説明

罫線を備えた磁気パネル

【課題】磁気パネルに設けた罫線が磁気ペン等により擦られて剥がれて見づらくなってしまうことがなく、暗線としての機能を備え、さらに必要に応じて罫線の種類やレイアウトを別の形態に変更することができる磁気パネルを提案する。
【解決手段】透明な表面板の裏側に隣合う小室が透明な隔壁により仕切られた複数の液体収容室を形成し、該液体収容室に、表示用磁性体を分散媒へ分散してなる分散液体を収容した磁気パネルにおいて、前記液体収容室の背面に罫線を設けた背面板を配設し、前記透明な隔壁を通して前記背面板に設けた罫線を表示することを特徴とする罫線を備えた磁気パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な表面板の裏側に隣合う小室が透明な隔壁により仕切られた複数の液体収容室を形成し、該液体収容室に、表示用磁性体を分散媒へ分散してなる分散液体を収容した磁気パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気により表示を行うことができる磁気表示方法を用いた磁気パネルは知られており、該磁気パネルとしては、表示用磁性体を泳動させて表示を行う磁気泳動表示方法や表示用磁性体を反転させて表示を行う磁気反転表示方法の磁気パネルが提案されている。
【0003】
前記磁気泳動表示方法としては例えば特公昭62−53359号公報に記載されているものがある。該公報の磁気パネルは、表面板の裏側に多セル構造の液体収容室を設け、該液体収容室に表示用磁性体である磁性粒子を着色分散媒に分散した分散液体を封入し、表面板側から分散液体に磁界を作用させることにより、分散液体中の表示用磁性体を表面板側に引寄せて表示を行う方法が記載されている。この磁気泳動表示方法を用いた磁気パネルは、表面板側に磁気ペンを近づけて記録すると、磁気ペンの磁界により吸引された表示用磁性体が表面板側に泳動して、表示用磁性体と着色分散媒の色のコントラストの差で筆跡を表示する。また表面板側に吸引された表示用磁性体は、裏側から磁気イレ−ザで磁界を与えると裏側に引き寄せられ、表示された筆跡を消去することができる。
【0004】
一方磁気反転表示方法としては例えば特公昭59−32796号公報に記載されているものがある。該公報の磁気パネルは、表面板の裏側に多セル構造の液体収容室を設け、該液体収容室内にS極側表面部分とN極側表面部分とが異なる色である微小磁石を表示用磁性体として封入し、表面板側から分散液体に磁界を作用させることにより、分散液体中の表示用磁性体を反転させて表示を行う磁性体反転表示方法が記載されている。この磁性体反転表示方法を用いた磁気パネルは、N極側表面部分を表面板側に向けた状態の磁気パネルに対し磁気ペンのN極を近づけて記録すると、磁気ペンの磁力により反転された表示用磁性体のS極側表面部分と反転してないN極側表面部分との色のコントラストの差で筆跡を表示する。また反転された表示用磁性体は、表面板側から磁気イレーザーのS極を近づけると表示用磁性体が再反転して表示された筆跡を消去することができる。
【0005】
これら磁気パネルは、黒板やホワイトボードのような使い方をされるため、罫線がパネル面に設けてあるものが望まれている。この罫線を磁気パネルに設ける方法としては、ホワイトボード同様に表面板の表面側に罫線の印刷を行ったり、色つきの粘着テープを貼付けて罫線を表示する方法が一般的である。あるいは特開2003−191690号公報に記載されているように、表面板の裏面側に罫線の印刷をしたものが提案されている。これら筆記板面に設ける罫線は、細線や破線を用いたり、罫線の色として筆記板面の色に対するコントラストが低い色を用いて、線を目立たなくした暗線も好まれている。
【0006】
【特許文献1】特公昭62−53359号
【特許文献2】特公昭59−32796号
【特許文献3】特開2003−191690号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、磁気パネルの表面板は樹脂で成形されているため、ホワイトボートとは異なり表面板に罫線を印刷した後に焼き付け加工を行うことができず、罫線の定着性が低く、表面板の表面に印刷したものにおいては、磁気ペン等で表面板に書き消しを繰り返し行っている内に罫線が剥がれて見づらくなってしまうという問題がある。また、表面板に色つきの粘着テープを貼付けて罫線を表示したものも同様に、磁気ペン等により擦られて粘着テープが剥がれて見づらくなってしまうという問題があった。上記いずれの方法においても、罫線が表面板の板面から浮き出た状態となるため、筆記時に磁気ペンが引っ掛かって筆記感が悪くなったり、ゴミや汚れが付着しやすいという問題があった。前述した磁性体反転表示パネルは、全ての書き消し作業が罫線を設けた表面板に対して行われるため、表面板に磁気ペンや磁気イレーザー等の磁性用具が頻繁に接触して罫線が特に剥がれやすい構造である。尚、特開2003−191690号公報のものは、罫線が表面板の裏側に存在するため、別の罫線パターンに変更したい時は、磁気パネルの表面板自体を交換しなければならず、現実的には罫線の変更は困難なことである。
【0008】
本発明はこうした事実に鑑み、磁気パネルに設けた罫線が、磁気ペン等により擦られて剥がれて見づらくなってしまうことがなく、暗線としての機能を備え、さらに必要に応じて罫線パターンを別の形態に変更することができる構造の罫線を備えた磁気パネルを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は以下の手段により解決される。すなわち、本発明は、
「1.透明な表面板の裏側に隣合う小室が透明な隔壁により仕切られた複数の液体収容室を形成し、該液体収容室に、表示用磁性体を分散媒へ分散してなる分散液体を収容した磁気パネルにおいて、前記液体収容室の背面に罫線を設けた背面板を配設し、前記透明隔壁を通して前記背面板に設けた罫線を表示することを特徴とする罫線を備えた磁気パネル。
2.前記磁気パネルが、前記表示用磁性体をS極側表面部分とN極側表面部分とが異なる色である磁石とした磁気反転表示パネルであって、前記罫線を鉄板である背面板に形成したことを特徴とする1に記載の罫線を備えた磁気パネル。
3.前記磁気パネルの外周に枠体を周設し、該枠体の少なくとも一辺に設けた開口部より前記背面板を挿脱可能としたことを特徴とする1または2に記載の罫線を備えた磁気パネル。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の罫線を備えた磁気パネルは、罫線が、磁気パネルの背面にある背面板に設けられるので磁気ペン等により擦られて剥がれることがなく、且つ液体収容室の部分が分散液体により隠蔽されると共に透明な隔壁を通して見ることができるので、結果的に細い暗線となる。また、背面板を磁気パネル本体から取り外せるようにして、異なる罫線パターンの複数の背面板を交換可能とすることにより、一枚の磁気パネルで様々な使い方ができるものとなる。特に、磁気パネルの周辺を枠体で囲い、その枠体に設けた開口部から背面板を挿脱可能とすることによって、背面板の取り換えが容易なものとなり磁気パネルの使い道がひろがる。
【0011】
本発明における隔壁とは、透明な表面板の裏側において六角形や四角形や円形等の多セル構造としたりあるいは球体構造にして、隣り合った小室を仕切り、各液体収容室内の分散液体が互いに混ざり合わないようにしたものである。尚、隔壁は、透明な樹脂を用いて成形することができ、透明度に関しては磁気パネルの表面側から背面に配設した背面板の罫線が視認できるものであれば良い。背面板は、樹脂や金属等の材質を使用することができる。特に磁性体反転表示パネルの場合においては背面板を鉄板で成形することにより、磁気ペンや磁気イレーザー等の磁界を効率良く磁気パネルに影響させることができる。背面板に罫線を設ける方法としては、インクジェットやトナーや熱転写リボンを用いて印刷機によって印刷する方法や、塗料を用いてシルク印刷を行う方法等がある。あるいは色付きの粘着テープを貼付けて罫線を形成しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を理解し易くするために図を用いて説明を行なう。尚、本実施の形態では磁気パネルとして、前述の磁性体反転表示方法を用いた磁気パネルについて説明を行う。図1は本実施の形態の磁気パネルの内部構造断面図である。図1を用いて磁気パネルの内部構造を簡単に説明をすると、磁気パネル1は、表示面側となる透明な表面板2及びその反対側となる裏面板3の間に、ハニカム構造(表面側から見て六角形)の透明な隔壁4を配置し、隔壁4により仕切られた小室を液体収容室5としてある。液体収容室5には、分散媒と増稠剤とからなる分散媒6中に表示用磁性体7を分散した降伏値を有する分散液体8を収容してある。表示用磁性体7はS極側表面部分を緑色に着色し、N極側表面部分を白色に着色した微小磁石である。また、裏面板3の背面には鉄板である背面板9を配設してある。この背面板9の表側には罫線10を印刷してある。
【0013】
磁気パネル1に表示情報を書き込むには、例えば、透明な表面板2が白色(N極側表面部分)の状態で、ペン形状の磁気ペン100の前方部に設けたN極の磁極部100aを、透明な表面板2に接触した状態で矢印T方向へ移動させると、磁力(図中の矢印W)により表示用磁性体7の緑色(S極側表面部分)が線状に透明な表面板2側へ配置される。この場合、白色(N極側表面部分)の透明な表面板2側に緑(S極側表面部分)の筆跡が表示される。逆に、白色の背景に緑(S極側表面部分)の表示が行われている透明な表面板2を白色に戻す場合には、磁気イレーザー110を使用する。磁気イレーザー110は平べったい磁石であり、S極110a側を磁気パネル1の透明な表面板2の緑(S極側表面部分)の表示に接触させると、磁力(図中の矢印X)により表示用磁性体7の白色(N極側表面部分)が透明な表面板2側に配置されて白色となる。
【0014】
図2は本実施の形態の磁気パネルに筆記を行った状態の表面板の一部である。背面板に設けた罫線10は、磁気パネル1の透明な隔壁4の部分を通して表側から見ることができる。また罫線10は、液体収容室5の部分が分散液体8中の表示用磁性体7に隠蔽されて見ることができなくなっており、細い暗線となって表示される。尚、前記磁気ペンで書いた筆跡「A」「B」は罫線10を基準にして書くことができた。
【0015】
図3は磁気パネルに枠体を周設した状態の図である。図4は図3の断面図である。図に示すように磁気パネル1の外周には枠体11を周設してある。枠体11は磁気パネル1の表面に対し直交する直交面11Aと、平行する平行面11B,11Cとを有した断面がコの字形状のものである。平行面11Bの内側に磁気パネル1を固着し、平行面11Cの内側にパーチクルボード12を固着してある。また、枠体11の上部に開口部11Dを設け、背面板9を開口部11Dより挿脱可能としてある。したがって本実施の形態では、磁気パネルの背面に対して、異なる罫線パターンの複数の背面板が容易に交換可能となっている。図3では3種類の罫線パターン10A,10B,10Cを設けた背面板9A,9B,9Cがセットされる。また本実施の形態では、各背面板9A,9B,9Cの上部につまみ部9a,9b,9cを設けて開口部11Dへの挿脱をさらに行い易いようにしてある。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、磁気泳動表示方法や磁性体反転表示方法の磁気パネルに使用することができる。また、液体収容室に表示用磁性体であるS極側表面部分とN極側表面部分とが異なる色の微小磁石を着色分散媒に分散した分散液体を封入し、表面板側から磁石のS極又はN極を近づけて分散液体に磁界を作用させることにより前記表示用磁性体を表面側に引寄せて表示させ、さらに前記と反対の磁極により前記表示用磁性体を反転させて筆跡を別の色に変更し、またパネルの裏側から磁界を作用させることにより前記表示用磁性体を裏側に引寄せて筆跡を消去することができる構造の磁気泳動反転表示方法を用いた磁気パネルに使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態の磁気パネルの内部構造断面図である。
【図2】磁気パネルに筆記を行った状態の表面板の一部である。
【図3】磁気パネルに枠体を周設した状態の図である。
【図4】図3の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1…磁気パネル、2…透明な表面板、3…裏面板、4…透明な隔壁、
5…液体収容室、6…分散液体、7…表示用磁性体、8…分散液体、
9…背面板、10…罫線、11…枠体、11D…開口部。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な表面板の裏側に隣合う小室が透明な隔壁により仕切られた複数の液体収容室を形成し、該液体収容室に、表示用磁性体を分散媒へ分散してなる分散液体を収容した磁気パネルにおいて、前記液体収容室の背面に罫線を設けた背面板を配設し、前記透明な隔壁を通して前記背面板に設けた罫線を表示することを特徴とする罫線を備えた磁気パネル。
【請求項2】
前記磁気パネルが、前記表示用磁性体をS極側表面部分とN極側表面部分とが異なる色である磁石とした磁気反転表示パネルであって、前記罫線を鉄板である背面板に形成したことを特徴とする請求項1に記載の罫線を備えた磁気パネル。
【請求項3】
前記磁気パネルの外周に枠体を周設し、該枠体の少なくとも一辺に設けた開口部より前記背面板を挿脱可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の罫線を備えた磁気パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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