説明

繰出容器

【課題】収容物を少量ずつ必要に応じた量だけ突出することができ、一旦突出した先端部の内部への再収納が防止され、その結果収容物に無駄な移動による亀裂等の損傷が起こることを確実に防止することができ、しかも組み付け操作が容易な繰出容器を提案する。
【解決手段】筒状のケース体B内に回転軸12を起立してケース体に対する相対回転が可能に装着した回転体Aと、ケース体及び回転軸に対して昇降可能に装着するとともに、ケース体に対する回転体の相対回転で昇降する中皿Cと、回転体の頂板部11裏面より装着するとともに、頂板部11裏面に基板51を嵌着固定し、且つ、頂板部11に穿設した挿通窓17を介してその上方に係合爪55を延設した回転規制部材Dとを備え、ケース体B内周下端部に周方向複数突設したラチェット歯30と係合爪55とで、回転体Aのケース体Bに対する相対回転方向を、中皿Cの上昇方向のみに規制する回転方向規制機構を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
繰出容器として、例えば、棒状化粧品を出し入れできる形態のものが一般的に知られており、これらの棒状化粧品として、例えば口紅やリップクリーム等が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照)
【0003】
特許文献1に記載された繰出容器は、下部を把持部とした主筒と、主筒外周に回動可能に嵌合させた嵌合筒と、主筒内に上下動可能に嵌合させるとともに、棒状化粧品の下端部を固定した化粧品固定筒とを備え、主筒と回動筒の相対回動により化粧品固定筒が上下動する昇降機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−009943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の繰出容器は、上記した如く、一般に棒状化粧品が上下動可能に収納されたものであり、突出した棒状化粧品を使用後に再び収納する如く構成しているが、棒状化粧品の中には一回の使用量が比較的多く、突出した部分を略使い切ってしまうものも存在する。従って、その様な場合には化粧品の昇降機構は必要なく、昇機構のみあれば足りることとなる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、棒状の収容物を少量ずつ必要に応じた量だけ突出することができて、一旦突出した先端部の内部への再収納が防止され、その結果、収容物に無駄な移動による亀裂等の損傷が起こることを確実に防止することができ、しかも構造が簡単である繰出容器を提案する。
【0007】
また、上記機能を発揮するとともに、収容物の量を極力多くすることができる繰出容器を提案する。更に、上記機能を発揮するとともに、収容物に対する気密性をより確実に発揮することができる繰出容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、筒状の把持部10より延設した頂板部11中央に回転軸12を起立した回転体Aと、中央部に回転軸12を収納して頂板部11上面周縁部に回転可能に載置するとともに、内周面下部を回転軸12外面に抜け出しを防止して回転可能に係合させた上下端開口のケース体Bと、回転軸12外面及びケース体B内面とのいずれか一方と螺合させ、いずれか他方と相互の回転を防止して上下動可能に嵌合させた中皿Cと、頂板部11裏面より装着するとともに、頂板部11裏面に基板51を嵌着固定し、且つ、頂板部11に穿設した挿通窓17を介してその上方に係合爪55を延設した回転規制部材Dとを備え、ケース体B内周下端部に周方向複数突設したラチェット歯30と係合爪55とで、回転体Aのケース体Bに対する相対回転方向を、中皿Cの上昇方向のみに規制する回転方向規制機構を構成した。
【0009】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、上記回転規制部材Dを、頂板部11裏面に垂設した係止筒19に中央の透孔50を嵌合させて基板51を嵌着固定し、頂板部11に穿設した円弧状の挿通窓17を介してその上方まで起立した支柱53の上部に円弧状の腕部54を延設し、腕部54の自由端外面に係合爪55を突設して構成した。
【0010】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第2の手段に於いて、挿通窓17を頂板部11の対向位置に一対形成し、支柱53,腕部54,係合爪55を対向位置にそれぞれ一対形成した。
【0011】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第2の手段又は第3の手段のいずれか1つの手段に於いて、回転体Aの把持部10内周に廻止突部20を突設し、該廻止突部20に係合する廻止凹部52を基板51縁部に凹設した。
【0012】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれか1つの手段に於いて、中皿Cを、ケース体B内周面との間に相互の回転を防止して上下動可能に外周面を嵌合した外筒40を備えるとともに、外筒40からフランジ状の底板41を介して起立した内筒42を回転軸12外周面に螺着して構成し、中皿C上方の回転軸12外周部から回転軸12上部に亘り収容物Fを充填する如く構成した。
【0013】
第6の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれかの手段に於いて、回転体Aが、回転軸12をケース体B内下部に起立収納した回転体Aであり、中皿Cを、回転軸12の外面に相互の回転を防止して上下動可能に嵌合させた作用筒46を底板41裏面より垂設するとともに、底板41外周縁をケース体B内周に液密摺動可能に嵌合させ、且つ、作用筒46外面の雄螺子90をケース体B内面に突設した雌螺子74に螺合させて構成し、底板41上方に収容物Fを充填する如く構成した。
【0014】
第7の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第6の手段に於いて、雌螺子74を、ケース体Bの内周下部に上方より嵌着固定した筒状基部70の内面に環状支持突起73を介して突設した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器が収容物Fを上昇させる方向にしか機能せず、特に一部を使用した使用途中の場合に中皿Cが下方へ下降して収容物Fが無用に下降したりすることがなく、その結果、収容物Fの無駄な動きを極力排除して不必要な動きから生じる不必要な摩擦から亀裂等が生じることを極力防止できる。また、筒状の把持部10を備えているため、回転体Aの回転が行い易い。更に、回転規制部材Dは、頂板部11裏面より装着する如く構成されているため、容器の組み付け操作の際に回転規制部材Dを装着しない状態では、ケース体Bに対する回転体Aの回転方向は特定されず、その結果、ケース体Bの上方から中皿Cを回転体Aとケース体Bとで構成する昇降機構により下降させることができ、その後回転規制部材Dを装着すればよく容器の組み付け操作が極めて容易に行える利点も兼ね備えている。
【0016】
上記回転規制部材Dを、頂板部11裏面に垂設した係止筒19に中央の透孔50を嵌合させて基板51を嵌着固定し、頂板部11に穿設した円弧状の挿通窓17を介してその上方まで起立した支柱53の上部に円弧状の腕部54を延設し、腕部54の自由端外面に係合爪55を突設して構成した場合には、挿通窓17に腕部54を位置併せして回転規制部材Dを頂板部11下方より押し上げるだけで簡単に装着でき、また、円弧状の腕部54は弾性変形し易く、係合爪55がラチェット歯30を乗り越える際に弾性変形して円滑な乗り越えが行え、その結果、回転体Aとケース体Bとの相互の回転をより円滑に行える利点もある。
【0017】
挿通窓17を頂板部11の対向位置に一対形成し、支柱53,腕部54,係合爪55を対向位置にそれぞれ一対形成した場合には、回転体Aとケース体Bとの係合部位が偏らず回転体Aとケース体Bとの相互の回転を円滑に行えるとともに、耐久性の向上を図ることもできる。
【0018】
回転体Aの把持部10内周に廻止突部20を突設し、該廻止突部20に係合する廻止凹部52を基板51縁部に凹設した場合には、回転体Aと、回転規制部材Dとの一体動をより確実に行えるとともに、廻止突部20及び廻止凹部52が回転規制部材Dを装着する際の案内となるため、装着をより容易に行える利点もある。
【0019】
中皿Cを、ケース体B内周面との間に相互の回転を防止して上下動可能に外周面を嵌合した外筒40を備えるとともに、外筒40からフランジ状の底板41を介して起立した内筒42を回転軸12外周面に螺着して構成し、中皿C上方の回転軸12外周部から回転軸12上部に亘り収容物Fを充填する如く構成した場合には、収容物Fを極力効率よく多量に充填することができる利点がある。
【0020】
回転体Aが、回転軸12をケース体B内下部に起立収納した回転体Aであり、中皿Cを、回転軸12の外面に相互の回転を防止して上下動可能に嵌合させた作用筒46を底板41裏面より垂設するとともに、底板41外周縁をケース体B内周に液密摺動可能に嵌合させ、且つ、作用筒46外面の雄螺子90をケース体B内面に突設した雌螺子74に螺合させて構成し、底板41上方に収容物Fを充填する如く構成した場合には、収容物Fを気密に充填することができる利点を兼ね備える。
【0021】
雌螺子74を、ケース体Bの内周下部に上方より嵌着固定した筒状基部70の内面に環状支持突起73を介して突設した場合には、雌螺子74の成形が容易で、また、ケース体Bへの組付け操作が容易という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】繰出容器の半断面図である。(実施例1)
【図2】回転体を示す斜視図である。(実施例1)
【図3】回転規制部材を斜め上方から見た斜視図である。(実施例1)
【図4】回転規制部材を斜め下方から見た斜視図である。(実施例1)
【図5】ケース体下端部の要部斜視図である。(実施例1)
【図6】回転規制部材を装着前の繰出容器の分解半断面図である。(実施例1)
【図7】図6のV−V線に沿う横断面図である。(実施例1)
【図8】回転規制部材を装着前の繰出容器の底面図である。(実施例1)
【図9】繰出容器の中皿を上昇させた状態の半断面図である。(実施例1)
【図10】図9のW−W線に沿う横断面図である。(実施例1)
【図11】図9の底面図である。(実施例1)
【図12】繰出容器の半断面図である。(実施例2)
【図13】回転体を示す斜視図である。(実施例2)
【図14】回転規制部材を装着前の繰出容器の分解半断面図である。(実施例2)
【図15】図14のX−X線に沿う横断面図である。(実施例2)
【図16】回転規制部材を装着前の繰出容器の底面図である。(実施例2)
【図17】キャップを外した状態の繰出容器の半断面図である。(実施例2)
【図18】図17のY−Y線に沿う横断面図である。(実施例2)
【図19】図17のZ−Z線に沿う横断面図である。(実施例2)
【図20】図17の底面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図11は繰出容器1の一例を示す。繰出容器1は、回転体Aと、ケース体Bと、中皿Cと、回転規制部材Dと、キャップEとを備えている。
【0025】
回転体Aは、図2に斜視図で示す如く、筒状の把持部10の上端より頂板部11を延設し、頂板部11の中央より上方へ回転軸12を起立している。回転軸12は、外周下部に係止凹部13を周設し、係止凹部13の直上に一対の抜止突部14を突設している。また、抜止突部14の上方外周に雄螺子15を周設している。更に、頂板部11の上面外周には環状凹部16を凹設しており環状凹部16の内側対向位置に一対の円弧状をなす挿通窓17を穿設し、頂板部11の裏面中央からは外周下部に係止突条18を周設した係止筒19を垂設している。また、把持部10の内周対向位置には、図8の回転規制部材Dを嵌着する前の底面図に明らかな如く、一対の廻止突部20を突設している。この挿通窓17,係止筒19,廻止突部20は回転規制部材Dの装着の際に使用する。更に、把持部10の外周にはローレット21を刻設している。
【0026】
ケース体Bは、上下端開口の円筒状をなし、下部内面には、図5で示す如く、回転方向規制機構を構成するラチェット歯30を周方向複数突設している。各ラチェット歯30は図7に示す如く、一方が傾斜面を、他方垂直面をなす横断面三角形状に形成されている。また、内周下部の各ラチェット歯30上方位置には、周方向複数の係合突片31を突設している。各係合突片31は中心側に向かってそれぞれ上昇する。また、内周面の各係合突片31上方所定位置には、周方向等間隔に4個所に案内機構を構成する案内凹溝32を縦設している。更に、外周上端部は上向き段部を介して外面を縮径しており、縮径部分の外面に係止用の突条33を周設している。
【0027】
そして、ケース体Bの下面を環状凹部16に嵌合させるととも、各係合突片31を回転軸12の係止凹部13に係合させて上方への抜け出しを防止し、ケース体Bと回転体Aとの相互の回転が可能に両者を組み付けている。
【0028】
中皿Cは、外筒40の内周下部より突設したフランジ状の底板41の内周縁より内筒42を起立し、内筒42の内周に雌螺子43を周設している。外筒40の下面には収容物係止用のリブ44を周方向複数突設している。また、外筒40の外面には、ケース体Bの内面に設けた案内凹溝32に摺動可能に嵌合して摺動上昇するための案内突条45を周方向4個所突設している。そして、雌螺子43を回転軸12の雄螺子15に螺合させるとともに、各案内突条45を案内凹溝32に係合し、図1に示す如く、下面を各係合突片31の上面に当接した状態で装着する。雌螺子43と雄螺子15とは、回転体Aを上から見て反時計廻りに相対回転することで、中皿Cが上昇する如き螺合形態をなしている。
【0029】
回転規制部材Dは、回転体Aの底部に下方より嵌着固定するもので、ケース体Bのラチェット歯30とで、回転体Aのケース体Bに対する相対回転方向を、中皿Cの上昇方向のみに規制する回転規制機構を構成する。回転規制部材Dは、図3に示す斜め上方から見た斜視図及び図4に示す斜め下方から見た斜視図にある如く、中央に回転体Aの係止筒19を嵌着させるための透孔50を穿設したリング板状の基板51を備え、基板51の対向する所定位置に回転体の各廻止突部20を嵌合させる一対の廻止凹部52を凹設している。また、各廻止凹部52の近傍所定位置からは一対の支柱53を起立し、各支柱53の上端より基板51外周に沿った円弧状の腕部54を延設し、各腕部54の自由端外面からそれぞれ係合爪55を突設している。
【0030】
上記の如く構成された回転規制部材Dを嵌着する場合は、頂板部11の各挿通窓17より各腕部54を挿通し、回転体Aの各廻止突部20に各廻止凹部52を嵌合させるとともに、透孔50に回転体Aの係止筒19を嵌合させてその係止突条18を基板51下面に当接係止させる。この際各係合爪55は図10に示す如くラチェット歯30の間に嵌合する。
【0031】
各係合爪55は各ラチェット歯30に対して所定の回転方向のみに乗り越えることができる如く先端を係合しており、ここでいう所定の回転方向とは、中皿Cを上昇させる回転方向のことをいう。具体的には、図10に於いて、回転規制部材Dと一体動する回転体Aはケース体Bに対して上から見て反時計回りにしか相対的に回転せず、従って、ケース体Bは回転体Aに対して、上方からみて時計廻りにしか相対的に回転しない。これによる中皿Cの上昇に関しては後述する。
【0032】
キャップEは、周壁60の上端より頂壁61を延設した下端開口の筒状をなし、周壁60の内周下部には、周方向間隔をあけて複数の係合突部62を突設し、また、その上方にはシール突条63を周設している。そして、図1に示す如く、ケース体Bの上端部に嵌合し、各係合突部62を係止用の突条33下面に係止させて抜け出しの防止を図り、また、シール突条63をケース体B外周に密接して気密性を付与している。
【0033】
本例の場合の繰出容器1を組み付ける場合は、例えば図6に示す如く、回転体Aにケース体Bを装着した後、ケース体Bの上端に中皿Cを嵌合し、回転体Aをケース体Bに対して所定方向に相対回動させることで上方より中皿Cを下降させる。詳述すれば、ケース体B外周を固定して把持部10を回転させると回転軸12が回転し、その際案内突条45と案内凹溝32との係合により中皿Cとケース体Bとの相対回転が防止されるため、螺子15と雌螺子43の螺合作用で中皿Cが下降する。この際、回転規制部材Dを装着する前の状態であるため、回転体Aはケース体Bに対して上から見て時計廻り,反時計廻りのいずれの方向にも回動が可能であり、回転体Aを上から見て時計廻りに回転させると中皿Cは下降する。しかる後、上述した如く、回転体Aの下方より回転規制部材Dを嵌着して組み付け作業を行える。
【0034】
尚、収容物Fの充填はその後ケース体Aの上方より行うことができる。収容物Fは、図1に示す如く、中皿Cのフランジ状の底板41上面、内筒42内面、外筒40内面で形成される空間からその上方の回転軸12外面及びケース体B内面で形成される空間を介して、最上部のケース体B内周のみで形成される空間に充填される。
【0035】
上記の如き繰出容器1を使用する場合について説明する。例えば、図1の状態からキャップEを外し、ケース体Bを固定して所定方向に回転体Aを回転させると中皿Cが上昇する。この際、回転方向規制機構の働きで、回転体Aがケース体Bに対して上から見て反時計廻りにしか回転せず、時計廻りに回転させようとしても、回転方向規制機構の作用で相対回転が防止されるため、中皿Cは上昇するのみで下降することはない。
【0036】
図12乃至図20は他の例を示す。本例に於ける繰出容器1は、回転体Aと、ケース体Bと補助ケース体B1と、中皿Cと、回転規制部材Dと、キャップEとを備えている。
【0037】
回転体Aは、図13に斜視図で示す如く、筒状の把持部10の上端より頂板部11を延設し、頂板部11の中央より上方へ回転軸12を起立している。回転軸12は、外周下部に係止凹部13を周設し、係止凹部13の直上に一対の抜止突部14を突設している。また、抜止突部14の上方を横断面十字状に形成して放射状に4本の案内機構を構成する案内突条22を縦設している。更に、頂板部11の上面外周には環状凹部16を凹設しており環状凹部16の内側対向位置に一対の円弧状をなす挿通窓17を穿設し、頂板部11の裏面中央からは外周下部に係止突条18を周設した係止筒19を垂設している。また、把持部10の内周対向位置には、図16の回転規制部材Dを嵌着する前の底面図に明らかな如く、一対の廻止突部20を突設している。この挿通窓17,係止筒19,廻止突部20は回転規制部材Dの装着の際に使用する。更に、把持部10の外周にはローレット21を刻設している。
【0038】
ケース体Bは、上下端開口の円筒状をなし、下部内面には、図15で示す如く、回転方向規制機構を構成するラチェット歯30を周方向複数突設している。各ラチェット歯30は一方が傾斜面を、他方垂直面をなす横断面三角形状に形成されている。また、内周下部の各ラチェット歯30上方位置には、フランジ34を介して下部内面に抜止用の突部35を突設した係止筒36を垂設している。また、内周面のフランジ34上方所定位置には、抜止用の突条37を周設し、その上方からケース体Bの略上下中間部に至る廻止用の凹溝38を、周方向等間隔に4個所にを縦設している。更に、外周上端部は上向き段部を介して外面を縮径しており、縮径部分の外面に係止用の突条33を周設している。
【0039】
補助ケース体B1は、ケース体B内に雌螺子74を形成するためのもので、ケース体B内面下部に嵌合させた筒状基部70の外面下部にケース体Bの抜止用の突条37に係合して上方への抜止を防止する抜止用の突条部71を周設し、抜止用の突条部71上方の外面にはケース体Bの廻止用の凹溝38に係合して相互の回転を防止する廻止用の突条72を周方向等間隔に4個所縦設している。また、内面上端部には断面L字状の環状支持突起73を介してその内面に雌螺子74を周設している。
【0040】
そして、補助ケース体B1を装着したケース体Bの下面を環状凹部16に嵌合させるととも、抜止用の突部35を回転軸12の係止凹部13に係合させて上方への抜け出しを防止し、ケース体Bと回転体Aとの相互の回転が可能に両者を組み付けている。
【0041】
中皿Cは、図12に示す如く、回転軸12外周に嵌合させた作用筒46を、回転軸12上の底板41裏面中央より垂設しており、底板41の周縁部より起立した周壁部47の上端より外方へ摺動突部48を突設し、摺動突部48をケース体B内面に液密摺動可能に嵌合させている。作用筒46の内周には回転軸12の各案内突条22と係合する周方向4か所の案内凹溝49を縦設しており、作用筒46の外周には補助ケース体B1の雌螺子74と螺合する雄螺子90を周設している。そして、雄螺子90を補助ケース体B1の雌螺子74に螺合させるとともに、各案内凹溝49を案内突条22に係合し、図1に示す如く、底板41下面を回転軸12の直上に位置させた状態で装着する。雌螺子74と雄螺子90とは、回転体Aを上から見て反時計廻りに相対回転することで、中皿Cが上昇する如き螺合形態をなしている。
【0042】
回転規制部材Dは、図1の例と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0043】
キャップDは、図1の例と同様の構成であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0044】
本例の場合の繰出容器1を組み付ける場合は、例えば図14に示す如く、補助ケース体B1を装着したケース体Bを回転体Aに装着した後、ケース体Bの上端に中皿Cを嵌合し、回転体Aをケース体Bに対して所定方向に相対回動させることで上方より中皿Cを下降させる。詳述すれば、ケース体B外周を固定して把持部10を回転させると回転軸12が回転し、その際案内突条22と案内凹溝49との係合により中皿Cと回転軸12との相対回転が防止されるため雄螺子90と雌螺子74との螺合作用で中皿Cが下降する。この際、回転規制部材Dを装着する前の状態であるため、回転体Aはケース体Bに対して上から見て時計廻り,反時計廻りのいずれの方向にも回動が可能であり、回転体Aを上から見て時計廻りに相対回転させると中皿Cは下降する。しかる後、上述した如く、回転体Aの下方より回転規制部材Dを嵌着して組み付け作業を行える。
【0045】
尚、収容物Fの充填はその後ケース体Bの上方より行うことができる。収容物Fは、図12に示す如く、中皿Cの底板41上面、周壁部47内面空間からその上方のケース体B内上部の空間に充填される。
【0046】
上記の如き繰出容器1を使用する場合について説明する。例えば、図12の状態からキャップEを外し、ケース体Bを把持して上記した所定方向に回転体Aを回転させると中皿Cが上昇する。この際、回転方向規制機構の働きで、回転体Aがケース体Bに対して上から見て反時計廻りにしか回転せず、時計廻りに回転させようとしても、回転方向規制機構の作用で相対回転が防止されるため、中皿Cは上昇するのみで下降することはない。
【0047】
尚、上記各例に於いて各部材は合成樹脂等により形成することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…繰出容器
A…回転体
10…把持部,11…頂板部,12…回転軸,13…係止凹部,14…抜止突部,
15…雄螺子,16…環状凹部,17…挿通窓,18…係止突条,19…係止筒,
20…廻止突部,21…ローレット,22…案内突条
B…ケース体
30…ラチェット歯,31…係合突片,32…案内凹溝,33…係止用の突条,
34…フランジ,35…抜止用の突部,36…係止筒,37…係止用の突条,
38…廻止用の凹溝
B1…補助ケース体
70…筒状基部,71…抜止用の突条部,72…廻止用の突条,73…環状支持突起,
74…雌螺子
C…中皿
40…外筒,41…底板,42…内筒,43…雌螺子,44…収容物係止用のリブ,
45…案内突条,46…作用筒,47…周壁部,48…摺動突部,49…案内凹溝,
90…雄螺子
D…回転規制部材
50…透孔,51…基板,52…廻止凹部,53…支柱,54…腕部,55…係合爪
E…キャップ
60…周壁,61…頂壁,62…係合突部,63…シール突条
F…収容物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の把持部10より延設した頂板部11中央に回転軸12を起立した回転体Aと、中央部に回転軸12を収納して頂板部11上面周縁部に回転可能に載置するとともに、内周面下部を回転軸12外面に抜け出しを防止して回転可能に係合させた上下端開口のケース体Bと、回転軸12外面及びケース体B内面とのいずれか一方と螺合させ、いずれか他方と相互の回転を防止して上下動可能に嵌合させた中皿Cと、頂板部11裏面より装着するとともに、頂板部11裏面に基板51を嵌着固定し、且つ、頂板部11に穿設した挿通窓17を介してその上方に係合爪55を延設した回転規制部材Dとを備え、ケース体B内周下端部に周方向複数突設したラチェット歯30と係合爪55とで、回転体Aのケース体Bに対する相対回転方向を、中皿Cの上昇方向のみに規制する回転方向規制機構を構成したことを特徴とする繰出容器。
【請求項2】
上記回転規制部材Dを、頂板部11裏面に垂設した係止筒19に中央の透孔50を嵌合させて基板51を嵌着固定し、頂板部11に穿設した円弧状の挿通窓17を介してその上方まで起立した支柱53の上部に円弧状の腕部54を延設し、腕部54の自由端外面に係合爪55を突設して構成した請求項1記載の繰出容器。
【請求項3】
挿通窓17を頂板部11の対向位置に一対形成し、支柱53,腕部54,係合爪55を対向位置にそれぞれ一対形成した請求項2記載の繰出容器。
【請求項4】
回転体Aの把持部10内周に廻止突部20を突設し、該廻止突部20に係合する廻止凹部52を基板51縁部に凹設した請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の繰出容器。
【請求項5】
中皿Cを、ケース体B内周面との間に相互の回転を防止して上下動可能に外周面を嵌合した外筒40を備えるとともに、外筒40からフランジ状の底板41を介して起立した内筒42を回転軸12外周面に螺着して構成し、中皿C上方の回転軸12外周部から回転軸12上部に亘り収容物Fを充填する如く構成した請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の繰出容器。
【請求項6】
回転体Aが、回転軸12をケース体B内下部に起立収納した回転体Aであり、中皿Cを、回転軸12の外面に相互の回転を防止して上下動可能に嵌合させた作用筒46を底板41裏面より垂設するとともに、底板41外周縁をケース体B内周に液密摺動可能に嵌合させ、且つ、作用筒46外面の雄螺子90をケース体B内面に突設した雌螺子74に螺合させて構成し、底板41上方に収容物Fを充填する如く構成した請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の繰出容器。
【請求項7】
雌螺子74を、ケース体Bの内周下部に上方より嵌着固定した筒状基部70の内面に環状支持突起73を介して突設した請求項6記載の繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−51593(P2011−51593A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199573(P2009−199573)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】