説明

繰返し洗濯して使用できる布製おむつ

【課題】着用者の肌に直に接する一層目の表面は、ソフトで優しいタッチの表面状態で、その表面層が広い範囲に拡散できる機能を有し、二層目以降の層は水分をよく吸収して保水でき、尿の排せつ後であっても、あたかも排せつが無かったように着用者に知覚させることができる機能を備えた布製おむつを提供すること。
【解決手段】木綿等の繊維により疎織成部と密織成部が格子状を成すように織成された基布2と該基布2の織成時にその基布2の一面側全面に織込まれるか絡着させられた極細繊維による柔軟な起毛状部3とから成る吸水拡散層と、該吸水拡散層の裏面全面に当接させて配置されたタオル地などによる吸収保水層4を少なくとも1層、好ましくは2層又はそれ以上具備し、前記吸水拡散層と吸収保水層4を、その周縁部で縫着などにより合着一体化して形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布製おむつ(以下、布製吸水パット、又は、単に布製パッドともいう)に関し、特に病院や介護施設等で用いられ、洗濯して繰り返し使用することができる布製おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院や介護施設、或は、老人ホーム等の各種の施設又は介護家庭では、洗濯して繰り返し使用できる布製おむつが用いられることがある。不織布や吸水性ポリマーを主材料とするいわゆる使い捨てパッドでは、その価格が高価であるほか、使用後の処理が環境やコストなどの点で問題があるため、布製おむつの見直しがなされているからである。
【0003】
このような観点から、最近でも布製おむつが特許文献1や特許文献2などにより新たに提案されているが、提案されている布製おむつはきわめて根本的な事項において解決すべき課題を抱えている。
【0004】
一般に成人用の布製おむつは、介護施設などにおいて長くても、例えば4時間に1回の取替えをするような態様で運用されている。このため、装着した布製おむつが4時間の間に排出される着用者の排せつ物、殊に尿をすべて吸収してしまう必要がある。この要請を満足するため、吸水容量を大きくした布製おむつが使用されているが、これが布製おむつの根本的事項の問題に係る要因となっている。
【0005】
すなわち、吸水容量を大きくした布製おむつに使用されている布地は概して厚手であり、しかも布地の表面も着用者における着用部位の肌からみるとそれほどソフトでない、或は、柔軟ではないため、着用感の悪さや肌に対する刺激があって着用者は無用の我慢を強いられているという実状がある。
【0006】
例えば、従来の布製おむつでは、単体の吸水量を増加させるために、糸をできるだけ浮かせるようにして織成された布地を用い、織成された糸と糸との間の隙間に水分を貯えることができるようにしている。しかしながら、例えば成人が1回乃至2回、排せつする尿の量に見合う吸水量を確保するためには、上記隙間ができるように織成した布地でも、布製おむつとしての幅や長さ、或は、厚さを大きくしなければならず、また、1枚の乾燥時の重さが220g前後にもなる布製おむつを3枚1組にして使用すると、かなり大きな重量となって着用感の悪化を招いている。
【0007】
このような点に鑑み、最近では、吸水ポリマーを用いて吸水機能および保水機能を高めたいわゆる紙おむつが多用されている。紙おむつは、重量を軽量に形成できる一方で十分な吸水量を確保することができ、また高い保水機能と相まって肌あれを惹き起こしにくいという長所があるからである。しかし乍ら、紙おむつは一般に製造コストが嵩むため販売価格が高く、また1回ごとの使い捨てであるためゴミとしての処理が不可欠であり、処理コストもかなり嵩むという問題がある
【特許文献1】特許第3457279号公報
【特許文献2】登録実用新案第3116919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した布製おむつ(又は布製パッド)の問題点に鑑み、着用者の肌に直に接する一層目の表面は、表面をソフトで優しいタッチの表面状態に形成すると共に、その表面層が急速に水分を吸収し吸収した水分を広い範囲に拡散できる機能を有し、二層目以降の層は一層目が吸収して拡散する水分をよく吸収して保水でき、特に、一層目は、短時間で吸収した水分が二層目以降の層に高効率で伝搬吸収されることにより、尿の排せつ後であっても、あたかも排せつが無かったように着用者に知覚させることができる機能を備えた布製おむつを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明布製おむつの構成は、木綿等の繊維により疎織成部と密織成部が格子状を成すように織成された基布と該基布の織成時にその基布の一面側全面に織込まれるか絡着させられた極細繊維による柔軟な起毛状部とから成る吸水拡散層と、該吸水拡散層の裏面全面に当接させて配置されたタオル地などによる吸収保水層を少なくとも1層、好ましくは2層又はそれ以上具備し、前記吸水拡散層と吸収保水層を、その周縁部で縫着などにより合着一体化して形成したことを特徴とするものである。
ここで、柔軟起毛状部は、基布に対して平行な畦状をなす凹凸面に形成した畦状凹凸面が、この部の表面の水捌けに寄与する構成を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明布製おむつは、着用者の肌に当る表面が極細長繊維による柔軟な起毛状部であるから、単なるタオル地やガーゼ地に比べて肌さわりがきわめて良好である。この起毛状部は、糸の疎い織成と密な織成とが格子状になった織地の表面に支持されているが、当該起毛状部自体も畦状の凹凸面により織目地の疎密が交互に形成されているので、この起毛状部に付着する水分を水捌け良好に吸収し、基布側へ拡散する機能がある。
着用者の肌に接している柔軟起毛状部によりおむつの表面層は、そこに排出される尿を急速に吸収すると共に、該起毛状部層に吸収された水分は、疎,密織成部が格子状に織成された基布側にかなりの速度で伝搬,吸収され、当該基布の織成状態(織の疎密が格子状をなす)によって基布全体に広く拡散する。
【0011】
この結果、本発明おむつの表面(起毛状部層)に排せつされて付着する尿は、素早く基布を伝ってタオル地などによる吸収保水層に吸収されてさらに拡散し、この第2層以降の層の織成構造によりよく保水されることとなる。
これにより本発明おむつを着用した者は、そのおむつ内で排尿しても、その尿が、着用者の肌から柔軟起毛状部層を介して離れた吸収保水層に保持され、肌に直に接している吸水拡散層の表面である起毛状部には殆んど残らないので、おむつ内に排尿された水分による不快感や異和感を全くといってよいほど、着用者に知覚させることがないという、従来の布製おむつには見られない、画期的な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図を参照して本発明布製おむつの実施の形態例について説明する。図1は本発明布製おむつの層構造を説明するため、一部を切開した状態にして模式的に表わした平面図、図2は本発明おむつにおける吸水拡散層と吸収保持層の水分の吸水の吸水拡散機構を説明するための模式的な断面図である。
【0013】
図において、1は、本発明おむつの着用者の肌に接する表面を形成する柔軟起毛層である。柔軟起毛層1は、木綿等の吸水性の良好な繊維によって、疎い織成部2aと密な織成部2bとが凹凸の格子状をなすように織成された基布2に、当該基布2の織成時にその基布2の一面側の全面を覆うように織込まれるか、或は、絡着させられた極細の柔軟な長繊維による起毛面3から形成されている。
【0014】
ここで、起毛面3は、全体がなだらかな低い畦状をなす凸部3aと平行な2条の凸部に挟まれた浅い溝部3bにより形成されている。起毛面3を、平行な畦状凸部3aと浅い溝部3bによって形成したのは、起毛面3aに広がる尿を畦状の凸部3aから溝部3bに流下させてその水分を溝部3bに集め、溝部3bの長さ方向に拡散させるためである。
また、起毛面3の表面に接した水分は、互に密接する多数の起毛同士の毛細管作用で起毛の根元側に滲透するようにす早く移動し、このようにして根元側に移動した水分は畦状凸部3aから溝部3bへ流動する結果、起毛部3の裏面に当接している水分の吸収保水能力が高いタオル地などによる吸収保水層4へ滲透して行く。なお、基布と起毛面3は、ポリエステルなどの化繊素材で形成したり、起毛面3のみをポリエステルなどの化繊で形成することができる。
【0015】
図示した実施例では、吸収保水層4を二枚重ねて配置しているが、吸収保水層4を何枚配置とするかは、当該保水層の厚さ、換言すれば保水能力、具体的には保水容量の大きさにより決めればよい。
例えば、一枚で保水容量が大きい吸収保水層4は、厚手になって柔軟性が損なわれ易いので、保水容量は大きくなくても柔軟性の高い薄手の吸収保水層4を2〜3枚重ねた形で用いた方が、各吸収保水層4の個々の使い回しや取替え、或は、洗濯などにおいて、有利である。
【0016】
本発明おむつにおいて、柔軟起毛層1の裏面、つまり吸収保水層4と接する面は、先に述べたように、疎織成部2aと密織成部2bとが成す凹凸面が格子状なして全面に存在する裏面(図1参照)であるから、柔軟起毛層1から一旦吸収保水層4へ滲透して移動した水分は、逆方向、つまり、吸収保水層4の側から柔軟起毛層1の側へは、逆流しないか、乃至は殆んど逆流しないので、柔軟起毛層1の表面(最外面の起毛面3)の水分は瞬く間(ごく短時間)に吸収保水層4の側へ移動してしまい、殆んど水分の存在を知覚しない程の肌ざわり感になる。
【0017】
本発明布製おむつは、上述した水の吸収,拡散,保持の機序によって、本発明おむつを着用した者がそのまま失禁したとしても、その失禁による水分が肌に直接触れることがないほどの知覚を着用者に感じさせることができる。
従って、従来の布製おむつにあった最大の難点である失禁後のジクジク感やヒンヤリ感、或は、重量感などの不快感を、着用者が失禁のあと長時間に亘り我慢を強いられていた不快な感触は殆んど無くなるという、画期的効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明おむつは以上の通りであって、木綿等の繊維により疎織成部と密織成部が格子状を成すように織成された基布と該基布の織成時にその基布の一面側全面に織込まれるか絡着させられた極細繊維による柔軟な起毛状部とから成る吸水拡散層と、該吸水拡散層の裏面全面に当接させて配置されたタオル地などによる吸収保水層を少なくとも1層、好ましくは2層又はそれ以上具備し、前記吸水拡散層と吸収保水層を、その周縁部で縫着などにより合着一体化して布製おむつを形成したから、上記のような失禁時でも着用者不快感を感じさせないという着用者にとってきわめて好適な画期的効果を奏する。
しかも、この布製おむつは全て布製であるから洗濯して繰返し利用することができ、環境面においても、使用の度に廃棄物を生じることなく何回でも繰返し使用でき、また使用不能となっても一般可燃性廃棄物としての処理,取扱いができるからきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明布製おむつの層構造を説明するため、一部を切開した状態にして模式的に表わした平面図。
【図2】本発明おむつにおける吸水拡散層と吸収保持層の水分の吸水の吸水拡散機構を説明するための模式的な断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 起毛層
2 基布
3 起毛面
4 吸収保水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木綿等の繊維により疎織成部と密織成部が格子状を成すように織成された基布と該基布の織成時にその基布の一面側全面に織込まれるか絡着させられた極細繊維による柔軟な起毛状部とから成る吸水拡散層と、該吸水拡散層の裏面全面に当接させて配置されたタオル地などによる吸収保水層を少なくとも1層、好ましくは2層又はそれ以上具備し、前記吸水拡散層と吸収保水層を、その周縁部で縫着などにより合着一体化して形成したことを特徴とする布製おむつ。
【請求項2】
柔軟起毛状部は、その表面側が基布に対して平行な畦状をなす凹凸面に形成することにより、この部の表面の水捌けに寄与するように形成にした請求項1の布製おむつ。
【請求項3】
柔軟起毛状部は、糸の疎い織成と密な織成とが格子状になった織地の表面側に支持させた請求項1又は2の布製おむつ。
【請求項4】
柔軟起毛状部は、そこに排出される尿を急速に吸収すると共に、該起毛状部に吸収された水分は、疎,密織成部が格子状に織成された基布側に好適な速度で伝搬,吸収されて当該基布の織成状態により基布全体に広く拡散するようにした請求項1〜3のいずれかの布製おむつ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−253684(P2008−253684A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102214(P2007−102214)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(507288213)サラ&サラ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】