説明

繊維構造物

【課題】耐久性に優れた水性汚れ、油性汚れに対する防汚性を有する繊維構造物を提供する。
【解決手段】単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体を重合成分として含有してなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、親水性ポリエステル系樹脂が含有されてなる、口紅汚染性、皮脂汚染性、汚泥汚染性に関し、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染用グレースケールで(級)判定したとき4級以上である繊維構造物および繊維構造物を用いて成る衣料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性のある防汚性を有する繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維構造物の防汚性を改善する要求は高く、改善する方法が種々提案されている。水性汚れもしくは油性汚れがつきにくくかつ落ちやすい性能を付与するために、加工剤の観点からは、親水性基を含有したフッ素系樹脂(特許文献1、2)が開発されている。また、繊維表面に親水性樹脂被膜を形成した後、親水基を有する撥水撥油性樹脂の層を形成する繊維構造物(特許文献3)、含フッ素重合体と親水、制電重合体からなる被膜を形成する繊維製品(特許文献4)が提案されている。
【0003】
しかしながら、親水性基を有する撥水撥油剤の繊維表面への固着は、架橋剤や触媒などを併用しても洗濯耐久性不十分である。親水性樹脂の被膜上に、親水基を有する撥水撥油性樹脂の層を形成するものは、親水と撥水の相反する性質を有するものの樹脂の接着は弱く十分な耐久性を得ることは困難であり、親水層の形成後に撥水撥油層を形成する二段階の処理を必要とするもので経済的な問題もふくんでいる。含フッ素重合体と親水、制電重合体からなる被膜を形成する方法は、含フッ素重合体で高い撥水性能を付与することを目的としたものであり、防汚性に関する記述はないものの、汚れが付着しにくいという性能は期待される。しかし、付着した汚れは洗濯などで脱落しにくいという重大な欠点を有するものである。
【特許文献1】特開平3−70757号公報
【特許文献2】特開昭61−266487号公報
【特許文献3】特許第3748592号公報
【特許文献4】特開昭55−148281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐久性に優れた水性汚れ、油性汚れに対する防汚性を有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用する。
1.単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体を重合成分として含有してなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、親水性ポリエステル系樹脂が含有されてなる繊維構造物。
2.吸水速度が30秒以下である上記1記載の繊維構造物。
3.下記測定法により測定したときの口紅防汚性が4級以上である上記1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製の口紅RS366を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて口紅を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JI S L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
4.下記測定法により測定したときのファンデーション防汚性が4級以上である上記1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製のファンデーションオークル30を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させてファンデーションを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JI S L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
5.下記測定法により測定したときの皮脂汚染の防汚性が4級以上である上記1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
日本家政学会誌 Vol46 No3 265〜269(1995)に記載されている皮質汚染剤を25φのゴム栓の表面に0.006gを均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて皮質汚染剤を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
6.下記測定法により測定したときの泥防汚性が4級以上である上記1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、汚染剤を手で叩き落とし、JI S L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
7.上記1〜6のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、洗濯耐久性のある制電性と防汚性を有する繊維構造物を安定に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、前記課題、つまり洗濯耐久性に優れた制電性、防汚性を兼ね備えた機能を付与することについて鋭意検討した結果、単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体からなる重合樹脂と親水性ポリエステル系樹脂の混合された皮膜を形成することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0008】
本発明のトリアジン環含有重合性単量体とはトリアジン環を含有し、重合性官能基を少なくとも2個有する化合物であり、例えば下記式1で示されるものが挙げられる。
【0009】
【化1】

【0010】
本発明では、上記一般式で表されるもの以外に、上記化合物のエチレン尿素共重合化合物、ジメチロール尿素共重合化合物、ジメチロールチオ尿素共重合化合物、酸コロイド化合物なども使用することができる。
【0011】
本発明の親水性ポリエステル系樹脂としては、酸成分、グリコール成分からなるポリエステルセグメントにポリエチレングリコールを共重合せしめたポリエステルエーテル共重合体が好ましく使用できる。酸成分としてはジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸などの少なくとも一成分が挙げられる。グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの少なくとも一成分が挙げられる。ポリエチレングリコールの分子量としては800〜3000のものが好ましく使用できる。具体例としては、ジメチルテレフタレート/エチレングリコールのモル比が7〜9/3〜1で繰り返し単位が5〜8であり、ポリエチレングリコールの分子量が8000〜30000の共重合ポリエステルや、テレフタル酸ジメチル/5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル/エチレングリコールが250/200/330部の反応混合物と分子量2000ポリエチレングリコール100部の共重合ポリエステル樹脂が例示できる。
【0012】
本発明の単量体と親水性ポリエステル系樹脂の混合比は、単量体の固形分と、ポリエステル系樹脂の固形分との重量比で、単量体の固形分/ポリエステル系樹脂の固形分が100/5〜100であり、好ましくは100/10〜60である。
【0013】
本発明の皮膜にフッ素系化合物を混合することができる。該フッ素系化合物とは、パーフルオロアクリレート系化合物、パーフルオロスルホンアミドアクリレート系化合物、パーフルオロアルキルポリエーテル系化合物であり、これらの骨格の一部に親水基および/または親水性セグメントを有するフッ素系化合物が好ましく用いられる。フッ素系化合物の混合量は、単量体固形分と親水性ポリエステル系樹脂の固形分の混合物重量100に対して、0.01〜50、好ましくは0.05〜20である。
本発明の皮膜に、微粒子を混合することができる。該微粒子は、無機系化合物あるいは有機系化合物のいずれからなるものでもよく、無機微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、カオリン、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム等が例示され、水分散体として使用するのが好ましい。中でも酸化ケイ素が好ましく使用できる。該粒子の数平均粒子径としては好ましくは5〜500nmであり、より好ましくは10〜100nmである。有機微粒子としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂およびこれらの共重合物等が例示でき、該粒子の数平均粒子径としては好ましくは5〜2000nmであり、より好ましくは10〜300nmであり、水分散体として使用するのが好ましい。これらの無機微粒子、有機微粒子を単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。該粒子の添加により制電性樹脂皮膜の形成性が向上し、強靱な皮膜となり耐久性を高めることができる。更には、該粒子により樹脂皮膜の表面に微細な凹凸が形成されるので、特に固体状の汚染物の付着防止性、脱落性をより一層、高めることができるものである。本発明において、微粒子の混合量は、単量体固形分と親水性ポリエステル系樹脂固形分の混合物重量100に対して、1〜100、好ましくは5〜60である。
本発明の樹脂皮膜には、多官能性イソシアネート化合物が含まれていても良い。多官能性イソシアネート化合物としては、分子中に2個以上のイソシアネート官能基を含む有機化合物であれば特に限定されるものではなく、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニールメタンジイソシアネート、水素添加ジフェニールメタンジイソシアネート、トリフェニールトリイソシアネート、キシレジンイソシアネート、ジクロロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、フリセリントリレンジイソシアネートアダクトなどにブロッキング化化合物(イソシアネートアダクトとともに70〜200℃に加熱することで、イソシアネート基を再生させる化合物)である、フェノール、マロン酸ジエチルエステル、メチルエチルケトオキシム、重亜硫酸ソーダ、ε−カプロラクタムなどを反応させた多官能ブロックイソシアネートウレタン樹脂を挙げることができる。ブロックイソシアネートの熱分離速度の向上と熱解離温度の低下とを促進するために用いる解離触媒としてはジブチルスズジオレート、ジブチルスズステアレート、ステアリル亜鉛、有機アミン化合物が好ましい。かかる混合剤の混合は、親水性ポリエステル系樹脂の耐久性を高める効果があり、処理液に0.01〜1重量%の濃度で混合すればよい。
【0014】
本発明は、トリアジン環含有重合性単量体、親水性ポリエステル系樹脂が配合された水系液に触媒を混合したものを繊維上に付与した後、重合皮膜化すべく熱処理を行う。かかる触媒としては、酢酸、蟻酸、アクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、硫酸、過硫酸、塩酸、燐酸などの酸類およびこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などであり、これらの一種以上を使用することができる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましく使用できる。かかる触媒は、重合性単量体の使用量に対して0.1〜20重量%の割合で使用することが好ましい。
【0015】
重合のための熱処理は、好ましくは50〜180℃の温度で0.1〜30分間の条件で乾熱処理または蒸熱処理するものであるが、蒸熱処理の方が繊維表面に均一な皮膜を形成しやすく、かつ皮膜強度も高く、風合いが柔軟である。蒸熱処理は、好ましくは80〜160℃の飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられる。より好ましい飽和水蒸気は90〜130℃であり、過熱水蒸気は110〜160℃であり、いずれも数秒から数分の処理を行う。かかる蒸熱処理を行った後、未反応の単量体や触媒の除去、また染色堅牢度の確保のために、50〜95℃の温度で湯洗いか、ノニオン界面活性剤や炭酸ソーダ、ハイドロサルファイトなどを使用した洗浄を行うことが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂皮膜としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を100000倍の倍率として用いて観察した場合の厚みが5〜100nmであることが好ましい。
【0017】
だからである。5nmより薄いと均一な連続皮膜を形成できない場合があり、100nmを越えると風合いが粗硬になる場合がある。
【0018】
本発明の繊維構造物に使用される繊維素材としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、これらに第三成分例えば、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸等を共重合したもの、またはポリエチレングリコールをブレンドしたもの等が用いられる。また、L−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、麻、絹および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明ではこれらの繊維を単独または2種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維を主成分にした繊維が好ましく使用される。
【0019】
本発明で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン糸、太細糸および混繊糸などのフラットヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であってもよい。
【0020】
本発明の繊維構造物には、前記繊維を使用してなる編物、織物または不織布などの布帛状物、あるいは紐状物などが含まれる。
【0021】
本発明の繊維構造物は、耐久性ある防汚性を有することから、衣服や寝装具、具体的には、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、ドレスシャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバー、カーテンまたはテント類など、衣料用途品、非衣料用途品などの用途に好適に使用されるものである。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の品質評価は次の方法で実施した。
(吸水性)
JIS L 1096に規定される方法で、布地上に水滴を落とし、それが完全に吸収されるまでの時間を測定し、(秒)で表示した。
(制電性)
JIS L 1094B法(摩擦耐電圧測定法)に規定される方法で、20℃×30%RHの雰囲気中で、対象布を木綿として摩擦耐電圧を測定し、(kv)表示した。
(防汚性a:口紅防汚性)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製の口紅RS366を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて口紅を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定した。
(防汚性b:ファンデーション防汚性)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製のファンデーションオークル30を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させてファンデーションを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定した。
(防汚性c:皮脂汚れ防汚性)
日本家政学会誌 Vol.46 No3 265〜269(1995)に記載されている下記汚染剤を調合し、該汚染剤を25φゴム栓の表面に0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて皮脂汚れを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定した。
<皮脂汚れ汚染剤>
(1)汚染剤成分と分量
(A)有機質成分
(a)油性汚垢成分
オレイン酸 14.2g
トリオレイン 7.8g
オレイン酸コレステロール 6.1g
流動パラフィン 1.3g
スクアレン 1.3g
コレステロール 0.8g
(b)蛋白質
ゼラチン 3.5g
(B)無機質成分
赤黄色土 15.0g
カーボンブラック 0.25g
(2)汚染液の作り方
1000mLのビーカーに、水質硬度80mg/L以下の水850mL、ゼラチンを投入し、45℃を超えない温度で溶解する。その後、カーボンブラックを投入して、ホモジナイザー(攪拌機)でカーボンブラックが十分に分散するまで攪拌した後、12〜72時間自然放置する。その後、ホモジナイザーで3分間攪拌した後赤黄色土を投入してホモジナイザーで約30分攪拌する。次いで油性汚垢成分を投入して約2分間攪拌する。
(防汚性d:泥汚れ防汚性)
赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定した。
【0023】
(洗濯耐久性)
自動反転渦巻き電気洗濯機に、JIS K 337に規定される弱アルカリ性合成洗剤を0.2%の濃度になるように溶解し、浴比1:50で、40±2℃の温度で、強条件で10分洗濯し、次いで排水しオーバーフロー水洗10分×2回をする工程を1回としてこれを20回繰り返した後、風乾した。該洗濯布を前記した方法で防汚性を測定し、洗濯耐久性能を評価した。
【0024】
(実施例1〜7、比較例1〜3)
ポリエチレンテレフタレートからなる84dtex、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して平織物を製織したのち、該織物を95℃の温度で、連続式精練機で常法に従い精練、湯水洗し、次いで130℃で乾燥、180℃でピンテンターセットした。次いで、液流染色機を用いて130℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により洗浄、湯水洗、乾燥し170℃でピンテンターセットし、タテ/ヨコ密度140/88本/2.54cmの織物とした。
【0025】
該白色織物を次に示す方法で処理し樹脂被膜を形成した。得られた織物の性能を評価した結果を表1に示した。いずれも、耐久性のある防汚性を有し風合いも柔軟であった。
<防汚加工樹脂>
以下に示す重合性単量体等を、表1に示した処理液組成の割合で混合し、重合触媒として過硫酸アンモニウムを3g/Lの濃度で混合して処理液を調液した。該処理液に織物を浸漬して、処理液の付着量が90重量%になるように調整してマングルで絞り、105℃の飽和水蒸気雰囲気中にて5分間の処理を行った。次いで、非イオン界面活性剤1g/L、炭酸ナトリウム1g/Lとした60℃の水溶液中で1分洗浄し、水洗し、130℃で乾燥し、170℃の温度でピンテンターセットした。該加工布の加工上がり品と、洗濯を20回実施した洗濯品の制電性、防汚性を測定した。
(重合性単量体)
A:ベッカミンM3(大日本インキ化学(株)製、トリメチロールメラミン、固形分80%)
(親水性ポリエステル系樹脂)
B:SR1800(高松油脂(株)製、親水性ポリエステル系樹脂、固形分10%)
(フッ素系化合物)
C:アサヒガードAG1100(明成化学(株)製、フッ素系撥水撥油剤、固形分20%)
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体を重合成分として含有してなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、親水性ポリエステル系樹脂が含有されてなる繊維構造物。
【請求項2】
吸水速度が30秒以下である請求項1記載の繊維構造物。
【請求項3】
下記測定法により測定したときの口紅防汚性が4級以上である請求項1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製の口紅RS366を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて口紅を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【請求項4】
下記測定法により測定したときのファンデーション防汚性が4級以上である請求項1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製のファンデーションオークル30を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させてファンデーションを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【請求項5】
下記測定法により測定したときの皮脂汚染の防汚性が4級以上である請求項1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
日本家政学会誌 Vol46 No3 265〜269(1995)に記載されている皮質汚染剤を25φのゴム栓の表面に0.006gを均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて皮質汚染剤を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【請求項6】
下記測定法により測定したときの泥防汚性が4級以上である請求項1または2に記載の繊維構造物。
(測定方法)
赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、汚染剤を手で叩き落とし、JI S L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料。

【公開番号】特開2008−163474(P2008−163474A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351131(P2006−351131)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】