説明

缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置

【課題】外観に優れ、充填物の品質を維持することができる缶胴を確実に得ることができる缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置を提供する。
【解決手段】外周面161aに圧接された接合部153に対して搬送力を作用させる金属製の内側駆動ロール161と、外周面162a、163aに圧接された接合部の周辺部の搬送に従動して従動回転が可能とされた金属製の一対のフリーロール162、163と、外周面164a、165aに圧接された接合部のさらに外側の周辺部に対して搬送力を作用させる一対の外側駆動ロール164、165とからなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置に係り、特に、電気抵抗シーム溶接によって接合された円筒や角筒などの各種筒状体からなる缶胴の接合部を補正するのに好適な缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製の缶を製造する場合においては、円筒状もしくは角筒状に成形した缶胴の両端開口部に底部材および蓋部材を巻き締め結合して製造している。この種の缶胴を製造する場合には、金属薄板を折り曲げなどにより成形して筒状体にするとともに、この筒状体の端部を突き合わせて接合していた。従来、この筒状体の接合は半田や接着剤などで行われてきたが、近年、強度やコスト面を考慮して、筒状体の接合には溶接が多用されるようになってきた。この溶接としては、主として電気抵抗シーム溶接が行われている。このような溶接による接合部は、熱影響を受けて酸化しやすくなっており、さらに接合部にバリなどが発生して危険であるため、接合部に塗料を塗布したり、樹脂フィルムを被覆して補正することが不可欠であった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、筒状体からなる缶胴の電気抵抗シーム溶接による接合部に対して補正テープを圧着させることによって接合部の補正を行う補正装置が開示されている。この補正装置では、複数の缶胴のそれぞれの接合部を補正テープとの密着性を高めるために加熱した後に、各缶胴を補正テープの圧着位置に順次搬送し、圧着位置において缶胴の内側における接合部に上方から臨む位置に圧着ロールを位置させるとともに、缶胴を圧着ロールに対向するバックアップロールによって下方から保持させた上で、接合部に対して補正テープを介して圧着ロールを圧接させることによって、接合部に補正テープを圧着させるようになっている。そして、補正テープが圧着された缶胴は、バックアップロールの回転駆動によって後流側に搬送され、余剰の補正テープの切断除去が行われるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−199328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、缶胴の中には、その外周面にフィルムのラミネートまたは塗料のコーティングによる被覆層が形成されたものも存在する。
【0006】
この種の缶胴を前述した補正装置に適用した場合には、補正テープの圧着前に行われる接合部の加熱によって接合部の外周面に形成された被覆層が溶融または軟化(熱可塑化)することがある。そして、このように溶融または軟化した被覆層が、補正テープの圧着の際に圧着ロールの圧接力を介してバックアップロールに圧接する場合には、バックアップロールの剛性によって被覆層が変形することにより、缶胴の外周面に、変形した被覆層の形状を反映した疵が発生する虞がある。あるいは、溶融または軟化した被覆層がその粘性によってバックアップロールの外周面に転写することによって、現在補正テープの圧着が行われている缶胴に対する後続の缶胴に補正テープを圧着する際には、当該後続の缶胴の外周面に、被覆層が転写された状態のバックアップロールが圧接することになるため、当該後続の缶胴の外周面に、バックアップロールに転写された被覆層の形状を反映した押え痕が発生する虞がある。
【0007】
このような缶胴の外周面に発生する疵や押え痕は、例えば、バックアップロール全体を、シリコーンゴムのような弾性および離型性(換言すれば、被覆層からの剥離性)に優れた材料を用いて形成することによって回避することも可能と思われる。
【0008】
しかしながら、この場合であっても、例えば、バックアップロールが圧着ロールに接触するなどして、バックアップロールを形成するシリコーンゴムが圧着ロールに転写した場合には、次のような不具合が生じる虞がある。
【0009】
すなわち、圧着ロールにシリコーンゴムが転写された場合には、この転写されたシリコーンゴムは、これ以降に行われる補正テープの圧着の際に、今度は、缶胴の内周面に転写されることになる。そして、このようにシリコーンゴムが内周面に転写された缶胴によって形成された缶内に、溌液性物質との相性が悪い充填物(内容物)を充填させる場合には、缶内に転写されているシリコーンゴムの高い溌液性によって、充填物の品質が著しく劣化してしまう虞がある。特に、充填物として、塗料を充填させる場合には、塗料中にシリコーンゴムが混入することによって塗料の塗れ性が悪くなり、いわゆる塗装ハジキといった現象を引き起こす虞があった。
【0010】
したがって、従来は、疵や押さえ痕が少なく外観に優れているとともに、溌液性物質との相性が悪い充填物の品質を維持することができる缶を確実に得ることが困難であるといった問題が生じていた。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、外観に優れているとともに、溌液性物質との相性が悪い充填物の品質を維持することができる缶を確実に得ることができる缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、本発明の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールは、金属製の筒状体の端部を重ねてシーム溶接によって接合してなる円筒状または角筒状に形成されるとともに、その外周面に前記シーム溶接による接合部を避けるようにしてフィルムまたは塗料からなる被覆層が形成された缶胴に対して、前記接合部を加熱した上で前記缶胴の内側から圧着ロールを用いて前記接合部への補正テープの圧着を行う際に、前記缶胴の外側から前記圧着ロールに対向するようにして前記接合部およびその周辺部を保持し、かつ、前記補正テープの圧着が行われた前記缶胴を、前記補正テープの圧着の後段の処理が行われる位置に向かって搬送する缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールにおいて、前記補正テープの圧着の際に前記接合部が圧接される外周面を有し、この外周面の周方向の回転を行うことによって、当該外周面に圧接された前記接合部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる金属製の内側駆動ロールと、この内側駆動ロールの同軸上における軸方向の両外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部に前記軸方向において隣接する前記接合部の周辺部が圧接される外周面を有し、この外周面に圧接された当該周辺部の搬送に従動して前記内側駆動ロールと同軸の従動回転を行うことが可能とされた金属製の一対のフリーロールと、これら一対のフリーロールの同軸上における軸方向の外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部の周辺部に前記軸方向において隣接するさらに外側の周辺部が圧接される弾性の外周面を有し、前記内側駆動ロールと同軸かつ一体的な回転を行うことによって、当該外周面に圧接された当該外側の周辺部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる一対の外側駆動ロールとからなることを特徴としている。この場合、前記外側駆動ロールの外周面は、フッ素ゴムのライニングによって形成されてなることが好ましい。また、前記内側駆動ロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることが好ましい。さらに、前記フリーロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることが好ましい。さらにまた、前記圧着ロールの外周面は、前記圧着ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凸の円孤状に形成され、前記内側駆動ロールの外周面、前記一対のフリーロールの外周面、および前記一対の外側駆動ロールの外周面からなるバックアップロール全体の外周面は、前記内側駆動ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凹の円弧状に形成され、前記バックアップロール全体の外周面の前記断面の曲率半径は、前記圧着ロールの外周面の前記断面の曲率半径よりもわずかに大きく形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の缶胴接合部の補正装置は、金属製の筒状体の端部を重ねてシーム溶接によって接合してなる2つの開口を有する円筒状または角筒状に形成されるとともに、その外周面に前記シーム溶接による接合部を避けるようにしてフィルムまたは塗料からなる被覆層が形成された缶胴に対して、前記缶胴の内側から前記接合部への補正テープの圧着を行う缶胴接合部の補正装置において、前記缶胴を、前記開口を貫通する方向に沿って前記補正テープの圧着の前段の処理である前記接合部の加熱処理が行われた位置から前記補正テープの圧着位置へと搬送し、前記補正テープが圧着された前記缶胴を、前記補正テープの圧着位置から前記補正テープの圧着の後段の処理が行われる位置へと搬送する装置と、前記補正テープを前記補正テープの圧着位置に前記開口を貫通するようにして供給するとともに、前記補正テープの圧着位置において、前記補正テープを前記接合部に対して前記缶胴の内側から臨ませる装置と、前記補正テープの圧着位置に配設され、当該圧着位置に前記缶胴が搬送された際に、前記開口を通じて前記缶胴の内側に位置された状態として、前記加熱処理後における前記接合部に対して前記補正テープを介して圧接することによって、前記接合部に前記補正テープを圧着させる圧着ロールと、前記補正テープの圧着位置に配設され、前記補正テープの圧着の際に、前記缶胴の外側から前記圧着ロールに対向するようにして前記接合部およびその周辺部を保持し、かつ、前記補正テープの圧着が行われた前記缶胴を前記開口を貫通する方向に沿って前記補正テープの圧着の後段の処理が行われる位置に向かって搬送するバックアップロールとを備え、前記バックアップロールは、前記補正テープの圧着の際に前記接合部が圧接される外周面を有し、この外周面の周方向の回転を行うことによって、当該外周面に圧接された前記接合部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる金属製の内側駆動ロールと、この内側駆動ロールの同軸上における軸方向の両外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部に前記軸方向において隣接する前記接合部の周辺部が圧接される外周面を有し、この外周面に圧接された当該周辺部の搬送に従動して前記内側駆動ロールと同軸の従動回転を行うことが可能とされた金属製の一対のフリーロールと、これら一対のフリーロールの同軸上における軸方向の外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部の周辺部に前記軸方向において隣接するさらに外側の周辺部が圧接される弾性の外周面を有し、前記内側駆動ロールと同軸かつ一体的な回転を行うことによって、当該外周面に圧接された当該外側の周辺部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる一対の外側駆動ロールとからなることを特徴としている。この場合、前記外側駆動ロールの外周面は、フッ素ゴムのライニングによって形成されてなることが好ましい。また、前記内側駆動ロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることが好ましい。さらに、前記フリーロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることが好ましい。さらにまた、前記圧着ロールの外周面は、前記圧着ロールの回転軸を含む前記圧着ロールの径方向の切断面によって切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凸の円孤状に形成され、前記内側駆動ロールの外周面、前記一対のフリーロールの外周面、および前記一対の外側駆動ロールの外周面からなるバックアップロール全体の外周面は、前記内側駆動ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凹の円弧状に形成され、前記バックアップロール全体の外周面の前記断面の曲率半径は、前記圧着ロールの外周面の前記断面の曲率半径よりもわずかに大きく形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置によれば、外観に優れているとともに、溌液性物質との相性が悪い充填物の品質を維持することができる缶を確実に得ることができる。具体的には、圧着ロールを用いて接合部に補正テープを圧着する際に、外周面にフィルムまたは塗料からなる被覆層が形成された缶胴をバックアップローラに圧接させた場合であっても、缶胴の外周面に疵や押さえ痕が発生することを抑制することができる。また、このような疵や押え痕の発生を抑制することができるバックアップロールを、弾性および離型性に優れたシリコーンゴムを用いずとも実現することができるので、圧着ロールへのシリコーンゴムの転写、ひいては、缶内の充填物へのシリコーンゴムの混入を回避することができ、シリコーンゴムの高い溌液性を原因とした充填物の品質劣化を回避することができる。特に、充填物として塗料(例えば、自動車用塗料等)を用いる場合には、塗装ハジキを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置の実施形態について、図1から図13を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の補正装置の1実施形態、補正装置に対する前処理装置としてのシーム溶接装置およびリフォーム装置の概要を示している。
【0017】
図1aに示すように、これらの装置は工程順に、シーム溶接装置100、リフォーム装置110および補正装置90の順に配置されている。各装置100、110、90は、それぞれの搬送装置100a、110a、90aによって、略角筒状(本実施形態においては正四角筒状)に成形された未接合の金属製の筒状体15a、または、接合済みの筒状体15aからなる2つの開口を有する缶胴15を一定間隔で搬送させて、筒状体15aに対する電気抵抗シーム溶接による缶胴15の形成、缶胴15のリフォームおよび缶胴15の接合部の補正をそれぞれ行うようになっている。なお、缶体15は、円筒状のものであってもよい。
【0018】
シーム溶接装置100は、従来から公知の構成に形成されており、このシーム溶接装置100は、筒状体15aの周方向における両端部を重ね合わせた状態において、この両端部の重なり部分に対して電気抵抗シーム溶接(以下、シーム溶接と略称する)による接合処理を施すようになっている。この筒状体15aのシーム溶接は、筒状体15aの端部を0.3〜1.2mm重ねて行うとよい。なお、本実施形態において、筒状体15aおよび缶胴15は、その外周面および内周面に、樹脂フィルムまたは塗料からなる被覆層150、151が形成されたものとされている(図11参照)。ただし、被覆層150、151は、シーム溶接を適切に行う観点から、筒状体15aの端部すなわち缶胴15の接合部153を避けるようにして形成されている。
【0019】
リフォーム装置110は、シーム溶接装置100と同様に、従来から公知の構成に形成されており、このリフォーム装置110は、筒状体15aのシーム溶接によって形成された缶胴15の形状を適正な角筒状に矯正するようになっている。
【0020】
本実施形態における補正装置90は、リフォーム装置110側から搬送されて来た缶胴15に対して、補正テープを用いて接合部を補正する補正処理を施し、補正処理された缶胴15を、その開口を塞ぐ蓋部材の取り付け工程などへと送出するようになっている。
【0021】
本実施形態において、シーム溶接装置100の搬送装置100aは、爪付きのチェーンコンベアによって形成され、リフォーム装置110の搬送装置90aは、ロールで挟持して搬送するローラコンベアによって形成され、補正装置90の搬送装置90aは、ベルトコンベアによって形成されている。なお、図1aにおいては、便宜上、各搬送装置90a、100a、110aは、缶胴15の直下部分に模式的に示されている(図2、3等において同じ)が、実際には、図1b、cに示すように、横断面正方形状の缶胴15の接合部となる最下部は開放するようにして、缶胴15における横断面直線状の4つの側壁部のそれぞれの外側にベルトコンベアからなる搬送装置90a、100aを配設して缶胴15を搬送するようになっている。筒状体15aの搬送についても同様である。なお、各搬送装置90a、100a、110aには、筒状体15aまたは缶胴15の前後を挟んで所定間隔位置に保持する爪(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0022】
これらの装置90、100、110においては、リフォーム装置110における缶胴15の搬送速度がばらつく傾向にあるので、本実施形態においては、補正装置90における缶胴15の搬送状態を、隣接する缶胴15同士の間(間隔)を一定に保持しかつ安定させて順に搬送させるようになっている。具体的には、まず、第一に、図1aに示すように、補正装置90の搬送装置90aを駆動するモータ90Mの回転速度を、シーム溶接装置100の搬送装置100aを駆動するモータ100Mの回転速度に同期させるように制御する制御装置120が設けられている。この制御装置120は、シーム溶接装置100側のモータ100Mの回転速度をパルスジェネレータ等の速度センサ121により検出し、補正装置90側のモータ90Mの回転速度を制御するようになっている。各モータ90M、100Mはパルスモータとすると制御が容易である。特に、シーム溶接装置100においては、溶接の処理能力に対応して搬送速度を変化させることがあるために、補正装置90における搬送速度も可変させて同調させる必要がある。さらに、第二に、図2から図5に示すように、補正装置90においては、缶胴15が、搬送装置90aによって外側から支持されつつ搬送されるようになっており、また、補正装置90には、缶胴15の開口を通じて缶胴15内に挿入された状態で、缶胴15を適正な姿勢すなわち缶胴15の接合部を最下部にする姿勢に保ちつつ搬送させるためのセンタユニット130が設けられている。搬送装置90aおよびセンタユニット130の詳細は後述する。
【0023】
補正装置90についてさらに詳述すると、図2および図3に示すように、補正装置90は、搬送装置90aによって、缶胴15をその開口を搬送方向に向けて開口を貫通する方向に搬送しながら、搬送される缶胴15に対して、高周波加熱などによる加熱装置25を用いた加熱工程20、加熱された缶胴15の接合部に補正テープ32を圧着させるラミネート工程30、および隣接する缶胴15の間にまたがる余剰の補正テープ62を取り除くテープ除去工程60といった一連の工程からなる補正処理を施すようになっている。
【0024】
より具体的には、まず、補正装置90の搬送装置90aについて説明すると、図2に示すように、搬送装置90aは、基本構成となる補正装置90の全長に亘る長さの1本のピッチ強制コンベア10を有しており、このピッチ強制コンベア10は、補正装置90における搬送方向の両端部に配置された駆動輪11と従動輪12とに無端状に掛け回されている。また、ピッチ強制コンベア10は、缶胴15が位置ズレや脱落などを起こさないように、缶胴15を把持または位置決めするための爪機構13、14を有しており、この爪機構13、14により、テープ除去工程などでの缶胴15の間隔を一定に保つことができるようになっている。なお、爪機構13、14はコンベア10に一体的に形成されたものであってもよいし、また、コンベア10とは別装置としてコンベア10に連動する形態のものであってもよい。
【0025】
したがって、搬送方向において隣接する缶胴15同士の間隔はピッチ強制コンベア10および爪機構13、14により一定に保つことができるため、隣接する缶胴15の間に展張されていて廃棄される余剰テープ62を等長に制御することができ、補正テープ32に過度の張力を掛けずに缶胴15を搬送することができる。しかも、当該間隔が常に一定であるために、余剰テープ62を除去する手段を当該間隔内に確実に挿入させてテープ除去処理を施すことができる。
【0026】
搬送装置90aは、実際には、図3から図5に示すように、基本構成となるピッチ強制コンベア10と同一構成の複数の所定長のコンベア10a〜10gを、接合部を最下部にした横断面正方形状の缶胴15を構成する4つの側壁部の外面に対向させて配置して、缶胴15を搬送するように形成されている。これらのコンベア10a〜10gは、図4に示すように、缶胴15の横断面の鉛直中心線をもって線対称に配置されている。缶胴15における下側の2つの側壁部の下半部に下方から臨む位置には、搬送方向の長さが補正装置90の入口から加熱工程20の終了部分に至る長さに形成されたコンベア10aと、搬送方向の長さがラミネート工程30の終了部分から補正装置90の出口に至る長さに形成されたコンベア10bとが配置されている(図3から図5参照)。また、缶胴15における下側の2つの側壁部の上半部に下方から臨む位置には、搬送方向の長さが補正装置90の入口から出口に至る長さに形成されたコンベア10cが配置されている(図4および図5参照)。さらに、缶胴15における上側の2つの側壁部の下半部に上方から臨む位置には、搬送方向の長さが補正装置90の加熱工程20およびラミネート工程30の中間部にそれぞれに対応する長さに形成されたコンベア10d、10e、または、搬送方向の長さがラミネート工程30の終了部分から補正装置90の出口に至る長さに形成されたコンベア10fが配置されている(図3から図5参照)。さらにまた、缶胴15における上側の2つの側壁部の上半部に上方から臨む位置には、搬送方向の長さが補正装置90の加熱工程20の開始位置から補正装置90の出口に至る長さに形成されたコンベア10gが配置されている(図4および図5参照)。各コンベア10a〜10gは、それぞれ駆動輪11a〜11gと従動輪12a〜12g(図3においてのみ図示し、図5において図示を省略)とに掛け回されており、各駆動輪11a〜11gは、共通の補正装置90側のモータ90Mによって駆動されるようになっている。
【0027】
センタユニット130は、実際には図3および図6から図8に示すように形成されている。すなわち、センタユニット130は、補正装置90の長手方向に伸びる長尺角筒状の中心体131に構成各部を取り付けて形成されている。中心体131における搬送方向の両端部には、一対の下部支承ロール群132が、また、これら一対の下部支承ロール群132に対して搬送方向の内側近傍には、一対の上部支承ロール133がそれぞれ設けられており、これら下部支承ロール群132および上部支承ロール133によって、接合部への補正テープの圧着の際に中心体131が缶胴15内に支持されるようになっている。
【0028】
さらに、中心体131は、上流側の上部支承ロール133に対する下流側の近傍に、接合部に補正テープ32を熱圧着するための圧着ロールとしてのラミネータロール134が配設されており、このラミネータロール134の下流側には、ラミネート工程30において接合部とこの接合部に圧着された補正テープ32との間からの気泡を取り除く気泡取りロール135が配設されている。更に説明すると、図7に示すように、下部支承ロール群132は、中心体131の下面に固着した固定ステー136の左右両側に揺動ステー137を軸137aを中心として揺動自在に取付け、その揺動ステー137に4個のロール138を回転自在に取付けて、前述した缶胴15における下側の2つの側壁部を介してコンベア10aと対向して、センタユニット130全体の自重を支承するように形成されている。また、揺動ステー137と固定ステー136との間には、ダンパ機能を発揮するスプリング139が展張されており、このスプリング139によって、缶胴15が通過する際のセンタユニット130自身の振動や揺れを防止するようになっている。一方、図8に示すように、上部支承ロール133は、中心体131の下面に固着した固定ステー140の左右両側に1個の上部支承ロール133を回転自在に取付けて、前述した缶胴15における上側の2つの側壁部を介してコンベアロール141と対向して、補正テープ32のラミネート時の圧接力を保持するとともに、センタユニット130全体の上下左右方向の回転を防止するように形成されている。コンベアロール141は、補正装置90側のモータ90Mによって駆動されるようになっており、このコンベアロール141によって、缶胴15に対して搬送力が付与されて、缶胴15が安定して搬送されるようになっている。
【0029】
図3に示すように、ラミネート工程30における補正テープ32の圧着位置に配設され、缶胴15に対して補正テープ32を接合部に熱圧着する圧着工程40(図2参照)を施すラミネータロール134は、中心体131の下面側に配設された加圧シリンダ142によって図3における上下方向に進退可能とされている。そして、このラミネータロール134に対して図3における下方から対向する位置には、本発明のバックアップロール143が配設されている。
【0030】
ここで、図9は、バックアップロール143の図3における9−9線に沿った断面図を示すものである。また、図10は、図9の概略左側面図を示すものである。さらに、図11は、図9と同様の図3における9−9線に沿った概略断面図を、缶胴15および補正テープ32とともに示すものである。
【0031】
図11に示すように、バックアップロール143は、図2および図3に示した加熱工程20を経た缶胴15の加熱状態の接合部153に対してラミネータロール134を用いて補正テープ32を圧着させる際に、ラミネータロール134に対向した状態として缶胴15の接合部153およびその周辺部を下方から保持するようになっている。なお、図11に示すように、補正テープ32は、公知のテープ繰り出し機構によって、缶胴15の開口を通して缶胴15内に供給されており、補正テープ32の圧着位置においては、接合部153に対して缶胴15の内側から臨むようになっている。この圧着位置において、補正テープ32は、ラミネータロール134によって接合部153およびその周辺部に内側から圧着されるようになっている。補正テープ32の供給についてはさらに後述する。
【0032】
図9に戻って、バックアップロール143は、図9における横方向(図3における紙面垂直方向)に長尺な略円柱形状の回転軸155を有しており、この回転軸155の図9における右端部には、ギア156が固設されている。このギア156には、図3に示す補正装置90側のモータ90Mが他のギア167(図10参照)を介して連結されており、このモータ90Mの駆動力がギア156に伝達されることによって、バックアップロール143が回転駆動されるようになっている。そして、この回転駆動によって、バックアップロール143は、補正テープ32の圧着が行われた缶胴15を、後段の処理としての後述する気泡取り工程50(図2参照)が行われる位置に向かって搬送するようになっている。
【0033】
なお、バックアップロール143は、回転軸155をベアリング157を介して回転自在に保持する保持部158と、この保持部158の下端部に連結された柱状体159とを介して補正装置90のフレーム160上に固定されている。
【0034】
さらに、本実施形態において、バックアップロール143のロール本体は、回転軸155に沿って5つに分割されている。
【0035】
すなわち、バックアップロール143は、回転軸155に固設された金属製の内側駆動ロール161を有しており、この内側駆動ロール161の外周面161aには、図11に示すように、補正テープ32の圧着の際に、加圧シリンダ142によるラミネータロール134の圧接にともなって接合部153が圧接されるようになっている。なお、図11に示すように、接合部153には、その外周面および内周面のいずれにも、フィルムまたは塗料からなる被覆層150、151は形成されていない。そして、内側駆動ロール161は、外周面161aに接合部153が圧接された状態において、モータ90Mの駆動力を介して回転軸155を中心とした回転を行うことによって、接合部153に対して缶胴15を搬送するための搬送力を作用させるようになっている。
【0036】
また、内側駆動ロール161に対する軸方向の両外側位置(図9における左右)には、金属製の一対のフリーロール162、163が、それぞれベアリング162b、163bを介して回転軸155に回転自在に取り付けられている。図11に示すように、これら一対のフリーロール162、163のそれぞれの外周面162a、163aには、補正テープ32の圧着の際に、加圧シリンダ142によるラミネータロール134の圧接にともなって、接合部153に対して軸方向における両外側(図11における左右)において隣接する一対の接合部153の周辺部(以下、内側周辺部と称する)がそれぞれ圧接されるようになっている。そして、フリーロール162、163は、それぞれの外周面162a、163aに圧接された各内側周辺部の搬送に従動して、内側駆動ロール161と同軸の従動回転を行うようになっている。
【0037】
さらに、回転軸155における一対のフリーロール162、163に対する軸方向の両外側位置(図9における左右)には、フリーロール162、163と同軸とされた一対の外側駆動ロール164、165がそれぞれ固設されている。これら一対の外側駆動ロール164、165は、ほとんどの部分が金属製であるが、外周縁部164b、165bについては、弾性体によって柔軟に形成されている。図11に示すように、これら一対の外側駆動ロール164、165のそれぞれの外周面164a、165aすなわち外周縁部164b、165bの外周面164a、165aには、補正テープ32の圧着の際に、加圧シリンダ142によるラミネータロール134の圧接にともなって、内側周辺部に対して軸方向における両外側(図11における左右)において隣接する内側周辺部のさらに外側の周辺部(以下、外側周辺部と称する)がそれぞれ圧接されるようになっている。そして、外側駆動ロール164、165は、それぞれの外周面164a、165aに外側周辺部が圧接された状態において、モータ90Mの駆動力を介して回転軸155を中心とした内側駆動ロール161と同軸の回転を行うことによって、外側周辺部に対して缶胴15を搬送するための搬送力を作用させるようになっている。
【0038】
さらにまた、内側駆動ロール161の外周面161a、フリーロール162、163の外周面162a、163a、外側駆動ロール164、165の外周面164a、165aからなるバックアップロール143全体の外周面は、図11の断面の外形線すなわち内側駆動ロール161の径方向に沿って切断された断面の外形線(以下、径方向断面外形線と称する)が、当該径方向における外側に向けて凹の円弧状に形成されている。なお、図11に示すように、ラミネータロール134の外周面は、図11の断面の外形線すなわちラミネータロール134の径方向に沿って切断された断面の外形線(以下、径方向断面外形線と称する)が、当該径方向における外側に向けて凸の円孤状に形成されている。
【0039】
そして、このように5つのロール161、162、163、164、165に分割されたバックアップロール143によれば、たとえ、缶胴15の外周面に形成された被覆層150が加熱工程20における熱によって軟化していたとしても、接合部135の外周面にはもともと被覆層150が形成されていないので、この接合部135が圧接した内側駆動ロール161は、被覆層150に一切悪影響を与えずに缶胴15に十分な搬送力を付与することができる。一方、図11に示すように、一対のフリーロール162、163に圧接する内側周辺部には、被覆層150が形成されている。しかし、フリーロール162、163は、自発的に回転するものではなく缶胴15の搬送にともなって従動回転するものであるので、加熱工程20によって軟化した被覆層150に対して搬送方向への大きな力を作用させることはなく、被覆層150に大きな変形が生じることを抑制することができる。また、このようなフリーロール162、163は、被覆層150から剥離し易いので、フリーロール162、163の外周面への被覆層150の転写、すなわち、現在補正テープ32の圧着が行われている缶胴15に対する後続の缶胴15の外周面に押え痕が生じる原因を抑制することができる。さらに、図11に示すように、一対の外側駆動ロール164、165に圧接する外側周辺部にも、被覆層150が形成されている。しかし、外側駆動ロール164、165は、その外周面164a、165aが弾性を有しているため、被覆層150に対して搬送方向への大きな力を作用させることはなく、被覆層150に大きな変形が生じることを防止することができる。また、加熱工程20における缶胴15の加熱を接合部135に重点的(局所的)に行うようにすれば、この外側周辺部については比較的低温に維持することができるので、この外側周辺部に形成された被覆層150の軟化を抑制することができ、ひいては、外側駆動ロール164、165の外周面への被覆層150の転写、すなわち、前記押え痕が生じる原因を抑制することができる。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、5つのロール161、162、163、164、165に分割されたバックアップロール143によって、接合部153への補正テープ32の圧着の際に、缶胴15の被覆層150に缶胴15の外観を損ねる疵や押さえ痕が生じることを抑制することができる。
【0041】
また、このような分割構造を有するバックアップロール143を用いれば、弾性および離型性を確保するためにシリコーンゴムを用いることを要しないので、缶胴15を用いて形成される缶に充填される充填物の品質が、シリコーンゴムの高い溌液性を原因として劣化することを未然に回避することができる。特に、充填物として、塗料を用いる場合には、いわゆる塗装ハジキを防止することができ、塗装を適切に行うことができる。
【0042】
より好ましくは、外側駆動ロール164、165の外周縁部164b、165bを、フッ素ゴムのライニングによって形成する。そのようにすれば、シリコーンゴムに比べて溌液性を抑えることができるので、充填物の品質をさらに有効に維持することができる。
【0043】
さらに、より好ましくは、内側駆動ロール161の少なくとも外周面を、クロムメッキによって形成する。そのようにすれば、接合部153の圧接による内側駆動ロール161の摩耗を抑制することができ、製品寿命を向上させることができる。
【0044】
さらに、より好ましくは、フリーロール162、163の少なくとも外周面を、クロムメッキによって形成する。そのようにすれば、内側周辺部に形成された被覆層150に対するフリーロール162、163の離型性をさらに良好に確保することができる。このため、フリーロール162、163の外周面への被覆層150の転写をさらに確実に抑制することができ、現在補正テープ32の圧着が行われている缶胴15に対する後続の缶胴15の外周面に押え痕が生じることをさらに有効に抑制することができる。
【0045】
さらに、より好ましくは、前述のように円弧状に形成されたバックアップロール143全体の外周面の径方向断面外形線の曲率半径(図11におけるR)を、円弧状に形成されたラミネータロール134の外周面の径方向断面外形線の曲率半径(図11におけるr)よりもわずかに大きく形成する。そのようにすれば、バックアップロール143の外周面の径方向断面外形線の曲率半径が大きすぎることによって缶胴15に変形が生じてしまうことを防止することができ、また、当該径方向断面外形線の曲率半径が小さすぎることによってバックアップロール143が損傷することを防止することができる。より好ましくは、バックアップロール143全体の外周面の径方向断面外形線の曲率半径を、ラミネータロール134の外周面の径方向断面外形線の曲率半径よりも4mm程度大きくすることが望ましい。
【0046】
図3に戻って、気泡取りロール135も、ラミネータロール134と同様に、中心体131の下面側に加圧シリンダ144をもって対向するバックアップロール145に向けて上下方向に進退自在に配設されている。両バックアップロール143、145は共に補正装置90側のモータ90Mによって駆動されるようにされている。
【0047】
次に、加熱工程20についてさらに詳述すると、この加熱工程20においては、搬送装置90aによって搬送される缶胴15が、高周波加熱装置25によって下方から加熱されるようになっている。このとき、缶胴15は、次のラミネート工程30における補正テープ32の熱圧着のために、補正テープ32を形成する樹脂の溶融温度付近まで加熱されるようになっている。この際に加熱する範囲は、前述した外側周辺部に形成された被覆層150の外側駆動ロール164、165への転写を抑制する観点から、接合部およびその周辺であることが望ましい。
【0048】
次に、図12に示すように、補正テープ32は、図示しない繰り出し位置から公知の繰り出し機構によって繰り出された後に、補正装置90の前段階に設けられているシーム溶接工程100において、横断面Z字状(一般的にZバーと呼ばれる)の溶接機構部101に設けられた開口102を通じて筒状体15aの内部に進入した後に、筒状体15aの搬送方向に沿うようにして筒状体15aの内部から、これよりも後流に搬送されている缶胴15の内部に、缶胴15の開口を介して進入するようになっている。そして、缶胴15の内部に進入した補正テープ32は、缶胴15の搬送方向に沿って圧着位置側に向かって進行した後に、テープガイド33を介して圧着位置に供給されて、前述のようにラミネータロール134による圧着に用いられるようになっている。なお、補正テープ32は、その繰り出しの開始位置においてロール状に巻回収容されたものであってもよい。
【0049】
次に、シーム溶接工程100についてさらに詳述すると、まず、シーム溶接工程100においては、端部が未だにシーム溶接されていない状態の筒状体15aが、Zバー101の入口端部(図12aの左端部)から双方の端部をZバー101の溝に合わせるようにして供給されるようになっている(図12b参照)。次いで、筒状体15aは、Zバー101の長手方向に搬送されて出口端部(図12aの右端部)から搬出されるときには、シーム溶接が可能な状態に双方の端部が重複状態とされるようになっている(図12c参照)。その後、筒状体15aは、端部の重複部分を溶接部104においてシーム溶接されることによって、缶胴15に形成されるようになっている。この缶胴15は、リフォーム工程110において缶形状を修正された後に、次の補正工程90に搬送されるようになっている。なお、補正テープ32の供給は、缶胴15の通過する内面に配置したテープコイル(図示せず)を備えることで対応することもできる。
【0050】
ところで、ラミネート工程30においては、補正テープ32が連続テープとして供給されているので、ラミネート工程30後もしくは圧着工程40後には搬送方向において隣接する缶胴15の間に不要な補正テープ62が残ることとなる。そこで、次のテープ排出処理工程60においては、缶胴15の間に残った余剰の補正テープ62を取り去るようになっている。テープ排出処理工程60は、テープ分離機構を有するテープ分離工程と、テープ排出機構を有するテープ排出工程とによって形成されている。図2に示すように、テープ分離機構は、補正テープ62を保持するテープ保持部を有するクランプ機構70と、補正テープ62を缶胴外方へ引っ張るクランプ移動機構80とによって形成されている。より具体的には、図13に示すように、クランプ機構70は、下押え71と上押え72とを有している。これら下押え71および上押え72は、まず、図13a、bに示すように、隣接する缶胴15の間の余剰の補正テープ62をクランプし、次に、図13c、dに示すように、下方に平行移動(回転移動させてもよい)してクランプされた補正テープ62を引きちぎることによって、余剰の補正テープ62の機械的な分離を行うようになっている。なお、クランプ機構70は、エアチャックなどのエアシリンダ機器を用いることによって達成することができる。また、クランプ移動機構70は、クランプ機構70をエアシリンダやアクチュエータなどにより直線的往復運動や所定角度範囲の回転往復運動を行わせることにより達成することができる。さらに、図3に示すように、クランプ機構70によって分離された残余テープ62は、装置下方部に設けられた吸引ダクト77等からなる回収装置などのテープ排出機構により排出されるようになっている。回収装置としては、落下もしくは搬送された分離テープを集積するため、ベルトコンベアやバキュウーム装置などを用いることができる。クランプ装置70のテープ保持部に余剰テープ62が付着して離れない場合などは、バキューム装置などの強制的手段を用いることもできる。
【実施例】
【0051】
本実施例においては、図9に示す内側駆動ロール161を、直径170mm、外周面161aの図9における横方向の寸法を10mmとし、図9における右側のフリーロール162の右端部から図9における左側のフリーロール163の左端部までの寸法を27.5mmとし、図9における右側の外側駆動ロール164の右端部から図9における左側の外側駆動ロール165の左端部までの寸法を45mmとした。また、本実施例においては、バックアップロール143全体の外周面の径方向断面外形線の曲率半径Rを30mmとし、ラミネータロール134の外周面の径方向断面外形線の曲率半径rを26mmとした。さらに、本実施例においては、内側駆動ロール161を、クロムメッキが施されたスチール製とし、同様に、フリーロール162、163も、クロムメッキが施されたスチール製とした。さらにまた、本実施例においては、外側駆動ロール164、165の外周縁部164b、165bをフッ素ゴムによって形成し、外周縁部164b、165b以外の部分はスチール製とした。
【0052】
このような本実施例のバックアップロール143を用いて接合部153が補正された缶胴15を製造することによって、接合部153の周辺の被覆層150に疵や押え痕が少ない外観が良好な缶を得ることができた。より具体的には、バックアップロール全体を、クロムメッキが施されたスチール、フッ素ゴムライニング、またはテフロン(登録商標)樹脂のいずれによって形成した場合に比べても、遥かに外観に勝る缶を得ることができた。また、このような缶に充填された塗料は、優れた塗れ性を発揮することができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールおよびこれを備えた缶胴接合部の補正装置においては、内側駆動ロール、一対のフリーロールおよび一対の外側駆動ロールの5つに分割されたバックアップロールを用いることによって、外観に優れた缶を得ることができ、ひいては、歩留まりを向上させることができ、さらに、充填物の品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は本発明の溶接缶シーム溶接部の補正装置の一実施形態を用いた溶接缶製造装置の全体を示す概略断面図、(b)は(a)の1b−1b線に沿った断面図、(c)は(a)の1c−1c線に沿った断面図
【図2】本発明の溶接缶シーム溶接部の補正装置の一実施形態を示す概略断面図
【図3】本発明の溶接缶シーム溶接部の補正装置の一実施形態を詳細に示す断面図
【図4】(a)は図3の4a−4a線に沿った断面図、(b)は図3の4b−4bおよび4f−4f線に沿った断面図、(c)は図3の4c−4cおよび4e−4e線に沿った断面図、(d)は図3の4d−4d線に沿った断面図
【図5】搬送装置のコンベアの配置状態を示す缶胴の断面方向に展開した展開図
【図6】センターユニットの1実施形態を示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)の6b−6b線に沿った断面図、(c)は(a)の6c−6c線に沿った断面図
【図7】センターユニットの下部支承ロール群を示す部分斜視図
【図8】センターユニットの上部支承ロールを示す下方からみた部分斜視図
【図9】本発明のバックアップロールの実施形態において、図3における9−9線に沿った断面図
【図10】図9の概略左側面図
【図11】バックアップロールの図3における9−9線に沿った概略断面図を、缶胴および補正テープとともに示す図
【図12】缶胴をシーム溶接する工程を示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)の12b−12b線に沿った断面図、(c)は(a)の12c−12c線に沿った断面図
【図13】余剰の補正テープを切り取るクランプ機構の一実施形態を示し、(a)(b)は補正テープのクランプ前の状態を示す断面図と側面図、(c)(d)は補正テープの切り取った状態を示す断面図と側面図
【符号の説明】
【0055】
90 補正装置
134 ラミネータロール
143 バックアップロール
161 内側駆動ロール
162、163 フリーロール
164、165 外側駆動ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筒状体の端部を重ねてシーム溶接によって接合してなる円筒状または角筒状に形成されるとともに、その外周面に前記シーム溶接による接合部を避けるようにしてフィルムまたは塗料からなる被覆層が形成された缶胴に対して、前記接合部を加熱した上で前記缶胴の内側から圧着ロールを用いて前記接合部への補正テープの圧着を行う際に、前記缶胴の外側から前記圧着ロールに対向するようにして前記接合部およびその周辺部を保持し、かつ、前記補正テープの圧着が行われた前記缶胴を、前記補正テープの圧着の後段の処理が行われる位置に向かって搬送する缶胴接合部の補正に用いるバックアップロールにおいて、
前記補正テープの圧着の際に前記接合部が圧接される外周面を有し、この外周面の周方向の回転を行うことによって、当該外周面に圧接された前記接合部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる金属製の内側駆動ロールと、
この内側駆動ロールの同軸上における軸方向の両外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部に前記軸方向において隣接する前記接合部の周辺部が圧接される外周面を有し、この外周面に圧接された当該周辺部の搬送に従動して前記内側駆動ロールと同軸の従動回転を行うことが可能とされた金属製の一対のフリーロールと、
これら一対のフリーロールの同軸上における軸方向の外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部の周辺部に前記軸方向において隣接するさらに外側の周辺部が圧接される弾性の外周面を有し、前記内側駆動ロールと同軸かつ一体的な回転を行うことによって、当該外周面に圧接された当該外側の周辺部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる一対の外側駆動ロールと
からなることを特徴とする缶胴接合部の補正に用いるバックアップロール。
【請求項2】
前記外側駆動ロールの外周面は、フッ素ゴムのライニングによって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロール。
【請求項3】
前記内側駆動ロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロール。
【請求項4】
前記フリーロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロール。
【請求項5】
前記圧着ロールの外周面は、前記圧着ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凸の円孤状に形成され、
前記内側駆動ロールの外周面、前記一対のフリーロールの外周面、および前記一対の外側駆動ロールの外周面からなるバックアップロール全体の外周面は、前記内側駆動ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凹の円弧状に形成され、
前記バックアップロール全体の外周面の前記断面の曲率半径は、前記圧着ロールの外周面の前記断面の曲率半径よりもわずかに大きく形成されていること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の缶胴接合部の補正に用いるバックアップロール。
【請求項6】
金属製の筒状体の端部を重ねてシーム溶接によって接合してなる2つの開口を有する円筒状または角筒状に形成されるとともに、その外周面に前記シーム溶接による接合部を避けるようにしてフィルムまたは塗料からなる被覆層が形成された缶胴に対して、前記缶胴の内側から前記接合部への補正テープの圧着を行う缶胴接合部の補正装置において、
前記缶胴を、前記開口を貫通する方向に沿って前記補正テープの圧着の前段の処理である前記接合部の加熱処理が行われた位置から前記補正テープの圧着位置へと搬送し、前記補正テープが圧着された前記缶胴を、前記補正テープの圧着位置から前記補正テープの圧着の後段の処理が行われる位置へと搬送する装置と、
前記補正テープを前記補正テープの圧着位置に前記開口を貫通するようにして供給するとともに、前記補正テープの圧着位置において、前記補正テープを前記接合部に対して前記缶胴の内側から臨ませる装置と、
前記補正テープの圧着位置に配設され、当該圧着位置に前記缶胴が搬送された際に、前記開口を通じて前記缶胴の内側に位置された状態として、前記加熱処理後における前記接合部に対して前記補正テープを介して圧接することによって、前記接合部に前記補正テープを圧着させる圧着ロールと、
前記補正テープの圧着位置に配設され、前記補正テープの圧着の際に、前記缶胴の外側から前記圧着ロールに対向するようにして前記接合部およびその周辺部を保持し、かつ、前記補正テープの圧着が行われた前記缶胴を前記開口を貫通する方向に沿って前記補正テープの圧着の後段の処理が行われる位置に向かって搬送するバックアップロールと
を備え、
前記バックアップロールは、
前記補正テープの圧着の際に前記接合部が圧接される外周面を有し、この外周面の周方向の回転を行うことによって、当該外周面に圧接された前記接合部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる金属製の内側駆動ロールと、
この内側駆動ロールの同軸上における軸方向の両外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部に前記軸方向において隣接する前記接合部の周辺部が圧接される外周面を有し、この外周面に圧接された当該周辺部の搬送に従動して前記内側駆動ロールと同軸の従動回転を行うことが可能とされた金属製の一対のフリーロールと、
これら一対のフリーロールの同軸上における軸方向の外側位置にそれぞれ配設され、前記補正テープの圧着の際に前記接合部の周辺部に前記軸方向において隣接するさらに外側の周辺部が圧接される弾性の外周面を有し、前記内側駆動ロールと同軸かつ一体的な回転を行うことによって、当該外周面に圧接された当該外側の周辺部に対して前記缶胴を搬送するための搬送力を作用させる一対の外側駆動ロールと
からなることを特徴とする缶胴接合部の補正装置。
【請求項7】
前記外側駆動ロールの外周面は、フッ素ゴムのライニングによって形成されてなることを特徴とする請求項6に記載の缶胴接合部の補正装置。
【請求項8】
前記内側駆動ロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることを特徴とする請求項6または7に記載の缶胴接合部の補正装置。
【請求項9】
前記フリーロールの外周面は、クロムメッキによって形成されてなることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の缶胴接合部の補正装置。
【請求項10】
前記圧着ロールの外周面は、前記圧着ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凸の円孤状に形成され、
前記内側駆動ロールの外周面、前記一対のフリーロールの外周面、および前記一対の外側駆動ロールの外周面からなるバックアップロール全体の外周面は、前記内側駆動ロールの径方向に沿って切断された断面の外形線が、当該径方向における外側に向けて凹の円弧状に形成され、
前記バックアップロール全体の外周面の前記断面の曲率半径は、前記圧着ロールの外周面の前記断面の曲率半径よりもわずかに大きく形成されていること
を特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の缶胴接合部の補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−45633(P2009−45633A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212140(P2007−212140)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)