説明

繊維製品処理剤組成物

【課題】 液安定性に優れ、長期間保存後の使用において、香り立ちがよく、衣類に滑らかな風合いを付与し、且つ衣類にスポッティングしない繊維製品処理剤組成物の提供。
【解決手段】 下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物。
(a):アミノ変性シリコーン化合物
(b):炭素数7〜16のアルコール系香料成分、アルデヒド系香料成分及びケトン系香料成分から選ばれる1種以上
(c):油溶性の酸化防止剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟剤には衣料の風合いを改善させる目的からシリコーン化合物を配合することが行われている。特許文献1及び特許文献2には、ジメチルシリコーンを柔軟剤に応用する技術が開示されている。特許文献3にはアミノ変性シリコーンを応用する技術が開示されている。また、特許文献4及び特許文献5には、特定のポリオキシアルキレンで変性されたシリコーンを含む繊維製品用液体仕上げ剤組成物が開示されている。特許文献6には、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、アミド・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種以上の変性シリコーンを含む繊維製品用液体仕上げ剤組成物が開示されている。
【0003】
また、近年、衣料等繊維製品の手入れや洗濯処理において、強い香り立ちや処理後長期にわたる香りの維持が求められており、これを実現すべく、香料成分を柔軟剤等の繊維製品処理剤に添加することがなされている。特許文献7には、アルキル変性シリコーン及び残香性の高い香料成分を含有する繊維製品用液体仕上げ剤組成物が開示されている。特許文献8には、シリコーン高分子化合物及び低揮発性の香料成分を含有する液体柔軟剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−96172号公報
【特許文献2】特開平10−219567号公報
【特許文献3】特表平05−508889号公報
【特許文献4】特開2000−110075号公報
【特許文献5】特開2000−110076号公報
【特許文献6】特開2000−110077号公報
【特許文献7】特開2008−169534号公報
【特許文献8】特開2007−63741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アミノ変性シリコーンを含有する繊維製品処理剤では、賦香のため、疎水性の香料成分を用いるが、長期保存により香料のフレッシュ感が低下し、更に液安定性も低下するため、濁りや液分離が生じるという課題があった。一般的に、香料は複数の香料成分の混合物であり、一部の香料成分が長期保存中に熱や光、酸化などによって変化してしまうために、香りのバランスが崩れたり、香り自身が変化してしまうために、新鮮味やすがすがしさという、いわゆるフレッシュ感が低下してしまうものと考えられる。又、このような疎水性である香料の変化に伴いアミノ変性シリコーンの分散性をも低下させるものと考えられる。かかるフレッシュ感の低下及び液安定性の低下は、繊維製品処理剤の香り立ちや外観(審美的観点から透明又は半透明が望ましい)を悪化させるだけでなく、使用時には繊維製品へのスポッティング(しみ)などのトラブルを引き起こす。
【0006】
本発明の課題は、液安定性に優れ、長期間保存後の使用において、香り立ちがよく、衣類に滑らかな風合いを付与し、且つ衣類にスポッティングしない繊維製品処理剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物、当該繊維製品処理剤組成物の製造方法、並びに当該繊維製品処理剤組成物を用いた繊維製品の処理方法を提供する。
(a):アミノ変性シリコーン化合物
(b):炭素数7〜16のアルコール系香料成分、アルデヒド系香料成分及びケトン系香料成分から選ばれる1種以上
(c):油溶性の酸化防止剤
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液安定性に優れ、長期間保存後の使用において、香り立ちがよく、衣類に滑らかな風合いを付与し、且つ衣類にスポッティングしない繊維製品処理剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(a)成分>
(a)成分はアミノ変性シリコーン化合物であり、繊維製品に滑らかな風合いを付与するには、中でも25℃での動粘度が100〜20000mm2/s、アミノ当量400〜8000のアミノ変性シリコーン化合物が好ましい。25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、性能の点から100mm2/s以上が好ましく、性能及び安定性の点から20000mm2/s以下が好ましく、より好ましくは200〜10000mm2/s、特に好ましくは500〜5000mm2/sである。また、アミノ当量は、性能の点から好ましくは400〜8000、より好ましくは600〜5000、特に好ましくは800〜3000である。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
【0010】
(a)成分の具体例として、一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1aは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R1bは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R1cは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示す。c及びdはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R1b、R1cはそれぞ同一でも異なっていても良く、また複数個のR1bは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(1)の化合物において、cは10〜10,000の数が好ましく、20〜5,000の数がより好ましく、30〜3,000の数の数が更に好ましい。dは1〜1,000の数が好ましく、1〜500の数がより好ましく、1〜200の数が更に好ましい。一般式(1)の化合物の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜100,000、特に好ましくは8,000〜50,000である。
【0013】
一般式(1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
−C36−NH2
−C36−NH−C24−NH2
−C36−NH−[C24−NH]e−C24−NH2
−C36−NH(CH3
−C36−NH−C24−NH(CH3
−C36−NH−[C24−NH]f−C24−NH(CH3
−C36−N(CH32
−C36−N(CH3)−C24−N(CH32
−C36−N(CH3)−[C24−N(CH3)]g−C24−N(CH32
−C36−NH−cyclo-C511
ここで、e、f、gは、それぞれ1〜30の数である。
【0014】
本発明で用いる(a)成分は、例えば、一般式(2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80〜110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53−98499号参照)。
【0015】
2N(CH22NH(CH23Si(CH3)(OCH32 (2)
本発明の(a)成分としては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(粘度1000mm2/s(25℃)、アミノ当量1600)、TSF4708(粘度1000mm2/s(25℃)、アミノ当量2800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSS−3551(粘度1000mm2/s(25℃)、アミノ当量1600)、SF8457C(粘度1200mm2/s(25℃)、アミノ当量1800)、SF8417(粘度1200mm2/s(25℃)、アミノ当量1800)、BY16−892(粘度1500mm2/s(25℃)、アミノ当量2000)、BY16−898(粘度2000mm2/s(25℃)、アミノ当量2900)、信越化学工業(株)製のKF8002(粘度1100mm2/s(25℃)、アミノ当量1700)、KF867(粘度1300mm2/s(25℃)、アミノ当量1700)、KF−864(粘度1700mm2/s(25℃)、アミノ当量3800)が好ましい。
【0016】
また、(a)成分としては、着色及び風合いの観点から、アミノ基を有する側鎖Bが−C36−NH2で表される化合物〔以下、(a1)成分という〕が好適である。(a1)成分としては、信越化学工業(株)製のKF−864(粘度1700mm2/s(25℃)、アミノ当量3800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のBY16−898(粘度2000mm2/s(25℃)、アミノ当量2900)がより好ましい。
【0017】
本発明の(a)成分は、オイル状のものをそのまま配合しても差し支えないが、(a)成分の粒子が水中に分散した水性エマルジョンの形態で配合することが、本発明の組成物を容易に製造できる点から好ましい。(a)成分の水性エマルジョンには、乳化剤として界面活性剤を用いることが好ましく、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン性界面活性剤、アミンオキサイド、スルホベタイン、カルボベタイン等の両性界面活性剤、トリ長鎖アルキル4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤を用いることができる。
【0018】
(a)成分の水性エマルジョンにおける乳化粒子の平均粒径は、風合いを得る観点から、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜5μm、特に好ましくは0.01〜1μmである。
【0019】
また本発明で用いることができる(a)成分の水性エマルジョンとしては、上記のオイル状のものを界面活性剤等の乳化剤を用いて、各種の乳化機(ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル等)により水中に分散させたものを用いても良いが、オルガノアルコキシシランとジメチルシクロポリシロキサン等を用い、水中で重合反応を行うことにより、所望のアミノ変性シリコーンを含むエマルジョンを調製し、これを(a)成分の水性エマルジョンとしてそのまま用いても良い。
【0020】
<(b)成分>
(b)成分は、炭素数7〜16のアルコール系香料成分、アルデヒド系香料成分及びケトン系香料成分から選ばれる1種以上である。(b)成分の炭素数は、7〜16であり、好ましくは8〜16、より好ましくは9〜16、更に好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜15である。
アルコール系香料成分としては、香り立ちの点から、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するアルコール系香料成分が好ましく、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基に隣接した炭素原子に水酸基を有するアルコール系香料成分がより好ましく、不飽和炭化水素基に隣接した炭素原子に水酸基を有するアルコール系香料成分が更に好ましい。
【0021】
アルコール系香料成分としては、3−オクタノール、リナロール、ゲラニオール、β−フェニルエチルアルコール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、l−メントール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、p−t−ブチルシクロヘキサノール、o−t−ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、オイゲノール、ポリサントール、フェニルヘキサノール、ジヒドロミルセノール等が挙げられる。
【0022】
アルデヒド系香料成分としては、香り立ちの点から、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するアルデヒド系香料成分が好ましく、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基に隣接したアルデヒド基を有するアルデヒド系香料成分がより好ましく、不飽和炭化水素基に隣接したアルデヒド基を有するアルデヒド系香料成分が更に好ましい。
【0023】
アルデヒド系香料成分としては、ノニルアルデヒド、アルデヒド C−10(デシルアルデヒド)、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、2,6−ノナジエノール、シス−4−デセナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、センテナール、ボロナール、セトナール、サリチルアルデヒド、マイラックアルデヒド、リラール、リリアール、トリプラール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p−エチル−2,2−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド等が挙げられる。
【0024】
ケトン系香料成分としては、香り立ちの点から、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するケトン系香料成分が好ましく、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基に隣接したケトン基を有するケトン系香料成分がより好ましく、不飽和炭化水素基に隣接したケトン基を有するケトン系香料成分が更に好ましい。
【0025】
ケトン系香料成分としては、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、α−イオノン、β−イオノン、メチルイオノン、イロン、ダマスコン、ダイナスコン、ジヒドロジャスモン、シス−ジャスモン、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、カローン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
これらのアルコール系香料成分、アルデヒド系香料成分及びケトン系香料成分の中では、香り立ちの点から、アルデヒド系香料成分が好ましい。
【0026】
<(c)成分>
(c)成分の油溶性酸化防止剤は、種々の自動酸化性物質に対し、光や熱などの条件下における酸素の作用を防止又は抑制する性質を有し、水に対する溶解度が20℃において0.1%以下である油溶性の有機化合物のことを示す。
【0027】
(c)成分としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチック酸、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等を挙げることができる。
性能の観点から、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールが好ましく、ジブチルヒドロキシトルエンがより好ましい。
【0028】
<(d)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、残香性の観点から、(b)成分以外の、logPが4〜10の香料化合物を含む香料〔以下、(d)成分という〕を含有することが好ましい。(d)成分は、保存安定性の観点から、logPが4〜8のものがより好ましく、4〜6のものが更に好ましい。
【0029】
ここで、logPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。
【0030】
多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP”で計算すると最も便利である。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。
【0031】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値は現在最も汎用的で信頼できる推定値であるので、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。
【0032】
logP(ClogP)が4〜10の香料化合物として、例えばi)α−ピネン(4.18)、β−ピネン(4.18)、カンフェン(4.18)、リモネン(4.35)、テルピノーレン(4.35)、ミルセン(4.33)、p−サイメン(4.07)、β−カリオフィレン(6.45)から選ばれる炭化水素系香料化合物、ii)イソノニルアセテート(4.02)、シトロネリルアセテート(4.20)、デセニルアセテート(4.46)、o−アミルシクロヘキシルアセテート(4.59)、テトラヒドロゲラニルアセテート(4.68)、ベチベリルアセテート(5.09)、フェニルエチルベンゾエート(4.06)、cis−3−ヘキシルベンゾエート(4.27)、ヘキシルベンゾエート(4.76)、ベンジルサリシレート(4.20)、フェニルエチルサリシレート(4.39)、イソアミルサリシレート(4.43)、シクロヘキシルサリシレート(4.48)、cis−3−ヘキシルサリシレート(4.61)ヘキシルサリシレート(5.09)から選ばれるエステル系香料化合物、iii)ジフェニルオキサイド(4.24)、セドロキサイド(4.58)、シトロネリルエチルエーテル(4.36)、デシルメチルエーテル(4.57)、セドリルメチルエーテル(5.11)アンブロキサン(5.27)から選ばれるエーテル系香料化合物、iv)γ−ドデカラクトン(4.36)、δ−ドデカラクトン(4.39)、シベトン(6.53)、ムスクC−14(4.06)、エチレンブラシレート(4.62)、ムスクR−1(4.53)、パールライド(6.06)、ペンタライド(6.29)等を挙げることができる。なお、( )内はlogP値又はClogP値である。
【0033】
<(e)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、吸水性の観点から、(e)成分として、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、ポリオキシアルキレン単位とを含む共重合体であって、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位とを基本単位として、ランダム又はブロックで重合した高分子化合物を含有することが好ましい。なお、水への溶解分散性を向上させるために、一部スルホ基を導入した高分子化合物を用いることもできる。
【0034】
アルキレンテレフタレート単位としては、エチレンテレフタレート単位、プロピレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位等から選ばれる1又は2以上が挙げられ、これらの中でもエチレンテレフタレート単位が好ましい。
【0035】
アルキレンイソフタレート単位としては、エチレンイソフタレート単位、プロピレンイソフタレート単位、ブチレンイソフタレート単位等から選ばれる1又は2以上が挙げられ、これらの中でもエチレンイソフタレート単位が好ましい。
【0036】
ポリオキシアルキレン単位としては、ポリオキシエチレン単位、ポリオキシプロピレン単位、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位等から選ばれる1又は2以上が挙げられる。
【0037】
アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位のモル比は、90:10〜40:60が好ましく、80:20〜45:55がより好ましく、70:30〜50:50が更に好ましい。また、(e)成分の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは6000〜85000である。ここで(e)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、アセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準物質として測定することができる。
【0038】
また、(e)成分中における、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位の占める割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。
【0039】
本発明では、特に、下記一般式(3−1)のモノマー単位と下記一般式(3−2)のモノマー単位とを(3−1):(3−2)=10:90〜90:10のモル比で含む、重量平均分子量が1,000〜100,000の高分子化合物が好適である。モノマー単位(3−1)とモノマー単位(3−2)の配列はランダム、ブロックの何れでも良い。
【0040】
【化2】

【0041】
〔式中、R2、R3は炭素数2又は3のアルキレン基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。nは数平均で1〜150、好ましくは10〜100の数である。〕
本発明で用いることができる(e)成分の製造方法については、特に限定はしないが、例えば、不活性ガス雰囲気中、触媒存在下、ジカルボン酸成分とグリコール成分を160〜270℃に加熱して、エステル化反応あるいはエステル交換反応によりグリコールエステルを調製し、その後、適宜、ポリアルキレングリコールを添加混合して常圧あるいは減圧下にて重合させることができる。触媒としては、酸化バリウムあるいは酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、コハク酸亜鉛、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等の金属酸化物、有機金属化合物を用いることができる。
【0042】
[繊維製品処理剤組成物]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、前述の(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する。組成物中における(a)成分の含有量は、良好な風合いを得る観点から、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。組成物中の(b)成分の含有量は、良好な香り立ちを実現する観点から、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%である。組成物中の(c)成分の含有量は、良好な液安定性(保存安定性)を得る観点から、好ましくは0.0001〜0.5質量%、より好ましくは0.0005〜0.2質量%、更に好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0043】
また、(a)成分/(b)成分の質量比は、好ましくは1/1〜1000/1、より好ましくは1/1〜500/1、更に好ましくは1/1〜300/1であり、(a)成分/(c)成分の質量比は、好ましくは5000/1〜1/1、より好ましくは4000/1〜10/1、更に好ましくは3000/1〜50/1であり、(b)成分/(c)成分の質量比は、好ましくは1000/1〜1/1、より好ましくは500/1〜1/1、更に好ましくは200/1〜1/1である。
【0044】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、更に前述の(d)成分、(e)成分を含有することが好ましい。(d)成分を含有する場合、残香性の観点から、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%にて含有し、(b)成分/(d)成分の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5である。(e)成分を含有する場合、吸水性の観点から、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%にて含有する。
【0045】
本発明では更に性能を向上させる目的から、(f)成分として、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤〔以下、(f1)成分という〕、陽イオン性界面活性剤〔以下、(f2)成分という〕を用いるのが好適である。
【0046】
(f1)成分としては、オキシアルキレン基の数平均付加モル数が3〜50でアルキル基の炭素数が8〜14のポリオキシエチレン(及び/又はポリオキシプロピレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルキル基の炭素数が8〜16で平均縮合度が1〜5のアルキルポリグルコシド、脂肪酸の炭素数10〜16の脂肪酸ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0047】
組成物中における(f1)成分の含有量は、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。(a)成分/(f1)成分の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5である。
【0048】
(f2)成分としては、一般式(4)で表される3級アミン、その酸塩もしくはその4級化物が挙げられる。
【0049】
【化3】

【0050】
〔式中、R4aはエステル基、又はアミド基を含んでもよい炭素数10〜20の炭化水素基、R4bはエステル基、又はアミド基を含んでもよい炭素数10〜20の炭化水素基又は炭素数1〜3のヒドロキシ基で置換されていても良い炭化水素基、R4cは炭素数1〜3のヒドロキシ基で置換されていても良い炭化水素基を示す。〕
一般式(4)において、R4aとしては炭素数10〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基、特に炭素数12〜18のアルキル基が好ましく、R4bとしては炭素数10〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基、特に炭素数12〜18のアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が好ましい。R4cとしては炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が好ましい。上記3級アミンの酸塩としては、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸等の無機酸、あるいは酢酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸等の有機酸の塩が挙げられる。また、上記3級アミンの4級化物としては、メチルクロライド等の炭素数が1〜4のアルキルハライド又は炭素数が2〜6のジアルキルサルフェートを用いて4級化したものが挙げられる。
【0051】
組成物中における(f2)成分の含有量は、(a)成分の繊維製品への吸着を促進し、滑らかな肌触り感を得る観点から、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。(a)成分/(f2)成分の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは5/1〜1/5、更に好ましくは3/1〜1/3とすることで、保存による安定性と滑らかな風合いを付与することが可能である。
【0052】
本発明では好ましい外観を得る目的、及び貯蔵安定性を改善する目的から、(g)成分として、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。(g)成分は本発明の組成物の効果に特に影響がないため任意に含有することが可能であるが、引火点や臭いの問題があるため、含有量は、好ましくは0.5〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは2〜20質量%である。(g)成分は、水酸基及び/又はエーテル基を有する水溶性有機溶剤が好ましい。(g)成分として以下のようなものが挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることが好ましい。
【0053】
(i)エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルカノール類、(ii)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、(iii)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、平均分子量約1000のポリプロピレングリコール等のポリグリコール類、(iv)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリルエーテル、2−メチルグリセリルエーテル、1,3−ジメチルグリセリルエーテル、1−エチルグリセリルエーテル、1,3−ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル類、(v)ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類、(vi)2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ,ジ,トリの混合物)等のアルカノールアミン類。
【0054】
(g)成分は、上記の(i)アルカノール類、(ii)多価アルコール類、(iv)アルキルエーテル類、(v)芳香族エーテル類、(vi)アルカノールアミン類から選ばれる2種以上を併用することが好ましく、より好ましくは(i)、(ii)、(iv)、(v)から選ばれる2種以上、特に好ましくは(i)、(ii)、(iv)から選ばれる2種以上を併用することで効果的に組成物の外観、及び貯蔵安定性を改善することができる。
【0055】
(g)成分としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテルが好適であり、特にエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
【0056】
本発明の繊維製品処理剤組成物は一般の液体組成物に添加する成分を含有することができ、例えば防腐剤、顔料、キレート剤、ハイドロトロープ剤、増粘剤、ゲル化防止剤等を含有することができる。
【0057】
本発明の繊維製品処理剤組成物は上記成分を水に溶解させた水溶液の形態であり、水の含有量は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%、特に好ましくは40〜80質量%である。溶解又は分散安定性の点から、溶液のpHは、好ましくは2〜8、更に好ましくは3〜7であり、このようなpHに調整するには、通常の硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸等の酸と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤を用いることができる。
【0058】
本発明の繊維製品処理剤組成物の製造方法に関しては、(b)成分と(c)成分をプレミックスした後、これを(a)成分をはじめとする他の成分と混合して製造することが、保存安定性の高い組成物を得る観点から好ましい。
【0059】
本発明の繊維製品処理剤組成物の用途としては、柔軟剤、賦香剤、着香剤、シワ取り剤、風合い向上剤、繊維改質剤、コンディショニング剤、リンス剤などに用いられる。
【0060】
[繊維製品の処理方法]
本発明の繊維製品処理剤組成物を用いた繊維製品の処理は、本発明の繊維製品処理剤組成物を対象繊維製品に接触させることにより行う。本発明の組成物を対象繊維製品に接触させる方法として、本発明の組成物を水に希釈した希釈液に対象繊維製品を浸漬させる方法を挙げることができる。ここで、浸漬とは、本発明の組成物を希釈した水溶液に対象繊維が完全に浸される状態をいう。
【0061】
浸漬処理により繊維製品を処理する場合、洗濯工程のすすぎの段階で本発明の組成物をすすぎ水に添加する方法が好適であり、本発明の組成物の添加量は、衣料1kg当り1〜40mL、更に2〜30mL、特に5〜20mLが本発明の効果を発揮する上で好ましい。すすぎ水の温度は、好ましくは5〜40℃、更に好ましくは10〜30℃であり、処理時間は、好ましくは1〜30分、より好ましくは3〜20分、特に好ましくは5〜15分である。浸漬後は脱水し、自然乾燥あるいは回転式加熱乾燥機により乾燥させる。乾燥後の繊維製品は、アイロンをかける必要がない程度にしわの形成が少ないが、より仕上がりを重視する場合にはアイロンをかけても差し支えない。
【実施例】
【0062】
実施例に用いた配合成分を以下にまとめて示す。
<(a)成分>
a−1:KF−864(信越化学工業(株)製アミノ変性シリコーン、粘度1700mm2/s(25℃)、アミノ当量3800)
<(b)成分>
b−1: ゲラニオール(炭素数10、アルコール系香料)
b−2: テトラヒドロゲラニオール(炭素数10、アルコール系香料)
b−3: シトロネラール(炭素数10、アルデヒド系香料)
b−4: ヘキシルシンナミックアルデヒド(炭素数15、アルデヒド系香料)
b−5: リリアール(炭素数13、アルデヒド系香料)
b−6: β−ダマスコン(炭素数13、ケトン系香料)
b−7: β−イオノン(炭素数13、ケトン系香料)
b−8: ベンジルアルコール(炭素数7、アルコール系香料)
b−9: テトラヒドロリナロール(炭素数10、アルコール系香料)
<(b’)成分((b)成分の比較品)>
b’−1:酢酸ゲラニル(炭素数12、エステル系香料)
b’−2:酢酸ベンジル(炭素数9、エステル系香料)
b’−3:ヘキサノール(炭素数6、アルコール系香料)
<(c)成分>
c−1:ジブチルヒドロキシトルエン
c−2:ブチルヒドロキシアニソール
<(c’)成分((c)成分の比較品)>
c’−1:イソアスコルビン酸
<(d)成分>
d−1:リモネン(logP=4.35)
d−2:シトロネリルアセテート(logP=4.20)
d−3:ムスクC−14(logP=4.06)
d−4:パールライド(logP=6.06)
<(e)成分>
e−1:SOREZ 100(ISP社:重量平均分子量7100、平均EO付加モル数88.9)
e−2:Texcare SRN−170(Clariant社:重量平均分子量2700、平均EO付加モル数33.7)
<(f)成分>
・(f1)成分
f1−1:炭素数12〜14の直鎖第1級アルコールにEO平均5モル/PO平均2モル/EO平均3モルの順に付加させた非イオン界面活性剤
f1−2:炭素数12〜14の第2級アルコールにEOを平均3モル付加させた非イオン界面活性剤
f1−3:炭素数12〜14の直鎖第1級アルコールにEO平均40モル付加させた非イオン界面活性剤
・(f2)成分
f2−1:炭素数12〜14のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド
<(g)成分>
g−1:トリエチレングリコールモノフェニルエーテル
g−2:グリセリン
<その他成分>
キレート剤:エチレンジアミン4酢酸
実施例1〜9、比較例1〜5
表1に示す各成分を用いて、表1に示す組成の繊維製品処理剤組成物を各150g調製した。その際、混合容器としてポリプロピレン製のプラスチックカップ(容量200mL)、混合手段としてはマグネチックスターラーを用いた。先ず(f1)成分、(g)成分、及び組成物全体の10質量%に相当する水を容器に秤量し混合した後、(f2)成分を加え更に混合した。次に、配合水の残部を加え混合し、抗菌剤、キレート剤を加え混合した。あらかじめ混合(プレミックス)しておいた(b)成分(あるいは(b’)成分)と(c)成分(あるいは(c’)成分)を加え混合した。ここに(a)成分を約2g/分の速度で混合しながら所定量投入し、投入終了後約30分混合した。混合を続けながら、塩酸で所定のpHに調整し、(e)成分を加え、各組成物を得た。得られた組成物の保存安定性を、下記方法で評価した。また、各組成物を用いて処理した繊維製品のしみ(スポッティング)及び風合いを、下記方法で評価した。これらの結果を表1に示す。
【0063】
<保存安定性の評価法>
各処理剤組成物15gを容量30mLのガラス製スクリュー管(No.6、30mm×65mm)に入れ、大気圧下で密閉した(各2本)。また、各処理剤組成物において(c)成分を添加しない参照用組成物を調製し、同様に密閉した。これらを20℃と60℃の恒温槽にそれぞれ栓口を上方にして立てて20日間保存した。保存期間中、毎日、60℃保存品と20℃保存品の外観状態を比較し、20℃保存品と60℃保存品との外観に差が生じるまでに経過した日数を測定した。保存安定性は下記基準により評価した。なお、外観変化が20日以上生じない場合は、下記日数は20日として計算した。又、実施例、比較例とも20℃20日の保存品は、製造直後品と比べて外観の変化はなかった。保存安定性は、1.0を超える数値が好ましい範囲である。
【0064】
保存安定性=〔Dsample〕/〔Dref.〕
Dsample:処理剤組成物において、60℃保存品と20℃保存品との外観に差が生じるまでに経過した日数
Dref.:(c)成分未配合の参照用組成物において、60℃保存品と20℃保存品との外観に差が生じるまでに経過した日数
<しみの評価法>
・評価用繊維製品の前処理
ワイシャツ(山喜(株)、ポリエステル50%/綿50%、水色)、Tシャツ(川島商事(株)、granlobo、綿100%、緑色)を各1枚用意し、これに重量調整布として肌着(綿100%)0.8kg、ワイシャツ(綿60/ポリエステル40)0.5kgを加え、合計1.8kgの衣料を市販洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で5回繰り返し洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)36L使用、浴比1/20、洗濯10分−脱水3分−すすぎ(流水すすぎ、水量15L/分)8分−脱水3分)。ワイシャツ及びTシャツを取り出し、25℃、65%RHの恒温恒湿室にて自然乾燥した。
【0065】
・繊維製品処理剤組成物による繊維製品の処理
次に、自然乾燥したワイシャツ及びTシャツに、60℃20日間保存した各処理剤組成物を約10cm2あたり0.5ml塗布し、これに重量調整布として肌着、ワイシャツを加え、合計2.0kgの衣料を市販洗剤(花王(株)アタック)を用いて全自動洗濯機(HITACHI NW−7FY)で標準コースにて洗濯した(洗剤濃度0.0667%、水道水(5℃)40L使用、浴比1/20、洗濯5分−ためすすぎ2回−脱水4分)。ワイシャツ及びTシャツを取り出し、12時間吊り干し乾燥した。
【0066】
・しみの評価
吊り干し乾燥後、衣類に残ったしみ(オイルスポット)を繊維製品処理剤開発に5年以上従事し熟練した5人のパネラーにより下記基準で得点をつけ、平均点を求めた。
【0067】
評価基準:
1点:しみがない
2点:ほとんどしみがない
3点:ややしみがある
4点:しみが目立つ
<風合いの評価法>
市販の肌着(綿100%)を3枚用意し、これに質量調整布として木綿タオル(白色、綿100%)0.8kg、ワイシャツ(白、綿/ポリエステル=60/40%)0.4kgを加え、市販の衣料用洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で10回繰り返し洗濯した〔洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)30L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ3分(流水すすぎ、水量15L/分)〕。最後の処理回(10回目)のすすぎが始まってから5分経過した時点で流水を止め、排水した後3分間脱水した。次に、水道水(20℃)を30L注水し、表1の各処理剤組成物を15mL投入して3分間撹拌処理した。撹拌を止めた後、3分間脱水し、評価用繊維製品として肌着を取り出し、室温で12時間吊るし干し乾燥させた。
【0068】
吊り干し乾燥後、25℃−65RHの恒温恒湿室で24時間静置して調湿処理した繊維製品について、前処理後、処理剤を用いずに水道水だけで処理し同様に25℃−65RHの恒温恒湿室で調湿処理した繊維製品を対照品として、風合い(滑らかさ)について評価を行った。それぞれ繊維製品処理剤開発に5年以上従事し熟練した5人のパネラーにより下記の基準で得点をつけ、平均点を求めた。平均点が0.5以上1.0以下を○、0以上0.5未満を△、−1.0以上0未満を×として判定した。
【0069】
評価基準:
対照品より滑らか:+1点
対照品と同等:0点
対照品のほうが滑らか:−1点
【0070】
【表1】

【0071】
実施例10〜12、比較例6〜7
表2及び表3に示す各成分を用いて、表2に示す組成の繊維製品処理剤組成物を各150g調製した。その際、混合容器としてポリプロピレン製のプラスチックカップ(容量200mL)、混合手段としてはマグネチックスターラーを用いた。先ず(f1)成分、(g)成分、及び組成物全体の10質量%に相当する水を容器に秤量し混合した後、(f2)成分を加え更に混合した。次に、配合水の残部を加え混合し、抗菌剤、キレート剤を加え混合した。あらかじめ表3に示す香料成分を調製し、更に(c)成分(あるいは(c’)成分)を混合(プレミックス)しておいたものを加え、混合した。ここに(a)成分を約2g/分の速度で混合しながら所定量投入し、投入終了後約30分混合した。混合を続けながら、塩酸で所定のpHに調整し、(e)成分を加え、各組成物を得た。得られた組成物の保存安定性を下記方法で評価した。また、実施例1〜9の方法に準じて、処理済み繊維製品のしみ(スポッティング)及び風合いを評価した。結果を表2に示す。
【0072】
<保存安定性の評価法>
各処理剤組成物50gを容量110mLのガラス製規格ビン(No.11)に入れ、大気圧下で密閉した(各1本)。これらを60℃の恒温槽に栓口を上方にして立てて20日間保存した。保存期間終了後、60℃保存品の外観を下記の基準により評価した。結果を表2に示す。
【0073】
評価基準:
○:白濁や分離がなく、透明
△:白濁
×:分離
【0074】
【表2】

【0075】
比較例6〜7の60℃保存品は、香調が変化し、フレッシュ感がなくなったが、実施例10〜12の60℃保存品は、いずれも香調の変化がなく、フレッシュ感が保たれていた。
【0076】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物。
(a):アミノ変性シリコーン化合物
(b):炭素数7〜16のアルコール系香料成分、アルデヒド系香料成分及びケトン系香料成分から選ばれる1種以上
(c):油溶性の酸化防止剤
【請求項2】
(a)成分/(b)成分の質量比が1/1〜1000/1である、請求項1記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
(d)成分として、(b)成分以外のClogPが4〜10である香料成分を含有する、請求項1又は2記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(a)成分が、 25℃での動粘度が100〜20000mm2/s、アミノ当量400〜8000のアミノ変性シリコーン化合物である、請求項1〜3いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(b)成分が、不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有する、請求項1〜4いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
(c)成分が、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種以上である、請求項1〜5いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
(e)成分として、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、ポリオキシアルキレン単位とを含む重量平均分子量1,000〜100,000の高分子化合物を含有する、請求項1〜6いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項8】
(b)成分と(c)成分をプレミックスした後、(a)成分と混合する、請求項1〜7いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に接触させる繊維製品の処理方法。

【公開番号】特開2010−261126(P2010−261126A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113495(P2009−113495)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】