説明

繊維処理用薬剤

【課題】繊維の分解性能の保存安定性が高く、繊維に対する分解能力が持続し、減量処理能力が持続する繊維処理用薬剤を提供する。特にセルロース、ウール等の天然繊維及びポリエステル等の合成繊維に対する分解能力が持続する繊維処理用薬剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する繊維処理用薬剤。


[式中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理用薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酵素反応が種々の産業分野にて利用されており、特に繊維の分野では風合いや手触りの向上のために酵素を用いた処理が広く一般的に行われている。従来、繊維を処理する場合に用いられる酵素として、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼなどが用いられている。これらの酵素を用いた処理により繊維の糊ぬき、精錬、風合い改良、収縮性の低下、染色性が良くなるなどの多くの効果がある。
例えば、セルロース系繊維の処理用薬剤として、セルラーゼを含む処理用薬剤組成物を使用して繊維の染色性、風合いなどを改善できることが提案されている(特許文献1)。
また、獣毛系繊維の処理剤として、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を含む処理用薬剤を使用して、迅速に繊維を分解し、減量処理できることが提案されている(特許文献2)。
また、エステル加水分解酵素をポリエステル繊維に作用させることで、アルカリを使用せずに減量処理できることが提案されている(特許文献3)。
さらに、繊維に付着した油を脂肪分解酵素で分解除去する繊維の処理方法も提案されている(特許文献4)。
【0003】
繊維の処理は通常、槽内に繊維を浸漬しておこなう。そのため、処理用薬剤は作業性の観点から液状であることが好まれ、粉末タイプから液状タイプにシフトしてきている。ところが、液状タイプである場合、一定期間保管する場合、繊維処理用薬剤としての分解性能が経時的に低下し、持続しない課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−152685号公報
【特許文献2】特開平9−273083号公報
【特許文献3】特開2003−292996号公報
【特許文献4】特開2006−193684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、繊維に対する分解能力が持続し、減量処理能力が持続する繊維処理用薬剤を提供することにある。特にセルロース、ウール等の天然繊維及びポリエステル等の合成繊維に対する分解能力が持続する繊維処理用薬剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する繊維処理用薬剤であることを要旨とする。
【化1】

[式(1)中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維処理用薬剤は、繊維の分解性能を持続することができる。
また、本発明において「分解性能を持続する」とは、一定期間保管した後に測定した減量処理能力と、保管する直前に測定した減量処理能力との差が小さいことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の繊維処理用薬剤は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する繊維処理用薬剤である。
【0009】
【化2】

[式(1)中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0010】
液体の繊維処理用薬剤は、長期間保存すると繊維の分解性能が著しく低下するという問題点があるが、本発明では、特定の化学構造を有する上記の化合物(A)を繊維処理用薬剤に含有させることにより解決できる。
【0011】
一般式(1)で表される化合物として、具体的にはグアニジン、尿素及びチオ尿素が挙げられる。
【0012】
一般式(1)で表される化合物の塩としては、グアニジンの塩が挙げられる。
塩としては塩酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩等が挙げられる。
【0013】
化合物(A)としては、繊維の分解性能の持続性の観点で、グアニジンの塩及び尿素が好ましく、さらに好ましくはグアニジンの塩、次にさらに好ましくはグアニジン塩酸塩である。
【0014】
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる化合物(A)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の持続性の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.02〜10、次にさらに好ましくは0.03〜5、特に好ましくは0.05〜3である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる化合物(A)の含有量は、繊維の分解性能の持続性の観点から、酵素(a)の重量に対し、1〜1000重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜500重量%であり、次にさらに好ましくは10〜300重量%である。
【0015】
本発明の繊維処理用薬剤は、さらに下記一般式(2)で表される化合物(B)を含有することができる。繊維の分解性能の持続性の観点から、(B)を含有することが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(2)中、Qはアミノ基又はアルキル基を表し、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の置換基に置換されていてもよい。
【0018】
Qのアルキル基としては炭素数1〜22のアルキル基が挙げられ、具体的にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、セチル基、ステアリル基及びベヘニル基等が挙げられる。これらのアルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の置換基に置換されてもよい。
水素原子以外の置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、イミノ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。置換基の数は1〜3が好ましく、さらに好ましくは2〜3である。例えばQがブチル基の場合、ブチル基末端の水素原子2つが1つのアミノ基及び1つのカルボキシル基で置換された場合は(B)はアルギニンを表す。
【0019】
化合物(B)としては、アルギニン又はその塩(B−1)、アルギニン誘導体又はその塩(B−2)及びグアニジン誘導体又はその塩(B−3)が挙げられる。
【0020】
アルギニン又はその塩(B−1)として、アルギニン、アルギニンの無機酸塩(塩酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩等)及びアルギニンの有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩及びピロメリット酸塩等)が挙げられる。
【0021】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)において、アルギニン誘導体は下記一般式(3)で表されるアルギニンのα−アミノ基若しくはα−カルボキシル基又はこれらの両方の基が置換された誘導体である。
α−アミノ基の置換は、下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)への置換であり、α−カルボキシル基の置換は下記一般式(6)で表されるエステル基又は下記一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)への置換である。
【0022】
言い換えると、アルギニン誘導体又はその塩(B−2)では、α−アミノ基又はα−カルボキシル基の少なくともいずれか一方が置換されている。すなわち、Yがアミノ基の場合、Zは下記一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)又は下記一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)であり、Zがカルボキシル基の場合は、Yは下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は下記一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)である。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(3)中、Yはアミノ基、下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は下記一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)を表す。Zは、カルボキシル基、下記一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)又は下記一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)を表す。
【0025】
【化5】

【0026】
一般式(4)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜36の1価の炭化水素基を表し、この炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0027】
一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)におけるR1の炭化水素基としては、炭素数1〜36の1価の炭化水素基であり、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。
直鎖の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基及びベヘニル基等が挙げられる。
分岐の脂肪族炭化水素基としては、イソプロピル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びシクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基及びメチルベンジル基等が挙げられる。
これらの炭化水素基のうち、繊維の分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはメチル基である。
水素原子以外の置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、イミノ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
【0028】
一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)として具体的には、ホルムアミド基、アセチルアミド基、プロピオン酸アミド基、ブチル酸アミド基、ヘキシル酸アミド基、シクロヘキシル酸アミド基、オクチル酸アミド基及びベンゾイルアミド基等が挙げられる。
【0029】
【化6】

【0030】
一般式(5)中、R2とR3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜36の炭化水素基を表し、これらの炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0031】
一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)において、R2とR3は、R1と同様の炭化水素基が含まれ、これらの炭化水素基はR1と同様に、その一部が他の官能基に置換されていてもよい。
【0032】
一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)としては、メチルイミノ基等が挙げられる。
【0033】
【化7】

【0034】
一般式(6)中、R4は、炭素数1〜36の炭化水素基を表す、又は多価アルコール若しくは糖から1つのヒドロキシル基を除いた残基を表す。
この炭化水素基はその水素原子一部が他の官能基、例えば、ヒドロキシル基、メトキシル基、エトキシル基、ニトロ基及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる官能基で置換されていてもよい。
【0035】
一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)において、R4が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、その炭化水素基は、前記R1と同様の炭化水素基が含まれる。
4が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、これらの炭化水素基のうち、繊維の分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはエチル基である。
【0036】
多価アルコールとしては、2価〜3価のアルコールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
糖としては、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール及びトレハロース等が挙げられる。
【0037】
【化8】

【0038】
一般式(7)中、R5は、水素原子又は炭素数1〜36の炭化水素基を表し、この炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0039】
一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)において、R5が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、その炭化水素基としては、前記R1と同様の炭化水素基が含まれ、これらの炭化水素基はR1と同様に、その一部が他の官能基に置換されていてもよい。
5が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、これらの炭化水素基のうち、繊維の分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはメチル基である。
【0040】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)がアルギニン誘導体の塩の場合、無機酸塩(塩酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩等)及び有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩及びピロメリット酸塩等)が挙げられる。
【0041】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)の化合物として具体的に、N−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩が挙げられる。
【0042】
グアニジン誘導体又はその塩(B−3)としては、Qを特に限定するものではないが、具体的にアミノグアニジン(−NH2)、ジシアンジアミド(−CN)、グアニルチオウレア(−C(=S)NH2)、ドデシルグアニジン(−C1225)、エチルグアニジン(−C25)、オクチルグアニジン(−C817)及びビグアニド(−C(=NH)NH2)が挙げられる。ここで、()内はQを表す。
【0043】
これらのうち、洗浄性の持続性及び繊維の分解性能の持続性の観点で、好ましくは(B−1)及び(B−2)であり、さらに好ましくは、(B−2)であり、特に好ましいのはN−α−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩である。
【0044】
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる化合物(B)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の持続性の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.03〜10、次にさらに好ましくは0.05〜5である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる化合物(B)の含有量は、繊維の分解性能の持続性の観点から、酵素(a)の重量に対し、1〜1000重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜500重量%、次にさらに好ましくは10〜300重量%である。
【0045】
本発明の繊維処理用薬剤は化合物(A)のみを含有すればよいが、繊維の分解性能の持続性の観点から、化合物(A)及び化合物(B)を含有することが好ましい。
【0046】
(A)及び(B)を含有する場合、繊維の分解性能の持続性の観点から、(A)と(B)との重量比((A)の重量/(B)の重量)は0.1〜9が好ましく、さらに好ましくは0.2〜8であり、特に好ましくは0.5〜5である。
【0047】
本発明における必須成分である酵素(a)としては、繊維処理用に使用する従来のものが使用でき、例えばプロテアーゼ(a−1)、アミラーゼ(a−2)、リパーゼ(a−3)及びセルラーゼ(a−4)等が挙げられる。
【0048】
プロテアーゼ(a−1)としては、動物、植物又は微生物起源のものが含まれ、入手しやすさの観点から、微生物起源のものが好ましい。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。プロテアーゼのうち、効果の持続性の観点から、セリンプロテアーゼが好ましく、具体的に、サブチリシン、特にバシラス菌(Bacillus)由来のもの、例えばサブチリシン Novo、サブチリシン Carlsberg、サブチリシン 309、サブチリシン 147及びサブチリシン 168及び、トリプシン(例えば、ブタ又はウシ起源のもの)及びフザリウム(Fusarium)プロテアーゼ、パパインが挙げられる。
【0049】
市販のプロテアーゼとしては、ノボザイムス社のAlcalaseTM、SavinaseTM、PrimaseTM、DurazymTM及びEsperaseTM並びにジェネンコア社のPurafectTM及びPurafect OXPTM等が挙げられる。
【0050】
アミラーゼ(a−2)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。アミラーゼとしては、例えば、英国特許第1,296,839号明細書に詳細に記載されているB.リヘニフォルミス(B. licheniformis)の特殊株から得られるα−アミラーゼが挙げられる。
市販のアミラーゼとしては、ノボザイムス社の DuramylTM、TermamylTM、FungamylTM及びBANTM並びにGist−Brocades社のRapidaseTM及びMaxamyl PTMが挙げられる。
【0051】
リパーゼ(a−3)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。リパーゼの例としては、フミコーラ・ランギノーザ(Humicola lanuginosa)リパーゼ(欧州特許第258 068号明細書及び欧州特許第305 216号明細書)、リゾムーコル・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ及びカンジダ(Candida)リパーゼ(欧州特許第238 023号明細書)、C.アンタークティカ(C.ntarctica)リパーゼA及びB、シュードモナス(Pseudomonas)リパーゼ(欧州特許第214 761号明細書)、P.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)及びP.アルカリゲネス(P.alcaligenes)リパーゼ(欧州特許第218 272号明細書)、P.セパシア(P.cepacia)リパーゼ(欧州特許第331 376号明細書)、P.スタッツェリ(P.stutzeri)リパーゼ、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)リパーゼ及びバシラス(Bacillus)リパーゼ(英国特許第1,372,034号明細書)、B.サチリス(B.subtilis)リパーゼ(Dartois 他(1993), Biochemica et Biophysica Acta1131,253−260)、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)リパーゼ(特公昭64−744992号公報)並びにB.ピュミルス(B.pumilus)リパーゼ(国際公開第91/16422号)が挙げられる。
【0052】
市販のリパーゼとしては、ジェネンコア社の M1 LipaseTM、Luma fastTM及びLipomaxTM、ノボザイムス社のLipolaseTM及びLipolase UltraTM並びに天野エンザイム社のLipase P“Amano”TMが挙げられる。
【0053】
セルラーゼ(a−4)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。セルラーゼとしては、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)から生産される真菌セルラーゼとして米国特許第4,435,307号明細書に開示されているものが含まれる。
【0054】
市販のセルラーゼとしては、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)の株により生産されたノボザイムス社のCelluzymeTM及び花王社のKAC−500(B)TMが挙げられる。
【0055】
上記の酵素(a)のうち、繊維の分解性の観点で、プロテアーゼ(a−1)、リパーゼ(a−2)及びセルラーゼ(a−3)が好ましい。
【0056】
本発明において、繊維処理用薬剤に含まれる酵素(a)は、2種以上を含むことができる。2種以上を含む場合の組み合わせとしては、プロテアーゼ2種以上、プロテアーゼとアミラーゼ、プロテアーゼとリパーゼ又はプロテアーゼとアミラーゼとリパーゼを含む組み合わせが挙げられる。
【0057】
本発明の繊維処理用薬剤に含まれる酵素(a)の含有量は、繊維の分解性の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し、0.01〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%、0.1〜2重量%である。
【0058】
本発明の必須成分である水は、特に限定するものではなく、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。
【0059】
本発明の繊維処理用薬剤に含まれる水の含有量は、繊維の分解性能の持続性の観点から、繊維処理用薬剤の重量に対し、35〜99.9重量%が好ましく、さらに好ましくは65〜99.9重量%、次にさらに好ましくは77〜99.9重量%、特に好ましくは87〜99.8重量%、次に特に好ましくは88〜99.8重量%、さらに特に好ましくは93〜99.8重量%、最も好ましくは95〜99.8重量%である。
【0060】
本発明の繊維処理用薬剤には、繊維の分解性能を向上させるために、上記の化合物(A)、(B)、酵素(a)及び水以外に、漂白剤(b)、界面活性剤(c)、水混和性有機溶剤(d)、無機塩(e)、糖(f)、アルギニン以外のアミノ酸(g)、pH調整剤(h)及び防腐剤(i)を含有することができる。
【0061】
漂白剤(b)として、繊維処理用薬剤に用いられている公知の物質を用いることができ、例えば、過酸化水素等の酸素系漂白剤が挙げられる。
【0062】
界面活性剤(c)として、ノニオン性界面活性剤(c−1)、アニオン性界面活性剤(c−2)、カチオン性界面活性剤(c−3)及び両性界面活性剤(c−4)が挙げられる。
【0063】
ノニオン性界面活性剤(c−1)としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[オレイルアルコールエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物等]、脂肪族アミン(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[ヘキサデシルアミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、ラウリルアミンエチレンオキサイド付加物、ステアリルアミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)グリコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)及びジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール及びモノラウリン酸ソルビタン等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(ポリ)アルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜8,重合度=1〜100)[ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド(重合度=10)付加物及びメチルグルコースジオレエートエチレンオキサイド(重合度=50)付加物等]、脂肪酸N−ヒドロキシアルキルアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及び1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、アルキル(炭素数1〜22)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)フェニルエーテル、アルキル(炭素数8〜24)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)−アミノアルキル(炭素数8〜24)−エーテル及びアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0064】
アニオン性界面活性剤(c−2)としては、炭素数8〜24のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンエーテルカルボン酸又はその塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸ナトリウム及びラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸−トリエタノールアミン塩等]、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸スルホン酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキルリン酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0065】
カチオン性界面活性剤(c−3)としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]及びアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0066】
両性界面活性剤(c−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0067】
界面活性剤(c)としては、1種又は2種以上が使用出来る。2種以上を使用する場合、その組み合わせとしては、例えばノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0068】
水混和性有機溶剤(d)としては、水100gに対する溶解度が10g以上の溶剤であれば特に限定するものではないが、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール及びソルビトール等が挙げられる。
【0069】
無機塩(e)として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0070】
糖(f)として、トレハロース、スクロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸等が挙げられる。
【0071】
アルギニン以外のアミノ酸(g)として、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ロイシン、リシン、ヒスチジン及びそれらの塩等が挙げられる。
【0072】
pH調整剤(h)としては、従来のpH調整剤が使用でき、例えば、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー及びクエン酸等が挙げられる。
【0073】
防腐剤(i)としては、従来の防腐剤を用いることができる。例えば、パラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸及びフェノール等が挙げられる。
【0074】
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる漂白剤(b)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の持続性の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜1、次にさらに好ましくは0〜0.5である。
本発明の繊維処理用薬剤に含まれる界面活性剤(c)の含有量は、繊維の分解性能の持続性の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜40重量%、特に好ましくは2〜30重量%である。
本発明の繊維処理用薬剤に含まれる水混和性有機溶剤(d)の含有量は、繊維の分解性能の観点から、繊維処理用薬剤の重量に対し、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる無機塩(e)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0〜40が好ましく、さらに好ましくは0〜30、次にさらに好ましくは0〜20である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる糖(f)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜5、次にさらに好ましくは0〜3である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれるアミノ酸(g)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜5、次にさらに好ましくは0〜3である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれるpH調整剤(h)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜1である。
本発明の繊維処理用薬剤中に含まれる防腐剤(i)の含有量(重量%)は、繊維の分解性能の観点から繊維処理用薬剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜2である。
【0075】
本発明の繊維処理用薬剤は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)水に、化合物(A)及び必要により化合物(B)を加え、25℃で均一になるまで撹拌する。
(2)酵素(a)以外の成分を所定量添加し均一に溶解させる。
(3)最後に酵素(a)を添加し溶解させ、繊維処理用薬剤を製造する。
【0076】
本発明の繊維処理用薬剤は、セルロース、ウール等の天然繊維、ポリエステル等の合成繊維及び綿/ウール混紡、綿/ポリエステル混紡等の混紡繊維の染色性及び風合い改良等を目的とした糊抜き処理薬剤、油分除去処理薬剤、褪色処理薬剤及び減量処理用薬剤として使用できる。
【0077】
本発明の繊維処理用薬剤は、酵素を使用する従来の処理剤と同様に使用することができる。例えば、槽に繊維処理剤と50〜100倍量の水を加え均一にし、温調した後、生地を1〜10時間程度浸漬する。
【実施例】
【0078】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
<製造例1>
N−α−アセチルアルギニン{アルギニンアセトアミド、株式会社エムピーバイオジャパン}12.6部(0.05モル部)、メタンスルホン酸1部及びエタノール92部(2モル部)を均一混合し、80℃で5時間加熱攪拌し、エバポレーターで濃縮後、塩酸(濃度:35重量%)5.2部(0.05モル部)を加え中和した。その後、水から再結晶し、減圧乾燥{60℃、20Pa}して、化合物(B)であるN−α−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩を得た。
【0080】
<実施例1〜13>
表1の割合で25℃で配合し、本発明の繊維処理用薬剤を作製した。
【0081】
<比較例1〜12>
表2の割合で25℃で配合し、比較用の繊維処理用薬剤を作製した。
【0082】
<分解性能試験>
繊維処理用薬剤の分解性能試験を、繊維に対する減量試験でおこなった。
<綿に対する分解性能試験>
綿糸(直径1mm)を30cmの長さに切り、10本ずつ束ねてその両端を結び、メタノールに一晩浸漬した後、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間乾燥し、性能試験用のサンプルを作製した。この綿糸束を15mLの試験管に入れ、実施例1〜6、11〜13及び比較例1、4、5、10〜12の繊維処理用薬剤0.2mLをそれぞれ加え、さらにリン酸バッファー(pH=7)9.8mLをそれぞれ加えて、50℃、160回/分で8時間振とうした。振とう処理終了後、綿糸を処理液から取り出し、イオン交換水100mlで2分洗浄した後、メタノール100mlで2分洗浄し、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間減圧乾燥した。処理前と処理後の繊維について重量を測定し、作製直後の繊維処理用薬剤を使用した繊維の減量率を算出した。
作製直後の繊維の減量率は以下の式で算出した。

作製直後の繊維の減量率(%)=(処理前の重量−処理後の重量)/(処理前の重量)×100

結果を表1、表2に示す。
【0083】
<ウールに対する性能試験>
ウール糸(直径1mm)を30cmの長さに切り、10本ずつ束ねてその両端を結び、メタノールに一晩浸漬した後、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間乾燥し、性能試験用のサンプルを作製した。このウール糸束を15mLの試験管に入れ、実施例7、比較例2及び6の繊維処理用薬剤0.2mLをそれぞれ加え、さらにリン酸バッファー(pH=8)9.8mLをそれぞれ加えて、40℃、160回/分で8時間振とうした。振とう処理終了後、ウール糸を処理液から取り出し、イオン交換水100mlで2分洗浄した後、メタノール100mlで2分洗浄し、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間減圧乾燥した。処理前と処理後の繊維について重量を測定し、作製直後の繊維処理用薬剤を使用した繊維の減量率を算出した。
作製直後の繊維の減量率は以下の式で算出した。
作製直後の繊維の減量率(%)=(処理前の重量−処理後の重量)/(処理前の重量)×100

結果を表1、表2に示す。
【0084】
<ポリエステルに対する性能試験>
ポリエステル糸(直径1mm)を30cmの長さに切り、10本ずつ束ねてその両端を結び、メタノールに一晩浸漬した後、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間乾燥し、性能試験用のサンプルを作製した。このポリエステル糸束を15mLの試験管に入れ、実施例8及び比較例3、7の繊維処理用薬剤0.2mLをそれぞれ加え、さらにリン酸バッファー(pH=8)9.8mLをそれぞれ加えて、50℃、160回/分で8時間振とうした。振とう処理終了後、ポリエステル糸を処理液から取り出し、イオン交換水100mlで2分洗浄した後、メタノール100mlで2分洗浄し、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間減圧乾燥した。処理前と処理後の繊維について重量を測定し、作製直後の繊維処理用薬剤を使用した繊維の減量率を算出した。
作製直後の繊維の減量率は以下の式で算出した。
作製直後の繊維の減量率(%)=(処理前の重量−処理後の重量)/(処理前の重量)×100

結果を表1、表2に示す。
【0085】
<綿/ウール混紡に対する性能試験>
上記綿糸及びウール糸を30cmの長さに切り、それぞれ5本、計10本ずつ束ねてその両端を結び、メタノールに一晩浸漬した後、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間乾燥し、性能試験用のサンプルを作製した。この綿糸及びウール糸の束を15mLの試験管に入れ、実施例9及び比較例8の繊維処理用薬剤0.2mLをそれぞれ加え、さらにリン酸バッファー(pH=8)9.8mLをそれぞれ加えて、40℃、160回/分で8時間振とうした。振とう処理終了後、綿糸及びウール糸の束を反応液から取り出し、イオン交換水100mlで2分洗浄した後、メタノール100mlで2分洗浄し、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間減圧乾燥した。処理前と処理後の繊維について重量を測定し、作製直後の繊維処理用薬剤を使用した繊維の減量率を算出した。
作製配合直後の繊維の減量率は以下の式で算出した。
作製直後の繊維の減量率(%)=(処理前の重量−処理後の重量)/(処理前の重量)×100

結果を表1、表2に示す。
【0086】
<綿/ポリエステル混紡に対する性能試験>
上記綿糸及びポリエステル糸を30cmの長さに切り、それぞれ5本、計10本ずつ束ねてその両端を結び、メタノールに一晩浸漬した後、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間乾燥し、性能試験用のサンプルを作製した。この綿糸及びポリエステル糸の束を15mLの試験管に入れ、実施例10及び比較例9の繊維処理用薬剤0.2mLをそれぞれ加え、さらにリン酸バッファー(pH=8)9.8mLをそれぞれ加えて、50℃、160回/分で8時間振とうした。振とう処理終了後、綿糸及びポリエステル糸の束を処理液から取り出し、イオン交換水100mlで2分洗浄した後、メタノール100mlで2分洗浄し、減圧乾燥機(25℃、0.2kPa)で7時間減圧乾燥した。処理前と処理後の繊維について重量を測定し、作製直後の繊維処理用薬剤を使用した繊維の減量率を算出した。
作製直後の繊維の減量率は以下の式で算出した。
作製直後の繊維の減量率(%)=(処理前の重量−処理後の重量)/(処理前の重量)×100

結果を表1、表2に示す。
【0087】
<保管後の性能試験>
実施例1〜10、比較例1〜9の繊維処理用薬剤を25℃で3ヶ月保管した後、上記と同様に性能試験を行い、3ヶ月保管後の繊維処理用薬剤を使用した繊維の減量率を算出した。結果を表1、表2に示す。
<分解能の持続性>
分解性能の持続性は下記の式で算出した。
分解性能の持続性(%)=(3ヶ月保管後の繊維の減量率)/(作製直後の繊維の減量率)×100

結果を表1、2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表1及び2中の化合物(A)、化合物(B)及び酵素(a)は下記のものを使用した。
グアニジン塩酸塩:和光純薬工業製
尿素:和光純薬工業製
アルギニン塩酸塩:和光純薬工業製
セルラーゼ:和光純薬工業製
プロテアーゼ:和光純薬工業製
リパーゼ:和光純薬工業製
【0091】
表2より、比較例1〜9の繊維処理用薬剤は、綿繊維、ウール、ポリエステル、綿/ウール混紡、綿/ポリエステル混紡の全ての繊維に対して、作製直後のものを使用した場合に比べて、25℃で3ヶ月保管後のものを使用した場合の繊維の減量率が低下しており、分解性能の持続性が低下していることがわかる。また、比較例10〜12の繊維処理用薬剤は、作製直後及び25℃で3ヵ月保存後のものを使用した場合の繊維の減量率が0であり、分解性能がないことがわかる。
一方、表1の本発明の繊維処理用薬剤である実施例1〜13は、どの繊維に対しても、作製直後のものを使用した場合に比べて25℃で3ヶ月保管後のものを使用した場合の繊維の減量率がの維持されており、3ヶ月保管後も分解性能が持続していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の繊維処理用薬剤は、酵素による繊維の分解性能を持続できる。そのため、綿、ウール、ポリエステル、綿/ウール混紡、綿/ポリエステル混紡等の繊維処理用薬剤として幅広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する繊維処理用薬剤。
【化1】

[式中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【請求項2】
酵素(a)がセルラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項1記載の繊維処理用薬剤。
【請求項3】
化合物(A)がグアニジン塩酸塩である請求項1又は2に記載の繊維処理用薬剤。
【請求項4】
さらに下記一般式(2)で表される化合物(B)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の繊維処理用薬剤。
【化2】

[式中、Qは、アミノ基又はアルキル基を表し、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の基に置換されていてもよい。]
【請求項5】
化合物(A)の含有量が繊維処理用薬剤の重量を基準として0.01〜30重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維処理用薬剤。

【公開番号】特開2011−226046(P2011−226046A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75492(P2011−75492)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】