説明

置き敷きマット及びその製造方法

【課題】 タフトカーペットからなる敷き詰めカーペット表面に置いても、滑りにくくずれにくい置き敷きマットを提供する。
【解決手段】 この置き敷きマットは、置き敷きマット本体裏面に柄模様を持つ。この柄模様は、繊度10〜20デニールで繊維長1.5〜2.5mmの熱可塑性合成繊維からなる植毛繊維が、部分的にフロック加工されることにより、起立して植毛されたものである。柄模様は、起立した植毛繊維よりなり、マット本体裏面から突出された形成されている。したがって、この置き敷きマットを、自動車に敷き詰められたタフトカーペットからなるラインカーペット上に敷くと、柄模様がラインカーペット表面に食い込み、置き敷きマットが滑りにくくなり、ずれるのを防止しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置き敷きマット及びその製造方法に関し、裏面に滑り止めが施されてなる置き敷きマット及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車や屋内等の床全体にカーペットが敷き詰められている。この敷き詰めカーペットとしては、ニードルパンチカーペットが用いられたり、タフトカーペットが用いられている。そして、特に雨天時等に敷き詰めカーペットが汚れるのを防止するため、その上に略四辺形のマットが置き敷きされている。かかる置き敷きマットとしては、合成樹脂製マット、ニードルパンチ不織布製マット(これは、敷き詰めカーペットに用いられるニードルパンチカーペットと同等品であって、その大きさが略四辺形となっているものである。)又はタフト製マット(これは、敷き詰めカーペットに用いられるタフトカーペットと同等品であって、その大きさが略四辺形となっているものである。)等が用いられている。
【0003】
この置き敷きマットは、敷き詰めカーペット上で滑りにくいことが要求されている。置き敷きマットが滑りやすいと、使用中に所定の位置からずれてしまうからである。特に、自動車用置き敷きマットの場合、それがずれやすいと、人が乗車又は降車する際の着席時又は起立時に危険だからである。かかる置き敷きマットとして、ニードルパンチ不織布製マットの裏面を毛焼き加工して、ニードルパンチ不織布の構成繊維を溶融させ、樹脂塊を設けることが提案されている(特許文献1及び2)。すなわち、毛焼き加工することにより、置き敷きマットの裏面に多数の樹脂塊が形成され、この樹脂塊が敷き詰めカーペット表面に食い込み、アンカー効果によって置き敷きマットが滑りにくくなるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4163号公報
【特許文献2】特開2007−51387号公報
【特許文献3】特開平11−200257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載されている毛焼きしたニードルパンチ不織布製マットは、樹脂塊によって滑り止め効果を発揮するものであり、それをニードルパンチカーペットからなる敷き詰めカーペット上に置くと、十分な滑り止め効果を発揮する。しかしながら、タフトカーペットからなる敷き詰めカーペットの上に置くと、殆ど滑り止め効果を発揮しないものであった。この理由は、タフトカーペットからなる敷き詰めカーペットの表面は、ニードルパンチカーペットからなる敷き詰めカーペットと比べて、毛足の長いカットパイル又はループパイルで形成されているため、前記した樹脂塊が十分に食い込まず、アンカー効果が働きにくいからである。
【0006】
そこで、本発明の課題は、タフトカーペットからなる敷き詰めカーペット表面に置いても、滑りにくくずれにくい置き敷きマットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、基材をフロック加工し植毛することによって、衣料用滑り止めシートを得ることが知られている(特許文献3)ので、このようなフロック加工によって滑りにくい、置き敷きマットが得られるのではないかと考えた。しかしながら、特許文献3に記載されたフロック加工では、滑りにくい置き敷きマットは得られなかった。本発明者は、植毛される繊維(以下、「植毛繊維」という。)及びフロック加工の方法を検討していたところ、特定の植毛繊維を用い、特定のフロック加工によって、滑りにくい置き敷きマットを得ることに成功し、本発明に至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、自動車や屋内等の床に敷き詰めされたタフトカーペット上に敷かれる置き敷きマットにおいて、前記置き敷きマットは、置き敷きマット本体の前記タフトカーペットと当接する面に、部分的にフロック加工が施されることによって、繊度10〜20デニールで繊維長1.5〜2.5mmの熱可塑性合成繊維が柄模様で植毛されていることを特徴とする置き敷きマット及びその製造方法に関するものである。
【0009】
本発明に係る置き敷きマットは、自動車の床に敷き詰められたカーペット(自動車の場合、ラインカーペットとも呼ばれる。)の上に置き敷きされるものである。また、屋内等の床に敷き詰められたカーペットの上に置き敷きされるものである。そして、この敷き詰めカーペットはタフトカーペットからなるものである。敷き詰めカーペットをタフトカーペットに限定した理由は、敷き詰めカーペットがニードルパンチカーペットであれば、前記したとおり、特許文献1又は2に記載の方法によって、滑りにくい置き敷きマットが得られるので、本発明を使用する必要性に乏しいからである。タフトカーペットは、カットパイルタフトカーペットでもループパイルタフトカーペットでもよいし、カットパイルとループパイルとが混在してなるカット&ループカーペットでもよい。
【0010】
本発明に係る置き敷きマットは、マット本体1と、敷き詰めカーペットと当接する当該マット本体1の面(以下、「マット本体裏面」という。)に植毛繊維で形成された柄模様2とからなる。マット本体1は、従来用いられているものであれば、どのようなものでも用いることができる。たとえば、ニードルパンチ製不織布、タフト製マット又は合成樹脂製マット等が用いられる。ニードルパンチ製不織布は、従来より、敷き詰めカーペットとして用いられているニードルパンチカーペットと同等品であってよい。また、タフト製マットも、従来より、敷き詰めカーペットとして用いられているタフトカーペットと同等品であってよい。
【0011】
マット本体裏面に形成される柄模様2は、植毛繊維を部分的にフロック加工することによって、施されている。植毛繊維としては、繊度10〜30デニールで繊維長1.5〜2.5mmの熱可塑性合成繊維が用いられる。繊度が10デニール未満になると、植毛繊維の剛直さが低下し、滑り止め効果が不十分となる。繊度が30デニールを超えても差し支えないが、繊度が大きすぎするとあまり実用的ではない。また、繊維長が1.5mm未満になると、フロック加工によって植毛繊維はほぼ起立した状態で植毛されるのであるが、敷き詰めカーペット表面に食い込みにくくなり、滑り止め効果が不十分となる。繊維長が2.5mmを超えると、いったん起立した状態で植毛されても、倒れやすくなり、敷き詰めカーペット表面に食い込みにくくなり、滑り止め効果が不十分となる。熱可塑性繊維の種類は適宜決定しうる事項であり、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等が用いられる。特に、フロック加工しやすいナイロン繊維であるのが好ましい。
【0012】
フロック加工は部分的に施され、これによって柄模様2となる。フロック加工をマット本体裏面の全面に施すと、敷き詰めカーペット表面に食い込みにくくなり、滑り止め効果が不十分となる。すなわち、柄模様2は、起立した植毛繊維で形成されているから、マット本体裏面から約1〜2mm程度突出していることになる(図1)。この突出していることによって、敷き詰めカーペット表面によく食い込むのである。なお、植毛繊維の繊維長は1.5〜2.5mmであるが、これをフロック加工すると、マット本体裏面の内部に0.5mm程度突き刺さるため、柄模様2の突出長さは約1〜2mmとなるのである。
【0013】
柄模様2は、起立した植毛繊維で形成されているが、柄模様2中における植毛繊維の量は、300〜400g/m2程度である。植毛繊維の量が300g/m2未満になると、敷き詰めカーペット表面へ食い込む植毛繊維の量が少なくなり、滑り止め効果が低下する傾向が生じる。植毛繊維の量が400g/m2を超えると、フロック加工に要する時間が長くなり、生産性が低下する傾向が生じる。
【0014】
フロック加工は、従来公知の方法で行われる。まず、マット本体裏面に部分的に接着剤を塗布する。部分的に接着剤を塗布する方法としては、ロータリースクリーン等を用いて塗布すべき箇所のみに塗布してもよいし、マット本体裏面に孔開き柄模様のある型(以下、「開孔型板」という。)を置いて、ドクターナイフ等で全面に塗布し、孔の開いた部分のみに接着剤が塗布されるようにしてもよい。そして、+電極と−電極とを備えたフロック加工機を用い、両電極の間にマット本体を導入し、ここで植毛繊維を散布すれば、接着剤が塗布された箇所に植毛繊維が起立した状態で植毛されるのである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る置き敷きマットは、マット本体裏面に、部分的にフロック加工が施されることによって、繊度10〜20デニールで繊維長1.5〜2.5mmの植毛繊維が柄模様で植毛されている。したがって、柄模様は、植毛繊維が起立した状態となっているから、マット本体裏面から突出している。かかる置き敷きマットを用いて、タフトカーペットからなる敷き詰めカーペット表面に置くと、突出した柄模様が敷き詰めカーペット表面に食い込んで、置き敷きマットが滑りにくく、ずれにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一例に係る置き敷きマットの概略側面図である。
【図2】本発明の一例に係る置き敷きマットの概略裏面図である。
【図3】本発明の他の例に係る置き敷きマットの裏面図である。
【図4】本発明の他の例に係る置き敷きマットの裏面図である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、特定の植毛繊維を用いて特定のフロック加工を、マット本体裏面に施すと、滑りにくい置き敷きマットが得られるとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0018】
実施例1
ポリエステル短繊維ウェブがニードルパンチされてなる目付480g/m2のニードルパンチ不織布を、置き敷きマット本体として準備した。このマット本体裏面に、図2の柄模様に対応する開孔型板(図2の黒色部が開孔している型板)を置いた。この開孔型板の各開孔の大きさは一辺が略5mmの四辺形であり、その密度は150個/150cm2であった。そして、アクリル系接着剤エマルジョンをドクターナイフを用いて、開孔型板の上から塗布した。この結果、開孔型板の開孔に対応するマット本体裏面に、アクリル系接着剤エマルジョンが塗布された。なお、塗布量は500g/m2とした。
【0019】
アクリル系接着剤エマルジョンを塗布した後、直ちには、フロック加工機に導入した。植毛繊維として繊度17デニールで繊維長2mmのナイロン繊維を用い、フロック加工機の両電極間の電圧を3万Vとして、フロック加工を行った。得られた置き敷きマットは、その裏面に図2に示すような柄模様を持つものであった。なお、図2の黒色部が植毛繊維が植毛された箇所である。
【0020】
実施例2
開孔型板の開孔密度を75個/150cm2とする他は、実施例1と同一の方法で置き敷きマットを得た。
【0021】
実施例3
開孔型板の各開孔の大きさを一辺が略10mmの四辺形とし、その密度を24個/150cm2とする他は、実施例1と同一の方法で置き敷きマットを得た。
【0022】
実施例4
図3に示した黒色の箇所に略対応する開孔を持つ開孔型板を用いた他は、実施例1と同一の方法で置き敷きマットを得た。なお、図3は、略実寸の置き敷きマットの裏面図であり、黒色の箇所が植毛された箇所である。したがって、黒色の箇所が柄模様2であり、薄色の箇所がマット本体裏面1である。
【0023】
実施例5
図4に示した黒色の箇所に略対応する開孔を持つ開孔型板を用いた他は、実施例1と同一の方法で置き敷きマットを得た。なお、図4は、略実寸の置き敷きマットの裏面図であり、黒色の箇所が植毛された箇所である。したがって、黒色の箇所が柄模様2であり、薄色の箇所がマット本体裏面1である。
【0024】
比較例1
実施例1で用いたマット本体裏面に毛焼き加工を行い、置き敷きマットを得た。
【0025】
比較例2
実施例1で用いたマット本体裏面に起毛加工を施し毛羽立たせた後に毛焼き加工を行い、置き敷きマットを得た。
【0026】
実施例1〜5、比較例1及び2で得られた置き敷きマットから、10cm×15cmの試験片を各々採取した。試験片の裏面が、ラインカーペット(自動車用敷き詰めカーペット)の表面に当接するようにして置いた。そして、試験片の上に300gの錘を置いて、試験片の縦方向の一端を把持して10cm/分の引張速度で引っ張り、縦方向最大摩擦抵抗値(N)を測定した。また、試験片の横方向の一端も把持して、同一の条件で横方向最大摩擦抵抗値(N)を測定した。この結果を表1に示した。なお、ラインカーペットは、市販品であって、カットパイルカーペットであり、パイル長は約10mm程度のものである。
【0027】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
縦方向摩擦抵抗値 横方向摩擦抵抗値 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 10.82 9.47
実施例2 8.01 8.36
実施例3 7.11 7.80
実施例4 9.78 9.53
実施例5 10.61 10.63
────────────────────────────
比較例1 3.42 4.06
比較例2 2.95 3.32
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0028】
実施例1〜5と比較例1及び2とを対比すれば明らかなとおり、本発明の一例に係る各置き敷きマットは、従来の毛焼き加工された置き敷きマットに比べて、摩擦抵抗値が高くなっており、滑りにくいことが分かる。
【符号の説明】
【0029】
1 置き敷きマット本体
2 柄模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車や屋内等の床に敷き詰めされたタフトカーペット上に敷かれる置き敷きマットにおいて、
前記置き敷きマットは、置き敷きマット本体の前記タフトカーペットと当接する面に、部分的にフロック加工が施されることによって、繊度10〜20デニールで繊維長1.5〜2.5mmの熱可塑性合成繊維が柄模様で植毛されていることを特徴とする置き敷きマット。
【請求項2】
置き敷きマット本体がニードルパンチ製不織布である請求項1記載の自動車用置き敷きマット。
【請求項3】
熱可塑性合成繊維がナイロン繊維である請求項1記載の置き敷きマット。
【請求項4】
ナイロン繊維の繊度が17デニールで繊維長が2mmである請求項3記載の置き敷きマット。
【請求項5】
タフトカーペットが、カットパイルカーペット、ループパイルカーペット又はカットパイルとループパイルとが混在したカーペットである請求項1記載の置き敷きマット。
【請求項6】
自動車や屋内等の床に敷き詰めされたタフトカーペット上に敷かれる置き敷きマットの製造方法であって、
置き敷きマット本体の前記タフトカーペットと当接する面に、繊度10デニール以上で繊維長1.5〜2.5mmの熱可塑性合成繊維を、フロック加工によって部分的に植毛し、柄模様を形成することを特徴とする置き敷きマットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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