説明

繊維の染色物又はカラー印刷物の後処理

少なくとも一種の水溶性染料(F)を繊維材料(T)に用いて得られた、染色物またはカラー印刷物の後処理剤として、エーテルアミンポリマー(P)を使用する。特に、塩素堅牢性を改善するための後処理剤の使用、後処理された染色物またはカラー印刷物を製造する方法、及び特許請求の範囲で定義する特定の後処理剤の組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性染料を用いて製造された繊維の染色物又はカラー印刷物の、ある種の高分子量エーテルアミンによる後処理に関する。特に、塩素堅牢度を改善する目的で行われる後処理に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維分野における市場と流行の要求に応えるために、特定の種類の基材に適した染料を用い、繊維製品の多くは染色し又はカラー印刷した形態で製造されている。それゆえ、水溶性染料で染色できる繊維基材、主にセルロース、ポリアミド及び着色に関連する基材は、さまざまなカテゴリーの水溶性染料で染色することができる。これらの基材に対する水溶性染料の主なカテゴリーはアニオン染料とカチオン染料であり、具体的には繊維反応染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料及び硫化染料のカテゴリーのものである。所望の色彩的効果を得る目的で、基材、染料、及び染色条件又は印刷条件が選択され、その選択次第で染色物及び印刷物は様々な堅牢性を示しうる。その堅牢性の程度は非常に幅広く、特定の用途及び要求によってはしばしば不十分である。染色又は印刷した材料が使用されることになる特定の用途によっては、その様々な堅牢度に対する要求がますます増大している。それゆえ、本技術分野における特別な課題は、染色物及び印刷物のある種の堅牢性を改善する方法を見出すことである。この課題を解決する手段の1つとして、染色物及び印刷物のある種の堅牢性を改善するのに適した定着剤を用いて、このような染色物又は印刷物を処理することがある。米国特許第4599087号、第4718918号及び第4737576号によれば、例えば、このような染色物及び印刷物のある種の湿潤堅牢性を改善するために、それらを所定のオリゴアミンとエピクロロヒドリンの重縮合物を用いて後処理することが知られている。英国特許第1114036号には、硫化染料を用いて製造された染色物を、ある種のモノ又はオリゴアミンとエピクロロヒドリンの縮合物を用いて後処理すると、硫化染料の染色物の湿潤堅牢性が改善することが記載されている。さらに多くの文献は、このような染色物及びカラー印刷物のある種の湿潤堅牢性を改善することに関連している。それらは、オリゴアミンを、シアナミド、ジシアンジアミド、グアニジン又はビグアニドと縮合させた縮合物を用いた後処理によるものであり、その縮合物は場合によってはさらに別の反応剤とも縮合している。そのため、米国特許第4410652号及び第4452606号には、オリゴアミンを、シアナミド、ジシアンジアミド、グアニジン又はビグアニドと縮合させた縮合物に、樹脂形成性のある種のアミド化合物のメチロール誘導体、例えば尿素、メラミン又はウロン、を一緒に縮合させた縮合物を用いて後処理することが記載されている。米国特許第4439203号では、オリゴアミンとジシアンジアミドの縮合物に、エピクロロヒドリンをさらに反応させた縮合物、又はホルムアルデヒド単体を、又はホルムアルデヒド及びジヒドロキシアルキレンウレアもしくはジメチルエーテルの混合物をさらに反応させた縮合物を用いて後処理することが記載されている。米国特許第4764585号では、米国特許第4410652号及び第4439203号に従い、後処理を改良したことが記載されている。ここでは、所定の触媒を用いてオリゴアミンを、シアナミド、ジシアンジアミド、グアニジン又はビグアニドと縮合させている。米国特許第2649354号では、オリゴアミンとシアナミド又はジシアンジアミドの縮合物を用いて、直接染料を用いて製造された染色物を後処理することが記載されている。汗及び洗濯に対する堅牢性について言及している米国特許第4737576号を除き、他の全ての文献は、これらの湿潤堅牢性の改良について、様々な堅牢性のうち主に水又は洗濯に対するものに言及しているにすぎない。
【0003】
しかしながら、本技術分野における特別な問題は、塩素堅牢性、すなわち塩素の有害な作用に対する染色物又はカラー印刷物の堅牢性である。この塩素の有害な作用は、染色又は印刷した繊維と接触する水、例えばプール、家庭(例えば洗濯で使われる)又は産業で使われる塩素消毒した水の中に存在する、活性塩素によって生じうる。ここでは、例えば殺菌剤として活性塩素が用いられており、さらには、カリウム又はナトリウムの次亜塩素酸塩(例えば、Eau De Javelle又はEau De Labarraqueとして、当業界で知られている)の水溶液中で漂白するときに生じる効果のために、活性塩素が用いられている。当業界で知られているように、そして例えばT.FujitaとT.Tamiyaの「Improvement of the fastness to chlorinated water of reactive dyeings」、染色工業(1982),30(5),246−254でも記載されているように、通常、定着剤は塩素堅牢性を改善する効果を持たない。それどころか、反応染料の染色物の塩素堅牢性を低下させてしまうことが時々あり、特に、湿潤堅牢性を改善する定着剤であって、主にジシアンジアミドの縮合型ポリマーのカテゴリーに属するもの、及び4級アンモニウム塩型に属するものについては顕著である。例えば塩基性染料、酸性染料、媒染染料、建染染料、硫化染料、直接染料又は繊維反応染料などのような、アニオン又はカチオン染料で例示される水溶性染料を用いて製造した繊維の染色物及び印刷物は、前述の特許に記載された方法に従って後処理したとしても、塩素が影響して特性が損なわれやすい。
【0004】
米国特許第4410652号には、追加の樹脂仕上げについても記載してあり、定着した反応染料の塩素堅牢性が改善される可能性についても述べられているが、樹脂仕上げは繊維の風合いを多少なりとも変えてしまう。
【0005】
米国特許第4424061号では、着色した綿繊維を、ある種のジアミンと加水分解性タンニンを組み合わせて後処理することが記載されている。この方法によれば塩素堅牢性は改善されうるが、このタンニンは染色物をいくらか暗色化してしまう。所定のアミンを単体で用いて後処理を行うことも記載されているが、反応染料又は直接染料で染色された染色物について例えば表に記載された測定値をみると、特に高い塩素濃度において又は直接染料を用いて製造した染色物については、塩素堅牢性の改善は目覚しいものではない。
【0006】
特開昭61−132691号公報では、例えば、無水マレイン酸とエチレンジアミンのような、ジカルボン酸とジアミンから得られたアミドオリゴマーを用いて染色物の後処理を行うことが記載されており、反応染料の染色物の塩素堅牢性が改善されている。これら生成物は特に直接染色的ではないためパディングにより適用されており、それは洗濯を繰り返し行ったときの耐久性が低いことに現れている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、塩素堅牢性を改善する後処理が繰り返し洗濯しても十分に安定である一方、染色物又は印刷物の固有の色相及び光沢、並びに繊維基材の風合いを高い水準で維持しながら、繊維の染色物及びカラー印刷物の塩素堅牢性を改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに本発明者らは、これらの染色物又はカラー印刷物を、以下に定義するある種の高分子量エーテルアミン(P)を用いて後処理することにより、特定の染色物及び印刷物の塩素堅牢性及びその塩素堅牢性の洗濯耐久性が顕著に改善されうることを見出した。同時に、染色物の固有の色相及び光沢、並びに、特に吸尽法によって後処理した場合に、その特定の処理を行った繊維の固有の風合いもまた、十分に維持されている。
【0009】
本発明は、所定の高分子量エーテルアミンを、所定の繊維の染色物及びカラー印刷物の後処理剤として、特に塩素堅牢性を改善する目的で使用することに関する。また、本発明は、後処理された染色物及び印刷物を製造する方法に関し、さらに、特定の後処理剤及びその組成物、並びにそれらの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は第1に、繊維材料(T)に対して少なくとも1種の水溶性染料(F)を用いて得られた染色物又は印刷物のための後処理剤(TF)として用いられる、高分子量エーテルアミン(P)の使用を提供する。ここで、高分子量エーテルアミン(P)は、(A)を(B)と付加して生成する塩素末端を有する付加物(E)を、(C)と、さらに必要に応じて(D)と縮合反応させることによって得られる。或いは、脱塩化水素反応によって塩素末端を有する付加物(E)を対応するエポキシド(Ex)にし、その(Ex)を、(C)と、さらに必要に応じて(D)と反応させることによっても得られる。(A)は、酸素によって分断されていてもよい炭化水素基に、1分子あたりx個(xは2〜6の範囲内である)のヒドロキシ基が結合しているオリゴヒドロキシ化合物、又はその2種以上の混合物である。(B)は、オリゴヒドロキシ化合物(A)1モルあたりmモル(mは2以上であるが1.2×x以下である)のエピクロロヒドリンである。(C)は、塩基型において窒素に結合した反応性水素原子を2個以上含むが3級アミノ基は含まない、少なくとも1種のアミノ化合物である。(D)は、少なくとも1種の脂肪族2級モノアミン及び/又は1級もしくは2級アミノ基と3級アミノ基とを含む少なくとも1種の脂肪族ジアミンである。また、高分子量エーテルアミン(P)は、場合によってはプロトン化されていてもよい。
【0011】
高分子量生成物(P)は、それ自体は既知である、付加反応、脱塩化水素反応及び/又は縮合反応で作ることができる。特に、プロトン化されていてもよい高分子量エーテルアミン(P)の製造方法は、(A)を(B)と反応させた塩素末端を有する反応生成物(E)を、水系媒体中で(C)と、さらに必要に応じて(D)と反応させること、及び生成物はプロトン化されていてもよく、好ましくはpH<6であることに特徴がある。この方法の変形によれば、(E)を脱塩化水素反応させて(Ex)にし、それから(C)と、さらに必要に応じて(D)と反応させる。こうして、生成物(P)は、水性組成物の状態で得ることができ、必要であれば得られた水性組成物を乾燥することもできる。
【0012】
オリゴヒドロキシ化合物(A)は既知の化合物を用いることができる。特に、x個のヒドロキシ基が低分子炭化水素基に結合しており、この炭化水素基は好ましくは飽和脂肪族炭化水素基であって特に炭素原子数2〜6であり、ヒドロキシ基の数はこの炭化水素基の炭素原子数以下である、オリゴヒドロキシ化合物を使用することができる。さらに、x個のヒドロキシ基が芳香脂肪族基に結合しているか、又はx個のヒドロキシ基が、1つ以上の酸素原子で分断されている脂肪族炭化水素基(好ましくは飽和している)で、モノ又はポリエーテル鎖を形成している基に結合している、オリゴヒドロキシ化合物(A)も使用できる。このエーテル鎖については、2つの酸素原子にはさまれた単独の炭化水素基は低分子であり、好ましくは炭素原子数が2又は3である。
【0013】
芳香脂肪族化合物(A)としては、例えば既知のビスフェノール類が挙げられ、ビスフェノールF、すなわち4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンと、ビスフェノールA、すなわち2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンが例示される。
【0014】
好ましいオリゴヒドロキシ化合物(A)は、以下の一般式で表すことができる。
【化1】

(xは2〜6の範囲内で、Xは炭素原子数2〜6のx価の飽和脂肪族炭化水素基であるか、又は、xが2の場合、1個以上の酸素原子で分断されている飽和脂肪族炭化水素基であってモノ又はポリエーテル鎖を形成しており、2個の酸素原子にはさまれた単独の炭化水素基が2又は3個の炭素原子を含むx価の基である。)
【0015】
(A)として、特に下式のオリゴヒドロキシアルカンに言及しておく価値がある。
【化2】

(X0は炭素原子数2〜6のx価の飽和脂肪族炭化水素基であり、xは2〜6の範囲内であって、X0の炭素原子数以下である。)
【0016】
特に(A)は、以下に説明する、(A1)、(A2)及び1種以上の(A1)と1種以上の(A2)の混合物から選択することができる。(A1)は、x1個(x1は3〜6の範囲内でアルカン基の炭素原子数以下である)のヒドロキシ基を有する炭素原子数3〜6のオリゴヒドロキシアルカン、又はその2種以上の混合物である。(A2)は、炭素原子数2〜6のアルカンジオールもしくはアルキレン部の炭素原子数が2もしくは/及び3であるポリアルキレングリコールであるジオール、又はその2種以上の混合物である。
【0017】
好ましいオリゴヒドロキシアルカン(A1)、すなわちオリゴヒドロキシアルカン(A11)は、以下の一般式で表すことができる。
【化3】

(X1はx1価のC3-6アルカン基であり、x1は3〜6の範囲内で3からX1の炭素原子数までの数値である。)
【0018】
式(Ia)のオリゴヒドロキシアルカンは、既知の化合物が使用できる。例えば、グリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン、及び炭素原子数5又は6の通常の炭水化物の還元生成物、例えばアラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール及びダルシトールである。
【0019】
式(Ia)の好ましい化合物(A11)は下式で表される。
【化4】

主に、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール及びダルシトールであり、これらの中で特に好ましくはグリセリン及びソルビトールである。
【0020】
好ましいジオール(A2)は以下の一般式で表される。
【化5】

(X2は、炭素原子数2〜6、好ましくは2〜4の2価のアルカン基であるか、又は、アルキレン基の炭素原子数が2又は3である2価の飽和脂肪族モノ又はポリエーテル基である。)
【0021】
ジオール(A2)として、特に、下式のアルカンジオール(A21)及び飽和脂肪族エーテルジオール(A22)が言及される。
【化6】

(X3はC2-6アルキレン、好ましくはC2-4アルキレンである。)
【化7】

(X4はC2-3アルキレンで、x4は1から20の範囲内である。)
【0022】
2-6アルカンジオール(A21)は、例えば以下のものを含む。1,2−又は1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−又は1,5−ペンタンジオール、又は好ましくはC2-4モノアルキレングリコールであり、それらの中で以下の式のものが好ましい。
【化8】

(X3’はC2-4アルキレンである。)
例えば、α−又はβ−ブチレングリコール、プロピレングリコール及びエチレングリコール、好ましくはC2-3モノアルキレングリコール、すなわちプロピレングリコール及びエチレングリコールである。
【0023】
エーテルジオール(A22)のアルキレン基X4は、全て同じであっても一部又は全部が違っていてもよい。好ましくは、アルキレン基X4の少なくともいくつかがエチレンであり、より好ましくは1分子中のアルキレン基X4の少なくとも50%がエチレンであって、もっとも好ましくは全てのアルキレン基X4がエチレンである。エーテルジオール(A22)は、好ましくは式(Id)のオリゴアルキレングリコールであって、平均数であるx4が好ましくは1〜9であり、もっとも好ましくは1〜7であるものである。
【0024】
炭素原子数4〜6の式(Ia’)の化合物は、ラセミ混合物であっても、単一の光学異性体であっても使用することができる。それらは室温で固体であり、それゆえに好ましくは、1種以上の液状化合物との混合物として用いられる。液状化合物は、例えばグリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選択され、そうすることによって、混合物は少なくとも反応温度で液体となる。このような混合物の化学量論比は、選択した反応温度で混合物が液体であるように適当に選ばれる。炭素原子数2〜3の化合物(A)1質量部、特に式(I)の化合物(A)1質量部と、炭素原子数4〜6の式(Ia)又は式(Ia’)の化合物1〜4質量部を混合すると、液体となることが分かっている。
【0025】
本発明の好ましい特徴によれば、ジオール(A2)もしくは/及びグリセリンを使用することができ、又はC2-3モノアルキレングリコールもしくはグリセリンをx1が5もしくは6である式(Ia’)の化合物と混合した混合物を使用することができる。ジオール(A2)は、好ましくは(A22)、より好ましくは(A21)、特にC2-3モノアルキレングリコールである。ジオール又はグリセリンをx1が5又は6である式(Ia’)の化合物と混合した混合物のようなものを使用した場合、ジオール又はグリセリンと、その別の化合物の質量比は広い範囲に及び、例えば0.25:1から10:1、好ましくは0.5:1から5:1、より好ましくは0.8:1から2:1である。
【0026】
オリゴヒドロキシ化合物又は混合物である(A)に対する、エピクロロヒドリン(B)のモル比mは、(A)1モルに対して(B)2〜1.2×xモルの範囲内である。(A1)については、オリゴヒドロキシ化合物又は混合物(A1)1モルに対して、エピクロロヒドリンは好ましくは2.2〜1.2×xモルの範囲内であり、より好ましくは2.5〜1.1×xモルの範囲内である。ジオール(A2)については、ジオール(A2)1モルに対して、エピクロロヒドリンは好ましくは2〜2.2モルの範囲内である。
【0027】
(A)と(B)の反応は、好ましくは他の溶剤の不存在下かつ触媒の存在下で行われる。触媒は例えば、4塩化スズ又は好ましくは3フッ化ボロンのようなルイス酸が例示され、それらは例えばエーテルや酢酸と錯形成した状態にある。この反応は、エピクロロヒドリンのヒドロキシ基に対する付加反応であり、エポキシ基の開環と2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル−1基の生成を伴う。この反応は発熱反応であり、例えば冷却するなどして反応温度を100℃未満に保持することが好ましく、60〜85℃の範囲内に保持することがより好ましい。エピクロロヒドリンは、(A)の反応可能なヒドロキシ基と反応し、反応が進行するにつれて、反応中に生成した2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル−1基のヒドロキシ基とも反応する。そのため、(A)のいくつかのヒドロキシ基は、特に式(I)の化合物においては、(B)と反応しないまま残っている。モル比、オリゴヒドロキシ化合物の官能基数(例えばx又はx1の値)、及び(A)又は(A1)の光学立体配置、主に式(Ia)又は式(Ia’)の化合物(特にx1が4から6の場合)の光学立体配置によっては、(A)のヒドロキシ基が(B)と反応する程度は様々であり、もともと(A)に存在したヒドロキシ基全数のうち、反応するのは例えば50〜95%の範囲であり、通常75〜95%の範囲である。
【0028】
得られた付加物(E)は塩素末端を有する生成物であり、式(I)を参照して以下の式で示される。
【化9】

(x0は(B)と反応していないXに結合しているヒドロキシ基の数で、(B)によって導入されたヒドロキシ基の対応する数の方が大きい。合計Σm1は、平均すると(x−x0)×m1に相当するがmと等しい。)
【0029】
前述の、(A)のヒドロキシ基が(B)と反応する程度から推測できるように、x0は例えば0〜0.5×mの範囲であってよく、通常0.05×m〜0.25×mの範囲であってよい。
【0030】
下式の(x−x0)個のそれぞれの基については、数値m1は同じでも違ってもよく、通常m1は1又は2を表す。
【化10】

【0031】
(E)から(Ex)への脱塩化水素は、それ自体が従来から知られている反応条件で引き起こされる。例えばこれまで述べたように、脱塩化水素に適した塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、一般的には水酸化ナトリウムを添加して、例えば初期のpHを9〜12にする。式(I)又は(II)を参照して、脱塩化水素された生成物は以下の式で表せる。
【化11】

m1>1の場合、(C)と、さらに必要に応じて(D)との反応は、エポキシ環への付加反応と、クロロヒドリン実体との縮合が複合したものになる。
【0032】
そのようにして生成した付加物(E)又はその脱塩化水素誘導体(Ex)は、その後(C)と、さらに必要に応じて(D)と、(E)又は(Ex)1モルあたり(C)nモル及び(D)pモルの比率で反応する。
【0033】
アミノ化合物(C)は既知の化合物を使用でき、特にアンモニア及び脂肪族モノ又はオリゴアミンである。詳しくは、(C’)塩基型で窒素原子に結合した2個の反応性水素原子を含むモノアミノ化合物で、さらに詳しくは、(C1)アンモニア、及び(C2)少なくとも1種の脂肪族1級モノアミン、例えばC1-3アルキルアミン又はC2-3アルカノールアミンである。さらには、(C”)塩基型で2個の窒素原子に結合した2個以上の反応性水素原子を含むオリゴアミンで、2個のアミノ窒素原子間の脂肪族連結基は便宜上低分子で、好ましくは炭素原子数が6以下、及びアミノ窒素上の任意の置換基も便宜上低分子で、好ましくは炭素原子数が6以下、より好ましくは炭素原子数が1〜3であり、さらに詳しくは、(C3)2個の2級アミノ基を含むがさらなるアミノ基を含まない少なくとも1種の脂肪族ジアミン、及び(C4)1個以上の1級アミノ基とさらに1個以上の1級もしくは2級のアミノ基を含む少なくとも1種の脂肪族オリゴアミンである。
【0034】
アンモニアは、塩基型で3個の水素を有し3官能とみなすことができるが、3番目の水素のクロロヒドリンとの反応は、少なくとも部分的に立体障害があるためより難しい。そのため、本反応に用いる際は、アンモニアは2官能のアミノ化合物として使用し又はみなされる。
【0035】
アミン(C”)及び(D)においては、2個のアミノ窒素原子の間の脂肪族連結基は便宜上低分子であり、好ましくは炭素原子数は6以下であり、より特別には、炭素原子数は2〜6である。さらに、アミノ窒素上の任意の置換基も便宜上低分子であり、好ましくは炭素原子数は6以下であり、より好ましくは炭素原子数は1〜3である。脂肪族連結基及び置換基は好ましくは飽和している。
【0036】
(C3)として、例えばN,N’−ジメチル−エチレンジアミンが挙げられる。
【0037】
1個以上の1級アミノ基とさらに1個以上の1級もしくは2級のアミノ基を含む少なくとも1種の脂肪族オリゴアミンとした(C4)の定義は、特に、(C4)として、1個の1級アミノ基とさらに1個の1級又は2級のアミノ基を含み、なおもさらなるアミノ基がある場合にはそれが2級である、少なくとも1種の脂肪族オリゴアミンを意味する。
【0038】
アミン(C4)としては、特に、C2-6アルキレン基で連結された既知の脂肪族オリゴアミンを使用することができ、それは1個又は2個の1級アミノ基を含み、さらなるアミノ基は2級である。1個以上のアミノ基が1級アミノ基でさらなるアミノ基が2級である限り、末端のアミノ窒素が反応を妨げない脂肪族置換基、好ましくは低分子量のアルキル又はヒドロキシアルキルで置換されていてもよい。オリゴアミン(C4)は、好ましくは6個以下のアミノ基を含み、より好ましくは2〜4個のアミノ基を含む。
【0039】
(C)は好ましくは(C4)であり、より好ましくは下式で表される少なくとも1種のオリゴアミン(C4’)である。
【化12】

(R1は水素又はC1-3アルキル、yは1〜3、Yはyが2〜3の場合C2-3アルキレン、yが1の場合C2-6アルキレン)
【0040】
yが2〜3の場合、連結アルキレンYは、エチレン、プロピレン−1,2又はプロピレン−1,3であってよく、中でもエチレン及びプロピレン−1,3が好ましく、エチレンが特に好ましい。yが1の場合、連結アルキレンYは、例えばエチレン、プロピレン−1,2、プロピレン−1,3又はテトラからヘキサメチレンであってよく、中でもエチレン、プロピレン−1,3及びヘキサメチレンが好ましく、特にプロピレン−1,3、さらにはエチレンが好ましい。R1がC1-3アルキルを表す場合、好ましくはエチル又はメチルを意味し、より好ましくはメチルである。もっとも好ましくは、R1はメチル又は特に水素を意味する。指数yは好ましくは2〜3の範囲内である。
【0041】
アミン(D)としては、多くとも1個の1級又は2級アミノ基を有する限りにおいて、少なくともいくつかのアミノ窒素が反応を妨げない脂肪族置換基で置換されている、既知の脂肪族モノ又はジアミンを使用することができ、置換基は好ましくは低分子アルキル又はヒドロキシアルキルである。ジアミンにおいては、連結基は好ましくはC2-6アルキレンであり、より好ましくはC2-3アルキレンである。
【0042】
(D)は好ましくは(D1)であって、(D1)は下式で表される少なくとも1種のアミノ化合物である。
【化13】

(ZはC2-6アルキレン、zは0又は1、R2はC1-3アルキル、R3はC1-3アルキル)
【0043】
連結アルキレンZは、例えばエチレン、プロピレン−1,2、プロピレン−1,3又はテトラからヘキサメチレンであってよく、中でもエチレン、プロピレン−1,3及びヘキサメチレンが好ましく、特にプロピレン−1,3が好ましい。指数zは好ましくは1である。R2は好ましくはエチル又はメチルを意味し、もっとも好ましくはメチルである。R3は好ましくはR2と同じであってエチル又はメチルを意味し、もっとも好ましくはメチルである。R1はもっとも好ましくは水素を意味する。
【0044】
好ましくは(P)は、(E)又は(Ex)と(C4’)との反応生成物である。ここで、(A)は式(I’)の化合物又は混合物であり、特に式(Ia’)の化合物もしくは式(Ic’)の化合物、又はこれら2種以上の混合物である。またここで、(C4’)は式(III)であり、R1は水素又はメチルを意味し、Yはエチレン、プロピレン又はヘキサメチレンを意味する。これらの中で特に好ましくは、(A)がグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びこれら2種以上の混合物から選択されるものであり、(C4’)がエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン及びこれら2種以上の混合物から選択されるものである。
【0045】
(B)の(A)又は(A1)それぞれとの反応は、実際のところは定量的であるため、数字mは(E)に結合している末端塩素原子の数をも表している。(E)又は(Ex)に対する(C)及び(D)の比率、並びに[(C)+(D)]1モルあたりの塩基性アミノ基の総数tは、非プロトン化型についていえば、高分子量生成物(P)が生成して、(E)の塩素原子が(C)とさらに必要に応じて加えられる(D)と少なくとも50%、好ましくは60%を超えて、より好ましくは70%を超えて反応するように、適当に選択される。(Ex)に対する(C)及び(D)の比率も同様に選択される。非プロトン化型の[(C)+(D)]に存在する塩基性アミノ基についていえば、数字tは[(C)+(D)]のモル当量物の総数をも示している。好ましくは、(C)及び(D)に存在する1級及び2級アミノ基についてのみ考慮した[(C)+(D)]のモル当量物の総数t1は、mよりも過剰である。
【0046】
高分子量エーテルアミン(P)を生成する重縮合反応及び/又は付加重合反応が起こるように、n及びpのモル比は適宜選択される。好ましくは0.4×m<n<mであり、より好ましくは0.5×m≦n<mである。pは0以上であり、好ましくはn+p<mである。
【0047】
(C)が(C’)の場合、(E)又は(Ex)1モルあたり、モル比にしてn’モルの(C’)を使用し、好ましくは0.4×m<n’<mであり、より好ましくは0.5×m≦n’<mである。(E)又は(Ex)1モルあたり、モル比にしてp’モルの(D)も反応している場合、好ましくはn’+p’<m及び2×n’+p’>mである。
【0048】
(C)が(C”)の場合、(E)又は(Ex)1モルあたり、モル比にしてn”モルの(C”)を使用し、好ましくは0.4×m<n”<mであり、より好ましくは0.5×m≦n”<mである。(E)又は(Ex)1モルにあたり、モル比にしてp”モルの(D)も反応している場合、好ましくは0.5×m<n”+p”<mである。
【0049】
本発明のある特定の態様においては(P)として(P1)を使用し、(P1)は、以下のようにして得られる。まず、(A1)を(B)と、オリゴヒドロキシ化合物(A1)1モルあたりモル比でm’モルのエピクロロヒドリンの比率で反応させる。m’は2より大きく、大きくとも1.2×x1である。その結果、塩素末端を有する付加物(E1)が得られ、(E1)から(Ex1)への脱塩化水素が起こることもある。その後、(E1)を(C4)と重縮合反応させるか又は(Ex1)を(C4)と反応させる。(E1)又は(Ex1)1モルあたり(C4)はモル比にしてn4モルであり、0.5×m’<n4<m’である。さらに必要に応じて(E1)又は(Ex1)1モルあたりモル比にしてp’モルの(D)を反応させてもよく、0≦p’<(m’−n4)である。(C4)+(D)の中にある塩基性アミノ基の総数t4は、(E1)に結合している塩素原子の総数よりも大きく、(P1)はプロトン化されていてもよい。
【0050】
本発明の別の態様では(P2)を使用し、(P2)は、以下のようにして得られる。まず、(A2)を(B)と、オリゴヒドロキシ化合物(A2)1モルあたりモル比でm”モルのエピクロロヒドリンの比率で反応させる。m”は2〜2.2の範囲内である。その結果、塩素末端を有する付加物(E2)が得られ、(E2)から(Ex2)への脱塩化水素反応が起こることもある。その後、(E2)又は(EX2)を(C”)と反応させる。(E2)又は(Ex2)1モルあたり(C”)はモル比にしてn”モルであり、0.5×m”≦n”<m”である。さらに必要に応じて(E2)又は(Ex2)1モルあたりモル比にしてp”モルの(D)を反応させてもよく、0≦p”<(m”−n”)である。(C”)+(D)の中にある窒素原子の総数は、(E2)に結合している塩素原子の総数よりも大きい。
【0051】
(C”)は好ましくは(C4)である。
【0052】
したがって(P1)の製造工程は以下の点に特徴がある。(A1)を(B)と、化合物(A1)1モルあたり(B)m’モルの比率で反応させ、塩素末端を有する付加物(E1)を得て、脱塩化水素されて(Ex1)になるものもある。次に(E1)又は(Ex1)を(C4)及び必要に応じて(D)と反応させ、その比率は上述するように、(E1)又は(Ex1)1モルあたり(C4)n4モルと(D)p’モルである。同様に、(P2)の製造工程は以下の点に特徴がある。(A2)を(B)と、化合物(A2)1モルあたり(B)m”モルの比率で反応させ、塩素末端を有する付加物(E2)を得て、脱塩化水素されて(Ex2)になるものもある。次に(E2)又は(Ex2)を(C4)及び必要に応じて(D1)と反応させ、その比率は上述するように、(E2)又は(Ex2)1モルあたり(C”)n”モルと(D)p”モルである。
【0053】
本方法の1つの態様における反応条件は、好ましくは(C)又は(C4)が、(E)又は(E1)又は(E2)のそれぞれの反応可能な末端塩素との縮合反応に十分であるように選択されており、(D)は不要である。
【0054】
(A)が(A1)であるときは、n+pの合計は好ましくは0.5×m〜(m−0.1)の範囲であり、より好ましくは0.5×m〜(m−0.2)である。
【0055】
pは好ましくは0〜2×nであり、例えば0である。(D)が使用される場合、pは好ましくは0.25×n以上であり、例えば0.25×n〜2×nの範囲である。
【0056】
[(C’)+(D)]に存在する塩基性アミノ基の総数は、好ましくは0.5×mより大きく、mより小さい。
【0057】
[(C”)+(D)]に存在する塩基性アミノ基、すなわち1級、任意の2級及び任意の3級塩基性アミノ基であり、好ましくは1級及び任意の2級塩基性アミノ基、の総数は、(E)に存在する塩素原子の総数より多い。その結果、(E)の中にある塩素原子は(C)及び任意の(D)と反応し、t>mであり、好ましくはt>1.2×mであり、より好ましくはt>1.5×mである。好ましくはt1もtと同様である。式(III)と(IV)についていえば、特にn×(y+1)+p×(z+1)>mであり、好ましくはn×(y+1)+p×(z+1)>1.2×mであり、より好ましくはn×(y+1)+p×(z+1)>1.5×mである。さらに特別には、n×(y+1)+p×z>mであり、好ましくはn×(y+1)+p×z>1.2×mであり、より好ましくはn×(y+1)+p×z>1.5×mである。(Ex)の比率も同様に選択される。
【0058】
[(C)+(D)]、特に[(C”)+(D)]、好ましくは[(C4)+(D)]に存在する1級アミノ基の総数は、[(C”)+(D)]に存在するジアミン(D)の3級アミノ基の総数の、又は[(C”)+(D)]に存在する2級モノアミン(D)の総数の、好ましくは2倍より大きく、より好ましくは2.5倍より大きい。その結果、ジアミン又は2級モノアミン(D)のいずれも消費されず、実際のところ生成物には4級アンモニウム基が存在しない。又は、もしジアミン又は2級モノアミン(D)が消費された場合でも、それらは4級アンモニウム基になりうるが、4級アンモニウム基及び4級以外のアミノ基の総数のうち比較的少ない比率で存在する。例えば存在する4級アンモニウム基と4級以外のアミノ基の総数の30%以下、例えば2〜30%であり、好ましくは存在する4級アンモニウム基と4級以外のアミノ基の総数の25%以下、例えば3〜25%である。それゆえ、得られる生成物には4級アンモニウム基が存在しないか、又は存在したとしても、存在する4級アンモニウム基と4級以外のアミノ基の総数の好ましくは30%以下、好ましくは25%以下である。
【0059】
ポリマー生成物(P)は、必要に応じて架橋していてもよい。
【0060】
(C)及び必要に応じて(D)の、(E)との縮合反応は、好ましくは水系媒体中で行われる。例えば、水系の反応混合物の全質量に対し、水分の含有量が10〜90%の範囲内であり、好ましくは20〜88%であり、好ましくは加熱してもよく、例えば30〜90℃の範囲内であり、好ましくは40〜70℃である。反応中、アミン(C)の塩基性及び存在する場合は(D)の塩基性のどちらも、アルキル化剤として使用される塩化物(E)を用いて(C)及び(D)のアルキル化が進行するのに十分であればよい。もし必要ならば、例えば水酸化カリウム、又は好ましくは水酸化ナトリウムのような強塩基を使用してもよい。反応混合物のpHは、好ましくは7〜10の範囲内である。(D)は例えば(C)と同時に添加してもよく、又は(C)の後に添加してもよい。もし、反応の際に、それだけでは全ての共有結合した塩素と反応するのに不十分であるような割合で(C)を使用した場合、必要な量の化合物(D)を(E)の反応を完結させるために添加できる。反応が完了したとき又は所望の程度に達したとき、反応混合物は既知の酸を添加して適当に酸性にする。既知の酸は、好ましくは塩酸、硫酸、又はリン酸のような無機酸、又は低分子脂肪族カルボン酸、例えば炭素原子数が1〜6である、ギ酸、酢酸、クエン酸又は乳酸などである。好ましくはpHは6未満であり、より好ましくは3.5〜5.5の範囲内であり、もっとも好ましくは4〜4.5である。エポキシド(Ex)のへ脱塩化水素は、適当な量のアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムを用いて、上と同様の条件で行われる。塩化物イオン滴定により、又は反応混合物の粘度を測定することにより、又はその両方により反応の進行を追跡できる。粘度測定によれば、経験に基づいた感覚で重合及び架橋の度合いを知ることができる。適当な塩化物イオン濃度は、例えば理論値の50%以上であり、好ましくは60%より大きく、より好ましくは70%より大きい。適当な粘度は、例えば5000cP以下であり、好ましくは200から3000cPである。
【0061】
好ましくは(A1)とアミン(C4)から、特に、以下の(PA)、(PB)及び(PC)が生成する。(PA)は、重合し、架橋し、プロトン化したエーテルアミン(P)であって、n4は0.4×m〜0.72×mの範囲内であり、p<0.25×n4である。(PB)は、重合し、プロトン化したエーテルアミン(P)であって、n4は0.72×m〜(m−0.1)の範囲内であり、p<0.25×n4であり、架橋していてもよい。(PC)は、重合し、架橋し、プロトン化したエーテルアミン(P)であって、n4は0.2×m〜0.6×mの範囲内であり、p≧0.25×n4である。
【0062】
(PA)及び(PB)においては、好ましくはp=0である。
【0063】
得られた多価のカチオン性ポリマー(P)は、少なくとも式(II)の化合物の誘導体として、以下の平均式で模式的に示される。
【化14】

(それぞれのWは独立して、それぞれ(C)又は(D)に由来する基であるが、2つ以上は(C)由来である。同一分子又は2つ以上の異なる分子の2つ以上の(C)に由来する記号Wは、(C)の重合反応、及び場合によっては(C)の架橋縮合反応に由来する架橋部分を共に形成する。)
【0064】
そのようにして生成した(P)を含む組成物、特に水性組成物(WP)は、すぐに使用することができ、また必要であれば、水で希釈するか又は蒸発によって(P)含量を調節することができる。また、これらの組成物を半透膜に通して膜ろ過することにより、脱塩し、必要に応じて濃縮することもできる。これらの組成物は顕著な安定性を有し、特に保管及び運搬に対しても安定であり、また熱や凍結の環境下でも安定である。
【0065】
製造した時点の水性組成物(WP)中の(P)の濃度は、例えば5〜60質量%の範囲内であり、好ましくは10〜60質量%の範囲内であり、より好ましくは12〜50質量%である。
【0066】
必要に応じ、製造した水性組成物は乾燥して、粉状又は粒状の生成物にすることができる。この場合、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを添加するなど、塩基を用いて適当に中和することにより、塩型から塩基型に変換してから乾燥してもよい。乾燥した粉状又は粒状の生成物は、必要に応じて、水と混合して再び水性組成物(WP)にすることができる。必要であれば、例えば塩酸などの酸を、塩基型をプロトン化するために一緒に混合することもできる。しかしながら、製造した時点の高濃度の水性組成物(WP)の状態で直接使用することが好ましい。
【0067】
前述の、ポリマーであり、状況に応じて架橋しているエーテルアミン(P)、又は必要に応じて前述の水性組成物の状態であるエーテルアミン(P)は、プロトン化型において多価のカチオン性であり容易に水で希釈することができる。これらはこのように希釈して使用でき、好ましくは高濃度の水性組成物(WP)の状態で使用されるが、必要に応じて、染浴に添加する前にあらかじめ適当な原液へとさらに希釈しておくこともできる。この場合、例えば1〜12質量%の範囲内の濃度になるように希釈する。
【0068】
基材(T)は、対応する水溶性染料で染色できる任意の繊維基材が適当である。繊維基材は、天然繊維、半合成繊維又は合成繊維であり、例えば、天然又は合成ポリアミド(例えばウール、シルク、ナイロン6、ナイロン66)、ポリウレタン、ポリアクリル及び/又はセルロース基材、特に非変性かつ非再生セルロース(例えば綿、麻、リネン)又は再生もしくは変性セルロース(酢酸セルロース、ビスコース、リヨセル)である。繊維基材はそれ自体が既知のどのような形状でもよく、繊維産業において染色又は印刷するのに適した形状であってよい。特に、紡糸の後の任意の適当な繊維処理工程での形状をした繊維基材、例えば糸条、糸、合成又は半合成(場合によっては表面加工されている)のモノフィラメント、糸条又はストランド、スパンボンデッドのポリアミド又はビスコース、綾に巻かれたボビン又はチーズ、布帛(特に織物、編物、タフト、テリー織布又はベルベット)、フェルト、又は製品や半製品の形状であってもよい。繊維の合成又は半合成のフィラメントもまた、中空ファイバー又はマイクロファイバーの形状であってもよい。合成繊維材料、又はセルロース材料を合成繊維材料(例えば、合成ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル又は/及びポリアクリル)と混合したものを染色又は印刷する場合、水溶性染料に加えて、対応する適当な他の染料、例えば分散染料又は/及び顔料を使用してもよい。特に好ましくは(T)が布帛の形状をしていて、特に織物又は編物製品であり、使用する染色システムによっては、連続処理可能な形状又は個々の物品の形状、例えばチューブ状又は拡布状であってもよい。
【0069】
水溶性染料(F)は例えばアニオン及びカチオン染料を含んでいてもよい。例えばColour Indexで定義されているように、塩基性染料、酸性染料、媒染染料、硫化染料(可溶性化した硫化染料、すなわちS−アルキルチオ硫酸塩、濃縮硫化染料及び硫化した建染染料をも含む)、建染染料、直接染料及び反応染料を含んでいてもよい。これら染料が水溶性であるということは、少なくとも処理条件においては、それらが水に溶解するということを意味している。硫化又は建染染料は、ロイコ型で適当に処理することができる。好ましくは(F)として、カチオン染料、硫化染料(ロイコ硫化染料として処理)、酸性染料、直接染料及び繊維反応染料を使用することができる。染料は、染色又は印刷する基材を十分に配慮して選択する。例えば、セルロース基材には特にカチオン染料、硫化染料(ロイコ硫化染料として処理)、直接染料及び繊維反応染料が、ポリアミド繊維及びポリウレタン繊維には特に酸性染料及び繊維反応染料が、アクリル繊維には特にカチオン染料が選択される。
【0070】
本発明の方法は特に、反応染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料又は硫化染料で製造された染色物及び印刷物に適している。
【0071】
任意の所望する従来の染色及び印刷方法が適当であり、吸尽法(吸尽染色に適した任意の既存の染色用容器で行われ、例えばJ型染色機、ウインス、ジッガー、液流染色機が含まれる)、浸漬法(主にパディング及びディッピング)及び捺染法が例示される。
【0072】
吸尽染色法は、任意の所望する従来の浴比(例えば2:1〜100:1)及び温度(例えば40℃から沸点の範囲内、通常は60〜98℃、又はいわゆる低温染色用の反応染料剤であれば15〜50℃、通常は20〜40℃)で行うことができる。特に適した染色条件は、基材及び染料の特定の種類について、既知である条件又は推奨される条件である。
【0073】
反応染料を用いてセルロース繊維材料を染色する場合、既知の塩(例えば無水芒硝又は塩化ナトリウム)を適当な濃度、例えば、5〜80g/Lで染浴に添加することができる。所望の染色時間経過後に、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウム)を、染料を反応させて染着するために添加することが有利である。このときのpHは有利には9〜13の範囲内であり、好ましくは10〜12である。その後、いずれも既知の方法であるソーピング及び/又は洗浄、及びリンス、さらに必要に応じて乾燥することにより吸尽染色が完了する。
【0074】
直接染料を用いてセルロース繊維材料を染色する場合、ソーダの添加により染浴は適当にアルカリ性にされており(例えばpHが8〜11)、さらに既知の塩(例えば無水芒硝)を適当な濃度、例えば、5〜80g/Lで染浴の一部として添加してもよい。例えば20〜40℃の範囲内の温度で始めて、所望の吸尽温度、例えば60〜110℃の範囲内まで加熱することにより染色を行ってもよい。その後、いずれも既知の方法である、洗浄及び/又はリンス、さらに必要に応じて乾燥することにより染色が完了する。
【0075】
硫化染料を用いた染色は、強アルカリ性、好ましくはpH≧10、特にpHが10〜14の範囲内で、既知の還元剤(例えば還元糖又は/及びスルフィド)の存在下で適当に行われる。還元剤は、還元された(又はこれから還元される)硫化染料の還元状態を維持するために存在する。還元剤の濃度は、基材の乾燥質量に対して、有利には0.5〜15質量%の範囲内であり好ましくは1〜10質量%である。染色温度もまた、染色方法及び染色装置により様々であってよく、有利には35〜130℃の範囲内であり、通常は45〜105℃、好ましくは60〜100℃である。密閉容器で染色する場合、不活性ガス雰囲気下又は/及び減圧下で染色することも有利である。その後、吸尽工程はリンス段階で終了する。吸尽工程の終了後第2工程で、処理された物品に対して酸化処理、特に酸化剤を用いた酸化処理を行う。この第2工程は酸性条件で有利に行われ、特に顕色させ及び堅牢性を発現させるために、染料を基材の上で酸化する。それ自体既知であって硫化染料に使用することのできる、任意の酸化剤を使用することができる。酸化剤は、例えば、ガス状酸素(酸素、オゾン、空気、又は酸素及び/もしくはオゾンで富化した空気、又は酸素及び/もしくはオゾンを混合した不活性ガス)、過酸化水素、又は好ましくは酸化性の塩、例えばナトリウム又はカリウムの、過ホウ酸塩、過炭酸塩、重クロム酸塩、塩素酸塩、ヨウ素酸塩又は臭素酸塩である。後者は、例えばアルカリ金属のメタバナジン酸塩のような、適当な活性化剤が存在していることが好ましい。これらの中でも、臭素酸塩が特に好ましく、この場合は特にナトリウム又はカリウムのメタバナジン酸塩が存在していることが好ましい。酸化はいくらか加熱することにより有利に進行し、好ましくは40〜75℃の範囲内で、特に好ましくは45〜70℃である。またpHは4〜6の範囲内で、好ましくは4.5〜5.5である。第2工程の終了時に、酸化された染色物品はリンス及び中和されてもよく、例えば硫化染料による染色後に一般的に使用される、炭酸ナトリウムが中和剤として用いられる。その後、例えばリンス及び必要に応じて乾燥する既知の手順によりその物品が完成する。
【0076】
塩基性染料を用いた染色については、主に酸変性した合成繊維(例えばポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン)、アクリル繊維、セルロース繊維、ウール、又はシルクが適当である。吸尽法により、選択した装置及び材料に応じてそれ自体既知の浴比で染色を行うことができ、浴比は例えば120:1〜4:1の範囲内である。また、好ましくは加熱され、例えば50℃から沸点の範囲内であり、好ましくは60〜98℃であり、又は大気圧以上に加圧して沸点以上の温度、例えば102〜130℃である。pHはカチオン染料について一般的な範囲でよく、例えばpH4〜pH8である。その後、リンス及び必要に応じて乾燥する、既知の手順により染色は終了する。
【0077】
酸性染料を用いた染色については、主に合成及び/又は天然ポリアミド繊維ファイバー、例えばナイロン、ウール又はシルクが適当である。吸尽法により、選択した装置及び材料に応じてそれ自体既知の浴比で染色を行うことができ、浴比は例えば120:1〜2:1の範囲内である。また、好ましくは加熱され、例えば50℃から沸点の範囲内であり、好ましくは60〜98℃であり、又は大気圧以上に加圧して沸点以上の温度、例えば102〜130℃である。pHは酸性染料について一般的な範囲でよく、例えば酸性で染着する染料についてはpH3.5〜pH6.5、いわゆる中性で染着する染料についてはpH4.5〜pH8である。その後、いずれも既知の手順である洗浄及び/又はリンス、及び必要に応じ乾燥して染色は終了する。
【0078】
浸漬法については、任意の既知の連続浸漬工程が適当であり、例えば、パディング又はディッピング、続いて100℃以上のサーモフィクス又は低温放置(cold dwelling)である。サーモフィクスは、例えば102℃〜150℃の範囲内で、例えば乾燥、スチーミング、又はサーモゾルによって行われる。低温放置(cold dwelling)の場合、中間に予備乾燥してもよい。印刷物も同様の方法で染着する。
【0079】
繊維基材に対する浸漬法は、例えば、その特定の基材及び染料について適当なpHの染浴を用い、有利にはpHについては吸尽法について前述した範囲内で行うことができる。加熱することなく(例えば15〜25℃、又は周辺の気候条件に応じて40℃以下)浸染を行うことができる点、及び低温放置(cold dwelling)(必要に応じて中間で乾燥した後でもよい)によるか、又は熱処理、例えばスチーミング又は乾式加熱によれば、浸染した物品を染着することができる点で、この方法は有利である。
【0080】
捺染もまた既知の方法、例えば捺染糊又は捺染インクを用い、例えば1相又は2相で行うことができる。1相捺染を行う場合、捺染インク又は捺染糊は、適当な酸(必要に応じてラクトンのような加水分解可能な前駆体の状態で)、又は染着に必要とされる塩基をさらに含んでいてもよく、前述したのと類似する方法でスチーミング又は乾式加熱することにより、有利に染着することができる。2相捺染は例えば反応染料又は硫化染料に適しているが、この2相捺染を行う場合、染色は第1相で行われる。この捺染インク又は捺染糊は、反応染料について有利には中性から弱酸性(例えばpH4〜7)である。有利には最小限の追加のアプリケータなどの手段により中間乾燥した後、第2相でアルカリ処理して染着する。中間乾燥後は、好ましくは水分含有量が基材の乾燥質量の30%以下である。ここで再び、スチーミング又は乾式加熱の処理によるか、又は室温に染色物を放置することによって、念のために染着を行う。硫化染料については、捺染糊又は捺染インクは、有利には吸尽法について前述したようにアルカリ性であり、再酸化のための酸及び酸化剤は、有利には最小限の追加のアプリケータなどの手段により中間乾燥した後、第2相で使用される。中間乾燥後は、好ましくは水分含有量が基材の乾燥質量の30%以下である。ここで再び、スチーミング又は乾式加熱の処理によるか、又は室温に染色物を放置することによって、念のために染着を行う。別の方法として、硫化染料の染色物又は印刷物の再酸化は、ロイコ型で染色又は印刷された基材を、空気中の酸素に曝すだけでも完了する。
【0081】
染料を含有する捺染インク及び捺染糊は、さらに既知の成分を含んでいてもよい。例えば、適当な増粘剤であれば、主にアルギン酸塩、カロブビーンガムエステル及び/又はポリアクリレートである。必要であれば、水溶性向上剤(主に尿素)を捺染糊又は捺染インクに添加することもできる。室温(=20℃)で、粘度が1000〜8000cPの範囲内であるように、好ましくは2000〜6000cPの範囲内であるように、捺染糊の水分量と増粘剤量は決められるのが有利である。捺染物は、有利には100℃以上のサーモフィクスで染着させてもよく、例えば、乾燥、スチーミング又はサーモゾルであり、必要に応じて中間の予備乾燥を伴ってもよい。
【0082】
製造された染色物又はカラー印刷物(TF)は、その後生成物(P)で後処理することができる。例えば染色について前述した既知の吸尽法又は浸漬法に類似して、(P)による後処理は水系媒体から行うことができる。塩基性又はカチオン性染料が直接染色的となるような基材の場合、吸尽法がまた特に有利である(典型例として、セルロース基材と酸変性合成基材)。
【0083】
必要な処理染浴、すなわち吸尽浴又は浸漬組成物を作るためには、(P)は乾燥した状態で使用することもできるが、好ましくは水溶性の高濃度の組成物(WP)で使用できる。特に、例えば(P)の濃度は5〜60質量%の範囲内の溶液であり、又は、例えば原液として事前に希釈した状態であれば、例えば(P)の濃度は0.5〜10質量%の範囲内の溶液である。
【0084】
(P)を用いた(TF)の後処理は、pHがその特定の基材及び染色物又は印刷物に適している条件で、水系媒体中で有利に行われる。pHの範囲は特に、明らかに酸性から明らかにアルカリ性である範囲に及び、例えばpH3〜pH12の範囲内であり、好ましくはpH5〜pH9である。
【0085】
浸漬法で(P)を用いた後処理をする場合、例えば(P)を含むパディング染浴を使用することができる。このときの(P)の濃度は、例えば0.02〜50g/Lの範囲内であり、好ましくは0.1〜30g/L、より好ましくは0.2〜20g/Lである。浸漬法は、基材に対して必要な濃度の(P)を供給するピックアップに合わせて、それ自体既知の方法で行うことができる。その方法は特にディッピング、スプレー又は好ましくはパディングであり、例えば温度は15〜40℃の範囲内である。その後加熱してもよく、好ましくは乾式加熱によるものであり、温度は例えば98℃以上であり、好ましくは102〜140℃の範囲内である。
【0086】
適当な親和力をもつ基材に対して、好ましくは染色又は印刷したセルロース(TFC)に対して、(P)を用いた後処理を吸尽法により行う場合、システムに応じて、浴比は処理システム及び基材に適するような広い範囲であってよく、例えば4:1〜40:1の範囲内であり、普通は5:1〜30:1であり、好ましくは5:1〜20:1である。また加熱することが好ましく、例えば15〜70℃の範囲内、好ましくは30〜60℃である。(P)の吸尽は、基材に対して(P)が所望の程度まで吸尽するのに十分な時間行えばよく、例えば5〜60分、普通は10〜40分である。(P)を用いて後処理した基材は、その後既知の方法でリンス及び乾燥される。
【0087】
(P)は、特定の基材及び染色物又は印刷物に応じて、特に基材中の活性塩素のありうる濃度及び活性塩素が染色物又は印刷物にダメージを与える可能性に応じて、便宜上効果的な濃度で使用することができる。基材に応じた(P)の濃度は、基材(T)の乾燥質量に対して、例えば0.1〜10質量%の範囲内でよく、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.4〜2質量%である。
【0088】
本発明の1つの特徴は、塩基性染料に高い親和性をもつ基材(T)、好ましくはセルロース基材を、(F)を用いて吸尽法で染色した場合、(P)を用いた後処理もまた吸尽法で行えることである。乾燥前で染色工程の終了となるリンス段階の後、連続して、その後同じ機械で後処理が行えることは非常に都合がよい。
【0089】
同様に、本発明のもう1つの特徴は、基材(T)を(F)を用いて浸漬法で染色した場合、(P)を用いた後処理もまた浸漬法で行えることである。乾燥前で染色工程の終了となるリンス段階の後、連続して、その後染色と同じ種類の浸漬法により、同じ機械又は装置で後処理が行えることは非常に都合がよい。
【0090】
さらに、吸尽法による染色物は、浸漬法によっても後処理することができ、また、塩基性染料に高い親和性をもつ基材(T)、好ましくはセルロース基材に対して浸漬法により染色した染色物もまた、吸尽法によっても後処理することができる。印刷物は、好ましくは浸漬法によって(P)を用いて後処理される。
【0091】
この方法によれば、(P)を用いて後処理をすることにより、塩素(塩素消毒した水中の活性塩素)堅牢性が顕著に改善した染色物及び印刷物が得られる。塩素堅牢性は、例えばISO E3に従った標準試験法により評価することができる。一方、染色物又は印刷物の固有の色相及び光沢は実質的に変化しておらず、特に吸尽法により(P)を用いて処理した場合、繊維材料の風合いもまた最適に保たれている。反応染料で製造した染色物及び印刷物についても、ソーピング及びリンスの後に(P)を用いて後処理することにより、同様に十分な湿潤堅牢性を示す。同様に、塩基性染料又はカチオン染料、又は硫化染料、建染染料などで製造した染色物及び印刷物もまた、(P)を用いて後処理することにより、十分な湿潤堅牢性を示す。
【0092】
染色物又は印刷物の湿潤堅牢性を改善したい場合、特に直接染料又は酸性染料を用いて製造した染色物については、既知の染料定着剤(X)が使用でき、例えば、前述するように、特にカチオン定着剤(X’)又はアニオン定着剤(X”)が使用できる。カチオン定着剤(X’)は、媒染染料、特に直接染料又は反応染料を用いて製造した染色物又は印刷物に特に適している。一方、アニオン定着剤(X”)は、酸性染料又は塩基性染料を用いて製造した染色物又は印刷物に特に適している。建染染料又は硫化染料を用いて製造した染色物又は印刷物は、染料定着剤を普通必要としないが、もし使うのであればカチオン性の染料定着剤(X’)が好ましい。染料定着剤(X’)は、(P)の前、(P)の後、又は好ましくは(P)との混合物として使用することができる。染料定着剤(X”)は、好ましくは(P)の前に使用することができる。したがって本発明は、(P)を(X’)と混合した混合物(MPX)、及び(P)を(X’)と混合した混合物(MPX)を含む水性組成物(WPX)を特徴とする。
【0093】
適当な染料定着剤(X)は、特にカチオン性又はアニオン性の高分子量生成物である。
【0094】
適当な染料定着剤(X’)は、本技術分野で、それ自体既知のカチオン性生成物から選択することができ、例えば(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)を含む。(X1)は、オリゴアミンをジシアンジアミドと縮合した重縮合物であり、さらに別の反応剤と縮合していてもよい。(X2)は、ジアリルジアルキルアンモニウム塩の重合物(典型的には塩化ジアリルジメチルアンモニウムの重合物)である。(X3)は、エピクロロヒドリン、又はその前駆体もしくは誘導体を、2級アミン又は1個以上の3級アミノ基を有する置換オリゴアミンと縮合した4級アンモニウム縮合物であり、さらに別の反応剤と縮合していてもよい。(X4)は、4級アンモニウム基で置換されたグリシジルエーテルの重合物(例えば重合したエピクロロヒドリン類と、トリメチルアミン、ジメチルアミン又はトリエタノールアミンとの反応生成物)である。
【0095】
適当な染料定着剤(X”)は、本技術分野で、それ自体既知のアニオン性生成物から選択することができ、例えば(X5)又は(X6)を含む。(X5)は、フェノール性カルボン酸化合物であり、例えば革のなめし剤として知られている。(X6)は、合成タンニンのような、例えばアルデヒドと縮合した、芳香族重縮合物を含むスルホ基である。
【0096】
タイプ(X)の重縮合物は本技術分野でよく知られており、専門文献にも広範にわたり記載されている。タイプ(X)のいくつかの重縮合物はまた、様々な形態で市場から入手でき、普通は水性の高濃度組成物(Wx)として入手できる。
【0097】
代表的なタイプ(X1)の重縮合物は、例えば米国特許第4410652号、第4452606号、第4439203号、第4764585号及び第2649354号に記載されているものであり、特にジシアンジアミドのジエチレントリアミンとの重縮合物で、好ましくは塩型であり、ヒドロキシ基及び/又はメチロール基で置換された尿素(環状であってもよい)又はエピクロロヒドリンと、その重縮合物がさらに反応していてもよい。
【0098】
代表的なタイプ(X2)のジアリルジアルキルアンモニウム塩の重合物は、特に、塩化ジアリルジメチルアンモニウムの重合物であり、例えば特開昭53−70178号公報に記載されているように、poly−DADMACとして知られている。
【0099】
代表的なタイプ(X3)の重縮合物は、例えば米国特許第4599087号、第4718918号、英国特許第1114036号及び特開昭43−243号公報に記載されているものである。
【0100】
代表的なタイプ(X4)の重縮合物は、例えば特開昭51−112987号公報に記載されているものである。
【0101】
(X”)として、特に革のなめし技術(再なめし技術も含む)で知られている製品、例えばタンニン類や合成タンニン類を使用することができる。
【0102】
(X5)としては、例えばタンニン型のフェノール性カルボン酸化合物が挙げられ、例えば天然タンニン類、フェノール類、カテコール類、没食子酸及びそれらの誘導体である。
【0103】
(X6)としては、例えば合成タンニン型の芳香族重縮合物が挙げられ、例えばスルホン化フェノール類、ナフトール類、スルホン化ナフタレン及び/又はジヒドロキシジフェニルスルホン酸類、及び必要に応じて非スルホン化フェノール類を、主にホルムアルデヒドであるアルデヒドと縮合した縮合物である。また、スルホン化フェノール類、ジヒドロキシジフェニルスルホン酸類及び/又はナフトール類の縮合物、及び/又は、スルホン化ナフタレンの縮合物も例として挙げられる。
【0104】
好ましい定着剤(X)はカチオン性のものであり、特にタイプ(X1)のものである。
【0105】
好ましくは、定着剤(X)は水性の高濃度組成物(Wx)の状態で、通常の固形分含量で使用される。好ましくは8〜40質量%の範囲内、さらに好ましくは10〜30質量%である。
【0106】
2種類の生成物(P)及び(X’)が混合物で使用される場合、2種類の水性液体の状態の(WP)及び(WX’)を互いに混合して、混合物(MPX)を含む液体の水性組成物(WPX)を作ることが有利である。そのため本発明は、(P)を(X’)と混合した混合物(MPX)を含む、好ましくは溶解した状態で含む、水性組成物(WPX)をさらに提供する。
【0107】
(P)と(X)の質量比は広い範囲に及んでよく、例えば10/1〜1/5であり、好ましくは5/1〜1/3であり、より好ましくは3/1〜1/1である。好ましくは(P)は(X)よりも重い。(WPX)中の(MPX)の含有量は広い範囲に及んでよく、使用される成分及びその溶解性に主に左右されるが、例えば8〜50質量%の範囲内であり、好ましくは10〜30質量%である。水性組成物(WPX)は、保管及び運搬に対して非常に安定であり、特に(X’)が(X1)の場合は顕著である。
【0108】
混合物(MPX)、又は組成物(WPX)をそれぞれ用いる後処理は、前述したように、(P)単体を用いて後処理するときと同じ条件(pH、温度、時間)で行うことができる。
【0109】
本発明に従い後処理して得られた染色物及び印刷物は、素晴らしい塩素堅牢性を有する一方、後処理された基材からなる染色物又は印刷物の色相及び光沢が、高い水準で維持され実質的に変化していないことが、他の発明とは異なる点である。さらに、高い洗濯耐久性という点でも、本発明の堅牢性を改善する処理は独特である。また、他の堅牢性、例えば、耐光堅牢性や湿潤堅牢性もまた、本発明の方法によって改善することができ、特に後処理に(X)を用いた処理も含まれる場合、又は(MPX)を用いて後処理する場合はなおさらである。本発明に従い処理した基材の風合いもまた、高い水準で維持することができ、(P)を用いた後処理が吸尽法で行われた場合は格別である。
【0110】
以下の実施例では、記載のない限り、部及びパーセントは質量部及び質量パーセントである。容積部に対する質量部は、ミリリットルに対するグラムである。温度はセ氏温度である。使用する水は、脱塩水(脱イオン水)である。反応混合物中の塩化物イオン量は、0.1NAgNO3水溶液を用い滴定して決定した。使用実施例で用いる染料は、購入した状態で用い、硫酸ナトリウム10水和物を混合し、染料を25%純分で含む。C.I.はColour Indexを意味する。塩素堅牢性は、ISO E03に従い、有効塩素が20mg/Lで評価した。
【実施例】
【0111】
製造実施例1:グリセリン26.92gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン73.08gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を60℃に保ちながら、ジエチレントリアミン45gを2時間以上かけて滴下した。反応混合物が増粘し始めるまで引き続きこの温度で攪拌を続けた。水222.3gを添加し、塩化物イオン濃度が1.33mol/kgになるまで60℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸36gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P1)の30%溶液(WP1)が483g得られた。
【0112】
製造実施例2:以下の異なる点を除き、製造実施例1に記載した手順を繰り返した。ジエチレントリアミンを45gの代わりに55g、水222.3gの代わりに245.7gを使用し、反応は塩化物イオン濃度が1.29mol/kgの時点で停止した。生成物(P2)の30%溶液(WP2)が516g得られた。
【0113】
製造実施例3:グリセリン27.39gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン72.61gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を60℃に保ちながら、ジエチレントリアミン65gを2時間以上かけて滴下した。反応混合物が増粘し始めるまで引き続きこの温度で攪拌を続けた。水269gを添加し、塩化物イオン濃度が1.52mol/kgになるまで80℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸36gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P3)の30%溶液(WP3)が550g得られた。
【0114】
製造実施例4:グリセリン25.87gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン74.13gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を60℃に保ちながら、ジエチレントリアミン70gを2時間以上かけて滴下した。反応混合物が増粘し始めるまで引き続きこの温度で攪拌を続けた。水270.6gを添加し、塩化物イオン濃度が1.33mol/kgになるまで60℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸46gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P4)の30%溶液(WP4)が566g得られた。
【0115】
製造実施例5:グリセリン25.87gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン74.13gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加し、混合物を室温まで冷却した。この温度で、水100gにヘキサメチレンジアミン47.2gを溶解した溶液を添加し、混合物を70℃に加熱した。反応混合物が増粘し始めるまで引き続きこの温度で攪拌を続けた。水148.2gを添加し、塩化物イオン濃度が1.19mol/kgになるまで60℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸15gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P5)の30%溶液(WP5)が490g得られた。
【0116】
製造実施例6:グリセリン26.92gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン73.08gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を60℃に保ちながら、ジエチレントリアミン60gを2時間以上かけて滴下した。反応混合物が増粘し始めるまで70℃で攪拌を続けた。水50gを添加し、反応混合物が再度増粘し始めるまで70℃で攪拌を続けた。水100gを添加し、反応混合物が再度増粘し始めるまで70℃で攪拌を続けた。水107.6gを添加し、塩化物イオン濃度が1.30mol/kgになるまで70℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸36gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P6)の30%溶液(WP6)が533g得られた。
【0117】
製造実施例7:グリセリン26.92gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン73.08gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を80℃に保ちながら、ジエチレントリアミン85gを2時間以上かけて滴下した。反応混合物が増粘し始めるまでこの温度で攪拌を続けた。水80gを添加し、反応混合物が再度増粘し始めるまで80℃で攪拌を続けた。水100gを添加し、反応混合物が再度増粘し始めるまで80℃で攪拌を続けた。水111.6gを添加し、塩化物イオン濃度が1.35mol/kgになるまで80℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸60gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P7)の30%溶液(WP7)が616g得られた。
【0118】
製造実施例8:グリセリン26.92gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン73.08gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後混合物を50℃まで冷却した。反応混合物を70℃に保ちながら、ジエチレントリアミン20gとヘキサメチレンジアミン50gを水80gに溶解した溶液を2時間以上かけて滴下した。反応混合物が増粘し始めるまで引き続き80℃で攪拌を続けた。水281gを添加し、塩化物イオン濃度が1.28mol/kgになるまで60℃で攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸36gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P8)の30%溶液(WP8)が567g得られた。
【0119】
製造実施例9:エチレングリコール25.12gを70℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン74.88gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を80℃に保ちながら、ジエチレントリアミン50gを2時間以上かけて滴下した。塩化物イオン濃度が2.60mol/kgになるまでこの温度で攪拌を続けた。その時点で水236gを添加し、85%ギ酸36gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P9)の30%溶液(WP9)が502g得られた。
【0120】
製造実施例10:ソルビトール25.14gとグリセリン12.74gの混合物を80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.15gを攪拌しながら添加した。冷却して85〜95℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン75.45gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水80gを添加した。そのことにより温度は50℃に低下した。反応混合物を60℃に保ちながら、ジエチレントリアミン50.7gを2時間以上かけて滴下した。塩化物イオン濃度が2.12mol/kgになるまでこの温度で攪拌を続けた。その時点で水268gを添加し、85%ギ酸33gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P10)の30%溶液(WP10)が545g得られた。
【0121】
製造実施例11:グリセリン40.38gを80℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.3gを攪拌しながら添加した。冷却して80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン109.62gを混合物に2時間以上かけて滴下した。さらに1時間、80℃で攪拌し、その後水50gを添加した。そのことにより温度は60℃に低下した。その後、60℃で水194.4gを2時間以上かけて滴下した。この温度で、ジエチレントリアミン31.2gとN,N−ジメチルアミノプロピルアミン31.5gの混合物を2時間以上かけて60℃に保ちつつ滴下した。この温度で1時間攪拌を続け、その後混合物を30℃に冷却し、32%水酸化ナトリウム水溶液151.4gを10分以上かけて滴下した。塩化物イオン濃度が1.55mol/kgになるまで、17時間攪拌を続けた。その時点で、85%ギ酸100.5gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P11)の30%溶液(WP11)が709g得られた。
【0122】
製造実施例12:第1の反応容器に入れたエチレングリコール21.11gを70℃に加熱し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル0.2gを攪拌しながら添加した。80〜85℃に保ちつつ、エピクロロヒドリン78.69gを混合物に2時間以上かけて滴下し、さらに1時間、80℃で攪拌して、対応するクロロヒドリンを得た。
【0123】
水80gとトリエチレンテトラアミン71.54gを第2の反応容器に入れた。温度は50〜55℃を保った。反応混合物の温度を50〜55℃に保ちつつ、第1の反応容器で生成したクロロヒドリンを、この混合物に2時間以上かけて滴下した。その後、混合物を80℃に加熱し、反応混合物が増粘し始めるまでこの温度で攪拌を続けた。水80gを添加し、塩化物イオン濃度が2.30mol/kgになるまで、80℃で攪拌を続けた。水185.4gを添加し、85%ギ酸54.9gを添加して反応を停止した。その後、反応混合物を40℃に冷却し、濾過した。生成物(P12)の30%溶液(WP12)が571g得られた。
【0124】
使用実施例A:綿布帛100部を、標準染色濃度1/1のC.I.Reactive Yellow 27で吸尽法により染色し、ソーピング及びリンスした。その後、10:1の浴比の、製造実施例1の3%組成物(WP1)が入っている水性染浴を用い、pHは7で後処理した。手順は以下のとおりで、最初に40℃の1000部の脱塩水を容器に入れ、その後3部の製造実施例1の組成物(WP1)を5分以上かけてそこに添加し、絶えず布を動かしながら40℃で15分吸尽を行った。その後、染浴を排出し、物品を新液でリンスした。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、黄色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢、並びに染色した布の風合いは変化していなかった。
【0125】
使用実施例B、C及びD:以下の異なる点を除き、使用実施例Aに記載した手順を繰り返した。綿布帛100部を、C.I.Reactive Yellow 186、Colour Index Reactive Blue 19、又はColour Index Reactive Blue 21のそれぞれを用い、いずれの場合も標準染色濃度1/1で染色した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、黄色又は青色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢、並びに染色した布の風合いは変化していなかった。
【0126】
使用実施例E:綿布帛を、標準染色濃度1/1のC.I.Reactive Red 241で吸尽法により染色、洗浄、リンス及び乾燥した。その後、製造実施例1の組成物(WP1)30g/Lを含む水性のパディング染浴を用い、80%のピックアップでパディングした。その後、120℃に熱した空気中で乾燥した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、赤色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢、並びに染色した布の風合いは変化していなかった。
【0127】
使用実施例F:ポリアミド6布帛を、標準染色濃度1/1のC.I.Acid Violet 48で吸尽法により染色し、リンス及び乾燥した。その後、製造実施例1の組成物(WP1)30g/Lを含む水性のパディング染浴を用い、80%のピックアップでパディングした。その後、120℃に熱した空気中で乾燥した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、紫色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢は変化していなかった。
【0128】
使用実施例G、H、及びJ:以下の異なる点を除き、使用実施例Fに記載した手順を繰り返した。ポリアミド布帛を、C.I.Acid Yellow 184、C.I.Acid Red 336、又はC.I.Acid Blue 350のそれぞれを用い、いずれの場合も標準染色濃度1/1で染色した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、黄色、赤色又は青色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢は変化していなかった。
【0129】
使用実施例L:ポリアミド6布帛を、標準染色濃度1/3のC.I.Acid Violet 48で吸尽法により染色し、リンス及び乾燥した。その後、製造実施例1の組成物(WP1)40g/Lを含む水性のパディング染浴を用い、80%のピックアップでパディングした。その後、120℃に熱した空気中で乾燥した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、薄い紫色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢は変化していなかった。
【0130】
使用実施例M:綿布帛を、標準染色濃度1/1のC.I.Direct Red 80で吸尽法により染色し、よくリンスして乾燥した。その後、製造実施例1の組成物(WP1)30g/Lを含むパディング溶液を用い、80%のピックアップでパディングした。その後、120℃に熱した空気中で乾燥した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、赤色の染色物を得た。一方、染色した布の風合いは変化していなかった。
【0131】
使用実施例N:綿布帛を、標準黒色濃度のC.I.Leuco Sulphur Black 1で吸尽法により染色し、通常の酸化の後によくリンスして乾燥した。その後、製造実施例1の組成物(WP1)30g/Lを含むパディング溶液を用い、80%のピックアップに絞ってパディングした。その後、120℃に熱した空気中で乾燥した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、黒色の染色物を得た。一方、染色した布の色相及び風合いは変化していなかった。
【0132】
使用実施例O:綿布帛を、標準染色濃度1/1のC.I.Direct Yellow 162で吸尽法により染色し、よくリンスした。その後引き続き、製造実施例1の組成物(WP1)3g/Lを含む10:1の浴比の水性染浴を用いて、40℃で20分間後処理を行った。その後、染浴を排出し物品を新液でリンスした。その後、洗浄液を排出し、物品を取り出して乾燥した。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、黄色の染色物を得た。一方、染色した布の色相、光沢及び風合いは変化していなかった。
【0133】
製造実施例1の生成物(P1)を組成物(WP1)の状態で使用したのと同様に、製造実施例2から12の生成物(P2)から(P12)を、組成物(WP2)から(WP12)の状態で、使用実施例AからOで使用したところ、同様に改善された結果が得られた。
【0134】
使用実施例P:
綿布帛100部を、標準染色濃度1/3のC.I.Reactive Blue 21で吸尽法により染色し、ソーピング及びリンスした。その後、10:1の浴比の、製造実施例12の3%組成物(WP12)が入っている水性染浴を用い、pHは7で後処理した。手順は以下のとおりで、最初に40℃の1000部の脱塩水を容器に入れ、その後3部の製造実施例12の組成物(WP12)を5分以上かけてそこに添加し、絶えず物品を動かしながら40℃で20分吸尽を行った。その後、染浴を排出し、物品を新液でリンスした。後処理をしていない染色物と比べて塩素堅牢性が改善された、明るい青緑色の染色物を得た。一方、染色物の色相及び光沢、並びに染色した布の風合いは変化していなかった。
【0135】
製造実施例12の生成物(P12)を組成物(WP12)の状態で使用したのと同様に、製造実施例1から11の生成物(P1)から(P11)を、組成物(WP1)から(WP11)の状態で、使用実施例Pで使用したところ、同様に改善された結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸素により分断されていてもよい炭化水素基に1分子あたりx個(xは2〜6の範囲内である)のヒドロキシ基が結合しているオリゴヒドロキシ化合物、又はその2種以上の混合物に、オリゴヒドロキシ化合物(A)1モルあたりmモル(mは2以上であるが1.2×x以下である)の比率でエピクロロヒドリン(B)を付加させた塩素末端を有する付加物(E)を、
(C)塩基型において窒素に結合した反応性水素原子を2以上含むが3級アミノ基は含まない少なくとも1種のアミノ化合物と、さらに必要に応じて
(D)少なくとも1種の脂肪族2級モノアミン及び/又は1級もしくは2級アミノ基と3級アミノ基とを含む少なくとも1種の脂肪族ジアミンと
縮合反応させて得られる
あるいは、(E)を脱塩化水素反応させて対応するエポキシド(Ex)にし、その(Ex)を(C)と、さらに必要に応じて(D)と、反応させて得られる
高分子量エーテルアミン(P)であってプロトン化されていてもよいものを、繊維材料(T)に対して少なくとも1種の水溶性染料(F)を用いて得られた染色物又は印刷物(TF)のための後処理剤として使用すること。
【請求項2】
該付加物(E)又はその脱塩化水素誘導体(Ex)を(C)と、さらに必要に応じて(D)と、(E)又は(Ex)1モルあたり(C)nモル及び(D)pモルの比率で反応させるに際し、nが0.4×mより大であるがmより小さく、pが0以上であり、かつ、n+pがmより小さい、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(A)が
(A1)x1個(x1は3〜6の範囲内である)のヒドロキシ基を有する分子量が92以上のオリゴヒドロキシアルカン、又はその2種以上の混合物、
(A2)炭素原子数2〜6のアルカンジオールもしくはアルキレン部の炭素原子数が2もしくは/及び3であるオリゴアルキレングリコールであるジオール、又はその2種以上の混合物、並びに
(A1)の1種以上と(A2)の1種以上との混合物
から選択され、そして
(C)が
(C’)(C1)アンモニア、及び(C2)少なくとも1種の脂肪族1級モノアミン、
から選択される少なくとも1種のモノアミノ化合物、並びに
(C”)(C3)2個の2級アミノ基を含むがさらなるアミノ基は含まない少なくとも1種の脂肪族ジアミン、及び(C4)1個以上の1級アミノ基とさらに1個以上の1級もしくは2級のアミノ基とを含む少なくとも1種の脂肪族オリゴアミン、から選択される少なくとも1種のオリゴアミン
から選択される請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
(C)が(C4)であって、(C4)は(C4’)であり、
(C4’)は下式の少なくとも1種のアミノ化合物
【化1】

(R1は水素又はC1-3アルキル、yは1〜3、Yはyが2又は3の場合C2-3アルキレン、yが1の場合C2-6アルキレン)
であり、
(D)が下式の少なくとも1種のアミノ化合物
【化2】

(ZはC2-6アルキレン、zは0又は1、R2はC1-3アルキル、R3はC1-3アルキル)
である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
(P)が(E)又は(EX)と(C4’)との反応生成物であり、
(A)が下式の化合物
【化3】

(X0は炭素原子数2〜6のx価の飽和脂肪族炭化水素基であり、及びxは2〜6の数値であるが、X0の炭素原子数以下である)、
又はこれら2種もしくはそれ以上の混合物であり、
(C4’)が式(III)の化合物であって、R1が水素又はメチル、Yがエチレン、プロピレン又はヘキサメチレンであり、又はこれら2種もしくはそれ以上の混合物である、
請求項4に記載の使用。
【請求項6】
(A)が、
下式の化合物(A11
【化4】

(x1は3から6の数値)、
下式のアルカンジオール(A21’)
【化5】

(X3’はC2-4アルキレン)、
及びこれらの1種又はそれ以上の混合物
から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
(A)がグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びこれら2種又はそれ以上の混合物から選択され、
(C4’)がエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン及びこれら2種又はそれ以上の混合物から選択される、
請求項6に記載の使用。
【請求項8】
繊維材料(T)に対して少なくとも1種の水溶性染料(F)を用いて得られた染色物又は印刷物の後処理物の製造方法であって、請求項1から7のいずれか1項に定義された高分子量エーテルアミン(P)である後処理剤で該染色物又は印刷物(TF)を後処理する方法。
【請求項9】
(P)が水性組成物(WP)の形態で使用される、請求項1から7のいずれかに1つに記載の使用、又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該繊維基材(T)が、吸尽法又は浸漬法により(F)で染色され又は(F)で印刷されており、そして吸尽法又は浸漬法により(P)で後処理する、請求項1から9のいずれかに記載の使用又は方法。
【請求項11】
吸尽法により(F)で染色されている、塩基性染料に対して高い親和性を有する基材(T)を、同様に吸尽法により(P)で後処理する、請求項1から10のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【請求項12】
(P)以外の定着剤(X)による染料定着をも行う、請求項1から11のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【請求項13】
(X)がカチオン定着剤(X’)又はアニオン定着剤(X”)である、請求項12に記載の使用又は方法。
【請求項14】
(X’)を(P)の前に、(P)の後に、又は(P)との混合物で使用する、請求項13に記載の使用又は方法。
【請求項15】
(TF)を(P)と(X’)の混合物(MPX)で後処理する、請求項14に記載の使用又は方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法に適した、請求項15に記載の混合物(MPX)。
【請求項17】
請求項16に記載の混合物(MPX)を含む水性組成物(WPX)。

【公表番号】特表2007−517143(P2007−517143A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546398(P2006−546398)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004288
【国際公開番号】WO2005/066414
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】