説明

繊維ウエブのニードルパンチ装置

【課題】 比較的簡単な手段で一層高い突き刺し頻度も保証できるように、繊維ウエブのニードルパンチ装置を形成する。
【解決手段】 突き刺し方向に案内される突き棒(24)と結合される少なくとも1つのニードルボード(21)、及び突き棒(24)に作用するニードルボード用駆動装置を有する繊維ウエブのニードルパンチ装置において、駆動装置が静液圧共振駆動装置として形成され、両側にそれぞれ1つの液圧ばね(4,5)の作用を受けるピストン(2)を持つ少なくとも1つの作動シリンダ(1)と、可動質量と液圧ばね(4,5)から生じる振動系の共振振動数に相当する振動数でピストン(2)に圧力を加える装置を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き刺し方向に案内される突き棒と結合される少なくとも1つのニードルボード、及び突き棒に作用するニードルボード用駆動装置を有する繊維ウエブのニードルパンチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維ウエブのニードルパンチのため、適当なニードルを備えたニードルボードが、ベッドプレートとニードルボードとの間で長手方向に送られる繊維ウエブに対して突き刺し方向に往復駆動されねばならない。通常ニードルビームに取外し可能に保持されるニードルボードは、ニードルビームに作用する2つの突き棒により案内され、これらの突き棒に偏心輪伝動装置の連接棒が枢着されている。回転運動を直線的な突き刺し運動に変換することに伴う欠点がこれらの偏心輪伝動装置に当然あることを別としても、公知の偏心輪伝動装置では、ニードルボードの突き刺し頻度を高めることが重要である場合、増大する困難が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の基礎になっている課題は、比較的簡単な手段で一層高い突き刺し頻度も保証できるように、最初にあげた種類の繊維ウエブのニードルパンチ装置を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、駆動装置が静液圧共振駆動装置として形成され、両側にそれぞれ1つの液圧ばねの作用を受けるピストンを持つ少なくとも1つの作動シリンダと、可動質量と液圧ばねから生じる振動系の共振振動数に相当する振動数でピストンに圧力を加える装置を含んでいることによって、与えられた課題を解決する。
【0005】
駆動装置を静液圧共振駆動装置として形成することによって、少なくとも1つの作動シリンダの使用により、偏心輪伝動装置を介して回転運動を往復直線運動に変換することがまず回避される。所望の高い突き刺し頻度は、逆向きに作用する2つの液圧ばねを含みかつ共振範囲で励振される振動系を設けることにより、比較的僅かなエネルギ費で得られるので、両方の液圧ばねの作用を受けるピストンは、この振動系の共振振動数で1つの作動シリンダにおいて動かされる。共振振動数は、両方の液圧ばねの合成こわさと振動質量とによって決定され、ばねこわさはピストンの有効面積と液圧媒体の体積及び弾性係数から生じる液圧容量とに関係しているので、ピストンの有効面積と、所定の共振振動数、所定の振動振幅及び許容圧力振幅のために必要なばね体積は、既知の物理的関係から求めることができる。
【0006】
偏心輪伝動装置がないため、駆動により生じる横力がなくなり、それにより、特に少なくとも2つの作動シリンダが設けられ、そのピストンと結合されるピストン棒が突き棒として形成されていると、簡単な構造条件が得られる。
【0007】
ニードル突き刺し中に、繊維ウエブ通過方向に作用するニードルボードの運動成分により繊維ウエブの送り速度を増大するため、作動シリンダにより突き刺し方向が規定されるにもかかわらず、繊維ウエブ通過方向の付加的な往復運動をニードルボードに与えることが可能である。この目的のため、ニードルボードが、静液圧共振駆動装置と共に、繊維ウエブ通過方向に交差して回転可能に支持される構造単位を形成し、この構造単位に静液圧共振駆動装置と同期する振動駆動装置が作用するだけでよい。この振動駆動装置は、従来のように偏心輪伝動装置から成っていてもよい。しかしウエブ通過方向にニードルボードを動かすための振動駆動装置が、同様に作動シリンダ及び両側に液圧ばねの作用を受けるピストンを持つ静液圧共振駆動装置として形成されていると、有利な構造条件が生じる。
【0008】
液圧ばねは、適当な圧力導管を介して作動シリンダの圧力空間に接続されているハウジングに収容することができる。しかし作動シリンダが少なくとも1つの端面で開いて形成され、開いた端面が付属する液圧ばねのハウジング内へ突出しているので、作動シリンダと液圧ばねのハウジングとの間に別個の圧力導管がなくなると、簡単な構造状態が生じる。
【0009】
質量釣合いのため、駆動装置が作動シリンダのほかに同軸的な釣合いシリンダを持ち、作動シリンダと釣合いシリンダが、ピストンの同じ側で互いに液圧接続され、かつ反対側でそれぞれ液圧ばねに接続されているようにすることができる。それにより釣合いシリンダを介して、作動シリンダに対して釣合いシリンダの逆向きのピストン運動が保証されるので、釣合いシリンダのピストンに対する釣合い質量の適当な対応により、同様に釣合い質量の共振条件で質量釣合いが行われる。
【0010】
既に述べたように、固有振動数は、そのほかのパラメータは同じであるとして、液圧ばねの体積に関係している。従ってばね体積を介して、固有振動数に影響を及ぼすこともできる。従って固有振動数を調節するため、ハウジングの容積が、少なくとも作動シリンダの両方の液圧ばねの1つのために例えば操作シリンダにより調節可能である。
【0011】
図面には本発明の実施例が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1からわかるように、静液圧共振駆動装置は、作動シリンダ1内に案内されてピストン棒3を有するピストン2を持ち、このピストン2は両側に液圧ばね4及び5の作用を受ける。これらの液圧ばね4及び5は、液圧媒体を満たされるハウジング6を含み、圧力振幅を吸収できるため、このハウジングは適当にこわく形成されねばならない。空間を節約する構造状態を得るため、作動シリンダ1は両端面で開いており、開いた端面は両方の液圧ばね4及び5用のハウジング6に終わっているので、ピストン2は液圧ばね4及び5の作用を直接受けることができる。一方では両方の液圧ばね4,5の予荷重圧力を調節し、他方ではピストン2を振動するように励振できるようにするため、2つの制御弁7,8が両方の液圧ばね4,5に接続され、従ってこれらの液圧ばねは、制御弁7,8の弁体位置に応じて、ポンプ9の圧力を受ける圧力導管10又は液圧媒体用戻り導管11に接続可能である。例えばピストン2が振動数を持つ制御弁7を介して、可動質量と両方の液圧ばね4,5から形成される振動系の振動数で励振されると、ピストン棒3を介して有利に振動駆動装置が形成されて、比較的簡単な構造を生じるのみならず、エネルギを節約して運転されることができる。両方の制御弁7,8は更にピストン2の中間位置の調節を可能にする。
【0013】
振動系の共振振動数は、合成ばねこわさの変化によって調節することができる。この目的のため、両方の液圧ばね4,5のうち1つの少なくとも1つのためにハウジング6の容積を変化することができる。図1による実施例においてこれは、操作シリンダ13により移動されるピストン12によって、液圧ばね5のために行われる。操作ピストン14は、制御ピストン15を介して圧力を受け、そのつど選ばれるピストン位置に固定される。
【0014】
振動駆動装置のため比較的簡単に質量釣合いを行うため、図2によれば、作動シリンダ6のほかに同軸的な釣合いシリンダ16を設けることができ、この釣合いシリンダ16は、ピストンの同じ側にある接続導管17を介して作動シリンダ1と液圧的に連結されているので、釣合いシリンダ16のピストン18は作動シリンダ1のピストン2に対して逆向きに移動され、それにより、質量を適当に合わせると、充分な質量釣合いが行われる。この場合液圧ばね5及び4は、作動シリンダ1と釣合いシリンダ16とに作用する。
【0015】
作動シリンダ1及び釣合いシリンダ16のピストン2及び18の中間位置が、互いに無関係に調節可能であるようにするため、別の制御弁20が設けられている。共振振動数の調節は、作動シリンダ1のために適切な方策に従って、操作シリンダ13内の操作ピストン14と結合されかつ制御弁15を介して駆動されるピストン12により行われる。
【0016】
シリンダ1及び16を並列に設けるため、ピストン2及び18の往復方向における質量釣合いにもかかわらず、シリンダ1及び16を同軸的に設けると、回避可能な自由慣性モーメントが生じる。
【0017】
図3には、ニードルビーム22に従来のように取外し可能に取付けられているニードルボード21が、繊維ウエブ通過方向に見た図で示されている。ニードル23の突き刺し方向にニードルボード21を駆動するため、ニードルビーム22が互いに平行な突き棒24と結合され、これらの突き棒24が、図2に詳細に示されているように、静液圧共振駆動装置のピストン棒3をそれぞれ形成している。しかし図2による実施例とは異なり、釣合いシリンダ16のピストン18が釣合い質量を形成している。従ってニードルボード21は、両方の突き棒24に作用する静液圧共振駆動装置を介して、この駆動装置の共振振動数に相当する突き刺し振動数で駆動される。両方の作動シリンダの同期を行いさえすればよく、これを液圧的に又は機械的に又は制御技術的に行うことができる。
【0018】
ニードルボード21を側面図で示す図4によれば、共振駆動装置はピストン棒3と共に構造単位25にまとめられ、この構造単位25は繊維ウエブ通過方向26に交差して延びる軸線27の周りに揺動可能に、架台に支持されている。構造単位25をこのように揺動支持するため、ニードルボード21は繊維ウエブ通過方向26に往復移動可能であり、これは矢印28により示されている。ニードルボード21のこの付加的な運動のための揺動駆動装置29は、種々に形成可能であり、従来のように偏心輪駆動装置から成っていてもよい。しかし揺動駆動装置29も図1及び2に示すように静液圧共振駆動装置から形成されると、特に有利な駆動状態が生じる。この場合共振駆動装置により形成される構造単位は、架台に固定して軸線30の周りに揺動可能に支持されて、図4に示すように、中間連結棒なしにピストン棒3が直接構造単位25に枢着される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 繊維ウエブの本発明によるニードルパンチ装置のための駆動装置を簡単化してブロック線図で示す。
【図2】 質量釣合いだけ補足された図1の駆動装置を示す。
【図3】 図2による静液圧共振駆動装置により駆動されるニードルボードを一部切断して繊維ウエブ通過方向に見た図を示す。
【図4】 静液圧共振駆動装置により突き刺し方向及び繊維ウエブ通過方向に駆動されるニードルボードを概略側面図で示す。
【符号の説明】
【0020】
1 作動シリンダ
2 ピストン
3 ピストン棒
4,5 液圧ばね
21 ニードルボード
24 突き棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き刺し方向に案内される突き棒と結合される少なくとも1つのニードルボード、及び突き棒に作用するニードルボード用駆動装置を有する繊維ウエブのニードルパンチ装置において、駆動装置が静液圧共振駆動装置として形成され、両側にそれぞれ1つの液圧ばね(4,5)の作用を受けるピストン(2)を持つ少なくとも1つの作動シリンダ(1)と、可動質量と液圧ばね(4,5)から生じる振動系の共振振動数に相当する振動数でピストン(2)に圧力を加える装置を含んでいることを特徴とする、装置。
【請求項2】
少なくとも2つの作動シリンダが設けられ、そのピストン(2)と結合されるピストン棒(3)が突き棒(24)として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ニードルボード(21)が、静液圧共振駆動装置と共に、繊維ウエブ通過方向(26)に交差して回転可能に支持される構造単位(25)を形成し、この構造単位(25)に振動駆動装置が作用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
振動駆動装置(29)が、作動シリンダ(1)及び両側に液圧ばね(4,5)の作用を受けるピストン(2)を持つ静液圧共振駆動装置として形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
作動シリンダ(1)が少なくとも1つの端面で開いて形成され、開いた端面が付属する液圧ばね(4,5)のハウジング(6)内へ突出していることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の装置。
【請求項6】
駆動装置が作動シリンダ(1)のほかに同軸的な釣合いシリンダ(16)を持ち、作動シリンダ(1)と釣合いシリンダ(16)が、ピストンの同じ側で互いに液圧接続され、かつ反対側でそれぞれ液圧ばね(4,5)に接続され、釣合いシリンダ(16)のピストン(18)が釣合い質量(19)を保持していることを特徴とする、請求項1〜5の1つに記載の装置。
【請求項7】
ハウジング(6)の容積が、少なくとも作動シリンダ(1)の両方の液圧ばね(4,5)の1つのために調節可能であることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−119998(P2007−119998A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316257(P2006−316257)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(506390111)ノイマーク・ザウレル・アウストリア・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Neumag Saurer Austria GmbH
【Fターム(参考)】