説明

織物

【課題】印刷用スクリ−ン、耐熱フィルタ−、濾過用フィルタ−、セパレ−タ、安全ネット、ジオテキステイル、プリント配線基板、電磁波遮蔽透視メッシュ等に有用な引張強度が高く、軽量な織物を提供すること。
【解決手段】2重円筒構造を有するポリベンザゾール繊維を経糸及び/又は緯糸に使用してなる単位目付当たりに対する経糸方向の引張強度が0.5Nm/g以上、緯糸方向の引張強度が0.5Nm/g 以上である摩耗試験における破断までのサイクルが5200回以上である織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用スクリ−ン、耐熱フィルタ−、濾過用フィルタ−、セパレ−タ、安全ネット、ジオテキステイル、プリント配線基板、電磁波遮蔽透視メッシュ等に用いて好適な織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷用スクリ−ンはシルク、ステンレス、ナイロン、ポリエステル等のメッシュ織物を使用して製造されるが、シルクは強度、寸法安定性に問題があり、ステンレスは強度はあるものの、弾性回復性、瞬発性に問題がある上に、高価であるため、現在はポリエステルやナイロン等の熱可塑性樹脂製のものが多くなり、とくに寸法安定性に優れる点、低価格である点でポリエステル製のものが多用化されている。
【0003】
しかしながら、最近の電子回路の印刷分野においては印刷精度の向上に対する要求がますます厳しくなってきており、高強度で高弾性率を有する繊維からなるスクリ−ン紗が要求されている。かかる高強度・高弾性率を有する繊維としてス−パ−繊維、たとえば全芳香族系ポリアミド繊維、全芳香族系ポリエステル繊維、炭素繊維等が挙げられるが、全芳香族系ポリアミド繊維は吸湿性による寸法安定性が劣るという問題点、全芳香族系ポリエステル繊維はインキ通過性、乳剤の塗布性等が劣るという問題点、炭素繊維は折れやすいという問題点を抱えていた。最近例えば特開平10−331048号公報等に示されているように繊度の小さいモノフィラメントのポリベンザゾール繊維を用いて上記の問題を解決しようとした試みも開示されている。モノフィラメントポリベンザゾール及びその製造方法に付いては特開平8−27622号公報に開示がある。精密な印刷を実現するためには、印刷中にスクリーン紗から発生するスカムを抑えることが最重要課題である。しかし、このスカムの発生はポリベンザゾール繊維等の剛直繊維表面のフィブリル化の進行に伴う繊維構造に内在する問題であり、これを解決して耐刷性の向上を図るためには繊維構造の設計、ひいては繊維そのものの製造方法から見直す必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子回路の印刷のような精密な印刷を行うためには、繊度の小さいモノフィラメントを用い、オ−プニングエリアを大きく取る必要がある。上述の全芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリエステル、ポリベンザゾールからなる繊維を使用したスクリ−ン紗の強度、弾性率は、織物組織にもよるが、精密印刷用としては不十分で実用化に至っていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述のス−パ−繊維からなる織物、たとえば、該織物を精密印刷用スクリ−ン紗として使用した時の問題点を解決したものであり、織物の経糸方向および緯糸方向の単位目付当たりの引張強度に着目してなされたものである。すなわち、本発明は下記の構成からなる。
(1)熱分解温度が200℃以上の高耐熱性であり鉱酸に溶解する有機顔料を繊維中に含んでいる2重円筒構造を有するポリベンザゾール繊維を経糸及び/又は緯糸に使用してなる織物であって、単位目付当たりに対する経糸方向の引張強度が0.5Nm2/g以上、緯糸方向の引張強度が0.5Nm2/g 以上であることを特徴とする織物。
(2)ポリベンザゾール繊維が、円筒構造の内側の断面径の比率が繊維の全径にたいして10%以上90%以下である(1)に記載の織物。
(3)繊維中に含有される有機顔料がその分子構造中に−N=及び/又はNH−基を有することを特徴とする2重円筒構造を有するポリベンザゾール繊維からなる(2)に記載の織物。
(4)繊維中に含有される有機顔料がペリノン及び/又はペリレン類であることを特徴とする2重円筒構造を有するポリベンザゾール繊維からなる(3)に記載の織物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の織物は経糸方向および緯糸方向の引張強度が高く、また、該織物を構成する繊維自体の引張強度も高く、たとえば精密印刷用のスクリ−ン等に好適に使用できる。また、土木用強化材として使用する場合には軽量でありながら強く、透水性にも優れたものがえられるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。電線コードが外力によって電気導通に遮断を生じるのはコード内の芯部が破断する前に銅線が破断するからであり、特開平1−107415号公報によればこの銅線の破断は該電線コードを形成する芯部と銅線との間の静摩擦抵抗係数を少なくとも0.20以上にすればこの電気導通の遮断の問題は回避できるとしている。ポリベンザゾール繊維はこの要件を満たす繊維の一つであり、該繊維を使用すれば繊維または/および銅線に静摩擦抵抗係数の高い樹脂の被覆を施す必要はなく、樹脂を使用しないことで作業性ひいては製品価格の面で有利となる。またポリベンザゾール繊維は高強力ポリオレフィン系繊維に比して高い接着性を有しており樹脂を絶縁体として被覆した電線コードにおける接着性つまり層間剥離は高強力ポリオレフィン系繊維を使用した場合ほどには問題にならない。
【0008】
以下本発明を繊維の製造法を述べる。
本発明における熱分解温度が200℃以上の高耐熱性を有し鉱酸に溶解する有機顔料として不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、染色レーキ、イソインドリノン類、イソインドリン類、ジオキサジン類、ペリノン及び/又はペリレン類、フタロシアニン類、キナクリドン類等が挙げられる。その中でも分子内に−N=及び/又はNH−基を有するものが好ましく、より好ましくはジオキサジン類、ペリノン及び/又はペリレン類、フタロシアニン類、キナクリドン類である。
【0009】
ペリノン及び/又はペリレン類としては、ビスベンズイミダゾ[2,1−b:2’、1’−i]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリンー8,17−ジオン、ビスベンズイミダゾ[2,1−b:1’、2’−j]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリンー6,9−ジオン、2,9−ビス(p−メトキシベンジル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ビス(p−エトキシベンジル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ビス(3,5−ジメチルベンジル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ビス(p−メトキシフェニル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ビス(p−エトキシフェニル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ビス(3,5−ジメチルフェニル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ジメチルアントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、2,9−ビス(4−フェニルアゾフェニル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリンー1,3,8,10(2H,9H)−テトロン、8,16−ピランスレンジオン等があげられる。
これらのペリノン類の1つまたは2つ以上の化合物の併用もあり得る。添加量はポリベンザゾールに対して0.01%〜20%、好ましくは0.1%〜10%である。
【0010】
フタロシアニン類としては、フタロシアニン骨格を有していればその中心に配位する金属の有無および原子種は問わない。これらの化合物の具体例としては、29H,31H−フタロシアニネート(2−)−N29,N30,N31,N32銅、29H,31H−フタロシアニネート(2−)−N29,N30,N31,N32鉄、29H,31H−フタロシアニネート−N29,N30,N31,N32コバルト、29H,31H−フタロシアニネート(2−)−N29,N30,N31,N32銅、オキソ(29H,31H−フタロシアニネート(2−)−N29,N30,N31,N32),(SP−5−12)チタニウム等があげられる。また、これらのフタロシアニン骨格が1個以上のハロゲン原子、メチル基、メトキシ基等の置換基を有していてもよい。
これらのフタロシアニン類の1つまたは2つ以上の化合物の併用もあり得る。添加量はポリベンザゾールに対して0.01%〜20%、好ましくは0.1%〜10%である。
【0011】
キナクリドン類としては、5,12−ジヒドロー2,9−ジメチルキノ[2,3−b]アクリジンー7,14−ジオン、5,12−ジヒドロキノ[2,3−b]アクリジンー7,14−ジオン、5,12−ジヒドロー2,9−ジクロロキノ[2,3−b]アクリジンー7,14−ジオン、5,12−ジヒドロー2,9−ジブロモキノ[2,3−b]アクリジンー7,14−ジオン等があげられる。
これらのキナクリドン類の1つまたは2つ以上の化合物の併用もあり得る。添加量はポリベンザゾールに対して0.01%〜20%、好ましくは0.1%〜10%である。
【0012】
ジオキサジン類としては9,19−ジクロロ−5,15−ジエチル−5,15−ジヒドロジインドロ[2,3−c:2’,3’−n]トリフェノジオキサジン、8,18−ジクロロ−5,15−ジエチル−5,15−ジヒドロジインドロ[3,2−b:3’,2’−m]トリフェノジオキサジン等が挙げられる。これらのジオキサジン類の1つまたは2つ以上の化合物の併用もあり得る。添加量はポリベンザゾールに対して0.01%―20%、好ましくは0.1%―10%である。
【0013】
また、ペリレン類、ペリノン類、フタロシアニン類、キナクリドン類、およびジオキサジン類の2つまたは3つ以上の化合物の併用も可能である。
勿論本発明技術内容はこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明におけるポリベンザゾール繊維とは、ポリベンザゾールポリマーよりなる繊維をいい、ポリベンザゾール(PBZ)とは、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、またはポリベンズイミダゾール(PBI)から選ばれる1種以上のポリマーをいう。本発明においてPBOは芳香族基に結合されたオキサゾール環を含むポリマーをいい、その芳香族基は必ずしもベンゼン環である必要は無い。さらにPBOは、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)や芳香族基に結合された複数のオキサゾール環の単位からなるポリマーが広く含まれる。同様の考え方は、PBTやPBIにも適用される。また、PBO、PBT及び、またはPBIの混合物、PBO、PBT及びPBIのブロックもしくはランダムコポリマー等のような二つまたはそれ以上のポリベンザゾールポリマーの混合物、コポリマー、ブロックポリマーも含まれる。好ましくは、ポリベンザゾールは、鉱酸中、特定濃度で液晶を形成するライオトロピック液晶ポリマーである。
【0015】
PBZポリマーに含まれる構造単位としては、好ましくはライオトロピック液晶ポリマーから選択される。当該ポリマーは構造式 (a)〜(i)に記載されているモノマー単位から成る。
【化1】

【0016】
ポリベンザゾール繊維は、ポリベンザゾールポリマーの溶液(PBZポリマードープ)より製造されるが、当該ドープを調製するための好適な溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解しうる非酸化性の鉱酸が挙げられる。好適な非酸化性鉱酸の例としては、ポリリン酸、メタンスルホン酸および高濃度の硫酸あるいはそれらの混合物が挙げられる。その中でもポリリン酸及びメタンスルホン酸が、最も好ましくはポリリン酸である。
【0017】
ドープ中のポリマー濃度は、1〜30%、好ましくは1〜20%である。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取り扱い性により限定される。それらの限界要因のために、ポリマー濃度は通常では20重量%を越えることはない。
【0018】
本発明において、好適なポリマーまたはコポリマーとドープは公知の方法で合成される。例えばWolfeらの米国特許第4,533,693号明細書(1985.8.6)、Sybertらの米国特許第4,772,678号明細書(1988.9.22)、Harrisの米国特許第4,847,350号明細書(1989.7.11)またはGregoryらの米国特許第5,089,591号明細書(1992.2.18)に記載されている。要約すると、好適なモノマーは非酸化性で脱水性の酸溶液中、非酸化性雰囲気で高速撹拌及び高剪断条件のもと約60℃から230℃までの間で段階的または一定昇温速度で温度を上げることで反応させられる。
【0019】
この様にして重合されるドープは紡糸部に供給され、紡糸口金から通常100℃以上の温度で吐出される。口金細孔の配列は通常円周状、格子状に複数個配列されるが、その他の配列であっても良い。口金細孔数は特に限定されないが、紡糸口金面における紡糸細孔の配列は、紡出糸条(ドープフィラメント)間の融着などが発生しないような孔密度を保つことが肝要である。
【0020】
紡出糸条は十分な延伸比(SDR)を得るため、米国特許第5296185号に記載されたように十分な長さのドローゾーン長が必要で、かつ比較的高温度(ドープの固化温度以上で紡糸温度以下)の整流された冷却風で均一に冷却されることが望ましい。ドローゾーンの長さ(L)は非凝固性の気体中で固化が完了する長さが要求され、大雑把には単孔吐出量(Q)によって決定される。良好な繊維物性を得るにはドローゾーンの取り出し応力がポリマー換算で(ポリマーのみに応力がかかるとして)2.2g/dtex以上が望ましい。
【0021】
本発明においては、上記で得られたポリベンザゾールのドープフィラメント(延伸又は未延伸)は、ポリベンザゾールに非相溶の液体によって蒸気処理することが必要である。
【0022】
ポリベンザゾールに非相溶の液体とは、水、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコールの少なくとも1種である。簡便性の点で、水が好ましい。
蒸気処理とは、これらの液体の蒸気を含む気体(空気)相にドープフィラメントを接触させるか通過させることよってドープフィラメントの主に表層部を凝固させるのである。
蒸気相の温度は、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃、もっとも好ましくは75〜135℃である。蒸気相中の全気体成分に対して蒸気成分の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。蒸気相温度が低すぎると、シース層の厚みが発達せず目的のシース・コア構造が発現せず、所期の目的を達することができない。逆に温度が高すぎるとシース・コア構造は発現するが、通過中のフィラメントの温度も上昇するため、糸切れが多発する傾向がある。蒸気の含有率についても、低すぎるとシース・コア構造を発現せず好ましくない。蒸気処理する装置は、ドープフィラメントが蒸気に接触し、表層部の凝固を進行させることができるものであればよく、連続式、非連続式、密閉形、非密閉形など特に限定されない。
い。
【0023】
蒸気相を通過したフィラメントは、次に抽出(凝固)浴に導かれて、ポリベンザゾールの溶剤の抽出とフィラメントの完全な凝固がなされる。抽出浴は、特に限定されず、如何なる形式の抽出浴でも良い。例えばファンネル型、水槽型、アスピレータ型あるいは滝型などが使用出来る。最終的に抽出浴においてフィラメント中に残存する溶剤が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下になるように抽出する。本発明における抽出媒体として用いられる液体に特に限定はないが、好ましくはポリベンザゾールに対して実質的に相溶性を有しない水、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコール等である。抽出液は燐酸水溶液や水が簡便で望ましい。また抽出(凝固)浴を多段に分離し燐酸水溶液の濃度を順次薄くし最終的に水で水洗する方法も採用できる。また、抽出(凝固)工程において、フィラメント束を水酸化ナトリウム水溶液などで中和処理して後、水洗することは好ましい方法である。この後乾燥、熱処理を施して目的のシース・コア構造を持つ繊維とすることができる。
【0024】
乾燥温度は繊維強度の低下をもたらさない温度とし、具体的には150℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下、更に好ましくは220℃以上270℃以下とする。弾性率を向上させる目的で、必要に応じて張力下にて熱処理を施しても良い。熱処理温度については、400℃以上700℃以下、好ましくは500℃以上680℃以下、更に好ましくは550℃以上630℃以下とする。かける張力は0.3〜1.2g/d、好ましくは0.5〜1.1g/d、さらに好ましくは0.7〜1.0g/dである。
【0025】
本発明に係るポリベンザゾール繊維の第一の特徴は、有機顔料を含んでいることであり、これにより、温度80℃相対湿度80%雰囲気下で700時間暴露した後の引張強度保持率が85%以上を達成できる。ここでいう有機顔料は前述のごとく熱分解温度が200℃以上であり、鉱酸に溶解するものであり、好ましくはその分子構造中に−N=及び/又はNH−を有する顔料である。より好ましくは、ペリノン及び/又はペリレン類、フタロシアニン類、キナクリドン類、またはジオキサジン類である。また、鉱酸とは、メタンスルフォン酸またはポリリン酸である。
【0026】
これらの有機顔料を糸中に含有させる方法としては、特に限定されず、ポリベンザゾールの重合のいずれの段階または重合終了時のポリマードープの段階で含有させることができる。例えば、有機顔料をポリベンザゾールの原料を仕込む際に同時に仕込む方法、段階的または一定昇温速度で温度を上げて反応させている任意の時点で添加する方法、また、重合反応終了時に反応系中に添加し、撹拌混合する方法が好ましい。
【0027】
本発明の第二のポイントは、延伸されたドープフィラメントをまず蒸気で凝固した後、フィラメント中に残った燐酸などの溶剤を抽出することにある。このような、蒸気で凝固した後に液体で溶剤を抽出することで、シース層の厚みが従来になく厚い特殊なシース・コア型構造を呈するようになり、屈曲に対する耐久性が向上する。
この屈曲に対する耐久性が向上する理由は明確ではないが、蒸気の作用でシース層の結晶の配向が適度に乱れて繊維表層の方向性や特定方向への応力集中が緩和され、フィブリル化が抑制されるためと推察できる。
【0028】
本発明のポリベンザゾール繊維におけるシース層とコア層との簡便な判別は、繊維断面を光学顕微鏡で観察することによって可能である。すなわち、繊維断面を光学顕微鏡で観察できる厚さに切断し、光学顕微鏡で40倍程度に拡大して観察すると、シース層とコア層の境界が円形の線として認められる。この円形の線の外側がシース層で、内側がコア層である。
【0029】
本発明のポリベンザゾール繊維におけるシース層とコア層との比率、すなわち、繊維断面方向におけるコア層の平均径(r)の、繊維全断面径(r)に対する比率R=(r/r)×100は、10〜90%であることが必要であり、好ましくは 20〜80%である。
R(コア比率)が10%未満では、耐屈曲性能が不十分であり、逆にコア層が90%以上では、繊維強度が不十分であり好ましくない。
【0030】
電子線回折から求めたS1/ S2は0.1〜0.8、好ましくは0.2〜0.7である。0.1未満では耐屈曲性能が不十分であり、逆に0.8を超えると繊維強度が不十分であり好ましくない。
【0031】
ポリベンザゾール繊維の繊度は用途によって適宜設定することができる。たとえば本発明の織物を10メッシュ以上の印刷スクリ−ン(紗)に使用する場合には、モノフィラメントでの使用となるので、繊維直径が5〜1000μm、とくに精密印刷用に使用される場合には繊維直径が5〜50μmが好ましい。土木用補強材として使用する場合にはモノフィラメントの形態でポリベンザゾール繊維を経糸及び/又は緯糸として使用してもよいが、マルチフィラメントの形態で使用してもよい。マルチフィラメントの形態で使用する場合は、該マルチフィラメント100%がポリベンザゾール繊維で構成されていてもよく、他の熱可塑性ポリマ−からなる繊維と複合化された形態で構成されていてもよい。複合化された形態の場合、織物としての経糸方向および緯糸方向の各々の引張強度が本発明を満足する上で、少なくとも50重量%以上がポリベンザゾール繊維であることが好ましい。そして、マルチフィラメントとしての総繊度は500〜10000デニ−ル、とくに1000〜3000デニ−ルが好ましい。さらに、本発明の織物は経糸または緯糸のどちらか一方にモノフィラメントを適用した構造のものでもよく、無論、経糸および緯糸双方がモノフィラメントで構成された織物、経糸および緯糸双方がマルチフィラメントで構成された織物すべてを含むものである。
【0032】
一般に高強度・高弾性率を有する繊維は通常、繊維表面がフィブリル化しやすい傾向にあるが、本発明に使用されるポリベンザゾール繊維は高強度・高弾性率を有しているものの、製造方法の説明で詳しく述べたような繊維表面の構造的特徴のために繊維表面のフィブリル化は生じにくい。そのため製織する際に繊維表面のフィブリル化がほとんどないので、織目に該フィブリル化物が詰まったりすることがなく、織物表面が平滑であることがより一層求められる精密印刷用スクリ−ンとして本発明の織物を使用する場合に好適である。さらにより一層の表面平滑を付与するために、ポリベンザゾール繊維に熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン及び/又はフッソ系樹脂を被覆することが好ましい。
【0033】
該熱可塑性樹脂としてはポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレ−ト等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリエ−テルイミド;ポリエ−テルケトン;ポリエ−テルエ−テルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリエ−テルスルフォン;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどを挙げることができるが、中でも融点が120℃以上のポリマ−を使用することが好ましい。これらの熱可塑性樹脂中には難燃剤、撥水剤、制電剤、除電剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0034】
該熱可塑性樹脂をポリベンザゾール繊維に被覆する方法としては、溶融した熱可塑性樹脂の浴にポリベンザゾール繊維を浸漬する溶融ディップ法、溶融した熱可塑性樹脂とポリベンザゾール繊維(モノフィラメント)を1つのノズル孔を通して繊維表面に樹脂を被覆する溶融押出被覆法(カバ−ヤ−ン法)、溶媒に溶解させた樹脂を浴にいれてその中をポリベンザゾール繊維を通す溶解ディップ法等を挙げることができ、ポリベンザゾール繊維表面に均一に熱可塑性樹脂が被覆され得る方法であればいずれをも採用できる。ポリベンザゾール繊維はモノフィラメント、マルチフィラメントのいずれの形態で樹脂を被覆してもよい。マルチフィラメントの場合には、マルチフィラメントを構成する単位の1つであるモノフィラメントの周囲に熱可塑性樹脂が被覆されていれば、単位のモノフィラメントが複数固着していてもよいが、マルチフィラメントの可撓性の点で単位のモノフィラメントが離れているほうが好ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂で被覆されたポリベンザゾール繊維を用いて製織された織物はホットロ−ルプレス等の手段で経糸および緯糸の交点を熱接着することにより、織物の目ズレを防止したり、織物強度を高めることができる。
【0036】
またポリシロキサンとは鎖状オルガノポリシロキサンを示し、25℃下での粘度が5〜200000センチポイズのジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、変性ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0037】
ポリシロキサンのポリベンザゾール繊維への被覆量は、繊維表面を均一に斑なく覆うことができる量であればよく、たとえば、繊維重量に対して0.1重量%以上であればよく、とくに4〜20重量%であることが好ましい。
【0038】
また、上述のフッ素系樹脂としてはテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCFE)等を挙げることができ、これらの樹脂を乳化剤等を添加したエマルジョンの状態で使用する。具体的には、フッ素系樹脂のエマルジョンをポリベンザゾール繊維に10〜50重量%付着させた後、350℃以上の温度で加熱焼成して繊維表面に弗素系樹脂を被覆することができる。繊維への付着手段は上記のポリシロキサンの付着手段と同じ方法を挙げることができる。
【0039】
さらには、上述のポリシロキサンとフッ素系樹脂とを別々に2段付着、あるいは混合液として1段付着させて加熱焼成することも可能である。かかる場合、ポリシロキサンとフッ素系樹脂との繊維への付着量は、合計で1重量%以上であることが好ましく、1〜20重量%、とくに3〜10重量%が好適である。そして、ポリシロキサンとフッ素系樹脂との混合割合は前者:後者=1:9〜9:1(重量比)、とくに5:5〜9:1であることが好ましい。
【0040】
上述の繊維表面への樹脂の被覆は繊維の形態で被覆してもよく、織物に製織した後に被覆してもよい。
【0041】
本発明の織物は、上述のモノフィラメント及び/又はマルチフィラメントを使用して作製されるが、織り方は用途に応じて適宜設定されるものである。たとえば、印刷用スクリ−ンとしての使用を目的とする場合には、ポリベンザゾール繊維のモノフィラメントを経糸および緯糸として使用して製織し、プレセット、ソ−ピング、熱加工して所定の厚みとメッシュ数のものを製造することができる。スクリ−ンとして使用する場合の織密度は経糸緯糸共に通常10〜600本/インチ(10〜600メッシュの平織)であるが、印刷用インキの供給量や絵柄の線幅に応じて適宜選択すればよい。好ましい織密度は、200〜500メッシュで、高精度の印刷では300〜450メッシュの織密度が好ましい。
【0042】
ついで紗張工程に供されるが、スクリ−ン枠は木製、金属製、樹脂製のいずれでもよく、とくにアルミ製のものが耐久性、作業性、耐薬品性の点から好ましい。かかるスクリ−ンは、ポリベンザゾール繊維を構成要件としているので、高いテンションで紗張を行うことができるとともに、紗張後の経時変化が少ないので、次工程である乳剤の塗布工程で放置する時間は短くてすみ、一晩放置で十分である。紗張工程を経たスクリ−ンは感光性、または感熱性樹脂、乳剤の塗布に供される。感光性または感熱性樹脂としては、重クロム酸アンモニウム塩等の重クロム酸塩類、各種のジアゾ化合物、S.B.Q系感光剤、アクリルモノマ−感光剤等が使用され、乳剤樹脂としてはゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル系樹脂など、あるいはこれらの混合物が使用され、これらに乳化剤、帯電防止剤等の添加剤を加えて感光性または感熱性樹、脂乳剤が形成される。
【0043】
塗り重ねにより所望の厚みになるように乳剤を塗布した後、乾燥されたスクリ−ンは露光または加熱工程によって最終的に仕上げられる。パタ−ンの焼き付けは使用する乳剤によって異なるが、通常は高圧水銀ランプ、キセノンランプ等を光源に用い、1〜1.5m程度の距離で2〜5分間露光することによって成される。未感光部分は水に浸漬後、水スプレ−等で除去する。
【0044】
上述のスクリ−ンはポリベンザゾール繊維を構成要件としているので、紗テンションを高くすることができ、弾性回復性、寸法安定性も良好であることから、とくに繊維直径が10〜70μm、さらには35μm以下のモノフィラメントを使用し、300メッシュ以上、とくに400メッシュ以上の高密度スクリ−ンを製造することができる。
【0045】
本発明の織物を土木用強化材として使用する場合は、その織り方に制限はなくまた、ポリベンザゾール繊維の繊度も目的に応じて適宜選択することができる。鉄道、道路等の盛土築堤用や地盤改良用および山岳斜面の改良、河岸部や海岸部の護岸用に使用される場合、とくに軟弱地盤表層処理、水中堤体不等沈下防止、洗掘、吸出防止、フィルタ−材、ドレ−ン材、さらには土嚢等に使用される場合には、織物の厚みを薄くして目付を小さくすることで該織物の透水性を高めることができる。本発明の織物は上述のようにポリベンザゾール繊維を使用しているので高引張強度を有し、織物の厚みを薄くすることで透水性をも高めることができ、さらには織物の厚みを薄くしても砂の栽荷荷重に十分耐えることができる。
【0046】
以上、本発明の織物の用途を印刷用スクリ−ンおよび土木用強化材について説明したが、本発明の織物の用途はこられに限定されるものではなく、耐熱フィルタ−、濾過フィルタ−等のフィルタ−、セパレ−タ、電磁波遮蔽透視メッシュ、安全ネット、プリント配線基板材料、プラスチック補強材、セメント補強材、ゴム補強材等の産業資材分野に幅広く使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下に実例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の主旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
【0048】
評価方法は、以下の通りである。
高温かつ高湿度下における強度低下の評価は、直径10cmの紙管に繊維を巻き付けた状態で恒温恒湿器中で高温かつ高湿度保管処理した後、サンプルを取り出し、室温にて引張試験を実施、処理前の強度に対する処理後の強度保持率で評価を行った。なお、高温高湿度下での保管試験にはヤマト科学社製Humidic Chamber 1G43Mを使用し、80℃、相対湿度80%の条件下にて700時間処理を実施した。
【0049】
金属濃度測定:フィラメント中の残留リン濃度は、試料をペレット状に固めて蛍光X線測定装置(フィリップスPW1404/DY685)を用いて測定し、ナトリウム濃度は中性子活性化分析法で測定した。
【0050】
光暴露試験:水冷キセノンアーク式ウェザーメーター(アトラス社製、形式Ci35A)を使用し、金属フレームにフィルムを固定して装置にセットし、内側フィルターガラスに石英、外側フィルターガラスにボロシリケート、タイプSを使用し、放射照度:0.35W/m2(at 340nm)、ブラックパネル温度:60℃±3℃、試験槽内湿度:50%±5%で100時間連続照射を行った。
【0051】
(極限粘度)
メタンスルホン酸を溶媒として、0.5g/lの濃度に調製したポリマー溶液の粘度をオストワルド粘度計を用いて25℃恒温槽中で測定した。
(繊維断面観察の方法)
サンプル繊維をガタン社製のG―2エポキシ樹脂に胞埋したものを、日本電子(株)製クロスセクションポリッシャーSM−09010にてアルゴンイオンエッチングして、観察用繊維断面を得た。次いで、光学顕微鏡によってコア層とシース層との境界線を観察し、コア層の平均径(r)と繊維全断面径(r)とを測定し、コア層の平均径(r)の繊維全断面径(r)に対する比率(R%)を求めた。
R(%)=(r/r)×100
【0052】
(屈曲性の評価:相対結節強度比の測定)
標準状態(温度:20±2℃、相対湿度(RH)65±2%)の試験室内に24時間以上放置後、繊維の引張強度、弾性率、結節強度を、JIS L 1015に準じて引張試験機にて測定した。なお、結節強度は、試料のつかみ間隔の中央に、Z撚りの本結びを1個作った状態で、引張試験して測定した。相対結節強度比は下記の式を用いて求めた。
相対結節強度比率E(%) =(結節強度/繊維強度)×100
【0053】
強度保持率は、高温高湿度保管前後の引張強度を測定し、高温高湿度保管試験後の引張強度を高温高湿度保管試験前の引張強度で除して求めた。
【0054】
(電子線回折の測定)
繊維を薄く切って作った超薄切片の制限視野電子線回折像を測定することで求める。単繊維と硬化剤を混合した電子顕微鏡切片作成用エポキシ樹脂(Spurrエポキシレジン)で包埋したものを摂氏70度のオーブン中で一夜放置し固化固定する。次にこのレジンブロックをライヘルト社製のウルトラマイクロトームに取り付け、ガラスナイフを用いて包埋した繊維がブロック表面近傍に現れるまで研磨する。次にダイアトーム社製ダイアモンドナイフを用いて超薄切片を作成した後、300メッシュの銅グリッド上に回収し薄くカーボン蒸着を施す。電子顕微鏡内に超薄切片を入れ、繊維の中心と表面の両方を併せ持つ切片を探しだし、表面と中心の両方について制限視野電子線回折像を撮影する。制限視野(アパチャー)の径は1μm以下とする。電子線回折の記録はイメージングプレートシステム(JEOL PixsysTEM)を用いて記録する。得られた電子線回折図形から得た赤道方向のプロファイルを、ローレンツ関数を用いて近似して、(200)、(010)、(−210)由来の回折の積分強度(面積)を算出する。(200)の面積をS1、(010)と(−210)の面積の和をS2とする。
【0055】
(実施例1)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩334.5g,テレフタル酸260.8g,122%ポリリン酸2078.2gを60℃で30分間撹拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で20時間、150℃で5時間、170℃で20時間反応せしめた。得られた30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が30dL/gのポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)ドープ2.0kgに29H,31H−フタロシアニネート(2−)−N29,N30,N31,N32銅15.2gを添加して撹拌混合した。その後、ドープは金属網状の濾材を通過させ、次いで2軸から成る混練り装置で混練りと脱泡を行った後、昇圧させ、重合体溶液温度を170℃に保ち、孔数166を有する紡糸口金から170℃で紡出し、温度60℃の冷却風を用いて吐出糸条を冷却した後、さらに自然冷却で40℃まで吐出糸条を冷却した後、まず温度120℃、蒸気分率100%に調整した蒸気層に、引きつづき凝固浴中に導入した。凝固液及びその温度を変えて繊維を作成した。次に繊維をゴゼットロールに巻き付け一定速度を与えて第2の抽出浴中でイオン交換水で糸条を洗浄した後、0.1規定の水酸化ナトリウム溶液中に浸漬し中和処理を施した。更に水洗浴で水洗した後、巻き取り、80℃の乾燥オーブン中で乾燥し繊維中に含まれる水分率が2%以下になるまで放置した。繊維のRはR=50%であった。
次に、この様にして得られたポリベンザゾ−ル繊維を分繊して得たモノフィラメントを経糸および緯糸に使用し、スルザ−織機で300メッシュに製織してメッシュ織物を得た。製織性は良好でオサやヘルド等にもスカム等のフィブリル化物の発生は見られなかった。このメッシュ織物をアルミフレ−ムに張り、ポリビニルアルコール−酢酸ビニル系の感光乳剤(NK−14、カ−レ−社製)を塗布し、乾燥後に高圧水銀ランプで露光し、線幅80μmのパタ−ンを焼き付け、未感光部分は水洗除去してスクリ−ンを作製した。このスクリ−ンを用いてガラス板にパタ−ンを6000回印刷したところ、線幅80μmのパタ−ンがほとんどずれることなく鮮明に印刷されていた。結果を表1にまとめる。
【0056】
【表1】

【0057】
(比較例1)
東洋紡績株式会社製ザイロンASを用いて実施例1と同じ条件でスクリーンを作成した。5000回印刷した時点でスカムによる目詰まりのため印刷したパターンの線が所々でつぶれていた。結果を表1にまとめる。なお断面観察の結果該繊維は一重円筒構造(R=0%)であった。
【0058】
(比較例2)
東レ・デュポン株式会社製ケブラー29を用いた以外は実施例1と同様にしてメッシュ織物を作製した。製織性は良好であったが、得られた織物の強度はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維に比べて弱く、伸度の大きいものであった。該メッシュ織物からスクリ−ンを実施例1と同様にして作製して印刷したが、2000回を越えた時点で伸度が大きいためパタ−ンがずれて印刷されていた。結果を表1にまとめる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の織物は経糸方向および緯糸方向の引張強度が高く、また、該織物を構成する繊維自体の引張強度も高く、たとえば精密印刷用のスクリ−ン等に好適に使用できる。また、土木用強化材として使用する場合には軽量でありながら強く、透水性にも優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解温度が200℃以上の高耐熱性であり鉱酸に溶解する有機顔料を繊維中に含んでいるシース・コア型ポリベンザゾール繊維を経糸及び/又は緯糸に使用してなる織物であって、単位目付当たりに対する経糸方向の引張強度が0.5Nm/g以上、緯糸方向の引張強度が0.5Nm/g 以上であることを特徴とする織物。
【請求項2】
シース・コア型ポリベンザゾール繊維が、円筒構造の内側の断面径の比率が繊維の全径にたいして10%以上90%以下である請求項1に記載の織物。
【請求項3】
繊維中に含有される有機顔料がその分子構造中に−N=及び/又はNH−基を有することを特徴とするシース・コア型ポリベンザゾール繊維からなる請求項2に記載の織物。
【請求項4】
繊維中に含有される有機顔料がペリノン及び/又はペリレン類であることを特徴とするシース・コア型ポリベンザゾール繊維からなる請求項3に記載の織物。

【公開番号】特開2008−291400(P2008−291400A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138976(P2007−138976)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】