説明

繊維強化複合材の穴あけ方法および切屑吸引装置

【課題】FRP材をはじめとした繊維強化複合材の穴あけを、加工品位の向上と作業環境の改善を併せて実現して行なえるようにすることを課題としている。
【解決手段】繊維強化複合材の穴あけを、工具後端から軸に沿って工具先端に至るエアー穴が本体部に設けられた穴あけ工具5を用い、前記エアー穴に通した圧縮空気を工具先端から吐出させ、同時にこの空気により拡散させた粉状の切屑を穴あけ工具5を覆う筒状カバー11を備えた切屑吸引装置10で吸引しながら行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭素繊維などを用いた繊維強化複合プラスチック(FRP)材に代表される繊維強化複合材の穴あけ加工方法とその方法で使用する切屑吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FRP、特に、CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)は、比強度、比弾性率が大きいことから、近年、航空機や車両の構造体などとして使用することが増えてきている。そのFRP材を用いて構造体を構成する場合、FRP材に穴をあけ、ボルトやリベットなどの締結要素を用いて締結固定する方法が通常採られる。このため、航空機部品などの構造体にFRP材を使用するときには、締結要素を通すための穴をFRP材に多数あけることが必要になる。
【0003】
そのFRP材の穴あけでは、一般的な金属材料の穴あけと違って粉状の切屑が発生する。その粉状の切屑は、大気中に飛散しやすくて作業環境を悪化させ、その問題が以前から指摘されている。加えて、最近の調査で、粉状になったFRP材の切屑は工具と加工穴(加工された穴)の穴壁面との間に入りこみ、穴壁面の性状を悪化させるという別の悪影響が生じることも明らかになってきた。この切屑は、硬質な炭素繊維が分断されて生じることから加工穴の内壁面を傷つける。加えて、FRP材に含まれる樹脂が摩擦熱によって溶け、溶着状態となってさらに加工穴の内壁面を傷めつけることが加工穴の内壁面の性状悪化の原因であると考えられる。
【0004】
このような問題を解消するために、これまでにもいくつかの改善策が提案されている。例えば、下記特許文献1は、カーボン材を対象にしたエンドミル加工において、刃数を4〜6枚、ねじれ角を40°〜60°、底刃の逃げ角を10°〜30°とし、乾燥状態の空気を加工点付近に供給するか、または加工点付近に対する吸引動作を行って、加工時に発生する粉体状の切屑を除去しながら加工を行なうことを提案している。この方法は、カーボン材のエンドミル加工を対象にしているが、FRP材の穴あけにおいてもある程度の効果が期待できる。
【0005】
また、下記特許文献2では、工具回転部と被削材との接触面を覆うようにカバーをしてそのカバー内に空気を吹き込み、その空気によって拡散させた切屑を吸引する切屑飛散防止方法が提案されている。この方法は、特に、工具回転部と被削材との接触面を覆うよう、筒状に形成された伸縮自在のカバーを設けることが有効としている。
【特許文献1】特開2006−26762号公報
【特許文献2】特開2000−5969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の特許文献1、2が開示しているような方法には、解決すべき問題が依然として残されている。例えば、特許文献1の方法では、加工点付近への空気の供給や切屑吸引を行なうが、前者の加工点付近への空気の供給のみでは切屑の飛散がひどくなって作業環境面では極めて問題が多い。また、後者の切屑吸引の手法のみでは効果が限定的なものになる。また、吸引方法についての詳細な記述は見られないが、FRP材の形態は板材が多く、薄板の加工においては吸引動作によっては、加工される板材のクランプ状態に悪影響を及ぼすことが考えられる。
【0007】
一方、特許文献2の方法は、粉状の切屑が発生するFRP材などを加工対象としたものではない。この特許文献2は、工具回転部と被削材との接触面をカバーで覆うことが望ましいとしており、そのようにすることは吸引力を高める上では有効と考えられるが、軽量なFRPの板材、特に、FRP薄板の穴あけ加工において加工部をカバーで完全に覆うと、加工中の板材に吸引力による引き上げ力が作用して加工穴から穴あけ工具を引き抜くときに板材も一緒に持ち上がって加工品位が悪化することが懸念され、また、被削材のクランプが緩む事態が発生することも考えられる。
【0008】
この発明は、FRP材をはじめとした繊維強化複合材の穴あけを、加工品位の向上と作業環境の改善を併せて実現して行なえるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための有効な手法として、この発明においては、下記の穴あけ方法と切屑吸引装置を提供する。前者の穴あけ方法は、補強繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化複合材の穴あけ方法であって、工具後端から軸に沿って工具先端に至るエアー穴が本体部に設けられた穴あけ工具を用い、前記エアー穴に通した圧縮空気を前記工具先端から吐出させ、同時に前記空気により拡散させた粉状の切屑を前記穴あけ工具を覆う筒状カバーを備えた切屑吸引装置で吸引しながら行うようにしたところに特徴を有するものである。
【0010】
この方法による穴あけは、切削速度を、80m/min以上、350m/min以下にして行なうのが望ましい。また、前記カバーと被削材(被加工物)の繊維強化複合材との間に隙間を設けて加工を行なうのが望ましい。
【0011】
この発明が提供する後者の切屑吸引装置は、穴あけ工具の外周を覆う筒状カバーと、吸引機と、その吸引機に接続される切屑吸引管とからなり、前記筒状カバーの先端(下端)に上下にスライド可能な筒体を設けて繊維強化複合材の穴あけにおいて、前記穴あけ工具が前記繊維強化複合材に切り込まれている状態で前記筒体と前記繊維強化複合材との間に隙間の設定を可能にしたことを特徴とするものである。前記隙間は、例えば、前記筒体を任意のスライド位置に固定する固定具を設け、その固定具で前記筒体を、前記筒状カバーの加工終点で前記繊維強化複合材から離反する位置に固定することで生じさせることができる。また、前記筒体をばねで下向きに付勢して加工中に前記繊維強化複合材に押し当てるようにし、この筒体の先端に溝又は穴を設けてその溝又は穴によって生じさせることもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の方法では、繊維強化複合材の加工において発生する粉状の切屑を穴あけ工具の先端から吐出した圧縮空気によって加工穴から強制的に排出し、それを吸引装置で吸引して回収する。これにより、加工品位の向上と作業環境の改善を併せて実現することが可能になる。
【0013】
この発明の方法は、切屑の長さがmmオーダー或いはそれ以上となる一般の金属の加工では安定した効果は期待できないが、例えば、CFRP材の加工においては切屑の直径は100μm前後、長さは数百μm程度の繊維束が分断したものや、直径数μm〜10μm程度の単繊維が細かく分断したものであり、このような細かな切屑が生成される繊維強化複合材の加工では、穴あけ工具と被削材との間に切屑が滞留しやすく、それが加工品位の低下や工具の耐久性などに悪影響を及ぼすと思われるので、滞留箇所からの強制排出を行うこの発明の加工方法が有効と考えられる。
【0014】
発明者等が、高速ビデオカメラにより調査した結果、穴あけ時には工具回転による力で生成された粉状の切屑が上方に巻き上げられることを確認している。その工具回転による力での巻き上げは、好ましい結果をもたらす。ただし、この現象は低速切削時には起こらず、その現象を発生させるために切削速度は80m/min以上にするのが望ましい。また、その切削速度が350m/minを越えると、単位体積当たりの切削除去体積が過剰に増加するため、この発明の方法でも穴あけ工具と加工穴の穴壁面との間の切屑詰まりの抑制が不十分となって加工品位の低下を招くので、切削速度は350m/min以下に制御することが望ましい。
【0015】
また、前記筒状カバーと被削材の繊維強化複合材との間に隙間を設けずにカバーの内部を負圧状態にすると、穴あけ工具を繊維強化複合材から引き抜くときに被削材に吸引による引き上げ力が働くが、筒状カバーと繊維強化複合材との間に隙間を設けることでこのような現象を回避することが可能である。
【0016】
板材が多くを占めるFRP材の加工では板材が薄くて剛性が不足しがちになり、また、板材の形状も複雑で十分なクランプ力をかけられない場合があり、このようなときに上記の問題が発生しやすい。一方で、前述の通り、繊維強化複合材の切屑は加工時に巻き上げられる傾向があり、加工時には供給された圧縮空気が加工穴に吹きつけられて主に上方へ反転して流出しようとするため、筒状カバーと繊維強化複合材との間に隙間を設けても切屑を十分に吸引できることを見出した。工具先端から圧縮空気を吐出する場合、板材が浮き上がるような現象は発生しないようにも思われるが、実際には穴あけ工具を加工穴から引く抜く際には工具先端部は板材を貫通しているので吐出された圧縮空気は切屑吸引装置のカバー内ではなく外部に放出されることになり、吸引量に見合う空気の補充がなされないため、カバー内が負圧になって吸着による板材の引き上げが起こる。
【0017】
筒状カバーと繊維強化複合材との間に隙間を設けることは、上記の現象の回避策として有効であり、カバー内の過剰な負圧を抑制して板材の浮き上がりを防止し、さらに、切屑を巻き上げるための空気を外部から供給することにもなって一定の役割を果たすことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について説明する。本実施例では穴あけ工具として、油穴付きの一般的なツイストドリル{住友電工ハードメタル(株)製 MDW060MHK}を使用した。ドリルの仕様は、外径φ6mm、先端角140°、ねじれ角30°、2枚刃であり、エアー穴として利用する油穴は、本体部の後端からねじれながら先端の逃げ面に到達する穴が中心対称位置に2本設けられている。そのねじれた2本の穴は、共に工具軸に対してやや傾斜し、かつ、相反する方向に開口しており、異なる方向に圧縮空気を吐出する。このために、ドリルの軸と平行に圧縮空気を吐出する場合に比べて加工穴内での空気のよどみが少なく、繊維強化複合材の切屑をより確実に加工穴から排出することが可能である。なお、使用ドリルの材質は、(Ti、Al)N系の被膜を表面に形成したコーテッド超硬合金である。
【0019】
図1に、この発明の切屑吸引装置10を用いた穴加工装置1の全体構成を示す。センタースルー方式での圧縮空気の供給が可能なマシニングセンタ2の主軸3に、工具ホルダ4を介して上記の穴あけ工具(ドリル)5を装着する。そしてさらに、この穴あけ工具5の外周を覆う筒状カバー11をマシニングセンタ2に取り付ける。筒状カバー11の先端には、筒状カバー11よりも小径の筒体12がカバー先端の開口部に上下スライド可能に嵌めて設置されており、その筒体12を筒状カバー11の下側小径部に固定する固定具(図のそれは止めねじ)13も設けられている。筒状カバー11は、主軸3の非回転部(工具ホルダ4が連結された回転部を取り巻く部分)に固定されており、主軸3の降下に伴ってこの筒状カバー11も穴あけ工具5と共に降下する。また、筒体12は、固定具13によって任意のスライド位置に固定可能となっている。
【0020】
筒状カバー11の一端には、接続パイプ14が設けられており、その接続パイプ14に切屑吸引管(図のそれはホース)15の一端がつながれ、さらに、切屑吸引管15の他端に吸引機(図のそれは市販の真空掃除機)16がつながれている。この筒状カバー11、切屑吸引管15および吸引機16を組み合わせて構成される切屑吸引装置10によって穴あけ加工中に発生する切屑を吸引する。同時に穴あけ工具5に設けられた内部油穴(エアー穴)に圧縮空気を通して工具先端から加工部にその圧縮空気を供給する。
【0021】
−実施例1−
図1の穴加工装置1と上記実施例の穴あけ工具5を使用してクランプ装置で加工テーブル上に固定された炭素繊維強化プラスチックの板材(以下、CFRP材と言う)に穴を加工した。加工対象のCFRP材は、面内方向に炭素繊維を配向した単位層(プリプレグ)を8層重ねて接合し、全体厚みを2.78mmにしている。このCFRP材の板厚方向断面を観察したところ、厚みが50〜700μmの繊維束層が含まれていた。
【0022】
ここでの穴あけは、加工条件を、切削速度100m/min、1回転当たりの送り量0.05mm/rev、ドライ切削、貫通穴加工として実施した。また、図1に一点鎖線で示すように穴あけ工具5の先端が加工対象の繊維強化複合材(CFRP材)6に接触した位置でそのCFRP材6とスライド位置を固定した筒体12との間に10mmの軸方向隙間7(この隙間は加工に伴う工具の送り込みによって変動する)が形成される状態にして行った。
工具先端から供給した圧縮空気の圧力は0.4MPa、切屑吸引装置の吸引機の能力は、消費電力1010W、最大真空圧2100mmAg、最大風量2.9m/min、切屑吸引管の長さ2.5mである。また、穴あけ工具の外周を覆う筒状カバー11の図5に示す寸法諸元は、大径部外径D1=φ150mm、大径部高さ寸法H1=100mm、小径部外径D2=φ65mm、小径部高さ寸法H2=20mm、大径部と小径部間を繋ぐテーパ部の高さ寸法H3=25mm、小径部の内側にスライド自在に嵌めた筒体12の外径d=φ52mm、筒体12の高さh=32mm、接続パイプ14の直径φ35mmである。
【0023】
図2に、加工後のCFRP材穴出口側の性状と内壁の性状の写真を示す。また、図3に加工中の軸方向切削抵抗(スラスト力)の推移の測定データを示す。図2、図3の(a)は、ともに圧縮空気の供給なしの場合の結果を、また、図2、図3の(b)は、ともに圧縮空気の供給有りの場合の結果をそれぞれ示している。図2から明らかな通り、圧縮空気を供給することで加工穴出口部でのバリは減少しており、また、加工穴内壁での樹脂の溶融箇所も減少している。
【0024】
また、図3に示すように、圧縮空気の供給有りの場合には加工中のスラスト力の変動も抑制されており、圧縮空気の供給が加工品位の向上に効果を奏していることが確認できる。
【0025】
−実施例2−
実施例1の条件による穴あけを120穴まで進行させ、この時点での工具摩耗への影響を調べた。その結果、穴あけ工具先端の逃げ面の外周近傍における超硬合金母材の露出幅(表面被膜の摩耗による露出幅)は、圧縮空気を供給しない場合は143μmであったのに対し、圧縮空気を供給した場合は128μmとなっており、工具摩耗に対しても圧縮空気供給の効果を確認できた。
【0026】
また、別途切屑吸引を行なわない状態でのテストも試みたが、この方法では切屑がカバーとCFRP材との間の隙間から飛散してCFRP材上にも多くの切屑が残った。また、加工穴数が増加するにつれて切屑が穴あけ工具に付着するようになったため、途中でテストを中止した。
【0027】
−実施例3−
次に、切削速度の影響について確認した結果を述べる。使用した穴あけ工具、切削速度以外の加工条件、および被削材は実施例1と同様とし、圧縮空気の供給と切屑吸引を行なった状態で切削速度を20m/min〜370m/minまでの範囲で段階的に変化させてテストを行なった。そして、このテストで加工穴の穴出口に発生した長さ0.5mm以上のバリの本数を調べて比較した。そのデータを表1に示す。このテスト結果から、切削速度が80m/min未満ではバリの抑制が十分になされないことがわかる。また、切削速度を350m/minより大きくした場合は、バリへの影響は顕著ではないが、加工穴の穴壁面を確認したところ、切屑や溶融した樹脂の溶着が激しくなっている様子が確認された。この結果から、切削速度の好適範囲は、80m/min以上、350m/min以下と判断した。
【0028】
【表1】

【0029】
−実施例4−
このテストでは、加工中に切屑吸引装置の筒状カバーと被削材の繊維強化複合材との間に形成する隙間の影響を調査した。各種のテスト条件は実施例1と同様とし、圧縮空気の供給と切屑吸引を行ないながら上記の隙間を無くした場合の被削材の挙動をビデオカメラで観察した。その結果、1つの穴加工を終えて穴あけ工具を被削材から引き抜く際に、被削材の加工部が一瞬浮き上がる現象が確認された。このような現象が続けば、被削材のクランプが当然に弱まり、その後に加工される穴の精度が低下するほか、極端なケースでは被削材がクランプ装置から外れる事態も考えられるようになる。
【0030】
加工穴出口部のバリについては、上記隙間の有無による影響は見られなかった。これは、バリの抑制効果は隙間が無くても発揮されることを意味しているが、加工穴の穴壁面を観察したところ、工具によると考えられる傷が僅かに確認され、穴壁面の性状については隙間有りの加工での結果の方が良好であった。
【0031】
なお、上記の隙間は、加工初期の隙間寸法(穴あけ工具が被削材に食いつくときの寸法)を、穴貫通時にも図1の隙間7が存在するように設定する必要がある。例えば、被削材の板厚が変わって工具の必要な送り量が変化すると加工初期の隙間寸法も変化するが、この発明の切屑吸引装置は、筒状カバーの先端に設けた筒体を上下スライド可能にしているので、そのような場合にも筒体のスライド位置を変えることで対応することができる。さらに、図4に示すように、筒体12をばね17で下向きに付勢して繊維強化複合材6に押し当て、この筒体12の先端に溝(溝に代わる穴でもよい)18を設ける構造でも隙間7を維持することが可能である。穴加工が進行するにつれて筒体12は筒状カバー11内に没入して行くが、溝や穴によって形成される隙間7は工具5の送り込み量に拘わらず維持することができる。
なお、被削材である繊維強化複合材の板厚が大きくて剛性が高い場合、或いは、被削材端部近傍における穴あけで、切屑吸引装置の筒状カバーの先端開口が被削材に完全に塞がれない状況になる場合には、前述の隙間や溝がなくても被削材の吸着による浮き上がり現象は緩和されると考えられる。従って、この発明は、既述の実施例の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の切屑吸引装置を用いた穴加工装置の全体構成を示す図
【図2】実施例1のテストでの加工穴出口のバリの発生状況と穴壁面の性状を示し、(a)は圧縮空気供給無しの結果を示す図、(b)は圧縮空気供給ありの結果を示す図
【図3】実施例1のテストでの加工中のスラスト力推移を示し、(a)は圧縮空気供給無し時のデータ、(b)は圧縮空気供給あり時のデータを示す図
【図4】切屑吸引装置の筒状カバーの他の実施形態を示す図
【図5】テストで使用した筒状カバーの寸法諸元を表す図
【符号の説明】
【0033】
1 穴加工装置
2 マシニングセンタ
3 主軸
4 工具ホルダ
5 穴あけ工具
6 繊維強化複合材
7 隙間
10 切屑吸引装置
11 筒状カバー
12 筒体
13 固定具
14 接続パイプ
15 切屑吸引管
16 吸引機
17 ばね
18 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化複合材の穴あけ方法であって、工具後端から軸に沿って工具先端に至るエアー穴が本体部に設けられた穴あけ工具(5)を用い、前記エアー穴に通した圧縮空気を前記工具先端から吐出させ、同時に前記空気により拡散させた粉状の切屑を前記穴あけ工具(5)を覆う筒状カバー(11)を備えた切屑吸引装置(10)で吸引しながら行う繊維強化複合材の穴あけ方法。
【請求項2】
切削速度を、80m/min以上、350m/min以下にして加工を行なう請求項1に記載の繊維強化複合材の穴あけ方法。
【請求項3】
前記筒状カバー(11)の先端部と被削材の繊維強化複合材(6)との間に隙間(7)を設けて加工を行なう請求項1又は2に記載の繊維強化複合材の穴あけ方法。
【請求項4】
穴あけ工具(5)の外周を覆う筒状カバー(11)と、吸引機(16)と、その吸引機(16)に接続される切屑吸引管(15)とからなり、前記筒状カバー(11)の先端に上下にスライド可能な筒体(12)を設け、繊維強化複合材(6)の穴あけにおいて、前記穴あけ工具(5)が前記繊維強化複合材(6)に切り込まれている状態で前記筒体(12)と前記繊維強化複合材(6)との間に隙間(7)の設定を可能にした切屑吸引装置。
【請求項5】
前記筒体(12)を任意のスライド位置に固定する固定具(13)を設け、その固定具(13)で前記筒体(12)を、前記筒状カバー(11)の加工終点で前記繊維強化複合材(6)から離反する位置に固定して前記隙間(7)を前記筒体(12)と前記繊維強化複合材(6)との間に生じさせるようにした請求項4に記載の切屑吸引装置。
【請求項6】
前記筒体(12)をばね(17)で下向きに付勢して加工中に前記繊維強化複合材(6)に押し当てるようにし、この筒体(12)の先端に溝(18)又は穴を設けてその溝(18)又は穴で前記隙間(7)を前記筒体(12)と前記繊維強化複合材(6)との間に生じさせるようにした請求項4に記載の切屑吸引装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−136962(P2009−136962A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315817(P2007−315817)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(503212652)住友電工ハードメタル株式会社 (390)
【Fターム(参考)】