27aと裁断本体生地27bとの閉合箇所36にベーステープ28が露顕し難くなる。
【0028】
噛合素子23からミシン糸目35までの距離rがストリンガの幅qよりも短くなっており、閉じ合わされる一対の裁断生地のミシン糸目35a・35bが極接近するので、裁断本体生地27a・27bの閉合箇所36が曲線となる場合でも、それらのミシン糸目35a・35bの長さの差異が少なく、閉合箇所36の開閉が格別困難にはならない。
そして、ベーステープの幅pとストリンガの幅qが5mm以下であり、噛合素子23からミシン糸目35までの距離rがストリンガの幅qよりも短くなっており、ベーステープの側縁29からミシン糸目35までの距離tも2〜3mm前後と少なくなるので、隠しスライドファスナー25の縫合時に、噛合素子23を外側に突き出すために裁断生地縫い代とベーステープを噛合素子23を中心に180度反転させても、ベーステープの側縁29の反転前の長さLと反転後の長さL’との間に格別な差異は生ぜず、その反転前後の長さL・L’がミシン糸目35の長さ略等しくなる。
【0029】
このことは、一対の裁断生地縫い代34・34の端縁37・37の反転前後の長さ(L・L’)についても同様である。
何故なら、裁断生地縫い代の端縁37とベーステープの側縁29が重ね合わされており、裁断本体生地と裁断生地縫い代の間の折り目71とストリンガとベーステープの間の折り目33が重ね合わされてミシン糸目35によって縫合されており、裁断生地縫い代34の幅がベーステープの幅pに等しく、裁断生地縫い代の端縁37の長さもベーステープの側縁29の長さL(L’)に等しくなっているからである。
【0030】
そのように、裁断生地縫い代とベーステープを噛合素子23を中心に180度反転させても、裁断生地縫い代の端縁37とベーステープの側縁29の反転前後の長さL・L’がミシン糸目35の長さ略等しくなるので、裁断本体生地27aと裁断本体生地27bとの間が目開きしてベーステープが露顕するようなことがなく、裁断本体生地27が引きつったり皺襞が発生して見苦しい外観を呈することもなくなる。
【0031】
本発明(第1の特徴)では、ベーステープの幅pとストリンガの幅qが5mm以下であり、ベーステープの幅pとストリンガの幅qの差が2mm以下であり、隠しスライドファスナー25がストリンガ26とベーステープ28が重なり合った紐状を成すものであっても、その重なり合ってU字状に向かい合うベーステープ28とストリンガ26の間は、それらの間の折り目33を境に開いて直角にすることが出来、その直角に開いた状態において、ベーステープ28を裁断本体生地27の上に置き、ベーステープの側縁29を裁断生地縫い代の端縁37を重ね合わせ、その重なり合うベーステープの側縁29を裁断生地縫い代の端縁37を目視しつつ裁断生地縫い代34とベーステープ28の間でミシン糸目35によって縫合し、裁断生地縫い代の端縁37の長さとベーステープの側縁29の長さLを揃えることが出来る。
そして、ベーステープの幅pが2〜5mmであっても、ストリンガ26に支えられているので、ベーステープ28を裁断生地縫い代34に縫合するのに格別困難を伴うことがなく、ベーステープの側縁29とミシン糸目35の間の距離tが2〜3mm前後であれば、ミシン糸目35がベーステープの側縁29から解れ出すこともない。
【0032】
本発明(第2の特徴)では、曲線を描いて閉じ合わされる一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71a・71bの曲線を変曲させており、その曲線の変曲点70の前後において、閉じ合わされる片側の裁断本体生地27aのミシン糸目の長さSaやベーステープの側縁の長さLaが他の片側の裁断本体生地27bのミシン糸目の長さSやベーステープの側縁の長さLよりも短くなるとしても、その変曲点70を越えると、その短かった片側の裁断本体生地27aのミシン糸目の長さSaやベーステープの側縁の長さLaが他の片側の裁断本体生地27bのミシン糸目の長さSやベーステープの側縁の長さLよりも長くなるので、全体(トータル)として、一対の裁断本体生地27a・27bのミシン糸目の長さSやベーステープの側縁の長さLが同じになる。
従って、閉合箇所36が曲線を描くように一対の裁断本体生地27a・27bをスライドファスナー25を介して閉じ合わせても、それらの裁断本体生地27a・27bのミシン糸目の長さSやベーステープの側縁の長さLに起因する閉合箇所36での目開きや裁断本体生地27の引きつりや皺襞がなく、それらが綺麗に閉じ合わされた縫製布帛93が得られる。
【0033】
本発明(第3の特徴)によると、ベーステープが幅2〜5mmに裁断されたものであり、その側縁に緯糸の織り返しがないものであっても、破断した経糸や緯糸が融着して長さ方向にフイルム状になって連続しているので、ベーステープの側縁が解れ出すことがなく、却って、ベーステープの側縁が伸縮し易いので、閉合箇所36が曲線を描くように一対の裁断本体生地27a・27bをスライドファスナー25を介して閉じ合わせても、それらの裁断本体生地27a・27bのミシン糸目の長さSやベーステープの側縁の長さLに起因する閉合箇所36での目開きや裁断本体生地27の引きつりや皺襞が一層生じ難くなる。そして、ベーステープの幅pが10mm以上の隠しスライドファスナーであっても、超音波カッターやヒートカッターでベーステープを裁断し、その幅pを5mm以下にすることが出来るので、本発明の実施に特製の隠しスライドファスナーを必要としない。
従って、本発明(第3の特徴)は、実施が容易で実利的である。
【0034】
本発明(第4の特徴)によると、ベーステープ28が、硬い平織組織によってではなく、経糸が複数本の緯糸の上に浮き出し、緯糸が複数本の経糸の上に浮き出た非平織組織の綾織組織又は繻子織組織によって織成されているので、経糸がベーステープの幅方向に移動し易い。このため、閉合箇所36が曲線を描くように一対の裁断本体生地27a・27bをスライドファスナー25を介して閉じ合わせても、それらの裁断本体生地27a・27bのミシン糸目の長さSやベーステープの側縁の長さLに起因する閉合箇所36での目開きや裁断本体生地27の引きつりや皺襞は更に一層生じ難くなる。
【0035】
本発明(第5の特徴)によると、スライドファスナーのストリンガ26の幅qが5mm以下であり、ベーステープ28の幅pが5mm以下であり、ベーステープ28の幅pとストリンガ26の幅qの差が2mm以下であることからスライドファスナー25が捩れ易く、互いに直交するX軸とY軸とZ軸との三次元方向に方向を変えて曲折して続く三次元曲面の介在する車両座席シートの背凭れボディーや座面ボディーに縫製布帛93を装着する場合、その背凭れボディーや座面ボディーの三次元曲面の凸部や凹部に縫製布帛93が密着し、図11に図示するように、その凸部61や凹部62の裁断本体生地27aと裁断本体生地27bとの閉合箇所36が、その断面63に90度未満の交叉角度αをもって交叉する方向に続く場合でも、スライドファスナー25に突き上げられてさざ波状に細かく突き出るようなことはなく、図12に図示するように、向き合う一対の裁断本体生地27a・27bの折り目71aと折り目71bが三次元方向に方向を変えて飛行する飛行機の翼の軌跡のように、その閉合箇所36の表面が滑らかな三次元方向に続く三次元曲線を描くことになる。
【0036】
スライドファスナーには、コイル状に連続する多数のストリンガをベーステープに織編込んで成るコイル形スライドファスナーと、ストリンガをベーステープに個々に植設して成る植設形スライドファスナーとがあり、その何れのタイプのスライドファスナーでも、その製造過程でストリンガを係止或いは把持する関係からして、ベーステープの幅を広くする必要があり、その幅を5mm以下にすることは困難である。
この点、本発明では、ベーステープ28がポリエステル繊維マルチフィラメント糸によって織編成し、その長さ方向に続く側縁を裁断された裁断口とし、その裁断口においてポリエステル繊維マルチフィラメント糸を構成している複数本のポリエステル繊維が溶融して互いに融着し、そのポリエステル繊維の溶融物によってベーステープ28の側縁を構成することとしており、そのようなスライドファスナーは、ベーステープの幅が5mm以上の市販のスライドファスナーのベーステープを、その幅が5mm以下になるようにヒートカッターや超音波カッター等によって裁断して得ることが出来る。
そして、ヒートカッターや超音波カッター等によってポリエステル繊維マルチフィラメント糸を裁断する場合、そのポリエステル繊維が強靱な溶融物を構成し、そのポリエステル繊維の溶融物がベーステープ28の側縁を構成することになるので、ベーステープ28の側縁は在来のスライドファスナーのベーステープの側縁と同様に解れることはない。
【0037】
従って、本発明によると、ベーステープ28の幅pが5mm以下であり、ベーステープ28の幅pとストリンガ26の幅qの差が2mm以下であるスライドファスナーが市販されていなくても、ベーステープの幅が5mm以上の市販のスライドファスナーのヒートカッターや超音波カッター等によって裁断加工して、非対称形曲線形状の裁断本体生地27aと裁断本体生地27bとの閉合箇所36においてもストリンガ26が露顕しない縫製布帛93を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
パイル布帛や起毛布帛等の有毛布帛を縫製用生地(27)に使用する場合は、本発明の効果は遺憾なく発揮される。
それは、閉合箇所36を間に挟む一対の裁断本体生地27a・27bから突き出たパイルを起毛毛羽に閉合箇所36が覆い隠されて閉合箇所36が目立ち難く、閉合箇所(36)での目開きや裁断本体生地27の引きつりや皺襞は更に一層生じ難くなるからである。
【0039】
本発明では、裁断生地縫い代34の幅を、ベーステープの幅pに等しく5mm以下にするので、その裁断生地縫い代34の端縁37からの解れを防ぐために、ベーステープの場合と同様に、縫製用生地を超音波カッターやヒートカッターで裁断し、裁断生地縫い代の端縁37の繊維を融着し、その端縁37に沿ってフイルム状に連続させるとよい。
そのためには、縫製用生地(27)にポリエステル繊維その他の熱可塑性合成繊維を使用または混用する。
縫製用生地(27)がパイル布帛や起毛布帛等の有毛布帛の場合には、そのパイルを起毛毛羽を係止する基布に熱可塑性合成繊維を使用または混用すればよく、パイルや起毛毛羽にまで熱可塑性合成繊維を適用するには及ばない。
【0040】
裁断生地縫い代34の端縁37からの解れを防ぐためには、オーバーロックミシンのミシン糸による縁取りを裁断生地縫い代の端縁37に施し、或いは、パイピング鋏を用いて縫製用生地を裁断し、裁断生地縫い代の端縁37に沿って切り目を付けることも効果的である。
パイピング鋏を用いて縫製用生地を裁断する場合、裁断生地に付ける折り目71から切り目までの距離がベーステープの幅pに等しくする。
【0041】
スライドファスナー25と裁断本体生地27とは、裁断生地縫い代34の端縁37にベーステープ28の側縁29を合わせ、裁断本体生地27の上にスライドファスナー25を載せ、裁断生地縫い代34とベーステープ28をミシン糸目35によって縫合する。
ベーステープ28の幅pは2〜4mmにし、ミシン糸目35とベーステープの側縁29の間の距離tが4mm未満になるように、ミシン糸目35をストリンガ26とベーステープ28との接合箇所に極接近させる(図5a)。
そのためには、図3と図4に図示する押圧片31を用いてベーステープ28に対してストリンガ26を直角に立ち上げ、ベーステープ28を裁断生地縫い代34に圧着しつつスライドファスナー25を裁断本体生地27に縫合することとし、その際、図3に図示するテープホルダ15によってベーステープ28にストリンガ26を直角に立ち上げてスライドファスナー25を押圧片31へと導入する。
【0042】
図3は、テープホルダ15を搭載している縫製用ミシンを図示し、スライドファスナー25は、テープホルダ15を通過してミシン針30の作用箇所へと導かれる。
テープホルダ15は、ピン38を介して支台16に揺動・傾倒可能にピン接合されて垂直に突き出た支脚39と、その支脚39から片持ち梁状に水平に突き出たアーム40とで逆L字形に構成され、支台16に支持されている。
支台16は、移動可能に台盤22に戴承されている。
支台16の底面には、台盤22が嵌合する蟻溝48が付けられており、アーム40の長さ方向に向けて台盤22の上で支台16を移動し得るようになっている。
【0043】
アーム40には、背面21から正面20に向けて連続し、底面11が開口12となる下向きの縦溝13と、その縦溝に交叉する方向に開口18が形成された横溝14が設けられており、その横溝の開口18と縦溝の開口12の間が開放されて続いている。
アーム40の底面11の下側は、背面側21から正面側22へと裁断本体生地27が通過し得る開放されたスペース19となっている。
アーム40の上面には、アーム40の長さ方向に続く蟻溝41が設けられ、その長さ方向に摺動可能にスライダ42が蟻溝41に嵌合している。
スライダの先端はU字状に下向きに折り返されており、その折り返された部分がアーム40の底面11に摺接して縦溝の開口12を開閉する蓋17を構成している。
縦溝の開口12は、その蓋17が横溝の開口18に向けて移動して閉じられる。
蓋17は、その先端43が横溝14の下側溝縁44に当接するまで移動し、その移動する蓋17によって横溝の開口18も閉じられるようになっている。
【0044】
アーム40の上面には、先端46が下向きに突き出たバネ45が接合されている。
スライダ42の上面には、その突き出た先端46が嵌合する2つの凹部47が設けられている。
蓋17が移動して開口12が閉じられたときは、スライダ42の先端側の凹部47にバネの先端46が嵌合し、開口12が開けられたときは、スライダの後端側の凹部(図示せず)にバネの先端46が嵌合し、そうなることによって、開口12の閉じられた状態と開けられた状態がそれぞれセットされる。
スライダ42には、それをアーム40の長さ方向に摺動させるための把手49が取り付けられている。
ファスナーホルダは、ピン38を中心に揺動して支脚39が支台16に当って止まり、アーム40が起立した状態で静止し、その静止状態において横溝14にベーステープ28を嵌め込み、次いで、縦溝13にストリンガ26を嵌め込むことが出来る。
【0045】
蓋17は、横溝の開口18から離れた位置において縦溝の開口12を開閉するので、縦溝13の開口12の開放状態においては、ベーステープ28を横溝14に自由に嵌め込むことが出来、そのベーステープ28が横溝14に嵌め込まれた状態においてストリンガ26を縦溝13に嵌め込むことも出来、横溝14に嵌め込まれたベーステープ28と縦溝13に嵌め込まれたストリンガ26が直交状態になる。
即ち、折り目33においてストリンガ26がベーステープ28の側縁に垂直に立ち上がった状態になる。
ベーステープ28とストリンガ26の嵌め込まれた状態において、蓋17を移動して縦溝の開口12を閉じると、横溝の開口18も蓋17に妨げられて閉塞状態になり、ストリンガ26がベーステープ28の側縁に沿って垂直に立ち上がった状態が維持される。
【0046】
縫製用ミシンのミシン針30の作用箇所には、裁断生地を押さえる押圧片31が取り付けられている。
押圧片31は、昇降駆動される支持桿に担持され、縫合するスライドファスナーと裁断生地に向けて昇降駆動され、スライドファスナーと裁断生地を押圧する。
押圧片の底面50には、スライドファスナーのストリンガが嵌合し、その嵌合するストリンガを裁断生地の通過する方向に導く案内溝32が設けられている。
案内溝32の入口と出口の間の中間部分には、昇降するミシン針30の通過する貫通孔54が穿設されている。
案内溝32の入口と出口の溝幅は、その入口と出口の間の中間部分の溝幅よりも広くなっている。
その中間部分における案内溝32の溝底55は、貫通孔54から離れている。
案内溝32の中間部分において向き合う溝壁56・57は、その中間部分における溝底55が貫通孔54から離れる方向に向けて、押圧片31の底面50に対して傾斜している(図4)。
【0047】
スライドファスナー25は、テープホルダ15においてストリンガ26がベーステープ28の側縁に垂直に立ち上がった状態で縦溝13と横溝14から引き出され、押圧片31の案内溝32へと導入される。
そのようにストリンガ26が立ち上がった状態で引き出されるので、そのベーステープ28の側縁に垂直に立ち上がったストリンガ26に案内溝32が容易に嵌合し、押圧片31を降下させればベーステープ28が裁断本体生地27に押圧され、ベーステープ28とストリンガ26の間の折り目33に沿ってスライドファスナー25を裁断本体生地27に縫合することが出来る(図3と図4)。
【0048】
従って、本発明では、ベーステープ28の幅pを狭く2〜4mmにしても、ミシン糸目35とベーステープの側縁29の間の距離tが4mm未満になるように、裁断生地縫い代の端縁37とベーステープの側縁29を重ね合わせ、ミシン糸目35をストリンガ26とベーステープ28との接合箇所に極接近させて、裁断本体生地27とベーステープ28を縫合することが出来る。
【0049】
スライドファスナー25を裁断本体生地27に縫合した後、ストリンガ26は、ミシン糸目35の上へと倒されてベーステープ28に重ね合わされる(図5b)。
次いで、ミシン糸目35を中心に裁断生地縫い代34とスライドファスナー25が折り返され、裁断本体生地27とストリンガ26の間に裁断生地縫い代34とベーステープ28が挟まれ、噛合素子23がベーステープの折り目33の外側に突き出た元の状態になる(図5c)。
【0050】
図6は、車両座席シートを図示し、背凭れカバー77と座面カバー78は本発明の縫製布帛93によって構成されている。
背凭れカバー77は、背凭れボディーの中央部を覆うセンター裁断生地85と、その側面部を覆う左右のサイド裁断生地86・87から成る。
センター裁断生地85は、背凭れボディーの正面を覆う正面生地79と背凭れボディーの正面を覆う背面裁断生地88が連続した一枚の裁断生地に成り、その端縁72a・72bに沿ってスライドファスナー25が縫合されている。
左右のサイド裁断生地86・87は、側面裁断生地82の表裏に正面裁断生地79と背面裁断生地88を縫合して袋状に縫製されており、その開口部の周縁89に沿ってスライドファスナー25が縫合されている。
【0051】
センター裁断生地85の端縁72a・72bとサイド裁断生地86・87の周縁89は、それぞれ4つの変曲点70a・70b・70c・70dで変曲した非対称形曲線となっている。
【0052】
背凭れカバー77と同様に、座面カバー78も、座面ボディーの中央部を覆うセンター裁断生地85と、その側面部を覆う左右のサイド裁断生地86・87から成っており、それらはスライドファスナーによって閉じ合わされている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る裁断生地の斜視図である。
【図2】本発明に係る縫製布帛の斜視図である。
【図3】本発明に係るテープホルダーの斜視図である。
【図4】本発明に係る押圧片の断面図である。
【図5】本発明に係る裁断生地の斜視図である。
【図6】本発明に係る車両座席シートの斜視図である。
【図7】従来の縫製布帛の斜視図である。
【図8】従来の縫製布帛の平面図である。
【図9】従来の縫製布帛の平面図である。
【図10】従来の裁断生地の斜視図である。
【図11】本発明に係る縫製布帛の車両座席シートに装着された状態における断面斜視図である。
【図12】図11に図示する縫製布帛の要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10:汎用スライドファスナー
11:底面
12:開口
13:縦溝
14:横溝
15:テープホルダ
16:支台
17:蓋
18:開口
19:スペース
20:正面
21:背面
22:台盤
23:噛合素子
25:隠しスライドファスナー
26:ストリンガ
27:裁断本体生地
28:ベーステープ
29:ベーステープの側縁
30:ミシン針
31:押圧片
32:案内溝
33:ベーステープの折り目
34:裁断生地縫い代
35:ミシン糸目
36:閉合箇所
37:裁断生地縫い代の端縁
38:ピン
39:支脚
40:アーム
41:蟻溝
42:スライダ
43:蓋の先端
44:横溝の溝縁
45:バネ
46:バネの先端
47:凹部
48:蟻溝
49:把手
50:底面
54:貫通孔
55:案内溝の溝底
56:案内溝の溝壁
57:案内溝の溝壁
61:凸部
62:凹部
63:断面
70:変曲点
71:裁断生地の折り目
73:曲率中心
77:背凭れカバー
78:座面カバー
79:正面裁断生地
82:側面裁断生地
85:センター裁断生地
86・87:サイド裁断生地
88:背面裁断生地
89:周縁
93:縫製布帛
98:膨出部分
99:窪込部分
L :ベースシート側縁の長さ
R :曲率半径
S :ミシン糸目の長さ
p :ベースシートの幅
q :ストリンガの幅
k :ミシン糸目とストリンガとの距離
r :ミシン糸目と噛合素子との距離
t :ミシン糸目とベースシート側縁との距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 一対の裁断本体生地(27a)と裁断本体生地(27b)をスライドファスナー(25)で閉じ合わせて成り、
(b) スライドファスナー(25)は、ストリンガ(26)を係止するベーステープ(28)が、ストリンガとの接合箇所で折り返され、ベーステープ(28)とストリンガ(26)がU字状に向き合って重なり、ストリンガの噛合素子(23)が、その折り返されたベーステープの折り目(33)の外側に突き出た隠しスライドファスナーであり、
(c) 裁断本体生地(27)の端縁側(37)は、裁断生地縫い代(34)へと折り返されて続いており、その折り返された裁断生地縫い代(34)と裁断本体生地(27)がU字状に向かい合って重なり合っており、
(d) 裁断本体生地(27)とスライドファスナー(25)とは、
(d1) 裁断生地縫い代(34)とベーステープ(28)が、裁断本体生地(27)とストリンガ(26)の間に挟まれており、
(d2) 裁断生地縫い代の端縁(37)とベーステープの側縁(29)が重ね合わされており、
(d3) 裁断本体生地と裁断生地縫い代の間の折り目(71)と、ストリンガとベーステープの間の折り目(33)が、重ね合わされてミシン糸目(35)によって縫合されており、
(e) スライドファスナーのストリンガ(26)の幅(q)が5mm以下であり、
(f) ベーステープ(28)の幅(p)が5mm以下であり、ベーステープ(28)の幅(p)とストリンガ(26)の幅(q)の差が2mm以下であり、
(g) ストリンガの噛合素子(23)からミシン糸目(35)までの距離(r)が、ストリンガ(26)の幅(q)よりも短いことを特徴とする縫製布帛。
【請求項2】
(h) 閉じ合わされた一対の裁断本体生地(27a・27b)の閉合箇所(36)が、スライドファスナー(25)の長さ方向に曲線を描いており、
(i) 閉じ合わされた一対の裁断本体生地(27a・27b)の折り目(71a・71b)が、その閉合箇所(36)を境にして左右非対称形の曲線を成しており、
(j) 閉合箇所(36)の描く曲線が変曲する変曲点(70)を有する前掲請求項1記載の縫製布帛。
【請求項3】
(k) ベーステープ(28)がポリエステル捲縮マルチフィラメント糸によって織成されており、
(l) その長さ方向に続く側縁が裁断された裁断口となっており、
(m) その裁断口においてポリエステル捲縮マルチフィラメント糸を構成する繊維が溶融して融着し、
(n) その側縁の長さ方向にフイルム状に連続している前掲請求項1と2の何れかに記載の縫製布帛。
【請求項4】
(o) ベーステープ(28)が、非平織組織の綾織組織又は繻子織組織によって織成された幅2〜5mmの織りテープである前掲請求項1と2と3の何れかに記載の縫製布帛。
【請求項5】
(p) スライドファスナー(25)に閉じ合わされる縫製布帛(93)が互いに直交するX軸とY軸とZ軸との三次元方向に方向を変えて曲折して続く三次元曲面を包含しており、
(q) その三次元方向に続く三次元曲線を描く箇所が、折り目(71a)と折り目(71b)が向き合う一対の裁断本体生地(27a・27b)の閉合箇所(36)の少なくとも一部に介在している前掲請求項1と2と3と4の何れかに記載の縫製布帛。
【請求項6】
ベーステープ(28)がポリエステル繊維マルチフィラメント糸によって織編成されており、その長さ方向に続く側縁が裁断された裁断口となっており、その裁断口においてポリエステル繊維マルチフィラメント糸を構成している複数本のポリエステル繊維が溶融して互いに融着しており、そのポリエステル繊維の溶融物がベーステープ(28)の側縁を構成していることを特徴とするスライドファスナー。
【請求項7】
ストリンガ(26)を係止するベーステープ(28)が、ストリンガとの接合箇所で折り返され、ベーステープ(28)とストリンガ(26)がU字状に向き合って重なっており、ストリンガの噛合素子(23)が、その折り返されたベーステープの折り目(33)の外側に向けて突出している前掲請求項6に記載のスライドファスナー。
【請求項8】
ベーステープ(28)の幅(p)が5mm以下であり、ベーステープ(28)の幅(p)とストリンガ(26)の幅(q)との差が2mm以下である前掲請求項6と7の何れかに記載のスライドファスナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−17259(P2010−17259A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178495(P2008−178495)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物セルコン (104)
【Fターム(参考)】