説明

缶内容液の排出装置

【課題】缶内容液の排出にかかる作業者の労力負担を軽減し、高粘性液体でも缶内部から可及的速やかに排出することのできる簡便な装置を提供する。
【解決手段】液体を出し入れするための口部1bを有した液体入りの缶1を収容して保持する回転フレーム2、回転フレーム2を上下反転可能に支持する支持フレーム3、回転フレーム2を上下反転させる駆動機構4、及び缶1の口部1bとは反対側の底部1aに穿孔を施すべく回転フレーム2に設けられる穿孔手段5を備える。穿孔手段5は、回転フレーム2に対して水平軸回りに揺動自在に取り付けられる揺動アーム51を有する。揺動アーム51の一端は、回転フレーム2の上下反転により上向きとなる缶の底部1aに向けて自重で降下する重錘部53とされる。重錘部53には、該重錘部53の降下により上向き状態の缶底部1aを貫通して缶1内部の液面上を大気中に連通させる中空の穿孔針54が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶内容液の排出を可及的速やかに行え、缶内容液の排出にかかる作業者の労力も大幅に軽減することのできる簡便な缶内容液の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、缶入りの液体を大量に使用する業者では、その液体を大型のタンクなどに移し替え、大容量での混合や撹拌を行っている。特に、缶内容液が水飴などの高粘性物である場合、その移し替えに際して予め缶を湯槽等に浸して加温することにより内容液の流動性を高め、しかして缶の口部に装着された蓋を開け、その缶を作業者が持ち上げて上下反転させるようにしているが、液体入りの缶の初期重量は20kg以上と重い上、水飴をはじめとする高粘性の内容液では、全量排出に10分前後を要することから作業者には相当の重労働が強いられている。
【0003】
ここに、液体入りの缶から内容液を排出する装置としては、液体入りの缶を保持しながらその上下反転を行うことのできる転倒装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
又、缶内部に圧縮気体を強制的に送り込むことにより、缶内容液の排出を短時間で確実に行えるようにした装置も知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−142987号公報
【0006】
【特許文献2】特開平7−300194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される転倒装置によれば、ドラム缶を保持した保持装置が油圧装置によるリンク装置の作動により上下反転される構成であるから、大容量のドラム缶でも上下反転を容易に行えるという利点を有するものの、ドラム缶を反転させるだけでは内容液の排出を短時間で行えず、特に内容液が高粘性物である場合、その全量を排出するまでに多くの時間を費やしてしまうという欠点がある。
【0008】
一方、特許文献2では、缶内部に供給される圧縮気体の作用により、高粘性の内容液でも全量を短時間で排出できるという利点を有するが、係る装置は軸線方向に沿って送気路が穿設された貫通棒と、この貫通棒を缶の上部から下部に向かって貫通させるための昇降機構とを備え、貫通棒には配管を介して送気路に連通する送気装置が接続される構成とされることから、装置全体が大掛かりな構造でコスト高になり、しかも缶は廃液受け部と貫通棒との間に配置されるので、廃液受け部上への缶の配置に際して貫通棒が作業障害になってしまうという欠点がある。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は缶内容液の排出にかかる作業者の労力負担を軽減し、高粘性液体でも缶内部から可及的速やかに排出することのできる簡便な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、
液体を出し入れするための口部を有した液体入りの缶を収容して保持する回転フレームと、この回転フレームを上下反転可能に支持する支持フレームと、前記回転フレームを上下反転させる駆動機構と、を有して成る缶内容液の排出装置であり、
前記缶の口部とは反対側の底部に穿孔を施すべく前記回転フレームに設けられる穿孔手段を備え、
その穿孔手段は、前記回転フレームに対して水平軸回りに揺動自在に取り付けられる揺動アームを有すると共に、
前記揺動アームの一端は、前記回転フレームの上下反転により該回転フレーム内に収容された缶の口部が下向きに転換されるとき上向きとなる缶の底部に向けて自重で降下する重錘部とされ、
前記重錘部には、該重錘部の降下により上向き状態の缶の底部を貫通して缶内部の液面上を大気中に連通させる中空の穿孔針が取り付けられることを特徴とする。
【0011】
加えて、重錘部には、穿孔針の内部を通じて缶内部に流入する外気を濾過するためのエアフィルタが取り付けられることを特徴とする。
【0012】
又、上記のように構成される缶内容液の排出装置において、缶の口部に装着される着脱自在な手動バルブを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、缶を収容する回転フレームに穿孔手段が設けられると共に、その穿孔手段は回転フレームの上下反転に際して上向きとなる缶底部を貫通して缶内部の液面上を大気中に連通させる中空の穿孔針を有することから、高粘性の内容液でも速やかに排出することができ、しかも缶内容液の排出に際する人的作業は回転フレーム内に缶を配置するだけで足りるので、缶内容液の排出にかかる作業者の労力負担を大幅に軽減することができる。
【0014】
特に、缶底部に対する穿孔が重力の作用により行われることから、専用のアクチュエータやその制御部を設ける必要がなく、簡易な装置構造とすることができ、ランニングコストも削減できる。
【0015】
又、穿孔手段は缶の口部とは反対側の底部に穿孔を施すべく回転フレームに設けられることから、回転フレーム内への缶の配置に際して穿孔手段が作業障害とならず、液体入りの重い缶でも回転フレーム内に容易に配置することができる。
【0016】
加えて、穿孔手段を構成する揺動アームの一端重錘部には、穿孔針の内部を通じて缶内部に流入する外気を濾過するためのエアフィルタが取り付けられることから、缶内から排出する液体に空中浮遊物が混入することを防止できる。
【0017】
更に、缶の口部に装着される着脱自在な手動バルブを備えることから、缶の反転中に内容液が排出されて所定の箇所から外れた位置に排出液が飛散することを防止できる上、缶の反転完了時には手動バルブを開放するだけで缶内容液の排出を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の適用例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る缶内容液の排出装置を示す正面概略図、図2は同装置を示す側面概略図である。図1、図2において、1は排出すべき液体の入った缶、2は缶1を収容して保持する回転フレームであり、この回転フレーム2は支持フレーム3により上下反転可能に支持されている。
【0019】
本例において、缶1は胴部が四角形とされる金属製の角缶であって、その内容量が約18リットルとされる所謂一斗缶である。
【0020】
又、回転フレーム2は、型鋼を結合して構成される定形の枠組みであり、その上部は液体入りの缶1を導入するための缶導入口2aとして開口され、左右両側には上下反転時の回転中心となる支点軸2b,2bが固着されている。
【0021】
一方、支持フレーム3は、型鋼を結合して成る正面視凹字形の枠組みであり、その側枠3a,3aの一端上部には相対向して軸受ユニット3b,3bが取り付けられ、その両軸受ユニット3b,3bにより回転フレーム2の支点軸2b,2bが回転自在に支持されている。
【0022】
そして、一方の支点軸2bにスプロケット4aを固着すると共に、支持フレーム3の下部にアクチュエータ4b(正逆回転可能なブレーキ付モータ)及びその回転を減速する減速機4cを設置し、当該減速機4cの出力軸に固着したスプロケット4dと上記スプロケット4aとの間に無端のチェーン4eを巻き掛けることにより、回転フレーム2を上下反転させる駆動機構4が構成されている。尚、支持フレーム3には、回転フレーム2の位置(反転前の初期位置および反転後の倒立位置)を検出するリミットスイッチなどの図示せぬ検出器が取り付けられ、その検出器の出力信号に基づいてアクチュエータ4bが停止されるようになっている。
【0023】
又、図1および図2において、5は回転フレーム2の外底面に設けた穿孔手段であり、この穿孔手段5は、回転フレーム2に対して揺動自在な揺動アーム51を有して構成される。図2のように、揺動アーム51は「く」の字形に折れ曲がった形態であり、その中間部分は回転フレーム2の外底面における幅方向中央部に突設したブラケット2cに対してピン52にて結合されている。
【0024】
特に、揺動アーム51の一端は円盤状に拡大されて所定の重量を有する重錘部53とされ、その重錘部53に穿孔針54とエアフィルタ55(図1では省略)が取り付けられている。図2のように、重錘部53には、揺動アーム51の揺動中心を成すピン52の軸線に直交して通気路53aが穿設され、その一端側に穿孔針54が突出状態で取り付けられている。穿孔針54は先端を尖らせた中空の丸軸であり、その材料には硬質金属が用いられる。
【0025】
尚、穿孔針54は、回転フレーム2内の定位置に収容された缶1の底部1aに対向する位置に設けられ、当該穿孔針54の軌道上では回転フレーム2の底面部2dが開放されて回転フレーム2内への穿孔針54の導入が許容されている。
【0026】
一方、エアフィルタ55は、通気性を有するケーシング55aと、その内部に収容される図示せぬエレメントから成る。そして、係るエアフィルタ55は、穿孔針54に対向して通気路53aの他端に装着され、そのエアフィルタ55と穿孔針54との内部が通気路53aを介して連通されている。
【0027】
次に、図3は液体入りの缶を収容した回転フレームの平面概略図を示す。この図で明らかなように、缶1の上部(四角形状を成す上面の角部分)には、液体を出し入れするための円形の口部1bが形成されると共に、その上面中央部には把手1cが取り付けられている。
【0028】
又、回転フレーム2は、その前方に張り出す直角な角部2eを有して上方視略5角形の形態とされている。そして、缶1は口部1bを有する一角を角部2eに向けて回転フレーム2内に収容される。特に、缶導入口2aを形成する回転フレーム2の上面部において、角部2eを成す2辺には内側に突出する帯状の突片2fが形成され、その両突片2fにて缶1の上縁が覆われるようになっている。
【0029】
尚、缶1は突片2fから外れた缶導入口2aの位置で、回転フレーム2に対する出し入れが可能であり、回転フレーム2の上下反転時には、缶1が突片2fによる保持により回転フレーム2内からの脱落を防止される。
【0030】
次に、図4は缶内容液の排出時の状態を示す。尚、図4では支持フレーム3を省略しているが、係る支持フレーム3は缶内容液を受け入れるタンク6の上面開口部に近接して配置される。
【0031】
又、図4において、実線は回転フレーム2の上下反転前の状態であり、このとき缶1は口部1bを上方にして回転フレーム2内に収容され、回転フレーム2に設けた穿孔手段5は回転フレーム2の底面部2dに位置して重錘部53が缶1より離間し、これに取り付けた穿孔針54が缶底部1aに臨んでいる。そして、この状態で、回転フレーム2を缶1の口部1b側(図4の反時計回り)に回転させてその上下を反転させると、回転フレーム2内に収容されている缶1も回転フレーム2内に保持されたまま上下反転され、その口部1bが下向きに転換されつつ該口部1bとは反対側の缶底部1aが上向きとなる。又、このとき揺動アーム51は重錘部53の自重により水平軸(ピン52)回りに揺動し、その一端重錘部53が缶底部1aに向けて降下し、その降下力により穿孔針54が缶底部1aを貫通する。
【0032】
これにより、穿孔針54、通気路53a、及びエアフィルタ55を通じて、缶1内部の液面上が大気中に連通され、当該液面上に大気圧が作用するために、缶1の内容液はタンク6の上面開口部を臨む下向き状態の口部1bを通じてタンク6内に速やかに排出されていく。尚、缶1内に流入する外気はエアフィルタ55により濾過されるため、缶1から排出される液体に空中浮遊物が混入することは防止される。
【0033】
ここで、缶1の口部1bを開放したまま、その上下反転が行われると、反転開始直後に口部1bから内溶液が排出され始め、これがタンク6から外れた位置に飛散してしまうため、本発明では缶内容液の排出に際して図5に示すような手動バルブ7が用いられる。
【0034】
図5のように、係る手動バルブ7は、円筒状を成すノズル管71の先端に、円盤状の弁体72を内蔵するバルブ本体73(バタフライ弁)を連ねた構成であり、弁体72の回転中心軸72aには開閉操作用の操作レバー74が外付けされている。又、ノズル管71の外周部には、ブラケット71aを介して一対のクランプレバー75が相対向して揺動自在に取り付けられる。尚、クランプレバー75はその揺動中心を成す結節軸76によりブラケット71aに取り付けられると共に、そのクランプレバー75とノズル管71との間には圧縮コイルバネ77が設けられ、これによりクランプレバー75の先端に形成される掛爪75aが閉じる方向に付勢されている。そして、係る手動バルブ7は、クランプレバー75の操作により缶1の口部1bに対して着脱自在とされる。
【0035】
図6は、缶1の口部1bに手動バルブ7を装着した状態を示す部分拡大断面図である。この図で明らかなように、クランプレバー75の先端掛爪75aは、圧縮コイルバネ77の付勢力にて口部1bの外周に食い付けられ、これにより口部1bとノズル管71が連通状態に結合されるようになっている。
【0036】
次に、以上のような手動バルブ7を含む本願装置を用いた缶内容液の排出方法について説明すれば、先ず初期位置に復帰されている回転フレーム2内に液体入りの缶1を収容するほか、これに前後にして缶1の口部1bに装着されている所定の蓋(キャップ)を取り外し、これに代えて図5のような手動バルブ7を缶1の口部1bに装着する。
【0037】
そして、手動バブル7の弁体72を閉鎖した状態のまま、図示せぬ起動スイッチを操作して駆動機構を構成するアクチュエータ4bを起動し、回転フレーム2の上下反転を開始する。しかして、回転フレーム2の下方位置にあった穿孔手段5が回転フレーム2の上方位置に移行すると、上記の如く上向き状態の缶底部1aを穿孔針54が貫通する。
【0038】
尚、穿孔針54による缶底部1aへの穿孔後も回転フレーム2は支点軸2bを中心に回転を続行されるが、これが所定の倒立位置まで移動すると、図示せぬ検出器により回転フレームの反転完了が検知され、以てアクチュエータ4bが停止される。
【0039】
そこで、手動バルブ7の操作レバー74を操作して弁体72を開放することにより、缶内容液の排出を開始するのであり、これによれば缶1内部の液面上が予め大気中に連通されているので、缶内容液を脈動させることなく層流状態で短時間のうちに排出することができる。
【0040】
以上、本発明について説明したが、穿孔手段5はエアフィルタ55を省略して構成することもできる。又、手動バルブ7として、上記例のほか種々のバルブを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る缶内容液の排出装置を示す正面概略図
【図2】同装置の側面概略図
【図3】同装置を構成する回転フレームとその内部に収容された缶を示す平面概略図
【図4】回転フレームの上下反転時の状態を示す説明図
【図5】手動バルブの構成を示す部分断面図
【図6】手動バルブを缶の口部に装着した状態を示す部分拡大断面図
【符号の説明】
【0042】
1 缶
1a 缶底部
1b 口部
2 回転フレーム
2a 缶導入口
2b 支点軸
3 支持フレーム
4 駆動機構
5 穿孔手段
51 揺動アーム
52 ピン(水平軸)
53 重錘部
53a 通気路
54 穿孔針
55 エアフィルタ
7 手動バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を出し入れするための口部を有した液体入りの缶を収容して保持する回転フレームと、この回転フレームを上下反転可能に支持する支持フレームと、前記回転フレームを上下反転させる駆動機構と、を有して成る缶内容液の排出装置であり、
前記缶の口部とは反対側の底部に穿孔を施すべく前記回転フレームに設けられる穿孔手段を備え、
その穿孔手段は、前記回転フレームに対して水平軸回りに揺動自在に取り付けられる揺動アームを有すると共に、
前記揺動アームの一端は、前記回転フレームの上下反転により該回転フレーム内に収容された缶の口部が下向きに転換されるとき上向きとなる缶の底部に向けて自重で降下する重錘部とされ、
前記重錘部には、該重錘部の降下により上向き状態の缶の底部を貫通して缶内部の液面上を大気中に連通させる中空の穿孔針が取り付けられることを特徴とする缶内容液の排出装置。
【請求項2】
重錘部には、穿孔針の内部を通じて缶内部に流入する外気を濾過するためのエアフィルタが取り付けられることを特徴とする請求項1記載の缶内容液の排出装置。
【請求項3】
缶の口部に装着される着脱自在な手動バルブを備えることを特徴とする請求項1、又は2記載の缶内容液の排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285215(P2008−285215A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133663(P2007−133663)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(302038855)株式会社深堀鉄工所 (6)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】