説明

織機における耳糸開口装置

【課題】本発明の目的は、第1経糸用綜絖枠と筬との間の狭い空間に設置可能であり、かつ経糸の開口角を大きく維持可能な織機における耳糸開口装置の提供にある。
【解決手段】経糸群の側方に配置された少なくとも2本の耳糸Tをそれぞれ保持する耳糸用綜絖19を設け、各耳糸用綜絖19を駆動モータ12から伝達される駆動力によって相反する上下方向に往復移動させることにより耳糸開口を形成する耳糸開口装置10の少なくとも耳糸用綜絖19を最前列の第1経糸用綜絖枠21と筬31との間に配置する織機における耳糸開口装置10において、耳糸用綜絖19を第1経糸用綜絖枠21に対して織機の前後方向に傾斜可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の織耳あるいは捨て耳等に使用される耳糸の開口装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耳糸は経糸群に並列して配置され、緯糸端を処理する捨て耳の形成あるいは織布端部の織耳組織を形成するために使用され、耳糸開口装置としては種々の構成が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1で開示された従来技術では、以下の構成を備えた耳糸開口装置を開示している。耳糸開口装置1は、耳織成糸8、9を保持し、上下方向に対向して直線運動を行う糸ガイド要素2、3を連結ロッド16、17を介してクランク14、15に連結し、クランク14、15を往復回転する駆動モータ12のモータ軸13に固定した構成である。
駆動モータ12が所定の角度で往復回転運動をされると、糸ガイド要素2、3はお互いに反対方向に、上昇運動及び下降運動を行い、糸ガイド要素2、3に形成されている糸ガイド4、5に挿通された耳織成糸8、9を、それぞれ反対方向に案内することにより、開口10が形成される。
【0004】
耳糸開口装置1はフレーム11に配置され、経糸開口用綜絖枠の左右端部側に位置し、かつ経糸開口用綜絖枠の織機前方側に配置されている。耳糸開口装置1は、詳細は記載されていないが、幅方向(左右方向)及び、高さ方向(上下方向)の位置調整が可能としている。
【特許文献1】特表平10−503563号公報(第7〜13頁、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示された従来技術では、耳糸開口装置1の耳糸開口部は糸ガイド要素2、3が下方に突出した構成となっており、この耳糸開口部を第1経糸用綜絖枠(綜絖枠の最前列のもの)と筬との間の空間に配置する必要がある。そのため、第1経糸用綜絖枠と筬との間の距離を大きくしなければならないが、第1経糸用綜絖枠以降の各綜絖枠の上下移動量は大きくできないため、経糸の開口角が小さくなって緯入れミスを誘発する恐れがある。従って、第1経糸用綜絖枠は経糸の開口角をできるだけ大きくするために筬に出来るだけ近づけて設定するのが好ましく、第1経糸用綜絖枠と筬との間の空間に耳糸開口部を設置した状態でも耳糸開口部と第1経糸用綜絖枠及び筬との間の前後方向の隙間を最小限に抑える必要がある。しかし、耳糸開口装置1には、前後方向の位置調整機能が備わっておらず、隙間調整が難しい問題がある。
【0006】
本発明の目的は、第1経糸用綜絖枠と筬との間の狭い空間に設置可能であり、かつ経糸の開口角を大きく維持可能な織機における耳糸開口装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、請求項1記載の発明は、経糸群の側方に配置された少なくとも2本の耳糸をそれぞれ保持する耳糸用綜絖を設け、各耳糸用綜絖を駆動モータから伝達される駆動力によって相反する方向に往復移動させることにより耳糸開口を形成する耳糸開口装置の少なくとも前記耳糸用綜絖を最前列の第1経糸用綜絖枠と筬との間に配置する織機における耳糸開口装置において、前記耳糸用綜絖を前記第1経糸用綜絖枠に対して織機の前後方向に傾斜可能に設けたことを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、第1経糸用綜絖枠と筬との間の狭い空間に少なくとも耳糸用綜絖を配置し、第1経糸用綜絖枠及び筬との間の隙間調整を、第1経糸用綜絖枠に対する耳糸用綜絖の前後方向の傾斜角を変更することにより実施可能である。従って、第1経糸用綜絖枠と筬との間の狭い空間に耳糸用綜絖を周辺部品と干渉することなく設置可能となり、経糸の開口角を大きく維持できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の織機における耳糸開口装置において、前記耳糸用綜絖を織機の上下方向に位置調整可能に設けたことを特徴とする。
請求項2記載の発明によれば、耳糸用綜絖を第1経糸用綜絖に合わせて上下方向の位置調整を行うことが可能となり、上下方向に位置ズレがあった場合の緯入れミスを防止できる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の織機における耳糸開口装置において、前記耳糸用綜絖を織機の前後方向に位置調整可能に設けたことを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、第1経糸用綜絖枠に対する耳糸用綜絖の前後方向の傾斜角調整に加えて、前後方向の位置調整が可能となっているので、第1経糸用綜絖枠と筬との間の狭い空間に耳糸用綜絖を確実に設置できる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の織機における耳糸開口装置において、前記耳糸用綜絖の傾斜角及び位置調整を行う調整部を介して、織機の左右方向に延びる支持部に固定されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、調整部によって耳糸用綜絖の傾斜角及び上下方向又は前後方向の位置調整を行った後、耳糸開口装置を織機の左右方向に延びる支持部に固定すれば良いので、調整と固定が簡単にできる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の織機における耳糸開口装置において、前記調整部は、織機の前記支持部に固定されたブラケットと、該ブラケットと前記駆動モータの収容されたボックスを固定するボルトと、前記ブラケットの上部に取り付けられ前後方向又は上下方向の位置調整用のジャッキボルトとを備えていることを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、ブラケットとボックスを固定するボルトを緩め、ブラケットの上部に取り付けられ前後方向の位置調整用のジャッキボルトを前後方向に適量移動させることにより、耳糸用綜絖の前後方向の位置を調整可能であり、かつボルトを中心として耳糸用綜絖を前後方向に回転させ、第1経糸用綜絖枠に対する耳糸用綜絖の傾斜角を調整可能である。また、ブラケットの上部に取り付けられ上下方向の位置調整用のジャッキボルトを上下方向に適量移動させることにより、耳糸用綜絖の上下方向の位置を調整可能である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、第1経糸用綜絖枠に対し耳糸用綜絖の傾斜角を調整可能とすることにより、第1経糸用綜絖枠と筬との間の狭い空間に耳糸用綜絖を周辺部品と干渉することなく設置可能となり、経糸の開口角を大きく維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
本実施形態における耳糸開口装置は経糸開口用綜絖枠の端部側に位置し、かつ経糸用綜絖枠の織機前方側に配置されており、織布端部の耳組織W(図2参照)を織製するために用いられる例を示す。
【0014】
図1に示されるように、耳糸開口装置10は、織機の機台に取り付けられ支持フレームとしてのボックスBと、ボックスBに固定された駆動モータ12と、上下方向に対向して往復移動を行う摺動体16と、ボックスBに配置され駆動モータ12の回転を摺動体16に伝達するロッド14と、摺動体16に取り付けられた耳糸用綜絖19等により構成され、ユニット化されている。
図2に示すように、耳糸開口装置10の下方に延びる案内体15及び案内体15から側方に突出している耳糸用綜絖枠17は、最前列の第1経糸用綜絖枠21と筬31との間の狭い空間に配置されている。
【0015】
図2及び図3に示されるように、駆動モータ12が往復回転すると、図示しないモータ駆動軸と連結されたロッド14を介して、駆動モータ12の回転は各摺動体16に伝達され、各摺動体16は案内体15内を上下方向に対向して往復直線運動を行う。これにより、各摺動体16の耳糸用綜絖枠17に取り付けられた2本の耳糸用綜絖19は、それぞれ相反する方向に上下移動を行い、耳糸用綜絖19の糸通し孔20に保持された耳糸Tはそれぞれ上下方向に開口し、耳糸開口が形成される。この耳糸開口運動を継続することにより緯入れされた緯糸Yと共に織耳組織Wを織製する。
【0016】
図1に示されるように、ボックスBの左右の側方にコの字型のブラケット24がコの字の開口部を前方に向けてボルト27で固定されており、このブラケット24を織機のフレーム間に架設された支持部としてのトップレール22に後方より嵌め込み、止め板25を間に介在させて4本のボルト26で締め付けることにより、耳糸開口装置10はトップレール22に固定されている。尚、トップレール22の架設方向を左右方向とし、それと直角な方向を前後方向とする。(図1で駆動モータ12側が前方、それと反対側が後方である。)
【0017】
図1及び図4に示されるように、ブラケット24は上方に突出しており、この突出部の下端には長丸孔24aが左右方向に貫通形成されている。この長丸孔24aは上下方向に長く形成されているが、前後方向にも挿通されるボルト27の軸径よりも大きく形成されている。この長丸孔24aにボルト27を左右側方よりそれぞれ挿通させ、ボックスBに形成されているネジ孔11cに螺合させることにより、ブラケット24はボックスBに固定される。また、ブラケット24の突出部の上端には、前後方向に貫通形成されているネジ孔24bが設けられ、このネジ孔24bに前後方向の位置調整を行うジャッキボルト28が、頭部を前方に向けて螺合されている。また、ブラケット24の突出部の上端には、上下方向に形成されている有底のネジ孔24cが設けられ、このネジ孔24cに上下方向の位置調整を行うジャッキボルト29が、頭部を上方に向けて螺合されている。
【0018】
一方、ボックスBの左右の側壁の後端部には、それぞれの側壁に対して左右方向に突出したつば部11が一体形成されており、つば部11は垂直方向に延びるつば部11aと水平方向に延びるつば部11bとで構成されている。このつば部11a、11bは、ブラケット24の突出部に対して、一定の間隔を置いて臨む位置に配置されており、つば部11aは、ジャッキボルト28の頭部とは反対側の軸端部と当接し、つば部11bは、ジャッキボルト29の頭部と当接している。また、ジャッキボルト28、29は、それぞれロックナット30により位置固定可能となっている。
ボルト27とジャッキボルト28及びジャッキボルト29等とにより調整部23が構成されている。
【0019】
以上の構成を持つ織機における耳糸開口装置についてその作用を説明する。
先ず、耳糸開口装置10をトップレール22に取り付けた状態で、左右方向の位置調整が行われる。ブラケット24に螺合されている4本のボルト26を緩め、耳糸開口装置10を左右方向にずらして所定位置に合わせる。調整終了後、ボルト26を締め付けることにより、耳糸開口装置10の左右方向の固定を行う。
【0020】
次に、上下方向の高さ調整が行われる。ボルト27とジャッキボルト29に装着されているロックナット30を緩める。ジャッキボルト29をネジ孔24cにねじ込むように回転させることにより、ジャッキボルト29のストローク長h(図4に示す)は小さくなり、ジャッキボルト29の頭部と当接しているつば部11bを介して耳糸開口装置10は下方に移動する。また、ジャッキボルト29をネジ孔24cより引く抜くように回転させることにより、ジャッキボルト29のストローク長hは大きくなり、ジャッキボルト29の頭部と当接しているつば部11bを介して耳糸開口装置10は上方に移動する。この時、ボルト27の挿通されている長丸孔24aは上下方向に長く形成されているので、ジャッキボルト29の上下方向の移動に追随して、つば部11bを介して耳糸開口装置10は上下方向に移動可能となっている。つば部11bを介して耳糸開口装置10が上下方向に移動し、耳糸開口装置10の耳糸用綜絖19に保持されている耳糸Tの高さ調整が行われる。調整終了後、ロックナット30を締め付けることによりジャッキボルト29の位置を固定し、耳糸開口装置10の上下方向の固定を行う。
【0021】
次に、前後方向及び傾斜角の調整が行われる。まず、ジャッキボルト28に装着されているロックナット30を緩める。ジャッキボルト28をネジ孔24bにねじ込むように回転させることにより、ジャッキボルト28のストローク長g(図4に示す)は大きくなり、ジャッキボルト28の軸端部と当接しているつば部11aを介して耳糸開口装置10は後方に移動する。また、ジャッキボルト28をネジ孔24bより引く抜くように回転させることにより、ジャッキボルト28のストローク長gは小さくなり、ジャッキボルト28の軸端部と当接しているつば部11aを介して耳糸開口装置10は前方に移動する。この時、ボルト27の挿通されている長丸孔24aは挿通されるボルト27の軸径よりも前後方向に大きく形成されているので、ジャッキボルト28の前後方向の移動に追随して、つば部11aは前後方向に移動可能となっている。つば部11aを介して耳糸開口装置10が前後方向に移動し、耳糸開口装置10の案内体15及び耳糸用綜絖19の取り付けられた耳糸用綜絖枠17の前後方向の位置調整が行われる。前後方向の位置調整は、案内体15及び耳糸用綜絖19を第1経糸用綜絖枠21又は、筬31等の周辺部品と干渉しないように調整することによりなされる。
【0022】
また、耳糸開口装置10はボルト27を中心として回転可能となっている。例えば、図5(a)に示されるように、耳糸開口装置10が第1経糸用綜絖枠21と平行に取り付けられた状態では、第1経糸用綜絖枠21の上端と耳糸開口装置10のカバー13とは殆ど隙間のない接触ぎりぎりの状態にあり、耳糸開口装置10の案内体15の下端と筬31の支持部材32とは殆ど隙間のない接触ぎりぎりの状態にある。この場合には、単に前後方向の位置調整を行っても、耳糸開口装置10は第1経糸用綜絖枠21若しくは筬31の支持部材32の何れかと接触してしまい、正しく位置調整ができない。このような状態にある時には、ボルト27を緩く締めた状態でジャッキボルト28を回転して、図5(b)に示されるように、耳糸開口装置10をボルト27を中心として時計方向に僅か回転させることにより、第1経糸用綜絖枠21に対する耳糸用綜絖19及び案内体15の傾斜角αを変化させ、第1経糸用綜絖枠21及び筬31の支持部材32の双方に対して適切な間隔を保つ位置に調整可能である。調整終了後、ボルト27を左右側方より締め付けることにより、耳糸開口装置10の固定を行う。
【0023】
この実施形態に係る織機における耳糸開口装置によれば以下の効果を奏する。
(1)第1経糸用綜絖枠21と筬31との間の狭い空間に耳糸用綜絖19及び耳糸用綜絖19を保持する案内体15を配置し、第1経糸用綜絖枠21及び筬31との間の隙間調整を、ボルト27を中心として耳糸開口装置10を前後方向に回転させ、第1経糸用綜絖枠21に対する耳糸用綜絖19及び案内体15の傾斜角αを変化させることにより、第1経糸用綜絖枠21及び筬31の双方に対して適切な間隔を保つ位置に調整可能である。従って、第1経糸用綜絖枠21と筬31との間の狭い空間に耳糸用綜絖19及び案内体15を周辺部品と干渉することなく設置可能となり、経糸の開口角を大きく維持できる。
(2)第1経糸用綜絖枠21に対する耳糸用綜絖19の前後方向の傾斜角αの調整に加えて、前後方向の位置調整及び上下方向の位置調整が可能となっているので、第1経糸用綜絖枠21と筬31との間の狭い空間に耳糸用綜絖19を確実に設置できる。
(3)ブラケット24とボックスBを固定するボルト27と、前後方向の位置調整及び傾きの調整を行うジャッキボルト28及び上下方向の位置調整を行うジャッキボルト29等とにより調整部23が構成されている。よって位置調整時には、ボルト27を緩め、ブラケット24の上部に取り付けられ前後方向の位置調整用のジャッキボルト28を前後方向に適量移動させることにより、耳糸用綜絖19の前後方向の位置を調整可能であり、かつボルト27を中心として耳糸用綜絖19を備えた耳糸開口装置10を回転させ、第1経糸用綜絖枠21に対する耳糸用綜絖19及び案内体15の傾斜角αを調整可能である。また、ブラケット24の上部に取り付けられ上下方向の位置調整用のジャッキボルト29を上下方向に適量移動させることにより、耳糸用綜絖19の上下方向の位置を調整可能である。構成が簡単であり、位置調整を容易に行うことができる。
(4)耳糸開口装置10のボックスBの側方に固定されたブラケット24が、織機のフレーム間に架設されたトップレール22に左右方向にスライド可能に取り付けられているので、ボルト26を緩め耳糸開口装置10を左右方向にスライドさせることにより位置調整を簡単に行うことができる。また、耳糸開口装置10の織機への取り付け取り外し作業等を容易に行うことができる。
(5)耳糸用綜絖19の取り付けられた耳糸用綜絖枠17は薄い板を案内体15から側方に突出させた構成であるため、これらの枠のみを第1経糸用綜絖枠21と筬31との間に配置すればよく、織機前後方向の大きなスペースを必要としない利点がある。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図6に基づいて説明する。
この実施形態では、第1の実施形態における位置調整用のジャッキボルトを変更したものである。
従って、ここでは、説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0025】
図6に示されるように、ブラケット41の突出部の上端には、前後方向に貫通形成されている通し孔41bが設けられ、この通し孔41bに上下方向の位置調整を行う偏心カム42が、前方より取り付けられている。偏心カム42は、平板状のカム部42aと軸部42bより構成され、軸部42bにはネジが螺刻されており、この軸部42bを通し孔41bに回転可能に挿通させ、カム部42aをボックスBのつば部11bに当接させて配置されている。そして、軸部42bの外部への突出端をロックナット44で締め付けることにより、偏心カム42は位置固定されている。
【0026】
また、ブラケット41の突出部の上端には、左右方向に貫通形成されている図示しない通し孔が設けられ、この通し孔に前後方向の位置調整を行う偏心カム43が、側方より取り付けられている。偏心カム43は、平板状のカム部43aと軸部43bより構成され、軸部43bにはネジが螺刻されており、この軸部43bを図示しない通し孔に回転可能に挿通させ、カム部43aをボックスBのつば部11aに当接させて配置されている。そして、軸部43bの外部への突出端をロックナット44で締め付けることにより、偏心カム43は位置固定されている。
ブラケット41の突出部の下端には、第1の実施形態と同様に長丸孔41aが左右方向に貫通形成されおり、この長丸孔41aにボルト27が挿通されている。
【0027】
この実施形態における位置調整は、ボルト27とロックナット44を緩め、偏心カム42を回転させることにより、偏心カム42と当接しているつば部11b(ボックスB)を上下方向に適量移動させ、耳糸開口装置40の上下方向の位置調整を行う。また、偏心カム43を回転させることにより、偏心カム43と当接しているつば部11aを前後方向に適量移動させ、耳糸開口装置40の前後方向の位置調整を行う。また、第1の実施形態と同様に、ボルト27を中心に耳糸開口装置40を回転させ、第1経糸用綜絖枠21に対する耳糸用綜絖19の前後方向の傾斜角の調整が行われる。
【0028】
この実施形態に係る織機における耳糸開口装置によれば以下の効果を奏する。
尚、第1の実施形態における(1)、(2)、(4)、(5)の効果は同じであり、それ以外の効果を記載する。
(1)ジャッキボルトに代えて偏心カム42、43を用いるだけなので、構成が簡単であり、上下方向及び前後方向の位置調整を容易に行うことができる。
【0029】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、使用する耳糸本数を2本として説明したが、2本に限らず、2〜80本程度まで使用することができ、組織に応じて適宜設定されるものである
○ 第1、第2の実施形態では、織耳組織形成用として説明したが、織布の側方において緯入れ時に緯糸端を把持する捨て耳形成用の耳糸開口装置として実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態に係る耳糸開口装置の概要構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る耳糸開口装置の全体構成を示す側面図である。
【図3】第1の実施形態に係る耳糸開口装置の全体構成を示す正面図である。
【図4】第1の実施形態に係る耳糸開口装置の調整部の要部拡大側面図である。
【図5】第1の実施形態に係る傾斜角調整を説明するための説明図である。(a)調整前の状態を示す。(b)調整後の状態を示す。
【図6】第2の実施形態に係る耳糸開口装置の調整部の要部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 耳糸開口装置
11 つば部
12 駆動モータ
15 案内体
16 摺動体
17 耳糸用綜絖枠
19 耳糸用綜絖
21 第1経糸用綜絖枠
23 調整部
24 ブラケット
27 ボルト
28、29 ジャッキボルト
31 筬
B ボックス
T 耳糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸群の側方に配置された少なくとも2本の耳糸をそれぞれ保持する耳糸用綜絖を設け、各耳糸用綜絖を駆動モータから伝達される駆動力によって相反する方向に往復移動させることにより耳糸開口を形成する耳糸開口装置の少なくとも前記耳糸用綜絖を最前列の第1経糸用綜絖枠と筬との間に配置する織機における耳糸開口装置において、
前記耳糸用綜絖を前記第1経糸用綜絖枠に対して織機の前後方向に傾斜可能に設けたことを特徴とする織機における耳糸開口装置。
【請求項2】
前記耳糸用綜絖を織機の上下方向に位置調整可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の織機における耳糸開口装置。
【請求項3】
前記耳糸用綜絖を織機の前後方向に位置調整可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の織機における耳糸開口装置。
【請求項4】
前記耳糸用綜絖の傾斜角及び位置調整を行う調整部を介して、織機の左右方向に延びる支持部に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の織機における耳糸開口装置。
【請求項5】
前記調整部は、織機の前記支持部に固定されたブラケットと、該ブラケットと前記駆動モータの収容されたボックスを固定するボルトと、前記ブラケットの上部に取り付けられ前後方向又は上下方向の位置調整用のジャッキボルトとを備えていることを特徴とする請求項4に記載の織機における耳糸開口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−262611(P2007−262611A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88250(P2006−88250)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)