説明

繊維及びその製造方法

【課題】充分な反射率を示し、軽量で、断熱性に優れ、製造が容易な繊維及びその効率的な製造方法の提供。
【解決手段】結晶性を有するポリマーのみからなり、内部に空洞を有することを特徴とする繊維等である。空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)とし、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上500以下である態様、長さ方向に直交する方向における該繊維の断面積X(μm)に対する空洞の断面積Y(μm)の比(Y/X)の平均が0.05以上、0.4以下である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量感に優れ、対反射性を有する繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維の機能性や審美性を向上させるべく、様々な努力がなされている。例えば、繊維の断面形状を変化させ、吸水性を向上させたり、ポリマーを改質させることで、軽量性を高めたり、フィブリル性を向上させたり、深色性を向上させたりしている(例えば、特許文献1参照)。
一方、繊維の審美性を向上させるために、屈折率の異なる二種類のポリマーを交互に積層し、それらを保護層で被覆して、構造性発色を発現する機能を有する複合繊維などが各種提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された中空構造の繊維の製糸方法は、繊維の軽量化のために、高い中空率を達成しようとすると、口金の吐出孔から溶融吐出されるポリマーを貼り合せる技術が必要であり、工程が煩雑であった。
また、繊維の強度を保ちながら、軽量化を目的として中空構造を採用しているため、断熱性が低かった。そのため、混紡して衣料などに用いる場合、断熱性を必要とされる衣料には採用されにくいという欠点があった。
【0004】
また、特許文献2に記載の複合繊維においても審美性が要求される衣料に適用することができるが、軽量化を目的としていないので、大量の繊維が使用される衣料には採用されにくいという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−256243号公報
【特許文献2】特許第3356438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、審美性として充分な金属光沢を示し、軽量で、断熱性が高い繊維及び該繊維の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性を有するポリマーのみからなり、内部に空洞を有することを特徴とする繊維である。
<2> 空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)とし、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上、100以下である前記<1>に記載の繊維である。
<3> 長さ方向に直交する方向における該繊維の断面積X(μm)に対する空洞の断面積Y(μm)の比(Y/X)の平均が0.05以上、0.4以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の繊維である。
<4> 該繊維の透過率をM(%)とし、該繊維の結晶性を有するポリマーと同一の結晶性を有するポリマーからなり、該繊維と同じ厚みであってかつ空洞を有しない繊維の透過率をN(%)としたときのM/N比が0.2以下であり、かつ、該繊維の光沢度が50以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の繊維である。
<5> 空洞の配向方向に直交する厚み方向の任意の断面における空洞の平均の個数をP個とし、結晶性を有するポリマー部の屈折率をN1とし、空洞の屈折率をN2とし、N1とN2との差をΔN(=N1−N2)とするとき、ΔNとPとの積が2以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の繊維である。
<6> 結晶性を有するポリマーが一種のみからなる前記<1>から<5>のいずれかに記載の繊維である。
<7> 結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類及びポリアミド類から選択される少なくとも1種である前記<1>から<6>のいずれかに記載の繊維である。
<8> 結晶性を有するポリマーのみからなる樹脂組成物を溶融紡糸し、10〜2,000m/minの速度で、かつ、
延伸温度をT(℃)、該結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)≦T≦(Tg+50)
で表される延伸温度T(℃)で延伸して得られた前記<1>から<7>のいずれかに記載の繊維である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の繊維の製造方法であって、
結晶性を有するポリマーのみからなる樹脂組成物を溶融紡糸する工程と、
10〜2,000m/minの速度で、かつ、
延伸温度をT(℃)、該結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)≦T≦(Tg+50)
で表される延伸温度T(℃)で延伸する工程と、を含むことを特徴とする繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、審美性として充分な金属光沢を示し、軽量で、断熱性が高い繊維及び該繊維の効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(繊維)
図1は、本発明の繊維の長さ方向に直交する方向における断面図である。図1に示すように、本発明の繊維10は、内部に空洞100を有する。
本発明の繊維10は、結晶性を有するポリマーのみからなる樹脂組成物を溶融紡糸し、高速延伸することによって作製される。具体的には、前記樹脂組成物を乾燥し、押出成型機で溶融し、溶融紡糸口金から溶融吐出し、冷却風で冷却し、その後、巻き取って、高速延伸を行うことにより作製される。
【0010】
<繊維の光沢度>
本発明の繊維の光沢度としては、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。
ここで、前記光沢度は、変角光沢計により測定することができる。
【0011】
<樹脂組成物>
前記樹脂組成物は、結晶性を有するポリマーで形成され、ポリマー成分としては、該結晶性を有するポリマーのみであるが、ポリマー以外の成分としては、必要に応じて適宜選択した添加成分を含んでいてもよい。
前記樹脂組成物の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状やシート状が挙げられる。
また、前記樹脂組成物の構造としては、一種単独、二以上の材料で複合材料としてもよく、この例として、該樹脂組成物の切片を他のシートに組み込み、一体化して樹脂組成物としてもよい。
【0012】
<<結晶性を有するポリマー>>
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられる。前記結晶性ポリマーは、通常、100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
本発明において、前記結晶性を有するポリマーは、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0013】
前記結晶性を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ポリオレフィン類、ポリエステル類及びポリアミド類から選択される少なくとも1種であって、例えば、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール(POM)、ポリエステル(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PBNなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、などが挙げられる。その中でも、力学強度や製造の観点から、ポリエステル、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー(LCP)が好ましく、ポリエステルがより好ましい。また、これらのうちの二種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0014】
前記結晶性を有するポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000Pa・sが好ましく、70〜750Pa・sがより好ましく、80〜450Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が、50〜1,000Pa・sであると、溶融紡糸時に口金から吐出される溶融紡糸の形状が安定し、均一に製糸しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が、50〜1,000Pa・sであると、溶融紡糸時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製糸時の径が安定する点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0015】
前記結晶性を有するポリマーの極限粘度(IV:Intrinsic Viscosity)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.5が好ましく、0.6〜1.2がより好ましく、0.7〜1.0が更に好ましい。前記IVが、0.4〜1.5であると、製糸された糸の引っ張り強度が高くなり、効率よく延伸することができる。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0016】
前記結晶性を有するポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、150〜260℃が更に好ましい。前記融点が、40〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で径を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製糸ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0017】
前記結晶性を有するポリマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜800,000がより好ましく、15,000〜700,000が更に好ましい。前記重量平均分子量が、5,000以下だと延伸時に破断する懸念があり、前記重量平均分子量が1,000,000以上になると延伸しにくい可能性があること、延伸しても空洞が発現しにくい懸念があり、15,000〜700,000であると、延伸プロセスの容易性と空洞の発現容易性の両立という点で好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC Gel Permeation Chromatography)法により測定することができる。
【0018】
−ポリエステル樹脂−
ここで、前記結晶性を有するポリマーのうち、力学強度や製造の観点から、本発明において特に好ましく用いられるポリエステル樹脂について説明する。
前記ポリエステル樹脂は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とするポリマーである。したがって、前記結晶性を有するポリマーとして好適な前記ポリエステルとしては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0019】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられ、中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0020】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0021】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキシンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0022】
前記ジオ−ル成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0023】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時に空洞を発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融紡糸時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定する点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。更に、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融紡糸時に口金から吐出される溶融紡糸の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0025】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時に空洞を発現しやすいが、前記IVが、0.4〜1.2であると、溶融紡糸時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定する点で好ましい。また、前記IVが、0.4〜1.2であると、溶融紡糸時に溶融樹脂のフィルターを設置した場合であっても、フィルターに負荷がかかりにくく、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなる点で好ましい。更に、前記IVが、0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが、0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0026】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製糸性などの観点から、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましい。
【0027】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ一種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、二種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、二種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0028】
前記二種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0029】
また、前記ポリエステルの流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0030】
このように、本発明の繊維は、従来技術において添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程で空洞を形成させることができる。更に、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、繊維の製造方法については、後記する。
【0031】
ここで、本発明の繊維は、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、フィラー、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、難燃剤、離型剤、分散剤、カップリング剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性を有するポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0032】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系化合物、イオウ系化合物、リン系化合物が挙げられ、中でも、公知のヒンダードフェノールが挙げられる。前記ヒンダードフェノールとしては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0033】
前記離型剤としては、カルナバワックス等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、高級脂肪酸誘導体としては、ラウリン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と一価又は二価以上のアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0034】
前記難燃剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、臭素系難燃剤が特に好ましい。臭素系難燃剤としては、高分子量有機ハロゲン化合物、低分子量有機ハロゲン化合物等の有機ハロゲン系難燃剤を単独で使用しても、二種以上併用してもよい。また、リン系、無機系等の難燃剤を用いてもよい。
【0035】
<空洞>
本発明の繊維は、空洞を有し、前記空洞のアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、樹脂成形体内部に存在する、真空状態のドメインもしくは気相のドメインを意味する。
【0036】
図3A〜3Cは、アスペクト比を説明するための図であって、図3Aは、本発明の繊維の斜視図であり、図3Bは、図3Aにおける本発明の繊維のA−A’断面図であり、図3Cは、図3Aにおける本発明の繊維のB−B’断面図である。
【0037】
前記アスペクト比とは、本発明の繊維10の表面10aに直交し、かつ、前記空洞の配向方向に直交する方向における空洞100の平均の長さをr(μm)(図3B参照)とし、本発明の繊維の表面に直交し、かつ、前記空洞の配向方向における空洞100の平均の長さをL(μm)(図3C参照)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上、100以下であることが好ましく、15以上100以下がより好ましく、20以上90以下が更に好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると反射率が低下することがあり、100を超えると断熱性が低下、力学特性の低下がおこることがある。前期アスペクト比が10以上、100以下であると、反射、断熱などの諸性能と力学特性の両立の点で有利である。
【0038】
<繊維の透過性>
繊維の透過性とは、文字通り繊維を衣服などの束ねたときの見た目の透過のことであって、樹脂組成物の透過率をN(%)とし、繊維を束ねた平面にしたときの想定平面に対する光の透過率をM(%)とし、M/N比を算出した。
前記M/N比は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2以下が好ましい。0.19以下がより好ましく、0.18以下が特に好ましい。
前記M/N比が、0.2を超えると反射率が落ちて、繊維にしたときの見た目の印象が低下することがある。
なお、透過率は、分光光度計により測定することができる。
【0039】
<繊維の光沢度>
繊維の光沢度とは、文字通り繊維を衣服などの束ねたときの見た目の光沢性のことである。
前記光沢度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50以上が好ましく、70以上がより好ましく、90以上が特に好ましい。
【0040】
なお、前記空洞の配向方向とは、延伸が一軸のみの場合には、その一軸の延伸方向(第一の延伸方向)を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記空洞の配向方向(第一の延伸方向)に相当する。
また、延伸が二軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも一方向を示す。通常は、二軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記空洞の配向方向(第一の延伸方向)に相当する。
【0041】
<空洞の占有面積>
また、本発明の繊維は、その長さ方向に直交する任意の断面における繊維の断面積をX(μm)とし、前記断面における空洞の断面積をY(μm)としたとき、これらの比(Y/X)の平均が0.05以上、0.4以下であることが好ましい。
なお、前記断面における各断面積は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0042】
また、本発明の繊維は、膜厚方向の空洞の平均の個数P、結晶性を有するポリマー部と空洞との屈折率差ΔN、及び、前記ΔNと前記Pとの積に、特徴を有している。
前記膜厚方向の空洞の個数とは、本発明の繊維10の表面10aに直交し、かつ、前記空洞の配向方向に直交する方向を含む面(図3AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数を意味する。
また、前記結晶性を有するポリマー部とは、前記繊維において空洞以外の部分(結晶性を有するポリマーよりなる部分)を指す。
前記膜厚方向の空洞の平均の個数Pとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
ここで、前記膜厚方向の空洞の個数は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0043】
前記結晶性を有するポリマー部と空洞との屈折率差ΔNとは、具体的には、を有するポリマー部の屈折率をN1として、空洞の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。
ここで、結晶性を有するポリマー部や空洞の屈折率N1、N2は、アッベ屈折計などにより測定することができる。
前記ΔNと前記Pとの積は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。
前記ΔNと前記Pとの積が、2未満であると反射率が低下したり、断熱性が低下することがある。
【0044】
このように、本発明の繊維は、その内部に前記空洞を有していることにより、例えば、反射率や光沢性などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、本発明の繊維の内部の空洞の態様を変化させることで、反射率や光沢性などの特性を調節することができる。
【0045】
−光沢度−
本発明の繊維の光沢度としては、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。
ここで、前記光沢度は、変角光沢計により測定することができる。
【0046】
更に、本発明の繊維は、前記空洞を有しつつも、従来技術において添加されていた、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂などや不活性ガスを添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
本発明の繊維の表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下が更に好ましく、Ra=0.1μm以下が特に好ましい。
【0047】
<本発明の繊維の製造方法>
本発明の繊維の製造方法としては、少なくとも樹脂組成物を溶融紡糸する溶融紡糸工程と、紡糸された該樹脂組成物を延伸する延伸工程とを含んでなり、更に必要に応じて製膜工程などのその他の工程を含んでなる。
なお、前記樹脂組成物の材料としては、結晶性を有するポリマーで形成され、ポリマー成分としては、該結晶性を有するポリマーのみであるが、ポリマー以外の成分としては、必要に応じて適宜選択した添加成分を含んでいてもよい。
また、前記樹脂組成物の構造としては、その内部に空洞が形成されていなければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記樹脂組成物の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフィルム状や、シート状などが挙げられる。
【0048】
<<紡糸工程>>
前記紡糸工程は、前記樹脂組成物を、小さな孔が多数形成されたノズルから押し出して繊維状にする工程であり、紡糸方法として、例えば、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸などが挙げられるが、これらの中でも、溶融紡糸が好ましい。
【0049】
前記溶融紡糸は、ポリマーを加熱溶融させて高温の粘稠な液状にしたものを、冷たい雰囲気(通常は冷空気)中へ紡出して引き伸ばし、固化させて繊維にする工程である。湿式紡糸や乾式紡糸に比べて工程が簡素であり、紡糸速度も格段に速くすることができるが、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、PBT、PTT、ポリ乳酸など、約300℃以下で溶融するポリマーに限られる。
【0050】
本発明における紡糸工程では、後工程である延伸工程にて紡糸された樹脂組成物の延伸を行うため、未延伸糸(UDY:undrawn yarn)を作製する工程とする。ここで、未延伸糸とは、繊維の形をしているが、分子鎖の配向度が低く、3〜4倍まで容易に伸ばすことができて元に戻らない糸をいい、通常、2,000m/分程度以下の紡糸速度で製造される。
【0051】
<<延伸工程>>
図2に示すように、上記のようにして得られた溶融紡糸した原糸21は、たとえば、25〜150℃に調整された加熱炉30内に挿入され、ニップロール41と42の回転速度差をつけて引張力を付与することにより延伸し、ネッキングを起こすことにより空洞を有する繊維が作製される。場合によっては、加熱炉を除き、ニップロールを加温(25〜150℃)するだけでも同様の本発明の繊維10を作製できる。図2中31はアニーリング処理炉、32は巻き取り装置を表す。
具体的には、紡糸された前記樹脂組成物(未延伸糸)が少なくとも一軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、樹脂組成物が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向を長軸とした空洞が形成されることで、本発明の繊維10が得られる。
【0052】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記樹脂組成物を構成する少なくとも一種類の結晶性を有するポリマーが、延伸時に伸張し難い結晶を含む相で、硬い結晶間の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性を有するポリマーが一種類の場合だけではなく、二種類以上の結晶性を有するポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0053】
一般に、延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
ここで、前記ネッキングとは、前記ポリマー成形体の延伸時に生じるくびれ状の変形を意味する(高分子工学講座6 プラスチック成形加工 高分子学会編集、地人書院発行、昭和41年4月25日初版発行参照)。また、前記延伸時において、前記ポリマー形成体がくびれながら変形し、くびれ部分では急激に断面が減少する現象を「ネッキングが発現した」と定義する。
【0054】
−−延伸速度−−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜2,000m/minが好ましく、15〜1,000m/minがより好ましく、20〜1,000m/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10m/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、2,000m/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、糸が破断しづらくなり、特に、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせず、コストを低減できる点で好ましい。
【0055】
−−延伸温度−−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)≦T≦(Tg+50)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)≦T≦(Tg+45)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)≦T≦(Tg+40)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0056】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞が形成される体積割合が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすい点で好ましい。また、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上であると、充分に空洞が発現する点で好ましい。
【0057】
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0058】
なお、前記延伸工程において、延伸後の樹脂組成物は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加える等の処理をしたりしてもよい。
【0059】
また、前記樹脂組成物の製造は、前記延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
<樹脂組成物(未延伸糸)の作製>
ポリブチレンテレフタレート100%樹脂PBT1(富士フイルム社内で作製)の極限粘度(IV)をウベローデ型粘度計により測定したところ、0.8であった。
前記PBT1を、溶融紡糸機を用いて245℃で口金から押出し、樹脂組成物(未延伸糸)を得た。
【0062】
<延伸工程>
次に、得られた(未延伸糸)を45℃の加温雰囲気下で、200m/minの速度で一軸延伸(倍率:5倍)し、ネッキングが発生したことを確認した後、200m/minの速度で、初めと同一方向に同一倍率で繊維を作製した。
作製した実施例1の繊維の1,500倍の断面写真を図4に示す。この図4から、繊維内部には空洞が確認できた。
【0063】
(実施例2)
<樹脂組成物(未延伸糸)の作製>
ポリブチレンテレフタレート100%樹脂PBT2(富士フイルム社内で作製)の極限粘度(IV)を実施例1と同様にして測定したところ、1.0であった。
前記PBT2を、溶融紡糸機を用いて260℃で口金から押出し、樹脂組成物(未延伸糸)を得た。
【0064】
次に、得られた樹脂組成物(未延伸糸)を、50℃の加温雰囲気下で、300m/minの速度で、延伸(倍率:5.5倍)して繊維を作製した。
【0065】
(実施例3)
<樹脂組成物(未延伸糸)の作製>
ポリエチレンテレフタレート100%樹脂PET1(富士フイルム社内で作製)の極限粘度(IV)を実施例1と同様にして測定したところ、0.67であった。
実施例1で使用したPBT1と、前記PET1とを、PBT1:PET1=90:10で混合したものを、溶融紡糸機を用いて285℃で口金から押出し樹脂組成物(未延伸糸)を得た。
【0066】
次に、得られた樹脂組成物(未延伸糸)を、実施例1における、延伸温度を45℃から60℃にしたこと、延伸速度を、250m/minに代えて、延伸(縦延伸、倍率:5倍)したこと以外は、実施例1と同様にして繊維を作製した。
【0067】
(比較例1)
<繊維の作製>
比較例1として、特開2005−256243号公報(特許文献1)の実施例2の記載に基づき、繊維を作製した。
【0068】
(比較例2)
<繊維の作製>
比較例2として、特許第3356438号公報(特許文献2)の実施例F−1の記載に基づき、繊維を作製した。
【0069】
(比較例3)
<繊維の作製>
比較例3として、実施例2と同じポリマーを用いて、延伸温度を、50℃に変えて、100℃で延伸した以外は、実施例2と同様にして繊維を作製した。
実施例1〜3及び比較例1〜3において作製した繊維について、表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】

表1中、―は、測定していないことを示す。
比較例1は、中空構造と空隙構造を有する繊維である。
比較例2は、空洞を有さない繊維である。
比較例3は、本発明と同じ材料を用いるが、延伸温度を変えたため、空洞が発生しなかった繊維である。
【0071】
次に、前記実施例1〜3及び比較例1〜3の繊維について、以下のようにして評価を行った。測定結果を表2に示し、評価結果を表3に示す。
【0072】
<空洞の占有面積の測定>
<<空洞の断面積比>>
芯材層の断面SEMの写真を用いて画像処理を行い、全ての空洞を用いて、全体断面積と空洞部の断面積を別々に求め、空洞の断面積比を算出、評価した。
【0073】
<透過率の測定>
分光光度計(U−4100、日立製作所製)を用いて透過率N(%)を測定した。前記得られた樹脂組成物の表面の法線方向から5度傾けて光を入射させ、該樹脂組成物を透過する光の強度を、該樹脂組成物を透過させないブランクの値と比較した。波長は550nmを使用した。
また、得られた繊維に対しても、前記樹脂組成物の透過率の測定と同様にして透過率M(%)を測定した。
なお、前記樹脂組成物の透過率と、繊維の透過率との比(M/N)については、Lambert−Beerの法則に従い、前記樹脂組成物の透過率を、繊維の厚み(断面径)と同じ寸法に換算して、算出した。
【0074】
<光沢度の測定>
(A)試料板の作製
試料約0.3gをコームで繊維をくしけずり平行に引きそろえ、4.5cm平方の黒ビロード板に試料全部押さえつけながら表面が均整になるように平行に並べた。
(B)測定
プルリッヒホトメーターの回転台に試料板を置き、開閉ワクで押さえ、回転台が方向角δ=0度の位置のときの繊維の方向が光源の方に向くように取り付け、他方に標準白色板をとりつけた。フィルターはL2(フィルターの重心波長540〜550nm)を使用し、回転角δを0度とした場合の輝度H0と回転角22.5度とした場合の輝度H1を測定いた。
(C)算出
つぎの式で光沢度θを求め、2回の平均値に示した。
光沢度θ=(H1/H0)×Kδ
ここで、H0:試料の基準値(δ=0度)における輝度、H1:試料の回転位置(δ=22.5度)における輝度、Kδ:標準白色板の光沢に対する補正係数、Kδ(22.5度)=1.037とした。
【0075】
<アスペクト比の測定>
繊維の表面に直交し、かつ、縦延伸方向に直交する断面(図3B参照)と、前記繊維の表面に直交し、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図3C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直交する断面の測定枠(図3B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図3C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直交する断面の測定枠(図3B参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(r)を測定し、その平均の長さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図3C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(1)式及び(2)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(1)
L=(ΣL)/n ・・・(2)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0076】
<膜厚方向の空洞の平均の個数P>
まず、走査型電子顕微鏡により、繊維の表面に直交し、かつ、縦延伸方向に直交する断面を撮影した。
そして、断面写真において膜厚方向に(繊維の底面から上面にかけて)直線を引き、前記直線に接する空洞の個数を計測した。この作業を20本の直線について行い、平均を求めた。
【0077】
<結晶性を有するポリマー部と空洞との屈折率差ΔN>
結晶性を有するポリマー部の屈折率N1及び空洞の屈折率N2をアッベ屈折計により測定し、その差ΔN(=N1−N2)を算出した。
【0078】
<軽量性の評価>
繊維の密度を概算して軽量性の指標とし、下記評価基準に基づき評価した。空洞部は空気と仮定した。
〔評価基準〕
◎:良好
○:普通
△:やや劣る
×:不良
【0079】
<反射率の評価>
分光光度計(V−570、日本分光製)と積分球ILN−472を用いて550nmの波長で光線反射率を測定し、下記評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
◎:反射率が80%以上
○:反射率が65%以上
△:反射率が50%以上、65%未満
×:反射率が50%未満
【0080】
<保温性の評価>
保温性の評価は、本発明の織編物を製造し、熟練者5名にて以下の評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
○:かなり暖かいと感じる
△:暖かくなったと感じる
×:変化無し
【0081】
【表2】

表2中、―は、測定していないことを示す。
【0082】
【表3】

表3中、―は、比較例1と2は編み物ができないので、保温性の評価をしていないことを示す。
保温性において、比較例2は空洞がないので明らかに保温性は劣り、比較例1は中空構造の繊維なので、一段保温性が落ちる。中空ではなく、空隙を作る、静止空気の状態が一番保温性が良いといえる。
表3に示すように、実施例1から3は、繊維として、充分な反射性を示し、軽量で、保温性に優れるといった性能を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の繊維の製造方法における紡糸工程の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の繊維の製造方法における延伸工程の一例を示す図である。
【図3A】図3Aは、アスペクト比を説明するための図であって、繊維の斜視図である。
【図3B】図3Bは、アスペクト比を説明するための図であって、図3Aにおける繊維のA−A’断面図である。
【図3C】図3Cは、アスペクト比を説明するための図であって、図3Aにおける繊維のB−B’断面図である。
【図4】図4は、実施例1の繊維の断面の写真画像である。
【符号の説明】
【0084】
10 繊維
10a 表面
100 空洞
L 配向方向における空洞の長さ
r 繊維の直径方向における空洞の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有するポリマーのみからなり、内部に空洞を有することを特徴とする繊維。
【請求項2】
空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)とし、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上、100以下である請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
長さ方向に直交する方向における該繊維の断面積X(μm)に対する空洞の断面積Y(μm)の比(Y/X)の平均が0.05以上、0.4以下である請求項1から2のいずれかに記載の繊維。
【請求項4】
該繊維の透過率をM(%)とし、該繊維の結晶性を有するポリマーと同一の結晶性を有するポリマーからなり、該繊維と同じ繊度であってかつ空洞を有しない繊維の透過率をN(%)としたときのM/N比が0.2以下であり、かつ、該繊維の光沢度が50以上である請求項1から3のいずれかに記載の繊維。
【請求項5】
空洞の配向方向に直交する直径方向の任意の断面における空洞の平均の個数をP個とし、結晶性を有するポリマー部の屈折率をN1とし、空洞の屈折率をN2とし、N1とN2との差をΔN(=N1−N2)とするとき、ΔNとPとの積が2以上である請求項1から4のいずれかに記載の繊維。
【請求項6】
結晶性を有するポリマーが、一種のみからなる請求項1から5のいずれかに記載の繊維。
【請求項7】
結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類及びポリアミド類から選択される少なくとも1種である請求項1から6のいずれかに記載の繊維。
【請求項8】
結晶性を有するポリマーのみからなる樹脂組成物を溶融紡糸し、
10〜2,000m/minの速度で、かつ、
延伸温度をT(℃)、該結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)≦T≦(Tg+50)
で表される延伸温度T(℃)で延伸して得られた請求項1から7のいずれかに記載の繊維。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の繊維の製造方法であって、
結晶性を有するポリマーのみからなる樹脂組成物を溶融紡糸する工程と、
10〜2,000m/minの速度で、かつ、
延伸温度をT(℃)、該結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)≦T≦(Tg+50)
で表される延伸温度T(℃)で延伸する工程と、を含むことを特徴とする繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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