説明

繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法

【課題】金属触媒が繊維状タンパク質に均一に担持されるため、再現性に優れる繊維状タンパク質担持金属触媒の調製方法であって、短時間で調製が可能な工業的生産に適した、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法を提供する。
【解決手段】金属触媒化合物と繊維状タンパク質とを、水、金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒、これらの混合液又は還元剤を含む溶媒中で、超音波照射下に接触させることを特徴とする、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パラジウム−炭素触媒に代表されるような、酸化又は還元反応に使用される不均一系の金属触媒が数多く知られている。従来の不均一系触媒は、容易に発火し易い、触媒の回収又は再利用等が煩雑になる等の問題点があった。このような問題点を解決するため、近年、不均一系の金属触媒を担体に担持させたものが開発されており、中でも不均一系の金属触媒を繊維状タンパク質に担持させたもの(例えば絹フィブロイン担持パラジウム[Pd/Fib]触媒等)が、従来の金属触媒と官能基選択性等の触媒活性が異なる点から注目を集めている(例えば非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【0003】
これら不均一系の金属触媒を繊維状タンパク質に担持させたものの製造方法としては、例えば〈1〉パラジウムを絹に吸着させた触媒を高温、高圧、強酸性条件下で調製する方法(例えば非特許文献1)、〈2〉絹フィブロインを酢酸パラジウムのメタノール溶液に室温下4日間静置する方法(例えば非特許文献2、非特許文献3)等が知られている。しかしながら、〈1〉の方法では、得られた触媒の一部を切り取って反応に使用した場合、切り取る箇所によって触媒活性に差が出てしまい反応の再現性に悪影響を及ぼしてしまう等の問題点があり、〈2〉の方法は、調製に4日間もの時間を要することから、工業的生産には有利なものではなかった。
【0004】
そのため、繊維状タンパク質に担持させた金属触媒(以下、繊維状タンパク質担持金属触媒と略記する場合がある。)のどの部分を切り取って使用してもほぼ同等の触媒活性を有し、また、短時間で調製が可能で工業的生産に適した、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法の開発が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】Nature, 178, 323 (1956)
【非特許文献2】Tetrahedron Lett., 44, 171 (2003)
【非特許文献3】Tetrahedron, 61, 2217 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、工業的生産に適した繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法を提供することにある。さらに詳しくは、得られる繊維状タンパク質担持金属触媒のどの部分を切り取って使用しても、その触媒活性がほぼ同等で、なおかつ、短時間で調製が可能な、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属触媒化合物と繊維状タンパク質とを、水、金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒、これらの混合液又は還元剤を含む溶媒中で、超音波照射下に接触させることを特徴とする、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の担持方法によれば、従来の担持方法で得られたものと同程度の活性を有する繊維状タンパク質担持金属触媒を、短時間で調製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に於ける繊維状タンパク質としては、具体的には、例えば絹糸、絹フィブロイン、羊毛等が挙げられ、中でも絹糸、絹フィブロインが好ましく、その中でも絹フィブロインがより好ましい。
【0010】
尚、絹フィブロインとは、カイコ(Bombyx mori)に代表される絹糸虫から合成される繭の主要な繊維状タンパク質を意味する。当該絹フィブロインは、繊維業者から購入することも可能であるが、例えばカイコから得られた繭を炭酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸二カリウム塩(EDTA dipotassium salt dihydrate)を含む水溶液中で煮沸し、次いで水洗、乾燥することにより調製することができる。
【0011】
本発明に於ける金属触媒は、主として0価の金属触媒を意味するが、1価や2価等の低原子価の金属触媒を完全に排除するものではない。尚、以下これらを0価の金属触媒と称する。また、上記金属触媒としては、具体的には、例えばパラジウム、オスミウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル等が挙げられ、中でもパラジウム、オスミウムが好ましく、その中でもパラジウムがより好ましい。
【0012】
本発明に於ける金属触媒化合物としては、本発明で用いられる、水、金属触媒化合物を還元し得る水溶性有機溶媒、これらの混合液又は還元剤を含む溶媒(以下、本発明に係る反応溶媒と略記する場合がある。)中で還元され、0価の金属触媒となるものであれば特に限定されないが、具体的には、上記した如き反応溶媒中で還元され、0価のパラジウム、0価のオスミウム、0価の白金、0価のルテニウム、0価のロジウム、0価のイリジウム又は0価のニッケルとなる、例えば塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のハロゲン化パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウムの無機酸塩、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、塩化アリルパラジウム、塩化(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、シアン化パラジウム等のパラジウムの有機酸塩、塩化オスミウム等のハロゲン化オスミウム、二酸化オスミウム、四酸化オスミウム、オスミウム酸(VI)カリウム、ヘキサクロロオスミウム酸カリウム等のオスミウムの無機酸塩、塩化白金、臭化白金、ヨウ化白金等のハロゲン化白金、酸化白金、クロロ白金酸、テトラクロロ白金酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金酸カリウム等の白金の無機酸塩、白金アセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、シアン化白金等の白金の有機酸塩、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム等のハロゲン化ルテニウム、酸化ルテニウム、ルテニウム酸カリウム、ペンタクロロルテニウム酸カリウム等のルテニウムの無機酸塩、ビス(シクロオクタジエニル)ルテニウム、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ルテニウムアセチルアセトナート等のルテニウムの有機酸塩、塩化ロジウム、臭化ロジウム、ヨウ化ロジウム等のハロゲン化ロジウム、硝酸ロジウム、酸化ロジウム、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム、ヘキサクロロロジウム酸ナトリウム等のロジウムの無機酸塩、酢酸ロジウム、トリフルオロ酢酸ロジウム、ロジウムアセチルアセトナート、オクタン酸ロジウム等のロジウムの有機酸塩、塩化イリジウム、臭化イリジウム等のハロゲン化イリジウム、酸化イリジウム、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、ヘキサクロロイリジウム酸ナトリウム等のイリジウムの無機酸塩、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウム、イリジウムアセチルアセトナート等のイリジウムの有機酸塩、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等のハロゲン化ニッケル、酸化ニッケル、過塩素酸ニッケル等のニッケルの無機酸塩、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、臭化ビストリフェニルホスフィンニッケル等のニッケルの有機酸塩等が好ましく挙げられ、中でも塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のハロゲン化パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウムの無機酸塩、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、塩化アリルパラジウム、塩化(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、シアン化パラジウム等のパラジウムの有機酸塩、塩化オスミウム等のハロゲン化オスミウム、二酸化オスミウム、四酸化オスミウム、オスミウム酸(VI)カリウム、ヘキサクロロオスミウム酸カリウム等のオスミウムの無機酸塩がより好ましく、その中でも塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のハロゲン化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム等のパラジウムの有機酸塩、二酸化オスミウム、四酸化オスミウム、オスミウム(VI)カリウム等のオスミウムの無機酸塩がさらに好ましく、さらにその中でも酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム等のパラジウムの有機酸塩、四酸化オスミウムが特に好ましく、酢酸パラジウムが最も好ましい。尚、これらの金属触媒化合物は市販品として容易に入手することができる。
【0013】
繊維状タンパク質への金属触媒の担持量は、担持される金属の種類、使用される繊維状タンパク質に担持され得る量及び繊維状タンパク質担持金属触媒の用途等を勘案して適宜設定すれば良いが、繊維状タンパク質1gに対して、0.5mg〜0.5g、好ましくは1mg〜0.2gとなるように設定される。このため、金属触媒化合物の使用量としては、金属触媒化合物の重量のうちの金属触媒の重量が、繊維状タンパク質1gに対して、上記した如き数値範囲となるように設定される。具体的には、例えば繊維状タンパク質1gに酢酸パラジウムを接触させる場合、パラジウムの使用量として、通常0.5mg〜0.5g、好ましくは1mg〜0.2gとなるように酢酸パラジウムの使用量が設定されるので、酢酸パラジウムの使用量は、使用した酢酸パラジウム中のパラジウムが全て担持されると仮定して、繊維状タンパク質1gに対して、通常1.05mg〜1.05g、好ましくは2.1mg〜0.42gとなる。
【0014】
本発明に於ける金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒は、このような還元作用を有する有機溶媒であれば特に限定されないが、具体的には、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、ベンジルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のジオール類、グリセリン等のトリオール類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド等のアルデヒド類等が好ましく挙げられ、中でもメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、ベンジルアルコール等のモノアルコール類がより好ましく、その中でもメタノールがさらに好ましい。また、金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒は、一種類のものを単独で用いても良いし、複数種のものを適宜組み合わせて用いても良い。
【0015】
本発明に係る反応溶媒のうち、還元剤を含む溶媒は、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素塩、水素化アルミニウムリチウム等の水素化アルミニウム塩、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、蟻酸アンモニウム、蟻酸ジエチルアンモニウム等の蟻酸アンモニウム塩、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸塩、水素、エチレン、一酸化炭素等の還元性のガス、ヒドラジン等の還元剤を含有する、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、水等の溶媒であって、上記還元剤と溶媒とが互いに反応し難い組み合わせのものを意味する。また、これら還元剤と溶媒は、一種類のものを単独で用いても良いし、複数種のものを適宜組み合わせて用いても良い。上記還元剤の使用量は、用いられるオスミウム化合物を還元し得る量であれば、特に限定されないが、具体的には、例えばオスミウム化合物1molに対して、1〜500molが好ましく挙げられ、中でも1〜50molがより好ましい。
【0016】
本発明に係る反応溶媒のうち、金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒がより好ましく、中でも一種類の金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒を単独で用いることがさらに好ましい。尚、本発明に係る反応溶媒のうち、水と金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒との混合液に於ける金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒は、水と混和し得る金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒を意味する。また、これら反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば繊維状タンパク質1gに対して、通常0.5mL〜200mL、好ましくは1mL〜50mLである。
【0017】
本発明で使用される超音波としては、通常10kHz以上の振動数である音波を意味し、通常この分野で用いられる超音波発生装置から照射される音波であれば特に限定されないが、具体的には、例えば20〜100kHzの振動数の音波が好ましく挙げられ、中でも30〜60kHzの振動数の音波がより好ましい。
【0018】
本発明の担持方法に於ける反応温度は、本発明の担持方法によって調製される繊維状タンパク質担持金属触媒に影響を与えない温度であれば特に限定されないが、通常0〜70℃、好ましくは20〜50℃が挙げられる。
【0019】
本発明の担持方法に於ける反応時間は、通常10分〜95時間、好ましくは1時間〜48時間、より好ましくは3時間〜36時間である。
【0020】
本発明の担持方法を具体的に説明すると、以下の如くである。例えば金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒に金属触媒化合物を上記した如き割合となるよう溶解させた溶液に、繊維状タンパク質を上記した如き割合となるように浸し、超音波照射下、上記した如き条件で放置する。すると、反応溶液は無色に変化し、繊維状タンパク質は金属触媒に由来する色(金属色)に変化する。次いで、金属色に変化した繊維状タンパク質を濾取し、濾取した繊維状タンパク質を適当な洗浄溶媒、例えばメタノール等で洗浄し、適宜乾燥させることにより、目的の繊維状タンパク質担持金属触媒を調製することができる。
【0021】
本発明の担持方法により調製された繊維状タンパク質担持金属触媒を洗浄する際に用いられる洗浄溶媒としては、通常この分野で用いられる洗浄溶媒であれば特に限定されないが、中でも金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒が好ましく、その中でもメタノールがより好ましい。
【0022】
本発明の担持方法に於ける乾燥は、通常この分野で行われる乾燥方法であれば特に限定されないが、減圧下で通常10〜100℃、中でも20〜50℃で乾燥することが好ましい。
【0023】
本発明の担持方法によれば、金属触媒化合物と繊維状タンパク質との接触を、上記の如き反応溶媒中、超音波照射下に行うので、従来の静置、攪拌での接触と比較して、金属触媒化合物が速やかに0価に還元され、還元された0価の金属触媒を繊維状タンパク質に均一に担持させることができ、また、攪拌での接触時に問題となる攪拌子や攪拌棒への繊維状タンパク質の絡みつきも解消できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1 超音波照射下による絹フィブロイン担持パラジウム触媒の調製
5mm程度に刻んだ絹フィブロイン1.0gを、酢酸パラジウム52.7mg(0.235mmol)を含有するメタノール溶液(20mL)に浸し、超音波照射下(47kHz)、30℃で24時間放置した。その後、黒色に変化した絹フィブロインを濾取し、メタノールで洗浄後、減圧下40℃で24時間乾燥させて2.5wt%の絹フィブロイン担持パラジウム触媒1.025gを得た。尚、ここで言うwt%は、絹フィブロインYgに担持された金属触媒の量をZgとすると、下記の式で求められるものである(以下、同じ)。
wt%=Z/(Y+Z)×100
【0026】
実施例2 超音波照射下による絹フィブロイン担持オスミウム触媒の調製
絹フィブロイン5gを、四酸化オスミウム0.5g(1.97mmol)を含有するメタノール溶液(200mL)に浸し、超音波照射下(47kHz)、30℃で30時間放置した。その後、黒色に変化した絹フィブロインを濾取し、メタノールで洗浄後、減圧下40℃で24時間乾燥させて5wt%の絹フィブロイン担持オスミウム触媒5.26gを得た。
【0027】
比較例1 静置による絹フィブロイン担持パラジウム触媒の調製
絹フィブロイン20.0gを、酢酸パラジウム1.06g(4.72mmol)を含有するメタノール溶液(200mL)に浸し、30℃で4日間静置した。その後、黒色に変化した絹フィブロインを濾取し、メタノールで洗浄後、減圧下40℃で24時間乾燥させて2.5%の絹フィブロイン担持パラジウム触媒20.5gを得た。
【0028】
実施例1で得られた絹フィブロイン担持パラジウム触媒を、例えばp−クロロスチレンのような芳香族ハロゲンを有するオレフィン化合物の還元反応に用いた場合、比較例1で得られたものを用いた場合と同様に、脱ハロゲン化は全く進行せず、二重結合が選択的に還元されたp−クロロエチルベンゼンが定量的に得られた。このことから、比較例1で得られた従来のものと、同等の触媒活性を有することが判った。また、実施例1で得られた触媒の一部を切り取って還元反応に使用した場合、どの部分を切り取ったものであっても、ほぼ同等の触媒活性を有することから、金属触媒が絹フィブロインに均一に担持していると推測され、再現性に優れる触媒であることが判った。
【0029】
以上のことから、本発明の担持方法によれば、従来の方法と比較して、短時間で繊維状タンパク質担持金属触媒を調製することができ、しかもこのようにして得られた触媒は従来のものと同等の触媒活性を有し、再現性に優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の担持方法は、例えば官能基選択性に優れる等の特徴を有し、有機合成上の有用性が期待されている繊維状タンパク質担持金属触媒を、短時間且つ均一に調製できるため、当該触媒の工業的生産を可能にするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属触媒化合物と繊維状タンパク質とを、水、金属触媒化合物を還元し得る有機溶媒、これらの混合液又は還元剤を含む溶媒中で、超音波照射下に接触させることを特徴とする、繊維状タンパク質への金属触媒の担持方法。
【請求項2】
金属触媒がパラジウム、オスミウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム又はニッケルである請求項1に記載の担持方法。
【請求項3】
金属触媒がパラジウム又はオスミウムである請求項1に記載の担持方法。
【請求項4】
金属触媒がパラジウムである請求項1に記載の担持方法。
【請求項5】
金属触媒化合物が塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、塩化アリルパラジウム、塩化(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、シアン化パラジウム、塩化オスミウム、二酸化オスミウム、四酸化オスミウム、オスミウム酸(VI)カリウム又はヘキサクロロオスミウム酸カリウムである請求項1に記載の担持方法。
【請求項6】
金属触媒化合物が酢酸パラジウム又は四酸化オスミウムである請求項1に記載の担持方法。
【請求項7】
金属触媒化合物が酢酸パラジウムである請求項1に記載の担持方法。
【請求項8】
繊維状タンパク質が絹フィブロインである請求項1に記載の担持方法。
【請求項9】
金属触媒化合物が酢酸パラジウムであり、繊維状タンパク質が絹フィブロインであり、これらをメタノール中で接触させる、請求項1に記載の担持方法。
【請求項10】
金属触媒化合物が四酸化オスミウムであり、繊維状タンパク質が絹フィブロインであり、これらをメタノール中で接触させる、請求項1に記載の担持方法。

【公開番号】特開2008−6350(P2008−6350A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177371(P2006−177371)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年4月15日 和光純薬工業株式会社発行の「和光純薬時報 April2006,Vol.74,No.2」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年6月9日 インターネットアドレス「http://www.wako−chem.co.jp/siyaku/journal/jiho/pdf/jiho742.pdf」に発表
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】