説明

縮織物

【課題】経糸が大きく蛇行することにより独特の風合いを表現することができる縮織物において、特に見た目からくる風合いがきわめて特徴的であると共に、通気性がより良好な縮織物を提供する。
【解決手段】縮織物Tは、経糸1と緯糸2を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成したものである。縮織物Tには、経糸1の織成密度の粗の部分であるA部分、B部分と、密の部分である後述するD部分及び模様部分であるC部分が、緯糸2の方向へB部分の間に複数のA部分を配する配列で設けられている。経糸1の織成密度の粗の部分であるA部分、B部分に位置する経糸11、12は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によってあらかじめ処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縮織物に関する。さらに詳しくは、しじら織りのような独特の風合いを備えており、通気性や使用感がさらに良好であり、見た目からくる風合いもきわめて特徴的な縮織物に関する。
【背景技術】
【0002】
布面に細かな波状の皺(しぼ)を表した織物、いわゆる縮織(ちぢみおり)は、布面と肌との間に常に隙間をつくることができるので涼感があり、主に夏用の服地或いは着物地として使用されている。
縮織をつくる方法として、第1には、緯糸に強撚糸を用いて平織りにし、これを水に浸けて糊抜きをして乾燥させる方法があげられる。この方法は、繊維の撚りの強さ(密度)が異なることによる経糸と緯糸の縮み率の違いを利用したものであり、経糸と横糸が縮みながら干渉し合い、布面に細かな波状の凹凸が形成される。
【0003】
また、第2には、いわゆるしじら織りがある。この方法は、織成するときに経糸の張力に変化をつけて平織りにするもので、張力が異なることによる各経糸の縮み率の違いを利用して布面に細かな波状の凹凸を形成するものである。しじら織りには、前記第1の方法によるものとは違った、ゆるく張った経糸が大きく蛇行することによりもたらされる独特の風合いがあり、一般市場において特に好まれ、広く生産されている。
【0004】
前記第2の方法であるしじら織りでは、織成の際、経糸の張力に変化をつけるため、織成機械に張力を調整するための機構部が必要であり、経糸の張力に変化をつけないで織成を行う一般的な織成機械を、そのまま縮織に流用することができず、縮織専用の織成機械が必要であった。
また、前記第1の方法では、このような不都合は生じないが、織りが特徴的というわけでなく一般的に過ぎるので、しじら織りのような、経糸が大きく蛇行することによりもたらされる独特の風合いを表現することができなかった。
【0005】
このような問題を解消しようとしたものとしては、例えば本願発明者が提案した特許文献1記載の縮織物がある。
この縮織物は、経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成したものであって、経糸の織成密度の粗の部分と密の部分が、緯糸方向へ適宜配列で設けてあり、粗の部分に隣接する経糸が、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理されており、経糸間の粗の部分を構成する織成空間部に位置して蛇行していることを特徴とする。
【0006】
【特許文献1】特許2932066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の縮織物は、独特の風合いを持つしじら織りと同様の風合いを表現することができると共に、経糸の織成密度の密の部分により強度を十分に確保し、かつ粗の部分により通気性がより向上しているので、これらによってもたらされる風合いと従来にない優れた機能性を備えている点においては十分に有用である。
しかしながら、織物の市場においては、他の市場と同様に、常に多種多様なニーズが新たに生まれており、それらのニーズに対応できるようにするため、従来提案した縮織物より、より特徴的な風合いを備え、通気性や使用感がさらに良好な縮織物を開発する必要が生じてきた。
【0008】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、専用の織成機械などは必要とせずに、一般的な織成機械を使用してつくることができ、しじら織りのような、経糸が大きく蛇行することにより独特の風合いを表現することができる縮織物において、特に見た目からくる風合いがきわめて特徴的であると共に、通気性や使用感がより良好な縮織物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、前記粗の部分は緯糸方向における幅が異なる複数種類の粗の部分が混在している、縮織物である。
【0010】
本発明は、経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、前記粗の部分は、緯糸方向における幅が比較的広い広幅粗部を緯糸方向に所要間隔で設け、広幅粗部の間に緯糸方向における幅が広幅粗部より狭い狭幅粗部を複数設けた配列となっており、前記広幅粗部と狭幅粗部に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、広幅粗部と狭幅粗部を構成する織成空間部において蛇行している、縮織物である。
【0011】
本発明に係る縮織物は、狭幅粗部と密の部分が略同幅であり、一対の広幅粗部の間に複数の狭幅粗部と密の部分を有する構造とすることもできる。
【0012】
本発明の縮織物は、所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばし、または/及び所要数の緯糸を連続して跨ぐように経糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸または及び経糸で模様を形成したものでもよい。
【0013】
本発明の縮織物は、緯糸方向における幅が狭い狭幅粗部の間で所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸で模様を形成したものでもよい。
【0014】
本発明は、経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、
所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばし、または/及び所要数の緯糸を連続して跨ぐように経糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸または及び経糸で模様を形成した、縮織物である。
【0015】
本発明は、経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、
経糸の織成密度が粗の部分の間で複数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸で模様を形成した、縮織物である。
【0016】
本発明にいう「縮織物」は、布面全体に細かい凹凸を生じさせた織物であって、例えば緯糸にやや強い撚糸を用いて織り、その後、練って皺寄をして布面全体に細かい皺を生じさせた織物である。また、「縮み処理」とは、織り糸を湯または水に通して乾燥させる処理のことである。さらに、糸を「飛ばす」の用語は、経糸と緯糸とを規則正しく緊密には織らないで、一方の所要数の糸が他方の所要数の糸を一度に跨ぐように、または被さるように織ることの意味で使用している。
【0017】
本発明に係る縮織物は、織機に等間隔で設けられた筬(おさ)の間隔内に、それぞれ経糸を通さないようにしたり経糸を異なる本数で通し、緯糸と共に平織りにして織成される。A部分の経糸及びB部分の経糸は、縮み処理によってそれら自身が直線的でなく、うねるように蛇行しているので、平織りにしたときに緯糸からの干渉を受けて織成時の位置から次第に移動する。
【0018】
この移動は、各経糸のうねりの大きさや各緯糸の締め付け力のばらつき等により、各部で移動量に差が出るので、各経糸は緯糸が緩み摩擦抵抗が弱くなっている織成空間部(経糸のない部分)に入り込むように移動して、独自に大きく蛇行すると共に布面全体には細かな波状の凹凸が形成される。これにより、しじら織りと同様の独特の風合いを持つ縮織物をつくることができる。
【0019】
(作用)
本発明に係る縮織物の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を前記各部に限定するものではない。
【0020】
本発明に係る縮織物は、経糸の織成密度が粗の部分(A,B)と密の部分(D)が緯糸(2)方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分(A,B)に位置する経糸(1)は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、粗の部分(A,B)を構成する織成空間部において蛇行しており、経糸(1)が蛇行することによる独特の風合いを持つしじら織りと同様の風合いを表現することができる。
【0021】
また、縮織物は、経糸(1)の織成密度が密の部分(D)によって十分な強度が確保されており、かつ粗の部分(A,B)によって通気性がより向上しているので、従来にない優れた機能性を備えている。
【0022】
さらに、緯糸(2)方向における幅が異なる複数種類の粗の部分(広幅粗部(B)と狭幅粗部(A)等)が混在しているので、それらがつくり出す模様がかもし出す、特に見た目からくる風合いがきわめて特徴的なものとなる。また、緯糸(2)方向における幅がより広い粗の部分(広幅粗部(B)等)が設けられているので、通気性がより良好なものとなる。
【0023】
所要数の経糸(1)を連続して跨ぐように緯糸(2)を飛ばし、または/及び所要数の緯糸(2)を連続して跨ぐように経糸(1)を飛ばして表裏方向に嵩高な嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸(2)または及び経糸(1)で模様を形成したもの、または、経糸(1)の織成密度が粗の部分(A,B)の間で複数の経糸(1)を連続して跨ぐように緯糸(2)を飛ばして表裏方向に嵩高とし、表面に表れた緯糸(2)で模様を形成したもの、または、緯糸(2)方向における幅が狭い粗の部分(狭幅粗部(B)等)の間で複数の経糸(1)を連続して跨ぐように緯糸(2)を飛ばして表裏方向に嵩高とし、模様を形成したものは、それぞれその模様がおもしろいものとなる。
また、緯糸(2)または経糸(1)を飛ばした部分の各糸の地合い緩んだ状態で多層構造となって表裏方向に嵩高になって嵩高部を形成し(表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れて、規則正しく平織りした地の部分より嵩高となり厚くなる)、その布面からやや突出した部分が使用者の体表等に接触する部分となり、他の布面と体表との間に空隙をつくり、互いの密着を防止するので通気性と使用感がよくなる。さらに、表裏方向に嵩高になることにより各糸間の間隙が広がるので、その部分による通気が可能または良好になり、縮織物全体の通気性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
(a)本発明の縮織物は、経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、経糸が蛇行することにより、独特の風合いを持つしじら織りと同様の風合いを表現することができると共に、経糸の織成密度の密の部分により十分な強度を有し、かつ粗の部分(広幅粗部と狭幅粗部等)により十分な通気性を有している。しかも、緯糸方向における幅が広い粗の部分(広幅粗部等)を緯糸方向に所要間隔で設け、幅が広い粗の部分の間に緯糸方向における幅が狭い粗の部分(狭幅粗部等)を複数設けているので、特に見た目からくる風合いがきわめて特徴的であると共に、通気性がより良好な縮織物を提供することができる。
【0025】
(b)所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばし、または/及び所要数の緯糸を連続して跨ぐように経糸を飛ばして表裏方向に嵩高な嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸または及び経糸で模様を形成したもの、または、経糸の織成密度が粗の部分の間で複数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばして表裏方向に嵩高とし、表面に表れた緯糸で模様を形成したもの、または、緯糸方向における幅が狭い粗の部分(狭幅粗部等)の間で複数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばして表裏方向に嵩高とし、模様を形成したものは、それぞれその模様がおもしろいものとなる。
また、緯糸または経糸を飛ばした部分の各糸の地合い緩んだ状態で多層構造となって表裏方向に嵩高になって嵩高部を形成し、その布面からやや突出した部分が使用者の体表等に接触する部分となり、他の布面と体表との間に空隙をつくり、互いの密着を防止するので通気性と使用感がよくなる。さらに、表裏方向に嵩高になることにより各糸間の間隙が広がるので、その部分による通気が可能または良好になり、縮織物全体の通気性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔発明の実施の形態〕
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る縮織物の経糸と緯糸の織成状態を示す要部平面図、
図2は図1におけるA部の要部拡大説明図、
図3は図2のI−I断面図、
図4は図1におけるB部の要部拡大説明図、
図5は図1におけるC部の拡大説明図、
図6はC部を裏側からみた拡大説明図、
図7は図5におけるII−II断面図である。
【0027】
符号Tは縮織物であり、経糸1と緯糸2を平織りにし、かつ布面に細かな波状の凹凸(図3に示す全体のうねり参照)を形成したものである。
経糸1と緯糸2としては、例えば、綿糸、絹糸、麻糸、あるいはそれらの混紡等を採用することができる。化学繊維であっても、縮み処理により縮むものであれば同様に採用することができる。なお、経糸1(11、12)は緯糸2(21、22、23)と互いに色を違えてある。本実施の形態では、経糸1が白色、緯糸2が紺色である。
【0028】
縮織物Tには、経糸1の織成密度の粗の部分(後述するA部分、B部分)と密の部分(後述するD部分)及び模様部分(後述するC部分)が、緯糸2の方向へ後述する配列で設けられている。経糸1の織成密度の粗の部分に位置する経糸(後述する11、12)は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によってあらかじめ処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行している。
本実施の形態において、縮織物Tにおける経糸1の織成密度が粗の部分と密の部分の種類は次の通りである。
【0029】
まず、図1において、A部分は経糸1が粗の部分であり、緯糸2方向の幅が比較的狭くなっている狭幅粗部である。B部分はA部分と同じく経糸1が粗の部分であり、A部分と比較して緯糸2方向のやや幅が広い広幅粗部である。また、C部分は模様部であり、D部分は経糸1と緯糸2の織成密度が緊密な地部である。
【0030】
また、それらの配列は、次の通りである。
すなわち、図1に示すように、緯糸2方向へ順にB部分、D部分、A部分、D部分、A部分、D部分、A部分、D部分、A部分、D部分、A部分、D部分、B部分、D部分、A部分・・・であり、B部分から六番目のDまでを1サイクル(一巡)として繰り返す配列である。また、C部分は、二番目、三番目、四番目までのA部分に掛かるように織成されており、かつ経糸1方向に所要の間隔をおいて配列されている。
【0031】
A部分、B部分、C部分、D部分の配列や幅(例えばB部分間のA部分の本数、各部分の幅やピッチ等)または設ける位置は、前記配列や幅または位置に限定されるものではなく、適宜設定して織成が可能である。なお、縮織物Tの経糸1(11、12)方向の長さは特に限定されるものではなく、適宜設定される。
【0032】
前記A部分、B部分、C部分及びD部分のそれぞれについて、織成部を説明する。
(A部分)
本実施の形態では、織機に等間隔で設けられた筬(おさ)の間隔内に、経糸1を通さない部分と、経糸1を複数通す部分及び複数であっても相互に異なる本数で通す部分を適宜配列で繰り返すように組み合わせることにより、経糸1の織成密度の粗の部分(A部分)と密の部分(D部分)をつくり出している。
また、経糸1を設けない部分があるA部分に位置している経糸(図2では符号11を付与している)は、経糸12の密度が低いことにより形成された空間に入り込むように位置して、特に密の部分(D部分)から遠い内方のものは、緯糸2による締め付けが緩いため大きく蛇行している。
【0033】
(B部分)
前記A部分と同様に、織機に等間隔で設けられた筬(おさ)の間隔内に、経糸1を通さない部分と、経糸1を複数通す部分及び複数であっても相互に異なる本数で通す部分を適宜配列で繰り返すように組み合わせ、さらに経糸1を設けない部分が連続する数を前記A部分より増やすことにより、経糸1の織成密度がA部分よりさらに低い粗の部分(B部分)をつくり出している。
また、A部分と同様に、経糸1を設けない部分があるA部分に位置している経糸(図4では符号12を付与している)は、経糸12の密度が低いことにより形成された空間に入り込むように位置して、特に密の部分(D部分)から遠い内方のものは、緯糸2による締め付けが緩いため大きく蛇行している。
【0034】
(C部分)
図5ないし図7を参照する。
C部分では、二列の前記B部分の間の中間に位置する三列の前記A部分に交わるように模様が設けられている。この模様は、一つの模様において緯糸2を四箇所で表面側に表して、つまり経糸1に被さるように表してつくられている。
すなわち、中央のA部分の経糸11及びD部の一部の経糸1を連続して跨ぐように、四本の緯糸21がA部分の緯糸2方向両側のD部分から抜き出され飛ばされている。また、これら四本の緯糸21と経糸11方向へ所要の間隔をおいて、同様にA部分をまたぐように、四本の緯糸22がA部分の緯糸2方向両側のD部分から抜き出され飛ばされている。
【0035】
また、経糸1方向において前記各緯糸21と各緯糸22の間には、前記中央のA部分の両側の他のA部分から、中央のA部分の経糸11及び二箇所のD部の経糸1を連続して跨ぐように六本の緯糸23が抜き出され飛ばされている。さらに、中央のA部分及びその両側のD部分の一部において経糸11、1が表面側に出るように、つまり六本の緯糸23に被さるように抜き出され飛ばされている。このように、多数の緯糸2を連続して跨ぐように経糸1を飛ばし、前記緯糸23を飛ばす織成とも相まって表裏方向に嵩高となるようにすることもできる。このC部分は、織物の表裏面のうち一方の面に緯糸2のみ、他方の面に経糸1のみが表れた嵩高部(符号省略)を含んでいる。なお、嵩高部の形成は、前記位置に限定せず、例えばD部分に収まるように経糸または緯糸を他方に対し飛ばして設けることもできる。
【0036】
これにより、各緯糸23は中央で経糸11、1によって分断されたように見える。なお、経糸1(11、12)は緯糸2(21、22、23)と互いに色を違えてあり、この色の違いで模様の識別がしやすくなっている。このように、C部分の模様は、表面に表れた各緯糸21、22及び二箇所の緯糸23によって形成されている。
【0037】
(D部分)
経糸1と緯糸2を、糸の間が緊密になるように平織りした部分である。
【0038】
(作 用)
縮織物Tは、平織りを行うための一般的な織成機械を使用して織成される。この平織りにおいては、経糸1の織成密度の粗の部分に位置する経糸1、つまりA部分の経糸11及びB部分の経糸12は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によってあらかじめ処理されたものが使用されている。A部分の経糸11及びB部分の経糸12は、それら自身が直線的でなく、うねるように蛇行しているので、平織りにしたときに緯糸2からの干渉を受けて織成時の位置から次第に移動する。この移動は、各経糸11、12のうねりの大きさや各緯糸2の締め付け力のばらつき等により、各部で移動量に差が出るので、各経糸11、12は織成空間部(経糸のない部分)に入り込むように移動して、図2、図4、図5に示すように大きく蛇行すると共に布面全体には細かな波状の凹凸が形成される。
【0039】
このように、本発明に係る縮織物の製造にあたっては、従来の縮織物のように、撚りの強さの異なる糸を使用して織成したり、経糸の張力を変化させて織成するというような、手間のかかる煩雑な作業をする必要がなく、前記のように経糸1(11、12)と緯糸2を通常通り平織りにすることで、しじら織りのような独特の風合いを持つ縮織物Tをつくることが可能となる。
【0040】
そして、縮織物Tは、経糸1の織成密度の密の部分であるD部分により十分な強度を有し、かつ粗の部分であるA部分(狭幅粗部)とB部分(広幅粗部)により十分な通気性を有している。A部分においては、経糸11がない部分の隙間により良好な通気性を備えている。さらに、B部分においては、経糸12がない部分の間隔がA部分より広いので、通気性はより良好になる。
【0041】
また、緯糸2の方向における幅が広いB部分を緯糸2の方向に所要間隔で設け、これらB部分の間に緯糸2の方向における幅が狭いA部分を五箇所に設け、さらに緯糸21、22、23で表した模様を有するC部分をA部分と交わるように設けているので、特に見た目からくる風合いがきわめて特徴的であると共に、通気性がより良好な縮織物を提供することができる。
【0042】
しかも、緯糸2の方向における幅が狭いA部分の間で複数の経糸1を連続して跨ぐように緯糸2(21、22、23)を飛ばして(または表面側に抜いて)、表面に表れた緯糸21、22、23で模様を形成したC部分は、その模様がおもしろいものとなる。なお、C部分は、本実施の形態ではいわば賽子の五の目の配置を一単位として設けられているが、これに限定するものではなく、例えば前記単位で中央のC部を中心に上下左右に配置したり、中央のC部を挟んで上下のみ、左右のみ、あるいは中央のC部をなくして四箇所に配置するなど、適宜配置で設けてもよい。
【0043】
また、緯糸21、22、23を飛ばした部分の経糸1、11が地合いが緩んだ状態で多層構造となって表裏方向に嵩高になるので、その嵩高部が布面からやや突出して使用者の体表に接触する部分となり、他の布面と体表との間に空隙をつくり、互いの密着を防止するので通気性がよくなる。さらに、表裏方向に嵩高になることにより各糸間の間隙が広がる(粗となる)ので、その部分による通気が可能または良好になり、縮織物T全体の通気性が向上する。
【0044】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る縮織物の経糸と緯糸の織成状態を示す要部平面図。
【図2】図1におけるA部の要部拡大説明図。
【図3】図2におけるI−I断面図。
【図4】図1におけるB部の要部拡大説明図。
【図5】図1におけるC部の拡大説明図。
【図6】C部を裏側からみた拡大説明図。
【図7】図5におけるII−II断面図。
【符号の説明】
【0046】
T 縮織物
1 経糸
11 経糸
12 経糸
2 緯糸
21 緯糸
22 緯糸
23 緯糸
A部分 狭幅粗部
B部分 広幅粗部
C部分 模様部
D部分 地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、前記粗の部分は緯糸方向における幅が異なる複数種類の粗の部分が混在している、
縮織物。
【請求項2】
経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、
前記粗の部分は、緯糸方向における幅が比較的広い広幅粗部を緯糸方向に所要間隔で設け、広幅粗部の間に緯糸方向における幅が広幅粗部より狭い狭幅粗部を複数設けた配列となっており、
前記広幅粗部と狭幅粗部に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、広幅粗部と狭幅粗部を構成する織成空間部において蛇行している、
縮織物。
【請求項3】
狭幅粗部と密の部分が略同幅であり、一対の広幅粗部の間に複数の狭幅粗部と密の部分を有する、
請求項2記載の縮織物。
【請求項4】
所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばし、または/及び所要数の緯糸を連続して跨ぐように経糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸または及び経糸で模様を形成した、
請求項1、2または3のいずれかに記載の縮織物。
【請求項5】
緯糸方向における幅が狭い狭幅粗部の間で所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸で模様を形成した、
請求項2、3または4のいずれかに記載の縮織物。
【請求項6】
経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、
所要数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばし、または/及び所要数の緯糸を連続して跨ぐように経糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸または及び経糸で模様を形成した、
縮織物。
【請求項7】
経糸と緯糸を平織りにし、布面に細かな凹凸を形成した縮織物であって、
経糸の織成密度が粗の部分と密の部分が緯糸方向へ適宜配列で設けられており、粗の部分に位置する経糸は、湯または水に通して乾燥させる縮み処理によって処理され、粗の部分を構成する織成空間部において蛇行しており、
経糸の織成密度が粗の部分の間で複数の経糸を連続して跨ぐように緯糸を飛ばして、表裏面のうち一方の面に緯糸のみ、他方の面に経糸のみが表れた嵩高部を所要箇所に設け、該嵩高部に表れた緯糸で模様を形成した、
縮織物。

【図3】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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