説明

置換β−シアノエステルの製造方法

【目的】炭素―炭素二重結合に対し、シアノ基とエステル基を同時に付加させ、置換−β−シアノエステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)一般式N≡C−C(O)ORで表されるシアノギ酸エステルと(B)下記一般式(2)
【化1】


(ここで、R、Rは各々独立して水素原子、炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、置換シリル基、または周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。Rは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、Rは互いに連結され環を形成していてもよい。)で表される置換オレフィンを(C)遷移金属化合物存在下で反応させ、炭素−炭素二重結合に対してシアノ基とエステル基を同時に付加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遷移金属化合物存在下、置換オレフィンとシアノギ酸エステルを反応させることにより、炭素−炭素二重結合に対し、シアノ基とエステル基を同時に付加させることを特徴とする置換β−シアノエステルの製造方法に関するものである。本発明で得られる置換β−シアノエステルは、機能性高分子、医薬、農薬、香料等の合成中間体原料として有用と期待されている。
【背景技術】
【0002】
炭素―炭素不飽和結合に対してシアノ基(非特許文献1参照)あるいはエステル基(非特許文献2参照)を付加させる方法は公知である。また、炭素−炭素三重結合に対して、シアノ基とアリール基(非特許文献3)あるいはシアノ基とアシル基(非特許文献4)のように2つの官能基を同時に付加させる方法が知られている。
【0003】
【非特許文献1】Journal of Chemical Society,Chemical Communication,1231頁、1982年
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society,120号,12365頁,1998年
【非特許文献3】Journal of the American Chemical Society,126号,13904頁,2004年
【非特許文献4】Bulletin of the Chemical Society of Japan,69号,1629頁,1996年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、炭素−炭素不飽和結合に対して、シアノ基とエステル基を同時に付加させる方法は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述したような従来技術に鑑みて検討した結果、シアノギ酸エステルと置換オレフィンとを遷移金属化合物存在下で反応させることにより、炭素−炭素二重結合に対し、シアノ基とエステル基が同時に付加させることができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は(A)下記一般式(1)
N≡C−C(O)OR (1)
(ここで、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表されるシアノギ酸エステルと(B)置換オレフィンとを(C)遷移金属化合物存在下で反応させ、炭素−炭素二重結合に対してシアノ基とエステル基を同時に付加させることを特徴とする置換β−シアノエステルの製造方法に関するものである。また、置換オレフィンが主環中に炭素−炭素二重結合を有する二環式化合物の場合、シアノ基およびエステル基の付加は、エキソ選択的に進行する。以下、本発明の具体例を挙げて詳細に説明するがこれらに限定されるものではない。
【0007】
本発明の(A)のシアノギ酸エステルは、一般式(1)により表される。一般式(1)中のRは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、アリル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、ノニル基、クミル基、2−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基、デシル基、ナフチル基、アダマンチル基、2−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−イソプロピルフェニル基、ウンデシル基、2−エチル−6−イソプロピル基、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル基、ドデシル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−ビフェニル基、2−シクロへキシルフェニル基、トリデシル基、2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニル基、テトラデシル基、2,6−ジブチルフェニル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル基、2−フェニル−6−イソプロピル基、ヘキサデシル基、2−ナフチルフェニル基、2−ターシャリーブチル−6−フェニルフェニル基、ヘプタデシル基、2−ターシャリーブチル−4−メチル−6−フェニルフェニル基、オクタデシル基、2,6−ジフェニルフェニル基、ノナデシル基、トリフェニルメチル基、4−メチル−2,6−ジフェニルフェニル基、アラキジル基、2,6−ジパラトリルフェニル基等を挙げることができる。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。置換アミド基の具体的な例としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などが挙げられる。置換アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ターシャリーブトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが挙げられる。置換アリーロキシ基の具体的な例としては、フェノキシ基、パラメチルフェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、1−ナフトキシ基などが挙げられる。置換シリル基、周期表第15,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジエチルアミノフェニル基、2−ジイソプロピルアミノフェニル基、2−ピリジル基、6−メチル−2−ピリジル基、2−ピリジルフェニル基、2−イミダゾリル基、2−シアノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、2−ジフェニルホスフィノフェニル基、トリフェニルホスホラニリデンメチル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、メチルスルホニルメチル基、パラトルエンスルホニルメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロ−1−メチルエチル基等を挙げることができる。置換シアノギ酸エステルの具体的な例としては、シアノギ酸メチル、シアノギ酸エチル、シアノギ酸ビニル、シアノギ酸ノルマルプロピル、シアノギ酸イソプロピル、シアノギ酸アリル、シアノギ酸ノルマルブチル、シアノギ酸イソブチル、シアノギ酸ターシャリーブチル、シアノギ酸ペンチル、シアノギ酸ネオペンチル、シアノギ酸シクロペンチル、シアノギ酸ヘキシル、シアノギ酸シクロへキシル、シアノギ酸フェニル、シアノギ酸ヘプチル、シアノギ酸ベンジル、シアノギ酸2−メチルフェニル、シアノギ酸4−メチルフェニル、シアノギ酸オクチル、シアノギ酸2,6−ジメチルフェニル、シアノギ酸2−エチルフェニル、シアノギ酸ノニル、シアノギ酸クミル、シアノギ酸2−イソプロピルフェニル、シアノギ酸2,4,6−トリメチルフェニル、シアノギ酸2−エチル−6−メチルフェニル、シアノギ酸デシル、シアノギ酸ナフチル、シアノギ酸アダマンチル、シアノギ酸2−ターシャリーブチルフェニル、シアノギ酸2,6−ジエチルフェニル、シアノギ酸2−メチル−6−イソプロピルフェニル、シアノギ酸ウンデシル、シアノギ酸2−エチル−6−イソプロピル、シアノギ酸2,6−ジエチル−4−メチルフェニル、シアノギ酸ドデシル、シアノギ酸2,6−ジイソプロピルフェニル、シアノギ酸2−ビフェニル、シアノギ酸2−シクロへキシルフェニル、シアノギ酸トリデシル、シアノギ酸2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニル、シアノギ酸テトラデシル、シアノギ酸2,6−ジブチルフェニル、シアノギ酸1−アントラセニル、シアノギ酸ペンタデシル、シアノギ酸2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル、シアノギ酸2−フェニル−6−イソプロピル、シアノギ酸ヘキサデシル、シアノギ酸2−ナフチルフェニル、シアノギ酸2−ターシャリーブチル−6−フェニルフェニル、シアノギ酸ヘプタデシル、シアノギ酸2−ターシャリーブチル−4−メチル−6−フェニルフェニル、シアノギ酸オクタデシル、シアノギ酸2,6−ジフェニルフェニル、シアノギ酸ノナデシル、シアノギ酸トリフェニルメチル、シアノギ酸4−メチル−2,6−ジフェニルフェニル、シアノギ酸アラキジル、シアノギ酸2,6−ジパラトリルフェニル、シアノギ酸トリメチルシリルメチル、シアノギ酸ジメチルフェニルシリルメチル、シアノギ酸2−ジメチルアミノフェニル、シアノギ酸2−ジエチルアミノフェニル、シアノギ酸2−ジイソプロピルアミノフェニル、シアノギ酸2−ピリジル、シアノギ酸6−メチル−2−ピリジル、シアノギ酸2−ピリジルフェニル、シアノギ酸2−イミダゾリル、シアノギ酸2−シアノフェニル、シアノギ酸2−ジメチルホスフィノフェニル、シアノギ酸2−ジフェニルホスフィノフェニル、シアノギ酸トリフェニルホスホラニリデンメチル、シアノギ酸2−メトキシフェニル、シアノギ酸2−エトキシフェニル、シアノギ酸2−イソプロポキシフェニル、シアノギ酸2−フェノキシフェニル、シアノギ酸2−チオメチルフェニル、シアノギ酸メチルスルホニルメチル、シアノギ酸パラトルエンスルホニルメチル、シアノギ酸トリフルオロメチル、シアノギ酸2,2,2−トリフルオロエチル、シアノギ酸ペンタフルオロフェニル、シアノギ酸2−クロロ−1−メチルエチル等を挙げることができる。
【0008】
本発明の(B)の置換オレフィンは、下記一般式(2)により表される。
【0009】
【化1】

【0010】
また、この置換オレフィンとして下記一般式(4)で表される主環中に炭素−炭素二重結合を有する二環式化合物が挙げられる。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(2)中のRは各々独立して水素原子、炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。Rは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、Rは互いに連結され環を形成していてもよい。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、アリル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、ノニル基、クミル基、2−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基、デシル基、ナフチル基、アダマンチル基、2−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−イソプロピルフェニル基、ウンデシル基、2−エチル−6−イソプロピル基、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル基、ドデシル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−ビフェニル基、2−シクロへキシルフェニル基、トリデシル基、2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニル基、テトラデシル基、2,6−ジブチルフェニル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル基、2−フェニル−6−イソプロピル基、ヘキサデシル基、2−ナフチルフェニル基、2−ターシャリーブチル−6−フェニルフェニル基、ヘプタデシル基、2−ターシャリーブチル−4−メチル−6−フェニルフェニル基、オクタデシル基、2,6−ジフェニルフェニル基、ノナデシル基、トリフェニルメチル基、4−メチル−2,6−ジフェニルフェニル基、アラキジル基、2,6−ジパラトリルフェニル基等を挙げることができる。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。置換アミド基の具体的な例としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などが挙げられる。置換アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ターシャリーブトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが挙げられる。置換アリーロキシ基の具体的な例としては、フェノキシ基、パラメチルフェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、1−ナフトキシ基などが挙げられる。置換シリル基、周期表第15,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジエチルアミノフェニル基、2−ジイソプロピルアミノフェニル基、2−ピリジル基、6−メチル−2−ピリジル基、2−ピリジルフェニル基、2−イミダゾリル基、2−シアノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、2−ジフェニルホスフィノフェニル基、トリフェニルホスホラニリデンメチル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、メチルスルホニルメチル基、パラトルエンスルホニルメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロ−1−メチルエチル基等を挙げることができる。一般式(4)中のR、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。R、Rは互いに同じであっても異なっていてもよい。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、アリル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、ノニル基、クミル基、2−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基、デシル基、ナフチル基、アダマンチル基、2−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−イソプロピルフェニル基、ウンデシル基、2−エチル−6−イソプロピル基、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル基、ドデシル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−ビフェニル基、2−シクロへキシルフェニル基、トリデシル基、2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニル基、テトラデシル基、2,6−ジブチルフェニル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル基、2−フェニル−6−イソプロピル基、ヘキサデシル基、2−ナフチルフェニル基、2−ターシャリーブチル−6−フェニルフェニル基、ヘプタデシル基、2−ターシャリーブチル−4−メチル−6−フェニルフェニル基、オクタデシル基、2,6−ジフェニルフェニル基、ノナデシル基、トリフェニルメチル基、4−メチル−2,6−ジフェニルフェニル基、アラキジル基、2,6−ジパラトリルフェニル基等を挙げることができる。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。置換アミド基の具体的な例としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などが挙げられる。置換アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ターシャリーブトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが挙げられる。置換アリーロキシ基の具体的な例としては、フェノキシ基、パラメチルフェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、1−ナフトキシ基などが挙げられる。置換シリル基、周期表第15,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジエチルアミノフェニル基、2−ジイソプロピルアミノフェニル基、2−ピリジル基、6−メチル−2−ピリジル基、2−ピリジルフェニル基、2−イミダゾリル基、2−シアノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、2−ジフェニルホスフィノフェニル基、トリフェニルホスホラニリデンメチル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、メチルスルホニルメチル基、パラトルエンスルホニルメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロ−1−メチルエチル基等を挙げることができる。Yは、炭素数2〜20の炭化水素架橋基、置換シリル架橋基、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数2〜20の炭化水素架橋基である。
【0013】
炭素数2〜20の炭化水素架橋基の具体例としては、エチレン基、ビニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、1,2−シクロペンタ−1,3−ジエニル基、ヘキサメチレン基、1,2−フェニレン基、1,2−シクロへキシル基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、2,3−ナフチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、2,3−ナフチレン基等を挙げることができる。置換シリル架橋基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、テトラメチルジシリル等を挙げることができる。置換シリル基、周期表第15,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数2〜20の炭化水素架橋基の具体例としては、1,2−トリメチルシリルエチレン基、4−ジメチルアミノ−1,2−フェニレン基、4−ジエチルアミノ−1,2−フェニレン基、4−ジイソプロピルアミノ−1,2−フェニレン基、2、3−ピリジレン基、4−シアノ−1,2−フェニレン基、4−ジメチルホスフィノ−1,2−フェニレン基、4−メトキシ−1,2−フェニレン基、4−エトキシフェニレン基、2−イソプロポキシフェニレン基、2−フェノキシフェニレン基、2−チオメチル−1,2−フェニレン基、メチルスルホニルメチレン基、パラトルエンスルホニルメチレン基、1,1,2,2−テトラフルオロエチレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−1,2−フェニレン基等を挙げることができる。置換オレフィンの具体的な例としては、エチレン、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルアミン、プロピレン、アクリロニトリル、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、シクロブテン、ブタジエン、フラン、ピロール、1−ペンテン、2−ペンテン、3−ペンテン、シクロペンテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1,3−ブタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、ベンゼン、1−ヘプテン、1−オクテン、1,5−シクロオクタジエン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、1,4,5,8,9,10−ヘキサヒドロアントラセン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。一般式(4)により表されるニ環式化合物の具体例としては、ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテン、ビシクロ[2,2,1]−2,5−ヘプタジエン、5−メチレンビシクロ[2,2,1]2−ヘプテン、2−メチルビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテン、2−ヒドロキシビシクロ[2,2,1]―5−ヘプテン、2−シアノビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン、5−ビニルビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテン、ジシクロペンタジエン7−ターシャリーブトキシビシクロ[2,2,1]−2、5−ヘプタジエン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の(C)の遷移金属化合物は一般式(3)により表される。
【0015】
MX (3)
(ここで、Mは周期表第3族〜11族の遷移金属元素である。Xは、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。aが2以上の場合、Xは互いに同じでも異なっていてもよい。aはMの酸化数を示す。Lはπ電子、周期表第14〜16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示し、bは0〜6の整数を示す。bが2以上の場合、Lは互いに同じでも異なっていてもよい。)
一般式(3)中のMは周期表第3族〜11族、好ましくは第8族〜10族の遷移金属元素である。具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金などを挙げることができる。好ましくは、ニッケル、パラジウム、白金を挙げることができる。Xは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、アリル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、ノニル基、クミル基、2−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基、デシル基、ナフチル基、アダマンチル基、2−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−イソプロピルフェニル基、ウンデシル基、2−エチル−6−イソプロピル基、2,6−ジエチル−4メチルフェニル基、ドデシル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−ビフェニル基、2−シクロへキシルフェニル基、トリデシル基、2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニル基、テトラデシル基、2,6−ジブチルフェニル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル基、2−フェニル−6−イソプロピルフェニル基、ヘキサデシル基、2−ナフチルフェニル基、2−ターシャリーブチル−6−フェニルフェニル基、ヘプタデシル基、2−ターシャリーブチル−4−メチル−6−フェニルフェニル基、オクタデシル基、2,6−ジフェニルフェニル基、ノナデシル基、トリフェニルメチル基、4−メチル2,6−ジフェニルフェニル基、アラキジル基、2,6−ジパラトリルフェニル基等を挙げることができ、置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。置換アミド基の具体的な例としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などが挙げられる。置換アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ターシャリーブトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが挙げられる。置換アリーロキシ基の具体的な例としては、フェノキシ基、パラメチルフェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、1−ナフトキシ基などが挙げられる。置換シリル基・周期表15族・16族の原子・ハロゲン原子を含む置換基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジエチルアミノフェニル基、2−ジイソプロピルアミノフェニル基、2−ピリジル基、6−メチル−2−ピリジル基、2−ピリジルフェニル基、2−イミダゾリル基、2−シアノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、2−ジフェニルホスフィノフェニル基、トリフェニルホスホラニリデンメチル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、メチルスルホニルメチル基、p−トルエンスルホニルメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロ−1−メチルエチル基等を挙げることができる。aが2以上の場合、Xは互いに同じでも異なっていてもよい。aはMの酸化数を示す。Lはπ電子、周期表第14〜16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示す。π電子、周期表第14〜16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、π−アリル、2,6−ジメチルフェニルイソシアニド、2,6−ジエチルフェニルイソシアニド、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアニド、2−イソプロピルフェニルイソシアニド、2−ビフェニルイソシアニド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフィンオキサイド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド等を挙げることができる。bは0〜6の整数を示す。bが2以上の場合、Lは互いに同じでも異なっていてもよい。遷移金属化合物の具体的な例としては、チタンジクロリド、チタントリクロリド、バナジウムトリクロリド、ベンゼンクロムトリカルボニル、ビスベンゼンクロム、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、トリカルボニルシクロヘプタトリエンモリブデン、タングステンヘキサカルボニル、マンガンカルボニル、鉄ペンタカルボニル、コバルトオクタカルボニル、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルト(I)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウムジクロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリド、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(1,2−ジフェニルホスフィノエタン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)白金(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)等が挙げられる。好ましくは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(1,2−ジフェニルホスフィノエタン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)白金(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
本反応に用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられるが、好ましくは、トルエン、ベンゼンである。(A)下記一般式(1)
N≡C−C(O)OR (1)
で表される化合物と(B)置換オレフィンとを(C)遷移金属化合物存在下において反応させる場合、(A)は(B)に対してモル比で0.01〜100、好ましくは1〜50の範囲の量で用いられる。(C)は(A)に対してモル比で0.01〜100、好ましくは0.1〜10の範囲の量で用いられる。反応温度は−78〜150℃、好ましくは0〜150℃の範囲であり、反応時間は0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間である。反応はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能である。また、生成物は、反応終了後に従来既知の方法により反応溶媒から分離回収することができる。
【0017】
溶媒、反応温度、反応時間、反応形式などについては、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、炭素―炭素二重結合に対し、シアノ基とエステル基を同時に付加させ、置換−β−シアノエステルを製造することが可能となった。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。反応はすべて不活性ガス雰囲気下で行ない、反応に用いた溶媒はすべて予め公知の方法により精製、乾燥または脱酸素を行なった。化合物の同定は、H NMR、13C NMR(日本電子社製 GSX−400型 NMR測定装置)、元素分析(ヤナコ製 MT−5型 CHN元素分析装置)を用いて行なった。
【0020】
実施例1 (2R,3S)−2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]ヘプタンの合成
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.16g、1.0mmol,10mol%)のトルエン(100ml)溶液に、室温でシアノギ酸エチル(0.98ml,10.0mmol)及びノルボルネン(0.94g、10.0mmol)を加えた。110℃で24時間反応させた後、1mol/L塩酸(50ml)を加え反応を停止し、ジエチルエーテル(50ml×2)で抽出を行った。無水硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を留去すると淡黄色オイルが得られた。減圧蒸留を行うと2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]ヘプタンが無色オイルとして得られた(収量:1.55g、収率:80%)。H NMR(δ,CDCl)4.18(qd,2H,OCH),2.83(dd,1H,CHCN),2.62−2.65(m,3H),1.95(dt,1H),1.53−1.66(m,2H),1.42(dt,1H),1.28(dt,3H,CH),1.17−1.25(m,2H),13C NMR(δ,CDCl)171.1(CO),119.7(CN),61.1(OCH),49.9(CHCOOEt),41.9(橋頭位),39.0(橋頭位),36.6(CH+CHCN),28.2(CH),27.8(CH)14.1(CH),元素分析 計算値(C1115NO)C,68.37;H,7.82;N,7.25%,測定値 C,68.24;H,7.82;N,6.94%
実施例2 (2R,3S)−2−メトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]ヘプタンの合成
シアノギ酸エチルに替えてシアノギ酸メチルを用いた以外は、実施例1と同様に反応を実施した。その結果、2−メトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]ヘプタンが無色オイルとして得られた(収率:28%)。H NMR(δ,CDCl)3.74(s,3H,OCH),2.83(dd,1H,CHCN),2.60−2.69(m,3H),1.96(dt,1H),1.62(m,1H),1.43(dt,1H),1.24(m,H,CH),13C NMR(δ,CDCl)171.8(CO),119.9(CN),52.1(OCH),50.1(CHCOOMe),41.9(橋頭位),39.0(橋頭位),36.6(CH+CHCN),28.2(CH),27.7(CH)、元素分析 計算値(C1013NO)C,67.02;H,7.31;N,7.82%,測定値 C,67.23;H,7.33;N,7.86%
実施例3 (2R,3S)−2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテンの合成
ノルボルネンに替えてノルボルナジエンを用いた以外は実施例1と同様に反応を実施した。その結果、(2R,3S)−2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテンが無色オイルとして得られた(収率:66%)。
H NMR(δ,CDCl)6.24(dd,1H,C=CH),6.15(dd,1H,C=CH),4.24(s,2H,OCH),3.26(br,1H),3.26(br,1H),2.68(dd,1H,CHCN),2.57(dd,1H,CHCOOEt),2.00(d,1H),1.66(dt,1H),1.31(t,3H,CH),13C NMR(δ,CDCl)171.8(CO),138.4(C=CH),135.9(C=CH)120.2(CN),61.6(OCH),47.6(橋頭位)47.0(CHCOOEt),46.5(CH),45.0(橋頭位),33.1(CHCN),14.3(CH)、元素分析 計算値(C1113NO)C,69.09;H,6.85;N,7.32%,測定値 C,69.07;H,6.74;N,7.13%
比較例1 シクロペンタジエンとシス−β−シアノアクリル酸エチルとのDiels−Alder反応
シス−β−シアノアクリル酸エチル(0.68ml,10.0mmol)のジクロロメタン(20ml)溶液を0℃に冷却しておき、そこにシクロペンタジエン(2.1ml,25mmol)を加え、室温で12時間反応させた。H NMR測定の結果、(2R,3S)−2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテンおよび(2S,3R)−2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテンの混合物であることが明らかとなった。
H NMR(δ,CDCl)6.46(dd,1H,C=CH),6.30(dd,1H,C=CH),4.16(m,2H,OCH),3.22−3.32(m,3H),1.57(dt,1H),1.28(t,3H,CH)他のシグナルは、(2R,3S)−2−エトキシカルボニル−3−シアノビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテンと重複している。元素分析 計算値(C1113NO)C,69.09;H,6.85;N,7.32%,測定値 C,68.85;H,6.67;N,7.16%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
N≡C−C(O)OR (1)
(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表されるシアノギ酸エステルと(B)下記一般式(2)
【化1】

(ここで、Rは各々独立して水素原子、炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。Rは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、Rは互いに連結され環を形成していてもよい。)で表される置換オレフィンを(C)一般式(3)
MX (3)
(ここで、Mは周期表第3族〜11族の遷移金属元素である。Xは、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。aが2以上の場合、Xは互いに同じでも異なっていてもよい。aはMの酸化数を示す。Lはπ電子、周期表第14〜16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示し、bは0〜6の整数を示す。bが2以上の場合、Lは互いに同じでも異なっていてもよい。)で表される遷移金属化合物存在下で反応させることを特徴とする置換β−シアノエステルの製造方法。
【請求項2】
(B)置換オレフィンが下記一般式(4)
【化2】

(ここで、R、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、置換アミド基、置換アルコキシ基、置換アリーロキシ基、ハロゲン原子、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。R、Rは互いに同じであっても異なっていてもよい。Yは、炭素数2〜20の炭化水素架橋基、置換シリル架橋基、または置換シリル基、周期表第15族、16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数2〜20の炭化水素架橋基である。)で表される二環式化合物である請求項1記載の置換β−シアノエステルの製造方法。
【請求項3】
(C)遷移金属化合物が周期表第8族〜10族遷移金属化合物である請求項1又は2に記載の置換β−シアノエステルの製造方法。

【公開番号】特開2006−321744(P2006−321744A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145710(P2005−145710)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】