説明

繊維製品処理剤組成物

【課題】 加熱式乾燥機を用いる洗濯において、衣料に快適な風合い(柔軟感)を与えながら、乾燥機特有のシワを低減し、形態保持効果や防縮効果に優れた繊維製品処理剤組成物の提供。
【解決手段】 重量平均分子量が50万〜1000万の水溶性カチオン性ポリマーを含有する乾燥機用繊維製品処理剤組成物、並びにこの繊維製品処理剤組成物で処理された繊維製品を加熱式乾燥機により加熱処理する繊維製品の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の繊維製品に柔軟感を与え、シワを低減させる為の繊維製品処理剤組成物に関し、特に、乾燥機使用時に生じるシワ軽減を目的とした繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯機に乾燥機能を搭載したドラム型の洗濯乾燥機が急速に普及している。しかし、この洗濯乾燥機に備えられている加熱式乾燥機(以下、本明細書で述べる加熱式乾燥機は、単に乾燥機ということもある)を使用して乾燥を行うと、衣料にシワや縮みが生じたり、タオルにごわつきが生じたりするため、この問題を解消できる仕上げ剤が求められている。
【0003】
洗濯後の衣料に残るシワは、着用時に不快感を与えるものであるが、乾燥機使用時に生じるシワは衣料に深く刻まれてしまう折れシワであり、特に著しく酷い性質のものである。この乾燥機使用時のシワは、通常の洗濯で吊り干し乾燥させた場合では見られない特有のものである。従って、洗濯乾燥機ユーザーは、このシワの問題を回避する為、洗濯乾燥機を使用する際に、例えば(1)多量の衣料を詰め込まない、(2)乾燥途中の水分を含む状態で槽内から衣料を取り出し吊り干しする、等の方法を工夫して使用している。
【0004】
一方、最近の新しい洗濯乾燥機は、年々大型化しており、多くの衣類を一度に洗濯し、そして乾燥する事ができる様になっている。しかし、先に述べたとおり、多くの衣料を槽内にいれた状態で乾燥させてしまうと、シワの問題が発生する。従って、実質的には、洗濯乾燥機メーカーが推奨する「洗濯から乾燥までをボタンひとつで行える」という手軽さや、「一度に多くの衣料を洗濯して乾燥できる」という大型化のメリットをうまく活用できる現状にはない。従って、どの様な洗濯乾燥機の使用条件においても、柔軟性を与える事はもとより、確実にシワを軽減できる仕上げ剤が求められている。
【0005】
洗濯乾燥機用途に開発された繊維製品処理剤や処理方法については、既に幾つかが知られている。特許文献1には、柔軟剤を含浸させた不織布等の特定基材を使用する乾燥機用の柔軟剤が開示されている。特許文献2には、特定のシリコーン化合物を含有した組成物を可撓性基材に含浸させた乾燥機用シートが開示されている。特許文献3には、エステル基を含むカチオン活性剤とシリコーン化合物に1%以上の水溶性高分子を併用した組成物に関する防シワ仕上げ剤が開示されている。さらに、特許文献4、5には、水不溶性のポリマーナノ粒子を使用する方法が開示されている。しかし、これらの方法では、乾燥機特有のシワを解消したり、軽減させる効果が乏しく、洗濯乾燥機ユーザーが求めるシワがなく、風合い(柔軟感)が良好な衣料の仕上がりが得られない。なお、ポリマーナノ粒子の使用については、仕上げ用途に応用する技術が、近年、特許文献6、7に開示されている。しかし、これは、香料除放、柔軟用途等に適するものであり、乾燥機特有のシワの問題を解決する施策に相当する内容ではない。
【0006】
一方、乾燥機以外の使用法におけるシワ取り技術としては、特許文献8にある様な、有効量のシリコーンと皮膜形成性ポリマーを含む水性媒体組成物をスプレーで処理する方法がある。しかし、この文献中には、洗濯乾燥機用途としての記述はなく、この使用におけるシワ取り効果は不明である。
【特許文献1】特開平7−18578号公報
【特許文献2】特開平6−17376号公報
【特許文献3】特開2005−187987号公報
【特許文献4】特開2004−512431号公報
【特許文献5】特開2004−515660号公報
【特許文献6】国際公開第2005/103215号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開2004/0116321号明細書
【特許文献8】特表平10−508912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、加熱式乾燥機を用いる洗濯において、衣料に快適な風合い(柔軟感)を与えながら、乾燥機特有のシワを低減し、形態保持効果や防縮効果に優れた繊維製品処理剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重量平均分子量が50万〜1000万の水溶性カチオン性ポリマー(以下(A)成分という)を含有する乾燥機用繊維製品処理剤組成物、更に、水不溶性カチオン性ポリマー(以下(B)成分という)を含有する乾燥機用繊維製品処理剤組成物、更に、(C)成分として、シリコーン化合物を含有する乾燥機用繊維製品処理剤組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記繊維製品処理剤組成物で処理された繊維製品を、加熱式乾燥機により加熱処理する繊維製品の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、加熱式乾燥機を使用した洗濯において、衣料に快適な風合い(柔軟感)を与えると共に、乾燥機使用時に生じる特有のシワを軽減し、形態保持効果や防縮効果に優れた繊維製品処理剤組成物及び繊維製品の処理方法を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、重量平均分子量が50万〜1000万の水溶性カチオン性ポリマーである。ここで水溶性とは20℃で100gの水に0.05g溶かした時に溶けるものをいい、20℃で100gの水に1.0g溶かした時に溶けるものが好ましい。
【0012】
(A)成分の重量平均分子量は、繊維製品の繊維物性を制御し、防シワ効果を十分に発揮する観点から、50万〜1000万であり、50万〜700万が好ましく、80万〜600万がさらに好ましい。なお、(A)成分の重量平均分子量は、後述の実施例に記載した方法による測定値である。この方法で測定される分子量の上限は、本測定法における限界値に相当する。
【0013】
本発明の(A)成分は、水系媒体もしくは炭素数1〜3の低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)の親水性媒体又はこれらの混合媒体中において、増粘効果を与えシワ低減に有効な繊維物性を繊維製品に与えることができる。
【0014】
本発明の(A)成分は、カチオン性基含有ビニル単量体を必須構成単量体とするものであり、カチオン性基含有ビニル単量体と、これと共重合可能なノニオン性基含有ビニル単量体との共重合体が挙げられる。
【0015】
カチオン性基含有ビニル単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド類、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、N−ビニルイミダゾール等のN−ビニル複素環化合物類、アミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類などのアミノ基を有する単量体の酸中和物あるいは4級アンモニウム塩;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のジアリル型4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0016】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0017】
上記の酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン−2−カルボン酸、コハク酸などが挙げられ、上記4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0018】
これらのカチオン性基含有ビニル単量体の中では、一般式(I)又は(II)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種(以下(a1)成分という)が好ましい。
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは−O−、−NH−又は−O−CH2CH(OH)−基を示し、Zは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。]
【0021】
【化6】

【0022】
[式中、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R7及びR8は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは前記の意味を示す。]
上記一般式(I)又は(II)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の中でより好ましいものとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを前記の4級化剤で4級化した4級アンモニウム塩、あるいはジメチルジアリルアンモニウムクロライドが挙げられる。ここで酸中和物単量体は、系のpHなどにより中和した酸の解離が起こり、ポリマー構造が変化するため、粘度の安定性が低いという欠点を有する。この点からも4級アンモニウム塩型単量体がより好ましい。
【0023】
また、上記のようなカチオン性基含有ビニル単量体と共重合可能なノニオン性基含有ビニル単量体としては、一般式(III)又は(IV)で表される、水への溶解度(20℃)が1g/100g以上であるノニオン性基含有親水性ビニル単量体の少なくとも1種(以下(a2)成分という)が好ましい。
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、R1は前記の意味を示し、R9及びR10は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖の、ヒドロキシ基を有していてもよい、アルキル基又はアルケニル基を示す。]
【0026】
【化8】

【0027】
[式中、R1は前記の意味を示し、A1及びA2は同一又は異なって、式−(CH2)n−(nは2〜6の整数を示す)で表される基を示し、Bは−O−又は−CH2−基を示す。]
一般式(III)で表されるノニオン性基含有親水性ビニル単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、一般式(IV)で表されるノニオン性基含有親水性ビニル単量体の具体例としては、N−(メタ)アクロイルモルホリン等が挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではなく、またこれらのノニオン性基含有ビニル単量体は、単独又は2種以上を混合して用いる事ができる。
【0028】
これらのノニオン性基含有親水性ビニル単量体の中では、アクリルアミドや、N,N−ジ置換(メタ)アクリルアミドを用いると、高い防シワ性を得るうえで好ましく、更にはアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
【0029】
ノニオン性基含有親水性ビニル単量体の性質として必要な親水性とは、20℃、pH3〜12の範囲で水への溶解度が1.0g/100.0g以上、好ましくは3.0g/100.0g以上であるものを示す。
【0030】
本発明の(A)成分を構成する(a1)成分と(a2)成分の割合は、繊維への十分な吸着残留性を得、繊維物性を十分制御し、有効なシワ低減効果を発現させる観点から、(a1)/[(a1)+(a2)]×100(%)が、1〜100質量%が好ましく、3〜100質量%がより好ましい。また、(a1)成分と(a2)成分のモル比率は、(a1)/(a2)=1/99〜80/20が好ましく、3/97〜70/30がより好ましい。
【0031】
本発明の(A)成分を構成する単量体として、上記(a1)成分、(a2)成分以外に、これらと共重合可能な他のビニル単量体も用いることができる。
【0032】
他のビニル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、キシリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸誘導体;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリル酸、メタクリル酸、2−スルホエチルメタクリレートなどのアニオン性基含有単量体;N−(3−スルホプロピル)−N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−カルボキシメチル)−N−メタクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−カルボキシメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等のベタイン類が挙げられる。
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、水不溶性カチオン性ポリマーである。この水不溶性カチオン性ポリマーは化学的に架橋されていてもよい。ここで水不溶性カチオン性ポリマーとは、0.05質量%濃度のカチオン性ポリマーの水分散液を調整し、40℃で5〜6時間攪拌させて溶解・分散し、メンブランフィルター(セルロースアセテート製0.45μm)を用いて濾過した時、メンブランフィルターを通過しないカチオン性ポリマーをいう。
【0033】
(B)成分は、水系媒体もしくは炭素数1〜3の低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)の親水性媒体又はこれらの混合媒体中において、溶解又は分散し、(A)成分とは異なるレベルでの増粘効果を与え、シワ低減に有効なレオロジー特性を発現できるものである。
【0034】
本発明の(B)成分としては、カチオン性基含有ビニル単量体と、これと共重合可能なノニオン性基含有ビニル単量体と、2個以上のビニル基を分子中に有する架橋性ビニル単量体との共重合体が挙げられる。
【0035】
カチオン性基含有ビニル単量体としては、(A)成分を構成するカチオン性基含有ビニル単量体と同様のものが例示され、前記一般式(I)又は(II)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種(以下(b1)成分という)が好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを前記の4級化剤で4級化した4級アンモニウム塩 あるいはジメチルジアリルアンモニウムクロライドがより好ましい。
【0036】
ノニオン性基含有ビニル単量体としては、(A)成分を構成するノニオン性基含有ビニル単量体と同様のものが例示され、前記一般式(III)又は(IV)で表される、水への溶解度(20℃)が1.0g/100.0g以上であるノニオン性基含有親水性ビニル単量体の少なくとも1種(以下(b2)成分という)が好ましく、高い防シワ性を得る観点から、アクリルアミド、N,N−ジ置換(メタ)アクリルアミドがより好ましく、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
【0037】
2個以上のビニル基を分子中に有する架橋性ビニル単量体(以下(b3)成分という)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;N−メチルアリルアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等のアクリルアミド類;ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルエチレン尿素等のジビニル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、分子中に少なくとも2個のアリルエーテル単位を有するスクローゼのアリルエーテル化体等のポリアリル化合物;ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0038】
これらの架橋性ビニル単量体の中では、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルが好ましい。
【0039】
本発明の(B)成分を構成する(b1)成分と(b2)成分の割合は、繊維への十分な吸着残留性を得、防しわ効果を与える上で有効な繊維物性を得るために、(b1)成分/(b2)成分(モル比率)=1/99〜80/20が好ましく、3/97〜70/30がより好ましい。
【0040】
また、(b3)成分の割合は、防シワ性能の観点から、単量体全量に対して 0.001〜5.0モル%が好ましく、0.002〜3.0モル%が特に好ましい。
【0041】
本発明の(B)成分は、架橋性ビニル単量体を用いずに、他の方法で構造中に架橋構造を導入することもできる。他の方法としては、過酸化系の開始剤やレドック系開始剤等の様な重合開始剤を用いて、ポリマーの分子構造中に分岐を与える方法、アルコキシ基の様な反応性を有するビニル単量体を共重合する方法、特公昭60−18690号公報及び特公昭61−48521号公報に示される様に、重合して得られた樹脂に対して表層部のみを架橋させる方法等が例として挙げられるが、「ゲル ソフトマテリアルの基礎と応用、 第4版」(産業図書出版)p45に示される様な他の方法を用いても良い。
【0042】
本発明の(B)成分を構成する単量体として、上記(b1)成分、(b2)成分、(b3)成分以外に、これらと共重合可能な他のビニル単量体も用いることができる。他のビニル単量体としては、例えば、(A)成分を構成する(a1)成分、(a2)成分以外の、これらと共重合可能な他のビニル単量体として、前記に例示されている(メタ)アクリル酸誘導体、アニオン性基含有単量体、ベタイン類等が挙げられる。
【0043】
[(A)成分及び(B)成分の製造法]
本発明の(A)成分及び(B)成分を製造する方法については必ずしも制限はないが、通常は溶液重合法、逆相懸濁重合法、沈澱重合法などの方法によることが好ましい。例えば、溶液重合法としては、水又は水と均一に混合可能な親水性有機溶媒或いはこれらの混合溶媒等の溶媒中に単量体成分、必要により架橋剤、連鎖移動剤等を均一に溶解し、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスによる置換等により系内の溶存酸素を除去した後、重合開始剤を添加して反応させる方法が挙げられる。重合開始温度は通常20〜90℃程度であり、反応時間は1〜10時間程度である。単量体として水に溶け難い成分を使用する場合、親水性有機溶媒を併用するのが望ましい。
【0044】
上記親水性有機溶媒の代表的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低級アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのうち特に、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が好ましい。
【0045】
また、重合開始剤としては、溶媒中に均一に溶解する過酸化物、有機又は無機過酸化物若しくはその塩、アゾビス系化合物の単独或いは還元剤との組合せによるレドックス系のものが用いられ、それらの代表的な例としては、例えば、t−ブチルパーオキサイド、t−アミルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルイソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキシルハイドロパーオキサイド、テトラリンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーベンゾエート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕 二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕 二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸塩と、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアニリン等の第3級アミンとの組合せ等が挙げられる。
【0046】
これらのうち、特に、t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム若しくは過硫酸アンモニウムの単独、又はこれらの過硫酸塩と、トリエチルアミン、トリエタノールアミン若しくはジメチルアニリン等の第3級アミンとの組合せが好ましい。
【0047】
本発明の(A)成分、(B)成分を製造する際に用いられる重合装置としては特に制限はない。溶液重合法では、例えば複数の回転する攪拌腕を有する容器が挙げられる。複数の回転攪拌腕を有する容器は、単量体混合物を溶液重合する時に重合の進行に伴い生成する含水ゲル状重合体に回転攪拌腕の回転により剪断力を与え得るものである事が必要である。回転攪拌腕は複数個である事が必要で、その様な容器として、例えば双腕型ニーダー(以下単にニーダーという)の様な装置が挙げられる。ニーダーを使用するに際しては、二本の回転攪拌腕を互いに逆方向に等速又は不等速で回転して使用する。等速の場合は二本の回転攪拌腕の回転半径は互いに重なりあう部分を有する状態で使用し、不等速の場合は二本の回転攪拌腕の回転半径は互いに重ならない状態で使用する。回転攪拌腕はシグマ型、S型、バンバリー型あるいは魚尾型などのいずれも使用できる。
【0048】
本発明の(A)成分、(B)成分を製造する手順の一例を示すと、フタを有するニーダー中に単量体混合物の10〜50質量%の水溶液を送入し、必要に応じて系を窒素等の不活性気体で置換し、水溶性ラジカル重合開始剤を添加して、常温であるいは30〜70℃に加熱して重合を開始させ、重合の進行に伴い生成する含水ゲル状重合体をニーダーの羽根の回転による剪断力で細分化しながら重合を完結する方法を挙げることができる。勿論本発明の範囲がこの例により限定されるものではない。ここで用いられる単量体混合物水溶液の初期濃度は10〜50質量%であることが好ましい。
【0049】
重合開始剤の使用量は、主鎖の高分子鎖の重合度を上げ、また重合反応の反応率を上げて、残留単量体量を減少させる観点から、単量体成分を基準として0.01〜5.0モル%が好ましく、0.01〜3.0モル%がより好ましく、0.01〜1.0モル%が特に好ましい。
【0050】
反応生成物は反応に使用した溶媒を含むゲル状であり、通常は回転式カッター等で粉砕し、更に、加熱、減圧等の方法により溶媒を除去して乾燥、粉砕分級して粉末とする。
【0051】
逆相懸濁重合法としては、水中に単量体成分、必要により架橋剤を均一に溶解し、分散剤などを用いて水と均一に混合しない有機溶媒中に懸濁又は乳化させて重合反応を行う。重合開始剤としては、必ずしも水溶性のもののみに限らず有機溶媒中に可溶なものも用いられる。ここで用いられる有機溶媒としては、前記のもの以外に、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素系有機溶媒、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒、アイソバー等の鉱油等も用いられる。
【0052】
また、分散剤としては、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、シュガーエステル等が挙げられる。
【0053】
系内の溶存酸素の除去、反応生成物の処理等は前記と同様であり、また、反応条件は必ずしも制限はないが、概ね次の通りである。溶媒使用量:単量体水溶液と等量〜20倍、好ましくは等量〜10倍、重合開始剤の使用量:単量体成分を基準として0.01〜5モル%、好ましくは0.01〜3モル%、重合開始温度:10〜90℃程度、重合反応時間:1〜10時間程度である。
【0054】
[繊維製品処理剤組成物]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、必須成分として(A)成分を含有する。本発明の組成物中の(A)成分の含有量は、良好な防シワ性能と仕上げ感を与える観点から、0.001〜10.0質量%が好ましく、0.005〜10.0質量%がより好ましく、0.01〜5.0質量%が更に好ましい。本発明の組成物中の(B)成分の含有量は、良好な防シワ性能と仕上げ感を与える観点から、0.001〜10.0質量%が好ましく、0.005〜10.0質量%がより好ましく、0.01〜5.0質量%が更に好ましい。
【0055】
また本発明の組成物において、下記式(V)で表される、(A)成分と(B)成分の合計質量に対する(A)成分の割合は、3〜100質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましく、10〜100質量%が更に好ましい。
【0056】
(A)/[(A)+(B)]×100〔%〕 …(V)
本発明においては、(A)成分と(B)成分の混合物を一度の反応により同時に合成しても良い。すなわち、上述した(A)成分及び(B)成分の製造法において、単量体の種類と比率、重合開始剤の種類と量、重合温度、反応時間等を適当に設定することにより水溶性カチオン性ポリマー成分とゲル化能を持つ水不溶性カチオン性ポリマー成分を一度の反応で同時に生成することができる。この時生成する水溶性カチオン性ポリマー成分が上述した(A)成分の物性を満足することができれば、水溶性カチオン性ポリマー成分を(A)成分、水不溶性カチオン性ポリマー成分を(B)成分とする事ができる。この時の好適な(A)成分と(B)成分の比率は、上記式(V)において、3〜100質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましく、10〜100質量%が更に好ましい。
【0057】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、防シワ性や繊維の風合い等を高める観点から、(C)成分としてシリコーン化合物を含有することが好ましい。本発明の組成物中の(C)成分の含有量は、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.01〜10.0質量%がより好ましい。
【0058】
本発明に用いられる(C)成分のシリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0059】
本発明では、特に分子量1000〜1000万、好ましくは1000〜100万、特に好ましくは1000〜10万、25℃における粘度が2〜100万mm2/s、好ましくは500〜100万mm2/s、特に好ましくは1000〜100万mm2/sのジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミノポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン)変性ジメチルポリシロキサンが好適に用いられる。
【0060】
(C)成分として、アミノ変性ジメチルポリシロキサンを用いた場合には、アミノ基が中和されていた方が、(C)成分の吸着残留性や、貯蔵安定性、色相を改善する上で好ましい。中和度は0.7以上1.0以下であることがより好適である。この時の中和度は、アミノ基が中和に用いる酸と化学量論的に反応したときの中和されたアミノ基のモル比率を示す値であり、具体的には以下の式(VI)で表される値である。
【0061】
中和度=(化学量論的に中和されているアミノ基のモル数)/(アミノ変性ジメチルポリシロキサンの全アミノ基のモル数) …(VI)。
【0062】
中和に用いる水溶性の酸としては、塩酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、安息香酸、乳酸、酪酸、リン酸、硫酸等が挙げられる。これらの酸は1種又は2種以上を使用できる。この内、塩酸、酢酸、クエン酸、乳酸が好ましく、塩酸、クエン酸が特に好ましい。
【0063】
本発明の組成物において、下記式(VII)で表される、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計質量に対する、(A)成分と(B)成分の合計質量の割合は、5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
【0064】
[(A)+(B)]/[(A)+(B)+(C)]×100〔%〕 …(VII)。
【0065】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、良好な防シワ性能と仕上げ感を与える観点から、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量として、0.1〜50.0質量%含有することが好ましく、0.1〜30.0質量%がより好ましく、1.0〜30.0質量%が更に好ましく、2.0〜20.0質量%が特に好ましい。
【0066】
また、乾燥機中への本発明の繊維製品処理剤組成物の使用においては、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量として、繊維製品に対して、0.001〜10.0質量%が好ましく、0.01〜7.0質量%がより好ましい。
【0067】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(C)成分の繊維製品に対する吸着を促し、繊維間の摩擦を低減する目的から、(D)成分として陽イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0068】
(D)成分としては、一般的な柔軟化剤として知られている、窒素原子に結合する3個の基のうち、1又は2個が炭素数10〜20の炭化水素基、残りが炭素数1〜3のヒドロキシ基で置換されていても良い炭化水素基である3級アミン、その酸塩もしくはその4級化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。具体例としては、一般式(VIII)で表される3級アミン、その酸塩もしくはその4級化物が挙げられる。
【0069】
【化9】

【0070】
〔式中、R11は炭素数10〜20の炭化水素基、R12は炭素数10〜20の炭化水素基又は炭素数1〜3のヒドロキシ基で置換されていても良い炭化水素基、R13は炭素数1〜3のヒドロキシ基で置換されていても良い炭化水素基を示す。〕
一般式(VIII)において、R11としては炭素数10〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基、特に炭素数12〜18のアルキル基が好ましく、R12としては炭素数10〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基、特に炭素数12〜18のアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が好ましい。R13としては炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が好ましい。上記3級アミンの酸塩としては、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸等の無機酸、あるいは酢酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸等の有機酸の塩が挙げられる。また、上記3級アミンの4級化物としては、メチルクロライド等の炭素数が1〜4のアルキルハライド又は炭素数が2〜6のジアルキルサルフェートを用いて4級化したものが挙げられる。
【0071】
本発明の組成物中の(D)成分の含有量は、良好な防シワ性能を得る観点から0.1〜10.0質量%が好ましく、0.1〜8.0質量%がより好ましい。
【0072】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(C)成分の乳化安定性及び吸着性を向上させて、防シワ性能を高める目的から、(E)成分として非イオン界面活性剤を含有する事が好ましい。
【0073】
(E)成分としては、HLB5〜18、好ましくは6〜16のポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤(以下(E1)成分という)、下記一般式(IX)で表される化合物(以下(E2)成分という)が挙げられる。
【0074】
14−O−[(EO)x/(PO)y]−H (IX)
(式中、R14は平均炭素数10〜24、好ましくは10〜14のアルキル基又はアルケニル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、xはEOの数平均付加モル数を示す2〜100の数、yはPOの数平均付加モル数を示す0〜2の数である。また、(EO)x/(PO)yは、EOとPOのランダム付加体でも、あるいはブロック付加体でもよい。)
(E1)成分としては、アルキル基の炭素数が10〜24、好ましくは10〜18でオキシエチレン基の数平均付加モル数が2〜100のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適であり、中でも、アルキル基の炭素数が10〜24、好ましくは10〜18、更に好ましくは10〜14でオキシエチレン基の数平均付加モル数が2〜50のポリオキシエチレンアルキルエーテルが更に好適である。
【0075】
(E2)成分としては、通常市販されているものを使用してもよく、また周知の方法で合成された、もしくは天然油脂から誘導されたR14で示されるアルキル基又はアルケニル基を有するアルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを公知の方法で付加することによって製造することができる。
【0076】
本発明においては、(E1)成分と(E2)成分を併用することが好ましく、これらを併用することにより、(C)成分の乳化安定性を向上させるだけでなく、希釈時に(C)成分の吸着性を向上させ、防シワ性能を高める上で有用である。
【0077】
本発明の組成物中の(E)成分の含有量は、良好な防シワ性能を得る観点から、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.1〜10.0質量%がより好ましい。
【0078】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、溶液の好ましい外観を得る目的、及び貯蔵安定性を改善する目的から(F)成分として有機溶剤を含有することが可能であるが、引火点や臭いの問題があるため、組成物中の(F)成分の含有量は、好ましくは0〜40.0質量%、より好ましくは0.01〜30.0質量%、特に好ましくは0.1〜20.0質量%である。
【0079】
(F)成分としては、水酸基及び/又はエーテル基を有する水溶性有機溶剤が好ましい。(F)成分として、以下の(F1)〜(F6)のものがあげられ、これらのうちの1種以上を用いることが好ましい。
(F1)エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルカノール類。
(F2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類。
(F3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、平均分子量約1000のポリプロピレングリコール等のポリグリコール類。
(F4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリルエーテル、2−メチルグリセリルエーテル、1,3−ジメチルグリセリルエーテル、1−エチルグリセリルエーテル、1,3−ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル類。
(F5)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類。
(F6)2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ,ジ,トリの混合物)等のアルカノールアミン類。
【0080】
これらの中でも、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが好適であり、特にエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0081】
本発明の繊維製品処理剤組成物は更に性能を向上させる目的から、上記に示した成分以外の界面活性剤(陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤)を併用することができるが、多量に配合すると繊維製品に付着し、ごわつく等の風合いを損なうため、使用に際しては注意を要する。
【0082】
陰イオン界面活性剤としては、アルキル基の炭素数10〜15のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数10〜24のアルキル硫酸エステル塩、炭素数10〜24のアルキル基と数平均付加モル数1〜6のオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、炭素数10〜24のα−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸の炭素数10〜24のα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩等を挙げることができる。
【0083】
両性界面活性剤としては、アルキル基の炭素数10〜24のアルキルジメチルアミンオキサイド、アルカノイル基の炭素数が10〜24のアルカノイルアミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキル基の炭素数が10〜24のN−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、アルカノイル基の炭素数が10〜24のN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン等を挙げることができる。
【0084】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、さらに、一般の液体組成物に添加する各種成分を含む事ができ、例えば防腐剤、香料、顔料、染料、ハイドロトロープ剤、増粘剤、ゲル化防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0085】
本発明の繊維製品処理剤組成物は乳濁物から透明(光学的に透明まで光が透過する)の何れの外観をとるものであっても良い。
【0086】
本発明の繊維製品処理剤組成物は上記成分を水に溶解させた水溶液の形態であり、組成物中の水の含有量は、好ましくは20.0〜90.0質量%、より好ましくは30.0〜80.0質量%、特に好ましくは40.0〜70.0質量%である。溶解又は分散安定性の点から、溶液のpHは好ましくは1〜9、更に好ましくは2〜7、特に好ましくは3〜7であり、このようなpHに調整するには、通常の硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸等の酸と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤を用いることができる。
【0087】
[繊維製品の処理方法]
本発明の繊維製品処理剤組成物の使用形態としては、下記(1)〜(5)等が挙げられるが、繊維製品の洗浄後の濯ぎ工程及び/又は濯ぎ工程までに本発明の処理剤組成物を添加して繊維製品に処理した後に、加熱式乾燥機により加熱処理する方法が好ましい。
(1)繊維製品の洗濯工程におけるすすぎの段階で該処理剤組成物をすすぎ水に添加し、繊維製品に処理する方法。
(2)(1)の方法により繊維製品に処理した後、脱水させ、処理繊維製品を加熱式乾燥機に入れて加熱処理を行う方法。
(3)洗濯機能と乾燥機能が一体化した洗濯乾燥機を用いて、洗浄から乾燥までの連続運転により加熱処理を行う方法。
(4)トリガー容器などの噴霧器を用いて該処理剤組成物を繊維製品にスプレーした後、加熱式乾燥機に入れて加熱処理を行う方法。
(5)可撓性吸収体に該処理剤組成物を含浸させた製品を処理の対象である繊維製品と共に加熱式乾燥機に入れて加熱処理を行う方法。
【0088】
(1)、(2)、(3)の方法を使用する場合は、浴比(水/繊維製品の質量比)は、3〜30が好ましく、4〜30がより好ましい。これらの使用量や浴比などを考慮して、(A)成分、又は(A)成分と(B)成分が繊維製品に効率的に付着するようなすすぎ条件を選定することが好適である。この方法においては、本発明の処理剤組成物を(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計が繊維製品1kgあたり0.005〜10.0g、好ましくは0.05〜5.0gとなる様に使用する。乾燥機を使用する場合の、熱処理温度は、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜100℃であり、熱処理時間は、乾燥機や洗濯乾燥機の機能によるところが大きいが、5〜400分程度である。
【0089】
(1)、(2)、(3)の方法において、すすぎ処理時に本発明の処理剤組成物を添加する場合には、添加量は、水に対する(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計が、0.001〜1000ppmとなる割合が好ましく、0.01〜100ppmがより好ましい。
【0090】
(4)の方法において用いる噴霧器としては、トリガー式噴霧器が好ましく、1回のストロークで本発明の処理剤組成物を0.1〜2.0g、好ましくは0.2〜1.5g、さらに好ましくは0.3〜1.0g噴出するものが良好である。本発明で使用するトリガー式スプレー容器として特に好ましいものは、実開平4−37554号公報に開示されているような蓄圧式トリガーが、噴霧の均一性の点で特に良好である。噴霧特性としては、特に地面に垂直に置いた対象物に15cm離れた場所からスプレーしたときの液のかかる面積が100〜800cm2、好ましくは150〜600cm2になるトリガー式噴霧器が好ましい。本発明において(4)の方法を用いる場合には、噴霧器に充填する本発明の処理剤組成物中の(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計の比率は0.001〜5.0質量%、更に0.005〜3.0質量%、特に0.01〜1.0質量%であることが、噴霧特性の観点から好ましい。(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計が繊維製品1kgあたり好ましくは0.005〜10.0g、より好ましくは0.05〜5.0gとなる様にトリガー式噴霧器を使用する。
【0091】
(5)の方法に本発明の処理剤組成物を用いる場合には、(A)成分及び(B)成分や他の成分を含有する組成物を可撓性吸収体に担持させた製品の存在下、繊維製品を加熱式乾燥機に入れて加熱処理する方法が好ましい。(5)の方法に供される本発明の処理剤組成物は(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計を0.001〜5.0質量%、更に0.005〜3.0質量%、特に0.01〜1.0質量%含有することが、可撓性吸収体から繊維製品への(A)成分及び(B)成分の均一付着の観点から好ましい。また(5)の方法では、本発明の処理剤組成物を、(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計が繊維製品1kg当り0.1〜20.0g、好ましくは0.5〜8.0gとなる様に使用する。
【0092】
この場合、可撓性吸収体の坪量、厚さなどを考慮(例えば後述する範囲から適宜選定)して、(A)成分が繊維製品に効率的に付着するような可撓性吸収体に、本発明の処理剤組成物を担持させることが好適である。
【0093】
可撓性吸収体としては紙、織物、不織布、スポンジ等を挙げることができ、特に空隙率が30〜90%のものが好ましい。ここで、空隙率は下式(X)で求めることができる。
【0094】
空隙率(%)=[1−W/(T×ε)]×100 …(X)
〔式中、Wは可撓性吸収体の質量(g)であり、Tは可撓性吸収体の見かけ体積(cm3)であり、εは可撓性吸収体を構成する材料の比重を示す。〕
本発明では可撓性吸収体として不織布が最も好適に使用される。不織布としては、湿式不織布、ケミカルボンド、サーマルボンド、エアレイ等の乾式不織布の他に、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、ニードルパンチ及び/又はステッチボンドを挙げることができるが、特に湿式不織布、ケミカルボンド、サーマルボンド、メルトブローン、又はスパンレースから選ばれる1種以上が好ましい。また、不織布は坪量10〜300g/m2、より好ましくは10〜200g/m2、特に好ましくは15〜180g/m2が好ましい。
【0095】
不織布の材質としてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルから選ばれる疎水性繊維、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリウレタン、セルロースから選ばれる親水性繊維を用いることができる。本発明では疎水性繊維及び親水性繊維を併用することもできる。
【0096】
本発明の可撓性吸収体はブロック状でもよくシート状でも良いが、シート状のものが良好である。シートの厚さとしては好ましくは平均50μm〜3000μm、特に好ましくは100μm〜2000μmであり、回転式加熱式乾燥機の大きさにもよるが縦10〜30cm、横10〜50cm程度の大きさのものを1枚乃至複数枚用いることが適当である。
【0097】
可撓性吸収体としてシート状のものを用いる場合において、本発明の処理剤組成物の担持量は、好ましくは30〜800g/m2、より好ましくは50〜600g/m2、特に好ましくは100〜500g/m2である。担持方法としてはリバースロールコーター法、グラビアロールコーター法、オポジットナイフコーター法、インバースナイフコーター法、キスロールコーター法、スプレーコート法、エアナイフコーター法、ディップロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、ハケ塗り法等の湿式コーティング法を用いて担持させることができ、特にディップロールコーター法が製造の容易性の点から好ましい。
【0098】
(5)の方法では、繊維製品を上記本発明の処理剤組成物の存在下で、繊維製品を加熱式乾燥機により加熱処理する。この場合、本発明の処理剤組成物による処理と加熱乾燥がほぼ同時に進行する。繊維製品に対する本発明の処理剤組成物の比率は、(1)、(2)、(3)の方法で使用する場合と同様、(A)成分、又は(A)成分+(B)成分の合計が繊維製品1kgあたり0.005〜10.0g、好ましくは0.05〜5.0gとなる様に使用する事が望ましい。加熱式乾燥機による処理温度は、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜100℃であり、処理時間は、好ましくは5〜120分、より好ましくは10〜90分である。
【0099】
本発明において、処理剤組成物を処理する際の繊維は湿潤状態である事が好ましい。湿潤状態とは、水浴(すすぎ浴等)中に浸漬させた状態や、洗浄後、或いは脱水後のような、乾燥状態の繊維製品よりも水分量が相対的に多い状態を示す。
【実施例】
【0100】
以下の例中、%及び部は、特記しない限りそれぞれ質量部、質量%である。
【0101】
合成例1
シクロヘキサン479.8部にリョートーシュガーエステルS−770(三菱化学フーズ(株)製)0.55部を溶解し、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩(DMAPAA−Q;興人(株))13.8部(75%水溶液)、N,N−ジメチルアクリルアミド(興人(株)製)44.7部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.679部をイオン交換水75.43部に溶解させた水溶液を添加し、ホモミキサーを用いて水相の粒径が3〜4μmになるまで分散させた。これを、撹拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を取り付けた2Lのセパラブルフラスコに入れ、反応容器内の窒素置換を行った後にバス温を54℃に設定し昇温を開始した。内温が54℃に達すると、約20分間その温度に保持させ、その後更に昇温して95℃程度まで昇温し、系中の水を80%以上共沸脱水により留去した。最後に得られたシクロヘキサン分散液をろ過し、得られた重合物を70℃12時間、窒素雰囲気下において減圧乾燥し、重合物を得た。
【0102】
合成例2
シクロヘキサン479.8部にリョートーシュガーエステルS−770(三菱化学フーズ(株)製)0.55部を溶解し、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩(DMAPAA−Q;興人(株))13.8部(75%水溶液)、N,N−ジメチルアクリルアミド(興人(株)製)44.7部、架橋剤としてポリエチレングリコールジメタクリレート(NK−14G:新中村化学(株)製)0.0074部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.679部 をイオン交換水75.43部に溶解させた水溶液を添加し、ホモミキサーを用いて水相の粒径が3〜4μmになるまで分散させた。これを、撹拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を取り付けた2Lのセパラブルフラスコに入れ、反応容器内の窒素置換を行った後にバス温を54℃に設定し昇温を開始した。内温が54℃に達すると、約20分間その温度に保持させ、その後更に昇温して95℃程度まで昇温し、系中の水を80%以上共沸脱水により留去した。最後に得られたシクロヘキサン分散液をろ過し、得られた重合物を70℃、12時間、窒素雰囲気下において減圧乾燥し、重合物を得た。
【0103】
合成例3
合成例2の製造条件において、重合開始剤量を同じにして、架橋剤量のみを0.018部に変更した以外は同様にして重合物を合成した。
【0104】
合成例4
合成例2の製造条件において、重合開始剤量を同じにして、架橋剤量のみを0.028部に変更した以外は同様にして重合物を合成した。
【0105】
合成例5
内容積1リットルで、ジャケットに55℃のオイルを外部循環させたシグマ型攪拌腕を2本有するステンレス製ニーダー中に、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミドの塩化メチル付加物(MAPTAC;日東電工(株)製)58.0部、N,N−ジメチルアクリルアミド 71.37部、架橋剤としてポリエチレングリコールジメタクリレート(NK−9G:新中村化学(株)製)0.0429部、イオン交換水 350部からなるあらかじめ窒素置換した単量体水溶液を入れ、20〜40分さらに窒素ガスを吹き込み反応系内を窒素置換しながら、単量体水溶液の昇温を行った。ついで、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を0.22部添加した。重合開始剤を添加してから30分〜1時間後に重合が開始し全体が柔らかいゲル状となった。そのまま攪拌を続け、重合開始剤を添加してから4時間後にニーダーの蓋を外し、重合を停止させた。餅状の内容物を取り出し、5リットルのエタノール中で5〜10分攪拌しながら洗浄し、乾燥させた。その後、コーヒーミル、ジェットミルで粉砕した。粉砕した架橋粒子をハイボルターで分級し、カチオン性基含有共重合体を得た。
【0106】
合成例6
撹拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を取り付けた1Lのセパラブルフラスコにイオン交換水225.0部、イソプロピルアルコール5.0部を加え、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩(DMAPAA−Q;興人(株))13.8部(75%水溶液)、N,N−ジメチルアクリルアミド(興人(株)製)44.68部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.68部を溶解し、反応容器内を窒素置換した後に、窒素気流条件下で、加熱撹拌を開始し、60℃で5時間重合を行った。得られた反応溶液からイソプロピルアルコールをエバポレータを用いて還流留去した。得られた水溶液に適量の水を加え、凍結乾燥を行ない、重合物を得た。
【0107】
合成例7
撹拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を取り付けた1Lのセパラブルフラスコにイオン交換水225.0部、イソプロピルアルコール5.0部を加え、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩(DMAPAA−Q;興人(株))13.8部(75%水溶液)、N,N−ジメチルアクリルアミド(興人(株)製)44.68部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.23部を溶解し、反応容器内を窒素置換した後に、窒素気流条件下で、加熱撹拌を開始し、60℃で5時間重合を行った。得られた反応溶液からイソプロピルアルコールをエバポレータを用いて還流留去した。得られた水溶液に適量の水を加え、凍結乾燥を行ない、重合物を得た。
【0108】
合成例8
イオン交換水の量を227.5部、イソプロピルアルコールの量を2.5部に変える以外は合成例6と同様にして重合物を得た。
【0109】
合成例9
イオン交換水の量を230.0部に変え、イソプロピルアルコールを加えないこと以外は合成例6と同様にして重合物を得た。
【0110】
合成例10
イオン交換水の量を81.0部、イソプロピルアルコールの量を230.0部に変える以外は合成例6と同様にして重合物を得た。
【0111】
合成例11
イオン交換水の量を178.0部、イソプロピルアルコールの量を52.0部に変える以外は合成例6と同様にして重合物を得た。
【0112】
合成例12
イオン交換水の量を216.0部、イソプロピルアルコールの量を14.0部に変える以外は合成例6と同様にして重合物を得た。
【0113】
合成例1〜12で得た重合物、更に以下の実施例において水溶性ポリマーとして用いたマーコート550[ナルコ社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド(=1/1))]及びサルケアSC11[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド(=3/7))]、また、比較の水溶性ポリマーとして用いたポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)PAS−A−5[日東紡社製] 及びポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)PAS−A−120L[日東紡社製] について、下記方法で水溶性成分の割合を求め、水溶性成分について、下記方法で重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0114】
<水溶性成分の定量法>
0.05%濃度の重合物の水分散液を調整し、40℃で5〜6時間攪拌させて溶解・分散させる。この液をメンブランフィルター(セルロースアセテート製0.45μm)を用いて、濾過し、濾液のGPC測定を行い、得られたクロマトグラムの面積と、同様な方法で調整した未架橋体の面積から、水溶性成分の割合を求めた。
【0115】
<重量平均分子量の測定法>
ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の測定条件で測定した。
装置;東ソー(株)製HLC−8120
GPCカラム;東ソー(株)製 α−M(2本)
溶離液;0.1MNa2SO4/1%CH3COOH/水
流速;1mL/min
カラム温度;40℃
検出器;RI
試料濃度;2.5mg/mL(溶離液で希釈)
注入量;100μL
分子量換算用検量線;プルラン標準換算
【0116】
【表1】

【0117】
実施例1〜7、10、11、13〜16及び比較例1、5〜7
下記に示す各成分を用い、表2及び表3に示す組成の繊維製品処理剤組成物を各150g調製した。その際、混合容器としては、ポリプロピレン製のプラスチックカップ(容量200mL)を使用し、混合方法としてはマグネチックスターラーを用いた。先ず(A)〜(F)成分を混合後、約30分混合し、塩酸を用いて所定のpHに調整して、各組成物を得た。
得られた組成物を、下記方法で衣料に処理し、防シワ性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0118】
(A)成分
A−1:マーコート550[ナルコ社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド(=1/1))]
A−2:サルケアSC11[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド(=3/7))]
A−3:合成例1の重合物
A−4:合成例2の重合物中の水可溶分
A−5:合成例3の重合物中の水可溶分
A−6:合成例5の重合物中の水可溶分
A−7:合成例6の重合物
A−8:合成例7の重合物
A−9:合成例8の重合物
A−10:合成例9の重合物
(A’)成分((A)成分の比較品)
A’−1:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)PAS−A−5[日東紡社製]
A’−2:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)PAS−A−120L[日東紡社製]
A’−3:合成例10の重合物
A’−4:合成例11の重合物
A’−5:合成例12の重合物
(B)成分
B−1:合成例2の重合物中の水不溶分
B−2:合成例3の重合物中の水不溶分
B−3:合成例4の重合物
B−4:合成例5の重合物中の水不溶分
(C)成分
C−1:モノアミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KF864、アミノ当量3,800g/mol、動粘度1,700 mm2/s(25℃))
C−2:アミノポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製、SS−3588、アミノ当量1250g/mol、動粘度49,000mm2/s(25℃))
C−3:ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製、FZ2203、動粘度5,000mm2/s(25℃))
(D)成分
D−1:コータミンD24E(花王(株)製、カチオン性活性剤、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド)
(E)成分
E−1:エマルゲンKS108(花王(株)製、非イオン性活性剤、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(平均EO付加モル数8、平均PO付加モル数2、ランダム付加物))
E−2:ソフタノール33(日本触媒(株)製、非イオン性活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12−14の直鎖型第2級アルコールのEO付加物、平均EO付加モル数3))
E−3:エマルゲン140(花王(株)製、非イオン性活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均EO付加モル数40))
(F)成分
F−1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
<衣料の処理方法>
・洗濯乾燥機標準使用
評価衣料として、新品のポロシャツ((株)BIG JEMUSON製、綿100%、青)、新品のTシャツ((株)グンゼ、綿100%、黄)、及び肌着((株)グンゼ、綿100%、黄))を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で3回繰り返して洗濯した(洗剤濃度0.0667%、水道水(20℃)36L使用、洗濯10分−脱水3分−泡がなくなるまですすぐ(流水すすぎ、水量15L/min.))。
【0119】
これらの衣料各1枚を用意し、これに質量調整布として肌着(綿100%)とワイシャツ(白、綿/ポリエステル=60/40(wt/wt))を加え、合計3.5kgの衣料を洗濯乾燥機(東芝TW―80TB)を用いて、標準使用条件により、洗濯から乾燥迄を連続して行った。洗剤26.25g、表2及び表3記載の処理剤組成物50.0gは、それぞれ洗濯乾燥機の洗剤及び柔軟剤の自動投入口に入れて使用した。処理剤組成物は柔軟剤投入口に入れたので、洗浄後の濯ぎ工程において、繊維は処理され、乾燥工程にて加熱処理が行われる。乾燥終了の後に、評価用衣料であるポロシャツ、Tシャツ、肌着を取り出し、ハンガーに掛けて、防シワ性を評価した。
【0120】
・評価基準衣料の調整(吊り干し乾燥処理)
評価衣料として、新品のポロシャツ((株)BIG JEMUSON製、綿100%、青)、新品のTシャツ((株)グンゼ、綿100%、黄)、及び肌着((株)グンゼ、綿100%、黄))を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で3回繰り返して洗濯した(洗剤濃度0.0667%、水道水(20℃)36L使用、洗濯10分−脱水3分−泡がなくなるまですすぎ(流水すすぎ、水量15L/min.))、室温にて乾燥させた。
【0121】
これらの衣料各1枚を用意し、これに質量調整布として肌着(綿100%)とワイシャツ(白、綿/ポリエステル=60/40(wt/wt))を加え、合計3.5kgの衣料を洗濯乾燥機(東芝TW―TB)を用いて洗濯を行った。洗剤26.25g、表2及び表3記載の処理剤組成物50gは、それぞれ洗濯乾燥機の洗剤及び柔軟剤の自動投入口に入れて使用した。処理剤組成物は柔軟剤投入口に入れたので、洗浄後の濯ぎ工程において、繊維は処理される。脱水終了の後に、評価用衣料であるポロシャツ、Tシャツ、肌着を取り出し、それぞれをハンガーに掛けて、12時間 吊り干しを行い、乾燥衣料の防シワ性を評価した。この調整法により得られた衣料は、乾燥機使用時とは異なり、大きな深いシワは生じていない。
【0122】
<防シワ性評価法>
5人のパネラーが、上記方法で処理された乾燥衣料に対して、防シワ性の評価を行った。衣料のシワの程度を評価するに際しては、下記に示すシワレベル1、2、3、4をシワ等級の尺度として与え、5人のパネラーにより0.5ポイントきざみで採点をしてもらい、平均値をシワレベルとして取り扱った。
【0123】
なお、シワ等級3は、各種衣料を吊り干し乾燥した時の状態に相当し、シワ等級1は、洗濯乾燥機に3.5kg以上の衣料を投入し、洗濯から乾燥までの連続運転において、加熱乾燥を行った結果、大きな折れシワが発生した状態とした。洗濯乾燥機を使用した乾燥において、明らかにシワが少なく、見栄えが良くみえ、シワ低減効果が確認できたと判断できるレベルは2以上である。なお、本評価法においてシワレベルの数値の0.5ポイントは有意差である。
【0124】
・シワ等級
4:全くシワがない
3:シワがない
2:少しシワが残っている
1:シワが残っている
実施例8〜9、12及び比較例2〜4
表2及び表3に示す組成の繊維製品処理剤組成物を、表2及び表3に示す処理量になるように用いる以外は実施例1〜7と同様にして衣料に処理し、防シワ性を評価した。結果を表2及び表3に示す。なお、比較例2は処理剤による処理を行わなかった例である。
【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

【0127】
なお、実施例1〜16に記載した処理衣料は市販柔軟剤と同等の、柔軟性能を備えていた。
【0128】
実施例17〜19
表4に示す組成の繊維製品処理剤組成物を用い、以下に示す処理法によりスプレー処理を行った後、実施例1〜7と同様にして防シワ性を評価した。結果を表4に示す。
【0129】
<衣料の処理方法>
評価衣料として、新品のポロシャツ((株)BIG JEMUSON製、綿100%、青)、新品のTシャツ((株)グンゼ、綿100%、黄)、及び肌着((株)グンゼ、綿100%、黄))を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で3回繰り返して洗濯した(洗剤濃度0.0667%、水道水(20℃)36L使用、洗濯10分−脱水3分−泡がなくなるまで濯ぎ(流水すすぎ、水量15L/min.))、室温にて乾燥させた。これらの前処理された衣料を各1枚づつ用意し、トリガー((株)三谷製 M3トリガー)を用いて、繊維製品処理剤組成物の表4に示す量を衣料に対して、均一に噴霧した。これらのスプレー処理した衣料と質量調整布として肌着(綿100%)とワイシャツ(白、綿/ポリエステル=60/40(wt/wt))を加え、合計3.5kgの衣料を洗濯乾燥機(東芝TW―80TB)を用いて、標準使用条件により乾燥を行った。
【0130】
【表4】

【0131】
なお、実施例17〜19に記載した処理衣料は市販柔軟剤と同等の、柔軟性能を備えていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が50万〜1000万の水溶性カチオン性ポリマー(以下(A)成分という)を含有する乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【請求項2】
更に、水不溶性カチオン性ポリマー(以下(B)成分という)を含有する請求項1記載の乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
組成物中の(A)成分と(B)成分の合計質量に対する(A)成分の割合が、3〜100質量%である、請求項1又は2記載の乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
更に、(C)成分として、シリコーン化合物を含有する請求項1〜3いずれかに記載の乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計質量に対する、(A)成分と(B)成分の合計質量の割合が5〜85質量%である請求項4記載の乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
(A)成分が、一般式(I)又は(II)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種(以下(a1)成分という)と、一般式(III)又は(IV)で表される、水への溶解度(20℃)が1g/100g以上であるノニオン性基含有親水性ビニル単量体の少なくとも1種(以下(a2)成分という)とを、(a1)成分/(a2)成分=1/99〜80/20(モル比率)の割合で含む単量体成分の共重合体である請求項1〜5いずれかに記載の乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【化1】

[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは−O−、−NH−又は−O−CH2CH(OH)−基を示し、Zは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。]
【化2】

[式中、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R7及びR8は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは前記の意味を示す。]
【化3】

[式中、R1は前記の意味を示し、R9及びR10は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖の、ヒドロキシ基を有していてもよい、アルキル基又はアルケニル基を示す。]
【化4】

[式中、R1は前記の意味を示し、A1及びA2は同一又は異なって、式−(CH2)n−(nは2〜6の整数を示す)で表される基を示し、Bは−O−又は−CH2−基を示す。]
【請求項7】
(B)成分が、前記一般式(I)又は(II)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種(以下(b1)成分という)と、前記一般式(III)又は(IV)で表される、水への溶解度(20℃)が1g/100g以上であるノニオン性基含有親水性ビニル単量体の少なくとも1種(以下(b2)成分という)と、2個以上のビニル基を分子中に有する架橋性ビニル単量体の少なくとも1種(以下(b3)成分という)を必須構成単量体とし、これらの単量体の割合が、(b1)成分/(b2)成分=1/99〜80/20(モル比率)、(b3)成分が単量体全量に対して0.001〜5モル%である単量体成分をラジカル重合する事により得られる共重合体である、請求項2〜6いずれかに記載の乾燥機用繊維製品処理剤組成物。
【請求項8】
繊維製品の洗濯において、洗浄後の濯ぎ工程で添加し、乾燥工程で生じるシワを低減する為に使用する、請求項1〜7いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物で処理された繊維製品を、加熱式乾燥機により加熱処理する、繊維製品の処理方法。

【公開番号】特開2008−111219(P2008−111219A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137641(P2007−137641)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】