説明

繊維屑のスクリュー押出機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維屑のスクリュー押出機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】紡績、織物加工、製紙等を行う繊維工場では、繊維加工機から大量の風綿、糸屑、パルプ繊維等(以下、単に繊維屑という。)が発生するため、この繊維屑を集塵して工場外に排出する集塵設備が設けられている。従来、かかる集塵設備の最終工程には繊維屑が上部から供給されるバッグフィルター等よりなるダストコレクターが配置され、このダストコレクターの下部に着脱自在に設けた集綿袋に繊維屑を収納するようにしていたが、これでは集綿袋の交換に相当の手間を要し、その交換の際に繊維屑が飛散して環境を損なう欠点があった。
【0003】そこで、ダストコレクターの下部に繊維屑のホッパーを接続し、このホッパーの下端排出口に繊維屑の圧縮機を接続して、この圧縮機で繊維屑を硬化させて廃棄するようにした集塵圧縮装置が提案されており、この場合の圧縮機は、ホッパーの下端排出口に接続されかつ軸方向一側に開閉弁を有するシリンダ内に圧縮ピストンを軸方向出退自在に挿通して構成されている(特開平4−330981号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の圧縮機はシリンダ内に供給された繊維屑を圧縮ピストンで押し出して硬化させるものであるため、その圧縮作業がバッチ作業となって専ら作業能率が悪いという欠点がある。そこで、かかる不都合を解消すべく、上記ピストン押出方式の圧縮機の代わりに、筒状のケーシング内にスクリューフィーダーを回転自在に設け、このケーシングの先端に先細り状の筒状体を備えたスクリュー押出機を採用することが考えられる。
【0005】しかし、かかるスクリュー押出機で繊維屑を圧縮する場合、ホッパーから供給される繊維屑の量は必ずしも一定ではないので、ケーシング内に過大な繊維屑が供給されることがあり、このため繊維屑が筒状体を通過できずケーシング内で目詰まりを起こすことがある。そして、一度この目詰まりが発生すると、装置全体をストップしなければならないだけでなく、その目詰まりした繊維屑をケーシングから取り出すのに多大な手間を要する。
【0006】一方、かかる繊維屑の目詰まりを恐れて筒状体の絞り度を一律に低くすれば、繊維屑に加わる圧縮力が弱くなり、圧縮後の繊維屑が専ら嵩ばることになる。本発明は、このような実情に鑑み、ケーシング内を通過する繊維屑の量が変化しても、目詰まりを生じることなく繊維屑を適度な圧縮度で連続的に圧縮処理できる繊維屑のスクリュー押出機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明は次のような技術的手段を講じた。即ち、請求項1記載の発明は、軸方向端部に繊維屑の出口を有しかつ側部に繊維屑の供給口を有する筒状のケーシングと、このケーシング内に回転自在に挿通されたフィードスクリューとを備えた繊維屑のスクリュー押出機であって、複数の樋部材をその内側を対向させて互いに接離自在に束ねてなる先細り状の筒状体がケーシングの出口側に設けられ、この筒状体の各樋部材をその外周面から径内方向に付勢するばね手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】また、請求項2記載の発明は、上記構成に加えて、ばね手段による付勢力を調節するための調節手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
【作用】ケーシング11内に供給された繊維屑は、フィードスクリュー12によってケーシング11の出口10に搬送され、この搬送の際に先細り状の筒状体24の内面から面圧を受けて圧縮される。このとき、筒状体24の各樋部材27はばね手段34によって外周面から径内方向に付勢されているので、ケーシング11の出口10に過大な繊維屑が搬送されても各樋部材27が径外方向に開き、繊維屑の目詰まりを生じさせない。
【0010】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳述する。図1乃至図5において、本実施例に係る集塵圧縮装置1は、バッグフィルターよりなる左右一対のダストコレクター2と、このダストコレクター2の下部に接続したホッパー3と、このホッパー3の下端に接続した繊維屑のスクリュー押出機4とを備えている。
【0011】一対のダストコレクター2は、縦向き筒状のフィルター部5の上端を共通の供給ケース6に接続してなり、この供給ケース6に設けたファン7から供給される繊維屑をフィルター部5において搬送気流と分離し、繊維屑のみを下方のホッパー3に排出するものである。なお、このダストコレクター2としては、いわゆるサイクロン機構を内蔵するものを採用することができる。
【0012】ホッパー3は、板金部材を上端供給口8から下端排出口9に向かうに従って次第に小径となるテーパー筒状に形成してなり、上端供給口8にフィルター部5の下端が接続されているとともに、下端排出口9に繊維屑のスクリュー押出機4が接続されている。スクリュー押出機4は、繊維屑の出口10を端部に有する筒状のケーシング11内にフィードスクリュー12を回転自在に挿通することによって構成され、その出口10側が上向きとなるよう傾斜して配置されている。
【0013】ケーシング11は、軸心方向の任意位置の断面がほぼ同じ円形状を呈する平行筒部13を備え、この平行筒部13の前端(出口10側)には繊維屑を圧縮するための圧縮筒材15が接続され、平行筒部13の後端には駆動部17が接続されている。また、このケーシング11は、床上に設置した基台18によって軸心方向が水平に対して約40度の角度だけ傾斜した状態で支持されている。
【0014】なお、上記ホッパー3の下端排出口9はケーシング11に対応して傾斜状に形成され、この下端排出口9に、平行筒部13の側面上部に設けた方形状の供給口19が接続されている。ケーシング11の駆動部17は、フィードスクリュー12の軸部22を回転自在に支持する軸受20の側面に駆動モーター21を固定してなる。この軸受20内には、駆動モーター21の回転力をフィードスクリュー12に減速して伝える減速ギア機構が内装されている。
【0015】フィードスクリュー12は、金属製の軸部22の周面から螺旋状のフィード翼23を周設してなり、その軸部22の基端部を軸受20に挿通することによってケーシング11内に片持ち状に支持されている。このフィードスクリュー12は、先端がケーシング11の出口10に達する位置まで延設され、軸部22回りに一定方向に回転してケーシング11内に供給された繊維屑を出口10側へ搬送する。
【0016】なお、フィードスクリュー12のフィード翼23は、その外周縁がケーシング11の内面に僅かな間隙をもって近接する形状に形成されている。図1に示すように、ケーシング11の出口10側の圧縮筒材15は、ケーシング11の出口10に接続された先細り状の筒状体24と、この筒状体24の外周を覆う外筒体25と、この外筒体25の先端に接続された搬送筒体26とを備えている。
【0017】筒状体24は、図3に示すように四つの樋部材27をその内側が対向するよう互いに接離自在に束ねることによって先細りテーパー状を呈している。この各樋部材27は、左右両縁が先細りテーパー状にカットされたテーパー樋部28の基端部外周縁に円弧帯状の取付フランジ29を固着してなる。外筒体25の基端開口縁には、この外筒体25をケーシング11に接続するための固定フランジ30が形成され、この固定フランジ30はケーシング11の出口10に設けた取付リング31にボルト締結されている。
【0018】各樋部材27は、取付リング31と固定フランジ30との間で取付フランジ29を挟み込むことによって外筒体25の基端縁に揺動自在に取り付けられており、これにより、各樋部材27が外筒体25内で互いに接離自在となっている。なお、32はゴム製のスペーサーリングで、取付フランジ29とともに取付リング31と固定フランジ30との間に介装されている。
【0019】外筒体25の外周面の周方向四箇所には、軸心方向が外筒体25の径方向に向けられた有底筒状の収納筒33が固着されていて、この収納筒33内に、上記筒状体24の各樋部材27をその外周面から径内方向に付勢するコイルばね(ばね手段)34が収納されている。すなわち、各収納筒33は、その内側開口部が外筒体25の内部に連通しかつ各樋部材27の外面中央にそれぞれ対応するよう、外筒体25の外周面に溶着されており、この収納筒33内に介装したコイルばね34の内端部を各樋部材27の外面中央に圧接させることにより、各樋部材27が径内方向に付勢されている。
【0020】また、各収納筒33には、上記コイルばね34による各樋部材27への付勢力を調節する調節手段35が設けられている。この調節手段35は、収納筒33の底板36にナット37を介してタッピングされた締付ボルト38と、この締付ボルト38の内端に固定した押圧板39とを備え、この場合、締付ボルト38を外筒体25の径方向に出退させてコイルばね34の長さを変更することにより、コイルばね34の付勢力を調節できるようになっている。
【0021】次に、上記構成に係る集塵圧縮装置の作用を説明する。図外の集塵装置から送られてくる繊維屑を含有する空気はファン7によってダストコレクター2の上部に供給され、フィルター部5で繊維屑のみが分離されて下方に落下し、ホッパー2へ集めらた繊維屑はスクリュー押出機4のケーシング11内に供給される。
【0022】ケーシング11内に供給された繊維屑は、フィードスクリュー12によって出口10側へ強制的に搬送され、筒状体24を通過する際に各樋部材27によって径内方向に圧縮され、その後搬送筒体26の先端から排出されてその下方に設置した容器44に収容されることになる。この場合、スクリュー押出機4をその出口側が上向きとなるように約30度傾斜して配置しているので、搬送筒体26付きの比較的長いスクリュー押出機4を採用しているにも拘らず、集塵圧縮装置1の幅の大型化を招くことがない。
【0023】また、スクリュー押出機4の出側をホッパー3の下端よりも上位に配置でき、スクリュー押出機の出口前方に容器40を置く高さスペースが確保されるので、集塵圧縮装置1の高さのコンパクト化をも図りうる。また、本実施例によれば、筒状体24の各樋部材27はコイルばね34によって外周面から径内方向に付勢されているため、ケーシング11の出口10に過大な繊維屑が搬送されてきた場合に各樋部材27が径外方向に開き、繊維屑の目詰まりが生じることはない。
【0024】更に、本実施例では、コイルばね34による付勢力を調節するための調節手段35を設けているので、繊維屑の圧縮度が足りない場合は繊維の締付ボルト38を締め付け、圧縮し過ぎのため目詰まりが生じる可能性がある場合には、締付ボルト38を緩めてコイルばね34による付勢力を弱めればよい。なお、以上説明した実施例では四つの樋部材27を束ねて筒状体24を構成しているが、樋部材27の個数は四つに限定されない。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、筒状体24の各樋部材27がばね手段34によって外周面から径内方向に付勢され、これによってケーシング11の出口10に過大な繊維屑が搬送されても各樋部材27が径外方向に開くので、繊維屑の目詰まりを生じさせることなく繊維屑を適度な圧縮度で連続的に圧縮処理することができる。
【0026】また、請求項2記載の発明によれば、調節手段35によってばね手段34による付勢力を調節できるため、繊維屑の圧縮度を適度に変更できるとともに、目詰まりが生じるのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクリュー押出機の先端部の断面図である。
【図2】外筒体の横断面図である。
【図3】(a)は筒状体の側面断面図であり、 (b)は同正面図である。
【図4】集塵圧縮装置の正面図である。
【図5】同側面図である。
【符号の説明】
4 スクリュー押出機
10 出口
11 ケーシング
12 フィードスクリュー
19 供給口
24 筒状体
27 樋部材
34 ばね手段(コイルばね)
35 調節手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸方向端部に繊維屑の出口(10)を有しかつ側部に繊維屑の供給口(19)を有する筒状のケーシング(11)と、このケーシング(11)内に回転自在に挿通されたフィードスクリュー(12)とを備えた繊維屑のスクリュー押出機であって、複数の樋部材(27)をその内側を対向させて互いに接離自在に束ねてなる先細り状の筒状体(24)がケーシング(11)の出口(10)側に設けられ、この筒状体(24)の各樋部材(27)をその外周面から径内方向に付勢するばね手段(34)が設けられていることを特徴とする繊維屑のスクリュー押出機。
【請求項2】 ばね手段(34)による付勢力を調節するための調節手段(35)を備えていることを特徴とする請求項1記載の繊維屑のスクリュー押出機。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3227283号(P3227283)
【登録日】平成13年8月31日(2001.8.31)
【発行日】平成13年11月12日(2001.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−238267
【出願日】平成5年9月24日(1993.9.24)
【公開番号】特開平7−88464
【公開日】平成7年4月4日(1995.4.4)
【審査請求日】平成11年6月17日(1999.6.17)
【出願人】(390013457)株式会社辰巳エヤーエンジニアリング (13)
【参考文献】
【文献】実開 昭61−167299(JP,U)