説明

繊維製品処理剤組成物

【課題】 保存・貯蔵時の安定性に優れ、保存・貯蔵後の使用場面において優れた香り立ちと持続性のある香りを繊維製品に付与できる繊維製品処理剤組成物の提供。
【解決手段】 下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を配合し、(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogPと(b)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogPの差が1以上である繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)a-maxが1≦(logP)a-max<15の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(b)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)b-maxが15≦(logP)b-max≦50の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(c)成分:総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケイ酸エステル化合物を配合する繊維製品処理剤組成物、ケイ酸エステル化合物の加水分解が抑制された繊維製品処理剤組成物の製造方法、または繊維製品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、においに対する意識の高まりから、衣類によい香りを長く残すことが求められてきており、衣料用洗浄剤や仕上げ剤などの繊維製品処理剤に残香性を付与する技術が開発されている。その中の一つの技術として、特許文献1〜4にはケイ酸エステルを含有する繊維製品処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−59498号公報
【特許文献2】特開昭54−93006号公報
【特許文献3】特開昭55−127314号公報
【特許文献4】特表2003−526644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テルペン系アルコールなどの香料とケイ酸とのエステル化合物は、香りの持続性に優れることが特許文献1〜3に記載されており、特許文献1では該ケイ酸エステル化合物を繊維製品処理剤組成物に応用している。これらケイ酸エステル化合物は、繊維製品への処理時に繊維製品に吸着し、処理終了/乾燥後、繊維製品に残存し徐々に加水分解されることで継続的にテルペン系アルコールなどの香料成分を発生する技術であり、繊維製品に持続性の香りを賦与できる優れた技術である。しかしながら、水溶液中では、とりわけ親水性の高いアルコール性香料を原料とした、親水性の高いケイ酸エステル化合物は加水分解が起こりやすく、液体柔軟剤組成物等の水性の繊維製品処理剤に応用した場合、該処理剤の保存・貯蔵時にケイ酸エステル化合物の加水分解が進行してしまい、保存・貯蔵後の実際の使用場面では期待される効果が得られないという課題がある。
【0005】
一方、特許文献4には特許文献1〜3記載のケイ酸エステル化合物の加水分解耐性を向上させるために、オリゴケイ酸と香料アルコールとのエステル化合物が開示されている。しかしながら、耐加水分解性の低いケイ酸エステル化合物の保存安定性を向上させる技術は未だ見出されていない。
【0006】
従って、本発明の課題は、保存・貯蔵時のケイ酸エステル化合物の加水分解を抑制することができ、保存・貯蔵後の実際の使用場面において優れた香り立ちと持続性のある香りを繊維製品に付与できる繊維製品処理剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を配合し、(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogP[以下、(logP)a-maxという]と(b)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogP[以下、(logP)b-maxという]の差が、(logP)b-max−(logP)a-max≧1である繊維製品処理剤組成物を提供する。とりわけ該組成物の保存・貯蔵時における(a)成分の加水分解が抑制された繊維製品処理剤組成物を提供する。
(a)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)a-maxが1≦(logP)a-max<15の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(b)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)b-maxが15≦(logP)b-max≦50の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(c)成分:総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基)、−OR2(R2は香料アルコール、好ましくは炭素数6〜22の香料アルコールから水酸基を一つ除いた残基)、又は−OR3(R3は炭素数1〜7の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYは同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
また、上記(a)成分、(c)成分及び水を配合することで得られる繊維製品処理剤組成物の製造時に、(b)成分を配合することで組成物の保存・貯蔵時における、(a)成分の加水分解が抑制された繊維製品処理剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維製品処理剤組成物によると、保存・貯蔵時のケイ酸エステル化合物の加水分解を抑制することができ、保存・貯蔵後の実際の使用場面において優れた香り立ちと持続性のある香りを繊維製品に付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、上記一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルの(logP)a-max値が1≦(logP)a-max<15の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステルである。該(a)成分は持続性のある香りを繊維製品に付与できる点で優れるが、水を含有する繊維製品処理剤組成物中では、保存・貯蔵時に加水分解を受けやすい性質を有している。
【0012】
一般式(1)において、Xは−OH、−R1、−OR2又は−OR3、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数であり、複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。
【0013】
1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基を示すが、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜12の炭化水素基が好ましい。置換基として用いるアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基がより好ましく、エトキシ基が更に好ましい。中でも、R1としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0014】
2は香料アルコール、好ましくは炭素数6〜22の香料アルコールから水酸基を一つ除いた残基を示す。香料アルコールは、「香料と調香の基礎知識、中島基貴編著、産業図書株式会社発行、2005年第4刷」に記載されるように、脂肪族アルコール、テルペン/セスキテルペン系アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、及び合成サンダルに分類される。本発明においては、香料アルコールは、芳香族アルコール、合成サンダル、及びテルペン/セスキテルペン系アルコールから選ばれる1種以上が好ましい。
【0015】
芳香族アルコールとしては、特に制限されるものではないが、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエチルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、シンナミックアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、4−フェニル−2−メチル−2−ブタノール、1−フェニル−3−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、チモール、カルバクロール、オイゲノール、イソオイゲノール等の炭素数7〜12の芳香族アルコールが挙げられ、中でも、炭素数8〜10の芳香族アルコールが好ましい。
【0016】
合成サンダルとしては、特に制限されるものではないが、サンダルマイソールコア、サンタロール、バクダノール、エバノール等が挙げられる。
【0017】
テルペン/セスキテルペン系アルコールとしては、特に制限されるものではないが、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ヒドロキシシトロネロール、ジヒドロミルセノール、アオロシメノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、ターピネン−4−オール、l−メントール、イソプレゴール、ファルネソール、ネロリドール等が挙げられ、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、α−ターピネオール、ターピネン−4−オール、イソプレゴールが好ましく、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、α−ターピネオール、ターピネン−4−オールがより好ましい。
【0018】
3は炭素数1〜7の炭化水素基を示すが、メチル基、エチル基、フェニル基、又はベンジル基が好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0019】
一般式(1)において、全てのX及びYのうち少なくとも1つ以上が−OR2であれば本発明の効果を享受することが可能である。香り立ち/香りの持続性の観点からは、全てのX及びYの数に対して、1/10以上、好ましくは1/8以上の数が−OR2であり、残りが−R1であるケイ酸エステルが好適であり、X及びYのうち一つが−R1であり、残りが−OR2であるケイ酸エステル、又は全てのX及びYが−OR2であるケイ酸エステルが特に好ましい。
【0020】
nは平均値を示す0〜15の数であり、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜1の数である。最も好ましくは0である。
【0021】
n=0の場合、好ましいケイ酸エステルとしては、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
(R2−O)x−Si−(O−R34-x (1−1)
(R2−O)y−Si(R1)−(O−R33-y (1−2)
[式中、R1、R2及びR3は前記と同じ意味を示す。xは1〜4の数、yは1〜3の数を示す。]
中でも、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が好適である。
【0023】
【化2】

【0024】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合、好ましいケイ酸エステルとしては、下記式(1−5)又は(1−6)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数を示し、好ましくはmは1である。Tは、−OR2、−OR3又は−R1を示す。ここで、R3は前記と同じ意味を示す。〕
本発明の(a)成分の(logP)a-max値は、1≦(logP)a-max<15の範囲であり、香りの嗜好性並びに香り立ちの観点から、1.5≦(logP)a-max≦14が好ましく、7≦(logP)a-max≦13がより好ましく、8.5≦(logP)a-max≦12が更に好ましい。
【0027】
ここで、logPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対する1−オクタノール/水分配係数Pの対数logPの形で示される。多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP”で計算すると最も便利である。
【0028】
このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(CLOGP Reference Manual Daylight Software 4.34,Albert Leo,David Weininger,Version 1,March 1994logP値)。このClogP値は現在最も汎用的で信頼できる推定値であるので、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、プログラムCLOGP v4.34により計算したClogP値を用いた。
【0029】
例えば、(a)成分として上記式(1−3)で表されるケイ酸エステルを用いる場合には、分子内の全てのR2に対応するアルコール(R2−OH)のモル平均ClogPは2.8未満が好ましい。また、例えば上記式(1−4)においてR1がメチル基であるケイ酸エステルを用いる場合には、分子内のR2に対応するアルコール(R2−OH)のモル平均ClogPは4.2未満が好ましい。例えば上記式(1−5)においてm=1であるケイ酸エステルを用いる場合には、分子内のR2に対応するアルコール(R2−OH)のモル平均ClogPは1.6未満が好ましい。
【0030】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、上記一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、その(logP)b-max値が15≦(logP)b-max≦50の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステルである。
【0031】
(b)成分に関しては、一般式(1)中のR1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基を示すが、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜18の炭化水素基が好ましい。置換基として用いるアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基がより好ましく、エトキシ基が更に好ましい。中でも、R1としては、メチル基、エチル基、及びn−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数6〜18の直鎖アルキル基から選ばれる基が更に好ましい。
【0032】
2は炭素数6〜22のアルコールから水酸基を一つ除いた残基を示す。本発明の(b)成分に関しては、R2は香料アルコールから一つの水酸基を除いた残基が好ましい。香料アルコールに関しては、(a)成分に関し説明したものと同様のものを用いることができる。
【0033】
3は炭素数1〜7の炭化水素基を示すが、メチル基、エチル基、フェニル基、又はベンジル基が好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0034】
n=0の場合、好ましいケイ酸エステルとしては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合、好ましいケイ酸エステルとしては、下記式(1−5)又は(1−6)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化5】

【0038】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数を示し、Tは、−OR2、−OR3又は−R1を示す。ここで、R3は前記と同じ意味を示す。〕
保存・貯蔵時の(a)成分の加水分解を抑制する観点から、(b)成分の(logP)b-max値は、15≦(logP)b-max≦50の範囲であり、15≦(logP)b-max≦45が好ましい。
【0039】
また(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogP値と(b)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogP値の差、即ち(logP)b-max−(logP)a-maxは、保存・貯蔵時の(a)成分の加水分解を抑制する観点から、(logP)b-max−(logP)a-max≧1であり、(logP)b-max−(logP)a-max≧3.5が好ましく、(logP)b-max−(logP)a-max≧15が更に好ましい。
【0040】
複数種類の(a)成分を用いた場合には、最も(logP)a-maxが大きい(a)成分の(logP)a-maxを採用し、また複数種類の(b)成分を用いた場合には、最も(logP)b-maxが小さい(b)成分の(logP)b-maxを採用し、上記の差を求めることができる。
【0041】
例えば、(b)成分として上記式(1−3)で表されるケイ酸エステルを用いる場合には、分子内のR2に対応するアルコール(R2−OH)のモル平均ClogPは2.8以上が好ましい。また、例えば上記式(1−4)においてR1がメチル基である化合物を用いる場合は、分子内のR2に対応するアルコール(R2−OH)のモル平均ClogPは4.2以上が好ましい。例えば上記式(1−5)においてm=1であるケイ酸エステル化合物を用いる場合には、分子内のR2に対応するアルコール(R2−OH)のモル平均ClogPは1.6以上が好ましい。
【0042】
(a)成分及び(b)成分のClogP値は、一般式(1)又はより具体的な構造である一般式(1−1)〜(1−6)におけるX、Y等の種類、及び/又はnの数を選択することによって変化させることができる。概して、ClogP値を高くするにあたって、X及びYについては、−R1又は−OR3の炭化水素基の分子内における総炭素数を多くしたり、R2に対応するアルコール(R2−OH)のClogPを高くすることが考えられ、また、nについては1以上を選択することが考えられる。一方、ClogP値を低くするにあたり、X及びYについては、−R1又は−OR3の炭化水素基の分子内における総炭素数を少なくしたり、R2に対応するアルコール(R2−OH)のClogPを低くすることが考えられ、また、nについては0を選択することが考えられる。
【0043】
例えば、(a)成分のケイ酸エステルを構成するに際し用いられる好ましい香料アルコールとしては、香料アルコールの中でもClogPが低く親水性の高い香料アルコールが挙げられる。具体的にはtrans−2−ヘキセノール(1.4)、cis−3−ヘキセノール(1.4)、ヒドロキシシトロネロール(1.5)、ベンジルアルコール(1.1)、2−フェニルエチルアルコール(1.2)、γ−フェニルプロピルアルコール(1.7)、シンナミックアルコール(1.4)、アニスアルコール(1.0)、メチルフェニルカルビノール(1.2)、ジメチルフェニルエチルカルビノール(2.0)、フェノキシエチルアルコール(1.2)、スチラリルアルコール(1.4)、エチルバニリン(1.8)、リナロール(2.6)、ターピネオール(2.6)、ラバンジュロール(2.6)、イソオイゲノール(2.6)、オイゲノール(2.4)、等が挙げられる。ここで、( )内の数字はClogP値を示す。
【0044】
一方、(b)成分のケイ酸エステルを構成するに際し用いられる好ましい香料アルコールとしては、香料アルコールの中でもClogPが高く疎水性が高い香料アルコールが挙げられる。具体的には2,6−ジメチル−2−ヘプタノール(3.0)、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール(3.3)、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)エタノール(3.6)、p−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、o−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、4−メチル−3−デセン−5−オール(3.7)、9−デセノール(3.5)、10−ウンデセノール(4.0)、ゲラニオール(2.8)、ネロール(2.8)、シトロネロール(3.3)、ロジノール(3.3)、ジメチルオクタノール(3.5)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、テトラヒドロリナロール(3.5)、ムゴール(3.0)、ミルセノール(3.0)、L−メントール(3.2)、イソプレゴール(2.8)、テトラヒドロムゴール(3.5)、ファルネソール(4.8)、ネロリドール(4.6)、アンブリノール(3.8)、1−(2−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール(4.0)、ペンタメチルシクロヘキシルプロパノール(5.2)、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−3−ヘキサノール(5.9)、サンタロール(3.9)、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(3.9)、セドロール(4.5)、ベチベロール(4.2)、パチュリアルコール(5.1)、ジメチルベンジルカルビノール(3.0)、チモール(3.4)、3−メチル−4−イソプロピルフェノール(3.4)、3−メチル−5−フェニルペンタノール(3.2)、フェニルエチルメチルエチルカルビノール(3.0)等が挙げられる。ここで、( )内の数字はClogP値を示す。また、適宜(a)成分を構成する香料アルコールと混合して、モル平均ClogPを調節して使用しても良い。
【0045】
本発明の(a)成分及び(b)成分を構成するケイ酸エステルは、アルコキシシラン類と香料アルコールとのエステル交換反応で合成されたケイ酸エステル、あるいはハロゲン化シラン類と香料アルコールとのエステル化反応で合成されたケイ酸エステルが好ましい。例えば、以下の合成方法1又は2などの方法により合成することができる。なお、以下の合成方法1又は2に関する説明では、上記一般式(1)におけるR2基が香料アルコールから水酸基を一つ除いた残基である態様について記載する。また、以下の合成方法1又は2に記載のアルコキシシラン類あるいはハロゲン化シラン類の種類並びに香料アルコールの種類や仕込み比率を適宜変えることで、種々のlogP値を有するケイ酸エステルを容易に調製することができる。(a)成分及び(b)成分を構成する各ケイ酸エステル、並びにそれらのClogP値は、得られた合成物をガスクロマトグラムで同定し、構造決定の後、計算することができる。
【0046】
合成方法1:アルコキシシランと香料アルコールとのエステル交換
テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン等のアルコキシシラン類(ここで、アルコキシシラン類のアルコキシ基は上記一般式(1)中のOR3基を示し、アルキル基はR1基を示す)と香料アルコール(R2−OH;式中、R2は前記と同じ意味を示す)をエステル交換反応させる。かかる合成方法では、アルコキシシラン類の分子内に存在する全アルコキシ基に対する香料アルコールのモル比を変えることで、置換度(即ち、一般式(1)における全置換基X及びYに占める−OR2の割合)の異なるケイ酸エステル化合物を得ることができる。
【0047】
アルコキシシラン類の分子内に存在する全アルコキシ基に対する香料アルコールのモル比(即ち、香料アルコール/全アルコキシ基のモル比)は、0.1〜10が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.5〜3が更に好ましく、とりわけ(b)成分を合成する場合には0.75〜3が更により好ましく、最も好ましくは0.8〜3である。
【0048】
アルコキシシラン類のアルコキシ基としては、入手性等の観点から、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。
【0049】
エステル交換反応の反応温度は、アルコキシシラン類及び香料アルコールの沸点以下とすることが好ましく、例えば、室温(20℃)〜200℃が好ましく、50〜170℃がより好ましく、70〜150℃が更に好ましく、90〜130℃が更により好ましい。
【0050】
反応は、反応を速やかに進行させることができる等の観点から、減圧下で行うことが好ましい。減圧度は反応温度にもよるが、アルコキシシラン類及び香料アルコールの沸点以下で行えばよく、1.3Pa〜常圧(0.1MPa)が好ましく、130Pa〜40kPaがより好ましく、1.3kPa〜13kPaが更に好ましい。反応は反応初期から減圧下で行っても、途中から減圧下で行っても良い。
【0051】
エステル交換反応は、反応を速やかに進行させることができる等の観点から、触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ触媒、アルミニウムテトライソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド等のルイス酸触媒を用いることができる。
【0052】
合成方法2:ハロゲン化シランと香料アルコールとのエステル化反応
テトラハロゲンシランやモノアルキルトリハロゲンシラン等のハロゲン化シラン類(前記モノアルキルトリハロゲンシラン等のアルキル基は、上記一般式(1)中のR1基を示す)と香料アルコール(R2−OH;式中、R2は前記と同じ意味を示す)を用いてエステル化反応させる。かかる合成方法では、ハロゲン化シラン類の分子内に存在するハロゲン基に対する香料アルコールのモル比を変えることで、置換度の異なるケイ酸エステル化合物を得ることができる。
【0053】
ハロゲン化シラン類の分子内に存在するハロゲン基に対する香料アルコールのモル比(即ち、香料アルコール/ハロゲン基のモル比)は0.1〜10が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.5〜3が更に好ましく、とりわけ(b)成分を合成する場合には0.75〜3が更により好ましく、最も好ましくは0.8〜3である。
【0054】
ハロゲン化シラン類のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0055】
合成方法2では、反応の進行に伴って酸が副生するため、塩基を加えて反応することが好ましい。用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン等の3級アミンやピリジン等が挙げられる。また、多量の塩が副生することから、溶媒を用いても良く、反応温度は、基質や溶媒が凝固しない低温で行うこともできる。反応終了後、溶媒を除去する必要がある場合には、各種公知の装置・設備を用いることができ、脱塩には、濾過や抽出、電機透析等、公知の方法を用いることができる。
【0056】
上記合成方法1又は合成方法2で得られる一般式(1)で表されるケイ酸エステルは、置換度の異なる他のケイ酸エステルとの混合物であっても、シロキサンが縮合した鎖状又は環状の重・縮合物との混合物であっても良い。また、上記合成方法では、2種以上の香料アルコール(R2−OH)を混合して用いても良く、また、アルコキシシラン類(又はハロゲン化シラン類)として、2種以上のR1又はOR3で示される基を有するものを用いても良い。
【0057】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは分子内にエステル基又はアミド基で分断された総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種である。
【0058】
好ましい(c)成分は、下記一般式(2)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種である。
【0059】
【化6】

【0060】
〔式中、Ra1基は、エステル基又はアミド基で分断された総炭素数12〜29の炭化水素基であり、Ra2基及びRa3基はそれぞれ独立に、Ra1基、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。〕
一般式(2)で表されるアミン化合物は、下記一般式(3)で表されるアミン(c1)と、炭素数8〜26の脂肪酸又は脂肪酸低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステル(c2)とを、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させて得ることができる。また、その酸中和物は、無機酸若しくは有機酸を用いてさらに中和反応させることにより、また、その4級化物は、アルキル化剤を用いてさらに4級化反応させることにより得ることができる。
【0061】
【化7】

【0062】
〔式中、X、Y、Zはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる基であり、X、Y、Zの少なくとも一つはヒドロキシ基である。R31、R32、R33はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキレン基である。]
一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例としては、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチル−N−(3−アミノプロピル)アミンが挙げられる。
【0063】
(c)成分の製造に用いられる上記(c2)成分に関しては、種々の炭素数範囲及び飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸のモル比率を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを得るために、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸を用いるだけでは達成できない場合は、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、または蒸留操作、ボトムカット、トップカットによるアルキル鎖長の調整、あるいは複数の脂肪酸の混合により得ることができる。
【0064】
(c2)成分の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪酸又はその低級アルキルエステル;牛脂、豚脂、パーム油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の天然油脂を分解・精製して得られる脂肪酸又はその低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル);並びにこれらの硬化脂肪酸、部分硬化脂肪酸又はそれらの低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル)等を挙げることができる。
【0065】
(c2)成分としては、炭素数8〜26、好ましくは炭素数14〜20の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜3)が好適であり、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。本発明において、(c2)成分は、不飽和基を有する脂肪酸又はそれらの低級アルキルエステルを10〜60質量%含有する、炭素数14〜20の脂肪酸又はその低級アルキルエステルが好ましい。
【0066】
一般式(2)で表される化合物の中和に用いられる酸としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。好ましい無機酸は、塩酸、硫酸であり、好ましい有機酸は炭素数1〜10の1価又は多価のカルボン酸(例えば、グルコール酸、クエン酸など)、メチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸である。
【0067】
一般式(2)で表される化合物の4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
【0068】
<繊維製品処理剤組成物>
本発明の繊維製品処理剤組成物中の(a)成分と(b)成分の合計の配合量は、繊維製品の香りを持続させる観点から、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が更に好ましい。(a)成分と(b)成分の質量比(即ち、(a)成分/(b)成分の質量比)は1/20〜20/1であることが好ましく、1/10〜10/1がより好ましく、最も好ましくは5/1〜1/5である。
【0069】
本発明の繊維製品処理剤組成物中の(c)成分の配合量は、繊維製品への(a)成分及び(b)成分の吸着率を高める観点から、2〜30質量%が好ましく、4〜28質量%がより好ましく、8〜25質量%が更に好ましい。
【0070】
(a)成分と(b)成分の合計質量と(c)成分の質量との比(即ち、[(a)+(b)成分]/(c)成分の質量比)は1/200〜1/1が好ましく、1/150〜2/3がより好ましく、1/100〜1/3が更に好ましい。
【0071】
本発明の繊維製品処理剤組成物において、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分並びに後述するその他成分を除く成分は水である。
【0072】
本発明の繊維製品処理剤組成物のpHは2〜8であることが好ましく、2〜6がより好ましい。ここで、繊維製品処理剤組成物のpHは、JIS Z8802に準拠した測定方法で繊維製品処理剤組成物の原液のpHを30℃で測定した値である。
【0073】
<その他成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、上記(a)〜(c)各成分に加えて、界面活性剤、無機塩、香料、染料、金属封鎖剤、溶媒、酸化防止剤、防腐剤等を含有することができる。
【0074】
本発明の(a)成分、(b)成分及び(c)成分を安定に溶解、分散、乳化させる目的から、非イオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕を組成物中0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%含有することが好適である。
【0075】
(d)成分としては、炭素数8〜20の炭化水素基とポリオキシアルキレンとを有する非イオン界面活性剤が好ましく、下記一般式(4)で表される非イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0076】
4a−A−〔(R4bO)p−R4cq (4)
〔式中、R4aは、炭素数8〜18、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基であり、R4bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R4cは、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であり、pは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜60、更に好ましくは10〜60の数であり、付加形態はランダム付加でもブロック付加でもよい。Aは−O−、−COO−、−CONH−、−NH−、−CON<又は−N<であり、Aが−O−、−COO−、−CONH−又は−NH−の場合qは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合qは2である。〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的から、(e)成分として、無機塩を組成物中0〜5質量%、好ましくは0.001〜3質量%含有することができる。無機塩としては、貯蔵安定性の点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが好ましい。(e)成分と同様の目的から、(f)成分として、炭素数2〜6の多価アルコールの脂肪酸(炭素数8〜22)エステルを組成物中0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%含有することもできる。好ましくはグリセリン又はソルビトールの脂肪酸(炭素数12〜18)エステルである。
【0077】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、必要に応じて、(g)成分として、溶剤を含有することができる。溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤が好ましく、匂いの点から、特にエタノールが好ましい。
【0078】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、香りのコントロールを目的として、柔軟剤、賦香剤、糊剤、スタイルケア剤等に応用することができる。
【0079】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、一般家庭における洗濯工程のすすぎの段階で濯ぎ水に添加される繊維製品処理剤として用いられることが好ましく、具体的には柔軟剤組成物に応用することが好ましい。
【0080】
[繊維製品処理剤組成物の製造方法]
本発明の繊維製品処理剤組成物は特に制限はないが、例えば(c)成分及び水を配合する工程(工程1)と、下記記載の工程2、工程3及び工程4から選ばれる1種以上の工程を含む。(a)成分と(b)成分は同時に配合しても良く、別々に配合しても良く、(a)成分と(b)成分を予め混合して配合しても良い。また(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水は繊維製品処理剤組成物を得るための所定量を一括して配合しても良く、分割して配合しても良い。
【0081】
工程2:工程1で得られた液状混合物に(a)成分及び/又は(b)成分を配合する工程
工程3:工程1において、予め(a)成分及び/又は(b)成分と(c)成分を混合する工 程
工程4:工程1において、予め(a)成分及び/又は(b)成分と水を混合する工程
上記工程における(a)成分、(b)成分、(c)成分、水及び上記各成分を配合する工程で得られる繊維製品処理剤組成物の温度は、各成分の物性(例えば、融点、凝固点、ゲル−液晶転移温度及び粘度等)、各成分の熱的安定性、製造の容易性、製造して得られる繊維製品処理剤組成物の外観及び貯蔵安定性等を考慮して適宜調整することができ、0℃〜90℃が好ましく、5℃〜80℃がより好ましい。繊維製品処理剤組成物の温度が5℃〜40℃になるように上記工程に加えて冷却又は加熱等の工程を行っても良い。
【0082】
上記工程1〜工程4は、例えば、パドル式攪拌機、プロペラ式攪拌機、ホモミキサー、マイルダー、クレアミックス、フィルミックス、ウルトラミキサー、ラインミキサー、べコミックス、レキサミックス、スタティックミキサーを用いて攪拌下で行うことが好ましい。
【0083】
本発明の製造方法において、上記(d)成分〜(g)成分及びその他の任意成分を配合する場合には、上記工程1〜4の工程において適宜配合される。
【0084】
[繊維製品の処理方法]
本発明の繊維製品処理剤組成物を用いて繊維製品を処理する方法(即ち、繊維製品に(a)成分を吸着させる方法)としては、本発明の繊維製品処理剤組成物を、水を媒体として繊維製品に接触させる方法、スプレー又はローラー等により繊維製品に直接噴霧/塗布する方法が挙げられる。
【0085】
水を媒体として繊維製品処理剤組成物を繊維製品に接触させる方法としては、例えば、一般家庭の洗濯において洗剤と共に添加する方法や、すすぎの段階で濯ぎ水に添加する方法が挙げられ、中でも、すすぎの段階で濯ぎ水に添加する方法が好ましい。
【0086】
具体的な処理方法としては、繊維製品の質量に対して、(a)成分及び(b)成分の合計の質量が好ましくは0.0001〜0.05質量%、より好ましくは0.0005〜0.03質量%、更に好ましくは0.001〜0.02質量%となるように濯ぎ水に添加することが好ましい。
【実施例】
【0087】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。また、以下の実施例及び比較例では、(a)、(b)各成分のうち最も含有量の多い成分を「主成分」と表す。含有量は、各合成例で得られたケイ酸エステルをガスクロマトグラフィーで分析した。ガスクロマトグラムの面積%から質量%を算出した。各(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのClogPを以下(ClogP)a-maxとする。同様に各(b)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのClogPを以下(ClogP)b-maxとする。
【0088】
<(a)成分>
(a−1):下記合成例1で得られたケイ酸テトラキス(2−フェニルエチル)エステル[テトラキス(2−フェニルエチルオキシ)シラン]((ClogP)a-max=8)を主成分として含有するケイ酸エステル
(a−2):下記合成例2で得られたケイ酸テトラキス(4−メトキシベンジル/ゲラニル(モル比=1/1))エステル化合物[ビス(4−メトキシベンジルオキシ)ビス(ゲラニルオキシ)シラン]((ClogP)a-max=11.4)を主成分として含有するケイ酸エステル
<(b)成分>
(b−1):下記合成例3で得られたポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン((ClogP)b-max=44)を主成分として含有するケイ酸エステル
(b−2):下記合成例4で得られたケイ酸テトラキス(ゲラニル)エステル[テトラキス(ゲラニルオキシ)シラン]((ClogP)b-max=15)を主成分として含有するケイ酸エステル
(b−3):下記合成例5で得られたケイ酸テトラキス(シトロネリル)エステル[テトラキス(シトロネリルオキシ)シラン]((ClogP)b-max=16)を主成分として含有するケイ酸エステル
(b−4):下記合成例6で得られたケイ酸テトラキス(3,7−ジメチル−1−オクチル)エステル[テトラキス(テトラヒドロゲラニルオキシ)シラン]((ClogP)b-max=18)を主成分として含有するケイ酸エステル

(b−5):下記合成例7で得られたケイ酸テトラキス(ネリル)エステル[テトラキス(ネリルオキシ)シラン]((ClogP)b-max=15)を主成分として含有するケイ酸エステル
<(c)成分>
(c−1):下記合成例8で得られた化合物
(c−2):下記合成例9で得られた化合物
<その他成分>
(d−1):ポリオキシアルキレン(平均20モル付加)ラウリルエーテル)
(e−1):塩化カルシウム
(f−1):硬化牛脂脂肪酸1.7モルとグリセリン1モルの脱水縮合物(脱水縮合物中の未反応脂
肪酸含有量は3質量%)
・(g−1):エタノール
・イオン交換水

合成例1:ケイ酸テトラキス(2−フェニルエチル)エステル[テトラキス(2−フェニルエチルオキシ)シラン]を主成分として含有するケイ酸エステルの合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン41.68g(0.20mol)、2−フェニルエタノール87.98g(0.72mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.85mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら112℃〜118℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら約115℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ケイ酸テトラキス(2−フェニルエチル)エステルを主成分として63質量%含む95.04gの黄色油状物を得た。
【0089】
合成例2:ケイ酸テトラキス(4−メトキシベンジル/ゲラニル(モル比=1/1))エステル[ビス(4−メトキシベンジルオキシ)ビス(ゲラニルオキシ)シラン]を主成分として含有するケイ酸エステルの合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン37.51g(0.18mol)、4−メトキシベンジルアルコール44.21g(0.32mol)、ゲラニオール50.05g(0.32mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.671mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら109〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら約120℃でさらに4時間攪拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ビス(4−メトキシベンジルオキシ)ビス(ゲラニルオキシ)シランを主成分として23質量%含む92.2gの黄色油状物を得た。
【0090】
合成例3:ポリ(ゲラニルオキシ)シロキサンを主成分として含有するケイ酸エステルの合成
100mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン72.96gと水酸化カリウム0.24g、イオン交換水0.4mLを入れ、窒素気流下120〜125℃、33kPa〜101kPa(常圧)で約37時間反応を行った。この間イオン交換水を0.4mL追加した。反応後、33kPaで更に2時間反応させた後、冷却、濾過を行い、67.29gのエトキシシランの縮合物を淡黄色液体として得た。
【0091】
次いで、100mLの四つ口フラスコに先のテトラエトキシシラン縮合物25.00gとゲラニオール62.95g、4.8%水酸化ナトリウム水溶液0.17gを入れ、エタノールを留出させながら97〜121℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら118〜121℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン(一般式(1−5)において、m=5(平均)の化合物)を主成分として含む65.36gの淡黄色油状物として得た。
【0092】
合成例4:ケイ酸テトラキス(ゲラニル)エステル[テトラキス(ゲラニルオキシ)シラン]を主成分として含有するケイ酸エステルの合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、ゲラニオール72.30g(0.47mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜120℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117〜120℃でさらに4時間攪拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ケイ酸テトラキス(ゲラニル)エステルを主成分として60質量%含む76.92gの黄色油状物を得た。
【0093】
合成例5:ケイ酸テトラキス(シトロネリル)エステル[テトラキス(シトロネリルオキシ)シラン]ケイ酸テトラキス(シトロネリル)エステルを主成分として含有するケイ酸エステルの合成
ゲラニオール72.30g(0.47mol)の代わりにシトロネロール(3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール)73.44g(0.47mol)を用いた以外は、合成例4と同様の反応条件で合成した結果、ケイ酸テトラキス(シトロネリル)エステルを主成分として56質量%含む78.0gの淡黄色油状物を得た。
【0094】
合成例6:ケイ酸テトラキス(3,7−ジメチル−1−オクチル)エステル[テトラキス(テトラヒドロゲラニルオキシ)シラン]を主成分として含有するケイ酸エステルの合成
ゲラニオール72.30g(0.47mol)の代わりに、3,7−ジメチル−1−オクタノール74.4g(0.47mol)を用いた以外は、合成例4と同様の反応条件で合成した結果、ケイ酸テトラキス(3,7−ジメチル−1−オクチル)エステルを主成分として61質量%含む78.5gの淡黄色油状物を得た。
【0095】
合成例7:ケイ酸テトラキス(ネリル)エステル[テトラキス(ネリルオキシ)シラン]を主成分として含有するケイ酸エステルの合成
ゲラニオール72.30g(0.47mol)の代わりに、ネロール(3,7−ジメチル−シス−2,6−オクタジエン−1−オール)72.5g(0.47mol)を用いた以外は、合成例4と同様の反応条件で合成した結果、ケイ酸テトラキス(ネリル)エステルを主成分として60質量%含む79.8gの淡黄色油状物を得た。
【0096】
合成例8:化合物(c−1)の合成
N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン(分子量132)66g(0.5モル)と、ステアリン酸及びパルミチン酸の混合脂肪酸(ステアリン酸/パルミチン酸質量比=6/4、平均分子量273)259g(0.95モル)を、定法に従って脱水縮合させた(反応温度範囲:180〜190℃、圧力範囲:150〜200Torr)。反応の進行は反応物中の未反応の脂肪酸含量を、JIS K 0070記載の試験法に従い、酸価を測定することで追跡し、酸価が5になった時点で反応を終了させた。反応終了後、反応物を70℃まで空冷し、窒素で常圧(760Torr)に戻した。得られた反応生成物中の未反応脂肪酸含量を、前記JISの試験法に従い酸価を測定することで求めた。その結果、未反応脂肪酸含有量は5質量%であった。得られた反応生成物中の残分(即ち、95質量%)が、下記式(3−1)の化合物と下記式(3−2)の化合物を(3−1)/(3−2)質量比=86/14にて含む(c−1)成分であった。
【0097】
【化8】

【0098】
〔式中、Rは混合脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基を示す。〕
【0099】
【化9】

【0100】
〔式中、Rは前記と同じ意味を示す。〕
合成例9:化合物(c−2)の合成
混合脂肪酸(パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン/リノール酸質量比=30/30/35/5、平均分子量275)195g(0.71モル)と、トリエタノールアミン54.4g(0.37モル)を混合し、180〜185℃(常圧下)で3時間反応させ、次に200mmHgまで減圧し、更に3時間熟成した。その後、窒素で常圧に戻し、100℃まで冷却し脱水縮合物392gを得た。得られた縮合物の酸価(JIS K0070準拠)は0.7mgKOH/g、全アミン価(JIS K2501準拠)は196mgKOH/gであった。次に、この脱水縮合物392gの温度を70〜75℃に調温し、前記脱水縮合物のアミン価を基に、脱水縮合物のアミン当量に対して0.98当量に相当するジメチル硫酸を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、50〜55℃で更に3時間熟成し、目的の化合物(c−2)を含有する反応生成物を得た。得られた反応生成物の揮発分をJIS K0067の方法に従って測定し、エタノール含有量とした。エタノール以外の固形分の組成を下記文献記載のHPLCの方法に準拠して分析した。得られた反応生成物の組成を表1に示す。
【0101】
文献:Eilkes,A.J.,C.Jacobs,G.Walraven,J.M.Talbot, Characterization of quaternized triethanolamine esters (esterquats) by HPLC, HRCGC, and NMR, World Surfactants Congr.,4th,1996,1,389-412.
【0102】
【表1】

【0103】
実施例1〜14及び比較例1〜2
最終の繊維製品処理剤組成物が300gになるように、表2に示す配合成分を表2に示す割合で用い、下記方法により表2に示す組成の繊維製品処理剤組成物1〜14、及び比較組成物1〜2を調製した。得られた各組成物について、保存安定性を下記方法で評価した。結果を表2に示す。
【0104】
<繊維製品処理剤組成物の製造>
500mLのガラスビーカーに、一枚の長さが2.5cmのタービン型羽根が3枚ついた攪拌羽根を設置(攪拌羽根底部がビーカー底面より1cm上部になるように設置)し、繊維製品処理剤組成物の出来上がり質量が300gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで62℃まで昇温した。500rpmで攪拌しながら、溶融した(d)成分を添加した。次いで、(c)成分、(f)成分、及び(g)成分を予め予備混合し、70℃で溶融させた予備混合物を1分かけて添加した。10分攪拌後、所定のpHにするのに必要な量の35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を添加し5分間攪拌した後に、(e)成分の10質量%水溶液を所定の含有となるように添加した。さらに5分攪拌後、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、更に、事前に予備混合した(a)成分及び(b)成分の混合物を攪拌しながら添加し、最後に再度pHを確認し、必要に応じて35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整した。表2の組成においては、(c−1)は、ほぼすべて塩酸塩の状態で組成物に存在する。なお、表2及び表3中、(c)成分の数値はそれ自体(有効分)の配合量である。また、(a)成分及び(b)成分の数値は合成例1〜7で得られたケイ酸エステルの配合量である。
【0105】
<保存安定性の評価法>
(1) 繊維製品処理剤組成物の保存
上記調製方法で得られた繊維製品処理剤組成物20gを50ml容量のガラス製のスクリュー管に入れ、40℃の恒温槽(ヤマト科学製送風定温恒温器)にて14日間静置保存した。
【0106】
(2) 保存後の(a)成分の残存率の算出
下記の測定方法に従って測定した、保存前後の繊維製品処理剤組成物中における遊離状態の香料アルコール量並びに保存前の繊維製品処理剤組成物中における香料アルコール全量(遊離状態のものもケイ酸エステル中にアルコール残基として存在する状態のものも全て含めた香料アルコール量)に基づいて、保存後の(a)成分の残存率を下記式により算出した。結果を表2に示す。ここで、下記式中、Xは保存前の繊維製品処理剤組成物中における遊離状態の香料アルコール量を、Yは保存後の繊維製品処理剤組成物中における遊離状態の香料アルコール量を、Zは保存前の繊維製品処理剤組成物中における香料アルコール全量をそれぞれ示す。なお、(a−1)成分については、(a)成分由来の2−フェニルエチルアルコール量を、(a−2)成分については、(a)成分由来のゲラニオール量を測定し、その値に基づいて残存率を算出した。

保存後の(a)成分の残存率(%)=[(Z−Y)/(Z−X)]×100

Xの測定:20mL容量のすり付き試験管に、40℃保存前の繊維製品処理剤組成物100μL、水5mL、特級エタノール3mL、5N水酸化ナトリウム水溶液1mL、及び5N塩酸水溶液1mLを入れ密栓し、20℃の水浴中で超音波洗浄器(ヤマト科学製)で5分間超音波処理した。この液中に存在する香料アルコール量を液体クロマトグラフ法で測定した。測定条件を下記の通りである。
液体クロマトグラフィー装置:HITACHI L−2400
カラム:Lichrospher 100 RP−18(e) 5μm 250mm×4φ
カラム温度:40℃
溶離剤:アセトニトリル/水=7/3(質量比)の混合溶液
流速:1.0mL/min
検出器:UV(220nm)

Yの測定:40℃保存前の繊維製品処理剤組成物100μLに代えて、40℃保存後の繊維製品処理剤組成物100μLを用いた以外は、上記と同様の測定条件にて測定した。
【0107】
Zの測定:20mL容量のすり付き試験管に、40℃保存前の繊維製品処理剤組成物100μL、水5mL、特級エタノール3mL、5N水酸化ナトリウム水溶液1mLを入れ密栓し、80℃のウォーターバス中で1時間加熱した。この試験管を20℃の水浴中で20℃まで冷却し、5N塩酸水溶液1mLを入れ、再び密栓した。この試験管を20℃の水浴中で超音波洗浄器(ヤマト科学製)で5分間超音波処理した。この液中に存在する香料アルコール量を上記液体クラマトグラフ法で測定した。
【0108】
比較例2と実施例14を比較すると、(b−4)((b)成分)と(a−2)((a)成分)が組成物中で共存することで、加水分解を受けやすいケイ酸エステル化合物である(a−2)成分の残存率が向上している。
【0109】
【表2】

【0110】
実施例15及び比較例3
組成物5を40℃で14日間保存した組成物、及び比較組成物1を40℃で14日間保存した組成物を用いて繊維製品をそれぞれ処理し、処理後の繊維製品の香りを下記方法で評価した。結果を表3に示す。
【0111】
<繊維製品の処理方法>
(1)前処理した木綿タオルの調製方法
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製 アタック)を用いて、木綿タオル(木綿100%、約34cm×86cm、約68g/1枚当たり)24枚を日立全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
【0112】
(2) 木綿タオルへの組成物の処理
National製電気バケツ(N−BK2)に、5リットルの水道水を投入し、繊維製品処理剤組成物(組成物5又は比較組成物1)を40℃で14日間保存した組成物を10g/繊維1kgとなるように投入し、前記の木綿タオル2枚を投入し5分間処理した。処理後、日立製2槽式洗濯機(型番:PS−H35L)の脱水槽で3分間脱水した。脱水した木綿タオルを25℃、40%RHで3日間乾燥させた。
【0113】
<香りの評価方法>
上記方法で処理した、組成物5又は比較組成物1で処理した木綿タオルから香る(a)成分由来の香りの強さを、10名のパネラー(30代男性5名、30代女性5名)により評価した。
【0114】
【表3】

【0115】
その結果、比較組成物1で処理した木綿タオルよりも、組成物5で処理した木綿タオルの方が(a)成分由来の香りを強く感じたパネラーの人数が多く、組成物5で処理した木綿タオルの方が、(a)成分由来の香りの持続性が高いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を配合し、(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogP[以下、(logP)a-maxという]と(b)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogP[以下、(logP)b-maxという]の差が、(logP)b-max−(logP)a-max≧1である繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)a-maxが1≦(logP)a-max<15の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(b)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)b-maxが15≦(logP)b-max≦50の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(c)成分:分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種
【化10】

〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基)、−OR2(R2は香料アルコール、好ましくは炭素数6〜22の香料アルコールから水酸基を一つ除いた残基)、又は−OR3(R3は炭素数1〜7の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYは同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
【請求項2】
(a)成分と(b)成分との配合割合が、(a)成分/(b)成分(質量比)=20/1〜1/20である請求項1記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
(c)成分が、分子内にエステル基又はアミド基で分断された総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(c)成分が、一般式(2)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の繊維製品処理剤組成物。
【化11】

〔式中、Ra1基は、エステル基又はアミド基で分断された総炭素数12〜29の炭化水素基であり、Ra2基及びRa3基はそれぞれ独立に、Ra1基、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。〕
【請求項5】
(a)成分が、前記一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)a-maxが1.5≦(logP)a-max≦14の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステルである請求項1〜4何れかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
下記(a)成分及び水を配合する繊維製品処理剤組成物に、下記(b)成分を配合する、繊維製品処理剤組成物中における(a)成分の加水分解を抑制する方法。
(a)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)a-maxが1≦(logP)a-max<15の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
(b)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステルであって、(logP)b-maxが15≦(logP)b-max≦50の範囲にある少なくとも1種のケイ酸エステル
但し、(a)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogPを(logP)a-maxとし、(b)成分のうち最も含有量の多いケイ酸エステルのlogPを(logP)b-maxとし、且つ(logP)b-max−(logP)a-max≧1である。
【化12】

〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基)、−OR2(R2は炭素数6〜22のアルコールから水酸基を一つ除いた残基)、又は−OR3(R3は炭素数1〜7の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYは同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
【請求項7】
請求項1〜5何れかに記載の繊維製品処理剤組成物を、水を媒体として繊維製品に処理する、繊維製品の処理方法。

【公開番号】特開2011−127260(P2011−127260A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288618(P2009−288618)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】